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1 楽天株式会社 技術理事 よしおかひろたか ハッカー中心の企業文化 を日本に根づかせる DevLOVE, 4/23/'11 @楽天 2号館

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縦サミ創発、再び。 −世界は変わった。デベロッパーはどうか?−http://kokucheese.com/event/index/9778/#devlove0423

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楽天株式会社 技術理事 よしおかひろたか

ハッカー中心の企業文化を日本に根づかせる

DevLOVE, 4/23/'11

@楽天2号館

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アジェンダ

• 民族誌的な自己紹介

• ハッカー中心の企業文化とは

• なぜ、それが必要か

• 日本で根付かせるためには

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今日のゴール

• 自分が素晴らしいと思っている事(企業文化とか)を紹介する

• それを実現するためにどうしたらよいのかみなさんと考えるきっかけをつくる。

• 技術者がゆたかで活き活きとした社会を作るにはどうしたらいいのだろうか?

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今日のゴール

• 3月11日の震災がわたしたちにとってどのような意味があったのかを考えたい

http://twitpic.com/49l9p2

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楽天イーグルスの開幕戦がNew York Timesの一面を飾った。

http://www.nytimes.com/2011/04/13/sports/baseball/13opener.html?_r=1

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本日のハッシュタグ

• #hccjp – Hacker Centric Culture Japan

• #devlove #devlove0423

• #devsumi

• @hyoshiok

http://twitter.com/#!/hyoshiok/status/36707387737903104

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自己紹介

• よしおかひろたか

• 楽天株式会社、技術理事

• http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok• コミュニティ活動

– カーネル読書会主宰者

– 勉強会勉強会

• DEBUG HACKS (共著)、 ISBN9784873114040

5刷が決まりました

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情報処理2011, vol. 52, No.4.5

全国技術系勉強会マップ~技術者のライブセッションに

参加しよう~

http://d.hatena.ne.jp/hyoshiok/20110227#p1デブサミで『ハッカー中心の企業文化を日本で根付かせる』という講演をしてきた

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自己紹介

• 1984年、慶応義塾大学大学院修了

• 1984年、日本ディジタルイクイップメント研究開発センタ株式会社入社– 昔DECという会社があった。

– ソフトウェア・エンジニアとして入社した。

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DECのエンジニアリング文化

• わたしのエンジニアリング人生に影響を与えたDECの文化を紹介する。– ミッドナイトプロジェクト (スカンクワークス)

– 社内コンピュータネットワーク

– 情報共有

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自己紹介

• 民族誌的な…

• 民族誌 (ethnography) 特定の民族や集団の文化・社会に関する、フィールドワークに基づいた具体的な記述(広辞苑)

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民族誌 ethnography

• 未開の文明ではなく、コンピュータ業界のソフトウェア開発現場のフィールドワーク– 組織文化を理解するために

– 組織文化を記述するために

– そしてよりよい組織文化を作るために

– 組織文化は通常外部からは伺いしれない(転職などで緩やかに知られていく)

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民族誌

●その文化では当たり前のことを記述する

●勉強会を当たり前だと思っている。● それはなんなのか

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Digital Equipment Corp - DEC

Ken Olsen, the founder Digital Equipment Corporation, 1926-2011

1957 – 1998

The second largest computer vendor in 1980’s

新卒で入社(1984)して、約10年所属した。

1998年にCOMPAQが買収して、今はHP

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DECのエンジニアリング文化

• DECのエンジニアリング文化の特徴。– ミッドナイトプロジェクト (スカンクワークス)

– 社内コンピュータネットワーク

– 情報共有

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DECのエンジニアリング文化

• ミッドナイトプロジェクト (スカンクワークス)

• 業務とは別に、予算人員などを確保せずに独自に行うプロジェクトのこと。

• 業務時間の10%~20%(目安)を業務外の作業にあてることが黙認されていた。(むしろ奨励されていた)

• Googleの20%ルール

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DECのエンジニアリング文化

• 社内コンピュータネットワーク (E-net)

• すべてのコンピュータが一つのネットワークで結合していた。(スタンドアロンでは使わない)。80年代では特殊。

• 私企業が持つ世界最大のコンピュータネットワーク。(数万台)

