:サ:ノ:ク:ス:ヒ - khk:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手...

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draft 40 40 解説 [A] ねじ構造の強度設計指針の経緯とねじ部の静荷重に対する強度解析について 1.指針作成の背景と経緯 高温高圧下で運転される圧力容器などの高圧設備において,耐圧部にねじ締付け構造を用いる必要のあ る場合がいろいろある。1 は等方加圧加工法などに用いられている高圧円筒容器の例であって,この設 計では頑丈な鏡ふたを,台形ねじをもつナットにより胴体に締付け固定する構造となっている。また,2 は高圧管のフランジ継手の例であって,管端にねじ込みフランジをもつ 2 つのパイプをレンズリング形 金属ガスケットを介してボルト結合する構造となっている。 1-ねじ込みナット固定式の鏡ふた付き圧力容器 これらの高圧設備において,胴体や鏡,フランジ等の設計については, JIS 規格や特定設備検査規則の 例示基準別添1などにその基準が示されている。また,ねじ結合についても,古くから非常に多くの理論 的,実験的研究があり,実際の使用経験も豊富と考えられるけれども,高圧設備に関する規格や技術基準 にそれらを活かした合理的な設計手法の記述はあまり見当たらない。一例として,日本機械学会発行の機 械工学便覧 1) には,ねじの強度設計として,ねじのかみ合い有効長さにおけるねじ山荷重の平均値を基に した強度評価の方法が示されている。ところが,例えば,1 の圧力容器の場合,等方加圧の製造工程に 100300 MPa に達する高圧力を使用するが,加圧工程終了後はこのねじ締付け構造の鏡ふたを開放し, 製品取出し後内部の清掃,点検を行って,素材を挿入し,鏡ふたを締付けて再び加圧工程に移る。このよ うな操作を数千回繰り返したところ,1 A 部,胴体の第一ねじ山の谷底から疲労き裂が発生し,それ が成長して胴体壁を貫通し,破壊事故を生じたという例,その他これに類似する事故例が報告されている。 2),3)

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Page 1: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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解説 [A] ねじ構造の強度設計指針の経緯とねじ部の静荷重に対する強度解析について 1.指針作成の背景と経緯 高温高圧下で運転される圧力容器などの高圧設備において,耐圧部にねじ締付け構造を用いる必要のあ

る場合がいろいろある。図 1 は等方加圧加工法などに用いられている高圧円筒容器の例であって,この設

計では頑丈な鏡ふたを,台形ねじをもつナットにより胴体に締付け固定する構造となっている。また,図

2 は高圧管のフランジ継手の例であって,管端にねじ込みフランジをもつ 2 つのパイプをレンズリング形

金属ガスケットを介してボルト結合する構造となっている。

図 1-ねじ込みナット固定式の鏡ふた付き圧力容器

これらの高圧設備において,胴体や鏡,フランジ等の設計については,JIS 規格や特定設備検査規則の

例示基準別添1などにその基準が示されている。また,ねじ結合についても,古くから非常に多くの理論

的,実験的研究があり,実際の使用経験も豊富と考えられるけれども,高圧設備に関する規格や技術基準

にそれらを活かした合理的な設計手法の記述はあまり見当たらない。一例として,日本機械学会発行の機

械工学便覧 1)には,ねじの強度設計として,ねじのかみ合い有効長さにおけるねじ山荷重の平均値を基に

した強度評価の方法が示されている。ところが,例えば,図 1 の圧力容器の場合,等方加圧の製造工程に

は 100~300 MPa に達する高圧力を使用するが,加圧工程終了後はこのねじ締付け構造の鏡ふたを開放し,

製品取出し後内部の清掃,点検を行って,素材を挿入し,鏡ふたを締付けて再び加圧工程に移る。このよ

うな操作を数千回繰り返したところ,図 1 の A 部,胴体の第一ねじ山の谷底から疲労き裂が発生し,それ

が成長して胴体壁を貫通し,破壊事故を生じたという例,その他これに類似する事故例が報告されている。

2),3)

