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大手ICT企業がベンチャー企業を 活用するべき理由 エコシステムからみた 我が国大手ICT企業とベンチャー企業の関係構造 富士通総研 経済研究所 湯川 Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

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大手ICT企業がベンチャー企業を 活用するべき理由

エコシステムからみた我が国大手ICT企業とベンチャー企業の関係構造

富士通総研

経済研究所湯川

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

1

問題意識と発表の内容

問題意識

大手ICT企業がイノベーションを促進する上でベンチャーを活用する意味は?

グローバルに事業展開を行う海外企業はどの程度ベンチャーと関わっているのか?

我が国の大手ICT企業はベンチャー企業とどのような関わりを持っているのか?

急速なグローバル化は、大企業によるベンチャーの活用にどのような影響を及ぼすか?

発表の内容

イノベーションのエコシステムの観点から大企業とベンチャーの関係を考察する

• 大企業がベンチャーと関わる理由を明確にする

• 海外のグローバル企業の動向

大手ICT企業の国内のICTベンチャーとの関係から、ベンチャーとの関わり方の問題点

を議論する

グローバル化の動向から今後のベンチャーとの関わり方を考察する

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

2

イノベーションのエコシステム

大学エンジェル

投資家

ベンチャーキャピタル

大企業

各種プロフェッショナルサービス(コンサルタント、弁護士、監査法人、投資銀行など)

市場・制度・文化

ベンチャーのイノベーションは様々な参加者の資源を活用して成長し、やがて大企業へ

成長段階に応じ、エンジェル投資家、VC、大企業から資金や支援を受け、成功すればIPOか、事業売却

その後、大企業として新たなベンチャーと提携、イノベーションを促進。創業者や経営チームのメンバーはエン

ジェルになり、新たなベンチャーを支援

エキジット(IPO,M&A)

大企業へ

事業のシーズ起業資金

成長資金成長資金・事業提携エコシステム参加者には

人的ネットワークが存在

人材

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

3

我が国におけるエコシステムの不全

IPOに限られるExit

米国:ExitはM&Aが主流

• 例年300件を超えるM&Aが成立、IPOの5倍近いエキジットを供給• 金額でみてもM&Aは毎年IPOを大きく上回る

日本:実質的にはExitの手段としてはIPOしか存在しない• IPOに至って初めて投資家にリターンが生まれるケースがほとんど• IPO至上主義からの脱却が必要

コーポレートベンチャリングの推進を提言

• 「ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会最終報告書」(経済産業省、2008)

米国におけるIPOとM&Aの推移

出所:Thomson Reutersのデータを基に富士通総研作成 Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

050

100150200250

300350400

450500

2004 2005 2006 2007 2008 2009M&A IPO

349 350 377 379 351

173

94 5757 86

6

12

4

大企業がベンチャーを活用すべき理由

コーポレートベンチャリング:アライアンス等を通じて社外のベンチャー企業を活用すること

M&A以前に、大企業がベンチャーを活用する意義が浸透していない

自社開発と同じ目線でベンチャーの技術やサービスを検討することができるか?→情報収集が重要

お客様お客様

ベンチャー

企業

ベンチャー

企業ベンチャー

企業

ベンチャー

企業ベンチャー

企業

ベンチャー

企業リターン

・新事業シーズ・人材/投資大学/

政府機関

大学/

政府機関大学/

政府機関

大学/

政府機関大学/

政府機関

大学/

政府機関政府資金

ベンチャー企業に

とって、成長に

またExitの対象

として、重要な

パートナー

ベンチャー企業に

とって、成長に

またExitの対象

として、重要な

パートナー

大企業にとって

高リスク開発を

実行してくれる

重要なパートナー

リスクマネーと

非連続的技術を

届けてくれる

Vehicle

大企業にとって

高リスク開発を

実行してくれる

重要なパートナー

リスクマネーと

非連続的技術を

届けてくれる

Vehicle

投資

リターン

リター

VCVCVCVCVCVC投資

リターン

リスクマネー

リスクマネー・新製品/新技術・提携/買収・リターン

・新事業シーズ・人材/投資

大企業大企業大企業大企業大企業大企業投資

•リターン•企業紹介

新技

術・

新事

業シ

ーズ

研究

資金

出所:中村

(2008)

