(2)保全・点検・評価 2-① 中長期の保全計画の作成 ·...

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- 80 - (2)保全・点検・評価 2-① 中長期の保全計画の作成 組織 タイトル 82 青森県 青森県県有施設「長期保全計画書作成マニュアル」の策定と長期保全計画書の活用 84 三重県 「県庁舎等適正保全指針」の策定 87 大阪府 「府有施設長期活用基本指針」の策定と保全対象施設における中長期保全計画・修繕実施 計画の作成 90 鳥取県 県有施設の中長期保全計画作成 94 島根県 県有施設における長期保全計画の作成 97 熊本県 大規模施設の中長期保全計画策定 100 宮崎県 県有建物保全計画の策定 102 札幌市 一般市有建築物の保全業務の一元化 105 千葉市 市有建築物の計画的保全の推進 108 広島市 市有建築物維持保全ガイドラインの策定及び保全計画作成マニュアルの作成 111 北九州市 北九州市における計画保全に関する取り組み 114 福岡市 アセットマネジメントの推進について 118 鹿児島市 公共建築物ストックマネジメント事業 123 国土交通省 官庁施設における中長期保全計画の作成推進 2-② 施設情報のデータベース 組織 タイトル 126 福島県 県有施設のファシリティコスト管理システム作成 129 滋賀県 県有建築物保全支援システムの活用による予防保全の推進 132 大阪府 保全対象施設のデータベースの作成 135 横浜市 公共建築物保全データベースの活用 138 静岡市 静岡市公共建築物保全計画の策定 141 静岡市 施設保全の計画に関する意見書の作成 144 神戸市 市有建築物情報システムの構築

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(2)保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

頁 組織 タイトル

82 青森県 青森県県有施設「長期保全計画書作成マニュアル」の策定と長期保全計画書の活用

84 三重県 「県庁舎等適正保全指針」の策定

87 大阪府 「府有施設長期活用基本指針」の策定と保全対象施設における中長期保全計画・修繕実施

計画の作成

90 鳥取県 県有施設の中長期保全計画作成

94 島根県 県有施設における長期保全計画の作成

97 熊本県 大規模施設の中長期保全計画策定

100 宮崎県 県有建物保全計画の策定

102 札幌市 一般市有建築物の保全業務の一元化

105 千葉市 市有建築物の計画的保全の推進

108 広島市 市有建築物維持保全ガイドラインの策定及び保全計画作成マニュアルの作成

111 北九州市 北九州市における計画保全に関する取り組み

114 福岡市 アセットマネジメントの推進について

118 鹿児島市 公共建築物ストックマネジメント事業

123 国土交通省 官庁施設における中長期保全計画の作成推進

2-② 施設情報のデータベース

頁 組織 タイトル

126 福島県 県有施設のファシリティコスト管理システム作成

129 滋賀県 県有建築物保全支援システムの活用による予防保全の推進

132 大阪府 保全対象施設のデータベースの作成

135 横浜市 公共建築物保全データベースの活用

138 静岡市 静岡市公共建築物保全計画の策定

141 静岡市 施設保全の計画に関する意見書の作成

144 神戸市 市有建築物情報システムの構築

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2-③ 施設状況の把握

頁 組織 タイトル

147 宮城県 県有施設の劣化度調査

150 静岡県 県有建築物の劣化診断調査の実施

153 静岡県 保全情報の共有化

156 京都府 府有施設の自主点検に係る事例

160 大阪府 保全対象施設における実態調査の実施

163 大阪府 保全対象施設における劣化度調査の実施

166 札幌市 一般市有建築物の施設維持管理の支援

169 横浜市 横浜市における公共建築物の長寿命化対策事業

172 名古屋市 応急保全の着実な実施による計画保全への移行

175 堺市 市有建築物の施設点検調査の実施

178 熊本市 市有建築物(住宅・小中学校・企業局施設等を除く)の優先度を設定した短期修繕計画の作成

181 国土交通省 国家機関の建築物等の保全実態調査等による保全の適正化

184 国土交通省 官庁建物実態調査

187 国土交通省 建築物等の部位別劣化調査要領

2-④ 施設状態の評価・改善

頁 組織 タイトル

190 青森県 青森県県有施設利活用に基づく施設アセスメントの実施

194 神奈川県 劣化診断と施設修繕優先度判断基準

198 滋賀県 地方機関営繕事業の取り組み

201 大阪府 保全メールマガジンの発行

204 島根県 長寿命化工事の優先度判定基準(案)に基づく、優先度判定の試行

206 福岡県 既存県有建築物の改修工事と併せた省エネ対策の実施による、長寿命化及び省エネ化の促進

209 宮崎県 県有建物評価基準の策定

212 静岡市 静岡市公共建築物保全連絡会議の開催

215 浜松市 市有の建築物等の保全実態調査による保全の適正化

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『青森県県有施設「長期保全計画書作成マニュアル」の

策定と長期保全計画書の活用』

青森県 県土整備部建築住宅課

017-722-1111(4369)

