技術論文

特異的 IgE抗体測定試薬アラスタット3gAllergy の性能評価とイムノキャップ®法との比較

保田奈緒美 1) 下坂　浩則 1) 大久保滋夫 1) 池田　　均 2)

矢冨　　裕 2)

1) 東京大学医学部附属病院検査部（〒 113-8655　東京都文京区本郷 7-3-1） 2) 東京大学大学院医学系研究科臨床病態検査医学

要 旨

特異的 IgE 抗体測定試薬「アラスタット 3gAllergy」の基本性能と有用性を評価した。同時，日差再現性は良好であり，最小検出感度も 0.048～0.061 IUA/mL と良好であった。希釈直線性は低濃度から高濃度域まで良好な直線性が得られた。さらに，28 種のアレルゲン特異的 IgE 抗体についてイムノキャップとのデータ比較検討を行ったところ，2 法の相関性は全てにおいてスピアマン順位相関係数 0.7 以上と高い相関性が認められたが，ネコ上皮・皮屑，アスペルギルスおよび卵白でアラスタット 3g が高値傾向となり，イヌ皮屑，小麦およびピーナツでイムノキャップが高値傾向となるなど，アレルゲンによる測定値の特徴が認められた。

キーワード特異的 IgE 抗体，アラスタット 3gAllergy，化学発光酵素免疫測定法，イムライト 2000 XPi

はじめに

近年，わが国ではアレルギーの患者が増加傾向にある 1 ), 2 )。気管支喘息が国民全体では約 800 万人，花粉症を含むアレルギー性鼻炎は国民の 40%以上，アトピー性皮膚炎が国民の約 1 割など，全人口の約 2人に 1 人が何らかのアレルギー疾患に罹患していると推定されており，アレルギー疾患対策に対する国民の関心は非常に高い。アレルギー疾患の診断と治療においては血清中のアレルゲン特異的 IgE 抗体の測定が重要であり，測定結果を定量的にとらえることが有用である。しかし，検査結果と臨床症状の乖離が見られることがあり，より精度の高い検査法が求められている。アラスタット 3gAllergy（以下アラスタット 3g，シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社）は 2013 年 1 月に発売された測定範囲0.1～500 IUA/mL のワイドレンジ測定試薬であり，低

濃度域から高濃度域まで高い精度で特異的 IgE を測定することが出来る検査法とされている。そこで，アラスタット 3g の基礎的検討を実施し，基本性能の評価を行うとともに，当院の特異的 IgE 抗体検査は外注委託によるイムノキャップ®（ファディア社）測定であるため，イムノキャップ®とのデータ比較検討を行い，有用性についての評価を行ったので報告する。

I　対 象

2013 年 4 月から 11 月の間に東大病院を受診し，特異的 IgE の依頼があった患者血清のうち，検査終了後の残血清を対象とした。個人情報は連結不可能匿名化して統計的解析を行った。本研究は，シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス社との共同研究にて行い，東京大学大学院医学系研究科・医学部研究倫理審査委員会で審査承認を受けて実施した。

（平成 27 年 6 月 19 日受付・平成 27 年 8 月 3 日受理）

医学検査 Vol.64 No.6 2015 727

II　方 法

1．特異的 IgE抗体の測定アラスタット 3g の測定には全自動分析装置イムラ

イト 2000 XPi を用い，イムノキャップの測定は検査センターに依頼した。アラスタット 3g とイムノキャップの比較を表に示す（Table 1）。2．測定原理

アラスタット 3g は固相ポリエチレンビーズを用い，液相アレルゲンを用いた化学発光酵素免疫測定法（CLEIA）を原理とする 2 ステップサンドイッチ法である。患者血清とビオチン化アレルゲンをアビジン固相ビーズに加え，37℃ 30 分間インキュベーションし反応させる。B/F 分離後，酵素標識抗体試薬を加えて 37℃ 30 分間さらにインキュベーションする。B/F 分離を行い，発光基質である PPD 試薬を加え，37℃ 5 分間インキュベーションして発光させ，ルミノメーターで発光量を測定する。3．再現性

