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Applying IFRS IFRS 12 非連結のス トラクチャード・エンティティへ の関与に関する開示例 20135

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Applying IFRS

IFRS第12号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

2013年5月

2 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

目次

はじめに ................................................................................................................................ 3

非連結のストラクチャード・エンティティに関する IFRS 第 12 号の開示規定 ........................................ 3

1. ストラクチャード・エンティティ」とは? ....................................................................................... 5

2. ストラクチャード・エンティティへの「関与」とは? ......................................................................... 7

3. 非連結のストラクチャード・エンティティの内容、目的、規模及び活動、 ならびにストラクチャード・エンティティの資金調達方法を説明するためにどのような開示が必要か? ... 9

4. 非連結のストラクチャード・エンティティから生じる「リスクの内容」を説明するために どのような情報の開示が必要か?........................................................................................ 11

5. 要求されている情報はどの程度集約すべきか? ..................................................................... 14

6. どのような場合に企業は非連結のストラクチャード・エンティティのスポンサーとみなされるか? ........ 14

7. スポンサーとなっているストラクチャード・エンティティに関して、 どのような「収益」に関する開示が必要か? ........................................................................... 17

8. 非連結のストラクチャード・エンティティに提供される財務的又は他の「支援」とは? ........................ 17

9. 「追加的な情報」として何を開示すべきか? ............................................................................ 20

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 3

はじめに IFRS 第 12 号「他の事業体への関与の開示」は、2011 年 5 月

に国際会計基準審議会(以下、IASB)により公表された開示に

関する基準書である。IFRS 第 12 号には、子会社、共同契約

(ジョイント・アレンジメント)、関連会社及び非連結のストラクチャ

ード・エンティティに関するすべての開示規定が含まれている。

IFRS 第 12 号は、「ストラクチャード・エンティティ(structured entity)」を定義し、報告企業にストラクチャード・エンティティへの

関与について開示するよう要求している。IFRS 第 12 号の公表

前、IFRS では、ストラクチャード・エンティティ、又は SIC 第 12号「連結-特別目的事業体」に説明される特別目的事業体

(SPE)について、具体的な開示規定は定められていなかった。

本稿では、非連結のストラクチャード・エンティティへの関与につ

いて、IFRS 第 12 号第 24 項から第 31 項に定められる開示規

定を取り上げる。なお、(本稿のセクション 1 で説明するとおり)

非連結のストラクチャード・エンティティとは、ストラクチャード・エ

ンティティの定義を満たすが、報告企業により連結されていない

事業体のことをいう。

なお、IFRS 第 12 号は、開示を定めた基準ではあるものの、具

体的な開示例を示していないため、本稿にはアーンスト・アンド・

ヤングによる開示例を含めている。

非連結のストラクチャード・エンティティに関する IFRS 第 12 号の開示規定 IFRS 第 12 号は、企業が他の事業体を支配しているかどうかを

決定した際の重要な判断及び仮定を、開示することを求めてい

る。加えて、IFRS 第 12 号は、非連結のストラクチャード・エンテ

ィティへの関与について特別な開示を要求している。

非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示規

定は、「関与の内容」と「リスクの内容」の 2 つに大きく分かれる。

IFRS 第 12 号第 24 項は、財務諸表の利用者が次のことを

評価できるような情報を開示することを求めている。

(a) 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与の内

容及び程度の理解(第 26 項から第 28 項)

(b) 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関連

したリスクの内容及び変動の評価(第 29 項から第 31項)

IFRS 第 12 号第 25 項では、企業が報告期間末にストラクチャ

ード・エンティティとの契約上の関与をもはや有していない場合

であっても、第 24 項(b)により要求される情報には、過去の期

間において非連結のストラクチャード・エンティティに対して有し

ていた関与(たとえば、ストラクチャード・エンティティのスポンサ

ーであること)から生じるリスクに対する企業のエクスポージャー

に関する情報が含まれると説明されている。

次ページのフローチャートは、必要となる開示をまとめたもので

ある。

4 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

IFRS 報告企業が、IFRS 第 12 号を非連結のストラクチャード・

エンティティへの関与に関して適用する際は、多くの解釈上及び

開示上の論点に直面する可能性が高い。その代表的なものとし

ては、以下が挙げられる。

1. 「ストラクチャード・エンティティ」とは?

2. ストラクチャード・エンティティへの「関与」とは?

3. 非連結のストラクチャード・エンティティの内容、目的、規模

及び活動、ならびに当該ストラクチャード・エンティティの資

金調達方法を説明する上ではどのような開示が必要か?

4. 非連結のストラクチャード・エンティティから生じる「リスクの

内容」を説明する上ではどのような情報の開示が必要か?

5. 要求されている情報はどの程度集約すべきか?

6. どのような場合に企業は非連結のストラクチャード・エンテ

ィティの「スポンサー」とみなされるか?

7. スポンサーとなっているストラクチャード・エンティティに関

して、どのような「収益」に関する開示が必要か?

8. 非連結のストラクチャード・エンティティに提供される財務

的又は他の「支援」とは?

9. 「追加的な情報」として何を開示すべきか?

10. 本稿では上記の各論点について順を追って説明し、銀行

及びその他の金融機関に関する開示例を示していく。

非連結のストラクチャー

ド・エンティティ

企業は関与を有している 企業はスポンサーであ

るが、関与を有してはい

ない

関与に関する情報 (第 26 項)

リスクの内容 (第 29 項、B26 項) • 報告企業がスポンサー

となるストラクチャード・

エンティティをどのよう

に決定したか • 当該ストラクチャード・

エンティティからの収益 • 移転された全資産の帳

簿価額 (第 27 項から第 28 項)

財務的又は他の支援の提供 (第 30 項から第 31 項)

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 5

1. 「ストラクチャード・エンティティ」とは? IFRS 第 12 号の定義によると、「ストラクチャード・エンティティ

(組成された企業、structured entity)」とは、議決権が管理業

務にのみ関係しており、関連性のある活動が契約上の取決めに

よって指図される場合など、どの当事者が事業体を支配してい

るかの決定に際して、議決権又は類似の権利が決定要因にな

らないように設計された事業体をいう。

IFRS 第 12 号付録 B の B22 項では、ストラクチャード・エン

ティティは、次の特徴又は属性の一部又は全部を有している

ことが多いと説明されている。

(a) 制限された活動

(b) 狭義かつ十分に明確化された目的(たとえば、税務上

有利なリースの実行、研究開発活動の実施、企業への

資金調達源の提供、又はストラクチャード・エンティティ

の資産に関連するリスクと経済価値を投資者に引き渡

すことによる投資者への投資機会の提供など)