「イノベーションの仕組みとしてのコーポレートベンチャリング」

テクノロジーマネジメント

2008 No1

大企業がベンチャーを活用してイノベーションを活発化するフレームワーク

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

5

大企業にとってのベンチャーの重要性

クラウドコンピューティング時代のベンチャーと大企業1. 自らの展開するプラットフォームの周辺企業とのネットワークを形成し価値を創出

• プラットフォームの利便性の向上、顧客ベースの拡大

2. これまで以上に、継続的なイノベーションと市場への迅速な参入が必要• クラウドコンピューティングはインターネットビジネス、永遠のβ版的な発想が必要

社内で所有するサービスと、社外のパートナーから得られる製品・サービスの統合が重要• Key Stone Advantage (Iansiti, Marco, Levien, Roy 2004)、Platform Leadership (Gawer,

Annabelle、Cusumano, Michael A. 2002)など

SaaS

ベンチャー 大企業

クラウドインフラストラクチャ

SaaS

ベンチャー 大企業

クラウドインフラストラクチャ

ベンチャー 大企業

クラウドインフラストラクチャ

出所:湯川、前川

(2009)

「大企業のクラウドコンピューティングへの取り組みに向けた考察」

FRI研究レポート

No.337

大企業

パブリック

ベンチャー

プライベート

大企業

パブリック

ベンチャー

プライベート

パブリック

ベンチャー

プライベート

技術~サービス、ベンチャー企業~大企業で企業を分類 パブリック~プライベート、ベンチャー企業~大企業で企業を分類

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

6

アメリカのCVC投資(1)

CVCから考察するコーポレートベンチャリング

安定的に資金供給を行うアメリカのCVC

最も少ない2009年でも、1,200億円程度のリスクマネーをCVCが供給

• 2009年の日本のVC投資の総額は1,366億円

不況でも全VC投資に占めるCVC投資の割合はさほど低下していない

出所:Thomson Reutersのデータを基に富士通総研作成

アメリカにおけるCVCの投資金額と全VC投資に占める割合の推移

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

2,646

1,327

1,5851,546

1,316

2,2332,017

8.8

7.48.0

7.76.97.16.9

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

0.0

1.0

2.0

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4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

10.0

投資金額 CVCの割合

%$M

7

アメリカのCVC投資(2)

アメリカにおけるCVC投資の投資分野

ICT関連ベンチャーへの投資は全体の3割強

• イノベーションのスピードが速い業界で大企業がCVC活動により、積極的にベン

チャーを活用しようとしていることが推測できる

投資先ベンチャー企業の事業分野(2009年)

出所:Thomson Reutersのデータを基に富士通総研作成 Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

バイオテクノロジー,

30.8%

その他,33.2%

ICT関連,36.0%

ICT関連

Computers and Peripherals

Electronics/Instrumentation

IT Services

Networking and Equipment

Semiconductors

Software

Telecommunications

その他

Business Products and Services

Consumer Products and Services

Financial Services

Healthcare Services

Industrial/Energy

Media and Entertainment

Medical Devices and Equipment

Retailing/Distribution

8

積極的にCVC活動を行う大手ICT企業

最も活発なCVC10社中、6社が大手ICT企業

DisneyやHoltzbrinck Publishingも投資先はインターネット企業

広い意味でのICT関連ベンチャーへの投資に大企業が積極的に取り組む

全世界から有望ベンチャー企業を探索して投資

CVC 投資回数 投資地域

Intel Capital 85 US, EU, China, IsraelNovartis Venture Fund 25 US, EUJohnson & Johnson Development 21 US, EUMotorola Ventures 19 US, EU, IsraelInnvacom (France Telecom) 17 US, EUSAP Ventures 16 US, EUSiemens Venture Capital 16 US, EU, ChinaSteamboat Ventures (Disney) 16 US, ChinaCisco Systems 15 US, EU, China, IsraelHoltzbrinck Ventures (Holtzbrinck Publishing) 13 US, EU

