サi:コン研究 i:コこコ - josailibir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/g0000284... ·...
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-
サi:コこコi:コン研究
ISamineResearch
なる可能性を求めて
編 集
グルコサミン研究会
長 岡 功
中 村 洋
野 村 義 宏
南 三 郎
Iucosamine
Qlucosamine
Qlucosamine
グルコサミン研
-
(ど
賓宰淑青草裟
- 一 一 _ 一 一 一
∴ ~ ~~ ∴ ~ --- --:I
; . ; . 、 ~: 、. ・ 、・ 、
高齢社会を迎え,QOL低下の一因となる一次性変形性関節症が問題となっている。 現荏,変形 性
関節症の療病緩和を目的に,グルコサ ミン含有の健康食品を利用する人が増えている。しかし,グル
コサミンの関節軟骨への作用メカニズムは不明な点が多い。そこでわれわ れ は , グルコサミンとグル
コサ ミン含有健康食品の原材料であるキチンおよびキチン やキ トサン誘導体紫 を 含 むグルコサミン紫
似糖が,軟骨細胞株ATDC5に与える影響を検討し,これらの搾用メカニズムについて解明すること
を目的に研究を実施 した。
ATD C 5をグルコサミン塩酸塩あるいは,グルコサミン幸似糖存在下で培拳 し,これらの物質の軟
骨細胞 の 増殖 。分似 二与える影響を調べた。増殖はMTT活性,分化はアルが )フォスフアタ-ゼ活
性を指 標 に検討 した。その結果,ダルコ-ス,N-アセチルグルコサ ミン,キ トビオ←ス,キ トサン
ダイマ- , ラク ト-ス,ラタ トサミン,N-アセチルラク トサミンは,Å耶〕C5の増殖や分化に影響を
与えなかった.一方,グルコサミン塩酸塩はATDC5の増殖に影響を与えなかったが,jWDC5の分
化を抑制 した。
次に,グルコサミン塩酸塩がATDC5の基質産生および石灰化に影響を与えるかどうかを,アルシ
アンプjL,- (pH2.5およびpHl。0)染色およびアリザリンレッド染色の手法を掛 1て検討した。そ
の結果,グルコサミン塩酸塩を添加 したjWDC5の石灰イ飢ま,顕著に抑制されていた.さらに,グル
コサ ミン塩酸塩は硫酸基をもつグリコサ ミノグリカンの産生を誘導 したや また,グルコサミン塩酸塩
添加によるATDC5の遺伝子発現パタ-ンを,済yPC民法を用いて解析 した.その結果,グルコサミ
ン塩酸塩は,転写因子であるSmad2,Smawd逢および軟骨特異的基質蛋白質のmatr主ⅩGlapTOteまn
(Map)の mRNA発現を抑制した。
以上の結果より,グルコサミン塩酸塩は軟骨組織の石灰化を抑制し,コンドロイチン硫酸の産生を
促進する可能性が考えられた.グルコサミン塩酸塩の石灰化抑制メカニズムは,転写因子であるSmad
2,Smad4のmRF挽発現を調節することにより,MGPなどの軟骨基質遺伝子の発現を介して石灰化
を抑制している可能性が考えられた。
グ)L/コサミン研究2:8-14,2006
一・ I・ヾ
グルコサミン,ATDC5,軟骨 ,グ リコサ ミノ グ リ カン.Slllad
生活の乱れ,疾病および 薬 物 の 影 響 , メカニカルスト
レスなど,さまざまな要因で 変 形 性 関 節症を発症 した
軟骨組織の弾力,隆および圧縮抵抗性は, 軟 骨 細胞お 軟骨組織は,軟骨細胞間基質が 減 少 し , 軟骨の異所石
よび軟骨細胞間基質により維持されている。加齢,食 灰化を起こしている卜3).近年,変 形 性 関節症 (oA)
l)城西大学薬学部医療栄養学科 〒350-0295埼玉県坂戸市けやき台 ト1h一mano@josaLacJ'p
-
グルコサミン研究 VoL2 2006 9
の療病緩和を目的として,ヒアルロン酸やコン ドロイ
チン硫酸などの構成糖であるグルコサ ミンが経口摂取
されている4)サヒア)i,ロン酸は,N-アセチルグルコサ
ミンとグルクロン酸が交互に結合 してできた直鎖状の
高分子多糖である5),コン ドロイチン硫酸は , ガラク
トサ ミンとグルクロン酸を構成糖 とし,アグ リカンの
