(2)農業の復旧・復興に向けた取組状況...6県計 8,310 5,610 4,990 2,570 21,480...
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(2)農業の復旧・復興に向けた取組状況
平成23(2011)年6月24日、東日本大震災からの復興に向けた基本理念や基本的施策を定めた「東日本大震災復興基本法」が公布・施行されました。国は、同年7月29日に、同法の規定に基づき、東日本大震災からの復興に向けた国による取組の基本方針として「東日本大震災からの復興の基本方針」(以下「復興基本方針」という。)を策定しました。
ア 農業の復旧に向けた取組(農地・農業用施設の復旧に向けた取組)
農林水産省は、復興基本方針に示された農業・農村の復興の方向性を進化・具体化するため、平成23(2011)年8月26日に、「農業・農村の復興マスタープラン」(以下「マスタープラン」という。)を策定しました。マスタープランにおいては、津波被災農地についておおむね3年間(平成26(2014)年まで)での復旧を目指すという農地の復旧スケジュールと復旧までに必要な措置を明確化するとともに、東北を新たな食料供給基地として復興することを目指すこととしています。中でも、農地の復旧・整備については、農地の被害状況に応じた復旧可能性を類型化した上で、被災した農地全てを原形復旧する場合の工程を検討し、営農再開が可能と見込まれる時期を示しています(表1-1-4)。
表1-1-4 年度ごとの営農再開可能面積の見通し(単位:ha)
平成23年度(2011)
24(2012)
25(2013)
26(2014) その他 計
岩手県 10 220 140 350 10※1 730宮城県 1,220 5,450 4,120 3,440 110※2 14,340福島県 60 400 1,350 1,200 2,450※3 5,4603県計 1,290 6,070 5,610 4,990 2,570 20,530青森県、茨城県、千葉県計 810 140 - - - 9506県計 8,310 5,610 4,990 2,570 21,480割合 39% 26% 23% 12% 100%
資料:農林水産省「農業・農村の復興マスタープラン」(平成24(2012)年4月20日版)より作成注:1)※1は農地の転用等により復旧不要となった地域、※2は海水が侵入しているなど被害が甚大な農地の一部で、別途復旧工法等の検
討を進める地域、※3は農地の転用等により復旧不要となった地域100ha、大区画化に伴い工期を要することが予定されている地域230ha、東電福島第一原発の事故に係る警戒区域及び新たな避難指示区域の農地面積2,120ha。
2)平成24(2012)年度の営農再開可能面積には、平成24(2012)年度当初に除塩等を行う予定の農地を含む。3)岩手県の平成25(2013)、26(2014)年度の区分は、「平成23年度 復興実施計画の施策体系・事業に基づく進捗状況(暫定版)」(平成24(2012)年3月、岩手県復興局)に基づくもの。
また、復興庁は、関係省庁等の協力の下、平成24(2012)年5月18日、各府省が所管する復興施策に関する当面の事業計画や業務の工程表を「事業計画と工程表」として取りまとめました。この「事業計画と工程表」において、津波被害を受けた基幹的農業用施設の本格的な復旧については、各地域における復興計画の策定を踏まえて順次実施し、平成23(2011)年からおおむね5年間での完了を目指すこととしています(図1-1-2)。
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第1節 地震・津波による被害と復旧・復興に向けた取組
図1-1-2 復興施策の工程表(農地・農業用施設)
4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月 4月 7月 10月 1月平成23年度 24 25 27以降26
基幹的農業用施設
農地
本復旧(市町村策定の復興計画、他事業等との調整が完了したか所から順次着手)応急復旧
土砂撤去、除塩、畦畔の復旧 順次営農再開(地域の意向により、区画整理を実施)
営農再開(地域の意向により、区画整理を実施)