同時再現性は低濃度と高濃度の患者プール検体 2

Technology comparison between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP®

IMMULITE 3gAllergy ImmunoCAP

Manufacturer Siemens HCD PhadiaPrinciple of Proc CLEIA FEIA

Allergens Liquid Phase Solid PhaseSolid Phase Polyethylene Bead Porous Cellulose SpongeReference WHO IgE (75/502) WHO IgE (75/502)

Number of sIgE 207 193Assay Range 0.1–500 0.1–100

Units IUA/mL UA/mLSamples Volume 50 μL 40 μL

Table 1  例について 10 回連続測定を行い，日差再現性は低濃度と高濃度の患者プール検体 2 例について 10 日間連続測定し，それぞれ変動係数（CV%）を算出した。再現性の確認は，ヤケヒョウヒダニ（ D.Pteronyssinus）および卵白（Egg white）の特異的 IgE抗体で行った。4．最小検出感度

測定値が低値を示した患者検体を専用希釈液にて段階希釈して 10 回測定を行い，0 濃度の平均値+2.6SD と希釈系列における平均値–2.6 SD が重ならない点を最小検出感度とした。ヤケヒョウヒダニ，コナヒョウヒダニ（D. Farinae）および卵白の特異的 IgE抗体について行った。5．希釈直線性の比較

3 濃度の検体をアラスタット IgE 検体希釈液（2000）にて段階希釈して測定した。アラスタット3g およびイムノキャップにて同一検体の特異的 IgE抗体を測定し，その直線性を比較した。測定は n = 2で行い，平均値をプロットした。コナヒョウヒダニおよび卵白の特異的 IgE 抗体について行った。6．2法における相関性

当検査部に特異的 IgE 抗体測定依頼のあった患者血清について，イムノキャップならびにアラスタット 3g で測定した特異的 IgE 抗体は，ハウスダスト1，ハウスダスト 2，ヤケヒョウヒダニ，コナヒョウヒダニ，スギ（Cryptomeria），ヒノキ（Cypress），シラカンバ（属）（White birch），ブタクサ（Ragweed），カモガヤ（Orchard grass），ハルガヤ（Sweet vernalgrass ）， ヨ モ ギ （ Mugwort ）， ア ス ペ ル ギ ル ス

（Aspergillus），カンジダ（Candida），ネコ上皮・皮屑（Cat dander/epithelium），イヌ皮屑（Dog epithelium），卵白，卵黄（Egg yolk），オボムコイド（Ovomucoid），

Interpretation of results

ImmunoCAP AlaSTAT 3g

Conc. (UA/mL) Class Judgment Conc. (IUA/mL) Class Judgment

≥ 100 6

positive

≥ 100 6

positive50.00–99.99 5 52.50–99.99 517.50–49.99 4 17.50–52.49 43.50–17.49 3 3.50–17.49 30.70–3.49 2 0.70–3.49 20.35–0.69 1 false positive 0.35–0.69 10.10–0.34

0 negative0.10–0.34 +0 weak positive

< 0.1 < 0.1 0 negetive

Table 2 

728 医学検査 Vol.64 No.6 2015

小麦（Wheat），エビ（Shrimp），大豆（Soybean），ソバ（Buckwheat），ピーナッツ（Peanut），キウイ

（Kiwi），モモ（Peach），リンゴ（Apple），ゴキブリ（Cockroach），ガ（Moth）の 28 種類，295 検体（のべ 793 例）である。2 法の測定結果をそれぞれの判定基準（Table 2）に従ってクラス分類し，順位相関図を作成した。また，対数相関図を作成して測定値の比較を行った。