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図 2-ねじ込みフランジ管継手

図 3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

は各ねじ山の負担する荷重とかみ合いの全長におけるねじ山荷重の平均値との比を示す。これを見ると,

ねじ継手にかかる荷重の大部分はかみ合い長さの端部の数個のねじ山で負担され,特に端の第一山にかか

る荷重が大きく,他のねじ山はほとんど遊んでいるような状態になっていることがわかる。また,図 2 の

ねじ込みフランジ継手の高圧管でも,フランジ取付けねじのかみ合い部の端から始まったねじ山のせん断

により,ねじ継手が破壊し,パイプが外れて大事故を起こした例がある。これらのことがらは,かみ合い

の全長におけるねじ山荷重の分布が甚だしく不均等であって,荷重がかみ合いの端の部分に集中すること,

特に荷重の繰返しを考慮する必要のある場合には,かみ合い端部のねじの谷底における応力集中を考慮し

た疲労設計を行う必要があることを示している。

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図 3-ねじ山荷重の分布状態

そこで,高圧ガス保安協会に設置されている特定設備検査委員会の構造分科会では,圧力容器などの高

圧設備における耐圧部のねじ構造について,一般技術者が使い易い形で,しかも合理的で信頼性のある設

計指針の作成の必要性を認め,詳細な理論的検討と設計指針案の作成作業を行うため,昭和 57 年にねじ

小委員会*を設けて,多数の文献調査と解析,計算ならびに指針案の作成と検討を行ってきた。この小委員

会で先ず検討した項目は (1)ねじ山荷重の分布とその集中係数の算定法 (2)各種形状のねじ(三角ねじ,台形ねじ,のこ歯ねじ等)によるねじ継手の相対変形の見積り計算法 (3)ねじの谷底に生じる応力集中の見積り計算法 (4)静荷重におけるねじ継手の強度評価法と許容応力 (5)繰返し荷重におけるねじ継手のピーク応力振幅の算定法と疲労強度の評価法 などである。 そして,その成果の中,静荷重に対する強度解析の部分をまとめて,「ねじ構造の強度設計指針」の 1~3 項とし,第 6 回高圧ガス設備担当者会議(昭和 58 年 10 月)に提出して討議を経,4) それを高圧ガス

誌,21 巻 1 号(昭和 59 年 1 月)上に発表した。5) なお,それに関する解説や解析資料等も,高圧ガス誌,

20 巻 12 号(昭和 58 年 12 月)ないし 21 巻 4 号(昭和 59 年 4 月)に発表されている。6),7),8),9) 本解説〔A〕では,ねじ構造小委員会が指針 1~3 項の作成に当たって行った解析や調査の結果と,指針

に規定する各項目の根拠などについて,その要点を紹介する。 * 委員長 鵜戸口英善(高圧ガス保安協会), 委員 北郷 薫(工学院大学), 岩崎雅光(住友化学工業㈱),佐藤栄一(福岡大学) 長島利行(千代田化工建設㈱),中村義隆(石川島播磨重工業㈱), 幸田真一(住友ケミカルエンジニアリング㈱)

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2.ねじ山荷重の分布と集中係数について 先づ最初に,連続ねじのねじ山荷重の分布に関する理論的解析について,概要を説明する。

図 4-ねじ継手要素における荷重と変形 図 4 に示すように,断面積 A1及び A2の部材 A 及び B が,長さ L にわたってねじ C によりかみ合って

いて,図の右端断面に A は引張力 W,B は圧縮力 W を受け,左端面を自由として釣合っている場合を考

える。左端面より任意の距離 x の距離の断面において,A 及び B 部材に軸力 Q 及び R(引張りを正とする)

が作用しており,x + dx の断面に作用するそれらを Q + dQ 及び R + dR とする。この場合,実際には Q は

引張り,R は圧縮(<0)である。A,B 両部材の dx 間における伸びを du1,(>0),du2(<0)とすれば,

両者の間に伸びの差 du = du1-du2を生じ,それが累積して,A,B 両部材間には任意の x 断面において,

伸び変位の差 u = u1-u2を生ずる。 A,B 両部材はねじ C によってかみ合っているから,この A,B 部材間の伸び変位の差 u = u1-u2は C の

変形,すなわちねじ山のたわみ変形などによって補わなければならない。弾性変形の範囲においては,こ

のねじ山のたわみ等はそれに作用するねじ山荷重に比例すると考えてよいから,u = u1-u2の大きいとこ

ろほど,ねじ山荷重は大きくなるはずであって,図 4 の場合にはねじのかみ合い長さの右端 x = L におい

てねじ山荷重が最大になるであろう,というのがねじ山荷重の理論的解析についての基本的な考え方であ

る。 いま,x 断面において作用するねじ山荷重を単位軸長さ当り F(N / mm),x + dx の断面のそれを F + dF

とすれば,微小長さ dx 部における A,B 両部材の力の釣合い条件より次の式が成立つ。

Fdx + Q = Q + dQ, 従って dxdQF = (1)

