GMSによる雲頂高度とパイロット報告との比較(第２報)

Comparison of the Cloud Top Heights Evaluated from GMS

　　　　　InfraredImage with the Heights Reported

　　　　　　　　　　byAir-linePilots.(Part 2)

楡　井　壮　－＊

Souichi Nirei*

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Abstract

　　In order to examine the accuracy of cloud top heights derived from GMS infrared

images, the cloud top heights (CTH) are compared with those reported by air-linepilots

during the period from May through September 1982.

　　Two kinds of the CTH estimation method, the　mode temperature method and　the

minimum temperature method, which are used routinely in MSC (Meteorogical Satellite

Center) and based on the histogram analysis technique, were used. Two temperatures

corresponding to the two methods were derived in each case.

　　The derived temperatures are converted to ｇｅｏ･potentialheights by　comparison with

climatological verticaltemperature profiledata, named GMSSA （GMS Standard Atmosphere).

　　The results show that CTH by minimum temperature method are estimated more

closely to those reported by pilots,and the deviations range from －10.6％tｏ＋1.3％ａs

compared with CTH reported by pilots.

1｡まえがき

　ＧＭＳシステムで出力される雲頂高度の精度調査の一

環として，前回，寒候期についてＧＭＳが観測した相当

黒体温度（以下，Ｔｒｂという）データから最多温度法

と最低温度法とによって抽出した雲頂高度と航空会社パ

イi=zットの着後報告（以下，パイi=･ット報告という）と

の比較を調査した。（楡＃1981）その結果，最低温度法

による雲頂高度がパイロットの報告した雲頂高度（以

下，パイi=･ット報告値という）より，やや高いが，最も

近い値をとる事，また最多温度法による雲頂高度はパイ

ロット報告値より，やや低いが，かなり近い値をとると

いう事がわかった。

　今回は1982年５月から９月までの期間のパイロット報

告値を用いて，暖候期のＧＭＳシステム雲頂高度の精度

を調査する。

＊気象衛星セソター管制課, Meteorological　Satellite

　Center

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　－

　この期間は航空機の運航に重大な影響を及ぼす積乱雲

（以下，Cbという）が多く発生するので，Cbの雲頂高

度の精度に主眼をおいて調査することとした。

2｡調査方法

　パイl=･ット報告の内，雲頂高度を記入してあるものを

選択し，その報告地点を中心として７ｊ３分布図から算

出した雲頂高度をパイロット報告値と比較した。

　ＧＭＳシステムでは総観雲頂高度と局地雲頂高度の２

種類の雲頂高度を算出している。

　その方式にならって，先ず, Tbb分布図より下記Ｏ

２種類の代表雲頂温度を算出した。

　①最多温度

　最多温度は，約120 kmｘ約120 km の範囲に含まれ

る全画素

METEOROLOGICAL SATELLITE CENTER TECHNICAL NOTE Ｎ０.８ SEPTEMBER 1983

Table ｌ　Comparison between pilot reports and cloud top heights from Tbb.

NO.　DATE　TIME｡(OFF) LOCATION ｡!>ILOT .　　TeB〈ｃ〉CLOUD..　　　　　　TIME(ON)　　　　　　REPORT

-

孝 ● ●

気象衛星センター　技術報告　第８号　1983年９月

j悛,｡＿鮎1月｡｡.TIME｡(ｐ!la｡kQ.CAlLQN_!!!LOT乙｡‥…‥J卵｡jCC> CLOUDT.OP.｡_E.RROR .｡,.Ｊ卵PR_ CLOUD　　　　　　TIME(ON)　　　　REPORT(A)　゛　　HEIGHT(B}｡(A-B)　RATE　　TYPE

