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入学者の学業成績か ら 学業成績基準 (GPA)に 度の分析 度評価 の試み ― 入試制 入試制 岡田龍樹 は じめ に 大学冬の時代」といわれるようになって久しい。その時代の到来の大団円として大学 全入という事態が日前に迫っている。各大学は忍び寄る黒い 雲におびえ、時には目をそ ら しながら、それでもさまざまな改革に手をつけてきた。天理大学も、1998(平 4)年 学部改組を皮切 りに、いくつかの改革を実施 してきた。 大学改革のひとつとして、入試制度改革はポピュラーでありかつ重要な位置を占めてい る。 こ こlo年の あ い だ に入試 制 度 を変 えな か った り、そ の予 定 を も もた な い大 学 は存在 し な いので はな い だ ろ うか 。 まず は手 っ取 り早 く取 り組 め る改革 だか らか も しれ な い。 しか し、それゆえに、入試制度改革は流行や思い込みにもとづいた場当たり的、恣意的な改革 になっていなかったか。大学に学生がいなければ大学ではありえない。学生の確保に直接 的に対処するとともに、学生の入学後の教育と進路指導の体制にも関わっている。入試制 度改革が重要なわけである。 本研究は、入学生の学業成績データにもとづいて、入試制度の評価を試みるとともに、 改革の方向を探ることを目的としている。一般論としての入試制度の改革案ではなく、極 めて個別的事例的な入試制度評価による入試制度改革の方法 の試案である。 1.デ 本研究に使用するデータは、以下のとおりである。 (1)対 象学生 天理大学人間学部人間関係学科生涯教育専攻に入学 した、 9学 年、231人 (男 子 lo6人 女 子 125人 )。 生涯教育専攻は、1992(平 4)年 に開設され、2002(平 14)年 度 まで に11メ の学生 を受け入れている。今回分析の対象としたのは、そのうち手元に 1年 次修了時点での成績 表のある 9学 年である。 -21-

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Page 1: (GPA)に...GPA= 総取得単位数 成績評価がオールAの場合、GPAは3.00となる。天理大学では、学内の奨学金の申請資格にGPAが利用されている。例えば、2~3年

入学者の学業成績から学業成績基準 (GPA)に

度の分析度評価の試み ―

学く

大づ

たと

みも

入試制入試制

岡田龍樹

はじめに

「大学冬の時代」といわれるようになって久しい。その時代の到来の大団円として大学

全入という事態が日前に迫っている。各大学は忍び寄る黒い雲におびえ、時には目をそ ら

しながら、それでもさまざまな改革に手をつけてきた。天理大学も、1998(平 成 4)年の

学部改組を皮切 りに、いくつかの改革を実施 してきた。

大学改革のひとつとして、入試制度改革はポピュラーでありかつ重要な位置を占めてい

る。ここlo年 のあいだに入試制度を変えなかった り、その予定をももたない大学は存在 し

ないのではないだろうか。まずは手っ取 り早 く取 り組める改革だからかもしれない。しか

し、それゆえに、入試制度改革は流行や思い込みにもとづいた場当た り的、恣意的な改革

になっていなかったか。大学に学生がいなければ大学ではありえない。学生の確保に直接

的に対処するとともに、学生の入学後の教育と進路指導の体制にも関わっている。入試制

度改革が重要なわけである。

本研究は、入学生の学業成績データにもとづいて、入試制度の評価を試みるとともに、

改革の方向を探ることを目的としている。一般論としての入試制度の改革案ではなく、極

めて個別的事例的な入試制度評価による入試制度改革の方法の試案である。

1.データ

本研究に使用するデータは、以下のとお りである。

(1)対 象学生

天理大学人間学部人間関係学科生涯教育専攻に入学 した、 9学年、231人 (男子lo6人 、

女子125人 )。

生涯教育専攻は、1992(平成4)年 に開設され、2002(平 成14)年度までに11メ胡の学生

を受け入れている。今回分析の対象としたのは、そのうち手元に 1年次修了時点での成績

表のある 9学年である。

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Page 2: (GPA)に...GPA= 総取得単位数 成績評価がオールAの場合、GPAは3.00となる。天理大学では、学内の奨学金の申請資格にGPAが利用されている。例えば、2~3年