青森県 総務部財産管理課

017-722-1111(2884)

1.背景・目的・概要

「青森県県有施設利活用方針」において、県が長期に利用する施設について、

一定の性能水準を維持するための長期保全計画書を策定し、計画的な保全措置

を実施することにより、施設の長寿命化を促進することとしている。

このため、青森県県有施設「長期保全計画書作成マニュアル」を平成21年3月

に策定し、平成21年度から特殊な施設等を除き、施設の部材や設備等の概要、定

期点検結果や改修工事の履歴、今後の改修が必要となる時期や費用の見込み等

を内容とする長期保全計画書を施設の管理者が作成することとしており、これによっ

て県有施設の計画的な改修を図っていくこととしている。

2.取組の成果・効果

平成25年10月1日現在、長期保全計画書作成施設は、以下のとおりとなってお

り、長寿命化に向けた修繕計画立案の基礎データ等として活用されている。

なお、構造や設備等が特殊な大規模施設については、別途、長期保全計画書

の策定を検討することとしている。

対 象 棟 数 作 成 棟 数 作 成 率

事 務 庁 舎 等 97 79 81.4%

県 立 学 校 402 391 97.3%

警 察 関 係 庁 舎 等 26 22 84.6%

合 計 525 492 93.7%

表1 長期保全計画書作成状況

3.取組内容

●長期保全計画書の作成

「長期保全計画書」は施設管理者が作成することとしているが、事務職員でも容

易に作成できることを念頭にエクセルベースで提供しているほか、毎年度開催してい

る施設管理担当者研修会での研修内容とするなどの作成支援を行っている。

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長期保全計画書では、棟ごとに

①施設の基本情報と基本性能(構造、部材、建築設備等)

②劣化具合(劣化度調査や施設管理者の日常点検等による結果)

③不具合箇所(消防点検や建築物の定期点検等の結果)

④修繕履歴(小破修繕も含む)

を明らかにし、図1の長期保全計画表を作成することとしている。長期保全計画表で

は、これまでの工事履歴から、部材ごとの向こう30年間のおおよその工事の時期と

費用を把握することができる。なお、長期保全計画書は3年毎に、最新の情報を基

に更新を行うこととしている。

図1 長期保全計画表(長期保全計画書から抜粋)

●長期保全計画書の共有

各施設管理者が作成した長期保全計画書は、施設情報システム(BIMMS)の

電子書庫に登録し、各施設主管課、財産管理課及び建築住宅課等の施設管理に

係る各部署が閲覧可能な状態にしており、予算要求や修繕計画立案の際に、いつ

でも情報を共有できる体制としている。

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『『「「県県庁庁舎舎等等適適正正保保全全指指針針」」のの策策定定』』

