~米国ハリウッドと英国フィルム・コミッション のヒアリン...

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「諸外国におけるロケーション・ ハンティング戦略実態調査報告」 ~米国ハリウッドと英国フィルム・コミッション のヒアリング事例~ 2005 3 日本貿易振興機構 市場開拓部

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「諸外国におけるロケーション・

ハンティング戦略実態調査報告」

~米国ハリウッドと英国フィルム・コミッション

のヒアリング事例~

2005年 3月

日本貿易振興機構

市場開拓部

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©JETRO 2005 本報告書の無断転載を禁ずる

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免責

ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随

的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責

任、あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。

これは、たとえ、ジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。

本報告書に関する問い合わせ先:

日本貿易振興機構(ジェトロ)

市場開拓部 輸出促進課

〒107-6006東京都港区赤坂 1-12-32

TEL:03-3582-5313

FAX:03-5572-7044

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アンケート返送先 FAX 03-5572-7044 ジェトロ輸出促進課 IT・コンテンツ班 宛(平成 17 年 6 月現在)

● ジェトロ海外マーケティング調査報告書のご利用アンケート ● 「諸外国におけるロケーション・ハンティング戦略実態調査報告書

~米国ハリウッドと英国フィルム・コミッションのヒアリング事例~」

本レポートをご利用頂き、誠にありがとうございました。

ジェトロの今後のサービス向上に向けて、皆様のご意見を伺いたく存じますので、アンケートにご記入下さい

ますようご協力お願い申し上げます。

■ 質問1: 本報告書は、米国ハリウッドのロケーション選定及び日本についての認識や英国 FC のロケーション・

ハンティングの実態を探ることを目的に作成いたしましたが、どの程度満足されましたか?(○をひとつ)

■ 質問2: 上記のように判断された理由、またその他本報告書に関するご感想をご記入下さい。

4:満足 3:まあ満足 2:やや不満 1:不満

■ 質問3:その他、ジェトロへの今後のご希望等がございましたら、ご記入願います。

お名前ふ り が な

会社・団体名

部署 役職

住所

TEL FAX

e-mail http://

★今後、お客様のご関心のあると思われるジェトロおよび関係機関の各種事業、各種アンケート調査等のご案

内の可否につき、該当欄に✔をご記入願います

< 送付可 送付不可 >

★ ご記入頂いたお客様の情報は適切に管理し、ジェトロのサービス向上のために利用します。

お客様の個人情報保護管理者:市場開拓部 輸出促進課長 TEL:03-3582-5313

★ ご協力ありがとうございました。

日本貿易振興機構(ジェトロ)輸出促進課 〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32 アーク森ビル 6階

E メール: [email protected]

ウェブ: http://www.jetro.go.jp/jetro/activities/export/

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はじめに

本調査報告書は、映画関連サービス輸出の先進地域がどのような戦略を持ってロケーシ

ョン・ハンティングのマーケティングを展開し、映画撮影に対してどのようなサービスを

提供しているのか調査し、作成したものである。 我々が市場対象とする外国の作品との合作経験を増やし、撮影プロセスをシェアしてい

くことで、海外市場への日本映画の参入ノウハウを蓄積していくことは、日本映画の輸出

促進に資するものであるとの考えから、海外から日本へのロケーション・ハンティングを

促進するために本調査を実施した。 具体的には、ハリウッドの大手制作会社のプロデューサーがどのように撮影のロケーシ

ョンを決めているのか、また、他国地域のロケーション事例として、英国のフィルム・コ

ミッションの活動インタビューを取り纏めた。 日本国内での外国映画の撮影事例は、今極めて少数に留まる一方、日本国内ではフィル

ム・コミッションの設立が全国に広がってきており、ロケーション・ハンティングの環境

は醸成されてきている。 本調査報告書が、わが国内のフィルム・コミッションの活動の参考になれば幸いである。

*ロケーション・ハンティング・・・撮影地・施設を探すこと。 *フィルム・コミッション・・・国内外の映画、テレビ番組、CMなどのロケーションをス

ムースに進めるための地元の受け皿となり、またロケ誘致活

動の窓口となる組織(非営利団体)。その多くは自治体、商工

会議所、コンベンションビューローなどが運営。現在、国内

のフィルム・コミッションは70を超えている。

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目次

はじめに .............................................................................................................................4 1 ハリウッド・プロデューサーが考える日本の撮影環境.................................................6 1‐1 日本での撮影や制作についての認識 ......................................................................6 1-2 実際の撮影経験を踏まえて、日本での撮影の問題点は何か。 ...............................7 1-3 日本への要望・注文 ...............................................................................................8 1-4 日本での制作や撮影の可能性 .................................................................................9 1-5 今後の関係を深めるために何が重要と考えるか ..................................................10 1-6 米国 インタビュー ............................................................................................. 11 1-6-1 米国 Aエンタテインメント専門弁護士 ....................................................... 11 1-6-2 米国 Bエグゼクティブ・プロデューサー ...................................................12 1-6-3 米国 Cメジャー配給会社 ............................................................................13 1-6-4 米国 Dメジャー配給会社 ............................................................................13 1-6-5 米国 Eメジャー配給会社 ............................................................................15 1-6-6 米国 Fプロデューサー ................................................................................16 1-6-7 米国 Gメジャー配給会社 ............................................................................17 1-6-8 米国 Hプロデューサー ...............................................................................17 1-6-9 米国 Iプロデューサー .................................................................................17 2 英国の映画機関とフィルムコミッション ....................................................................19 2-1 英国国内の、FCの再編の意義と成果は何か。 ..................................................19 2-2 地域FCの具体的な活動内容は何か。.................................................................19 2-3 海外作品の誘致方法としてどんな工夫を凝らしているか。 ................................20 2-4 英国 インタビュー .............................................................................................20 2-4-1 UK FILM COUNCIL ...................................................................................20 2-4-2 FILM LONDON ...........................................................................................21 2-4-3 EDINBURGH FILM FOCUS ......................................................................22 2-4-4 SCOTTISH SCREEN...................................................................................23 2-4-5 SCREEN SOUTH FILM COMMISSION....................................................24 2-4-6 BRISTOL FILM OFFICE .........................................................................25 2-4-7 NORTH WEST VISION ..............................................................................27