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DECのエンジニアリング文化

• 情報共有

• VAX Notes/社内コンピュータネットワーク掲示板

• ありとあらゆることが議論されていた– 開発中の製品情報、バグ情報、サポート情報

– 業務に関係あることないことなんでもかんでも。開発日誌とかも。

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DECのエンジニアリング文化

• 暗黙的にも明示的にも価値観を共有–管理よりも自由、自主性の尊重

– なんでもやってみる

– 情報の共有

– エンジニアリングの会社

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統制の手法

• 強制的統制– あからさまな権力、力関係

• 功利的統制–給料やボーナス、地位など

• 規範的統制– 組織の価値観、イデオロギー

民族誌というのは植民地を支配するために利用さ

れていた

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すぐれた民族誌

• 超マシン誕生– ISBN9784822284329

• 闘うプログラマ– ISBN9784822247577

• iモード事件– ISBN9784048836333

フィールドワークは冒険だ。帰還したエスノグラファーは英雄だ。「洗脳するマネジメント」ISBN9784822244675

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おまけ:自己紹介、年表

• 1984、日本DEC入社• 1988、結婚• 1989、ベルリンの壁崩壊• 1989~1990、米国DEC出向• 1990、娘誕生• 1994、日本オラクル入社• 1995、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件• 1995~1998、米国Oracle出向• 1998、Netscapeソースコード公開、DECがCompaqに買収される• 1999、第一回カーネル読書会• 2000、Miracle Linux創業• 2002、未踏ソフトウェア創造事業• 2008、楽天テクノロジーアワード受賞• 2009、楽天入社• 2009、第100回カーネル読書会• 2011、東日本大震災

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アジェンダ

• 民族誌的な自己紹介

• ハッカー中心の企業文化とは

• なぜ、それが必要か

• 日本で根付かせるためには

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ハッカー中心の企業文化

• ハッカーって– コンピュータ技術に精通した人(辞

書的な定義)

– ちょっとした技巧(ハック)を操る人

– 社会を変えた人

– (なんでもかんでもハッカー?)

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ハッカー中心の企業文化

• ハッカーって– コンピュータ技術に精通した人(辞

書的な定義)

– ちょっとした技巧(ハック)を操る人

– 社会を変えた人

– (なんでもかんでもハッカー?)

行動するエンジニアになりたかった

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ハッカー

• 共通の価値観

• 企業文化

• どう根付かせるか

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ハッカー倫理

• スティーブン・レビー「 ハッカーズ 」で次のように記している。ISBN978-4875931003

• コンピュータへのアクセス、加えて、何であれ、世界の機能の仕方について教えてくれるものへのアクセスは無制限かつ全面的でなければならない。実地体験の要求を決して拒んではならない。

• すべての情報は自由に利用できなければならない。• 権威を信用するな--反中央集権を進めよう。• ハッカーは、学歴、年齢、人種、地位のような、まやかしの基準ではなく、そのハッキングによって判断されなければならない。

• 芸術や美をコンピュータで作り出すことは可能である。• コンピュータは人生をよいほうに変えうる。• 60年代~70年代の民族誌

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共通の価値観

• コンピュータによって社会をよくする

• 管理より自由、反権威的

• ラフなコンセンサスと動くコード

• 許可を求めるな、謝罪せよ

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事例:Yahooに起きてしまったこと

• ポールグレアム、Yahooに起きてしまったこと http://d.hatena.ne.jp/lionfan/20100815#1281830975

• (Yahooの問題は)簡単に儲かりすぎてしまったことと、ハイテク企業になろうという強い意志がなかったことだ。 – Yahooには最初から「ハイテク企業になろう」という強い意志が欠けていた。

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• どんな企業にはハッカー中心の文化が必要となるのだろう?

• 「良いソフトウェアを必要とするすべての企業」– Yahooが発見したように、このルールが適用される領域は、ほとんどの人々が思っているより広い。

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ハッカー中心の文化

• インターネット時代のソフトウェア開発–最高のプログラマを雇う

–少数精鋭–最高のプログラマは最高のプログラマと働きたがる

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なぜ必要か

• 共通善(社会をよくする)

• 企業の競争力

• ベストプラクティス

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なぜ必要か

• ハッカー中心の企業文化の方が、自分には心地良いから(利己的な理由)

• その他の理由は、偉い人に説明するための理屈。– 共通善(社会をよくするという価値観の共有)

– 企業の競争力(会社がつぶれたら元も子もない)

– ベストプラクティス(ソフトウェアを楽しく作る。デスマーチ知らず)

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なぜ必要か

• ハッカー中心の企業文化の方が、自分には心地良いから(利己的な理由)

• その他の理由は、偉い人に説明するための理屈。– 共通善(社会をよくするという価値観の共有)

– 企業の競争力(会社がつぶれたら元も子もない)

– ベストプラクティス(ソフトウェアを楽しく作る。デスマーチ知らず)http://d.hatena.ne.jp/LibrePDM/20110301 

「ハッカー中心の企業文化」を偉い人に説明する

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どう企業文化を作るのか

• 企業文化は、暗黙的、明示的につくられる。

• 外から知られることはない。(民族誌が必要)

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どうハッカー中心文化を作るか

• 暗黙知の継承–材料:パッション、仲間

–方法:勉強会、ランチ、飲み会、合宿

• 形式知の継承– 戦略、ガイドライン、ルール

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文化の衝突

• 商用ソフトとオープンソース

• レガシーとWeb2.0

• ウォーターフォールとアジャイル

• 高い稼働率とスケーラビリティ

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組織の限界

• 組織が肥大化すると–蛸壺(他の事業部なにする人ぞ)