33 82.7,2106４1z．

33,5N,.,

10700 Ｍ

　　　　　　　　　０８００Ｚ　　　１３工．5E

　　●w●●争　　　●●－ ･●- ● ●　･● ● -･･ ･●･　　-●●●●-　● ●34　82.7.29　06４1Z　　　　3４.1Ｎ　　１0700 Ｍ

● ・ ● －

35 82季7.29 0641Z 34,7!1..!0790 Ｍ　　　　　’　　　　0800Z

36　82．7.29　1125Z

136.0E

　４1．5Ｎ 6100 Ｍ

．　．、　．り3!!t. ユ蚊丿!£_

37 82・.7.29.･.μ4(ｇ‥.‥..34.5Ｎ‥92.99 M

38 ８２．７．３０゛

　㎝●　●

124４Z

0516Z

0638Z

３９　82.7.30　０５１６再

　　　　　　　　　　　　０６３８Ｚ

４０　82.8. 2　０８０９Ｚ

　　　　　　　　　　　　０９２５Ｚ

４１　82.8. 5　０３２３Ｚ

　　　　　　　　　　　　０５２１Ｚ

４２　82.6. 5　０５２３Ｚ

　　　　　　　　　　　　０７９９４

４３　82.8. 6　２２１６Ｚ

　　　　　　　　　　　　２３３５Ｚ

４４　82.8. 6　２２１６Ｚ

　　　　　　　　　　　　２３３５Ｚ

４５　62.8. 9　０２５６Ｚ

　　　　　　　　　　　. 0429Z

４６　62,8, 9　０２５８Ｚ

　　　　　　　　　　　　０４２９Ｚ

４７　82.8. 9　０２５８Ｚ

　　　　　　　　　　　　g429Z

４８　82,8. 9　０４２０Ｚ

　　　　　　　　　　　　０５３５Ｚ

４９　62.8.ﾕ．０　２３４０Ｚ

　　　　　　.0ふ37Z

50　82,8.12　0320Z

　　　　　　　　　　　　0409Z

51　82.8.12　0４48Ｚ

　　　　　　　　　　　　0532Z

　　　●　　●・　・　　●　●●

j2　8.2･8.12..0448Z

　　　　　　　　　　　　0532Z

53

54

゜'5i

● ４ ● ●

62.6.工2　0448Ｚ

● ●

137．5E

　40;5N

.14λ.OE

　36, 2N

140．0E

　38.5N

139．5E

　30.5!4

131.0E

　31.0N

ユ33, OE

　;35.5N

138．5E

　３4.3N

ユ35f5E

　３４．０Ｎ

１３４．３Ｅ

　３３．５Ｎ

１３工．５Ｅ

　３３．５Ｎ

13i..O5

12500 M

● ● ● ● ●

MODE!　0

MIN ●●34

MODE"　0

MODE?.0

Mm ・･33

MODE- －2

がほｓこや.

　MODE" 99

　MIN ・●51

　MODE-　３

..≪!･< ●－2？

12200 Ｍ　　MODE- ９９　　９９９９９

　　　　　　　　M1N- ―３０

１０４００Ｍ　　MODE" ９９

　　　　　　　　MlN ●-３２

１０１００Ｍ　　MODE- １６

　　　　　　　　MIN ・-２９

１０８００Ｍ　　MODE" １７

　　　　　　　　MIN ・-５７

　６１００Ｍ　　MODE- １６

　　　　　　　　MlN ● ・８

１１６００Ｍ　　MODE" １６

　　　　　　　　MIN ｓ-５８

１１０００Ｍ　　MODE！ １５

　　　　　　　　MIN ・-４８

　９２００Ｍ　　MODE- １５

　　　　　　　　MIN ≫-22

　３７００Ｍ　　MODE- １５

　　。　. MIN ●　２

　37.0N　　12200 M140.5E

　30.0Ｎ

:130.QE

　35.0N

137．5E

　3４.5N

13610E　●●　●

　34．7Ｎ.

136.5E

１１０００ Ｍ

　７６００ Ｍ

10400 Ｍ

MODE-MIN ●一

91

95

ＭＯＤＥ●－４３

MIN ―49

MODE.・１６

HlN ―30

MODE-　０

MIN.―38

10400 M . MODE? .4　　　　　MIN ―32

　●　●申●●●●35.0N　　10700 Ｍ MODE- 14、.. ..Q532Z;.....､.､､i3.7.j?.e .._、. _ W.N -･４2

82・8．19’00!01 35,3り.．.．..り00.M . MODE- 17　　　0140Z　　140．2E　　　　　　MIN ● 0

82．8．19　0427Z　　　　36．３N　　　9500 Ｍ　　MODE- 99

。,. ..0600Z,. .…….1今Q』2£.. 、 .MJlil―54 . 3.2900

!６ １２、8.19 ０り?Ｚ　．‥３５．１Ｎ､....8500

H. MODE・１６

　　　　　　　　０６００Ｚ　　１４０．５Ｅ　　　　　MIN ●・５３

　●●-･●･● ・・ ●●　● ●･　●働●●●●　-●･●･-● ● ●･・●･●●●　●●●・　●　　　●　●５７　82.8.20　０６２０Ｚ　　　３７．０Ｎ　　工2200 M　MODE" 17