専攻の入学定員は20人であるが、 9学年を平均すると各学年約27人 の入学者を得ている

ことになる。学年の特定をできるだけ避けるため、 9学年のそれぞれをクラスとして分析

の単位とし、入学年次の早い順からXl、 X2、 X3、 、、X9と表記することとした。

(2)入試形態

①指定校入学試験 【指定校 と略記。以下同様。】

11月 実施。天理大学の系列 2校からの入試。 2校から受験を希望する生徒が各校の調

整を経て受験する。2003(平 成15)年度入試から「天理高等学校・親里高等学校推薦」と

名称を変更 し、定貝枠に応 じて両校長が生徒を推薦する方式になった。募集定員はXlが

8人、それ以降は 4人。

②推薦入学試験専願制 【推薦 (専 )】

11月 実施。天理高校・親里高校以外の一般の高校からの推薦入試。原則 として合格者

は必ず入学することを前提としている。高等学校長による推薦と自己推薦 (一芸一能)を

実施していたが、併願制の導入とともに自己推薦型は人間学部では廃止された。分析では、

まとめて取 り扱っている。2003(平 成15)年度入試から、専願制はなくなっている。調査

書、面接、外国語 (英語)も しくは小論文による評価で選抜する。 募集定員はX2~ X5

が 6人、それ以降は 3人。

③推薦入学試験併願制 【推薦 (併 )】

11月 実施。天理高校・親里高校以外の高校からの学校長推薦入試。他大学との併願を認

め、合格後に入学辞退できることを前提としている。調査書、国語もしくは外国語 (英語 )

の科 目試験により選抜する。分析データでは、併願制はX6か ら始まっている。2003(平

成15)年度から推薦入試はこの併願制に一本化された。募集定員は 3人。

④一般入学試験 【一般入試】

2月 、 3月 実施。 2月 (前期 日程)の試験は 2日 間行われ、同一専攻への重複受験が可

能である。第 1日 目は国語、外国語 (英語)の 2教科 2科 目指定による試験で、第 2日 目

は国語、外国語 (英語 )、 世界史・日本史の 3教科の中から得意 2科 目を選択 して受験する。

3月 (後期 日程)は国語・外国語 (英語)の 2教科の中か ら得意 1科 目を選択 して受験

する。後期 日程の入試は、併願制同様 X6以降の分析データに加えられている。募集定員

は前期 日程 8人、後期 日程 2人。

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Page 3: (GPA)に...GPA= 総取得単位数 成績評価がオールAの場合、GPAは3.00となる。天理大学では、学内の奨学金の申請資格にGPAが利用されている。例えば、2~3年

このほかに、伝道者入試 【伝道者】、社会人入試 【社会人】、留学生入試 【留学生】、帰国

生徒入試がある。それぞれ、まだ入学者が少数であるため、統計的意味づけが不可能であ

り、本人が特定される可能性もあるので、入試形態 としての分析対象からは除外した。ク

ラス平均を算出する際にはデータに加えている。

また、編入学試験は 1年次の成績がないので、データに加えていない。

(3)学業成績

1年次取得単位の学業成績基準 (GPA=Gradc Point Avcragc)

GPAは 、評価A(4憂 )の取得単位合計に 3を 、以下、評価 B(良 )に 2を 、評価 C(可 )