III　結 果

1．測定試薬の性能評価1）再現性

同時再現性は，ヤケヒョウヒダニの CV%は 1.9～2.4%，卵白の CV は 2.1～3.2%であり，日差再現性はヤケヒョウヒダニ 2.6～4.6%，卵白 3.2～5.7%であり，いずれも良好な再現性が得られた。

2）最小検出感度ヤケヒョウヒダニは 0.061 IUA/mL，コナヒョウヒ

ダニは 0.049 IUA/mL，卵白は 0.048 IUA/mL であり，いずれもメーカーの定める測定レンジ 0.1 IUA/mL を充分に満たす結果となった。3）測定試薬による希釈直線性の比較

コナヒョウヒダニについては，アラスタット 3g は0.1～77.3 IUA/mL まで，イムノキャップは 0.1～77.5UA/mL まで直線性が認められ，両方ともに測定レンジ内において良好な直線性が得られた。卵白については，2 法の測定値が乖離し，アラスタット 3g は0.1～99.2 IUA/mL まで，イムノキャップは 0.1～26.9UA/mL まで直線性が認められた。アラスタット 3gの直線性は低濃度から高濃度まで良好であり，イムノキャップの直線性は 20 UA/mL まで良好であった

（Figure 1）。

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

IUA/ｍL

Dilution ratio

D. Farinae - Lowconcentration

AlaSTAT 3g ImmunoCAP

0.01.02.03.04.05.06.07.08.09.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Dilution ratio

D. Farinae - Midconcentration

0102030405060708090

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Dilution ratio

D. Farinae - Highconcentration

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

IUA/ｍL

IUA/ｍL

IUA/ｍL

IUA/ｍL

IUA/ｍL

Dilution ratio

Egg white - Lowconcentration

0.01.02.03.04.05.06.07.08.09.0

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Dilution ratio

Egg white - Midconcentration

0

20

40

60

80

100

120

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1Dilution ratio

Egg white - Highconcentration

Dilution linearity comparison between IMMULITE 2000 3gAllergyTM and ImmunoCAP®Figure 1 

医学検査 Vol.64 No.6 2015 729

2．相関性アレルゲン 28 種の一致率と順位相関係数を Table

3 に示した。ダニ／室内塵アレルゲン（ハウスダスト 1，ハウ

スダスト 2，ヤケヒョウヒダニ，コナヒョウヒダニ）は，一致率，順位相関はおおむね良好であった。コナヒョウヒダニで一致率が最も低く，アラスタット3g 陽性かつイムノキャップ陰性が 1 例（2.2%）あった。ダニ／室内塵アレルゲンの順位相関図，測定値相関図を Figure 2 に示した。順位相関図については，n 数が一番多いアレルゲンを掲載した。

動物アレルゲン（ネコ上皮・皮屑，イヌ皮屑）では，ネコ上皮・皮屑で全体的にアラスタット 3g が高値傾向，イヌ皮屑でイムノキャップが高値傾向となっ

た（Figure 3）。樹木花粉アレルゲン（スギ，ヒノキ，シラカンバ）

およびイネ科花粉アレルゲン（ハルガヤ，カモガヤ）はいずれも一致率，順位相関ともに良好であった

（Figure 4, 5）。雑草花粉アレルゲン（ブタクサ，ヨモギ）では，ブタクサで一致率が低く，イムノキャップ陽性かつアラスタット 3g 陰性が 5 例（12.8%）あった。

真菌アレルゲン（アスペルギルス，カンジダ）では，アスペルギルスでアラスタット 3g 陽性かつイムノキャップ陰性が 1 例（2.6%），イムノキャップ陽性かつアラスタット 3g 陰性が 2 例（5.1%）あり，カンジダはイムノキャップ陽性かつアラスタット 3g陰性が 1 例（3.1%）であった。