がれきの撤去
がれきの撤去
営農再開(地域の意向により、区画整理を実施)
土砂撤去、除塩、営農再開に必要な生産基盤の全面的な復旧等がれきの撤去順次営農再開(地域の意向により、区画整理を実施)
用排水施設の機能が確保され、平成23年度当初までに除塩を行い、既に営農が可能となった農地
ヘドロ等が厚く広範囲に堆積し用排水路等の損傷も著しい農地や地盤沈下により一旦水没し耕土の損傷が著しい農地
ヘドロ等が厚く又は広範囲に堆積し、畦畔等も損傷している農地
ヘドロ等が薄く又は部分的に堆積している農地
がれきの撤去
畦畔復旧、除塩
土砂撤去、除塩、用排水施設の機能確保等
資料:農林水産省作成注:地盤沈下等により海水が侵入している農地や、大区画化の工事を行う農地については、平成26(2014)年度以降となる場合がある。
これらを踏まえ、農林水産省では、被災農地・農業用施設等の復旧を進めており、農地・農業用施設等の災害復旧事業については、平成23(2011)年度以降、津波被災地域5地区(定
じょう川かわ、仙台東、名
な取とり
川がわ、亘
わた理り山やま元もと、亘理・山元農地海岸1)、地震被災地域6地区(迫
はざま川がわ上流・荒
あら砥と沢ざわダム、迫川上流、河
か
南なん、白
しら河かわ矢や吹ぶき、阿武隈川上流、芳
は賀が台地)を国の直轄事業として実施しています(図1-1-3)。なお、地
震被災地域のうち、迫川上流・荒砥沢ダム、迫川上流地区については平成23(2011)年度内に事業を完了し、残りの4地区については平成24(2012)年度内に災害復旧の工事を完了しました。このほか、平成24(2012)年4月16日に福島県南
みなみ相そう馬ま市しの一部地域における警戒区域が解除され
たことから、福島県からの要請を受け、11月から谷や地ち排水機場、塚原第二排水機場、村上第二排水機
場の応急復旧について、国の直轄事業として実施しました。
図1-1-3 直轄特定災害復旧事業の実施地区
宮城県
福島県 凡 例直轄特定災害復旧事業実施地区(津波被災地域)
直轄災害復旧事業実施地区
代行海岸保全施設災害復旧事業実施地区
仙台東
亘理山元
名取川
亘理・山元農地海岸
迫川上流・荒砥沢ダム
迫川上流
白河矢吹(羽鳥ダム)
阿武隈川上流(西郷ダム)
河南
定川
芳賀台地
南相馬市
農地の湛水状況(1)
農地の湛水状況(2)津波による被災範囲津波襲来後の湛水範囲応急復旧対象施設
塚原第二排水機場
村上第二排水機場
谷地排水機場福島県
(全ての実施地区) (うち南相馬地区の概要)
資料:農林水産省作成
栃木県
南相馬
1 農地を保全するために必要な施設等がある海岸。
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第1部
第1章
また、平成23(2011)年度に引き続き、被災農地に農業用水を安定的に供給する農業水利施設1のうち、余震により損壊するおそれのある施設の改修・整備や、東日本大震災により被災した施設や機能が低下した水路の補修等に取り組む活動、甚大な被害を受けた卸売市場の復旧に必要な施設整備等に対する支援が行われました。さらに、平成23(2011)年度に続いて平成24(2012)年度においても、東北3県の支援要請に基づき、農林水産省及び都道府県等から多くの農業土木技術者が被災地に派遣され、災害復旧等の応援業務に従事しています。平成24(2012)年度においては、東北3県に計1,458人月(平成23(2011)年度498人月の約3倍)の技術者が派遣され、農地・農業用施設の復旧工事に係る設計書作成や工事監督等様々な支援業務に従事したこともあり、膨大な復旧工事が着実に進んでいます。
コラム
全国の農業土木技術者による被災地での災害復旧事業の支援活動
東日本大震災により被災した農地・農業用施設の復旧に当たっては、東北3県の要請に基づき、国及び都道府県から多くの農業土木技術者が派遣され、災害復旧等の応援業務に従事しています。このコラムにおいては、平成24(2012)年度に被災地に派遣された農業土木技術者の活動を2事例紹介します。
(1)岡山県庁から宮城県東部地方振興事務所*1に派遣された農業土木技術者の活動岡山県庁の石
いし川かわ真まさ之ゆきさんは、平成24(2012)年4月1日から平成25(2013)年3月31日の1年間、