及び R = (R + dR) + Fdx, 従って dxdRF −= (2)

次に,ねじ山のたわみ等により適合される A,B 両部材間の軸方向相対変位を x 断面において u,x + dx

の断面において u + du とし,u は x 断面におけるねじ山荷重 F に比例するものとすれば F = Ku (3)

及び F + dF = K(u + du)

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従って

dxdF

Kdxdu 1

= (4)

の関係を得る。これらの式の K はねじ山のたわみ等から成立つねじ継手の軸方向相対変形に対するばね定

数(N/mm2)であって,これと同じ考え方は薄板構造のせん断遅れ(Shear Lag)理論や,側面すみ肉

溶接継手の応力解析理論にも用いられ,K は一般に滑動係数と呼ばれている一種の弾性係数である。 A 及び B 両部材の dx 間に生ずる伸びは

dxEA

Qdu1

1 = 及び dxEA

Rdu2

2 =

である。ただし,E は材料の縦弾性係数で,以下 E は A,B 両部材で同じである場合を考えるものとする。

この関係から

dxAR

AQ

Edududu )(1

2121 −=−=

従って )(1

21 AR

AQ

Edxdu

−= (5)

の関係を得る。よって,式(4),(5)の右辺を等置すれば

dxdF

KAR

AQ

E1)(1

21

=− (6)

を得,これより

)11(21

2

2

dxdR

AdxdQ

AEK

dxFd

−=

を得る。これに式(1),(2)の関係を代入すれば

FAAE

Kdx

Fd )11(21

2

2

+=

又は

022

2

=− Fdx

Fd α , )11(21

2

AAEK

+=α (7)

を得る。これがねじ山荷重 F の分布を与える基礎方程式であって,その一般解は xBxAF αα sinhcosh += (8) で与えられる。この式の A,B は境界条件により定まる積分定数である。

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図 5-ボルト,フランジ及びガスケットの荷重変形図

そこで,種々の境界条件の場合を扱い得る例として,図 2 に示したねじ込みフランジ管継手の場合を考

える。この継手において,初期締付けボルト荷重を W1,運転(内圧)荷重を W2とし,ボルトの伸び剛性

を C1,ガスケット及びフランジ,パイプ構造の圧縮剛性を C2とすれば,図 5 に示すように,運転荷重に

よるボルト荷重の増分⊿W1及びガスケット荷重(圧縮)の減少分⊿W2は

221

11 W

CCCW+

=∆ , 221

22 W

CCCW+

=∆ (9)

で与えられ, 221 WWW =∆+∆ (10) の関係がある。そしてパイプ及びフランジが運転荷重作用時において,ねじかみ合い部両端の位置の横断

面で受ける軸荷重は図 6 に示すような状態になる。

図 6-ねじ込みフランジとパイプの運転時負荷状態

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ねじ継手の有効かみ合い長さを L とし,その左端より座標 x をとれば,この境界条件は x=0:Q=-(W1-⊿W2), R=0 x=L:Q=W2 , R=-(W1+⊿W1) と書ける。この境界条件を式(6),(8)に用いて積分定数 A,B の値を定め,それによって定まる任意の x

断面でのねじ山荷重 F とねじのかみ合いの全長 L におけるその総平均値 Fm との比を H とおけば,H は

ねじ山荷重の分布係数を表わし,それは

{ }θθθθ

θ cosh)1()cosh(sinh 1

1

1 kkFFH

m

−+−== (12)

で与えられる。ここに,

L

WWFm11 ∆+

= (13)

)1(11

2

21

2

WWW

AAAk

∆+−

+= (14)

αx = θ, αL = θ1 (15) とおいている。αは式(7)に示したねじ継手の特性係数である。 同種の解析を行っている Sopwith の論文 10)等では,上記の解析に用いた単位軸長さ当たりのねじ山荷重

F(N/mm)の代りに,ねじ山つる巻線の単位長さ当りのねじ山荷重(Intensity of Loading per Unit Length of Helix)w(N/mm)を用い,かつねじ山の変形等に基づくねじ継手の軸方向相対変形量 u と w との関係