に 1を 乗 じた (掛 けた)も のの合計を「総取得単位ポイン ト数」とし、それを「総取得単

位数」で除して (割 つて)算出した。

算出式は

総取得単位ボイント数 (A=3、 B=2、 C=1)GPA=

総取得単位数

成績評価がオールAの場合、GPAは 3.00と なる。

天理大学では、学内の奨学金の申請資格にGPAが 利用 されている。例えば、 2~ 3年

次生に給付される「天理大学奨学金」の成績基準は、前年度の修得単位数が32単位以上で、

GPAが 2.0以上とされている。ただし、奨学金申請では履修登録単位数を分母とするた

め、F(不合格 )、 不足 (出席 )、 欠席 (試験)が、それぞれ 0ポイントとして計算に加え

られている。これ らの成績評価があると、算出式の分母が大きくな り、結果的にGPAは

下がることになる。

本研究の分析では、 F、 不足、欠席は除外 し、 A、 B、 Cの評価が与えられた単位のみ

を算出の対象とした。大学が正式に発行する成績証明書は、取得した単位の成績評価のみ

が記載されるので、そ うした資料からは 1年次で落とした単位の状況を把握できない。今

後、本研究のような分析を発展させていく際に、サンブル数を確保 しやすい条件を設定す

る必要があると考え、成績証明書の記載形式か ら得 られる情報を基本とした。

また、今回の分析は入試制度と入学生の学力との相関関係を、大学入学後の学業成績に

もとづいて考察することを目的としているため、データは 1年次の成績に限定した。入学

後の乗境の変化による影響ができるだけ少ない必要があると判断したからである。

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Page 4: (GPA)に...GPA= 総取得単位数 成績評価がオールAの場合、GPAは3.00となる。天理大学では、学内の奨学金の申請資格にGPAが利用されている。例えば、2~3年

(4)取得 (履修)科目

1年次に履修できる単位は上限が60単位と決められている。分析の対象となった231名

の平均取得単位は52単位であった。

現在、 1年次には必修科 目が26単位ある。

天理教科目 4単 位

外国語科 目 4単 位

保健体育科目 2単 位

専門教育科目 16単 位

人間関係学概論 (4)教育学概論 (4)生涯学習概論 1・ 2 (4)教育思潮 (教育と人権) (2)社会教育特講 I(社会の変化と生涯教育) (2)

上記に加えて、専門教育科 目 (人 間論 1~ 6、 臨床心理学概論、社会福祉学槻論、図書

館概論等)を 8~ 12単位程度、一般教育科 目 (人文 。社会・自然・総合)を 16~ 24単位程

度を履修しているのが標準的な 1年次生である。

1年次取得総単位数に占める専門教育科 目の単位数は約 4割である。

2.分析の結果

(り 性別・クラス別GPA

全クラスの性別および全体のGPA平 均値を示したのが表 1で、男女別 GPA平 均値の

経年変化をグラフにしたものが図 1で ある。

231人全員のGPA平 均値は2.20で、3.00か ら1.16の 範囲に分散している。

男女別では、全クラスのGPA平 均値が、男子2.07、 女子2.31で 、女子がo.24ポイント

上回っている。女子の成績が男子の成績よりも良いという傾向は、すべてのクラスについ

てあてはまっている。クラス内の男女差が、もっとも小さいのはX4の o.o4で 、もっとも

大きいのはX5の o.44で ある。

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表 1 性別・クラス別 GPA平 均値

男子GPA平均

女子GPA平均

全体GPA平均

クラス

Xl 1.72 1.98 189

X2 2.18 2.32 2.23

2.27 2.24X3 2.17

X4 2.22 2.26 2.25

X5 1.89 2.33 208

2.03 2.26 2.15X6

X7 1.98 2.29 2.15

X8 2.15 2.52 2.41

X9 2.22 2.54 2,35

全クラス

CPA平均

Rangc

N

207

2.90-1.16

106

2.31

3.00-1.57

125

2.20

3.00-1.16

231

― 男子

―― 女子

―全体

図l GPA平 均値の経年変化【男女別】

3

2.5

0.5

 

 

 

型矧畔<住o

09X8X7X6X

X5雰

4X3X2XX

/ ▼

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クラス別では、Xlが全体平均との差がo.31ポイントともっとも低 く、X2~ X4が 全

体平均を上回り、X5~ X7が平均を下回 り、再びX8~ X9で平均を上回つている。女

子の経年変化から右肩上がりのようにも見えるが、全体では、Xlを除くとすべて2.00か

ら2.50の あいだに収まっている。

(2)入試形態別・クラス別GPA

各クラスごとに入試形態別のGPA平 均値を示 したのが表 2である。

表 2 入試形態別 ,ク ラス別 GPA平 均値および入試倍率

クラス推薦 (専 )