三重県総務部管財課、三重県県土整備部営繕課

059-224-2136,059-224-2150

1.背景・目的・概要

三重県では、厳しい財政状況の中、「財政運営の改革」に取り組んでおり、県有

財産の管理面からの対応として、平成 23 年度に「みえ県有財産利活用方針」を策

定し、保有する県有財産(土地、建物)の経済的で適切な維持と有効活用につい

て課題の一つと位置づけた。

県有施設を有効利用していくためには、施設の保有総量の縮小や、集約化など

を推進していくことが必要であると同時に、将来にわたり長く利用していくこととした

施設については、適切な保全を計画的に実施することで、施設全体に係る財政的

な負担を長期的な観点で縮減することが重要となる。

これらのことから、施設保全コストの平準化・縮減を図るため、平成 24 年度に本庁

舎及び地域庁舎を対象にした「県庁舎等適正保全指針」を策定した。

1 未利用の県有財産の積極的な売却と有効活用

2 民間活力を活用した施設整備・管理

3 庁舎など県有施設の長寿命化

① 「県庁舎等適正保全指針」の策定

② 施設の省エネルギー化

③ 効率的な施設管理水準の設定

庁 舎 など県 有 施 設 の長 寿 命 化 を図 るため、適 切 な保 全 を

計 画 的 に実 施 し、あわせて環 境 負 荷 の低 減 、ランニングコス

トの縮 減 を図 り、施 設 に係 る財 政 的 な負 担 を長 期 的 な観 点

で縮減することを目的とし、今後の施設保全の基本的な考え

方を示すもの

「みえ県有財産利活用方針」

図1 「みえ県有財産利活用方針」の構成

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2.取組の成果・効果

同指針では、施設の漏水や外壁の損傷、機器の不具合、故障等が発生してから

修繕等の対処をする、いわゆる「事後保全」による管理に代わり、施設設備の保全

状況、劣化度を把握し、中長期的な改善、修繕予算も勘案したうえで、対応する

「予防保全」の考え方を導入している。

実際には、まだ取り組み始めたばかりであるため、大きな成果はあがっていないが、

各施設の管理者が、「予防保全」の考え方を理解し、設備の保全状況等を把握す

る必要性、当該把握のための日常的な点検等の意識が高まりつつあり、適切な保

全に向けての管理体制としては、目指す方向に進んでいると言える。

また、施設の長寿命化を図ることによる効果としては、今後発生する建物の更新、

改築費用総額の抑制、改修費用の平準化、施設の改修・改築時における省エネル

ギー機器の導入等による温室効果ガス排出量の削減、維持管理費用の低減が期

待される。

3.取組内容

3-1 指針の目的

指針では、対象施設について、事後的な保全手法から計画的な「予防保全」

に転換することにより、施設の長寿命化及び使用中の施設の性能水準の維持を

図ることを目標とし、今後発生する施設保全コストの平準化・縮減を図るための施

設保全の基本的な考え方を示すことを目的としている。

3-2 対象とする施設

対象施設は、建築・設備の基礎データ(導入時期、仕様等)を国土交通省の

提供する「保全情報システム(BIMMS)」に入力済みで標準的なオフィスビルであ

る本庁舎及び 10 箇所の地域庁舎としている。

3-3 施設保全の考え方

建物は定期的に点検を行い、常に性能状態を把握し、劣化の状態を予測して

適切な時期に保全措置を実施することによって初めて長期にわたりその性能を保

ち使用することができるものである。このため、定期的・日常的な点検は非常に重

要と言える。

各庁舎管理者は、「予防保全」の考え方のもと、施設の点検等を実施し、計画

的な維持管理に取り組むこととしている。

また、ライフサイクルコストについて意識し、施設の新築時のみならず、改修等

に際も、それを好機と捉え、耐久性の高いものや、省エネ型のものへの更新を図

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ることとしている。

3-4 具体的な取組内容

① 実施体制の構築

取組を進めるため、各庁舎の担当者による会議の開催、施設設備に関する

情報を集約・管理し共有化する仕組みづくりを行う。

② 各庁舎管理者による自主点検の実施

一定の建物、設備について、経年劣化や外的要因による性能低下の状況等

を把握するため、自主点検を行う。また、点検結果は、修繕計画策定や予算

要求時に優先度を判断するための資料として活用する。

③ 点検結果等のフィードバック、蓄積

点検結果等の情報は、BIMMS に入力、蓄積し、他庁舎との比較検討のほか、

管理カルテとして保全状況の把握を可能とする。

④ 「県庁舎等施設保全マニュアル」の策定

庁舎管理者が自ら日常的に点検を実施できるよう、チェックすべきポイント等

をまとめたマニュアルを策定する。

図2 「県庁舎等施設保全マニュアル」(チェックシート)

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『「府有施設長期活用基本指針」の策定と保全対象施設にお

ける中長期保全計画・修繕実施計画の作成』

大阪府 住宅まちづくり部公共建築室計画課

06-6941-0351(4607)