Ewu λ= (16)

とおいている。λはねじ継手のコンプライアンス(Compliance)と呼ぶべき相対変形係数で無次元である。

ねじの有効径を D,ピッチを a とすれば

aDwF π

= (17)

の関係があるから,式(3)と式(16)と比較すれば,上記の解析に用いたねじ継手の滑動係数 K と Sopwithの解析に用いられているねじ継手の相対変形係数λの間には

λ

π 1⋅⋅= E

aDK , 又は

KE

aD 1

⋅⋅=πλ (18)

の関係がある。そうすると,上記の式(7)に出て来たねじ継手の特性係数αは式(18)の関係により

)11()11(2121 AAa

DAAE

K+=+=

λπα

又は

)11(21

2

1 AAaDLL +==λ

παθ (19)

と書ける。これが Sopwith の用いたθ1の形である。

(11)

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a) 初期締付け時 ねじ継手の初期締付け時においては,W2=0,⊿W1=⊿W2=0 であるから式(14)の k は

21

2

AAAk+

= (20)

となり,式(12)の H で示されるねじ山荷重の分布は図 7 の実線のようになる。

図 7-ねじ山荷重の分布状態 )(21

2

AAAk+

=

H はかみ合い長さの両端で大きくなり,その値は

{ })1(coshsinh 1

1

10

)0(0 kkHH x −+==== θ

θθ

θ (21)-a

{ }11

11

)(cosh)1(

sinh1

θθ

θθθ

kkHH Lx −+==== (21)-b

で与えられる。そして k >1/2 のときは H0>H1, 従って Hmax = H0 (22) k <1/2 のときは H0<H1, 従って Hmax = H1

となる。特に k = 1 / 2(すなわち,A1=A2)のときは,ねじ山荷重 F 又は H の分布形はかみ合い

長さ L の中央に関して対称形となり,その両端部に生ずる H の最大値は

2

coth2

)1(coshsinh2

111

1

110max

θθθ

θθ

=+=== HHH (23)

で与えられる。

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b) 運転時 運転時における k は式(14)で与えられ,その値は初期締付け時の k の値(20)よりも小さくなって,

k <1/2 となることが多く,従って運転時におけるねじ山荷重の分布は図 7 の破線で示したような形と

なり,H の値は x=0 では減り,x=L では増加する。この運転時におけるかみ合い長さの両端での H の

値を H ’0 及び H ’1 で示せば.それらは式(14)の k 値を用いて,初期締付け時と同じ式(21)-a ,

(21)-b で求められ,その最大値 H ’maxも式(22)の条件で定められる。かみ合い長さの両端に生ずる

ねじ山荷重の最大値は,初期締付け時は H0Fm(Fm=W1/L),運転時は H ’0F ’m及び H ’1F ’m〔F ’m=(W1+⊿W1)/L〕で求められる。そのいずれが最大になるかは,式(14)及び(20)で与えられる k の値,及び式(9)で与えられる⊿W1の値による。

c) W2=W1+⊿W1となる場合 図 2 に示したねじ込みフランジ管継手では,内圧保持上から必ず W2<W1+⊿W1 となるように設計され

るものであるが,仮りに W2=W1+⊿W1 となる場合を考えると,このねじ継手構造における負荷状態は

図 8(a)に示す形となる。この場合 k の値は式(14)より k=0 (24)

となり,ねじ山荷重 F の分布は式(12)より

θθ

θ coshsinh 1

1==mF

FH , )( 2

LWFm = (25)

で与えられ,図 8(b)に示すような形となる。図の右端 x=L,(θ=θ1)に生ずる H の最大値は

111max cothθθ== HH (26)

で与えられ,k =1/2 である左右対称形分布の場合の Hmax〔式(23)〕よりはるかに大きな値となる。図 1に示したねじ込み鏡ふた構造は,初期締付け時及び運転時ともこの場合に相当する。