側鎖 として軟骨組織 に存在 している6)。グル コサ ミン
摂取による変形性関節症の症状改善効果は臨床 レベル
では報菖 されているが,詳 しい摩周メカニズムは現状
では不明である7,8)。また,グルコサ ミン含有健康食品
揺,キチン加水分解物が利用 されているが,N-アセ
チルグルコサ ミンを含むグルコサ ミン類似糖の有効性
は 検討 されていない,
内軟骨性骨化は,軟骨細胞が間葉系幹細胞から分 化
し,軟骨細胞の増殖 ・成熟 。肥大化の過程 を 経 て , 骨
に置換 される骨の形成過程である9)。その際 夕 関 節 軟
骨や肋軟骨など,一部の組織は骨に置換せず軟骨 の ま
ま維持 される.軟骨碓指の詳 しいメカニズムは不明な
点が多いが,さまざまな転写因子によって軟骨および
骨の形成過程は調節を受けており,これ らを介 して,
細胞間基質などの産生が調節 され軟骨の分化 。増殖が
制御 されている10,ll)。軟骨が石灰化する前段階で,ア
ルカリフォスファタ-ゼ (A二ぼ)活性が上昇すること
が必須であると考 えられてお り,成熟 した軟骨細胞
揺 , ヒアルロン酸やコン ドロイチン硫酸などのグ リコ
サ ミノグ リカンを産生 し,軟骨細胞の性質を維持する
役割を絶っている12・13)
軟骨細胞間基質 と し て よく知 られてい る ⅠⅠ型 コラ
-ゲン (Coi≧)は,軟骨 特 異的コラ-ゲ ン で , 軟骨
形成過程の増殖軟骨細胞期および肥大化軟 骨 細 胞期の
細胞間基質に存在し,石灰化軟骨細胞期 お よ び 骨形成
の過程では消失することが報告 されているま4)。matr反
Glap1-Ote主n (MGP)は,軟骨細胞 間基質蛋 白質の一
つで,血管内皮細胞の動脈硬化部においても観察され
ていることから,石灰化に深 く関 与 する蛋白質の一つ
で あ る と 考 え ら れ て い る15・16)らboneG旦aprotein
(BGP)は骨特異的基質蛋白質で,軟骨形成および骨
形成過程の進行に伴い増加 し,骨基質 を 維 持 す るため
に重要な蛋白質であると考えられている17)。
軟骨細胞の増殖 中分化 を制御する増殖因 子は,bone
:・, = ・ ・ ・∴ 一 ・ll・:・ _
growthfactoT β (T G FlB ) がよく知 られている18)。こ
れら披,細胞 膜 に 存 在 す るレセプタ-に結合後 , 転写
因子のSmad 群 を リ ン 酸 化 し ,軟骨特異的遺伝子の発
現を調節する19)卓 Sm ad 2 は き 骨形成園子の-つであ
るTG斉しβの下流に存在 し,軟骨の分化を促進する転
写因子の一つ と考 えられている19,20).また,Smad2は
Sox9や Rullx2などとへテロ二量体を形成すること
により,Sox9や 鮎 nx2の下流 に存在する軟 骨特異
的遺伝子の発現を調節すると考えられている19)。smad
・‖まT)ン酸化され た Smad2やSlllad3とへ テ ロ 二量
体を形威し,さまざまな転写因子と相互摩周 す る こと
によって,軟骨の分化 を 制 御 し ていると考 え ら れ てい
る19B21).sox9は Soxfam 豆Iy に 属 する転写因子の 一つ
管,間葉系幹細胞か ら軟 骨 細 胞 への分化の誘導と,肥
大化軟骨細胞への分化の 抑 制 を 調節する軟骨特異的転
写因子 と考 え られている19,22,23)。鮎nxlは肥大化軟骨
に発現 し,内 軟 骨 性骨化に 必 要な転写因子の一つと考
えられてい る19,24)。一方,鮎nx2は成熟軟骨に発 現
し,骨細胞への置換に必要な骨特異的転写因子の一つ
と考えられている19725t26)
今回われわれ は.培養軟骨細胞株ATDC5を用い
て,グル コサ ミン塩酸塩およびグ)i,コサ ミン葦似 糖
が,軟骨細胞の増殖 。分化に与える影響を比較 し,グ
ルコサ ミン塩酸塩およびグルコサ ミン類似糖が,軟骨
細胞外基質の構成糖 としてのみではなく,軟骨細胞の
増殖および分化に影響 を与える可能性を検討 した。さ
らに.ブルコサ ミンが軟骨組織維持に及ぼす メカニズ
ム解明のため,軟骨細胞外基質蛋白質および転写園子
のlllRNA発現について検討 した.