最もアクティブなCVC(2007-2008年)

出所:Ernst & Young (2009)

“Global corporate venture capital survey 2008-2009” を基に富士通総研作成

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

9

エコシステムを活用するIBM(1)

過去約1年間のIBMによるベンチャーの買収案件:未公開企業だけで11社

プライベートクラウド環境の充実に向けた案件:自社開発+α

• データセンター関連、セキュリティ、システム統合、自動化

• データ分析関連:“IBM Smart Analytics Cloud”(ビジネス分析用のプライベートクラウド環境。

簡単に利用できるBIサービス、システム、ソフトウエアで構成)の向上

日本企業は自社開発だけで競争力を保てるのか?

年月 買収したベンチャー企業 事業内容

2009. 9 RedPill Solutions ビジネス分析ソフトウエア(顧客情報の分析ソフト)開発

2009.11 Guardium DB監視ソリューション(データベースセキュリティ。リアルタイムの接続遮断やアラート通知等)提供

2009.12 Lombardi BPMソフトウエア(ビジネスプロセス自動化による企業の意思決定やコスト効率向上のためのソフト)開発

2010. 1 National Interest Security 公共部門コンサルティング(政府への情報管理ソリューション)提供

2010. 2 Initiate Systems データ統合ソフトウエア(異なるシステム間にまたがるヘルスケア情報の処理ソフト)開発

2010. 2 Intelliden Inc ネットワーク自動化ソフトウエア(ハブ、ルータ、スイッチの構成の自動化と最適化ソフト)開発

2010. 3 Cast Iron Systems クラウドインテグレーション(クラウド基盤やSaaSアプリケーションの他社システムとの統合)技術開発

2010. 5 Sterling Commerce ビジネスソフトウェア(B2Bデータ統合ソフト)開発

2010. 6 Coremetrics ビジネス分析(インターネット経由の消費者調査)

2010. 7 BigFix IT管理プラットフォーム(データセンター向け総合的なITインフラ管理ツール)提供

2010. 7 Storwize データ圧縮技術(リアルタイムのデータ圧縮、解析アプリケーションで使用可能にする技術)開発

出所:IBMのプレスリリース等各種情報を基に富士通総研作成 Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

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エコシステムを活用するIBM(2)

直接投資をするのではなくVCを通じた資金供給とアライアンス

活動主体:IBM Venture Capital Group

外部とのリレーション構築、情報収集

VCに自社のロードマップ・長期戦略を公開

VCはIBMの戦略に沿って投資

IBMが事業パートナーとなる可能性、IBMによる買収の可能性

IBMの戦略に沿って投資やインキュベーションを行う傾向が強まる

特に買収の可能性はVCにとって大いに魅力的

IBMは確かに多くの名門VCファンドに投資を行っているものの、小額の投資のみ

それでもなお、VCがIBMの意に沿った投資を行うのは、買収の実績があるため

Triple-Winの構造=エコシステムを活用しているからこそ可能

ベンチャー:VC経由の資金供給、IBMとのアライアンス可能性

VC:IBMからの資金の獲得と出口戦略の明確化

IBM:自社に必要な技術・サービスをもつベンチャーとのアライアンス形成

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

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我が国コーポレートベンチャリングの実態

国内CVC投資とアライアンスの実態調査:調査方法

調査対象企業:129社

• Japan Venture Researchが保有する資本政策データベースから、1995年以降設立され、

2003年以降に新興市場に上場を果たしたICT企業のうち、VC、事業会社の双方から投資

を受けている企業を抽出

• 小規模の企業が上場に至るまでの過程を分析

• 上場企業:なんらかのイノベーションに関与していると仮定

調査項目

1. 投資に関する分析:上場に至るまでの間に投資を受けた事業会社、業種、投資金額など

2. アライアンスに関する分析:事業会社との提携内容

• 目論見書の「重要な契約」、「企業の沿革」から抽出

• 提携の時期:当期利益≦ 30,000 (千円)

• アーリーステージのベンチャーとの提携を想定して分析するため

• 仮に利益を生んでいなくても自社のイノベーションのためにベンチャー企業と関係を構築するという

既存企業の立場に近い分析を行う

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

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分析結果からの示唆:投資に関する分析(1)

