ict施工時代に向けて...
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地元土浦市の取り組みと社会的効果
こうしたなか、茨城県土浦市では、平成二十七
年四月より、家庭から出されるごみを細分化し、
これまで「燃やせるごみ」としていたものから、「生
ごみ」と「容器包装プラスチック類」を、資源と
して別に回収することになりました。
このうちの、「生ごみ」日量約二〇tが、『バイ
オプラント』に持ち込まれ、他の食品廃棄物とと
もにバイオガス化・堆肥化されます。
分別細分化初年度の平成二十七年度は、年間
五、四〇〇tの市民からの生ごみを受け入れ(概
ね分別協力率は五〇%内外)、容器包装プラスチッ
ク類の資源化と合わせて、実に可燃ごみの焼却量
二五%削減に結びつきました(図3)。
こうした土浦市の取組は、行政ごみ処理の方針
を、焼却あり
きから、資源
化優先への流
れとさせる先
進的なものと
いえます。ご
みが資源化に
まわった分、
焼却残さの発
生量も減少す
るため、土浦
市の最終処分
場延命にもつ
ながります。また、生ごみ由来のバイオ燃料が石
油に代替される効果、また、プラスチックを焼却
しない効果により、ごみ処理に伴う温暖化ガスの
削減は、対前年二四%減にもなりました。今回の
資源化への方針転換は、温暖化対策にも大きく寄
与するものとなります。
今後は、さらに土浦市と協力し、資源化の効果、
更なる分別協力率アップに向けて、市民への周知
啓蒙活動を推進していくこととしています。
4
おわりに
『神立資源リサイクルセンター
バイオプラン
ト』は操業開始から五年を経過し、昨年度は約
二〇〇人が見学に訪れました。県内外の自治体、
各種協会・市民団体の方々で、生ごみ減量対策、
バイオマス事業への関心の高さが伺われます。
弊社では、食品廃棄物を「バイオガス」と「堆
肥」に「資源化」できる湿式メタン発酵システム
を、国内に大きく普及させていきたいと考えてい
ます。そのためにも、堆肥の肥効や高付加価値化
については茨城大学と、自治体のごみ処理システ
ムのあり方、およびメタン発酵システムの普及に
ついては北海道大学と、それぞれ共同研究を行っ
ています。
今後は、他の自治体にも本システムを普及させ、
より一層環境への負荷を軽減しながら持続的な発
展ができる循環型社会の構築に、グループ会社全
体で貢献して行く所存です。
写真 3 堆肥利用「HIコンポスト」
24,606
834
5,428
24,992
801
4,900
分別細分化前(平成26年度)
カッコ内は、ごみ組成から推定した数量
32,905
(13,162)
(2,632)
(17,111)
分別細分化後(平成27年度)
2年目(平成28年度)
(t)
生ごみ
容器包装プラ
燃やせるごみ
家庭系ごみの分別細分化により、 一般家庭のゴミ組成
一般家庭のゴミ組成(容器包装廃棄物の使用・排出実態調査H25)
(湿重ベース)
生ごみ40%
プラ 他11%(容器包装プラ8.6%)
家庭ごみ全体の減量(7%)ごみ焼却量は25%ダウン
焼却処理減、バイオガス化による化石燃料代替効果により
家庭ごみ処理に伴うCO2排出量 24%ダウン
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
紙・布類36%
木・竹・わら 類4%
不燃物7%
その他2%
図 3 土浦市のゴミ分別細分化による減量化実績
我 が 社 の 技 術 P R
我 が 社 技 Pの 術 R
国土交通省が積極的に進めている
「i-Construction
」と「CIM」への対応により、「建
設工事」は大きな変化の入り口に立っている。ま
だまだ、始まったばかりで、どのような形で変化
していくのか五里霧中ではあるが、私自身ここ二
年あまりICT施工にたずさわってきて、建設業
界のみならず、IT(ハードおよびソフト)業界
を中心に建設系とは離れていた業界も巻き込んで
急加速している現状は、非常に頼もしくかつワク
ワクするものがある。
当社においても、経営戦略としてICT施工へ
の対応が大きくクローズアップされ、東北地整発
注の「発注者指定型ICT施工工事」の受注(平
成二十八年十月)を契機にICT推進部を発足さ
せ、本格的なICT施工対応を推し進めている。
ICT推進部の大きな役割の一つはICT技術
者の育成である。今後、あらゆる建設施工に
ICT技術が導入されていくことが想定される中、
測量などへの最新技術対応と三次元モデルをいか
に活用していくかについて、しっかりとした技術
ノウハウを持った若手職員を自社内に育成してい
くことは急務となっている。本報告では、若手職
員を中心に行っているICT施工とCIMへの試
行錯誤の取り組みと、その効果について紹介する。
1
最新のUAV、
3Dレーザースキャナの活用
UAV(U
nmanned aerial vehicle
:ドローン)
と3Dレーザースキャナ(以下3DLS)は、と
もに最新ICT施工技術の中核をなすアイテムで
ある。当社は、現在UAVを大中小合わせて七機
(図1)3DLSを二台保有している。基本的に
若手社員自身がUAVを操縦しUAV測量、写真
動画撮影を行っている。UAVの運用に関しては
細心の安全管理が求められており、当社パイロッ
ト達もJUIDA(日本UAS産業振興協会)の
厳しいスクールを卒業するなど日々腕を磨いてい
る。
ICT施工時代に向けて ─次世代ICT技術者の育成─
佐藤工業株式会社 土木事業本部 ICT推進部 部長 京免 継彦
図 1 保有UAV(ドローン)
100 土地改良 300号 2018.1●
図2は起工測量(大型UAV)による施工前の
三次元地形モデルである。UAV測量では測量範
囲内に一〇〇mピッチ程度で検証用の基準点を設
置しており。今回の測量誤差は二〇〜三〇㎜(基
準一〇〇㎜以内)程度であった。