1.背景・目的・概要

施設の機能の維持・確保等を目的とする保全業務は、計画的に維持・改修を行

う予防保全を実施することが望ましいが、建物の寿命や施設の安全性に影響を与え

る劣化は、表面化しにくい面がある。そのため、所管課による予算要求では政策的

な取り組みが優先され、本来、優先的に改修すべき部位については予算措置が困

難な状況にあった。また、府有施設の維持・管理においては、雨漏り、設備機器の

故障等が実際に起こってからの緊急避難的な補修・改修が行われることが多く、計

画的な維持管理がなされていないのが実情であった。その結果建築物の寿命への

悪影響・日常業務への支障・施設利用者への利便性及び安全性の低下等、種々

の問題が生じていた。

そういった状況の中、大阪府においては、平成13年度に策定された「大阪府行

財政計画」(案)で、「公共施設のストックについては、計画的にしっかり維持・管理し、

安全にできるだけ長く活用する」と明確に位置付けられた。それを受け、平成15年4

月に公共施設の長寿命化を図り、良質なストックとして長期活用していくための基本

的な考え方を示すものとして、ストックを計画的に維持・保全することにより、建築物

の長寿命化を図り、併せて経費の平準化を図ることを目的とした「府有施設長期活

用基本指針」を策定した。

併せて、「中長期保全計画」及び「修繕実施計画」を作成し、予防保全を行うこと

により業務への支障・施設利用者への利便性及び安全性の低下等の問題を未然

に防ぐものとしている。

2.取組の成果・効果

「府有施設長期活用基本指針」に基づき、施設の安全確保や保全計画見直し

等について、施設所管課に対する技術的支援を行ってきた。施設の長寿命化を図

ることによるライフサイクルコストの縮減や、「中長期保全計画」及び「修繕実施計画」

を作成することによって維持管理に関する予算の平準化を図る効果が見込まれる。

保全対象施設:府有建築物のうち、営繕部局である公共建築室が維持補修

等に関与している施設。

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3.取組内容

3-1 施設データの蓄積

府有施設において、現況に即した図面が整理・保存されていない施設があるなど、

工事の履歴等に関するデータについて、データと現況に大幅な乖離があった。その

ため、施設に適した維持・改修を効率的に実施するために、実態に合ったデータの

整備・蓄積を行った。

また、それまでのデータがすべて紙データであったため、効率的な管理・運用のた

め極力電子化を図った。

点検結果・保全計画に基づく

計画的かつ予防的な維持管理の実施

【今あるものをうまく活かす:効率的な投資】

府有施設の長期活用

施設データの電子化

定期的な点検業務の実施

施設データの整備・蓄積

「施設管理者」による点検

「専門技術者」による点検

保全計画の策定

「保全計画作成要領」の策定

・保全計画の基本的な考え方の整理

・基準類の策定

(修繕周期、更新周期等)

各施設別の「中長期保全計画」・「修

繕実施計画」の策定

施設保全システムの構築 +

計画的保全の実施

図 1. 府有施設の長期活用化の推進フロー

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3-2 「府有施設の長期保全計画作成要領」の作成

長期保全計画を作成するに当たって、目標耐用年数を 70 年とし、修繕・更新の

周期の設定や、周期の起点の設定などについての考え方の基準となる「長期保全

計画作成要領」を作成した。

3-3 「中長期保全計画」の作成

当初、長期保全計画は施設管理者が作成するものとして計画していたが、事務

職の職員が多くを占める施設管理者には作成が困難であった。そのため、保全対

象施設の中から用途、築年度、将来性を考慮して主要な 26 施設を抽出し、30 年

間の修繕保全計画である「中長期保全計画」を技術職員である公共建築室職員が

作成した。中長期保全計画は、建物全体を部位や設備、機器などに細かく分類し

て寿命(耐用年数)と保全費用を推定し、物理的な寿命を軸に更新費用と、今後

30 年間に必要となる修繕費用を把握するものである。

3-4 「修繕実施計画」の作成

中長期保全計画を作成する一方で、劣化状況や財務環境等の影響により、施

設・設備等の実際の更新時期や費用については長期計画のとおりにはならないとい

う実情がある。そのため現地調査を行うなどして、間近に迫った保全項目を含め、5

年間に発生すると予測される更新や修繕について検討する「修繕実施計画」を作

成した。修繕実施計画は中長期保全計画の対象となる 26 施設について作成してい

る。

3-5 計画保全事業の実施

施設を所管する部局が行う改修工事は、政策的な施設の模様替えや設備更新

等が中心であり、施設の維持管理上優先すべき改修について後送りになるケースが

多い。そのため、保全対象施設の安全性・利便性の確保と長期有効活用を図る視

点から、総合的・専門的な立場から改修に必要な施設や部位を特定し、公共建築

室で予算化し計画的な改修工事を行っている。

修繕・更新計画標準(建築)

修繕率(参考値) : (A)数量に対する割合  (B)建設費用に対する割合

周期 内  容

20 5 A 7 破損部分補修

モルタル金こて押え 30 10 A 10 破損部分補修

砂利敷き 30 10 A 10 破損部分補修

クリンカータイル張 30 10 A 10 破損部分補修

シート防水 合成高分子系 20 5 A 7 破損部分補修

塗膜防水 ウレタン系 20 5 A 7 破損部分補修

20 5 A 7 破損部分補修

折板葺き 30 10 A 100 塗装替

スレート波板葺き 30 10 A 10 破損部分補修

修繕周期(年)及び修繕内容備   考

修繕率

アスファルト防水 保護

露出

屋根・庇

区    分更新(年)

アスファルトシングル葺き

波板類葺き

図 2 修繕、更新時期の基準の例(防水)