(c) ストラクチャード・エンティティが劣後的な財務的支援な

しに活動資金を調達するには不十分な資本

(d) 信用リスク又はその他のリスクの集中をもたらす、契約

上互いにリンクした金融商品(トランシェ)による投資家

からの資金調達

IFRS 第 12 号 B23 項は、ストラクチャード・エンティティとみ

なされる事業体として、次のような例を挙げている。

(a) 証券化ビークル

(b) 資産担保証券の発行体

(c) 一部の投資ファンド

IASB が、ストラクチャード・エンティティへの投資について具体的

な開示規定を設けることにした背景には、ストラクチャード・エン

ティティへの関与は、伝統的な事業会社への関与と比べ企業に、

より大きなリスクを負わせるため、具体的な開示が必要であると

の要請を財務諸表利用者から受けたということがある。たとえば、

ストラクチャード・エンティティは、特定の資産から生じるリスクと

リターンを投資者へ引き渡すために組成されることがあるが、ス

トラクチャード・エンティティの資本は、その保有資産に損失が発

生した場合に当該損失を吸収するには不十分かもしれず、その

場合、リスク・エクスポージャーの増大が生じることになる。

非連結のストラクチャード・エンティティ

「非連結のストラクチャード・エンティティ」とは、報告企業により

支配されていない、すべてのストラクチャード・エンティティを指す。

したがって、以下の事業体がストラクチャード・エンティティの定

義を満たす場合、これらの事業体は、非連結のストラクチャード・

エンティティに該当する。

• 連結財務諸表上-非連結子会社への関与、又はジョイント・

ベンチャー、関連会社もしくは投資者が重要な影響力を有し

ていないその他持分への関与 • 単体財務諸表上-ジョイント・ベンチャー、関連会社もしくは

投資者が重要な影響力を有していないその他持分への関与 • 企業の唯一の財務諸表として作成される個別財務諸表上-

子会社、ジョイント・ベンチャー、関連会社又は投資者が重要

な影響力を有していないその他持分への関与

個別財務諸表は、企業が連結又は単体財務諸表を同時に作成

している場合には、IFRS 第 12 号の適用対象外である。

ストラクチャード・エンティティが、関連会社又はジョイント・ベンチ

ャーに該当する場合には、関連会社又はジョイント・ベンチャーと

しての地位に基づき有する関与についても、IFRS 第 12 号に従

い別途開示が必要となる。結論の根拠の BC77 項では、こうし

たケースに該当する場合、両方の開示一式を求めたとしても、

報告企業が提供を求められる情報の量が大きく増加することは

ないと IASB は考えたと説明されている。

6 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

SIC 第 12 号との比較

IFRS 第 12 号 BC82 項では、IASB がストラクチャード・エンティ

ティとして性格づけることを想定している事業体の種類は、SIC第 12 号「連結-特別目的事業体」において特別目的事業体

(SPE)と説明されていた事業体と大きく異なる可能性は低いと

説明されている。

SIC 第 12 号では、SPE は狭義かつ十分に明確化された目的を

達成するために創設された事業体と説明されていた。SIC 第 12号には、「議決権又は類似の権利が決定要因にならない」との

言及はないため、この点で SIC 第 12 号における SPE の説明と、

IFRS 第 12 号でのストラクチャード・エンティティの定義とは異な

っている。そのため、IFRS 第 12 号 BC84 項には、「「ストラクチ

ャード・エンティティ」という用語は SIC 第 12 号における SPE と

同様の事業体の集合を捕捉すべきであるという審議会の意図を

反映するため、当審議会は SIC 第 12 号と同様のガイダンスを

含めることを決定した」との説明があるとはいえ、SIC 第 12 号

に基づき SPE に該当していた事業体と、IFRS 第 12 号に基づ

きストラクチャード・エンティティに該当する事業体とが異なる可

能性もある。したがって、開示が必要となるストラクチャード・エン

ティティへの関与を有しているかどうかを分析する際は、まず、こ

れまで SIC 第 12 号に基づき SPE として分類していた事業体の

見直しから始めるのが良いかもしれない。

「(議決権に)類似の権利」とは?

IFRS 第 12 号では、「(議決権に)類似の権利」について定義さ

れておらず、どのような権利がこれに該当しうるのかについての

ガイダンスも定められていないため、おそらくこの検討には報告

企業ごとの判断が必要になると思われる。そのため、何が「類似

の」権利であり、ひいてはどのような事業体がストラクチャード・

エンティティに該当するかにつき、実務上のばらつきが生じる可

能性がある。

同基準策定時に IASB が類似の権利について言及した際に想

定していたと考えられるケースの 1 つとして、一定割合の投資

家が解任決議を要求する限り、解任事由がなくとも(without cause)ファンド・マネージャーを解任できる決議に参加できる実

質的な権利を投資者が有している集合投資スキームが挙げら

れる。このような(ファンド・マネージャーを解任する)権利が、実

質的なものと考えられるかどうか、その結果、当該集合投資スキ

ームがストラクチャード・エンティティに該当するかどうかの評価

は、決議を強行するにあたり、どれくらいの数の投資者と連携す

る必要があるのかによって決まると考えられる。

IFRS 第 12 号 B22 項から B24 項に挙げられている特徴又は属性は、定義より優先されるか?

上記で記述した「特徴又は属性」が、ある事業体がストラクチャ

ード・エンティティに該当するかの決定要因であるかどうか、ある

いは「特徴又は属性」は定義に常に劣後するものであるかどうか

(すなわち、事業体が議決権又は類似の権利に支配されている

ならば、特徴又は属性はストラクチャード・エンティティであるか

の決定上において無関係となる)について、IFRS 第 12 号では

明確にされていない。

この点、アーンスト・アンド・ヤングは、特徴及び属性は定義に劣

後すると考えている。しかし、結論の根拠を鑑みるに、IASB は、

事業体にこれらの特徴又は属性の一部が見られる場合、当該

事業体が議決権又は類似の権利により支配されている可能性

は低いと考えたのではないかと推測される。

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 7

2. ストラクチャード・エンティティへの「関与」とは? 他の事業体への「関与(interest)」とは、他の事業体の業績から

のリターンの変動性に企業をさらす契約上、及び契約によらない

関与を指す。関与は、資本性金融商品又は負債性金融商品の

保有や他の形式による関与(たとえば、資金の提供、流動性の

支援、信用補完及び保証など)によって示すことができるが、こ

れらに限定されない。ただし、通常の得意先と仕入先の関係だ

けでは、企業は必ずしも他の事業体への関与を有することには

ならない。

IFRS 第 12 号適用指針の B7 項では、ストラクチャード・エンテ

ィティの目的及び設計を考慮することは、報告企業が当該事業

体への関与を有しているかどうか、そのため、IFRS 第 12 号の

開示を提供する必要があるかどうかを検討する際に役立つ場合

があると説明されている。その検討の際には、ストラクチャード・

エンティティが生み出すように設計されたリスク及びストラクチャ

ード・エンティティが報告企業やその他の当事者に移転するよう

に設計されたリスクについて考慮する。

IFRS 第 10 号 B56 項では、変動リターンは、固定ではなく、投

資先の業績の結果として変動する可能性のあるリターンである

と説明されている。変動リターンは、正の値のみとなることも、負

の値のみとなることも、正と負の両方となることもある。投資者は、

投資先からのリターンに変動性があるかどうか、及び当該リター

ンがどのように変動するかについて、リターンの法的形態にかか

わらず、取決めの実質に基づいて評価する。たとえば、投資者

は、固定金利の債券を保有する場合がある。この固定金利の支

払いは、デフォルト・リスクがあり、投資者を発行体の信用リスク

にさらすことになるため、IFRS 第 10 号の目的上は変動リターン

である。変動性の量(すなわち、当該リターンの変動性がどれだ

けあるか)は、当該債券の信用リスクに左右される。同様に、投

資先の資産の管理に対する固定の業績報酬は、投資者を投資

先の業績リスクにさらすことになるため、変動リターンである。こ

の場合の変動性の量は、投資先が報酬を支払う十分な収益を

生み出す能力に左右される。

上記から、IFRS 第 12 号における「関与」の定義が、単なる事業

体の資本性又は負債性金融商品の保有よりもはるかに広いこと

が示唆される。IFRS 第 12 号は、報告企業の有する他の事業

体への関与を開示することを要求しているため、作成者は自社

の財務報告システム及びプロセスが、他の事業体への関与を特

定するのに十分かを確認する必要がある。

IFRS 第 12 号では、報告企業は、通常、金融商品(他の事業

体が発行する資本性又は負債性金融商品など)の保有又は

変動性を吸収する他の関与によって、他の事業体の業績から

のリターンの変動性にさらされることが明確にされている。この

点について IFRS 第 12 号 B8 項及び B9 項に基づく次の例

で説明する。

• クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の発行により生じ

るリターンの変動性(1)

