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NTT技術ジャーナル 2015.4 67
R&Dホットコーナー
開発のねらいNTTネットワークサービスシステム研
究所では,導入から20年が経過した旧リンク系システムや既存専用線システムの設備の老朽化に伴う保守部材の確保や維持メンテナンス費用の増大,それらに精通する保守者の減少に対応するため,各システムのマイグレーション技術の開発に取り組んでいます.PSTN
(Public Switched Telephone Network)や既存専用線サービスのトラフィックの減少とIP系トラフィックの増加という背景の中で,今後のネットワークには次のような要件が求められます.
・ IP系サービスエリア拡大に伴うIPトラフィックの増加に対処できる
・柔軟な帯域粒度設定によりIP系サービスとPSTNや既存専用線サービスを効率的に収容できる
・従来のSDH(Synchronous Digital Hierarchy)と同等のパス設定や警報監視などの保守運用性を実現できる
これらの要件を満たすため,NTTネットワークサービスシステム研究所ではこのパケットトランスポート技術をベースとしたリンク系システムであるPTM
(Packet Transport Multiplexer)リンク
システムを開発しました.PTMリンクシステムの概要を図 1 に示します.PTMリンクシステムは,主信号伝送技術として,MPLSTP(Multi Protocol La bel SwitchingTransport Profile)をベース
としたパケットトランスポート技術,イーサ伝送路上でレイヤ 1 クロックを抽出可能なシンクロナスイーサ技術,TDM
(Time Division Multiplexing)信号をパケット網で伝送するためのカプセル化技
NTTビル10 Gbit/sの信号を2系統
伝送可能リングの特性を活用した予備経路設定と無瞬断切替機能により,信頼性向上と高い回線品質を実現
任意容量・サービス対応の信号の挿入分岐・通過を遠隔より設定・変更可能
PTMリンクシステム
光ファイバ
クライアント装置
ルータ・L2SW 交換機 専用サービス装置
クライアント装置
ルータ・L2SW 交換機 専用サービス装置
【PTMリンクシステム】(1)主信号伝送技術
①パケットトランスポート技術(MPLS-TPベース)
②シンクロナスイーサ技術(ITU-T G.8261)→イーサ伝送路上でのレイヤ1クロック抽出技術
③CEP化技術(RFC4842)→TDM信号をパケット網で伝送するためのカプセル化技術
④遅延抑圧技術
10GbE伝送路 10GbE伝送路
スイッチスイッチ
SDHイーサネット SDH
無瞬断
ルータ・L2SW
IP系サービス
交換機
PSTN
専用サービスノード
専用線サービス
(2)監視技術
⑤信号劣化検出技術→10GbE伝送路でSDHと同等の信号劣化(BER:10 - 6)検出
⑥無瞬断パス切替技術→パケット網上での無瞬断パス切替技術
(3)切替技術
BER:Bit Error Rate
図 1 PTMリンクシステム概要
パケットトランスポート技術を適用したクロスコネクト装置NTTネットワークサービスシステム研究所
小お が わ
川 雅ま さ や
也 /岩いわした
下 秀ひでのり
徳 /高たかしま
島 敬たかし
/松ま つ だ
田 俊と し や
哉 /樋ひ ぐ ち
口 健けんいち
一 /行こ う だ
田 克かつとし
俊
現在,PSTN(Public Switched Telephone Network)や既存専用線サービスはTDM(時分割多重)技術をベースとした旧リンク系システムによる伝送路に収容されていますが,パケットトランスポート技術をベースとしたリンク系システムへの移行を進めることによりシンプルなネットワークを構築することができます.ここでは,これらの移行を効率的に推進することができる低速パス(1.5 Mbit/s)単位の振分け ・ 集約機能を有するパケットベースのクロスコネクト装置(PTM-XC)を紹介します.