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図 8-片側負荷状態におけるねじ山荷重の分布

3. ねじ継手の相対変形係数 λ 連続ねじのねじ継手に生ずる軸方向相対変形 u は,ねじ部における種々の変形要素の合成から成立って

いるので,u とねじ山荷重 w を結ぶ式(16)の相対変形係数,すなわち,ねじ継手のコンプライアンスλの

値を正確に評価するためには,u を構成する各変形要素を詳細に分析する必要があり,この問題は従来か

らねじ継手に関する研究の主眼の一つとなっている。研究者によって多少の違いはあるが,ねじ継手に生

じる軸方向相対変形 u を構成する主な要素としては (1) ねじ山荷重によるおねじ及びめねじ双方のねじ山の曲げたわみ (2) 同じく,ねじ山荷重によるねじ山のせん断変形 (3) ねじ山に働く曲げモーメントにより,ねじ山付け根に傾きを生じる。この傾きによるおねじ及び

めねじ双方のねじ山の倒れ (4) ねじ山荷重によって生じるおねじ部材及びめねじ部材の半径方向の膨脹収縮の差に基づく軸方向

相対変位 などが一般に取り挙げられている。

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図 9-ねじ山の形状と負荷状態

Sopwith は図 9 に示すような頂角 2βの対称形三角ねじを対象とし,山の高さの中央に集中的に,ねじ

山の負荷面に直角なねじ山荷重と,負荷面方向の摩擦力とからなる合成ねじ山荷重 wsec(β-φ)が作用し,

その軸方向成分が w となる場合を,くさびに関する二次元弾性理論を用いて解析し,ねじ山の曲げ及びせ

ん断による軸方向たわみδを求めて

Ewh=δ (27)

の形にまとめている。ただし,φはねじ山の負荷面に働く摩擦力の摩擦角である。そして,h をねじ山の

撓み係数(Deflection Factor of Thread)と呼び,それを次の形で与えている。

+−

−−= )1(1log)1( 3212

ccBB

cccBh eν (28)

ここに,

ββββ

β

2sin22sin2

2sin22

1 +

+

−=

TB ----- 誤記訂正

( ) ββββ

βνν

ββ 2cos22sin2cos12

2sin121

2sin22

2 −−

−−−

+−

= TB (29)

βββ 2cos22sin2

3 −=

TB

ただし,T はβ及びφ(又はμ)の関数で ( )φββ −+= tantan1T (30)

で与えられ,また,c はねじ底の切り取り高さ e に関する係数で(図 9 参照)

b

ebc )(2 −= (31)

を表わし,ν は材料のポアソン比である。おねじ側及びめねじ側のねじ山に関するたわみ係数 h をそれぞ

れ h1,h2とすれば,相対変形 u にはおねじとめねじのたわみδの和が入ってくるので,h1+h2がコンプラ

イアンスλに入ってくる。

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図 10-ねじ結合円筒の寸法

次に Sopwith は,ねじ結合の内側おねじ部材の内径を D0,断面積を A1とし,外側めねじ部材の外径を

D3,断面積を A2,ねじ継手の有効径を D として(図 10 参照)Lamé の公式により,ねじ山荷重の半径方

向成分 wtan(β-φ)による内側部材の半径方向収縮量と外側部材の半径方向膨張量を求め,また.ねじ山

荷重の軸方向成分 w によって生ずる内外部材の半径方向変位の差をも考慮して,それらに基づく軸方向相

対変形 u を

AAAa

DEw

Ewkku )11(2)tan(tan)(

2121 +

−−=+= νφββ (32)

の形にまとめている。ここに

)(4

20

21 DDA −=

π は内側おねじ部材の断面積

)(4

2232 DDA −=

π は外側めねじ部材の断面積

2

4DA π

=

であり,又,a はねじのピッチ,νは材料のポアソン比である。 この解析において,Sopwith はねじの有効径において作用するねじ山荷重の半径方向成分が,有効径に

おいて接触する内外円筒間の相互圧力として作用し,この接触面において内外円筒に生ずる半径方向変位

の差を考えて,上の式(32)に示した k1 + k2の表式を求めている。ところが,運転時に内側円筒の内部に圧

力が作用すれば,この相互圧力は増すことになるので,この k1 + k2 の値は運転内圧により変わる可能性が

あるとして委員会で詳しく検討した。検討の結果,この内圧は上の式(32)に示された k1 + k2の値に影響し

ないことが理論的に証明された。

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Sopwith はねじ継手のコンプライアンスλを 2121 kkhh +++=λ として求め,ねじ山基部の傾きによるねじ山の倒れの項は考えていない。しかし,委員会で検討したとこ