報告企業はストラクチャード・エンティティに CDS を発行

している。ストラクチャード・エンティティは、この CDS に

より、保有する貸付金ポートフォリオに係る元利支払の

デフォルトから保護される。

一方、報告企業は、この CDS により、ストラクチャード・

エンティティのリターンの変動性を吸収しているため、当

該ストラクチャード・エンティティの業績によるリターンの

変動性にさらされている。このため、ストラクチャード・エ

ンティティに対して関与を有していることになる。

一部の金融商品は、報告企業のリスクを他の事業体に

移転するように設計されている。このような金融商品は、

他の事業体にはリターンの変動性を生み出すものの、

通常、報告企業自身が、当該他の事業体の業績による

リターンの変動性にさらされることはない。この点につい

て、下記の例で説明する。

• クレジット・デフォルト・スワップの発行により生じるリタ

ーンの変動性(2)

報告企業は、ストラクチャード・エンティティと CDS 契約

を締結している。この CDS により、ストラクチャード・エ

ンティティは Z 社の信用リスクにさらされる。つまり、こ

の契約の目的は、ストラクチャード・エンティティへの投

資者が、(契約に関与するどの当事者とも関係がない)

Z 社の信用リスクに対するエクスポージャーをとること

ができるようにすることにある。

この CDS は、Z 社の変動性をストラクチャード・エンティ

ティに移転するものであり、報告企業に当該ストラクチャ

ード・エンティティに係るリターンの変動性を負担させる

ものではない。このため報告企業は、当該ストラクチャ

ード・エンティティのリターンの変動性にさらされておら

ず、ストラクチャード・エンティティへの関与を有していな

い。

8 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

買建コール・オプション及び売建プット・オプション(どちらも権利

行使価格が公正価値である場合を除く)も、通常、事業体の保

有する資産が生み出す変動性を吸収するため、他の事業体へ

の関与となる。対照的に、金利スワップなどの一部のデリバティ

ブ金融商品は、変動性を創出すると共に吸収していることがあ

るため、これらのデリバティブが他の事業体への関与となるかど

うかを決定する際には判断を必要とする。

アーンスト・アンド・ヤングは、プレーン・バニラのスワップ及びそ

の他のデリバティブは、市場レート又は指数に基づき変動性を

創出すると共に吸収し、また発行済債券の保有者より優先的な

請求権を与えるものであるため、事業体が移転するように設計

されたリスクを吸収しておらず、よって変動リターンに対するエク

スポージャーではないと考えている。したがって、こうしたデリバ

ティブは、IFRS 第 12 号に基づく開示が必要な他の事業体への

関与ではない可能性が高い。

多くの非連結のストラクチャード・エンティティへの関与は、IFRS第 7 号「金融商品:開示」の適用対象になるため、非連結のスト

ラクチャード・エンティティの開示規定は、IFRS 第 7 号の開示規

定と一部重複する場合があると思われる。

非連結のストラクチャード・エンティティへの関与としては、以下

が挙げられる。

• 発行された債券への投資 • 売建クレジット・デフォルト・スワップ • 明示的及び黙示的なローン・コミットメント、流動性の支援、

及び保証 • 売建プット・オプション(権利行使価格が公正価値の場合を

除く) • 買建コール・オプション(権利行使価格が公正価値の場合を

除く) • 残余持分 • 信用保証 • 貸付 • アセット・マネジメント報酬

アセット・マネジメント報酬

通常の得意先と仕入先の関係だけでは、企業は必ずしも他の事

業体への関与を有さない。しかし、上記で説明したとおり、IFRS第 10 号 B56 項では、投資先の資産の管理に対する固定の業

績報酬は、投資者に対する変動リターンを生み出すと説明され

ている。固定の業績報酬は、投資者を投資先の業績リスクにさ

らすことになるため、「変動性」を伴う。したがって、報告企業とス

トラクチャード・エンティティとの関係を適切に表すものとして、ア

セット・マネジメント報酬は、通常の得意先と仕入先の関係として

ではなく、変動的関与として扱う方が、IFRS 第 12 号の趣旨に

より近くなると思われる。ファンド・マネージャーは、その他にイン

センティブ報酬を稼得している場合や、ファンド自体の投資に直

接的関与を有している場合がある。

ファンド・マネージャーが、報酬に加えて、(たとえば、委譲された

議決権又は契約上の取決めにより)何らかのパワーを有してい

る場合には、自身がファンドを支配しているか、したがって当該

ファンドを連結する必要があるかどうかを検討しなければならな

い。本論点については、別のアーンスト・アンド・ヤングの刊行物

「IFRS 第 10 号「連結財務諸表」-ファンド・マネージャーへの影

響(Applying IFRS 10 – Consolidation for Fund Managers)」(2013 年 6 月に日本語版公表予定)にて説明されている。

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 9

3. 非連結のストラクチャード・エンティティの内容、目的、規模及び活動、ならびにストラクチャード・エンティティの資金調達方法を説明するためにどのような開示が必要か? IFRS 第 12 号第 26 項では、企業は、非連結のストラクチャー

ド・エンティティへの関与に関する定性的情報及び定量的情報の

開示が求められており、これには、ストラクチャード・エンティティ

の内容、目的、規模及び活動ならびにストラクチャード・エンティ

ティの資金調達方法が含まれるが、これらに限られないと述べら

れている。

IFRS 第 12 号 BC96 項では、以下のように説明されている。

「当審議会は、ストラクチャード・エンティティが保有する資産の

開示は、その資産の資金源に関する情報がないと、有用性が限

定的であり、解釈が困難となる可能性があると主張したコメント

提出者の見解に同意した。したがって、当審議会は、ストラクチ

ャード・エンティティの内容、目的、規模及び活動、ならびにストラ

クチャード・エンティティの資金調達方法の開示を企業に要求す

ることを決定した。当審議会は、この要求は、ストラクチャード・エ

ンティティが保有する資産及び当該資産の資金調達に関する十

分な情報を、企業が関与を有する非連結のストラクチャード・エ

ンティティの資産についての具体的な開示をすべての状況で要

求することなく、利用者に提供するはずであると結論を下した。リ

スクに対するエクスポージャーの評価に関連性がある場合には、

企業は、ストラクチャード・エンティティの資産及び資金調達に関

する追加的な情報の提供を要求される」

内容及び目的

事業体の内容及び目的の例は、次のとおりである。

• 資産の証券化をはじめとする、貸借対照表のエクスポージャ

ー及びリスクの管理 • クレジット・リンク債やエクイティ・リンク債など、負債性及び

資本性金融商品に対する合成エクスポージャーの投資家へ

の提供 • 管理投資戦略(managed investment strategy)による、投

資家へのさまざまな投資機会の提供 • 資金調達及び資金調達の促進

規模

非連結のストラクチャード・エンティティの規模について開示を求

める規定は、ストラクチャード・エンティティの資産価値合計に関

する情報を提供すれば満たされる可能性がかなり高いと考えら

れる。しかし、IFRS 第 12 号結論の根拠の BC120 項(h)では、

IFRS 第 12 号は、企業が関与しているストラクチャード・エンティ

ティが保有する資産の報告金額の開示を要求していないと特に

言及されている。これは、資産の公正価値以外の規模を表す測

定値、たとえばストラクチャード・エンティティが発行した証券の

名目的価値などの開示が認められることを示唆していると思わ

れる。

活動

非連結のストラクチャード・エンティティの活動を開示する場合、

そうした活動には、当該エンティティが設計された目的を達成す

るためのもので、かつ、エンティティのリターンに大きな影響を及

ぼす主要なものを含めるべきである。IFRS 第 12 号には特定の

ガイダンスは含められていないものの、SIC 第 12 号にこれまで

含まれていた例が同じく当てはまると考えられる。すなわち、スト

ラクチャード・エンティティの活動とは主に以下に関与することで

ある。

• 企業に対する長期資本の調達源の提供、又は債券発行に

よる企業の主たる事業活動を支援するための資金供与 • ストラクチャード・エンティティが提供しない場合には、企業自

身が提供しなければならない、企業の主たる事業活動に必

要な財又はサービスの提供

資金調達

資金調達については、報告企業が非連結のストラクチャード・エ

ンティティに提供した資金に限らず、第三者がストラクチャード・

エンティティに提供した資金も含めて開示するものと考えられる。

さらに、エクイティによる資金調達に限らず、ストラクチャード・エ

ンティティの事業活動を可能にするあらゆる形態の資金調達を

含めるように思われる。

10 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

例 1 – ストラクチャード・エンティティの内容、目的、及び活動の開示 XYZ 銀行は、主として金融資産の証券化、ストラクチャード・エンティティへの投資・融資、投資家に特別な投資機