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1 ハリウッド・プロデューサーが考える日本の撮影環境

1‐1 日本での撮影や制作についての認識 1)「BLACK RAIN」(89年公開)の影響

この作品は、日本で撮影が行なった久しぶりのメジャー作品だった。「007は二度死ぬ」など、それまでのアメリカ映画においては、日本の表現はステレオタイプ化したものが

多かった。この映画制作では実際にリアルな日本を描きたいという意欲を持って、10週間の日本での撮影を計画した。しかし、大阪での撮影は困難を極め、さまざまな場面で

期待した協力が得られず、結局 5週間で撮影を中止し、帰国することとなった。撮影できなかった部分は、アメリカで日本に似た場所を探し、日系人を集め撮影したが、予算

は相当オーバーする結果となった。 日本での撮影中止という不幸な情報は、ハリウッドだけではなく、世界の映画業界に

も広がり、「日本では撮影できない」という致命的な認識を植えつけた。その後も海外制

作者が日本で撮影した例が少ないため、制作者の間には日本では撮影が難しいという基

本的認識は、あまり変わっていない。しかし一方、国際化が急速に進み、世界中どこで

も映画撮影が行なわれている今日、17年前の「BLACK RAIN」の結果だけで、日本が撮影困難であると結論つける人は少ない。

2)「Lost in Translation」(04年公開)の効果 近年、ハリウッドの映画人は日本に関心を寄せるようになってきている。04年アカデ

ミー賞で脚本賞を受賞したソフィア・コッポラ監督作品「Lost in Translation」は、東京の日常をリアルに撮影しており、映画の舞台として東京が可能であるという印象を強

く与えた。 ハリウッド映画は世界マーケットを対象として企画・制作されているが、日本はアメ

リカに次ぐ市場であり、非常に重要な地域である。何らかの関係で日本を組み入れたい

ということが彼らの思考にも定着しつつある。「The Last Samurai」が、日本で興行的にアメリカを上回るヒット(120億円)となり、積極的に日本原作のリメイク版(「Ring」「Ring 2」「Shall we dance?」「Grudge」など)を制作している。 彼らは、エンタテインメント・ビジネスをしており、将来どこにビジネス・チャンス

があるかを日夜探っている。常に先のことを考えていて、過去のことは引きずらないと

も言える。 そういた中で、全編日本で撮影された「Lost in Translation」の成功は、彼らを勇気

付けたと言える。

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1-2 実際の撮影経験を踏まえて、日本での撮影の問題点は何か。 1)「BLACK RAIN」関係者 ・ロケーションに対する認識のなさ

88年当時、日本にはフィルムコミッションが存在せず、ロケーションに対して公的に支援する発想など全くなく、撮影に対する協力するという意味が分からなかった。撮

影は、一言でいえば「迷惑事」であった。また、さらにこの作品がヤクザを扱ってい

ることが、協力するという意欲を遠ざけた。アメリカ映画の関係者からすれば、撮影

は地域に経済的効果をもたらし、全米どこでも好意的に受け入れられるという認識を

持っていたが、日本には全くその感覚がなかったと言えよう。現在は、全国にフィル

ムコミッションが設立され、徐々にではあるが、この問題は解消されてきた。 ・打ち合わせとフレキシビリティ 制作担当者は、日本での撮影がスムーズに行くように、関係各所を訪ね、協力要請を

して回った。何回も会議を行い、詳細について詰めていく作業に相当の時間を費やし

たという。一般的に日本には、形式であったとしても会議を開き、時間や決め事はキ

チンと守るという文化がある。 海外の映像制作者は、なぜ会議ばかり行い、予め細かく決め事をしなくてはならない

のか不思議に感じた。日本人は撮影で何かトラブルが起こることを恐れ、事前に多く

のことを決めておきたいと思い、制作者は、条件が絡み合い、変更が日常茶飯事に行

われる撮影にフレキシブルに対応したいと思っても、その決定を守らなければならな

いという矛盾に陥った。一度決定した後の変更が困難なことを痛感させられた。 ・撮影に慣れていない対応 協力要請した府庁、府警など、皆一様に協力する態度を取ってはいたが、実際の現場

の協力体制は取れていなかった。現場を知らない人が大筋了承しても、実際に担当す

る部署が協力的になっておらず、スムーズに話が進まなかった。撮影の規模の大きさ

に驚いて中止されることもあった。警察関係者はトラブルを恐れるあまり、時間や場

所の限定など撮影にかなり制約を課した。 2)「Mr. Baseball」関係者 ・名古屋・中日球場を舞台とする撮影だったが、特にトラブルはなくスムーズに進行

した。 3)「The Last Samurai」関係者 ・大部分の撮影はニュージーランドで行ったが、日本でしか撮影できない部分だけ、

京都・姫路で撮影した。日本の映画会社にコーディネートしてもらって、基本的には

うまくいったが、見積もりの明細などがでず、撮影を止めたシーンもあった。

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4)「Into the Sun」関係者 ・東京での撮影は、警察とのトラブルが多発した。撮影許可を出さない区域があり、

プロデューサーを検挙するなど、警察の規制が最も問題である。 5)まとめ ・ロケーションに対する理解度 → 全国に FCが広がり、理解度は深まっている。 ・フレキシブルな対応 → 映像制作者と行政の間に FC が関与することで対応は良

くなっている。 ・撮影に対する慣れ → まだ海外制作者との付き合いは短いが、徐々に改善される

だろう。 ・不明朗な見積もり → 日本の慣習的なもので、一概に悪いとは言えない。間に入

る日本側のプロデューサーの力量のひとつである ・警察の非協力 → 都市部繁華街を除いて、協力的な関係になりつつあるが、撮

影禁止区域などは、まだ残ったままである。さらに関係改善

が必要である。

1-3 日本への要望・注文 1)日本のフィルムコミッションへの期待 以下の項目で、日本の映像制作環境で最も望むことを 8人のプロデューサーに尋ねた。 9項目を 9点~1点と順位をつけて合計した総合点(72点満点)は以下のとおりである。

1位(54点)機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい 2位(51点)インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND 3位(44点)日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Coordinatorがほしい 4位(30点)交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ 5位(24点)優秀な技術者を養成すべきである 6位(12点)整備されたサウンド・ステージを作ってほしい 6位(12点)英語の堪能なスタッフを増やしてほしい 8 位(2 点)機材関係業者などのリーズナブルで明確なプライスリストを公開して

ほしい 9位(1点)安価で優れた CGハウスがほしい

以上の結果から分かるように、日本サイドにフィルムコミッションや共同制作プロ

デューサーなど、パートナーシップが取れる優秀な協力者が必要であることを示して

している(1 位と 3 位)。日本の条件を熟知し、それに的確に対応できる人や組織が最も重要だと考えている。

フィルムコミッションが日本に誕生したことを歓迎し、その機能充実に大きな期待

を寄せている。

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2)インセンティブ政策への期待 世界各国で行なわれている税金還付などのインセンティブが是非作るべきだと注文