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『県有施設の中長期保全計画作成』

鳥取県総務部 営繕課

0857-26-7010(7010)

1.背景・目的・概要

本県では厳しい財政事情に対応するため、県の保有する土地、建物について、

戦略的かつ適正に管理・活用する「県有資産マネジメント方針」(H24.1策定)を定

め、歳出削減や歳入確保を行っていくこととしている。

同方針は、県有の土地、建物の「保有総量の削減」及び「効率的な利用」、「建

築物の長寿命化」の三本柱となっており、そのうち営繕課は「建築物の長寿命化」に

取り組む。

そのため、建築物の長寿命化を推進するために、県有施設(知事部局)の中長

期保全計画を作成することとした。

<県有資産マネジメント方針の概要>

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2.取組の成果・効果

施設の効率的活用と長寿命化実現のため、県有施設の中長期保全計画を作

成し、計画的な改修・修繕を実施することにより、生涯経費の削減と財政負担の平

準化を図る効果が見込まれる。

参考に、知事部局所管施設において今後25年間にかかる所要経費について

現状(計画的な改修、修繕を実施しない場合)と、中長期保全計画に基づいて計

画的な改修、修繕による建物の長寿命化を図り、それに加えて改築時及び大改修

時の光熱水費削減、改築時の施設の保有総量縮減を図った場合の試算を行い、

比較したグラフを下記に示す。

知事部局(県営住宅を除く)所管施設の今後25年間の所要経費比較(試算)

[(現状)と(長寿命化+光熱水費削減+保有総量縮減)]

試算の条件

[現状]

改築周期を RC50年とし、光熱水費、保有総量を現状のままで試算

[長寿命化+光熱水費+保有総量縮減]

長寿命化:計画的な修繕・改修により改築時期を遅らせる

(RC50年→RC65年)

光熱水費削減:改築、大規模改修時に10%削減すると想定

保有総量縮減:改築時に面積5%縮減したと想定

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3.取組内容

3-1 県有施設の中長期保全計画の構成及び作成対象施設

○中長期保全計画の構成

①施設別台帳(カルテ) 各施設の建物・設備概要や劣化状況等を記した台帳で、施設別中長

期保全計画を策定するために必要な基礎資料。既存図面等の情報整理、

施設への現状聞き取り、現地確認、劣化度調査、現存率調査を通じて

作成

②施設別中長期保全計画(サイトプラン) それぞれの施設において中長期的(25年分)に必要とされる修繕・

改修全般について、発生時期・内容・工事費の概略を具体的に記載し

た計画

③県有施設中長期保全実施計画(トータルプラン) 施設単位で作成された施設別中長期保全計画を一元的に取りまとめ、

保全の効率的な実施や平準化について検討を行い、総合的に調整した

県有施設全体の計画 ○中長期保全計画の作成対象施設

知事部局が所管する県有施設のうち、別の整備基準のある県営住宅・

公園施設等を除いた282施設の中で、次の選定基準に該当するものを中

長期保全計画の作成対象とする。 A .延べ面積1,000㎡以上の施設(車庫を除く) …55施設 B .延べ面積 500㎡以上で、利用者・来館者が多く 無計画な休館では利便性が著しく損なわれる施設 … 7施設

合計62施設

それ以外の220施設においては、これまでと同様に施設管理者の日常

管理や定期点検時に発見された不具合箇所について、個別に保全対応し

ていくこととする。

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55施設:376,000㎡:83.0%

282施設:453,000㎡:53.3%

7施設:6,000㎡:1.3%

486施設:850,000㎡:56.7% 鳥取療育園     929㎡

とっとり出合いの森 961㎡

かにっこ館     759㎡

大山自然歴史館   819㎡

763施設:1,500,000㎡ 二十一世紀の森   670㎡

人権ひろば21   650㎡

障害者体育センター 993㎡

172施設:397,000㎡:46.7%

277施設:650,000㎡:43.3% 32施設:( ---㎡) : ---% 220施設:71,000㎡:15.7%

県有施設

・別の整備基準がある施設  (例:県営住宅・公園施設)

・外部に管理委託している

  施設 (例:職員住宅)

・移管、廃止を検討している

  施設

他部局所管施設他施設への入居

(例:東京本部・関西本部)C.それ以外の施設

A.1,000㎡以上の施設

  (車庫を除く)

営繕課所管 保全対象施設B.500㎡以上で利用者・来

  館者が多く無計画な休

  館では利便性が著しく

  損なわれる施設知事部局所管施設

中長期保全計画

作成対象62施設

施設別台帳[カルテ]