会を提供するストラクチャード・エンティティのスポンサーになることを通じて、ストラクチャード・エンティティに関与し

ています。ストラクチャード・エンティティは、通常、当該ストラクチャード・エンティティの保有する資産によって担保

される及び(又は)当該資産に連動する負債性及び資本性証券の発行によって、資産購入資金を調達しています。

ストラクチャード・エンティティの発行する負債性及び資本性証券には、優先劣後構造を持つトランシェが含まれる

場合があります。

ストラクチャード・エンティティの事業活動は、次のとおりです。

i. 不動産担保証券化(MBS)ストラクチャード・エンティティ、債務担保証券化(CDO)ストラクチャード・エンティティ

及びローン担保証券化(CLO)ストラクチャード・エンティティ XYZ 銀行は、住宅ローン及び商業用不動産ローン、ならびに不動産担保証券をストラクチャード・エンティティに売

却し、社債及び貸付債権を CDO 及び CLO ストラクチャード・エンティティに売却していますが、ストラクチャード・エ

ンティティに売却した資産に対する持分を保持する場合もあります。また、XYZ 銀行は、トレーディング活動の一環

としてストラクチャード・エンティティが発行した証券の売買も行っています。さらに、これらのストラクチャード・エン

ティティとさまざまなデリバティブ取引を締結することがあります。

XYZ 銀行は、クレジット・デリバティブを用いて、証券保有者のエクスポージャーを合成的に生み出すシンセティッ

ク CDO、及び CLO の組成にも関与しています。クレジット・デリバティブは、単一の資産もしくは指数、又は資産も

しくは指数のバスケットを参照対象とすることがあります。これらのストラクチャード・エンティティは、持分を販売す

ること及びクレジット・デリバティブの相手方当事者からプレミアムを受領することで得た資金を、高格付けの資産

の購入に使用します。購入された資産は、エクスポージャーを担保する役割を果たします。

XYZ 銀行は、他の投資家のための代理人として行動しているため、これらの MBS、CDO 及び CLO ストラクチャー

ド・エンティティを連結していません。当行はこれらのエンティティの発行するシニア債部分のみを保有し、ジュニア

債部分は保有しておりません。

ii. 資産担保コマーシャル・ペーパーを発行するコンデュイット(導管体) XYZ 銀行は、資産(通常はクレジット・カード債権)をストラクチャード・エンティティに譲渡し、当該ストラクチャード・

エンティティはコマーシャル・ペーパーを発行します。コマーシャル・ペーパーの償還期間は通常 90 日ですが、資

産の満期はそれより短く、通常は 40 日であります。当行は、資産の売却、調達、及びサービシングに関与してい

ます。第三者が信用供与枠及び信用補完を提供していますが、そうでない場合は、当行がストラクチャード・エンテ

ィティに信用補完を提供する場合があります。当行は、自らがこれらの事業体を支配していないと判断しております。

当期において、非連結のコマーシャル・ペーパー・コンデュイットの 1 つが、コマーシャル・ペーパー市場の縮小に

より、資金繰りが困難となりました。XYZ 銀行は、資金調達不足を補填するため短期の流動性支援を行っておりま

す。

iii.その他の資産担保証券ストラクチャード・エンティティ XYZ 銀行は、負債性及び資本性証券などを参照資産としてローン債券をクライアントに発行する複数のストラクチ

ャード・エンティティを設立し、それらのストラクチャード・エンティティが発行する証券をトレーディング活動の一環と

して売買しています。当行は、多くのマルチイシュー型ビークルを設立し、当該ビークルは資産、負債及び資本が

別個のみなし事業体(サイロ)に隔離される個々の負債性金融商品を多く発行しております。当行は、主に金利ス

ワップ及び為替スワップなどのデリバティブ取引をこれらのストラクチャード・エンティティと契約しています。

iv.不動産及びその他の投資を行うストラクチャード・エンティティ XYZ 銀行は、不動産、優良及び不良債権、貸倒債権ならびに資本性証券を保有する複数のストラクチャード・エン

ティティの発行する資本性及び負債性証券を組成及び購入し、また、それらのストラクチャード・エンティティに融資

を行っております。

IFRS 12.24(a)

IFRS 12.26

IFRS 12.B26(g)

IFRS 12.B26(f)

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 11

4. 非連結のストラクチャード・エンティティから生じる「リスクの内容」を説明するためにどのような情報の開示が必要か? IFRS 第 12 号第 29 項では、他の形式が適切となる場合を除