投資を行った事業会社は700社、投資額は約1528億円

ICT企業、インターネット企業、商社が全体の約半数

ICT以外の企業は、様々な業種から構成

食品~衣料品までの様々な製造業、流通業、建設、不動産など多岐にわたる

純粋に自社のイノベーションの加速を

目的とした投資はICTベンチャー企業

に対する投資の約4割程度

ICTベンチャー企業への投資はICT関

連ビジネスを直接の事業領域としな

い企業に支えられている

ICT27%

インター

ネット12%

商社12%

メディア・

エンタテイ

メント

5%金融3%

その他36%

不明5%

投資金額からみた事業会社の業種分類

出所:JVRデータ

を基に富士通総研作成

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

13

分析結果からの示唆:投資に関する分析(2)

全体の39%を占めるICT企業、インターネット企業をさらに分類

大手ICT企業:富士通、日本電気、日立、東芝、パナソニック、ソニー、NTTグループ、KDDI等

その他ICT企業:大手ICT企業よりは小規模の企業、大手ICT企業の子会社、ベンチャー

大手インターネット企業:主に2000年以降に上場を果たした新興企業

その他インターネット企業:主にネットベンチャー

多数の中規模以下のICT企業による比較的小額投資が最も多い

事業会社の投資からみれば、我が国ICTベンチャー企業は、既存の大企業ではなく、中規模以下の

ICT企業による比較的小額投資に支えられている

グローバルに事業展開を行う我が国大手ICT企業が積極的にベンチャーと関

わっているとはいいがたい

企業数 投資額 平均投資企業数 ラウンド中央値

大手ICT企業 15社 152億円 2.7社 35百万

その他ICT企業 164社 194億円 1.3社 20百万

大手インターネット企業 26社 113億円 2.3社 32百万

その他インターネット企業 68社 70億円 1.4社 16百万

投資金額からみたICT企業、インターネット企業の投資状況

出所:JVRデータ

を基に富士通総研作成

注:大手ICT企業からソフトバンクを除く

Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

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分析結果からの示唆:アライアンスに関する分析(1)

契約から考えるベンチャーとのアライアンス:考え方

当期利益3000万円以下の段階までに事業会社と締結した契約の内容を分類し、事業会社と

ベンチャーの関係を考察

ベンチャーと事業会社との間の契約のうち今回分析対象とするのは205件(全体:501件)

必ずしもパートナー的とはいえない関係とパートナー的な関係が約半数づつ

契約内容 契約から考える関係

コンテンツ提供、ソフトウエアの提供

パートナー的ではない(53%)

ソリューションパートナー契約、パートナーシッププログラム

業務委託、BPO、開発業務の受注

システム構築、運用業務の受注

製造加工の受注

共同開発

パートナー的(47%)

OEM提供・自社の製品、テクノロジー、サービスの提供

自社開発の製品を他企業に販売してもらう販売代理店契約

共同の新規事業、製品開発・サービスを開始するなどに関する業務提携

他企業からの開発支援

契約内容と事業会社との関係:フレームワーク

出所:JVRデータ

を基に富士通総研作成 Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

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分析結果からの示唆:アライアンスに関する分析(2)

大手ICT企業がベンチャーとの間に結んだ契約にはパートナー的とはいえな

いものの割合が多い

どの業種のベンチャーともパートナー的とはいえない契約を結ぶ傾向がみられた

利益がほとんどない段階で大手ICT企業がベンチャーと提携を行う場合、

パートナー的とはいえないアライアンスしか行わない傾向が強い

その企業が将来的に上場するような企業であっても、イノベーション活動の

パートナーとは扱わない傾向がある

事業会社からみた契約の分類

出所:JVRデータ

を基に富士通総研作成 Copyright 2011 FUJITSU RESEARCH INSTITUTE

大手ICT その他ICT 大手インターネット その他インターネット

パートナー的ではない契約の割合 67% 45% 57% 48%

パートナー的契約の割合 33% 55% 43% 52%

16

グローバル化するエコシステム(1)