R&D
SDH MPLS-TP クロスコネクト装置
NTT技術ジャーナル 2015.468
術であるCEP(Circuit Emulation over Packet)化技術,パケット網においても従来のSDHと同等の遅延量で伝送可能な遅延抑圧技術を適用しました.また,監視技術として,イーサ伝送路上においてもSDHと同等の信号劣化(BER:10 6)を検出可能な信号劣化検出技術,および切替技術としてパケット網上においても瞬断なく切替可能な無瞬断パス切替技術を適用しました.これらの技術を適用したPTMリンクシステムは,パケット網上でPSTNおよび専用線などのTDMサービスを提供可能なSTM同等の伝送品質を実現したNTT通信ネットワークの根幹を担うインフラシステムです.PTMリンクシステムは,TDM技術とパケット技術の両面を融合させたものです.任意の容量のパスを任意の拠点で多重 ・ 分離でき,需要 ・ サービス種別に応じてダイナミックに変動するネットワークを実現することができます.
NTT研究所では,第 1 ステップとしてPTMリンクシステムにより,図 2 に示すように旧世代のリンク系システムをマイグレーションし,第 2 ステップではモジュールBと呼ばれる装置のマイグレーションを想定し, 2 段階に分けて開発を進めてきました.モジュールBは,STM 0 /STM 1 インタフェース
(52M/156M IF)を持ち,任意のSTM0 /STM 1 インタフェース間のVC11パス(Virtual Container 11 :1.5 Mbit/sパス)のパス接続を行うクロスコネクト装置です.
PSTN ・ 専用サービスの加入系ノードと中継系ノード間は,今後,VC 3 パス
(Virtual Container 3 :52 Mbit/sパス)で 接 続されるため,VC 3 パス内のVC11パスやVC 2 パス(Virtual Contain er 2 :6.3 Mbit/sパス)の低速パスの収容率が低くなる区間は,VC11パスやVC 2 パスを複数束ねてVC 3 パスへ収容することでパス収容率が向上し,より効率的なマイグレーションが可能となります.また,事業者間の接続等においてVC 3 パスへの移行が難しい場合などに使用されます.このパス収容率の
向上のためにVC11パス,VC 2 パスのクロスコネクト機能の開発に取り組み,完成したのがPTMXC(PTMクロスコネクト)です.PTMXCの概要を図 3に示します.
PTMXCは,パケットスイッチを用いたPTMリンクシステムをベースとすることにより共通物品を使用可能とし,開発規模を最低限に抑えました.
マイグレーションをするうえでの課題
モジュールBは導入後20年が経過した装置であり,PTMXCへマイグレーションするうえでは次のような課題がありました.
(1) 高効率 ・ 高密度収容モジュールBはPSTNや既存専用線
サービスのトラフィックの減少による収容率の低下,また,旧リンク系システムの縮退により多数のVC 3 パスの増設が必要となるため,VC11/VC 2パス単位の振り分け,集約機能により,高い収容率にすることが求められます.図 4 は 1 つの集約ビルから 2 つの加入ビルへ交換機および専用サービス装置を接続した場合の例です.クロスコネクト装置がない場合,複数のVC11パス(1.5 Mbit/s)を多重することができないため,収容率の低いVC3パスが4 本必要となりますが,クロスコネクト装置を導入することにより,複数の
PTM-XC
加入系ノードSTM-0/STM- 1インタフェース部
加入系ノードSTM-0/STM- 1インタフェース部
加入系ノードSTM-0/STM- 1インタフェース部
VC- 3パス
VC- 3パス
VC- 3パス
クロック供給装置
クロック供給
監視制御部
VC-11パス
STM-0/STM-1インタフェース部
STM-0/STM-1インタフェース部
STM-0/STM-1インタフェース部
パケットスイッチ
STM-0/STM-1インタフェース部
STM-0/STM-1インタフェース部
VC- 3パス
VC- 3パス
中継系ノードSTM-0/STM-1インタフェース部
中継系ノードSTM-0/STM-1インタフェース部
CREC
図 3 PTM-XCの概要
ルータ・L2SW
PTMリンクシステム導入以前・旧リンク系システム(SDH系リンクシステム)の老朽化
・トラフィック減による収容率低下
・モジュールBを除く旧リンク系システムを先行して巻取り旧リンク系システム縮退にあたり,多数の高速パス増設が必要となるため、低速パス(1.5 Mbit/s)単位の振分け・集約機能による収容率向上を検討
⎛|||⎝
⎞|||⎠
第 1ステップ 第 2ステップ・PTMリンクシステムへVC-11パスクロスコネクト機能を追加することでモジュールBを巻取り
モジュールB
旧リンク系システム
モジュールB
交換機 専用サービス装置
ルータ・L2SW
モジュールB
PTMリンクシステム
モジュールB
交換機 専用サービス装置
ルータ・L2SW
PTM-XC
PTMリンクシステム
PTM-XC
交換機 専用サービス装置
図 2 PSTN ・ 既存専用線サービスを収容するリンク系システムの適用例
NTT技術ジャーナル 2015.4 69
R&Dホットコーナー
VC11パスを多重し,収容率の高いVC3パス 2 本で接続が可能となります.