GPA I倍率

推薦 (併 )

GPA I倍率

指 定 校

GPA I倍率

一般入試

GPA 倍率

全入試

GPA

Xl 1.89 1 1.0 1.84 1 6.0 1.89

X2 2.20 i 5,0 2.37 i 2.5 22 20.8 2.23

X3 4つ4

●4 6.8 2.10 1 2.3 2.29 4.6 2.24

X4 2.3413.5 1.9510.5 2.26 6.6 2.25

X5 2.15 18 2.22 1.0 200 3.4 2.08

X6 2.01 1 7,3 1.99 1 14,0 224 1.8 2.26 1 13.8 2.15

X7 2.22 2.3 2.31 4.7 2.03 1 2.0 2.09 4,6 2.15

X8 2.45 4.7 2.02 i 37 .62 244 4.7 2.41

X9 2.28 1,0 2.44 2.32 ■0 2.26 4.9 2.35

全体

人数

2.24

46

215 1

17

2.17 1

36

2.181

126

2.20

231

注)1.倍率は募集定員に対する受験者数にもとづく「見かけ倍率」である。

2.全入試のGPA平均値および人数には留学生、伝道者、社会人を含んで

いる。

①入学者数の割合

入学者数は、一般入試 (126人 )が もっとも多く全体の約半数 (54.5%)を 占めてお り、

推薦 (専)46人 (19.97ο )、 指定校36人 (156%)、 推薦 (併)17人 (7.4%)の順になって

いる。

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②入試形態別の入学者成績

全体のGPA平 均値を入試形態別に見てみると、全入試のGPA平均値2.20を 上回つて

いるのは推薦 (専)の 2.24の みである。以下、一般入試2.18、 指定校217、 推薦 (併 )

2.15と続いている。

③入試倍率と入学者成績

倍率は、実質倍率 (合格者数■受験者数)ではなく、見かけ倍率 (入学定貝■受験者数 )

であり、倍率の大きさはその年の受験者の多寡を示している。

倍率とGPA平 均の関係を見てみると、推薦 (専)の場合、X6(7.3倍 :2.01)と X

5(1,o倍 :2.28)の ように明らかにGPA平 均値が逆転している例があり、受験者の多

い年の入学生が少ない年の入学生よりも成績がよいとはいえない。

同様に、推薦 (併)においても、例えばX6(14.0倍 :1.99)と X9(3.0倍 :2.44)に

明らかなように、感ずしも倍率が高い年の入学生のGPA平 均値が高いというわけではな

ヤゝ。

一方、一般入試の場合、一般入試全体のGPA平 均値2.18を下回っているのがGPA平

均値の低い順にXl(6.0倍 )、 X5(3.4倍 )、 X7(46倍 )の 3ク ラス、上回っているの

がGPA平 均値の高い順にX8(4.7倍 )、 X3(14,6倍 )、 X6(13.8倍 )、 X4(6.6倍 )、

X9(49倍 )、 X2(20,8倍)の 6ク ラスである。倍率の序列 とGPA平 均値の序列は一

致しないが、受験者の多い年は比較的入学者の成績がよいと言えるかもしれない。

④推薦における倍率の運動

推薦 (専)と推薦 (併 )の倍率は、ほぼ相関関係があつて、倍率の高低は連動している。

X6は推薦 (専)が 73倍 、推薦 (併)が 14.0倍でともに最高倍率であり、X9は推薦 (専 )

が10倍 、推薦 (併)が 3.0倍でともに最低倍率である。

⑤入試形態別の入学者成績の範囲 (rangc)

それぞれの入試形態におけるGPA平均値の範囲 (rangc)は 、指定校がo.73(2.62-

189)で最も大きく、一般入試0,60(2.44-1.84)、 推薦 (併 )0.45(2.44-1.99)、 推薦 (専 )