き、次の事項の要約を表形式で開示しなければならないとして

いる。

(a) 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関連し

て財務諸表に認識した資産及び負債の帳簿価額

(b) 当該資産及び負債が認識されている貸借対照表上の表

示科目

(c) 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与から生じ

る損失に対する最大エクスポージャーを最もよく表す金

額(最大エクスポージャーの算定方法を含む)。企業が、

ストラクチャード・エンティティへの関与から生じる損失に

対する最大エクスポージャーを定量化できない場合には、

その旨及び理由を開示しなければならない。

(d) 上記(a)の資産及び負債の帳簿価額と、当該ストラクチャ

ード・エンティティからの損失に対する企業の最大エクス

ポージャーとの比較

IFRS 第 12 号は、損失に対する最大エクスポージャーとは何

かを定義していない。 IASB は、何が最大の損失を表すのかと

いう定義を示さずに、報告企業の特定の文脈において何が損

失となるのかの識別を企業に委ねることとした。そのため、企

業は最大損失エクスポージャーをどのように算定したのかを開

示しなければならない。IASB は金融商品によっては、理論的

に企業は無制限の損失にさらされるため、非連結のストラクチ

ャード・エンティティへの関与から生じる損失に対する最大エク

スポージャーの計算が常に可能なわけではないことを認めて

いる。こうしたケースに該当する場合、企業は損失に対する最

大エクスポージャーの計算が可能ではない理由の開示が求め

られる。

なお、アーンスト・アンド・ヤングは、「損失に対する最大エクス

ポージャー」とは、ストラクチャード・エンティティへの関与の結

果、包括利益計算書への計上が求められる可能性のある最大

損失のことであると考えている。さらに、この生じる可能性のあ

る最大損失は、そうした損失が実際に発生する確率にかかわ

らず開示しなければならない。IFRS第 12 号は、最大エクスポ

ージャーの金額について、損失の影響を緩和する、報告企業

が有する担保又はヘッジ手段を控除した残額とするのか、控

除前の総額とするのかを明らかにしていない。アーンスト・アン

ド・ヤングは、損失に対する最大エクスポージャーの金額は担

保又はヘッジ手段を控除する前の総額で開示し、損失の影響

を緩和する効果のある保有している金融商品については、別

個の開示を行うべきであると考えている。1

資産及び負債の帳簿価額と、損失に対する最大エクスポージ

ャーとの比較に関する開示は、財務諸表上の金額と最大損失

エクスポージャーの金額との違いを利用者により良く理解して

もらうことを意図している。さらに、この開示は、企業が損失の

すべて又は一部のみを負担する可能性が高いかどうかに関し

て利用者が評価する上で有用である。

上記の規定に加えて、IFRS 第 12 号は、非連結のストラクチャ

ード・エンティティへの関与を有する場合に企業がさらされるリ

スクを評価するために必要となる追加的な情報についても開

示を求めている。これらの追加的な開示については、下記のセ

クション 9 にて説明する。

例 2 及び 3 は、非連結のストラクチャード・エンティティに対し

て企業が有するリスクの説明を求める第 29 項に基づく開示例

を示したものである。例 2 は、第 29 項(a)及び第 29 項(b)に基づく開示例である。これらの規定は、非連結のストラクチャー

ド・エンティティへの関与が認識されている貸借対照表上の表

示科目とその帳簿価額の開示を求めている。例 3 は、第 29項(c)及び第 29 項(d)に基づく開示例である。これらの規定は、

非連結のストラクチャード・エンティティへの報告企業の関与か

ら生じる損失に対する最大エクスポージャー、及び非連結のス

トラクチャード・エンティティに関する帳簿価額と、損失に対する

最大エクスポージャーとの比較の開示を求めている。加えて、

本稿で前述した「規模」の開示規定が、ストラクチャード・エンテ

ィティの保有する資産合計を含めることで満たされている。

1 IFRS 第 7 号「金融商品:開示」第 36 項で求められる開示

12 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

例 2 – リスクの内容

非連結のストラクチャード・エンティティに関するリスク

以下の表は、20XX 年 12 月 31 日現在において XYZ 銀行が有する非連結のストラクチャード・エンティティへ

の関与に関して、貸借対照表に認識された帳簿価額を要約したものであります。 IFRS 12.29(a),(b)

単位:百万 合計

資産又は負債の貸借対照表

上の表示科目 貸付金 投資 コミットメント及

び保証 デリバティブ金

融商品 資産 負債

金融投資 (純損益を通じて

公正価値で測定) 1,173 3,265 - - 4,438 -

金融投資 (売却可能)

67 820 - - 887 -

貸付金及びその他金銭債権

(償却原価で測定) 1,276 - - - 1,276 -

その他負債 - - 321 - - 321

引当金 - - 164 - - 164

デリバティブ金融商品 - - - 511 367 878

合計 2,516 4,085 485 511 6,968 1,363

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 13

例 3 – 損失に対する最大エクスポージャー

損失に対する最大エクスポージャー 以下の表に示される損失に対する最大エクスポージャーは、偶発性を伴うものであり、XYZ 銀行が 20XX 年 12月 31 日現在で関与を有している非連結のストラクチャード・エンティティに対して信用供与枠及びその他の資金

提供コミットメント(たとえば金融保証)を提供した結果、発生する可能性があるものです。XYZ 銀行は、ストラクチ

ャード・エンティティへの関与により減損から生じる損失にもさらされています。

コミットメント及び保証、ならびに売建クレジット・デフォルト・スワップに関する損失に対する最大エクスポージャー

は、将来の潜在的損失の想定元本であります。

残存持分及び購入持分、ならびに融資及び投資に関する損失に対する最大エクスポージャーは、それらの持分

の現在帳簿価額であります。

損失に対する最大エクスポージャーの金額には、損失に対する当該エクスポージャーの影響を緩和するために

XYZ 銀行が行うヘッジ活動の影響を考慮しておりません。

以下の表は、20XX 年 12 月 31 日現在で XYZ 銀行が保有するストラクチャード・エンティティへの関与から生じ

る損失に対する最大エクスポージャーを、エクスポージャーの内容ごとに要約したものであります。

単位:百万 損失に対する最大エクスポージャー 帳簿価額 ストラクチャード・エン

ティティへの関与 ストラクチャ

ード・エンテ

ィティの保有

する資産 ストラクチャード・エンティティの

種類 貸付金 投資 コミットメン

ト及び保証

クレジット・

デフォルト・

スワップ 合計 資産 負債

不動産担保証券 1,273 1,938 - 2,186 5,397 3,363 211 32,035

CDO及びCLO - 502 1,765 2,876 5,143 602 829 18,765

資産担保コマーシャル・ペーパー 379 865 - 1,244 379 124 6,803

その他の資産担保証券 12 335 - 1,865 2,212 416 123 5,843

不動産、その他の投資 1,231 931 622 - 2,784 2,208 76 4,238

負債として計上した額を控除 (485) (878) (1,363)

合計 2,516 4,085 2,767 6,049 15,417 6,968 1,363 67,684

IFRS 12.29(a)

IFRS 12.29(c)

IFRS 12.29(d)

14 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

5. 要求されている情報はどの程度集約すべきか? IFRS 第 12 号では、集約が開示目的に沿ったものであり、提供

される情報を不明瞭なものにしない限り、類似の事業体への関

与について求められる開示を集約することが認められている。ア

ーンスト・アンド・ヤングは、多くの企業にとって、情報の集約をど

のような場合に、どのように行うかについて判断することは、非

常に難しい問題であると考えている。過度に詳細な情報を含め

ない一方で、関与に関連する内容とリスクを利用者が評価でき

る情報を提供するという開示目的が達成されるように適切なバ

ランスを取ることは、経営者の重要な判断を必要とする可能性

が高い。情報を集約するか否かを判断する際、企業は定性的情

報と定量的情報の両方の観点から、集約を検討している各事業

体のリスク及びリターン特性の相違と、報告企業にとっての各事

業体の重要性を考慮する。企業は、そうした他の事業体への関

与の内容及び程度を財務諸表の利用者に明確に説明できるよ

うな方法で開示を行うことが求められる。

アーンスト・アンド・ヤングは、開示が集約して行われる場合、関

与に関しては類似のリスク特性を共有すべきであると考えてい

る。さらに、類似のリスクを有する関与が識別された場合、IFRS第 12 号 B6 項で検討されている次の基準により、類似の関与

のグループ化を検討する企業もあろう。

• 活動の内容 (例:研究開発を行う事業体、リボルビング式ク

レジット・カード債権の証券化を行う事業体) • 業種別分類 • 地理的区分 (例:国又は地域)