また,高い収容率にする際,最大パス数である4032パス(VC11パス換算)の収容のためにはモジュールBは10架が必要となり,設置スペースを大きく使ってしまうことから,PTMXCで は モジュールBと同数のパス数を収容し,より高密度な実装による設置スペースの削減が求められます.
(2) 低遅延化PTMXCにて収容する既存専用線
サービスは,遅延量を小さくするためにPTMXCの装置内遅延をモジュールBと同等程度かそれ以下に抑える必要があります.一般的にVC11/VC 2 信号をMPLSTPパケットへ変換するパケット化処理,およびMPLSTPパケットをVC11/VC 2 信号へ復元するデパケット化処理をする際の遅延が大きくなるた
め,この遅延をいかに小さくするかが求められます.
(3) 低消費電力化モジュールBは最大で10架構成になる
などの理由から消費電力が大きく,運用コストが増大しています.近年の省エネルギーが求められる背景の中で,PTMXCでは消費電力を低減することが求められます.
(4) 保守運用性の向上クロスコネクト装置では最大で4032パ
ス(VC11パス換算)を収容する必要があり,多数のパッケージや光モジュールを搭載することから,それらの登録作業をより容易に行えることが求められます.
また,モジュールBは架間を接続するインタフェースが膨大にあります.そのため,架間を接続する送信元および受信先でのインタフェース盤での故障の
特定が難しいことが問題となっています.PTMXCでは保守者が故障部位を早期発見し修理を行えるような,より保守しやすいシステムであることが求められます.
そのほか,昨今の装置は小型化,低消費電力化が求められることにより半導体デバイスの高集積化,細密化がなされています.それに伴いソフトエラー
(メモリで発生する宇宙線などの要因によるビットエラー)による故障が発生する可能性があります.このソフトエラーに対する対策も求められます.
課題に対する技術的ポイント(1) 高効率パス収容技術PTMXCのクロスコネクト機能は,
パッケージ間の転送情報としてMPLSTPパス(LSP)を使用し,出力先の情報を内部ヘッダによって転送することで
加入者ビル
複数のVC11パス(1.5 Mbit/s)を多重することができないため,収容率の低いVC 3 パスが 4本(200 Mbit/s)必要
複数のVC11パスを多重することができるため,収容率の高いVC 3 パス 2本(100 Mbit/s)で転送可能
(a) クロスコネクト装置 なし
(b) クロスコネクト装置 あり
VC-11パス(専用サービス装置利用)
VC- 3 パスVC-11パス(交換機利用)
交換機PTMリンクシステム
専用サービス装置
集約ビル
PTMリンクシステム交換機
専用サービス装置
PTMリンクシステムPTMリンクシステム交換機
専用サービス装置加入者ビル
交換機
専用サービス装置
クロスコネクト装置
PTMリンクシステム
集約ビル
PTMリンクシステム
クロスコネクト装置 交換機
専用サービス装置
PTMリンクシステムPTMリンクシステム
クロスコネクト装置
交換機
専用サービス装置
図 4 クロスコネクト装置によるパス高収容化
NTT技術ジャーナル 2015.470
実現しています.装置内部では,STM0 /STM 1 インタフェース盤からスイッチ盤,スイッチ盤からSTM 0 /STM 1 インタフェース盤へデータをMPLSTPにてカプセル化し,収容元ポート(A点)から出力先ポート(Z点)へデータ転送を行っています.同じ方路どうしのVC11/VC 2 パスを複数多重することでパケット化処理時のオーバヘッド増加を抑制し,図 5 に示すように従来装置で10架を必要とした回線数を,1 架で収容することを可能としました.(2) 低遅延化技術パス多重時のパケット化処理,分離
時のデパケット化処理での遅延を抑えるため,TU11/TU 2 フレームを分割してパケット化することで,処理遅延をモジュールBと同等以下に抑えることを可能としました.