宮城県東部地方振興事務所において災害復旧等の応援業務に従事しました。宮城県東部地域では約4,300haの農地*2が大きな被害を受けました。特に県営ほ場整備事業大川地
区の長なが面つら工区においては、平成10(1998)年度から行われていた農地の区画整理等の面工事がほぼ
完成していたにもかかわらず、震災による津波と堤防決壊により220haの農地の全域が水没しました。このような中、石川さんは大川地区の災害復旧業務を行い、主に農業用施設の復旧工事の発注、監督及び事業計画変更資料の作成等の支援を行いました。これらの支援業務もあり、長面工区は平成24(2012)年6月に堤防の仮締切が完了し、同年8月からは復旧した長面排水機場のポンプの運転が再開され、同年10月末には水が引き、約7割のエリアにおいてほぼ干
かん陸りく化しました。
派遣を終えた石川さんからは、「震災から約2年が経過した今も沿岸部は非常に厳しい状況ですが、必ず復旧・復興すると信じています。そして大川地区の復興した姿を必ず見に行きます。」とのコメントが寄せられました。
(2)農林水産省九州農政局から福島県南相馬市に派遣された農業土木技術者の活動九州農政局の佐
さ藤とう浩こう二じさんは、平成24(2012)年7月1日から7月27日の1か月間、福島県南
みなみ相そう
馬ま市し小お高だか区くにおいて支援活動を行いました。
南相馬市小高区は、東電福島第一原発の事故に伴い平成24(2012)年4月まで警戒区域に指定されていました。佐藤さんが活動を行った平成24(2012)年7月は、警戒区域の見直しからまだ間もなかったため、震災発生から1年半近くが経つにもかかわらず、倒壊又は傾いたままの建物や津波により被災した車両が至る所に散見される状況でした。
村井宮城県知事が派遣技術者を激励
1[用語の解説]を参照。
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第1節 地震・津波による被害と復旧・復興に向けた取組
佐藤さんは、福島県庁職員が行っていたため池・農道の被災状況の確認や災害査定の実施に向けた準備作業を引き継ぐとともに、地区内排水のため、小高川の干満に合わせた排水樋
ひ門もんを手動で開閉し
たり、ポンプの運転等も行いました。支援活動を行った期間は、復旧・復興に向けた取組に着手した直後でしたが、倒壊家屋や被災車両の撤去が行われるなど復興に向けた動きが徐々に見え始めました。佐藤さんからは、「復興に向け、たくましく活動している地域の方に逆に元気をいただくこともありました。次の目標は、復興を果たした小高区の「野
の馬ま追おい」見学に行くという派遣先の方と別れ際に
交わした約束を果たすことです。」とのコメントが寄せられました。
*1 石いしの巻まき市し、東ひがし松まつ島しま市し、女おな川がわ町ちょうを管轄。
*2 宮城県全体の被災農地約14,300haの約3割。
【紹介】 「東日本大震災からの復興 平成23年度農業土木技術者の派遣記録」平成23(2011)年度における農業土木技術者の被災地での取組については、平成24(2012)年
8月に全国農村振興技術連盟が派遣記録として一冊の本に取りまとめました。その内容は同連盟のホームページに掲載されています。本書に収められた技術者の努力・叡
えい智ちの記録は、今後の災害への備えとして有益な資料となるば
かりでなく、大震災の災さい禍かとそこからの再生の足取りを風化させずに後世に語り継ぐという観点から
も極めて重要と考えられます。(参考:掲載ホームページURL http://www.n-renmei.jp/hakenkirokuH23/)
(農地・農業用施設等の復旧状況)
津波により被災した農地21,480haについては、損壊か所の農地復旧や除塩を実施しており、平成24(2012)年度春の作付けまでに8,190ha(38%)で営農再開が可能となりました。また、平成25(2013)年度春の作付けまでに13,470ha(63%)で営農再開が可能となる見込みであり、おおむねマスタープランで示されたスケジュールに沿って復旧が進められています(図1-1-4)。平成25(2013)年3月末現在、災害廃棄物(がれき)については、宮城県、岩手県、福島県(警戒区域を除く)の農地1万7,500haのうち、95%(1万6,600ha)の農地において撤去が完了しています。