どの程度開示を分解するかは、ストラクチャード・エンティティへ

の関与がどのぐらい多様性に富んでいるかに大きく依存する。

活動が多岐にわたるほど、より詳細な情報が財務諸表の利用

者にとって有用になる。たとえば、銀行に関しては、サブプライ

ム・ローン又は商業用もしくは居住用不動産ローンなど、リスク

の種類別に分類することが適切な場合もある。

6. どのような場合に企業は非連結のストラクチャード・エンティティのスポンサーとみなされるか? 報告企業が、たとえば報告期間の末日現在で当該事業体への

関与を保持していないために、当該ストラクチャード・エンティティ

に関するリスクの内容を開示する必要がない場合であっても、非

連結のストラクチャード・エンティティのスポンサーとなっている場

合には、IFRS 第 12 号第 27 項により開示が求められる。 した

がって、報告企業は、非連結のストラクチャード・エンティティへ

の関与を有さないために、IFRS 第 12 号第 29 項により捕捉さ

れなくとも、スポンサーに該当する可能性がある。IFRS 第 12 号

は、スポンサーの定義を定めていないが、SIC 第 12 号第 2 項

は、スポンサーを、「自己のために SPE を創設した企業」である

と定義していた。

第 27 項の開示規定は、企業がストラクチャード・エンティティへ

の関与を保持していないとしても、当該ストラクチャード・エンティ

ティのスポンサーである場合にはリスクを生み出す可能性があ

るとの根拠に基づき定められた。IFRS 第 12 号結論の根拠の

BC87 項は、「ストラクチャード・エンティティが困難に直面した場

合には、スポンサー企業の行った助言又は行動が問題にされる

可能性や、スポンサーが自らの信用を守るために行動すること

を選択する可能性がある」と説明している。

事業体は、報告企業とその他の投資者の両方を満足させるべく、

複数の目的を達成するために組成されることもある。たとえば、

証券化により銀行は資金調達を行う一方、投資家は特定種類

の負債性金融商品を保有することで、特定のリスク・クラスに対

するエクスポージャー、又は会計上のメリットを得ることがある。

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 15

報告企業がストラクチャード・エンティティのスポンサーかどうか

を決定するためには、判断が必要とされる。報告企業がストラク

チャード・エンティティの目的と設計の決定に関与しており、かつ

次のいずれかの要因に当てはまる場合には、報告企業はストラ

クチャード・エンティティのスポンサーであることが示唆される可

能性がある。

• 報告企業がストラクチャード・エンティティをほぼ独占的に利

用している。たとえば、資産は報告企業により組成されたも

の又は報告企業はデリバティブを利用してストラクチャード・

エンティティからプロテクションを購入している。 • ストラクチャード・エンティティの名称又はストラクチャード・エ

ンティティの発行する商品の一部に報告企業の名称が含ま

れている。 • 報告企業がストラクチャード・エンティティのパフォーマンスに

ついて黙示的な保証を与えている。

IFRS 第 12 号第 27 項は、非連結のストラクチャード・エンティ

ティへの関与は有していないが、当該ストラクチャード・エンティ

ティのスポンサーとなっている企業に対し、以下を開示するよう

求めている。

(a) 報告企業がスポンサーとなっているストラクチャード・エン

ティティをどのように決定したか。

(b) 報告期間中のストラクチャード・エンティティからの収益(表

示した収益の種類の記述を含む)

(c) 報告期間中にストラクチャード・エンティティに移転された

全資産の移転時における帳簿価額

上記(a)及び(b)で求められる情報は、報告期間中にストラクチャ

ード・エンティティに資産が移転されたかどうかにかかわらず、開

示されなければならない。これらの開示はいつまで行うかの期

限が定められていないため、理論上は、ストラクチャード・エンテ

ィティへの関与が終了した後も開示が永久に行われる可能性も

あることになる。

IFRS 第 12 号からは、上記(c)が、報告企業からストラクチャー

ド・エンティティに譲渡された資産について述べているのか、譲

渡企業に関係なく、ストラクチャード・エンティティに譲渡されたす

べての資産を指しているのかについてが明確ではないが、結論

の根拠 BC90 項では、IASB が、開示される資産情報は、スポン

サーとなっている企業から移転された資産だけではなく、ストラク

チャード・エンティティに報告期間中に移転されたすべての資産

について言及すべきであるという結論を下したことが説明されて

いる。

ストラクチャード・エンティティからの収益は、IFRS 第 12 号に定

義される報告企業の「関与」から生じる収益に限定されず、報告

企業が受領し、認識するすべての種類の収益が含まれる。収益

についての詳細は、セクション 7 を参照されたい。

16 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

例 4 – 非連結のストラクチャード・エンティティのスポンサーとなっている場合

報告期間の末日現在で、関与は有していないがスポンサーとなっているストラクチャード・エンティティ

XYZ 銀行は、当行が設計及び設立に主に関与したストラクチャード・エンティティについては、当行がスポンサ

ーであると考えております。また、XYZ 銀行は、当行がスポンサーとなっているストラクチャード・エンティティに

対する資産の譲渡、当該ストラクチャード・エンティティに関連する商品の当行の名前による販売、ならびに当該

ストラクチャード・エンティティのパフォーマンスに関する保証の提供を行っています。

スポンサーとなっている一部のストラクチャード・エンティティについて、XYZ 銀行は報告期間の末日現在では

関与を有しておりません。しかし、当行は当報告期間中に当該ストラクチャード・エンティティに資産を売却し(売

却資産に対する継続的関与は保持していない)、そうした資産の売却及び当該エンティティと行ったその他の取

引について、報酬を稼得しています。以下の表は、当報告期間中に XYZ 銀行が認識した収益と、当報告期間

中に当該ストラクチャード・エンティティに移転された資産の公正価値を示したものであります。

IFRS 12.27-28

単位:百万 関与からの収益合計 移転された資産 IFRS 12.27

ストラクチャード・エンティティの種類 コミッション及

び手数料 利息収益 資産の売却に

係る利得及び

損失合計

合計 公正価値

不動産担保証券 14 21 7 42 3,065

CDO 及び CLO 7 8 12 27 2,110

資産担保コマーシャル・ペーパー 19 2 3 24 426

その他の資産担保証券 14 11 26 51 1,325

不動産、信用関連、及びその他の投資 15 6 18 39 178

合計 69 48 66 183 7,104

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 17

7. スポンサーとなっているストラクチャード・エンティティに関して、どのような「収益」に関する開示が必要か? IFRS 第 12 号は、スポンサー企業が報告期間の末日現在で関

与を有さない非連結のストラクチャード・エンティティから生じた

収益(income)を開示することを求めている(第 27 号(b))。IFRS 第 12 号の付録 A において、ストラクチャード・エンティティ

からの収益が定義されている。

ストラクチャード・エンティティからの収益には、次のものが含ま

れるが、これらに限定されるわけではない。

• 経常的及び非経常的手数料(ストラクチャリング手数料、管

理手数料、募集代理手数料(placing agent fee)など) • 利息 • 配当 • ストラクチャード・エンティティに対する持分の再測定又は認

識の中止に係る利得又は損失 • ストラクチャード・エンティティへの資産又は負債の移転から

生じる利得又は損失

IFRS 第 12 号結論の根拠の BC 第 90 項では、収益及び資産

情報の開示は、企業に不履行又は遡及義務が生じた場合の実

際のリスクを利用者が評価するのに役立つことを意図したもの

ではなく、「企業がこうした種類の取引で運営している事業の規

模、及び企業が自らの事業を円滑に進めるためにこれらの事業

体にどれだけ依存しているのかの程度についての感触を与える

ものである」と説明されている。

8. 非連結のストラクチャード・エンティティに提供される財務的又は他の「支援」とは?

非連結のストラクチャード・エンティティに対する契約上又は非契約上の財務的支援又は他の支援の提供

IFRS 第 12 号は、非連結のストラクチャード・エンティティに提供

した財務的支援及び他の支援を開示することを求めている。契

約上の義務に基づく支援に関する開示は、非連結のストラクチ

ャード・エンティティのリスクの内容に関する開示規定に含まれ、

この開示規定については上記のセクション 4 で説明した。本セ

クションでは、契約上の義務によらず支援を提供する場合の開

示規定について説明する。

IFRS 第 12 号第 30 項は、非連結のストラクチャード・エンテ

ィティに提供した契約上の義務によらない財務的支援を開示

することを求めている。財務的支援又は他の支援が、報告企

業が現在関与している、又は従前、関与していた事業体に対

して提供されており、かつ当該支援を提供する契約上の義務

を報告企業が負っていない場合、報告企業は次の事項を開

示しなければならない。

(a) 提供した支援の種類及び金額(ストラクチャード・エンテ

ィティが財務的支援を得るのを企業が援助した場合も

含む)