をつけた(2位)。ハリウッド関係者は、世界市場を相手に展開するビジネスマンであり、コストに対して大きな関心を持つ。米国内・世界各国のインセンティブ情報を整理し、

事前に実行予算を細かく算出している。撮影がスムーズにいくことは予算管理ができ

ることを意味する。そうした観点でいうと、1位から 3位まで最終的には、コストに関わってくる事柄である。 現在、日本にはインセンティブ政策がないが、たとえ消費税5%還付だけであって

も大きな価値があると言う。国もしくは地域が、映画撮影に対して重要性を理解して

いるかどうかの証であると認識する。そうした政策をせず、是非来てくださいといっ

ても信頼されないことになる。 日本での税制優遇措置は、そう簡単なものではないが、他の方法であっても何かし

らのインセンティブを作る時期に来ているのは、間違いない。 1-4 日本での制作や撮影の可能性 1)潜在的ニーズ 日本は、日本人が考える以上に、世界的に有名で魅力的な国である。しかし、先端

を行く製造産業や固有の伝統文化については比較的知られているものの、現代の日本

の姿はあまり伝えられていない。日本で撮影されたアメリカ映画は数少ない。日本が

持っている魅力はほとんど未だ表現されておらず、彼らにとって「処女地」でもある。

「Lost in Translation」が高い評価を得たのも、日本の「現在の映像」がちりばめられたことが一因にある。

日本でうまく撮影ができ、優れた作品が生まれれば、世界興行が可能であると彼ら

は考えている。良いシナリオがあれば挑戦したいと言い切る。東アジアは 20 世紀激動の歴史を歩んだ。この地域は多様で特有な文化を持ち、さまざまなドラマを産んで

きた。 近年、日本の漫画・劇画が次々に映画化されている。しっかりとしたストーリーラ

インに海外の映画制作者が注目している。ハリウッド関係者から日本を題材とした具

体的な企画が進んでいることを聞いた。すべてを日本で撮影することは多くはないが、

世界全体を表現したい場合に、日本のシーンは欠かせないものになる。日本には、潜

在的ニーズが十分あると言える。 2)日本での撮影の可能性 現在までに日本で撮影された作品には、2種類ある。 ・部分撮影

舞台が日本であったとしても、その全てを日本で撮影するとは限らない。「Last Samurai」はニュージーランドの田舎に日本のオープンセットを組み撮影した。「Kill

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Bill」は、北京映画制作所にセットを組み、日本シーンを撮影した。いずれも、コスト計算の結果、撮影場所を決めた。

実際の日本撮影は、日本にしかないもの、セットで組めないものなど、どうしても

他国では撮れないシーンだけが行われた。こうした部分撮影は、引き続き今後も行わ

れるだろう。同時に、ワールドワイドに撮影が行われる企画が多数開発中であり、日

本での部分撮影は増加していくと考えられる。 ・全体撮影 舞台が日本であることがセールス・ポイントとなる作品がある。セットでは表現

できない日本の雰囲気が必要とされるものだ。「Lost in Translation」は、アメリカ人が未知の国・日本にやってきて不安を感じるテーマである。東京の日常を表

現しなければ、この作品は成立しない。 「頭文字 D」は、同名の漫画の実写映画化作品だが、日本でドリフト走行をすることに意味がある。 他の国で撮影することは可能だが、日本での走行には見えない。どうしても日本撮

影が必要だった。 これらから、分かることは、テーストを重要視する「私小説的作品」と、日本の

風景を必要とする「アクション作品」が有望であるということだ。

1-5 今後の関係を深めるために何が重要と考えるか 映画全体が国際化し、撮影も全世界で行われるようになったとき、日本もその中で

対応していかなくてはならない。ハリウッドは、彼らのスタイルですべてを進行させ

ようとし、日本は従来の慣習にこだわる傾向がある。そこに無駄な軋轢や誤解を生じ

る。 今まで海外からの撮影は多くなかったので、こうした問題がそのままになっていた

が、今後増加していく個別の撮影を通じて、互いの理解を深めていく必要がある。近

年になって、日本とアメリカの映画制作者は、具体的作品での交流が活発になってき

た。よきパートナーシップを期待する。 アジア各国が参加している Asian Film Commission Networkに関しても、日本と

同じように大きな期待感を持っている。

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1-6 米国 インタビュー 1-6-1 米国 Aエンタテインメント専門弁護士 <インタビューの報告> 1)Chain of Title(日本の制作者とハリウッドの違い)

権利の連鎖(原作+脚本+映画+ビデオ+放映+マーチャンダイズ+Internet+ゲーム・・・)があり、それらを契約期間を含めて明確にする必要がある。

日本の場合は、原作者が出版社へマネージメントを一任してしまう。ハリウッド

では、本人もしくはその弁護士と契約を細かく結びたいのだが、日本には経験の

ある弁護士が少ない。 アメリカではすべての権利を明確にする(Creativeな人の権利処理)Split Rights 20年前に権利関係の訴訟があり、その結果契約のための枚数が増えた。また、技術が進むにつれて、新しい権利も生まれ、複雑になってきたため、分厚くなる。 契約書は、3つの部分に分かれる。 1、Preamble ~ 全体の概要

2、Specific Terms(services,rights,credits) ~ この契約において、特別で最も重要な部分

3、Standard Terms ~ 基本的な契約に必要なもの その他に Deal memo(覚書のようなもので、本契約の前に締結)がある。

2)Producerの種類 ①House Keeping Deal スタジオと専属契約し、事務所・経費などすべてが与えられる。

”Lake Shore” “Cruse & Wagner”といったプロダクション。 ②First Look Deal スタジオと新企画を相談する義務を負う。たとえば、1年 1億円をもらって、 開発したパッケージを提示する。RoyLeeなどのプロダクション。

③Major Independent 企画の資金調達と配給をスタジオと契約できるプロダクション。“New Scope”“Imagine” New Lion” ④Independent 多くの人がいる。その中には、メジャー志向とそうでないものが含まれる。 メジャースタジオは、毎年各社 20本程度の作品を制作。それ以外は、インデペンデント作品。

常に新しい人々が生まれ、スタジオが吸収していく。

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<インタビューから得られたもの> 今後、日本の制作の慣習などを理解した弁護士の存在が大きくなるだろう。アメ

リカの契約は、互いに細部まで確認して行い合理的ではあるが、日本が全てそれ

に合わせるべきかどうか疑問がある。著作権やユニオンなど基本的な制度の在り

方や考え方が元々異なるからだ。その部分の整合性を認識した人材が必要である。

1-6-2 米国 Bエグゼクティブ・プロデューサー <インタビュー結果> 1)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 ( ◎ )インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND *どこでもある税金還付制度は必要だ。 ( ◎ )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい *道路を含めたあらゆる撮影許可について、協力されていることが必要である。 ( ○ )日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Coordinatorがほしい