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５８　８２．８．３１　２３２４Ｚ　　　　３８．５Ｎ　　１０１００ Ｍ　　MODE- ９９

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　4900 Ｍ　　5800 Ｍ

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　5000 Ｍ　　1100 Ｍ

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99999 Ｍ　　9999 Ｍ

12500 Ｍ　　・3300 Ｍ

　４100 Ｍ　　8400 Ｍ

　9300 Ｍ　　3200 Ｍ

9９99 Ｍ

9800 Ｍ

９９９９９ Ｈ

ﾕ.0000 Ｍ

　2100 Ｍ

　9900 Ｍ

　1900 Ｍ

ﾕ.3500 Ｍ

　1900 Ｍ

　6400 Ｍ

　1900 Ｍ

ユ４300 M

　2100 M

12200 Ｍ

　2100 Ｍ

　8700 Ｍ

　2100 Ｍ

　４600 Ｍ

99999 Ｍ

12600 M

11700 M

工2500 Ｍ

　1900 Ｍ

10000 Ｍ

　5000 Ｍ

11000 Ｍ

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10200 M

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1λ400 .Ｍ

　1700 Ｍ

　5000 Ｍ

99999 Ｍ

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　1900 Ｍ

12800 Ｍ

　1700 Ｍ

工2800 Ｍ

99999 Ｍ

　9500゛Ｍ

　2200 Ｍ

　2700 M

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9999　400 M

　8000 M

　　200 M

　8900 M

・2700 Ｍ .

　４200 Ｍ

　-300 M

　9700 M

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　8900 Ｍ

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　7100 M

　　500 M

　1600 Ｍ

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　9999 Ｍ

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9999 M

　600 M

　200 M-300 Ｍ

METEOROLOGICAL SATELLITE CENTER TECHNICAL NOTE No. 8 SEPTEMBER 1983

する。

　②最低温度

　最低温度は約60kmｘ約60kmの範囲に含まれる画

素のうち最低温度側から累計して企画素数の３％の個数

に達した時（７）ＴＢＢ値である。この温度はＧＭＳシステ

ム局地震頂高度温度に相当する。

　ＧＭＳシステムでは雑音の混入および代表性を考慮し

て上記の条件をつけ２種類の代表震頂温度を算出してい

る。

　なおＧＭＳシステム震頂高度についての詳細は加藤

（1979），鈴木（1980）｀を。 Ｔｒｂ分布図出力プログラム

については中村，杉本（1980）を参照されたい。

　この調査で使用した乃,ｊ分布図の一例をFig. 6に

示す。 Fig. 6で外側の実線内が約120 kmｘ約120 km

の最多温度算出範囲である。この時，範囲内に含まれる

企画素数は446個であるので最多温度に属する画素数は

その５％の23個以上でなければならない。一方，内側の

実線内は約60kmｘ約60 kmの最低温度範囲である。

この時の企画素数は120個であるので最低温度側から累

計して４個の画素を削除し，５番目の画素のＴｂｂ値を

最低温度とした。ただし，この調査で使用しtｉ　Ｔｂｂ分

布図出力プログラムはＧＭＳシステム震頂高度算出処理

のものと異なるため企画素数もＧＭＳシステムのものと

異なる。

　上記の２種類の代表震頂温度を雲頂高度に換算するの

に必要な大気の鉛直温度分布としてはＧＭＳシステムで

使用しているＧＭＳ標準大気（ＧＭＳＳＡと呼ばれる統計

値）を用い，１個のパイl=2ット報告値に対して，２種類

の雲頂高度を算出した。

　前回の調査では４種類の震頂高度を算出し，換算に高

層観測実況値も使用したが, GMSSAデータを使用した

場合と精度に大きな差が無いので今回はＧＭＳシステム

の方式にならって算出した。

　Table 1 はパイl=zット報告値とＴｒｂ分布から求めた

２種類の震頂高度との比較表である。 Table 1で時刻は

航空機の離陸(OFF)と着陸(ON)時刻を示す。　Ｔｂｂ

値は最多温度をMODEで，最低温度をＭＩＮでそれぞ

れ摂氏温度で表示している。誤差(ERROR)はパイロ

ット報告値とTbbから算出した雲頂高度との差で，・々

イロット報告値の方が大きい場合，正の値である。誤差

率(ERROR ＲＡＴＥ）は誤差のパイロット報告値に対す

る百分率である。またTable 1 で最多温度(MODE)