Concordance rate and rank correlation coefficient for 26 specific allergens

Allergen classification AllergenAllergenNumber

Number ofsamples

Concordancerate within

class 1

Positiveconcordance

rate

Negativeconcordance

rate

Decisionconcordance

rate

Spearmanrank

correlationcoefficient

Mites/Indoordust allergens

House dust 1 H1 78 94.9% 90.5% 100.0% 88.5% 0.92House dust 2 H2 51 98.0% 92.1% 100.0% 92.0% 0.95

D. Pteronyssinus D1 57 98.2% 93.0% 100.0% 87.7% 0.92D. Farinae D2 46 93.5% 90.9% 40.0% 76.1% 0.85

Tree pollen allergensCryptomeria T17 84 90.5% 97.2% 100.0% 95.2% 0.89

Cypress T80 52 94.3% 97.4% 100.0% 88.7% 0.80White birch T3 14 85.7% 83.3% 100.0% 85.7% 0.81

Animal allergensCat dander/epithelium E1 37 94.6% 94.4% 100.0% 67.6% 0.92

Dog epithelium E5 25 92.0% 63.6% 77.8% 60.0% 0.72

Weed pollen allergenRagweed W1 39 89.7% 50.0% 100.0% 59.0% 0.70Mugwort W6 16 100.0% 66.7% 100.0% 81.3% 0.83

Gramineae pollenallergen

Sweet vernal grass G1 35 100.0% 100.0% 100.0% 88.6% 1.00Orchard grass G3 23 100.0% 100.0% 100.0% 91.3% 0.87

Fungi allergensAspergillus M3 39 87.2% 81.3% 100.0% 79.5% 0.72

Candida M5 32 81.3% 77.3% 100.0% 71.9% 0.74

Food allergens

Egg white F1 28 82.1% 54.5% 80.0% 64.3% 0.70Egg yolk F75 22 90.9% 80.0% 86.7% 81.8% 0.73

Ovomucoid F233 4 75.0% 100.0% 50.0% 75.0% —Wheat F4 16 93.8% 66.7% 100.0% 62.5% 0.71Shrimp F24 19 94.7% 66.7% 100.0% 52.6% 0.81Peanut F13 12 83.3% 33.3% 100.0% 58.3% 0.73

Soybean F14 10 100.0% 66.7% 100.0% 90.0% 0.70Buckwheat F11 9 100.0% 50.0% 100.0% 55.6% 0.76

Kiwi F84 9 100.0% 66.7% 100.0% 66.7% 0.89Peach F95 6 83.3% 100.0% 66.7% 83.3% —Apple F49 4 100.0% 100.0% — 100.0% —

Insect allergensCockroach I6 14 100.0% 33.3% 100.0% 64.3% —

Moth I8 12 100.0% 100.0% 100.0% 83.3% 0.99

Less than 70% are highlighted in grey.

Table 3 

730 医学検査 Vol.64 No.6 2015

食物アレルゲン（卵白，卵黄，オボムコイド，小麦，エビ，ピーナッツ，大豆，ソバ，キウイ）は，他のアレルゲンと比較して一致率が低い傾向にあった。卵白では，アラスタット 3g 陽性かつイムノキャップ陰性が 2 例（7.1%），イムノキャップ陽性かつアラスタット 3g 陰性が 2 例（7.1%）あり，測定値が高くなるほどアラスタット 3g が高値傾向となった。卵黄，オボムコイドにおいても，アラスタット 3g が高値傾向であった（Figure 6）。小麦はイムノキャップ陽性かつアラスタット 3g 陰性が 1 例（6.3%），ピーナッツではイムノキャップ陽性かつアラスタット 3g 陰性が 2 例（16.7%）であり，小麦，ピーナッツはイムノキャップが高値傾向であった（Figure 7）。

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP（UA/mL）

ImmunoCAP

D. Pteronyssinus（n = 57）

D. Pteronyssinusn = 57

D. Farinae（n = 46）

Ⅵ

7

Ⅴ

3

3

Ⅳ

1

1

9

1

0

4

1

1

Ⅰ

2

1

Class

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

1

Ⅱ

4

3

5

Ⅲ

2

4

4

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on D. Pteronyssinusand D. Farinae