培養軟骨細胞株 は,mouseteratocarcinomaceiiAT
Li05由来の亜棟であるATDC5細胞を用いた uiIKEN
CeiiBankNo。RCB0565)27)。ATDC5の 培 地 は,Du1 -becco'smod道edEagle'S培 地 とHam'sF12培 地 の
1:1混合培地 (hvitrogen)に,5% ウシ胎児血清
(FBS昌nvitTOgen),100ti互/miペ ニ シ リン,50pl/mi
ス トレプ トマ イシ ンを添 加 し用 い た.ArrDC5は
37℃,5%C0 2の条件 で培養 した.継代 は0書25% ト
リプ シ ン0。02%EDTA溶 液 (S呈gmaA故豆ch)を 用
い,2-3日ごとに行った。
グルコサ ミン塩酸塩およびグルコサ ミン類似糖が軟
骨細胞の分化に与える影響を調べるために,通常培地
(N),グ )i,コ - ス (GまC),グ ル コ サ ミ ン塩 酸 塩
(GkN)タN-アセチルグル コサ ミン (GkNAc),キ ト
サ ンダイマ- (G呈cN)2,キ トビオ -メ (G互cNAc)2,
-
70
ラク ト-ス (GaトGIc),ラク トサ ミン (Ga卜GlcN),
N-アセチルラク トサ ミン (Ga卜GまcNAc)をそれぞれ
最終濃度で1jlg/miになるように培地率に添加 した。
I:I~ . ・ ・、一・:・'1.
アルカリフォスフアタ-ゼ (ALP)染色液は0。05
S' ・R..・・~ ・、 l・ ・:・S ・・.I; ち・ ・I
'-・・.1■J;i --_・・・・ i- .● !、・! ・・. ・・!:
(Sigma)を使用 したB細胞は,96穴細胞培養庸マイ
クロテス トプ レ- トを用い,約 5×103個ずつ播種
し,GkNおよびグルコサ ミン類似糖を添加後,5日
間培牽 した。培養後,細胞 を20% ホルマ リンで固定
し,ALP染色液を履いて37oCインキュベ-夕内で 15
分反応させ,水洗 した。染色霧栄は,画像解析ソフ ト
N損弓mageを用いて数値化した.
~;.-I: ・t .′・..∴
AicまanBiue8GX (Fika)を0。5M 酢酸 (pH2。5)め
るいは0.1M塩酸 (pHl中0)に溶解 し,1% アルシア
ンプル -溶液 (ABp欝2。5)ならびに (ABp塁上0)
を作製 した。各アルシアンプル-溶液は用時漆過し,
使用 した.細胞は24穴細胞培養FHマ イクロテストプ
レ- 卜を用い,約 2さ5XiO4個ずつ播種 し,GkNおよ
-I.II I ・-I.I/.:
びグルコサミン類似糖を添加後,35日間培養 した。
培養期間中,3日ごとに培地交換を行ったす35日間培
養後,20% ホルマリンで固定 した。固定 した細胞
揺,アルシアンブル-染色液を室温で-晩反応させ,
水洗 した。染色結果は,画像分析 ソフ トNiH弓mage
を招いて数億化した。
、 ∴ ● 、 I .