0.44(2.45-2.01)の順に小さくなっている。

⑥一般入試による入学者成績の経年変化

一般入試による入学者成績の経年変化を全入試と比較したものが図 2である。

一般入試の入学者数は全体の約半数を占めるため、全入試のGPA平均値に影響を与え

ており、経年変化はどちらもほぼ同じ軌跡を描いている。

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図4入試形態別GPA平均値の経年変化【指定校】

0

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不本意入学者が少ないと考えられ、それが入学後のモラールの高さにつなが り成績に反映

しているのかもしれない。さらに、入学者成績の範囲 (rangc)も もっとも小さく粒がそ

ろっている。

それに対 して、推薦 (併 )の成績が 4つ の入試形態のうちでは低かった。推薦 (併 )は、

一般入試 とともに、他大学との関係で入学者が決定されるといういう意味で入学者像が読

みにくい入試である。入学決定時期が早いので (11月 中旬 )、 入学後の学業に備えて入学

前教育を導入する必要があろうと思うが、併願では引きつけにくい。いずれにせよ、まだ

推薦 (併 )のサンブル数が少ないので、今後データの蓄積と分析が必要である。2003(平

成15)年度入試から推薦は専願がなくな り併願のみになったため、これか らデータの数が

増えてくる。分析の結果によっては、入試制度を再考 しなければならなくなるかもしれな

い。

一般入試は入学定員の半分を占めてお り、この入試によって入学 してきた学生が学科専

攻の水準を決定するポリュームをもっている。その意味で重要な入試制度である。しかし、

2009(平成21)年 といわれる大学全入時代が到来すると、入試倍率と入学者成績の相関関

係は意味をなさなくなる可能性がある。ますます入学者像が読みにくくなる。その入学者

が大きなポリュームをもち続けて学科専攻の水準を決定するという入試制度のあり方は、

今後検討を余儀なくされるのではないだろうか。

指定校入試は、入学者成績にばらつきがあった。これは優秀な入学生を獲得できる可能

性をもっているということである。それぞれの学科専攻の専門内容をよく理解 してもらい、

大学 4年間の教育成果をあげるとともに、そのメリットを主張し説明していく必要がある。

これはすべての入試形態に通じたことであるが、まずは「足下か ら」であろう。系列校か

ら受け入れられなくて、一般校から理解されるとは考えにくい。2003(平 成15)年 度から、

大学は学科目による選抜試験を行わず、高校に提示 した調査書の評定平均にもとづいて、

高校が募集定員数を推薦することとなった。ますます大学側の努力が必要になってきたの

である。

おわりに

今回分析 したデータとは別に、あるひとつのクラスについて卒業時における成績評価を

含めて推移を追跡した。その結果、 1年次の成績と、卒業時の全科 目成績および専門教育

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科 目成績との間に相関関係が認められた。

1年次の成績 (GPA)に よるクラス内序列にしたがって、上位10人 を上位層、下位 10

人を下位層、上位と下位にそれぞれ 2人ずつ重複させた中位11人 を中位層としてカテゴラ

イズし、卒業時の全科 目成績順位と、専門教育科 目成績順位についてカテゴリー間の移動

を確認 したのが表 3で ある。

表 3 1年 次成績と卒業時全科目成績・専門科 目成績の関係

1年次

成績順位

卒業時全科 目成績順位

卒業時専門教育科 目成績順位

1~ lo位

10名2名 2名

9~ 19位

11名

1名

2名

1名

1名

18~ 27位

10名免 職 2名

表に示されたとお り、 1年次の成績順位から他のカテゴリーヘ移動 したのは、 2~ 3人

で、しかもひとつ隣のカテゴリーに移動しただけであった。中位層を飛び越えて、下位層

か ら上位層へ上昇 した者、上位層か ら下位層へ下落した者はいなかった。このことから、

このクラスにおいては、 1年次の成績にもとづく上中下層はおよそ 8割 の確率で卒業まで

固定されていたことがわかる。すなわち 1年次の成績は、その後の大学の学業成績に影響

をもっていたのである。

本研究では、入試形態と学業成績の関連を分析するために、あえて 1年次生の成績にデ

ータを限ったが、入試形態は大学における学業成績全般に関連している可能性がある。こ

のことからも 1年次の教育指導が重要であることがわかる。今後、データを卒業時点の成

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