Figure 2 

キウイはイムノキャップが高値傾向，モモはアラスタット 3g 陽性かつイムノキャップ陰性が 1 例

（16.7%）あり，アラスタット 3g が高値傾向であった（Figure 8）。

昆虫アレルゲン（ゴキブリ，ガ）では，ゴキブリでイムノキャップがやや高値傾向であった。

陰性／陽性の判定が不一致だった検体は 23 例であり，ダニ／室内塵アレルゲン 1 例（0.4%），樹木花粉アレルゲン 3 例（2.0%），動物アレルゲン 3 例

（4.8%），雑草花粉アレルゲン 4 例（7.3%），真菌アレルゲン 4 例（5.6%），食物アレルゲン 8 例（6.4%）であった。また，アラスタット 3g 陽性かつイムノキャップ陰性は 7 例，イムノキャップ陽性かつアラ

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

ImmunoCAP（UA/mL）

Cat dander/epithelium（n= 37） Dog epithelium（n= 25）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP

Cat dander/epitheliumn = 37

Ⅵ

1

Ⅴ

1

1

Ⅳ

14

2

0

2

1

Ⅰ

31

Class

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

Ⅱ

5

Ⅲ

5

1

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on Cat dander/epithelium and Dog epithelium

Figure 3 

医学検査 Vol.64 No.6 2015 731

スタット 3g 陰性は 16 例であり，乖離例ではイムノキャップが陽性となった例が多かった。

IV　考 察

アレルギー疾患の診断，治療には特異的 IgE の測定が重要である。特異的 IgE 抗体の検出は感作の確認であり，特異的 IgE 検査陽性だからといってアレルギーであると判断することはできないが，抗体価が高い例ほど症状を発現する確率は高くなり，抗体価により症状が誘発される確率を推測することが可能である。そのため，特異的 IgE の測定では結果を定量的にとらえることが有用であるとされるが，検

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

ImmunoCAP（UA/mL）

Cryptomeria（n = 84） Cypress（n = 52） White birch（n =14）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP

Cryptomerian = 84

Ⅵ

4

Ⅴ

3

3

10

Ⅳ

10

1

0

1

Ⅰ

2

1

1

2

1

1

1

4

2

1

1

Class

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

Ⅱ

4

9

1

2

Ⅲ

3

16

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on Cryptomeria,Cypress and White birch

Figure 4 

査キット間で測定結果が異なる場合があり 3 )，臨床では日常検査に使用している検査キットの特性を把握する必要がある。現在もっとも広く普及しているイムノキャップは，0.34 UA/mL 未満を測定できないことが問題であったが，2013 年より販売された新試薬は calibrator が今まで 0.35–100 だったものが 0.00–100 の範囲となり，これに伴い測定範囲が 0.1–100 に広がった。そこで，今回，特異的 IgE 測定の高感度ワイドレンジ試薬，アラスタット 3g（測定範囲：0.1–500 IUA/mL）の基本性能の評価を行うとともに，イムノキャップとのデータ比較検討を行い，有用性についての評価を行った。

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

ImmunoCAP（UA/mL）

Sweet vernal grass（n = 35）

Sweet vernal grass

Orchard grass（n = 23）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP

n = 35

ⅥⅤⅣ

27

0 Ⅰ

1

1

Class

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

Ⅱ

3

Ⅲ

2

1

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on Sweet vernalgrass and Orchard grass

Figure 5 

732 医学検査 Vol.64 No.6 2015

1．試薬の測定性能測定試薬の性能評価において，アラスタット 3g の

再現性は良好であり，最少検出感度は 0.048～0.061IUA/mL から認められた。希釈直線性については，低濃度域ではアラスタット 3g とイムノキャップともに良好な直線性が得られた。中濃度および高濃度域においては，アラスタット 3g は，500 IUA/mL まで測定可能であるが，イムノキャップとの比較のため，高濃度域直線性の検体を 100 IUA/mL に設定した。しかし，卵白では中濃度および高濃度域で 3～4 倍の違いがあり，今回の検討では中濃度および高濃度域における直線性の比較はやや困難であった。