図1-1-4 東日本大震災からの農業の復旧状況(平成25(2013)年3月末現在)
資料:農林水産省作成
・東電福島第一原発の事故による避難指示区域や津波被災地区等を除き、平成25(2013)年3月までに344地区で復旧が完了。
※津波被災農地については、マスタープランに基づき、被災農地の営農再開に向けて、農地復旧や除塩を実施中。
・応急復旧が可能な主要な排水機場72か所(旧警戒区域を除く)は、平成24(2012)年8月までに応急復旧完了。
・農地海岸については、おおむね5年での復旧を目指す。・応急復旧が必要な25地区は、平成24(2012)年11月までに全て完了。
被害のあった青森県から長野県までの11県の被災地区数→401地区
がれきが堆積していた岩手 県、宮 城 県、福 島 県(警戒区域を除く)の農地→17,500ha
6県(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県)の津波被災農地→21,480ha
本格復旧が必要な農地海岸→127地区
復旧が必要な主要な排水機場→99か所
項目 備考
農地
災害廃棄物(がれき)
農業集落排水施設
主要な排水機場
農地海岸
被害状況 進捗状況
(8,190haで 営農再開可能)
(本格復旧完了又は 実施中:65地区)
5,280haで営農再開が可能となる見込み
0 20 40 60 80 100(%)
38%
(がれき撤去済み:16,600ha)95%
(復旧完了又は本格復旧実施中:70か所)71%
(復旧完了又は実施中:383地区)96%
51%
63%
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第1部
第1章
また、復旧が必要な主要な排水機場については、99か所のうち71%(70か所)が復旧完了又は本格復旧実施中となっています。本格復旧が必要な農地海岸については、127地区のうち51%(65地区)が復旧完了又は実施中となっています。さらに、被災した農業集落排水施設については、11県1401地区のうち96%(383地区)が復旧完了又は実施中となっています。
(農業経営体の経営の継続・再開に向けた取組)
被災した農業者の経営再開を支援するため、平成23(2011)年度から、被災農家等が借り入れる日本公庫等の災害復旧・復興関係資金について、一定期間(最長18年間)実質無利子、実質無担保・無保証人での借入れ2を可能とする措置や、被災市町村が行う農業用機械・施設の整備等に対する支援措置等が講じられています。また、地域農業復興組合を設立し農地に堆積するごみや礫
れきの除去等の経営再開に向けた復旧作業を共
同で行う農業者に対して、経営再開のための支援金を交付し、地域農業の再生と早期の経営再開に取り組んでいます(図1-1-5)。
図1-1-5 「被災農家経営再開支援事業」の概要
ごみ・礫の除去 水路の補修
農地の補修 土づくり
経営再開に向けた復旧作業(例)
実施体制
営農の種類
家畜の種類 支援単価
支援単価(上限)水田作物露地野菜(花きを含む)施設野菜(花きを含む)果樹
乳用牛肉用牛(繁殖経営)肉用牛(肥育経営)
29,700円/頭
182,200円/頭
21,700円~ 59,000円/頭
家畜の種類 支援単価
豚(繁殖豚)
鶏(採卵鶏)
肉用牛(育成経営)
22,400円/頭
12,000円/千羽
10,500円~ 13,200円/頭
3.5万円/10a4.0万円/10a( 7.0万円/10a)5.0万円/10a(14.0万円/10a)4.0万円/10a( 9.0万円/10a)
支援単価
県・市町村
地域農業復興組合※・複数集落で設定・地域の被災農業者(販売農家、農業法人、集落営農等)で構成
作業をした被災農業者
指導・助言
経営再開支援金を交付
事業計画の認定
(1)水田作物・野菜・果樹農作物の作付けが不可能となった農地のうち、共同で復
旧作業を行う際に、作業量に応じて支援金を交付します。
(2)畜産飼養再開に係る共同作業を行う場合に、家畜・家きん
の頭羽数当たりで支援金を交付します。
注:単価の( )内は公共事業によらず、自力で施設の撤去等を行う場合
資料:農林水産省作成※畜産の場合は、牧野組合等の共同作業の内容に応じた組合
(農業経営体の営農再開状況)