–横串(クロスファンクション)は言うほど簡単ではない

• 文化の融合が必要、対立ではなく

• そこで、社内コミュニティ

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社内コミュニティ

• コミュニティ・オブ・プラクティス• 組織:縦割り• プロジェクト:横串• 社内コミュニティ:縦でも横でもない–志を共有するメンバーによってドライブ

– コミュニティは組織を活性化するビタミン

• そこで勉強会

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勉強会の隆盛

300件/月以上開催

id:hanazukinと愉快な仲間達による人力作業によって編集公開されている。

IT勉強会カレンダー

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勉強会のイメージ

• 主催者が個人的興味の延長で開催• ボランティアによって運営• 無償ないしは廉価

–商用セミナー、教育コースとの違い

• 技術者の人的ネットワーク、知識獲得のプラットフォーム、キャリア形成のツール

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事例:カーネル読書会

• Linuxおよびオープンソース技術に関する勉強会– 1999年4月から。10年続いている。

• 第100回開催した。Linusも参加してくれた。

– 中学生から50代まで、素人からカーネルハッカーまで、毎回数十人参加

– よしおかが主宰。横浜Linux Users Group (YLUG)有志と運営http://ylug.jp

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社外勉強会を社内で開催

• 楽天でカーネル読書会を開催した– 大変だったこと

• 申請書類がいっぱい。(空調、ゲストカード、イベント申請、エレベータ、会場、開錠…)

• 社内ワークフロー、誰に何を頼めばいいかわからない

– うれしかったこと• ボランティアがいっぱい立候補してくれた(多分10人以上)楽天カーネル隊を結成♪

• 社内ワークフローとか、教えてくれる人がいた• エライ人が理解を示してくれた(社内スポンサー)• ビアバッシュ(ピザとビールのパーティ)ができた

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カーネル読書会@楽天

• 社外勉強会を社内でやると…• メリット(社員にとって、会社にとって)

– 自社での開催なので、参加の敷居が低い。最新技術動向の入手。議論の場の提供。外部からの刺激による開発者の活性化。モチベーションアップ。外部人材との交流。企業イメージ向上。

• リスク、コスト– 情報流出⇒会場以外には入れない– 会場提供⇒直接的な費用はほとんど発生しない– 勤務時間外⇒コストはほとんどかからない

• メリット>コスト

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楽天社内コミュニティ

• ジャングル– LT大会– 開発合宿

• 勉強会(社内、社外)

• 楽天テクノロジーカンファレンス実行委員会• クリーンナップ大作戦• ランチ~(カフェテリアを利用したカジュアルなミーティング)

• 勉強会同好会

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楽天TechTalk  毎月第3水曜日

レポート 80views

動画 100views

資料勉強会 40~50人参加

勉強会

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技術者として

• オープンイノベーションの時代– 社外に価値の源泉を求めざるをえない

– 会社に閉じこもっていてはいけない

– コミュニティ的なノリ

• 技術は会社のものではない、社会のものだ– 社会をよくしていくという価値観

– コミュニティという道具

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大規模社外カンファレンス

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2010年4月 丸山先生レクチャーシリーズ第3回@楽天

来場者数、約500名 Ustreamの視聴者数=544名

 事務局運営スタッフ(ボランティアで運営)

勉強会

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Innovation Sprint 2011

2011年1月13日(木)

基調講演Roots of Scrum一橋大学 名誉教授 野中 郁次郎 氏Chairman, the Scrum Training Institute ジェフ・サザーランド 氏参加者360名ほど。ボランティアによる実行委員会コミュニティによる価値の創造

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勉強会:事例

(よしおかの勉強会第一の法則)

勉強会の法則

「開催のメリット > 開催のコスト」

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勉強会をテコに

• モチベーションアップ

• 暗黙知の流通

• 人との出会い(同じ会社であっても)

• 組織の壁の破壊

• 新しい技術知識などを得ることはむしろ副次的な効果

• 勉強会を通じて「技術の横串」をとおすコミュニティをつくる

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もうひとつの方法

• 勉強会は極めて属人的– 情熱と仲間が必須

–暗黙知の共有

• 戦略、ガイドライン、ルール– 理事の立場を利用して、

– OSS戦略の策定

– コミュニティアライアンスプラン策定

– 社内ルール作り

–形式知を共有

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日本で根付かせるために

• ハッカー中心の企業文化の理解– 民族誌的なアプローチ

• 価値観の共有– コミュニティ

• 方法論– 勉強会、ランチ、飲み会、…、

(暗黙知)

– 戦略、ガイドライン、ルール、(形式知)

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Project60 電力使用量40%削減の取り組み

http://corp.rakuten.co.jp/csr/ecology/project60/

震災が組織を変えるチャンス

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• エンジニアとして、社会をよりよくしていきたい。

• そのために、ハッカー中心の企業文化を日本に根付かせたい

• それが自分が幸せになる道だと思っている。