が99とは算出条件を満たさず最多温度が得られなかった

場合で，この時雲頂高度は99999 ｍ，誤差は9999 ｍ，

誤差率は999％としてある。雲形(CLOUD ＴＹＰＥ）は

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ー

CbとＣｕ（積雲）のみを表示したが，パイロット報告

にCbまたはＣｕと記入しである場合および雲解析図

からCbまたはＣｕと判断された場合である。

　Fig. 1 に最多温度法における誤差率の度数分布を，

Fig. 2 に最低温度法におけるものを示す。ただし誤差

率の絶対値が95％以上の場合は除外した。

　ここで最多温度法とぽ最多温度を雲頂高度に換算する

ものであり，最低温度法とは最低温度を換算するもので

ある。

　Fig. 3,4に｡各方法別にバらz,からの雲頂高度とパイ

ロット報告値との間の相関図を示す。誤差率の絶対値が

100％以上の場合は除外した。

　Fig. 1～4で，０印はCbを，×印はCb以外の雲を

それぞれ示してある。

3｡考 □

　　Table 1 での誤差(ERROR)はパイi=･ット報告値と

　Ｔｂｂから求めた雲頂高度との差である。前回の調査で

　述べた様に，この誤差は「GMS　システムによる誤差」

　と「パイロット報告の誤差」と「その他の誤差」の和で

　ある。

　　「ＧＭＳシステムによる誤差」は雲の射出率，大気補正

　量，大気の鉛直温度分布などにおいて正確な値を知るこ

　とが困難なために生ずる。この調査の場合は雲の射出率

　を100％と仮定したこと，大気補正を行なわずTbb分

　布図の値を真の雲頂温度と仮定したことなどが該当す

　る。

　　大気補正を行なわない場合，雲頂高度の高い雲では

　Tbb値が真の値に近いが，高度の低い雲では誤差が大

　きくなる。

　　「パイl=zット報告の誤差」はパイl=･ットが雲頂高度を

　測定する時の測定誤差，位置誤差である。

　　「その他の誤差」はパイロット報告の雲と７３３分布

　図の代表雲頂温度に｡該当する雲との違い，および，パイ

　ロット報告の時刻とＧＭＳ観測時刻の違いから生ずる誤

　差である。 ＧＭＳは３時間毎に観測しているので時刻の

　違いの最大値は１時間30分である。

　　以上述べた誤差を反映してTable 1 の誤差と誤差率

　は正負の大小さまざまの値を示している。そこで時刻の

　違いによる誤差，位置誤差などを解消し，全般的な傾向

　をつかむために，誤差率の平均値，度数分布，相関係数

　などの統計値を使用して統計的に考察する。

　　Fig. 1,2の度数分布を見ると, Fig. 1の最多温度法

　による誤差率の度数分布は正規分布ではない。一方，

４－

気象衛星センター　技術報告　第８号　1983年９月

－９５％　TO　・86?o (　ﾕ.)IX

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・７５％ＴＯ　・66?o (ﾕ.)IX

－6j趾二rO ≫-56?^ ( 0> I

・55％　TO　・46％（　ﾕ.)IX

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－35％　TO　・26?e (　o）1

－21％ごECLべLAS-.C_J。）｡LX

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　25％　TO　　34%　（　2) I XX

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　85?^..TO　94％（　1)10

　Fig.I　Histogram of Error Rate for Mode

　Temperature Method.（○:Cb.×:Clouds　except Cb）

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　25％TO　345S

METEOROLOGICAL SATELLITE CENTER TECHNICAL NOTE Ｎ０.８ SEPTEMBER 1983

Fig. 2 の最低温度法によるものは，０％を含む範囲を

中心として，ほぽ正規分布に近い形をしている。

　そこで最低温度法による誤差率の平均値と標準偏差を

求めると，平均値は-4.6%,標準偏差は21.2％とな

る。（標本数は53）。これらの値から，最低温度法による

誤差率の母平均値の95％信頼区間を求めると。－10.6％

～＋1.3％となる。これらの統計値とＦｉｇ。2は最低温

度法による雲頂高度がパイロット報告値より，やや高い

が最も近い値であることを示している。

　Fig. 2 でCbを示す○印に注目すると，やはり正規

分布に近い形である。そこでCbのみについて最低温度

法による誤差率の平均値と標準偏差を求めると，平均値

は－1. 1％，標準偏差は20.7％となる。（標本数は34）。

この時の母平均値の95％信頼区間を求めると,－8.6％～