東日本大震災により、岩手県は県内の農業経営体の14%(7,700経営体)、宮城県は14%(7,290経営体)、福島県は24%(17,200経営体)、青森県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野県を含めた9県では、全体の7%(37,700経営体)が被災し、農地の塩害、がれきの流入、農業用施設の損壊、農地の液状化等の被害を受けました。東北3県について、被災した農業経営体の営農再開状況をみると、営農を再開している経営体は、平成25(2013)年3月現在、岩手県では97%(7,450経営体)、宮城県では65%(4,710経営体)、福島県では59%(10,100経営体)となっており、平成24(2012)年3月と比べて、それぞれ2ポイント、10ポイント、3ポイント上昇しました(図1-1-6)。
1 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県、新潟県、長野県。2 担保や保証人を徴求する場合にあっては、融資対象物件担保や同一経営の範囲内の保証人のみ徴求。
12
第1節 地震・津波による被害と復旧・復興に向けた取組
このうち、津波の被害を受けた農業経営体の営農再開状況をみると、営農を再開している経営体は、平成25(2013)年3月現在、岩手県では48%(230経営体)、宮城県では58%(3,500経営体)、福島県では20%(570経営体)となっており、平成24(2012)年3月と比べて、それぞれ29ポイント、13ポイント、3ポイント上昇しました。なお、被災した9県、津波の被害を受けた6県1全体では、営農を再開している経営体は、平成25
(2013)年3月現在、平成24(2012)年3月と比べて、70%(26,400経営体)から74%(27,800経営体)まで4ポイント、40%(4,090経営体)から50%(5,070経営体)まで10ポイントそれぞれ上昇しました。
図1-1-6 東日本大震災で被災した農業経営体の営農再開状況(平成25(2013)年3月11日現在)
7,3007,300
7,4507,450
3,9503,950
4,7104,710
9,6209,620
10,10010,100
400400
250250
3,3403,340
2,5802,580
7,5707,570
7,1007,100
平成24年3月(2012)
25年3月(2013)
24年3月(2012)
25年3月(2013)
24年3月(2012)
25年3月(2013)
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000 経営体
営農を再開している経営体 営農を再開していない経営体(不明を含む)
岩手県
宮城県
福島県
平成24年3月(2012)
25年3月(2013)
24年3月(2012)
25年3月(2013)
24年3月(2012)
25年3月(2013)
岩手県
宮城県
福島県
資料:農林水産省「東日本大震災による農業経営体の被災・経営再開状況」注:1)被害の考え方は以下のとおり。
地震や津波による人的被害(経営者や雇用者)、ほ場や水利施設、機械・施設等が損壊するなどの被害(物理的な被害)を対象とした。なお、福島県では区域指定(警戒区域、計画的避難区域、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域)により経営が不可能となったものも被害に含む。
2)「営農を再開している経営体」には、農業生産過程の対象作業又はその準備を一部でも再開した経営体を含む。
90
230
2,740
3,500
490
570
390
250
3,320
2,560
2,360
2,270
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 経営体
営農を再開している経営体
営農を再開していない経営体(不明を含む)
(東日本大震災により被災した農業経営体)
(うち津波の被害を受けた農業経営体)
1 青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県。
13
第1部
第1章
事 例
震災を契機に農地集積と被災者の雇用を推進