・施設概要 ・現存率 ・設備概要 ・工事履歴 ・棟別台帳 ・光熱水、施設管理

費 台 帳 更

積 み 残 し

実 施

施 設 台

保 全 計・保全実施計画

営 繕 工

劣 化 度 調

施 設 別 中 長 期 保 全 計 画 [ サ イ ト プ ラ ン ]

(H24,25)

・保全(改修・修繕)計画

施設の将来計画、運営計画、要望等聞取り

25年分の計画作成(5年毎)

県有施設中長期保全計画[トータルプラン](H26~)

・全施設の保全(改修・修繕)の一元管理 施設機能の保持と質の確保 財政負担の軽減化、平準化

・実施計画に基づいた施設整備の実施(H26~)

予算要求

査定語の実施内容決定

積み残し分の処理方法

作 成 対

施 設 一

(6 施 )

鳥取県県有施設保全計画(H23 作成済) 県有施設中長期保全計画作成指針(H23 作成済)

※【5年毎】 現 地 確 劣 化 度 調 台 帳 更

と り ま と

赤 文 字 部 分

が 外 部 委 託

赤文字部分を

外部委託

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3-2 県有施設保全の実施概要

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『県有施設における長期保全計画の作成』

島根県 総務部営繕課

0852-22-6594

1.背景・目的・概要

昨今、公共施設に対しては、既存ストックの有効利用、コスト縮減の推進及び利用者の事

故防止など、適切な保全の実施と施設の長寿命化が求められている。 島根県においても、厳しい財政状況の中、県有施設の老朽化とともに多額の改修工事費が

見込まれることから、適切な保全による既存施設の長寿命化を図るために、長期的な保全の

計画を定める必要があった。 そこで、本県では平成17年度に「島根県建築物等保全規定」を定め、当該規定に基づく「保

全計画基準」の中に長期保全計画を位置づけるとともに、長期保全計画の作成を開始した。 この計画は、建築物等の修繕や更新の時期、内容及び費用について、今後15年間の計画

を作成するものとし、5年ごとに現地調査を行い計画内容の見直しを実施することとしてい

る。また、作成にあたっては、現地調査を行った際の劣化状況や費用の平準化の検討をふま

えるものとし、当該計画で示す時期・費用については、目安としての概算額としている。 計画の作成については、基本的な計画(案)を営繕部局にて作成のうえ、各建物を所管して

いる部局に対して報告を行い、報告を受けた所管部局において、当該計画(案)を適宜修正し

たものを長期保全計画として定めている。

2.取組の成果・効果

長期保全計画を作成することにより、今後15年間における改修工事のスケジュールと必

要な予算規模を把握することができる。これにより、施設管理者側において計画的に予算の

確保が行われ、必要な修繕の確実な実施が可能となることから、施設の長寿命化が図れると

考えている。また、県全体(知事部局)での総工事費及び今後の必要予算額の推移について

も、概算ではあるが把握が可能となった。※【図1】参照 【図1】長期保全計画による修繕工事費の推計(知事部局 500 ㎡以上 128 棟 延べ 375 千㎡)

5.7 3.8

1.1

6.4 4.3

5.9 3.2

1.9 3.3 4.0

7.1

2.4

1.3

6.5

5.7

11.8

5.3

4.9 4.3 4.0

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

H25 H26 H27 H28 H29 H30 H31 H32 H33 H34

設備工事

建築工事

(億円)

平均 9.3 億円

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しかし、計画の作成対象としている部位が限られ、対象部位以外の修繕費が見込まれてい

ないため、得られる概算額の精度が高いとはいえず、実用性に乏しいのが現状である。 今後は、長期保全計画の対象部位を順次拡大していくことで、概算額の精度と実用性の向

上を図ることが必要と考えている。 3.取組内容

3-1 計画を作成する対象施設 当該計画の作成対象は知事部局の全施設としている。ただし、以下に示す①~⑥に該当す

る施設については、対象から除外できるものとして「保全計画基準」の中に定めている。 なお、平成24年度末時点において、85施設136棟(約375千㎡)についての計画

を作成している。 【保全計画基準】(長期保全計画作成の例外)

第14 財産部局長は、次に掲げるものについては、長期保全計画を作成しないことができる。

ただし、財産部局長が当該計画を作成する必要があると判断した場合は、作成対象とするこ

とができる

① 延べ面積が500㎡以下のもの

② 倉庫、車庫及びこれに類する簡易なもの

③ 設置期間を限定して建設された建築物(仮庁舎等)