*すでに一瀬氏という優れたパートナーがいるが、知らない人には重要。 ( ○ )交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ *撮影の際に、一度警察官から注意され、中断したことがあった。

2)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 *大いにある。アクション映画にとって、日本は映像的に知られておらず、魅力的な場

所である。ハリウッドでは、最近日本で撮影ができそうだという認識が広がり、かな

りの企画が進んでいるようだ。企画の内、5%~10%くらいが日本関係かもしれな

い。 * 一方で、韓国での撮影については、全く考えていないという。 <インタビューから得られたもの> ①ハリウッド映画では、日本での撮影がうまくいくという認識が広がっており、次々に

今後日本で撮影が行われていく傾向が強い。日本が舞台になることは、今まで撮影件数

の少なく、新鮮であり、かつマーケット的にも重要な要素である。 ②日本に協力関係のあるプロデューサーが存在しているので、何でも相談できて特に不

安を感じていない。フィルムコミッションの機能充実を期待している。

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1-6-3 米国 Cメジャー配給会社 1)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 ( 1 )インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND

( 2 )日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Coordinatorがほしい ( 3 )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい ( 4 )英語の堪能なスタッフを増やしてほしい ( 5 )整備されたサウンド・ステージを作ってほしい ( 6 )優秀な技術者を養成すべきである ( 7 )交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ ( 8 )機材関係業者等のリーズナブルで明確なプライスリストを公開してほしい ( 9 )安価で優れた CGハウスがほしい

2)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 * 大いにある。今回の某映画は、東京を含めた日本で大半を撮影する。キャストとメ

インスタッフを除き、他は全部日本に任せる方法で制作する。20億円くらいのお金が日本に落ちることになる。この作品が成功すれば、多くのアメリカ映画が日本に

行くことになるだろう。日本的なテーマの撮影の場合は、日本で撮れないものを除

いて、コストの安い他の国で撮影することもあるが、アクション映画はバックグラ

ウンドとして特定の場所で撮影することに意味があり、こうしたものは日本で撮影

する必然性がある。 * この作品の実現に全力を傾けてほしい。4 月になったら、日本に行き、関係者と打ち合わせをしたい。

1-6-4 米国 Dメジャー配給会社 1)一般的にご自分が所属している関係者などが感じている「日本での撮影や日本との制

作」についての意見はどのようなものか。 * メジャースタジオが考えていることは、最も重要なのはお金だ、ということだ。

コスト計算をして、競争に勝たねばならない。そのためには、インセンティブが

重要である。 各州や各国のインセンティブのリストがあるが、日本にないのは致命的である。 早くそうした制度を作るべきである。

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2)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 ( 1 )インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND

( 2 )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい ( 3 )整備されたサウンド・ステージを作ってほしい

* アメリカでは、普通 20000平方フィートのスタジオを使用していて、これ位のものが必要だ。 日本にもこんなスタジオを作ってほしい。

( 4 )優秀な技術者を養成すべきである *日本で撮影する場合は、メインスタッフだけ行き、後は日本人を使いたい。 ( 5 )日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Coordinatorがほしい *ローカル・プロデューサーが是非必要。

3)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 * 日本映画のリメイクの予定があるが、日本で撮影するかどうかは今のところわか

らない。日本での撮影は、日本が舞台になっているものに限られる。今のところ、

そういう脚本は上がってきていない。 <インタビューで得られたこと> D メジャー配給会社は、今まで日本での制作をした経験がなく、一般的な海外での撮影について意見だった。その中で、何度も強調したことが、インセンティブである。

例え、日本の消費税5%の還元であっても、20億円のロケーション費であれば、1億円還元されることになる。これが 15%~20%のところもあり、制作者には大きな魅力になる。また、そうしたインセンティブを国や地域が制度化しているということは、

撮影に好意的であるという証明でもある。

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1-6-5 米国 Eメジャー配給会社 1)一般的にご自分が所属している関係者などが感じている「日本での撮影や日本との制

作」についての意見はどのようなものか。 *日本はコストが掛かりすぎるので、撮影は行きにくい。私たちにとって、最も重要な

ことはお金である。すべては、そこに帰結する。 2)日本での撮影経験や企画経験などはあったか。実際にその経験を踏まえて、日本のど

んなところに問題点を感じたか。 *最終的な要因は、すべてコストに尽きる。どうしても撮れない場面だけ、日本で撮影

した。京都撮影については、寺の関係者も協力的だったし、松竹の担当者もよくやっ

てくれた。小泉首相にトム・クルーズが会ったり、京都府・京都市も協力する約束も

した。ただ普通、撮影には大きなトレーラーを含めたたくさんの車両が必要で、そう

した時に駐車するスペースがないのは困る。 最も致命的だったのは、機材やスタッフの見積もりである。明細がなく、何がいくら

か、全くわからない。明細を要求したが、出てこないので、撮影を中止し、引き上げ

た。こういうことは、普通ほとんどない。 アメリカからの輸送費、撮影セット作成、人件費、Background Performer(エキス

トラ)など、すべてを計算し、NZに決めた。 3)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 *以下の 9項目には、答えなれない。なぜなら、互いの概念が違い、内容的に何をさ

しているか、解釈に差異があるからだ。 とはいえ、何より重要なのは、インセンティブである。結局、何でも費用に関わっ

てくる。 ( 1 )インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND

* ルイジアナ州は、映画撮影誘致に熱心で、作品の 75%予算消費する作品については、全支出の 12%還付することにしている。5 年間で映像制作のインフラを作る計画で、これは地域経済の振興施策である。ニューヨーク州

も現在 10月を目指して、インセンティブをパッケージした法案を検討している。それが成立すると、15%還付される。 NZ、オーストラリアも 12,5%の還付があるから、新「スーパーマン」や「マトリックス 3」の制作が行われるのだ。

( 2 )日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Coordinatorがほしい ( 3 )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい ( 4 )英語の堪能なスタッフを増やしてほしい *チェコでもよく撮影をするが、映画関係者のほとんどがうまい英語を話すの

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で、全く問題がない。 ( 5 )交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ ( × )安価で優れた CGハウスがほしい *Visual Effectに関しては、優秀であればどこでも仕事になるし、需要が追

いつかない状況だ。小さな規模ではなく、大きな仕事を請けられるようにす

ればありがたい。そんな会社で 1年に 200億円くらいの売り上げは可能である。

4)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 *早く成功モデルを作るべきだろう。撮影は、カーニバルをするようなものだ。それに