アリザ リンし,ソド染色は,AlizarinRe(lSilel・tilled
(S短ma)と28% アンモニア水を履いて i% アリザ
リンレッ ド溶液 (pH6.38)を調製 し,染色に用い
た. 細胞は2逢穴細胞培養摺マイクロテス トプレ- ド
を 掩 い ,約 2。5×104個ずつ播種 し,G呈cNおよびグ)i/
コサ ミン葦似糖を添加後,35日間培養 したB培養期
間中,3日ごとに培地交換 を行 った。35日間培養
後,20% ホルマリンで固定 したp染色は,2恒量水 洗
後,アリザリンレッド染色液と室温で10分間反 応 さ
せ,水洗 し,石灰化を評価 した。染色結果は, 画 像 分
析ソフ トNI冨Iimageを柳 1て数値 した。
一 一-∴ '.
ATDC5を6cmシャ-レを用いて,約 5×105倦 げ
っ播種 し,GlcNおよびグル コサ ミン類似糖 を添加
・′∴/-∴/;. :///:/:////://///://://://:; /////
Smad2 5'-CCCACTCCATTCCAGAAAAC-3+ 58 25
3'-AACACCAGAATGCAGGTTCC-5ー - 一 ■ ■
Smad4 5'-CGTGCTTACCCACTGAAGGA-3' 58 25
3十一GCTGGCTGAGCAGTAAATCC-5'
SoX9 5㌧TGCAGCACAAGAAAGACCAC-3. 58 30
3'-CCCTCTCGCTTCAGATCAAC-5'
Runx1 5㌧ACTTCCTCTGCTCCGTGCTA-3' 58 25
3㌧GGTCGTTGAATCTCGCTACC-5' ー I ■ ■
Runx2 5十-ATGGTGGAGATCATCGCGGACCACCCGGCC-3' 58 28
3†-ACACCTACTCTCATACTGGGATGAGGAATG-5ー ■ 一 ■ 一 ■ ■
Co!2 5十一GTCGAGCAGCAAGAGCAAGGA-3' 58 28
3㌧CTTGCCCCACTTACCAGTGTC-5' ■ - ■ ■ ■
MGP 5'-ATGAAGAGCCTGCTCCCTC†-3' 58 22
3'-CTAATATTTGGCTCCTCGGC-5ー t I ■ ■
-
後,3日間培養 した.RNAはTrwoIReagent(hvitr0-
gen)を用い抽出した.抽出したRNAはDPC処理水
に溶解後,分光光度計を用い定量 した.cDNAは,常
法に従い1〝gのRNAから,逆転写酵素反応法で合成
した.PCRは常法に従い表1のプライマーを用いて
行った.
LL G 果
il書芸孟孟宗 慧 芸SAT,9",JiB].譜 がALP活性 を比較 した結果,本実験で用いたGIcN
は,グ)i,コサ ミン類 似 糖 で あ るGIc.GIcNAc.
(GIcN)2,(GIcNAc)2.Gal-GIc,Gal-GIcN,Gal-GIcNAc
と比較してALP活性を抑制 した (図1A).染色結果
杏,画像分析ソフ トNTH-imageを用いて数値化 した
結果,GIcNは,ネガティブコントロールであるGIc
と比較 しALP活性は約 1/3に減少 した (図18),こ
の結果から,GIcNは軟骨細胞の分化を顕著に抑制す
一軒通常培地 グルコース グルコサミン塩蛍塩
GIcN
■ J r 竃 IN-アセチルクルコサミン キトサンタイマー キトビオース
GIcNAc (GIcN)2 (GIcNAc),
ラクトース ラクトサミン N-アセチルラクトサミンGaトGIc Gal-GIcN Gal-GIcNAc
グルコサミン研究 Vo12 2006 77
ると考えられた.一方,グルコサ ミン禁似糖である
GIcNAc,(GIcN)2,(GIcNAc)2,Gal-GIc,GaトGIcN,
Gal-GIcNAcは,ATDC5のALP活性に影響を与えな
かった.また,結果には示さないが,グルコサミン塩
酸塩およびグルコサミン類似槍の添加は,本実額条件
においてMTTアッセイによるATDCの細胞増殖能に
影響を与えなかった.