④ 用途廃止や撤去、民間等への移管が予定されているもの

⑤ 竣工後40年を経過しているもの

⑥ その他総務部長が適用を要しないと判断するもの

3-2 計画を作成する対象部位

計画の作成対象とする部位及び調査項目については下表に示すとおりであり、建築に係る

部位として躯体、屋根、外壁、及び外部建具を対象部位としている。また、設備に係る部位

として、電気設備は自家発電設備、直流電源設備、交流無停電電源設備とし、機械設備は熱

源設備、空気調和設備を対象部位としている。 【表1】長期保全計画による対象部位・調査項目一覧表

区 分 対象部位 調査項目

構 造 躯 体

① 建物の傾斜又は変形

② 部材のひび割れ

③ 部材の発錆

主要部の仕上げ

屋 根

① 防水層からの漏水又はその痕跡

② 防水層の劣化

③ 経年

外 壁 ① 劣化状況

② 外壁からの漏水又はその痕跡

外部建具 ① 劣化状況

② 外部建具及びその周囲からの漏水

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電気設備

自家発電設備 ① 定期点検等の結果

② 経年

直流電源設備

交流無停電電源設備

① 経年

機械設備

熱源設備

① 劣化状況

② 定期点検等の結果

③ 経年

空気調和設備

① 劣化状況

② 定期点検等の結果

③ 経年

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『大規模施設の中長期保全計画策定』

熊本県 土木部建築住宅局営繕課

096-333-2539(内線 6224)