対応できる場所や施設は必要である。(大きなスタジオがあったほうがいいが、なけ

れば格納庫、倉庫など) NZでうまくいったのは、CG会社を含め、インフラが整ったことが大きい。 東京と似て物価が高いのはロンドンだが、スタジオ、CG、スタッフなど、制作に関するすべてが完備されているので、アメリカから人を連れて行かなくてもよく、その

点で費用がセーブできる。 5)今後、ハリウッドと日本の映画関係者との関係を深めるために何が重要と考えるか。 *一つの作品をしっかりと協力して作っていくことが重要である。世界を相手にする

映画を制作すれば、日本の撮影環境も良くなっていくだろう。 6)アジア各国が参加している Asian Film Commission Networkに何を期待するか。 *素晴らしい考えである。

1-6-6 米国 Fプロデューサー 1)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 ( 1 )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい

* 何より地域の理解が重要で、地域活性化に向けた住民の意識が必要であ

る。 PRのための使いたい写真などは事前に言ってくれれば、問題なく提供できる。

( 2 )交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ 2)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 *日本が好きなので、仕事がきたらやりたいと思っている。アメリカ映画の撮影でも、

アメリカ人で日本を知っている人間が必要である。

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1-6-7 米国 Gメジャー配給会社 1)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 ( 1 )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい *地域の全面協力が必須である。 ( 2 )日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Coordinatorがほしい ( 2 )優秀な技術者を養成すべきである *現地調達するクルーが必要だ。また、今後 DI技術が大変重要である。 ( 4 )インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND *ただ、これがなければ撮影しないわけではない。

2)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 *大いにあると思う。 1-6-8 米国 Hプロデューサー 1)日本の映像制作環境に望むことは何か。 * 何はともあれ、交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ。 関係する複数の町内会や区長など、撮影のために申請する相手が多すぎる。 フィルムコミッションがそうした窓口を一本化して対応してほしい。

<インタビューで得られたこと> 実際に東京でロケをし、警察との闘いをしてきた経験から、日本の撮影についての協

力体制に深い不信感がある。しかし、一度良い環境で撮影ができ、そうした安定した

関係が築ければ、日本にとって重要な人材である。 1-6-9 米国 Iプロデューサー 1)日本の映像制作環境に望むことは何か。そのプライオリティはどうか。 ( 1 )インセンティブを作るべきだ~税金還付、FUND

( 2 )日本に信頼でき、対応できる Co-Producer、Cordinatorがほしい ( 3 )交通規制の緩和、警察の全面協力が必要だ ( 4 )優秀な技術者を養成すべきである ( 5 )機能充実したフィルムコミッションの全面協力がほしい ( × )整備されたサウンド・ステージを作ってほしい ( × )英語の堪能なスタッフを増やしてほしい ( × )安価で優れた CGハウスがほしい

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2)日本でこれから制作や撮影を行う可能性はあるか。日本を舞台にした企画が成立する

可能性は大きいか。 * 日本の具体的な視点があるシナリオがあるかどうかに掛かっている。

3)アジア各国が参加している Asian Film Commission Networkに何を期待するか。 * アジアを舞台にした作品には、大変興味がある。ハリウッドは、変化する業界なの

で、アメリカ人の関心を惹く脚本がかければ、どんどん作られていくだろう。

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2 英国の映画機関とフィルムコミッション

2-1 英国国内の、FCの再編の意義と成果は何か。

英国では2003年3月、映画機関が統合されて、UK FILM COUNCILが発足した。教育・

研究・保存機関であるBFI(British Film Institute)も国の映画振興機関であった

BFC(British Film Commission)も一緒になった。国際的に強化する狙いがここにはあ

る。フィルムコミッションは80年代後半から各地に設立され、それぞれ独自に存在し

てきたが、この戦略的統合によって再編の波に飲み込まれた。一部には廃止されたと

ころもある。とはいえ、単なる中央と支部という上下関係ではない。

イングランド9地域とウェールズ、スコットランド、北アイルランドの計12地域に

それぞれ地域開発庁が置かれ、そこからの予算支援でスクリーン・エージェンシー(映

画庁)が置かれている。

それぞれのスクリーン・エージェンシーは、その地域の実状と方向性によって、重

点的施策が異なる。フィルムコミッションに予算を付け、機能アップを図るところも

あれば、そうでないところもある。映画祭支援や上映支援に力を注ぐところもあれば、

映像教育や制作支援をするところもある。全体として英国の映像文化と映像産業を振

興することには違いはないが、均質の施策を押し付けてはいない。UKFCは、予算措置

によって全国的な視野で対応しようということだが、今の段階では各地域は別々の活

動として写る。国全体の施策強化という流れがある中で、他方で地方自立の流れも加

速している。その整合性が今のところあまり取れていない印象を持った。まだ数年か

かるだろう。

2-2 地域FCの具体的な活動内容は何か。 各地域のフィルムコミッションは、それぞれ地域の工夫を凝らしながら、独自に展

開している。

スコットランドは、小さなフィルムコミッションが11ヶ所あるが、さらにきめ細か

く対応するためにエリアと数を増やし、ネットワークして、強化したいという。

ブリストル地域は、2つしかフィルムコミッションがない。その他のところはフィ

ルムコミッションに興味がないので、ブリストルFCが中心に動きたいと言う。

リバプールFCは、英国の支援よりもEUの支援の意義について評価した。

地方型のフィルムコミッションは、海外からの映画誘致よりも地域での文化振興を

強く打ち出して活動している。地元の関係者が映画制作を行う際の支援などに力を注

いでいる。

ロンドンと周辺のフィルムコミッションは、英国全体の80%の撮影がここで行われ

ているという。FCロンドンは、世界的に見ても撮影困難といわれてきた汚名を返上し

たいという意気込みでUKFCの国の施策を盾に各方面の協力体制を組んできたと語る。

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地方とは逆にアメリカ映画などの誘致を志向しているが、今まであった映画制作への

減税措置が見直しに入っていて、その結論が出ていないため、撮影延期が相次いでい

ると嘆く。同時にポンド高・ドル安でもある。国の早い決定を待っている状況である。

2-3 海外作品の誘致方法としてどんな工夫を凝らしているか。 各FCが制作者側に提供しているインセンティブは何か。

残念ながら、今回のタイミングは、国のインセンティブの見直し時期と重なり、十

分な回答が得られなかった。アメリカ映画は、英国で大掛かりなセット撮影を何度も

行っている。それだけの設備と人材があるが、今プロモーションができなくて困って

いた。

地方のフィルムコミッションでは、以前は英国で撮影していたような作品が、コ

ストの安いルーマニアやチェコに行ってしまっているという。強いインセンティブ

への要望がどこでも聞かれた。 2-4 英国 インタビュー 2-4-1 UK FILM COUNCIL www.ukfilmcouncil.org.uk <成立と課題> * 90年代、保守党サッチャー政権時、映画支援のために宝くじから資金提供した。