(3) 低消費電力化モジュールBの10架分の回線数を 1 架
で収容することが可能となったため,最大収容数での最大消費電力をモジュールBと比較して約20分の 1 とすることを可能にしました.
(4) 保守運用性の向上PTMXCでは,局建設時のユニット
種別設定時に,監視制御部,スイッチ部,STM 0 /STM 1 インタフェース部などの各パッケージを全スロットに自動で登録します.STM 0 /STM 1 インタフェース部を登録する際には,隣接ス
ロットの同一ポート番号どうしでプロテクショングループを全ポートに自動で設定することでパス開通手順の削減につなげています.
また,PTMXCは最大構成でも 1 架の構成であるため,架間接続インタフェース盤のような複雑な構成はなく,STM 0 /STM 1 インタフェース部とスイッチ部のシンプルな構成となっており,複数架にまたがることから故障評定が難しかったモジュールBよりもより容易な故障評定が可能となっています.さらに,モジュールBと同等のパス試験機能を具備することで故障発生個所の特定を容易なものとしています.
その他,ソフトエラーが発生する可能性がある主信号系メモリ,および監視制御系メモリに対して対策を施しています.これにより,ソフトエラーが発生した場合は自律でエラー回復処理を実施します.また性能情報としてソフトエラーの発生数をカウントし,しきい値超過時はしきい値超過警報により通知を行います.
また,パッケージの交換が必要になった場合は,遠隔の保守者から保守対象パッケージのランプを緑 ・ 赤と交互点滅させることで,現地の保守者へ明示的に保守対象パッケージを指示することが可能です.
今後の展開ここではNTTネットワークサービス
システム研究所が開発した低速パス(1.5 Mbit/s)単位の振分け ・ 集約機能を有するパケットベースのPTMXCを紹介しました.PTMXCはモジュールBのマイグレーションを効率的,経済的に実現することが可能です.
今後は本装置によりリンク系システムのマイグレーションを推進し,シンプルなネットワークの構築を支えていくことを目指します.
■参考文献(1) 特集:“光IPネットワーキング技術の展望と最
新動向,” NTT技術ジャーナル,Vol.19,No.1,pp.627,2007.
(b) PTM-XC最大構成
モジュールBの10架構成を1架で置換え可能
基本架
接続架
基本架
(a) モジュールB最大構成
図 5 PTM-XCの高密度実装
(後列左から) 樋口 健一/ 松田 俊哉/ 岩下 秀徳
(前列左から) 小川 雅也/ 行田 克俊/ 高島 敬
PTM-XCはVC-11パス単位のクロスコネクト機能を持つ装置であり,旧リンク系システムのマイグレーションを行う際に重要な役割を担っています.今後,さらにシンプルなネットワークを構築する技術開発に取り組んでいきます.
◆問い合わせ先NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク伝送基盤プロジェクト 高速リンクシステムDPTEL 0422-59-3516FAX 0422-60-6033E-mail takashima.takashi lab.ntt.co.jp