1.背景・目的・概要

熊本県が保有する行政財産及び普通財産は平成24年度末現在、建物は 5,559

棟、延べ面積 2,461 千㎡である。1970 年代の高度成長期に建設され、築後 30 年を

経過する施設が半数以上にのぼるなか、財政難による修繕・改修工事費の削減に

より施設の適切な管理運営に支障をきたしている。

県有施設のなかでも特に長期にわたり活用していく施設について、施設の良好な

維持と安全性の確保のため、建築物及び建築設備の各部劣化診断を行い、その

結果、改修を要するものについて概算工事費を算出し、施設機能を維持・回復させ

るための中長期保全計画の策定を行っている。

平成15年度に作成した熊本県立伝統工芸館を初めとして、平成26年度までに

約20の大規模施設の中長期保全計画策定を予定しており、その延べ面積は県有

施設全体(警察、学校及び公営住宅を除く。)の約2割にあたる。

図 -1 県 有 施 設 の延 べ面 積 比 率 図 -2 県 有 施 設 建 替 ・改 修 費 用 の試 算

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2.取組の成果・効果

本計画では、施設ごとに概ね20年間の改修内容及び概算工事費をまとめた建

築保全年次計画案(保全年表)を作成し、いわゆる施設保全の「見える化」を行って

いる。これにより手戻り工事のない計画的な改修及び更新が実施できるようになると

ともに、財政部局や対外的な説明資料として利用するなど、中長期的な予算確保

のための資料に活用されている。また、施設管理者がこれまでの事後修繕の対応に

加えて中期的な計画修繕や施設運営に利用することが期待される。

本県では平成24年度から管財部局を中心にファシリティマネジメントを導入し、

県有財産の最適な管理や効率的活用に向けた取組みを推進している。本計画は、

このファシリティマネジメントにおいても施設の長寿命化の施策の中で重要な位置づ

けとなるため、今後とも大規模施設を中心に計画策定を行っていくこととしている。

3.取組内容

3-1 中長期保全計画策定方法

本計画は老朽化対策である維持保全を基本としており、経年劣化し、又は社会

的・技術的な変化により性能などの相対的価値が低下した建築物、建築設備等の

性能を建設当時の水準まで改善することを標準とする。

予備調査として、図面調査、ヒアリング及び管理データの集約を行う。次に現地

調査により劣化状況を把握したうえで劣化診断を行い、将来にわたる建築の機能を

考慮し、コストを含めた改修計画又は更新計画を策定する。

劣化診断は目視調査を主とし、改修履歴等を参考に劣化状況を判定する。建築

設備においては埋設配管の掘削による劣化調査や給排水設備の内視鏡調査を必

要に応じて実施する。

劣化状況の判定区分は改修部位の重要性や改修履歴により A ランク(改修時期

1~2年以内)、B ランク(改修時期5年以内)及び C ランク(改修時期5年以上)とす

る。

保全年表の作成にあたっては、予防保全を基本とし、部位ごとの計画更新年数

に基づき建築や最終改修からの経過年数及び部位の劣化状況に応じて、周期的

に改修を行うこととする。建築物全体及び部位毎の耐用年数は官庁営繕及び

BELCA の基準を参考とする。

計画的かつ効率的に建築物の安全性と機能性の維持を図るため、改修方法は

部位改修を基本とする。また、これまで財政難を理由に先延ばししてきた改修工事

等の計画が重なり今後数年間で膨大な費用が予想されることから、建築年度や最

終改修年度、設置目的、部位毎の劣化状況等を踏まえ、改修の優先度を総合的

に決定し、年度間の費用調整を図る。

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3-2 中長期保全計画の活用

本計画の成果品として、施設ごとの建築保全年次計画案(保全年表)、改修概

算工事費、棟ごとの劣化診断結果の分析、劣化判定、建物カルテ及び点検チェッ

クリストを作成する。

完成した中長期保全計画は、次年度以降の工事に関する事業費算定や財政部

局への説明資料として利用されるなど、大規模施設の予算確保において有効に活

用されている。財政部局からも中期的な事業見通しがわかるため、本計画策定につ

いて協力的である。(図-3)

3-3 中長期保全計画の課題

一度作成された中長期保全計画は年々古くなっていく。計画どおりの改修予算

が確保できない場合や道連れ工事等による年次計画の変更により、年数を経るに

従い保全年表の有効性が薄れて劣化していく。そのため施設管理主管課と協力し

て中長期保全計画自体の見直しや更新を定期的に行い、スパイラルアップできる仕

組みづくりや組織環境づくりが今後の検討課題である。(図-4)

図 -3 中 長 期 保 全 計 画 サイクルイメージ図 図 -4 中 長 期 保 全 計 画 活 用 のイメージ図

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2.保全・点検・評価

2-① 中長期の保全計画の作成

『『県県有有建建物物保保全全計計画画のの策策定定』』

宮崎県 県土整備部 営繕課

0985-26-7918

1.背景・目的・概要

一般的に、建物は経年による老朽化によって耐久性や防災性能、建物(施設)に

求められる機能の低下が進んでいく。また、事後保全的な建物管理では、事故の発

生あるいは機能不全の状態に陥る危険性があり、行政サービスの提供に支障をきた

すおそれがあるとともに、修繕費用等が増大し、目標使用年数を確保できない状況

になることが懸念される。

これらの課題に的確に対処するために、県有建物保全計画 ※を有効的に活用し、

保全業務を計画的かつ効率的に実施することにより、県有建物の長寿命化や維持

修繕コストの縮減及び平準化を図り、財政負担の軽減化に資することを目的として

いる。

※ 「県有建物保全計画」

建物毎の機器・部材・備品の取得年、仕様等の情報に基づいて、今後 30

年間の改修工事及び設備機器の取替等について、実施すべき時期及び費用

を示した建物毎の中長期計画のこと

2.取組の成果・効果

●保全計画の策定(更新)状況

平成 21 年度(平成 22 年 3 月)策定

一般施設 330 棟、県立学校 49 施設

平成 24 年度(平成 25 年 3 月)更新

一般施設 335 棟

●保全計画の活用による効果

県有建物保全計画を有効に活用し、これまでの事後保全から予防保全への転

換を図り、保全業務を計画的かつ効率的に実施することによって、県有建物の「長

寿命化」、「ライフサイクルコストの縮減」、「保全に関する財政負担の軽減化・平準

化」をバランスよく実現することができる。

① 県有建物の適正な運営

各々の建物の基本情報や劣化状況、維持管理費等現状を把握し、常に、適

正な状態に維持できる。

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② 保全計画に基づいた県有建物の改修(修繕)工事の計画及び実施

建物の利活用等の実態を考慮したうえで、工事の優先順位を判断する。

3.取組内容

●保全計画の対象

延べ面積が概ね 200 ㎡を超える建物や、維持管理コストの効率的・効果的な縮

減が見込まれる建物等(平成 24 年度末時点:335 棟、約 52 万㎡)

●保全計画の更新(見直し)

対象建物の継続的な劣化状況等調査の実施による建物情報の収集・更新と、こ

れに基づく定期的な保全計画の更新を行う。

●システムの活用

本県の県有建物保全計画は、一般財団法人建築保全センターが提供する保全

情報システム(BIMMS)の「中長期保全計画管理」機能を利用している。

●保全計画の策定例

保全情報システムの機能により、部材・機器の更新時期及び更新費用のシミュレ

ーションが可能となる。この結果を元に、各部材・機器の使用状況や劣化状況につ

いて確認を行ったうえで、必要に応じて更新時期の前倒しや、更新時期の分散によ

り年度毎の更新費用を平準化させる等の調整を行うことにより、実効性を伴うものと

している。

更 新 コスト 部 材 ・機 器 次 回 更 新 予 定 耐 用 年 数