(b) 当該支援を提供した理由

18 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

支援

「支援」は IFRS 第 12 号で定義されていない。結論の根拠

BC105 項によれば、IASB は「支援」という用語を定義した場合、

その意味が広くなり過ぎ有効でなくなってしまうか、開示を避ける

ためのストラクチャリングの機会を与えてしまう可能性があると

いう理由から定義しなかったが、IASB 自身は、支援とは、他の

企業に対する直接又は間接的な資源の提供であると広く理解さ

れていると考えている。非連結のストラクチャリング・エンティティ

について開示される可能性のある支援の種類には、たとえば、

ストラクチャード・エンティティの発行した債券又はユニットの購

入、ストラクチャード・エンティティの資産の購入、長期融資、又

は債務免除などがある。

IASB は、「他の支援」の意味を明らかにしていないが、アーンス

ト・アンド・ヤングは、他の支援とは、人的資源やマネジメント・サ

ービスといった非財務的性質の支援を意味すると考えている。

財務的支援又は他の支援を行う現在の意図

IFRS 第 12 号第 31 項は、非連結のストラクチャード・エンティ

ティに対して財務的支援又は他の支援を行う現在の意図(ストラ

クチャード・エンティティが財務的支援を得るのを援助する意図

を含む)を開示することを求めている。

IFRS 第 12 号は、「意図」とは何かについて定義していない。し

かし、結論の根拠 BC104 号によれば、意図とは、財務的支援

の提供を企業が「決定」していること(すなわち、現在の意図があ

ること)を意味することが示されている。このことから、支援を提

供するという決定は、決定権限を有する当事者により承認され

た状態であることが暗に示されている。結論の根拠における表

現に基づけば、「意図」が支援先のストラクチャード・エンティティ

に対して開示されていることも、あるいは IAS 第 37 号「引当金、

偶発負債及び偶発資産」で定義される推定的債務が成立してい

ることも求められていない。

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 19

次の例は、契約上の義務によらない財務的支援に関連する規定を説明するものである。

例 5 – ストラクチャード・エンティティに提供される契約上の義務によらない支援

契約上の義務によらない支援を提供する結果、連結することになる場合 20XX 年 2 月 28 日、コマーシャル・ペーパー(以下、「CP」)発行市場の混乱を受けて、XYZ 銀行は、(非連結のス

トラクチャード・エンティティである)ABC コマーシャル・ペーパー・コンデュイットに対し、CP の購入により 60 百万ポ

ンドの資金援助を実施しました。購入した CP の額は、ABC コマーシャル・ペーパー・コンデュイットの資産価値の

60%を占めていました。その結果、XYZ 銀行は、資産投資ガイドラインを改定するパワーを獲得したため、ABC コ

マーシャル・ペーパー・コンデュイットの支配を有していると結論付けました。XYZ 銀行は、20XX 年 2 月 28 日か

ら ABC コマーシャル・ペーパー・コンデュイットを連結した結果、財政状態計算書上、100 百万ポンドの A 格モーゲ

ージ債権を認識しております。この CP の取得は、当行のアドバイスにより ABC コマーシャル・ペーパー・コンデュイ

ットに投資したクライアントに対し、誠意をもって対応するために行われたものです。

契約上の義務によらない支援を提供する結果、引き続き連結しない場合 20XX 年 5 月、XYZ 銀行は、他の資金調達先から短期資金を調達するのが困難な状態にある DEF ファンドの経

営陣から、資金援助の依頼を受けました。XYZ 銀行は、当行が DEF ファンドを最初に組成し、投資家に販売した経

緯を踏まえ、誠意をもって対応するために、DEF ファンドに短期の流動性支援として 65 百万ポンドを提供すること

に合意しました。資金援助額の全額が 14 日以内に返済されると共に、同日以降、追加の支援の提供は行われて

おりません。XYZ 銀行は資金援助をする契約上の義務を負っているわけではありませんが、DEF ファンドが短期債

務を賄うことができるように資金援助を実施しました。当該期間中に XYZ 銀行は DEF ファンドに対するパワーを獲

得しなかったため、当該ファンドを連結しておりません。

財務的支援を提供する意図 20XX 年 12 月 31 日現在、XYZ 銀行の経営陣は、厳しい市場状況を踏まえ、既存の担保が AA 格を下回る場合

には、追加の担保を AAA 格 CDO ストラクチャード・エンティティに提供するという誠意ある対応を行うことを決定し

ています。提供される可能性のある金額は、20 百万ポンドから 30 百万ポンドの間と予想されます。本決定は、本

AAA 格 CDO に対して償還要求が行われることを回避するために実施するものであります。

IFRS 12.30

IFRS 12.30

IFRS 12.31

20 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

9. 「追加的な情報」として何を開示すべきか? 「リスクの内容」の開示規定を満たすために、IFRS 第 12 号適

用指針の B25 項では、以下のように説明されている。

「第 29 項から第 31 項で要求されている情報に加えて、企業は

第 24 項(b)の開示目的を満たすのに必要な追加的な情報を開

示しなければならない」

IFRS 第 12 号 B26 項で挙げられているとおり、関連する可能

性のある追加的な情報の例としては次のものがある。

(a) 非連結のストラクチャード・エンティティに対して企業が財務

的支援を提供することが要求される可能性のある取決め

の条件(例:ストラクチャード・エンティティの資産の購入又

は財務的支援を行う義務に関連した、流動性の取決め又

は信用格付けトリガー)。これには、次のものが含まれる。

(i) 報告企業を損失にさらす可能性のある事業又は状況

の説明

(ii) 義務を限定する条項があるかどうか

(iii) 財務的支援を提供する他の当事者の有無。また、その

ような当事者がいる場合には、報告企業の義務が他

の当事者の義務とどのように順位付けされているか

(b) 非連結のストラクチャード・エンティティに関して報告期間

中に生じた損失

(c) 非連結のストラクチャード・エンティティから報告期間中に

受け取った収益の種類

(d) 企業が他の当事者よりも前に非連結のストラクチャード・

エンティティの損失を負担することを要求されているかどう

か、企業にとっての当該損失の上限、及び(関連性がある

場合には)非連結のストラクチャード・エンティティへの企

業の関与よりも低順位の関係者が負担する可能性のあ

る損失の順位及び金額

(e) 第三者との流動性に関する取決め、保証又は他のコミット

メントで、非連結のストラクチャード・エンティティへの企業

の関与の公正価値又はリスクに影響を与える可能性のあ

るもの

(f) 非連結のストラクチャード・エンティティが報告期間中に活

動資金を調達する際に経験した困難

(g) 非連結のストラクチャード・エンティティの資金調達に関す

る資金調達の形態(例:コマーシャル・ペーパー又はミディ

アム・ターム・ノート)及びそれらの加重平均デュレーショ

ン。ストラクチャード・エンティティが短期資金を財源とした

長期の資産を有している場合には、この情報には非連結

のストラクチャード・エンティティの資産及び資金調達の満

期分析が含まれることがある。

IFRS 第 12 号は、上記の情報をどのような形式で開示するのか

を特に定めていない。したがって、報告企業は、個々の状況に照

らして表形式又は記述形式のいずれがより適切かを判断する必

要がある。IFRS 第 12 号はこれらの追加的な情報の例を挙げ

ているものの、これらに関してほとんど説明を加えていない。報

告企業が支配を有しておらず、かつおそらく重要な影響力も行

使していないストラクチャード・エンティティに関して、これらの情

報が要求されていることに鑑みると、上記(d)、(f)及び(g)で挙げ

られている開示は、報告企業が有する関与についての情報では

なく、ストラクチャード・エンティティの活動に関する現在の情報を

要求するものであるため、提供が困難なものもあると思われる。

次のセクションでは、より曖昧な項目についての説明、及び定量

的な項目についての開示例の両方を取り上げている。

生じた損失

報告企業は、非連結のストラクチャード・エンティティへの関与か

ら報告期間中に生じた損失を開示することが求められる。IFRS第 12 号は「生じた損失」について詳述していないが、生じた損

失とは、実現及び未実現の損失、ならびに純損益及びその他の

包括利益に認識される損失のすべてを網羅するものであると推

察される。主要な計算書において損失を計上した表示科目を財

務諸表の利用者に説明する情報は有用かもしれない。さらに、

報告期間中に生じた損失に加え、報告期間の末日現在で保有

する投資から生じた損失累計額を開示することも有用であろう。

次の開示例は、ストラクチャード・エンティティに対して保有する

関与の種類ごとに生じた損失を示したものである。こうした種類

の開示により、損失が生じた場合の規模がどの程度のものにな

るかについて、利用者は感触をつかむことができる。

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 21

例 6 – 生じた損失 次の表は、20XX 年 12 月 31 日に終了する会計年度において、次の各関与から生じた XYZ 銀行の損失について、純損益に認識

した損失と、その他の包括利益に認識した損失を示したものであります。

投資及び損失

単位:百万 純損益に認識された損失 その他の包括利益に認識された損失 ストラクチャード・エンティティの種類 デリバティブ 保証 投資

不動産担保証券 12 17 13 31

CDO及びCLO 4 - 10 25

資産担保コマーシャル・ペーパー - - 20 5

その他の資産担保証券 8 - - 14

不動産、信用関連、及びその他の投資 - 27 10 47

受け取った収益

合計 24 44 53 122

ストラクチャード・エンティティへの関与から報告期間中に収益を受け取る場合、報告企業は受け取った収益の種類を開示しなければ

ならない。当該収益に重要性がある場合、IFRS 第 12 号で規定されていないものの、表形式での開示が適切となる場合がある。以

下は、この点に関する開示例である。

例 7 – 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与から受け取った収益 次の表は、非連結のストラクチャード・エンティティへの関与から XYZ が受け取った収益合計を示したものであります。