アラスタット 3g は，液相アレルゲンを用いており

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

ImmunoCAP（UA/mL）

Egg white（n = 28） Egg yolk（n = 22） Ovomucoid（n = 4）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP

Egg whiten = 28

ⅥⅤⅣ

12

3

2

0 Ⅰ

2

Class

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

Ⅱ

2

1

2

Ⅲ

2

1

1

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on Egg white, Eggyolk, and Ovomucoid

Figure 6 

アレルゲンと特異的 IgE 抗体の反応を至適濃度に維持することが可能である。これはイムノキャップより測定値が高値になる原因のひとつとして考えられ，特に卵白，オボムコイドではアラスタット 3g の測定値が高値となることが多い 4 ), 5 )。

さらに，イムノキャップの標準曲線が S 字曲線（低濃度側で緩やかに起き上がり，中濃度で傾きが大きく，高濃度でまた緩やかになる）であるのに対して，アラスタット 3g の標準曲線は直線性が広いという特徴があり，高濃度域のみならず低濃度域についても直線性を維持している 6 )（Figure 9）。これにより，アラスタット 3g は測定可能範囲が広くなり，定量性が高いと解釈されるのであるが，2 法の測定値

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

ImmunoCAP（UA/mL）

Soybean（n = 10） Wheat（n = 16） Peanut（n = 12）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP

Wheatn = 16

ⅥⅤⅣ

13

0 ⅠClass

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

Ⅱ

1

11

Ⅲ

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on Wheat, Soybean,and Peanuts

Figure 7 

医学検査 Vol.64 No.6 2015 733

0.01

0.1

1

10

100

0.01 0.1 1 10 100

AlaSTAT 3g（IUA/mL）

ImmunoCAP（UA/mL）

Kiwi（n = 9） Peach（n = 5） Apple（n = 4）

AlaSTAT 3g

ImmunoCAP

Kiwin = 9

ⅥⅤⅣ

5

0 ⅠClass

0

+0

Ⅴ

Ⅵ

Ⅳ

Ⅲ

Ⅰ

Ⅱ

Ⅱ

11

1

1

Ⅲ

Correlations between IMMULITE 20003gAllergyTM and ImmunoCAP® on Kiwi, Peach, andApple

Figure 8 

0

10,000,000

20,000,000

30,000,000

40,000,000

50,000,000

0 50 100 150

CPS

Conc（IUA/mL）

Calibration curve（count per second）

Calibration curve for 3gAllergy traceable to WHOstandard IgE (75/502)

Figure 9 

を比較する場合は，標準曲線両端の測定域において若干の乖離が生じる可能性がある。例えば，全体的にアラスタット 3g 測定値が高値傾向を示すにも関わらず，微弱ならびに弱陽性域ではイムノキャップ測定値がアラスタット 3g 測定値より高くなるという逆転現象が報告されており 5 )，これは低濃度側における検量線の立ち上がりの違いにより説明できる。

また，特異的 IgE 抗体の標準曲線は，各アレルゲンの特異的 IgE 抗体ではなく ヒト IgE 抗体 WHO 標準品 75/502 を用いて作成されている。各アレルゲンの測定系は，コンポーネントを含めてアレルゲンの種類や検体によって反応性が異なることが考えられ，特に患者血中の特異的 IgE 抗体の反応性は多様であり，直線性が得られないことも多いため，検体希釈を必要としない測定系が望まれる。アラスタット 3gは希釈せずに高濃度域まで測ることができ，有用性が高いと考えられる。2．イムノキャップ測定値との比較