＋6.4％となる。 Cbについても最低温度法による雲頂高

度がパイロット報告値に最も近い値をとる。

　Fig. 1 のCbを示す○印に注目すると，正の大きな

値の方へ集中して分布している。　これは，Cbについて

の最多温度法による貫頂高度がパイロット報告値より大

幅に低いことを示している。

　次にFig. 3, 4の相関図で破線は誤差率Ｏ％を示す。

破線の左側は誤差率が正の場合に対応し，パイi=･ット報

告値が. Tanから算出した雲頂高度より大きい場合で

ある。破線の右側は誤差率が負の場合に対応する。

　Fig. 3の最多温度法によるものは，ほぼ左上に広く

分布し，特に○印が示すCbは左上隅に集中し，最多温

度法によるCbの貫頂高度がパイl=･ット報告値より大幅

に低いことを示している。この場合の相関係数を算出す

ると，十〇｡18であり，最多温度法による貫頂高度とパイ

ロット報告値とは，ほとんど相関がないといえるが，主

な要因はFig. 3の相関図からもわかる様に.Cbにおけ

る誤差が大きいことによる。これについては後述する。

　一方, Fig. 3で×印が示すCb以外の貫は誤差率Ｏ％

の破線の近くにほぼ分布しているのが注目される。そこ

でCb以外の雲の最多温度法による貫頂高度とパイロッ

ト報告値の間の相関係数，誤差率の平均値と標準偏差を

33 ●一一一一－４●－－－－－－●－－－－・－４－－－－－－＋－－－－・・４－・－･i－－●－・－・－－＋・－－●－－４－－－－－・●・－－－－－4･－－・－－－●・

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CLOUD TOP HEISHT FROM TBB (MIN　7GMSSA)

８

Fifir.４　Same as Fig. 3, except for Minimum Temperature Method. (solid line : regression line)

一 ６－

気象衛星センター　技術報告　第８号　1983年９月

求めると，相関係数は十〇｡73，平均値は＋1.6％，標準

偏差は42.4％となる。

　標準偏差は大きいが，相関係数は正のかなり大きな値

である。Fig. 3で破線の右側の横軸10.5 km, 縦軸5.5

km辺に×印が一点だけやや大きく離れているので，他

の×印ぱ破線の左側に分布しているものが多いが，平均

値の正の値は小さい。以上述べたことはCb以外の雲の

最多温度法による雲頂高度がパイロット報告値より，や

や低いが，かなり近い値をとることを示している。

　Fig. 4 の最低温度法によるものは誤差率Ｏ％を示す

破線の付近にほぽ分布している。この場合の相関係数を

求めると十〇｡85であり，かなり大きな正の相関がある。

そこで最低温度法の回帰直線を求めると。

　　　　　　　Ｙ＝0.77Ｘ＋1876.86

　ここでＹはパイロット報告値，Ｘは最低温度法による

雲頂高度である。この回帰直線をFig. 4に実線で示

す。回帰直線はほぼ８ｋｍ以上で破線の右側にある。こ

れは最低温度法による雲頂高度がパイロット報告値より

高いことを示している。Cbを示す○印に注目すると，

破線付近に多数，分布しているがバラツキがやや大きい

ものもある。右上隅は上層なので破線からやや大きく離

れていても誤差率はそれほど大きくならず50％程度であ

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る。左上に大きく離れている例すなわち機軸４ km, 縦

軸9.5 km辺の○印はTable 1 の番号18で，パイ1=zッ

ト報告に該当するCbはＧＭＳ観測時刻には報告空域か

ら移動してしまったため誤差が大きくなったと考えられ

る。次にCb以外の雲を示す×印は破線付近にFig. 3

の場合よりもバラツキが小さく分布している。そこで前

と同様にCb以外の雲の最低温度法による場合の相関係

数を算出すると，十〇｡99，誤差率の平均値は－11.1％，

標準偏差は21.1％である。大きな正の相関があり, Cb

以外の雲の最低温度法による雲頂高度がパイロット報告

値よりやや高いが最も近い値をとることを示している。

　前に述べた様に, Fig. 1と３のCbを示す○印の位

髪は最多温度法に｡よるCbの雲頂高度がパイロット報告

値より大幅に低いことを示している。この大幅な誤差の

原因を解明するために1982年５月26日の実例をもとに考

察する。この例はTable 1 の番号21の場合で，この時

のパイ･=lット報告図，７ｊ。分布図をそれぞれFig. 5,6

に示す。

　Fig. 5 のパイロット報告図に三陸海岸で，「TOP390」

と記入されている。390とは39000 feet≒＝11200ｍ のこ

とである。最多温度は－11度Ｃ，最低温度は－46度Ｃで

ある。GMSSAを用いて高度に換算すると，それぞれ

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Fig. 6　Tbb Chart of Ｎ０.21, Table 1