図3は起工測量データと設計図面を基に作成さ
れた三次元設計モデルである。UAV出来形測量
の基準とマシンコントロール重機施工に利用する。
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UAVタイムラプス
現場内に動画カメラを設置し施工状況を一定間
隔で撮影し、最終的に一本の動画として編集する。
施工状況を早回しで確認することができるため施
工の効率化、安全施工に活用する技術としてタイ
ムラプスが注目されている(図4)。当社ではさ
らに、毎月UAVを同じルートで飛ばし動画を撮
影、編集することで任意の上空画像でのタイムラ
プス映像を試行中である。
3
ICT施工技術による掘削土量管理
最終処分場工事計画において掘削切土量と盛土
量を的確に把握することは非常に重要となる。現
況地形データを3DLSで計測し、構造物の3D
設計モデルと重ねることで正確な土量計画が可能
となる。UAVで計測できれば簡単だが、深い谷
地形では精度確保が困難である。そこで一五㎏と
重くかつ高価な3DLSを人力で抱え広範囲を計
測する事になる。三日間で六〇か所の計測を実施、
おかげで非常に精密な地形データを得ることがで
きた。ただ、さすがに若手職員たちも最終日はへ
とへとである(図5〜8)。
図 3 3D設計モデル 図 2 UAV起工測量3Dモデル
図 4 UAVタイムラプス映像
図 5 処分場全景3D モデル
我 が 社 の 技 術 P R
4
トンネル上部の低土被り部対策
最後にCIMの取り組みを紹介する。トンネル
掘削において、低土被り部の施工検討はよくある
課題といえる。3DLSにより取得した低土被り
部の正確な地形情報を活用した対策工3Dモデル
(図9)は、発注者や協力会社との協議に威力を
発揮する。3DLSでの地形測量(基準点作成含
む)に約半日、3Dモデル化に約二日の程度の作
業量であった。今後も、低土被り部だけでなく、
入口部、出口部坑口の3Dモデル化による補助工
法検討などに応用していく予定である。
5
今後の展開
当社は、まずは自分たちでUAV、3DLS測
量から三次元モデル活用まで実践する事を目指し
ている。これら技術自体がまだまだ発展途上で、
色々と問題があることも経験できている。また、
様々なミッションをこなす中で当社内でもICT
施工の有用性の認識が広がっている。「こんなの
できる?」といった問い合わせが確実に増えてい
る。今後も若手社員を中心にICT施工への挑戦
を積極的に進めていく所存である。
図 7 土量算定 図 6 3DLS計測箇所
図 8 処分場 3次元モデル
図 9 トンネル低土被り部検討
101土地改良 300号 2018.1 ●
図2は起工測量(大型UAV)による施工前の
三次元地形モデルである。UAV測量では測量範
囲内に一〇〇mピッチ程度で検証用の基準点を設
置しており。今回の測量誤差は二〇〜三〇㎜(基
準一〇〇㎜以内)程度であった。
図3は起工測量データと設計図面を基に作成さ
れた三次元設計モデルである。UAV出来形測量
の基準とマシンコントロール重機施工に利用する。
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UAVタイムラプス
現場内に動画カメラを設置し施工状況を一定間
隔で撮影し、最終的に一本の動画として編集する。
施工状況を早回しで確認することができるため施
工の効率化、安全施工に活用する技術としてタイ
ムラプスが注目されている(図4)。当社ではさ
らに、毎月UAVを同じルートで飛ばし動画を撮
影、編集することで任意の上空画像でのタイムラ
プス映像を試行中である。
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ICT施工技術による掘削土量管理
最終処分場工事計画において掘削切土量と盛土
量を的確に把握することは非常に重要となる。現
況地形データを3DLSで計測し、構造物の3D
設計モデルと重ねることで正確な土量計画が可能
となる。UAVで計測できれば簡単だが、深い谷
地形では精度確保が困難である。そこで一五㎏と
重くかつ高価な3DLSを人力で抱え広範囲を計
測する事になる。三日間で六〇か所の計測を実施、
おかげで非常に精密な地形データを得ることがで
きた。ただ、さすがに若手職員たちも最終日はへ
とへとである(図5〜8)。
図 3 3D設計モデル 図 2 UAV起工測量3Dモデル
図 4 UAVタイムラプス映像
図 5 処分場全景3D モデル
我 が 社 の 技 術 P R
4 トンネル上部の低土被り部対策
最後にCIMの取り組みを紹介する。トンネル
掘削において、低土被り部の施工検討はよくある
課題といえる。3DLSにより取得した低土被り
部の正確な地形情報を活用した対策工3Dモデル
(図9)は、発注者や協力会社との協議に威力を
発揮する。3DLSでの地形測量(基準点作成含
む)に約半日、3Dモデル化に約二日の程度の作
業量であった。今後も、低土被り部だけでなく、
入口部、出口部坑口の3Dモデル化による補助工
法検討などに応用していく予定である。
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今後の展開
当社は、まずは自分たちでUAV、3DLS測
量から三次元モデル活用まで実践する事を目指し
ている。これら技術自体がまだまだ発展途上で、
色々と問題があることも経験できている。また、
様々なミッションをこなす中で当社内でもICT
施工の有用性の認識が広がっている。「こんなの
できる?」といった問い合わせが確実に増えてい
る。今後も若手社員を中心にICT施工への挑戦
を積極的に進めていく所存である。
図 7 土量算定 図 6 3DLS計測箇所
図 8 処分場 3次元モデル
図 9 トンネル低土被り部検討
102 土地改良 300号 2018.1●