アラスタット 3g とイムノキャップの相関性は 28種のアレルゲン全てにおいてスピアマン順位相関係数 0.7 以上と高い相関性が認められた。しかし，ネコ上皮・皮屑，アスペルギルス，卵黄および卵白でアラスタット 3g が高値傾向となり，イヌ皮屑，ブタクサ，カンジダ，小麦およびピーナッツでイムノキャップが高値傾向となるなど，これまでの報告 6 )～ 9 )とほぼ同様なアレルゲンによる測定値の特徴が認められた。カンジダ，ブタクサおよびヨモギについてはアラスタット 3g とイムノキャップの一致率が低く，いずれもアラスタット 3g が低値傾向にあるという報告がいくつかある 3),6),7),9)。小麦，ピーナッツについては，交差反応（CCD）によるイムノキャップの偽陽性を指摘する報告があり 10 ), 11 )，イムノキャップ高値傾向の原因である可能性も考えられる。ネコ上皮・皮屑，アスペルギルス，卵黄および卵白のように全体的にアラスタット 3g が高値となるのは，前述したようにアラスタット 3g が至適濃度で反応可能であるためと考えられる。

判定不一致検体 23 例（3.0%）については，今回の検討では，患者のアレルギー症状の有無を調査することが困難であったため，どちらがより臨床診断と一致しているか判断することはできない。測定値乖離の原因はアレルゲンや検体によっても異なるが，

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一般的には測定原理，キットに用いているアレルゲン試薬の量や質の違い，判定基準，上述した反応曲線の違いなどによるとされる。

アラスタット 3g の臨床的有用性についてはすでにいくつか報告されており，感度・特異性ともにアラスタット 3g が優れているという報告 12 )，アラスタット 3g がアレルギー発症の予測，治療経過のモニタリング等にも有用であるという報告 13 )がある。秋山ら 7 )は，臨床診断で陽性となった症例が陰性と判定される割合が，イムノキャップに比してアラスタットでは少なく，診断との陽性一致率はヤケヒョウヒダニ，ハウスダスト 1，ネコ皮屑，ハンノキ，スギ，ヒノキについてはアラスタットが高く，小麦はイムノキャップの方が高いと報告している。

いずれにおいても，特異的 IgE 抗体の検査は感作を確認するものであり，食物アレルギーにおいては経口食物負荷試験により確定診断を行う。この際に，特異的 IgE 抗体値とアレルギー症状誘発の可能性との関係を示したプロバビリティーカーブが必要となり，アラスタット 3g およびイムノキャップでは，主な食物アレルギーにおけるプロバビリティーカーブが作成されていることから，食物アレルギーの診断に有用であるとされている 14 ), 15 )。

なお，今回の検討の特徴として，卵白において，イムノキャップ陽性かつアラスタット 3g 陰性例が 2例みられた。多くの報告において，卵白ならびにオボムコイドはほぼ全例でアラスタット 3g が高値であり，アラスタット 3g 陰性例がイムノキャップ陽性という例はみられなかった。当院では，アレルギー患者の多くが自己免疫疾患などの合併症を抱えているケースが多く，IgG4 関連疾患での受診も多いことから，何らかの影響を受けている可能性が考えられた。

V　結 語

アラスタット 3g による特異的 IgE 抗体の測定は，

定量範囲が広く，基礎性能も良好であった。各アレルゲンにおける測定値の特徴，イムノキャップ法との違いを把握して用いることで，アレルギーの診断治療に有用な検査になると考えられた。

■文献

 1) 厚生労働省：アレルギー疾患対策の方向性等，2011 年 8 月． 2) 厚生労働省：アレルギー疾患対策の現状，評価，課題，2010

年 8 月． 3) 岡本 愛：「特異的 IgE 抗体検査の実際」，臨床検査，2014; 58:

238–243. 4) 木村 光明：「食物アレルギーの in vitro 診断」，日本小児アレ

ルギー学会誌，2014; 28: 193–200. 5) 伊藤 浩明：「食物アレルギー―研究と臨床の最新情報 IgE 抗

体検査，皮膚テスト，好塩基球ヒスタミン遊離試験」，医学のあゆみ，2015; 252: 932–937.