宮城県東ひがし松まつ島しま市し野の蒜びる地域の農業生産法人(有)アグリードなる
せ(平成18(2006)年設立)は、東日本大震災による津波で大きな被害を受けましたが、被災を理由に離農を希望する地域の農地所有者から農地を引き受け、同地域の農業の復興に取り組んでいます。同社の経営面積は、会社設立当時は39.0haでしたが、平成23(2011)年に57.9ha、平成24(2012)年には81.0haに拡大しています。社長の安
あ部べ俊とし郎ろうさんは、震災が発生した3月は消防団として行
方不明者の捜索活動を行っていましたが、捜索活動を行う中で、地域の農業を復興させなくてはいけないという思いを強く抱きました。また、浸水した農地の水が2週間ほどで引いたことから、がれきの少ないほ場では6月までに稲の作付けが可能と考え、除塩作業を開始しました。懸命な除塩作業の結果、平成23(2011)年度は41.4ha(うち、除塩した水田33.3ha)で稲の作付けを行い、無事に収穫を終えました。収穫した米は、品質に懸念がありましたが、一等米比率は97.5%に達し、震災前以上の水準でした。平成24(2012)年度は、米に加え、大豆、じゃがいも、キャベツ等の露地野菜、トマト等の施設野菜の作付けを行っています。園芸作物の作付けに当たっては、表層の塩分を除くため表面の作土を平均7cm取り除きましたが、土不足により客土を十分に行うことができなかったため、追肥を重ねて土壌養分の不足を補うこととなり、土づくりの大切さを改めて感じたとのことです。同社は、作付面積100haを目指し、今後も農地集積を進めるとともに、園芸作物の栽培比率を高めることとしており、また、周辺地域全体の復興につながる経営を目指して被災者の雇用にも力を入れています。平成24(2012)年には、震災前に2人だった従業員を6人に増やしており、今後も更なる雇用人数の拡大のために、周年栽培に向けた施設の拡大や、野菜の加工施設、直売施設の導入に取り組んでいくこととしています。なお、農地の一部では、地震に伴う地盤沈下により、満潮時に海水が川を遡
そ上じょうして農業用水に流入
し、塩害が発生していることから、農地や農業用施設の早期の復旧による排水機能の確保が必要となっています。また、津波により周辺の老人介護施設が被災し、高齢の親を持つ従業員にとって市外の施設への送迎等が負担になっていたため、「野蒜で介護施設を再建したい」との思いから、デイサービスセンター(株)野蒜ケアサービスの経営に参加し、平成25(2013)年7月のオープンを目指すなど、農業生産法人という枠にとらわれない活動を展開しています。
山形県宮城県
岩手県
東松島市
除塩を終えたほ場での収穫の様子
事 例
家族や周囲の支援を受けて営農再開を決意
青森県おいらせ町ちょうの(有)岩
いわ徹てつ養豚(昭和52(1977)年設立)は、社長の岩
いわ崎さき徹てつ男おさん、妻の幸
さち
子こさん、長男、次男の4人とアルバイト2人で年間3,450頭(母豚180頭)を出荷する養豚を営んで
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第1節 地震・津波による被害と復旧・復興に向けた取組
いましたが、東日本大震災による津波で大きな被害を受けました。平成23(2011)年3月11日の地震発生時(おいらせ町震度5強)、岩崎一家は、海岸近くの養豚場から離れた高台にある自宅にいましたが、避難生活に入ったら豚に餌を与えることができなくなると思い、岩崎夫妻は養豚場に向かい、豚の餌の準備に取りかかろうとしたところで津波が襲ってきました。2人は間一髪で津波から逃れることができましたが、豚舎6棟のうち5棟が全壊し、飼養していた豚2,150頭のうち1,500頭近くが流失しました。養豚場は海岸線から500m以上離れていましたが、高さ2.5m程度の津波が押し寄せたとみられています。津波で養豚場が流された後、岩崎夫妻は、「とにかく呆然としてどうしたらいいのだろう」と思いましたが、周辺農家、三沢基地の米兵やその家族、消防隊、ボランティアグループの方々の助けも借りて、被災後50日間、家族総出で毎日こつこつと全壊した養豚場のがれきの撤去を行いました。撤去作業が進んでくると、次第に再建しようという思いが強くなり、平成23(2011)年6月に家畜供養祭を行って豚を供養することにより、気持ちに一区切りを付けることができました。養豚の再開に当たっては、震災前、海岸線から2km程度離れた場所に購入していた土地において、平成23(2011)年9月から再建工事を始めました。養豚場の再建費用の総額は3億9千万円で、初めて国の交付金を活用しましたが、1億6千万円近い借入金を抱えた再スタートとなりました。平成24(2012)年3月には、近隣の百
