ボロン酸の新たな可能性! ポリビニルアルコー …『 都...

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『⾸都⼤学東京・新技術説明会』 ⽇時:平成29年7⽉11⽇(⽕) 場所:JST東京別館ホール ⾸都⼤学東京 都市環境科学研究科 分⼦応⽤化学域 助教 ⻄藪隆平 ボロン酸の新たな可能性! ポリビニルアルコール(PVA)固体表⾯に 機能を描画できるインクの提案

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  • 『⾸都⼤学東京・新技術説明会』⽇時:平成29年7⽉11⽇(⽕)

    場所:JST東京別館ホール

    ⾸都⼤学東京都市環境科学研究科 分⼦応⽤化学域

    助教 ⻄藪隆平

    ボロン酸の新たな可能性!ポリビニルアルコール(PVA)固体表⾯に

    機能を描画できるインクの提案

  • 新技術の特徴

    2

    ① 化学修飾剤(ボロン酸)が安定なので取り扱いが容易② 溶媒を脱⽔する必要が無い③ アルコール系溶媒を使⽤できる④ 加熱を必要としない⑤ 化学修飾剤の溶液に浸漬するだけで化学修飾できる

    ボロン酸を化学修飾剤に⽤いることでポリビニルアルコール(PVA)の固体表⾯を簡便に機能化できる

    PVA粒⼦

    R

    室温

    ろ過R

    ボロン酸

    メタノール中

  • 本研究課題の背景(PVA)

    3

    ポリビニルアルコール(PVA)・ポバールとも呼ばれる⽔溶性合成⾼分⼦・優れた加⼯性、機械的安定性、透明性、化学

    的安定性、⽣体適合性、酸素バリアー性等・⾐料品や包装材料、スポンジ、偏光フィルム

    として利⽤・燃料電池や触媒、分離剤、センサー、医療材

    料などへの応⽤可能性

    ポリビニルアルコール(PVA)

  • 従来技術

    4

    1. ホルミル基をアンカー部位に持つ化学修飾剤

    CHO

    酸触媒存在下2. 酸クロリドをアンカー部位に持つ化学修飾剤

    COCl

    3. ⽔酸化ナトリウムなどを⽤いたPVA⽔酸基の活性化

    ・酸触媒の添加が必要・化学修飾剤の反応性が⾼いた

    め、その取り扱い・保管に注意(禁⽔・除湿など)が必要。

    ・使⽤できる溶媒が限られる。・溶媒の⽔分除去など、厳密な

    反応条件が要求される。・表⾯を活性化する過程など

    多段階の作業⼯程を要する。・表⾯活性化試薬や活性化後の

    PVA表⾯は反応性が⾼いので、取り扱いに注意が必要。脱⽔条件下

    <問題点>

  • 本研究課題の背景(ボロン酸)

    5

    ボロン酸エステル化反応

    鈴⽊・宮浦クロスカップリング反応+

    [Pd]

    baseフェニルボロン酸

    ハロゲン化アリール

    +

    ボロン酸 ジオール室温

    2 H2O+

    ボロン酸エステル

    炭素-炭素結合

    ボロン酸

    R:アリール基やアルキル基

    常温・常圧でジオールと共有結合を形成

  • 架橋

    OBOOH

    OBO OH

    6

    +

    ジボロン酸DMSO溶液ポリビニルアルコールDMSO溶液

    室温

    R. Nishiyabu et al., RSC Adv., 2, 6555 (2012).

    OH

    n

    B OHHO

    B OHHO

    溶媒交換ヒドロゲルDMSOゲル pH: 1 4 7 10 11 12

    溶解

    <溶媒交換によるヒドロゲル化> <ヒドロゲルのpH安定性>

    本研究課題の背景(ボロン酸)

    ゲルの形成

  • 新技術の特徴

    7

    蛍光性マイクロ粒⼦ 蛍光性薄膜 蛍光性ナノ繊維

    蛍光性ボロン酸PVAマイクロ粒⼦

    PVA薄膜PVAナノ繊維 室温メタノール

    特徴:①ボロン酸は安定なので取り扱いが容易、②溶媒を脱⽔する必要が無い、③アルコール系溶媒を使⽤できる、④加熱を必要としない、⑤ボロン酸の溶液にPVAの固体を浸漬するだけで化学修飾できる