5 つのフランチャイズ会社を選び、資金提供した結果、「ブラス」「トランスポッティング」などいくつかの成功した映画を生み出したが、費用対効果は満足できるもので

はなかった。 一方、英国各地にフィルムコミッションがうまれ、撮影の支援を行っていたが、資金

も少なく、それぞれが独立していたので、活動にも相当の差があった。また、国の映

画振興機関である British Film Commissionが、地域フィルムコミッションを支援していたが、あまりうまくいかなかった。

* 労働党政権になってから、国際的視野から戦略的に考えるようになり、再検討が始ま

った。ついに 4つの組織が一体となった UKFCが 2003年 3月発足した。同時に各地のフィルムコミッションも再編成された。現在、イングランドの 9 地域と、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの計 12地域に、「Regional Screen Agency」が置かれている。これらの組織は、Regional Development Agencyが主に運営資金を提供している。各地のフィルムコミッションの再編での過程においては、1 年半でスムーズに移行できたことろもあったが、3年かかったところもある。

* UKFC は、宝くじ基金から多くの FUND のための資金提供を受けているが、減収傾向にあり、安定したものではないため、再検討を余儀なくされている。3 つの FUNDは、それぞれ特徴がことなり、返還不要のものと、一部返還、成功時に返還など細か

く決められている。

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<プロダクションリストとプロデューサーリスト> * UKFCは、海外からの問い合わせに対して、多くの情報提供を行っている。 プロダクションリストはすでに古くなっており、これからリニューアルする予定である。 Co-Producer List は、50 万ポンド(約 1000 万円)以上の作品を 3 本以上制作した経験のあるものをリストアップしたものである。 <国際共同制作協定の今後> 今まで、ヨーロッパ、カナダ、オーストラリアなどと共同制作協定を結んできたが、も

う一度考え直して、新たに 4カ国と締結する準備を進めている。それは、モロッコ、ジャマイカ、南アフリカ、インドである。今まで、英国の共同制作のための資格は、全体の 20%という緩いものだったが、これからは 40%に引き上げたい。 <英国映画のプロモーション> 05年 10月から翌年 3月までの間に、日本でのセールス・プロモーションを行う計画があるので、是非協力してほしい。

2-4-2 FILM LONDON www.filmlondon.org.uk <成立と課題> * 2000年、ケン・リビングストン市長が就任し、London FCから 2003年 Film Londonへの移行することになった。LFCは、映像産業のために役に立ってきたが、UKFCの流れを受けて、観光や産業も含めその重要性を認識した結果、もっと広範囲で戦略的

な組織にすることになった。9・11以来、観光が落ち込み、ビジュアルによるシティ・セールスがさらに見直されたこともあって、ロンドンを舞台とする映像作品を積極的

にプロモートすることになった。 * Partnership Documentといって、FLと関係機関(行政、警察、消防、地域など)との共通認識を深める合同協議する場所ができ、総合的な展開が可能になった。地域行政

との意思疎通もよくなり、警察との関係も深まり、撮影環境は 2 年でかなり良好になった。SOHOでも封鎖して撮影した。今年 6月に大きな道路を 3日間封鎖して撮影することもできるようになった。作品名は教えられないが、メジャー作品である。警察

署員すべてが、協力的とは言えないが、少なくとも上層部はきちんと撮影についての

理解をしている。警官の立会いは、有料でできるが、1持間 37ポンド(8000円)する。今、撮影について「できません」という返事はしないようになっていて、「どうしたら

できるか」と考えている。 * 撮影については、地元地域への撮影料を支払う制度もあり、文句をいう人はほとんど

いない。メンテナンス・オーダーといって、道路に穴があいていたりしたところで、

撮影をしてもらって、ついでに工事を行うという方法もある。

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* Tax Creditは、今までものがあまりよくないので、UKFCが中心となって検討中だが、アメリカのように州政府などによって地域税を還付できるようになっておらず、国税

ゆえにかなり時間が掛かると思う。 * ローバジェットというには、5万ポンド以下のものをいう。 * 学生の映画などは、数が多くて対応できていない。保険は 200 万ポンド以上を要求していて、学生には学校での保険を適用するように言っている。

2-4-3 EDINBURGH FILM FOCUS www.edinfilm.com <Film Focusの役割> East Lothian Council, The city of Edinburgh Council,Scottish Borders Council,Scottish Enterprise Borders,West Lothian Councilが資金提供して、運営されている。Fundは、SSとMEDIA(EUのメディア産業支援プログラム)

<成立と課題> * エジンバラ FCは、スコットランドで最も早く、1990年設立された。その後、エジンバラ以外の地域を担当し、また国際マーケティングの役割を担う Scottish Screen(現在のものの母体、以下 SS)がスコットランド政府によって設立された。これは、ロケ・サービスだけではなく、制作支援、教育、資金調達、アーカイブなども行う映画機関

である。以降ハイランド地域、グラスゴーなど各地に FCが発足した。 * 98年ころから、各地域の FCがネットワークを作る動きが出てきた。それは、映像制作者からの要求に、ひとつの地域だけでは、対応できないことが多いからである。現

在、11の FCでネットワークしている。 * スコットランドは、UK の中で独立した立場をとるので、FCUK による FC 再編は、あまり影響を受けていない。しかし、国全体での再構築なので、映画やテレビなどの

産業は成立の仕方が異なるので、総合的な政策を作ることには少し混乱した。 * インセンティブに関しては十分なことができていない。UKFCは UK政府に対してロビー活動をしているが、SSはスコットランド政府に TAXブレイクや TAXクレジットを要求している。なぜなら、UKFCはイングランド中心に仕事をしているからである。

* アメリカでは、州などのローカル TAX の制度があり分かりやすいが、英国の VAT は国の制度なので、変更が難しい。英国は現在、映像制作者に対してのプロモーション

がうまく機能していない。 <撮影許可> * エジンバラでは、許可なしで撮影ができることを売り物にしている。ドキュメンタリ

ー撮影や小さなクルーの撮影が、公的場所や歩道上の撮影などについて、許可なしで

撮影できる。ただ、公的な施設か民間の施設なのか区別がつきにくいものも多いので、

事前に相談してもらったほうがいい。

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* 撮影の許可はなくてもいいものでも、PAKINGの許可は必要である。駐車する場所によって、申請から許可までの時間や使用料が異なる。