もも石いし漁港で催されたイベ
ントにおいて、これまでの支援に対する感謝の気持ちを込め、500人分の豚汁を振る舞いました。500人分の豚汁を用意するに当たっては、材料の調達から調理まで様々な苦労がありましたが、幸子さんは「500人分の豚汁も作れないようでは再建などできないという気持ちで頑張った」といいます。同年9月には新たな養豚場が完成し、10月から母豚の導入を順次開始しており、平成25(2013)年10月に震災後初めての出荷を予定しています。当面は震災前と同規模の母豚180頭を目指し、その後、平成27(2015)年までに200頭まで増やすこととしています。新たな土地で養豚を再開する取組に対しては、養豚場建設反対の署名等、様々な批判を受けましたが、岩崎夫妻は、町内会における説明や周辺の方との対話を行ったほか、農家の方には同社の堆肥の提供を申し出ました。この結果、周囲の方々の理解を得ることができたといいます。一方、岩崎夫妻自身も、養豚の再開を決意してから、ストレスで「やめたい」と思ったことや、「子供たちが借金を返せなかったらどうしよう」と不安を覚えたこともありました。しかしながら、幸子さんはその度に「助かった命だから」と気持ちを切り替え、徹男さんは震災を契機に良い設備に刷新でき、逆にチャンスだったと思うようにしているといいます。既に岩崎夫妻の息子2人が後継者として経営に参画していますが、岩崎夫妻は震災前に事業拡大を見据えて土地を購入していたことが、速やかな再建につながったと考えています。今後は、良質の堆肥を作って引き続き周辺農家と共存し、「ここに養豚場があってよかった」と言ってもらえるようになりたいと考えています。
秋田県 岩手県
青森県おいらせ町
左から次男徹氏、社長徹男氏、 妻幸子氏、長男大輔氏
被災時の様子
再建された豚舎の内部
15
第1部
第1章
事 例
園芸用施設のリースにより被災農家の早期の営農再開を支援
宮城県石いしの巻まき市しのJAいしのまきは、東日本大震災で被災した園
芸産地の復興に向けた取組として、国の交付金を活用して石巻市及び東
ひがし松まつ島しま市しにそれぞれ鉄骨ハウス等の園芸用施設を整備し、東
日本大震災後に被災農家が集まり新たに設立された2つの農業生産法人にリースを行うことにより、被災農家の早期の営農再開を支援しています。JAいしのまき管内は、トマト、きゅうり等の施設園芸が盛んな地域ですが、東日本大震災の津波により園芸用施設の損壊、流失等による甚大な被害を受けました。このため、JAいしのまきは、被災した園芸用施設を迅速に復旧するとともに、地域の担い手となる経営体の育成による園芸産地の復興を推進するためのモデル事業として、平成23(2011)年7月に園芸用施設のリース事業を実施することを決定しました。平成23(2011)年9月には、石巻市の(株)スマイルファーム石巻と東松島市の(株)イグナルファームに園芸用ハウスを15年間のリースで貸与し、その後は無償譲渡することを決定し、平成24(2012)年5月の施設完成と同時に両法人が新しいハウスで営農(トマト、きゅうり)を再開しました。当初の計画販売高は達成できなかったものの、順調なスタートを切っています。両法人は、今後、早期に規模拡大を行い、安定した所得を確保するとともに、直売、農産加工、観光農園等の事業展開も視野に入れた経営の多角化を行っていく考えです。このため、JAいしのまきは、今後も県等の関係機関と連携し、技術指導の支援や経営管理能力の向上に必要な指導を行うほか、販売面でも市場や量販店との連携の強化等を通じ、安定的な所得確保に向けたバックアップを行っていくこととしています。
山形県宮城県
岩手県
石巻市
農作業の様子 (上:(株)スマイルファーム石巻
下:(株)イグナルファーム)
事 例
組合員の熱意を受けみそ加工施設を再建しみそ造りを再開
宮城県仙せん台だい市しの岡
おか田だ生産組合は、東日本大震災の津波により流失したみそ加