4600 ｍ と10900 ｍ である。パイロット報告値は最低温

度法による雲頂高度にほぼ一致する。 Ｔｒｂ分布図を見

ると雲頂は対流雲特有の凹凸を示し特に38.9度Ｎ,141.8

度Ｅ付近に－46度Ｃ以下の雲頂温度を示す塊がありCb

の最商都の存在を示す。

　可視画像写真を見ると，本州中部地方から東北地方に

かけて，Cbのみが所々に発生している。最多温度法に

よる雲頂高度の4600 ｍ は中層雲でなく，対流雲の一部

である。

　ここで次のような問題点がある。すなわちこの航空機

の飛行時間は0637Z～0754Ｚであるが，この地点のGMS

観測時刻は0536Zである。 Cbは急速に高度が変化した

り，移動する場合もあるので，同一の雲であるという保

証がない。しかしこの例のCbは前線に伴うものでなく

熱雷的なものなので移動は遅いと考える。また，たとえ

移動して別のCbであったとしても,･雲頂高度を決定す

る高層気象状態はこの時間差の間にあまり変化せず，雲

頂高度はほぽ同様と考えられる。

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　上記の実例からわかる様に，Cbの雲頂は凹凸してい

て，パイロットは突出したCbの最も高い雲頂高度を報

告するので，最低温度法によるものが最もパイロット報

告値に近い。 Cbは全59例中，34例が報告されているが，

そのうち２例を除いて他は最低温度法によるものが，最

多温度法によるものより誤差率が小さい。例外の２例は

Table 1 の番号18と49の例で，番号18のCbはパイロッ

ト報告時刻とＧＭＳ観測時刻の違いのため，域外に移勤

してしまった。番号49のCbの上には上層雲が一面に広

がり, GMSの画像ではCbと上層雲の区別ができなか

った。この例のパイロット報告図（図は省略）を見ると

Cbと上層雲は完全に分離していた。すなわち，この上

層雲はCbに伴なうものではない。パイロットは雄大積

雲をCbと報告したと思われる。

4｡ま　と　め

　　1982年５月から９月までの暖候期のパイロット報告値

８－

気象衛星センター　技術報告　第８号　1983年９月

と比較した結果，最低温度法による震頂高度（局地震頂

高度に相当）が，パイi=･ット報告値よりやや高いが，パ

イi=･ット報告値に最も近い値をとることがわかった。最

低温度法による雲頂高度の誤差率の母平均値の95％信頼

区間は，－10.6％～＋1.3％である。特にCbの最低温

度法の誤差率の母平均値の95％信頼区間は－8.6％～＋

6.4％である。

　最多温度法による雲頂高度（総観雲頂高度に相当）は

Cbについては，パイロット報告値より大幅に低い値で

ある。 Cb以外の震については，パイl=･ット報告値より

やや低いが，かなり近い値をとる。

　以上，Cbの最多温度法によるものを除いて，前回の

調査の結果とほぽ同じである。

　ちなみに，震解析図で標準偏差を並記してあるもの

が，総朧雲頂高度であり，並記なしのものが局地雲頂高

度である。

5｡あとがき

本調査に使用したパイl=･ット報告資料は東京航空地方

一

気象台予報課から頂きました。

　また本稿をまとめるにあたり，門脇俊一郎データ処理

部長，山本孝二管制課長，中村和信調査官から有益な御

助言を頂きました。

　Tbb分布図出力プログラムは中村健次技官，杉本清

秋技官が作成されたものを使用させて頂きました。

　以上，記して感謝の意を表します。

References

加藤一靖，1979 : 雲頂高度，気象衛星セソター技術報

　告，特別号, n-2, 43-58.

鈴木一雄，1980 : 静止気象衛星「ひまわり」の赤外放射

　データによる雲頂高度の計算，天気, 27, 307-320.

中村健次，杉本清秋，1980: VISSR輝度分布の出力プ

　1=2グラムとその利用について，測候時報, 47, 7-17.

楡井壮一，1981: ＧＭＳによる雲頂高度とパイi=zット報

　告の比較，気象衛星センター技術報告，第４号, 69-

　100.

９－

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