* 今まで 10年間担当しているが、こうしたことで特にトラブルは起こっていない。 * 道路封鎖をして行う撮影もしている。エジンバラ・オールドタウンの人通りの多い道

を 1日封鎖して美術装飾を行い、翌日の 1日、撮影のため交通を遮断して使用した事例もある。住民からのクレームはなかった。また、別の撮影では、道路上に中世時代

の門を作って撮影のため、10日間、特別に占有した。 * 住民がなぜ文句をいわないかというと、撮影はわずか数日で終わるし、そのちょっと

の時間を我慢すれば、それ以降何年にも亘ってよい効果やさまざまな恩恵があると考

えているからだ。 <海外プロモーション> * 経済的な支援はできないが、必要とされるような写真などを送っている。 * エジンバラは撮影許可がいらないので、「通り」をよく撮りに来る。ただ、撮影全体を

誘致することは競争があって難しい。スコットランドが舞台の映画でもルーマニアで

撮影されたり、ニュージーランドで撮影されることもある。これらは、Co-Production協定で安くなったからだ。スコットランドは、アイルランドと地形も似ていて競争状

態になっている。 2-4-4 SCOTTISH SCREEN www.scottishscreenlocations.com <Scottish Screenの役割> The Scottish Locations Network ( contact : Scottish Screen Locations ) 1, Scottish Highlands & Islands Film Commission 2,Grampian Film Office 3,Tay Screen 4,Clackmannanshire Council 5,Stirling Council 6,Edinburgh Film Focus 7,Glasgow Film Office 8,Lanarkshire Screen Locations 9,Ayrshire Film Focus 10,South West Scotland Screen Commission <成立と課題> * 現在の組織は 8年前に設立。元の組織は 80年代からあった。運営資金は、スコットランド COUNCILから出ている。全部で 40人が働く。

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* Fundは、LotteryとMEDIA(EUのメディア産業支援プログラム)。UKFCの FUNDはイングランドへ支援措置で、他の 3カ国は対象でない。

* ネットワークは、非公式な組織で、連絡機関。現在 11だが、さらに空白場所や、大きすぎる地域には FCが立ち上がってほしい。

* インセンティブは、TAXから見込めないので、スコットランド政府やエンタープライズから何かできないか模索中。マン島だけが、歴史的な理由だと思うが、独自の

TAX方式をとっている。 * UKFC再編は、イングランドでは大きな変化だった。古いところが新しくなることで、時間が掛かった。1 つの地域に 4~5 あるので、大変だった。BFC のころは、支援措置もあったので、12の Screen Agencyで会議も行われていたが、今は会議をしていない。近くのイングランドの組織とは連絡がある。

* SSのターゲットは、中規模作品の誘致で、そのための Fundである。資格は、スコットランド人による制作に限っている。ただ、Co-Production で入っていれば対象となる。

* 05 年、8 月 21 日~25 日 AFCI の Cineposium をグラスゴーのリバーサイドの

MortHouseHotelで開催する。ちょうど、エジンバラ映画祭が、17日~28日に行われている期間で、映画も見てほしいと思う。

2-4-5 SCREEN SOUTH FILM COMMISSION www.scottishscreenlocations.com <Screen Southの役割> イングランド南部の地域の Screen Agencyで、Film Commissionの活動の他、上映支援、配給支援、映画祭支援、ファンドによる制作支援などを行っている。 本部はフォークストンにあり、フィルムコミッションはパインウッドスタジオ内にある。 <成立と課題> * 英国の映画撮影の 80%はこことロンドンで行われている。ロンドンから近く、

PINEWOODと SHEPPERTON(同じ経営者、戦前に大きな屋敷跡を買って設立)という 2 つの大きなスタジオがあり、ロケーションと一体化して活動し、大きなメリットとなっている。

* UK のインセンティブがなかなか決定しないので、大きな作品を準備している人はずっと待っている。

* フィルムコミッション再編のとき、最後にできたのが、FILM LONDONで昨年だ。その前が、SOUTHだった。

* スタジオにブランチを持ち、制作者と打ち合わせをしている。パインウッドスタジ

オは、テレビもやっていて、ほとんど一杯になっている。

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* 現在、HP に力を入れていて、データベースを見てほしい。さまざまなロケ地を詳しく紹介している。

* パインウッド・シェパートンスタジオは、英国で最も大きなスタジオである。 200エーカーの敷地に、36のステージがあり、80エーカーのオープンセット用地もある。007 シリーズのスタジオ撮影はパインウッドで行われている。世界で一番広い「The 007」ステージは、45,000平方フィート(約 1350坪)の巨大なもの。007以外の撮影で現在も使用されている。

* パインウッドに巨大な TANK(日本でいう撮影用プール)がリニューアルされた。TANKの前には、横 70m縦20mのスクリーンが張られている。訪問時はブルーバックになっていた。最近、別に水中撮影専用のステージが完成した。ここのプール

の大きさは、横 22m縦 11m、深さ7mである。

2-4-6 BRISTOL FILM OFFICE www.filmbristol.co.uk <成立と課題>

* 再編前には、UK全体で 25の FCが独立的に存在していた。2003年、UKFCと共に設立された South West Screen Agency(SWSA)のエリアであるイングランド南西地域には、ブリストルとバース・スパの 2 つ充実したフィルムコミッションがある。それ以前には、90年代に設立された South West Film Commissionがあった。コーンウェルに本部、ブリストルに支部を置き、53の自治体からの会費制で運営していたが、かなり苦しいものであった。さらに自治体の観光 PR に関する予算が減少するなかで、何のためにこの組織が必要かというような論議もあり、

再編されることは必然的だったと思う。観光だけでなく産業振興や地域外からの

投資(Inward Investment)を誘致するという大きな戦略の中で、機能している。ここの FOは、以前の FC時代の組織が持続された。

* ここの FO の収入は、全額市の財政からのもので、議会の直轄組織なので、警察も含めてかなりやりやすい状況にある。英国の FC の所属部署は、観光と産業が多い。ブリストルは、文化振興部署に置かれているが、経済部門からの予算もも

らっていて、報告義務がある。観光関係者も FO の意味をよく理解していて、あまりイメージのよくない作品であっても、それがブリストルで制作されることに

よる収入があることで好意的である。 * 以前、病院を舞台にした 48話のテレビシリーズの制作があり、交通事故や爆破やいろいろな撮影がここで行われた。警察は協力的で、高速道路でも封鎖できるが、