リスクマネーの世界的動向:VCの見方

2015年までに、欧米市場は縮小する一方、中国、インド、ブラジルといった

新興市場での成長を予測

リスクマネーは、アメリカから、中国、インド、ブラジルなどへシフト

• アメリカ市場はVCの数、VC投資の額共に減少するとの見方が圧倒的

• ブラジル、中国、インドでは、アメリカとおおよそ正反対

出所:Deloitte、National Venture Capital Association

(2010)

“Results from the 2010 Global Venture Capital Survey” を基に富士通総研作成

21%

6%

48%

30%

4%

22%

10%

65%

22%

11%

51%

28%

68%

4%

8%

10%

6%

17%

6%

2%

68%

59%

60%

8%

61%

72%

1%

47%

24%

11%

20%

11%

19%

アメリカ

イギリス

イスラエル

インド

ドイツ

フランス

中国

カナダ

ブラジル

大いに増加(30%以上) わずかに増加(1-30%) 現状維持

わずかに減少(1-30%) 大いに減少(30%以上)

1%

2%

10%

41%

70%

51%

17%

31%

50%

39%

22%

30%

50%

49%

11%

10%

6%

17%

11%

6%

57%

61%

70%

3%

44%

61%

33%

14%

6%

10%

6%

11%

アメリカ

イギリス

イスラエル

インド

ドイツ

フランス

中国

カナダ

ブラジル

今後5年間の成長予測:利用可能なVC投資額今後5年間の成長予測:VCの数

Blue=増加、Gray=現状維持、Green=減少

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グローバル化するエコシステム(2)

現実化し始める予測:アメリカ以外に投資機会と成長可能性を見出し始めるVC

2010年最大のVCファンド:セコイア・チャイナが中国で10億ドル調達したもの

長期的には、流入する巨額のリスクマネーを基に次々と新たなイノベーションを生み出してきた

シリコンバレーの活力すら減少させる可能性

わが国におけるリスクマネーの惨状

最近の新規上場企業数19社(2009年)、22社(2010年):1978年以来の超低水準

2009年の国内VC投資額は前年比30%減(1,366億円)、投資件数は半減(1,294件)

国内のVC投資はIPO以外にエキジットの選択肢はなかったが、もはや、国内でのIPO に頼った投資活動は不可能

海外市場での上場や海外企業に買収されるベンチャーが増加する傾向

ベンチャー企業の方が、大企業よりはやくグローバルなエコシステムの一部へ?

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結論(1):未成熟なエコシステム

我が国においてICTベンチャーが発展しないのは、イノベーションのエコシステ

ム全体が未成熟なため。特に大手ICT企業はエコシステムの中で積極的な役

割を果たしていない

大企業によるベンチャー企業のM&Aが少ない理由のひとつは大手ICT企業

による積極的なコーポレートベンチャリングが行われていないため

海外では大手ICT企業によるCVC活動が活発に行われており、大企業はエコシステムの一部

資本関係を結ぶ、パートナーとしてビジネスを行うといったことに積極的に取り組んでいないと、

ベンチャー企業の実態やそのスピード感の共有は不可能、買収に結びつかないのは当然?

政策的取組みの必要性

日本国内で起こりつつあるベンチャー企業のイノベーションを国内の大企業がうまく取り込めな

いことは、我が国の産業競争力を損なうことになりかねない

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結論(2):大企業の取組みの問題

大手ICT企業には国内ベンチャーをパートナーとしてイノベーションに取組もう

という積極的な姿勢はみられない

今後は国内の大手ICT企業も考え方を変えなければならない

ベンチャーの技術・サービスの活用は有効な研究開発の手段、パートナーとしての

活動は効率的に自社のイノベーションを促すことを再認識すべき

ベンチャーを活用する方法論を持たないまま、今後グローバルなエコシステムの一

部としてベンチャー企業とつきあっていかなければならない可能性が高い

コーポレートベンチャリングは企業戦略の重要な一部、早急にベンチャー企業

とのアライアンスの方法論を構築し、積極的に取り組むことが重要

外部で生まれたイノベーションを有効活用するための組織変革

従業員の意識変革

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