工施設を平成24(2012)年3月に移転新築して、地区内で生産した米、大豆を使用した生みその製造を再開し、11月から出荷を本格的に再開しています。同組合は、平成11(1999)年に地場産大豆の付加価値向上を目指してみそ造りを開始し、平成22(2010)年にみそ加工施設の改修を終えたところでしたが、震災の津波により流失してしまいました。震災直後、組合長の遠藤さんは避難所を巡り、「再びみそ加工施設で働きたい」という希望を持つ組合員の話を聞き、加工施設の再建を決意しました。みそ加工施設の再建には国の交付金も活用しましたが、帳簿類等の書類が流失したこともあり、申
山形県宮城県
岩手県
仙台市
16
第1節 地震・津波による被害と復旧・復興に向けた取組
請書の作成に苦労しました。また、組合長の遠えん藤どう源げん二じ郎ろうさんは農
業も行っており、大豆、水稲等の営農の再開等も行う必要があったため、農協等の協力を得て書類を作成し、みそ加工施設の再建を早期に決定することができました。なお、震災前のみそ加工施設は海岸線から600mの位置にありましたが、新たな施設は津波の被害に遭わないよう海岸から3kmの位置に移転しました。平成24(2012)年5月に再開したみその仕込量は6tと震災前の仕込量(10t)を下回り、販売先も限定していますが、平成25(2013)年度は仕込量を増やし、平成26(2014)年度までに震災前の経営状態に戻したいと考えています。また、平成24(2012)年度はみその材料である大豆、米について、仙台市高
たか砂さご地区(岡田
地区を含む広域な地区)産のものも使用しましたが、平成25(2013)年度からは全て岡田地区産のものを使用することとしています。特に米については、同組合が作業受託により栽培した米の使用量を増やしていく予定です。同組合が活動する岡田地区における水稲の栽培面積は、震災前は460haでしたが、津波により全農地が被害を受けました。また、同地区の農家戸数は、震災前は約300戸でしたが、現在は150戸ほどに減少しています。同組合では今後、営農の継続が困難となった被災農家の農地約200haの作業受託を予定しています。同地区の農地は今後、従来の30a区画から90a区画に拡大される予定であり、同組合では、これらの農地で稲、麦、大豆をブロックローテーションによる三作体制で生産し効率的な経営を行うこととしています。
イ 農業の復興に向けた取組(県・市町村による復興計画の策定)
被災した各県、市町村は、東日本大震災からの復興に向けて、「東日本大震災復興基本法」の規定に基づく復興基本方針を踏まえ、復興計画の策定を進めています。東北3県についてみると、岩手県は平成23(2011)年8月11日に「岩手県東日本大震災津波復興計
画」、宮城県は同年10月18日に「宮城県震災復興計画」、福島県は同年12月28日に「福島県復興計画」をそれぞれ策定しました。東北3県を市町村単位でみると、岩手県、宮城県では平成23(2011)年度中に津波の被害を受けた
全ての市町村(岩手県12市町村、宮城県15市町)において復興計画が策定されました。福島県では、平成24(2012)年12月現在、津波の被害を受けた10市町のうち、双
ふた葉ば町まちを除く9市町において、復
興計画が策定されました。双葉町においても、町内関係団体の代表者や学識経験者を構成員とする委員会を設置し、復興計画の検討を進めています。復興計画を策定した市町村においては、個別事業(土地区画整理事業、防災集団移転促進事業等)の
事業計画を策定し、事業を実施することとしていますが、事業の実施に当たっては、地域住民との調整を円滑に進めていくことが最大の課題となっています。このため、国としても、まちづくりを専門とする職員の派遣等を行い、早期の復興に向けた支援に努めています。
(復興特区制度に基づく各種計画の策定)
平成23(2011)年12月26日に「東日本大震災復興特別区域法」(以下「復興特区制度」という。)が施行されました。復興特区制度においては、地方公共団体が作成する復興特区に係る計画(復興推進計画、復興整備計画、復興交付金事業計画)に基づき、地域限定の特例措置を講じ、地域の創意工夫を活かした復興を支援しています。
みそ造りの様子
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第1部
第1章