2F
グルコサ ミン塩酸塩が軟骨細胞株 ATDC5
の石灰化に与える影響
GIcNはAJT)C5のALP活性 を顕著に抑制 したた
め.GIcNがATT)C5の石灰化に与える影響を検討 し
た ATDC5の石灰化は,アリザリンレッド染色を用
いて比較 した.その若紫.GIcNは,ネガティブコン
トロール (GIG)と比較 して,石灰化を著 しく抑制 し
た (図2).
B
打
N・アセチルラクトサ三ン
ラクトサミン
ラクトース
キトビオース
N・アセチルグルコサミン
キトサンタイマー
クルコサFlJン塩酸壕
グルコース
通常培地
図1 グルコサミン塩酸塩およびグルコサミン類似糖が,培養軟骨細胞株 ATDC5の分化に与える影響
B
l }
N GIc
(LrSIP%)E2aje
6u
ruLetspaJuuE)ZIEEZa^lle)aJ
『 過約
40
30
20
10
0囲2 グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5の石灰化に与える影響
-
72
31
AB(pH25)(総グリコサミノグリカン)
A8(PHIO)(流転基特異的グリコサミノグリカン)
(LLSLP%)
e
aje
6
∈一uJ一elS
(s
NH
d
)an一q
Ue一〇一e
aNleleJ
N GIc GIcN
(oLHd)an
一qUt313一Pa^I
tPla」
図3 グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5のクリコサミノグリカン産生に与える影響
グルコサミン塩酸塩が軟骨細胞株 ATDC5のグリコサミノグリカン産生に与える影響
アルシアンブルー染色 (pH2.5)を用いて,総グ
リコサミノグリカンの産生を検討した結果,GIcNは
GIcと比較し,総グリコサミノグリカンの産生を抑制
した (図3).この結果は,石灰化およびALP活性の
結果と類似 していた.一方,アルシアンプル-染色
(pHl.0)の枯宋,総グリコサミノグリカンの染色と
異なり,GIcNは硫酸基特異的グリコサミノグリカン
の産生を促進した (図3).
4I
グルコサミン塩酸塩が軟骨細胞基質遺伝子群
の mRNA発現に与える影響
RT-PCR法を用いて,軟骨培養細胞ATDC5におけるGIcNが軟骨細胞基質遺伝子のmRNA発現に与え
た影響を図4に示 した.その結果,ColZmRNAと
BGPの発現量は.GIcNとGIcで顕著な差がなかった
が,MGPmRNA量は,GIcNによってGIcの約2/3
長に減少した,
51グルコサミン塩酸塩が転写因子群の mRNA発現に与える影響
RトPCR法を用いて.軟骨培賛細胞ATDC5においてGIcNが軟骨特異的転写因子群のmRNA発現正に
与える影響を図5に示 した.その結果.Smad2と
Smad4のmRNA量が,GIcNによってGIcの約2/3
に減少 した.それに対 して,Runxl,RunxZ,Sox9
のmRNAはGIcNの影響を受けなかった
lⅢ・考 察
本実験の結果,GIcNは,その他のグルコサミン架
BGP
ma
^一SUOIU〓
e
UE)一SO^-一IZLE)J
MGP厄
a
^一SUalU二eU6IsaN)
e
leJ
・∵8NSuaL⊆teu61Sa^r)
t2一aJ N GIc GtcN N GIc GIcN N GIc GIcN図4 グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5の軟骨基質蛋白質mRNA発現)に与える影響
-
グルコサミン研究 VoL2 2006 73
rrĵ!(I,.uatU!JeuB!sâ膏PJ
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一L
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2
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0