 6) 小田嶋 博：「アレルゲン特異 IgE 抗体の新しい測定方法　2．アラスタット 3gAllergy」，アレルギー・免疫，2013; 20: 46–54.

 7) 秋山 一男，他：「アラスタット 3gAllergy の臨床的有用性に関する検討―第 1 報―多施設共同研究による評価（内科・耳鼻咽喉科における検討）」，アレルギー・免疫，2012; 19:1970–1984.

 8) 長尾 みずほ，他：「アラスタット 3gAllergy とイムノキャップによるアレルゲン特異的 IgE 抗体測定値の比較：反復喘鳴を呈した乳幼児における検討」，日本小児アレルギー学会誌，2013; 27: 170–178.

 9) 小田嶋 博，他：「アラスタット 3gAllergy の臨床的有用性に関する検討―第 2 報―多施設共同研究による評価（小児科・皮膚科による検討）」，アレルギー・免疫，2012; 19: 1985–2000.

10) Guilloux L et al.: “Peanut allergy diagnosis in the context of grasspollen sensitization for 125 patients: roles of peanut and cross-reactive carbohydrate determinants specific IgE,” Int Arch AllergyImmunol, 2009; 149: 91–97.

11) Martens M et al.: “Sensitization to cereals and peanut evidencedby skin prick test and specific IgE in food-tolerant, grass pollenallergic patients,” Clin Transl Allergy, 2011; 1: 15.

12) Watanabe M et al.: “Measurement of Hymenoptera venomspecific IgE by the IMMULITE 3gAllergy in subjects withnegative or positive results by ImmunoCAP,” Asia Pac Allergy,2012; 2: 195–202.

13) Hiraguchi Y et al.： “Diagnostic agreement of two differentallergen-specific IgE assay systems in a wheezy infant cohort,”Joint Congress of APAPARI 2011 & 48th JSPACI,” 2011；AP07-4.

14) 秋山 一男：「アレルゲン特異的 IgE 抗体検査の臨床的信頼性」，臨床検査，2014; 58: 246–251.

15) 近藤 康人：「血中抗原特異的 IgE 抗体検査」，日本小児アレルギー学会誌，2014; 28: 867–881.

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Technical Article

Comparison of serum-specific IgE measurement results betweenIMMULITE 2000 3gAllergyTM and ImmunoCAP®

Naomi YASUDA 1) Hironori SHIMOSAKA 1) Shigeo OKUBO 1) Hitoshi IKEDA 2) Yutaka YATOMI 2)

1) Department of Clinical Laboratory, The University of Tokyo Hospital (7-3-1, Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113-8655,Japan)

2) Department of Clinical Laboratory Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo

SummaryAllergen-specific IgE quantitation using IMMULITE 2000 3gAllergy was evaluated. The analytical performance of this

analyzer showed good precision results for within-run and between-run reproducibilities, good recovery from high andlow sample dilutions, and low limit of detection from 0.048–0.061 IUA/mL. Furthermore, serum samples were analyzedusing ImmunoCAP® and IMMULITE 2000 3gAllergy in terms of specificities for 28 allergens. The levels of specific IgEantibodies to all the allergens determined by both assays highly correlated, showing a Spearman rank-correlationcoefficient of over 0.7. Overall, in comparison with ImmunoCAP® results, specific IgE antibody levels measured usingIMMULITE 2000 3gAllergy were higher for egg white, aspergillus and cat dander, and lower for wheat, peanut and dogdander.

Key words: specific IgE, IMMULITE 2000 3gAllergyTM, CLEIA, IMMULITE 2000 XPi(Received: June 19, 2015; Accepted: August 3, 2015)

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