20XX 年 12 月 31 日に終了する会計年度の収益合計

単位:百万 利息収益 コミッション及び 流動性及び 利得及び 合計 ストラクチャード・エンティティの種類 運用管理手数料 保証手数料 損失合計

不動産担保証券 19 18 7 3 47

CDO及びCLO 22 13 - 2 37

資産担保コマーシャル・ペーパー 14 16 10 11 51

その他の資産担保証券 25 - - 3 28

不動産、信用関連、及びその他の投資 16 5 12 7 40

損失の順位

合計 96 52 29 26 174

IFRS 第 12 号 B26 項(d)では、該当する場合、「企業が他の当事者よりも前に非連結のストラクチャード・エンティティの損失を負担す

ることを要求されているかどうか、企業にとっての当該損失の上限、及び(関連性がある場合には)非連結のストラクチャード・エンティ

ティへの企業の関与よりも低順位の関係者が負担する可能性のある損失の順位及び金額」を企業は開示すべきとされている。

不動産担保証券、その他の資産担保証券及び CDO などの証券化ストラクチャード・エンティティ、あるいは発行された証券が契約上

互いにリンクした債券、又はトランシェとして区分される債券の形態をとる証券化ストラクチャード・エンティティに対して債券を保有する

金融機関にとっては、この開示は関連性があると思われる。この開示を行うには、重要な投資ごとにその他の債券保有者の権利及び

優先順位を分析する必要がある。次の例は、IFRS 第 12 号で挙げられた内容を開示する場合の 1 つの方法を示したものである。

22 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

例 8 – 損失に対するエクスポージャー

次の表は、XYZ 銀行の損失に対する最大エクスポージャーをストラクチャード・エンティティの種類別と債券の優

先順位別に示したものです。なお、XYZ 銀行の損失に対する最大エクスポージャーとは、XYZ 銀行の債券が他

の投資家の債券より弁済順位が劣後するため、当行が他の当事者より前に損失を負担する場合の金額でありま

す。また、各ケースについて当行の債券より劣後する債券を有する投資者により最初に負担される損失の金額が

示されています。この金額は、当行の損失に対する最大エクスポージャーの真下に示されています。各ケースに

おいて、表示された数字は、報告期間の末日現在におけるそれらの債券の公正価値を反映しております。

単位:百万 債券の優先順位

劣後債 メザニン債 シニア債 スーパー

シニア債 合計

不動産担保証券

i) 当行の損失に対する最大エクスポージャー 150 592 850 346 1,938

ii) 当行より低順位の関係者が負担する可能性

のある損失 - 897 7,875 10,332

-

CDO及びCLO

i) 当行の損失に対する最大エクスポージャー 60 167 243 32 502

ii) 当行より低順位の関係者が負担する可能性

のある損失 27 456 4,787 5,311

資産担保コマーシャル・ペーパー

i) 当行の損失に対する最大エクスポージャー - - - 379 379

ii) 当行より低順位の関係者が負担する可能性

のある損失 - - - 25 -

その他の資産担保証券

i) 当行の損失に対する最大エクスポージャー 23 59 119 134 335

ii) 当行より低順位の関係者が負担する可能性

のある損失 12 442 5,652 7,311 -

不動産、信用関連、及びその他の投資

i) 当行の損失に対する最大エクスポージャー 48 112 360 411 931

ii) 当行より低順位の関係者が負担する可能性

のある損失 - 543 7,363 8,541 -

IFRS 12.B26(d)

IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例 23

流動性に関する取決め

IFRS 第 12 号 B26 項(e)では、第三者との流動性に関する取

決め、保証又は他のコミットメントで、非連結のストラクチャード・

エンティティへの企業の関与の公正価値又はリスクに影響を与

える可能性のあるものについての情報は、非連結のストラクチャ

ード・エンティティへの関与から生じるリスクの内容を開示するに

あたって関連する場合があるとされている。ここで、流動性に関

する取決めとは、第三者から提供されたものと、それとも第三者

へ提供したものと、どちらを指すのかが明確ではない。しかし、

第三者へ提供した取決めは、それ自体が非連結のストラクチャ

ード・エンティティへの関与に該当する可能性がある限り、非連

結のストラクチャード・エンティティへの関与の公正価値に通常

は影響を及ぼさないことからすれば、IFRS 第 12 号 B26 項(e)は、第三者から提供された取決めを指しているものと考えられる。

さらに、IFRS 第 12 号 B26 項(e)は、第三者と報告企業との間の

取決め、又は第三者とストラクチャード・エンティティとの間の取決

めのどちらが、ストラクチャード・エンティティに対する報告企業の

関与の公正価値又はリスクに影響を与えるものなのかについて

不明確である。具体的なガイダンスが定められていないことから、

第三者から報告企業とストラクチャード・エンティティの両方へ提

供された取決めを開示する必要がある場合も考えられる。

資金調達上の困難についての開示

IFRS 第 12 号 B26 項(f)は、ストラクチャード・エンティティが報

告期間中に活動資金を調達する際に経験した「困難」を開示す

ることを求めているが、この開示は広範なものになることも考え

られる。アーンスト・アンド・ヤングは、実務上、この開示は、負債

性証券(短期コマーシャル・ペーパーを含む)及び資本性証券の

発行時にその全部又は一部の引受けが行われなかった場合を

想定している可能性が高いと考えている。

非連結のストラクチャード・エンティティの資金調達形態に関する開示

本開示規定は、報告企業が参加しなかった資金調達に関する

形態も含む、ストラクチャード・エンティティの全体的な資金調達

を指しているようである。本開示は、表形式で行うことが最も適

切であると思われる。

24 IFRS 第 12 号 - 非連結のストラクチャード・エンティティへの関与に関する開示例

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ュー(価値観)に基づいて、品質において徹底し

た責任を果します。私どもは、クライアント、構

成員、そして社会の可能性の実現に向けて、プ

ラスの変化をもたらすよう支援します。詳しく

は、www.ey.com にて紹介しています。 「アーンスト・アンド・ヤング」とは、アーンスト・アンド・ヤ

ング・グローバル・リミテッドのメンバーファームで構成

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新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、アーンスト・アン

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通じて、日本を取り巻く世界経済、社会における

資本市場への信任を確保し、その機能を向上す

るため、可能性の実現を追求します。詳しくは、

www.shinnihon.or.jp にて紹介しています。 アーンスト・アンド・ヤングのIFRS (国際財務報

告基準)グループについて 国際財務報告基準(IFRS)への移行は、財務

報告における唯一最も重要な取り組みであり、

その影響は会計をはるかに超え、財務報告の

方法だけでなく、企業が下すすべての重要な判

断にも及びます。私たちは、クライアントにより

よいサービスを提供するため、世界的なリソー

スであるアーンスト・アンド・ヤングの構成員とナ

レッジの精錬に尽力しています。さらに、さまざ

まな業種別セクターでの経験、関連性のある主

題に精通したナレッジ、そして世界中で培った最

先端の知見から得られる利点を提供するよう努

めています。アーンスト・アンド・ヤングはこのよう

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