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Run大1
N NCGLJG
NGfcGZcN
図5グルコサミン塩酸塩が培養軟骨細胞株ATDC5の軟骨特異的転写因子mRNA発現量に与える影響
似糖 と比較 して,ATDC5の慮腰活性 を低下 させ る
ことが判明 した.G旦cNは,jWDC5のALP活性を抑
制したことから,軟骨細胞の分化調節に関与 している
可能性が考えられた。一方,G且cNにみ られた軟骨分
・ ・・・. -l ~1・ . 叩.:・一・' -
似二糖類では観察 されなかった。
.、. I・ ・● .‖∴.:l'、・;l: ・・㍉
の増殖 には影響 を与えなかったBしたがって,GicN
は,本実験で便周 した濃度では,ATDC5に細胞毒性
を与えないと考えられた¢
弘之cNによる分化調節作用がATDC5の石灰化に影
響を与えているかについて検討 した結果,ATDC5に
おいて,G旦C紺は,顕著に石灰化 を抑制することが明
らかとなった。さらに,G旦cNが,総グ リコサ ミノグ
リカン産生および硫酸基 をもつグ リコサ ミノグ リカン
の産生に影響を与えるかどうかについて検討 した結
乳 GkNは,硫酸基 をもつ グ リコサ ミノグ リカンの
産生を誘導す ることが判明した。
幣骨の代表的なグ リコサ ミノグ リカンには,ヒアル
ロン酸およびアグ リカンの 傍日銀であるコン ドロイチ ン
硫酸やケラタン硫酸がある12㌔今回の結果から,GkN
はヒアル ロン酸ではなく,コン ドロイチ ン硫酸やケラ
タン硫酸の産生調節を介 して,石灰化 を抑制 している
河能性が考 えられたp
そこで,石灰化抑制およびコンドロイチン硫酸 かケ
ラタン硫酸産生誘導に関与する遺伝子を検討 した。そ
の結異.GlcNがh・,lGPlllRNAの発現を抑制 したこと
か ら,GicNは軟骨細胞のMGP遺伝子発現 を介 し
て,石灰化を抑制 した可能性が考えられた¢さらに ,
コン ドロイチン硫酸 やケラタン硫酸の産生を誘導 した
GまcNは,Smad2とSma銅 mRNAの発現量を減少 さ
せた.Sl11ad2は T CTF.βL]71く一流に存在する転写国子と
して知 られている18)¢また,Smad2は,Sox9および
毘unx2と結合 し,軟骨の分化過程を調節 している可
能性が報告されている19-20㌧ 以上のことより,GまcNの
石灰化抑制作用は,Smad2の発現調節を介 し,Smad
2が関与す るSOX9および 鮎 nx2の遺伝子発現制御
を通 して,最終的にその下流の MGPや軟骨基質蛋白
質の発現 を制御 している可能性が考 えられた中
本実験の結果から,GicNは ,軟 骨細胞の石灰化を
抑制する可能性が示唆された.そしり作剛 葦楢は.軒与:
国子であるSllladZや Smadい り111RNA 発現 ,を調節す
ることにより,MGPおよびコ ン ドロイチ ン硫酸産生
に関わる遺伝子など,軟骨特異的遺伝子の発現を調節
している可能性が考えられた.さらにGIcNによる
jYTDC5石灰化抑制作糟は,GicNAcお よびグ)i,コサ
ミン矧廿二糖類では得られない可能性が考えられた.
本実朕はATr)L15をf削 たゝ iTli.7'tj.()石r天化ア 、リセ イ
-
74
系を開いて実験 を行った.今後.['JlZlit:Oの動物実験
系やヒトでの有効性を検討することが必要であると考
える.
∴参考文献
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2006年 9月i5日発行
編集 ・発行者 グルコサ ミン研究会
会 長 黒滞 尚
編集委員 長岡 功
中村 洋
野村義宏
南 三郎
事務局 〒1i3-8421 東京都文京区本郷2」」
順天堂大学医学部整形外科学教室 内
TEL 03-3813-3111(鰭) 錯濫 03T38ま3-3428
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