最近は自動車の数が増えてきて、以前より難しくなった。ロンドンが撮影困難な

と同じだ。

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* UKFC から SWSA には、年間 100 万ポンドの Lottery による Fundマネーがでている。これは、各地域 SAが毎年ビジネスプランを UKFCに提出し、UKFCが振り分けて予算化されるものである。 この金額は、まだ十分なものと言えず、あまることはない。

* 他に UK政府から地域経済開発庁に 10億ポンドの予算が組まれ、各地域の特徴のある重要産業に対して投資されるが、SW地域は「Creative産業」(メディア、映像、ゲーム、アニメ、音楽、パフォーマンスなど 15 部門)の振興として予算が下りてくる。

* ブリストル地域は、BBC の自然番組やドキュメンタリー番組の制作拠点がある。1000人雇用されている BBCスタッフの内、800人はその専門である。世界で制作される自然番組の 25%が、ブリストルで制作されている。2年に一度、アメリカのジャクソン・ビルと交代で、自然・動物番組の映画祭の「WILD LIFE FILM FESTIVAL」がここで開催される。日本の富山でも開催されている。

* BBCは、政府の政策から、娯楽番組は ITVや Ch5などの商業放送局に任せ、質の高い番組を制作するように求められている。また、視聴料で運営されているに

も関わらず、その予算の多くがロンドンで使われることに批判があり、地域のプ

ロデューサーを起用し、少なくとも 35%を地域での制作することを義務付けた。現在、ロンドンからブリストルへ移動する人も多い。

* ちなみに BBCは、マンチェスターにドラマ部門を持ち、グラスゴーにコメディ部門がある。それぞれの地域に特徴をもたせている。

* ブリストル市は、アート振興のために、年間 1200 万ポンド(24 億円)の予算を組んでいる。

AFCI に加盟し、昨年トレード・ショーに参加し、これからハリウッド映画などの誘致していきたいと思うが、インセンティブについては弱い。TAXブレイクの状況は悪化した。特別な領域の税の免除をするこの制度のなかで、映画も含まれていた

が、炭鉱関係で不正が発覚し、全体が見直しのために中断された。代わりに 05年 4月からセクション 41で映画支援が行われるはずだが、内容はまだよく分からない。

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2-4-7 NORTH WEST VISION www.northwestvision.co.uk <成立と課題> * 1989 年、英国で初めて設立されたフィルムコミッションが、リバプール・フィルムオフィス(LFO)である。それ以来、ずっと活動してきたが、03年の UKFCによる SA再編で生まれ変わった。

NWV地域には、5つの FCがある。リバプール、マンチェスター、カンブリア、チェシャー、ランカシャーである。NWVのメンバーだが、2人は LFO職員を兼務しており、市から給与(7万ポンド)をもらっている。他に、各 FCに 1人ずつと、リバプールとマンチェスターの職員を合わせ、22人が働いている。 この費用は、UKFCからの資金や宝くじなどで、150万ポンドである。 全体の会議を月 1回開き、マネージャー会議を週 1回行う。理事会の下に、FUNDと INVESTの 2部門がある。

* リバプールは、ジョージア、ビクトリア時代から発展を遂げ、産業革命に全盛を極

めた。しかし、その後船舶、港湾などがロンドンに奪われ、栄光の時代が終わる。

しかし、当時の古い素晴らしい施設が数多く残された。1896 年、リュミエール兄弟が来て、ロケーションを行ったフィルムがある。

* 80 年代英国全体の不況の時には、会社が閉鎖し、失業者が溢れ、どん底を味わった。85年、ここで撮影された映画「ブレジネフへの手紙」がヒットし、また BBCの番組などが撮影されたことによって、映像の撮影が大きな効果を生む認識が広が

り、FCが設立されるようになった。 * 現在、EUが指定した Object oneというプログラム(荒廃指定された地域活性化)に選ばれ、98 年から 10 年間に亘り、1300 億円に及ぶ財政的補助が出ている。その結果、ジャガーの工場がここに誘致できた。

* Regional Attraction Fundは、テレビ関係の会社の流入促進の事業ファンドで、作品への支援ではない。年間 100 万ポンドの予算。リバプールには 4 つの放送局があるが、その関連の会社を増やしていきたい。

* Merseyside Fundは、この地域で制作・撮影される作品への資金提供。2004年から 10年までで、300万ポンドの予算。1作品あたり、上限は 25万ポンド。すでに6作品が支援を受けた。

* UKFCは、FUND やインセンティブなどに興味があるが、ロケーション自身にはあまり興味をもっていないと思う。また、どうしても LONDON中心に考えがちである。9 つの RSA があるが、ロケーション部門を持っていないところもある。もともと、映画の歴史を理解してない人が担当していたりする。NWは 5人、Sは 1人、バーミンガムのある Mid などは0だ。そこでは、コミュニティ上映支援や新人育成教育などをしている。

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* AFCIに加盟するのも、その理由を内部に説得して入った。BFCの時代は、ここがまとめてロケーション・トレード・ショーに UKブースを作ったが、これからはよくわからない。

* 現在の TAXブレイクは、今年 7月で終わる。 * 某アクション映画では、道路封鎖してカーチェイス・シーンを撮影した。特にトラ

ブルはなかった。100キロ以上のスピードでも OKだった(日本は制限速度遵守)。 * 非番警官をロケの時、制作会社が要請することができる。エジンバラと同じ 1時間

38 ポンド。高いと思うかもしれないが、制服警官がいると、ドライバーも文句を言わない。また、近くの家で嫌がらせにラジオのボリューム一杯にしたりする人が

いると、警官が訪問して協力を求める。 派遣人数は警察が決めるので、5 人でいいと思っていても 10 人来たこともある。警官も楽な仕事で、収入がいいので、喜んでいる。

* マンチェスターの HPでは、撮影はすべて FCを通して行い、警察などには直接コンタクトできないようになっている。英国には、撮影許可という仕組みはない。FCが撮影したいと申し入れがあると、関係者を招集して協議し、すべてを準備する。

そのために、小さい撮影で 1W、大きい撮影で 4 ~5Wの時間を取っている。ただ、撮影日時の変更などには、フレキシビリティがないので、延期の場合は再び協議す

ることになる。 * 撮影場所探しのときに、工事予定で封鎖されていて、工事のない日を紹介する。住

宅街にも、いろいろな時代を思わせるところがあり、それぞれの時代に合わせたり、

ロンドンの町だったりできる。元王立裁判所の施設は、裁判のシーンや牢獄、廊下

など様々な撮影に便利なところである。元ドックもいいロケーションになる。寂れ

た感じがよく、いつも勧めている。ただ、老朽化が進み、取り壊す計画があり、撮

影適地をどう守るか難しい問題だ。

以上