    R

    室温

    ろ過Rメタノール中

    ボロン酸を化学修飾剤に⽤いることでポリビニルアルコール(PVA)の固体表⾯を簡便に機能化できる

  • N

    N

    B

    O

    F

    F

    BHO

    OH

    室温・メタノール中・24時間

    実施例実施例①: 粒状の PVA (1 g) をボロン酸基を導⼊した蛍光⾊素のメタノール溶液(2.0 x 10-5 M, 100 mL) に室温下で浸漬した。24時間後、PVAをろ過により集めた。

    室温・メタノール中・15時間

    実施例②: ボロン酸基を導⼊した蛍光⾊素のメタノール溶液(2.0 x 10-5 M, 25 mL)に、ホルマール化PVAスポンジ (10 mg) を室温下で浸漬した。15時間後、スポンジを取り出し、メタノールでよく洗浄した。

    8

  • 実施例③: 蛍光性のボロン酸で化学修飾したホルマール化PVAスポンジ (10 mg) を異なるpHの⽔溶液に24時間浸漬した。

    N

    N

    B

    O

    F

    F

    BHO

    OH

    室温・メタノール中・15時間

    pH

    蛍光

    強度

    (相

    対値

    )0

    20

    40

    60

    80

    100

    1 3 5 7 9 11 13UVライト照射下(365 nm)

    実施例UVライト照射下

    9

    各種⽔溶液24時間

  • 実施例④: 亜鉛イオンに蛍光応答するボロン酸で化学修飾したホルマール化PVAスポンジ(10 mg) を⾦属イオンの⽔溶液 (3.0 × 105 M, 10 mL, pH = 7.0) に浸漬した。

    室温・メタノール中・2時間

    実施例

    UVライト照射下 (365 nm)

    UVライト照射下

    (365 nm)

    ⾦属イオン(3.0 × 105 M)

    30分間⽔溶液中

    (10 mL, pH = 7.0)

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  • 想定される⽤途

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    細胞と相互作⽤できる化学修飾剤を固定化したPVAスポンジ

    HeLa細胞

    その①:細胞を培養できるスポンジ

    ⻘⾊蛍光:HeLa細胞緑⾊蛍光:スポンジ

  • 想定される⽤途

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    貴⾦属イオンを選択的に還元できる化学修飾剤を固定化

    ⾦(III)イオン⽔溶液(⻩⾊の⽔溶液)

    その②:貴⾦属イオン回収材料できるスポンジ

    そのほか:・ pHや温度、溶媒、特定の化学種に応答して⾊が変わるセンサー・ 分離・回収容易な不均⼀系触媒の担体利⽤など

    ⾦(0)が析出

  • 実⽤化に向けた課題

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    数百種類のボロン酸誘導体が市販されているが、いずれも⽐較的⾼価

    ⾼い付加価値をもつ機能材料の開発

    企業に期待すること当該⼿法を利⽤した機能性材料の開発や各種印刷技術への適⽤に興味をもつ企業との共同研究を期待。

  • 関連する知的財産権・学術文献

    【知的財産権】発明の名称 :固体ポリビニルアルコールの表⾯修飾剤、固体ポリビニ

    ルアルコールの表⾯修飾⽅法、及び固体ポリビニルアルコールの表⾯修飾器。

    出願番号 :特願2016-243116出願⼈ :公⽴⼤学法⼈⾸都⼤学東京発明者 :⻄藪 隆平

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    【学術⽂献】1) R. Nishiyabu and A. Shimizu, Chem. Commun., 2016, 52, 9765-

    9768. 2) R. Nishiyabu, S. Iizuka, S. Minegishi, H. Kitagishi, and Y. Kubo,

    Chem. Commun., 2017, 53, 3563-3566.

  • お問い合わせ先• ⾸都⼤学東京 URA室• 主幹URA 鈴⽊ 真吾• TEL 042-677-2759• FAX 042-677-5640• e-mail [email protected]

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