ろでは.この項は Sopwith の考慮している式(27)及び(32)の項に比べて必ずしも小さくない。7)そこで委員

会では Pick らによる有限要素解析の結果 11),その他の研究結果とも比較して,この項をねじ継手のコン

プライアンスλの 1 項として考慮する必要を認め,詳しく解析を行い,上記の Sopwith の解析における記

号を用いて,ねじ山基部の傾きによるねじ山の軸方向変形δを,ねじの有効径において次式で与えること

とした。

Ewf=δ ,

βπν

22

2

tan))(1)(1(6

cmTccf −−−

= (33)

ここに,T は上の式(30),c は式(31)で与えられ,また,m は隣接のねじ山による軽減効果などを表わす補

正係数であって,委員会では Pick らの解析結果 11)とも比較検討して,m=0.3 とすることにした。従って,

おねじ及びめねじに関する f を f1,f2とすれば,求めるねじ継手のコンプライアンスλは 212121 ffkkhh +++++=λ (34) で与えられることになる。又,近似的に h1=h2=h,f1=f2=f とおけば,λは )()(2 21 kkfh +++=λ (35) となる。このλを式(19)に用いて整理すれば,次式を得る。

−−−

++−=

βνφαβθ

tan)(

))(()(2)tan(tan

)(4

20

23

2

20

2223

2

21

DDDDDDDfh

Da

DL

(36)

この式の分母第 1 項のαは図 11 に示すようにねじ山の負荷面の傾角であって,分母第 2 項中の係数 h

〔式(28)及び f〔式(33)〕においても,負荷面におけるねじ山荷重の半径方向成分 wtan(α-φ)に関係する

項 T は式(30)の代りに T =1+tanβtan(α-φ) (37)

図 11-のこ歯ねじと等価対称形三角ねじ

Page 14: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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とおくものとする。ただし,対称形ねじ山の場合にはα=βとおけばよい。 摩擦係数μ=tanφは,特定設備のねじ継手を対象とする場合,通常 0.15~0.20 の範囲にあるので,委員

会では設計指針として安全側に μ=tanφ=0.2 にとることとした。 また,のこ歯ねじの場合のように負荷面の傾角αが小さくなり,tanα≦0.2 となる場合には,ねじ山荷

重の半径方向成分 wtan(α-φ)の呈する影響は無視できると考えられるので,θ1の式(36)の分母において,

tanα≦0.2 では tanβtan(α-φ)=0 , T =1+tanβtan(α-φ)=1 (38) ととるものとしている。 上記の解析において,ねじ継手のコンプライアンスλを与える式(28)~(32),従ってθ1 の式(36)は,

Sopwith の導いた解式に基づいていることになるが,それらは対称形三角ねじを対象に導かれたもので,

Sopwith は,頂角 2βが 45°以上程度を考えていると思われる。ところが,式(28),(29)から直ぐわかる

ように,β=0 の極限では係数 B1等が発散して,明かに h は求まらない。そこで委員会では,この解式が

βの比較的小さい台形ねじの場合にも適用し得るのか否かを調べるため,β=0 の長方形ねじ山に対する

別の解式と比較検討した。その結果によると,上の計算式(28)及び(29)を用いてβ=1°くらいまで困難な

くλを求めることができるとともに,その値はβの減少に従って安定な変化を示すこと,また,β=1°に対するλの値はβ=0 の長方形ねじ山に関する別解の値とあまり違わないことが確かめられた。7)従って,

通常用いられるβ=15°程度の台形ねじに対しては,上記λ,従ってθ1の計算式(36)は心配なく適用可能

であることが認められた。 なお,以上のλ及びθ1の計算式は,上述のように対称三角ねじを対象に導かれた Sopwith の解式に基

づいているから,図 11 に示したような非対称形のこ歯ねじにはすぐには使えない。そこで委員会では,

このような非対称形ねじ山の場合を対象とした Sopwith 流の詳細な理論解析を行い,設計基準式の作成を

試みたが,厳密な理論解による計算式はかなり煩雑なものとなり,平易を旨とする設計基準式には向かな

いと考えた。そこで図 11 に示すように,非対称形のこ歯ねじを,ピッチ a,高さ b を等しくする対称形ね

じ山に置き換え,その半角β,すなわち

ba2

tan 1−=β (39)

を上述の計算式(29),(33),(36),(37)におけるβに代用するという簡便法を考えた。この簡便法による

θ1の値と,非対称形ねじ山に対する理論解,ならびに Pick らによる有限要素解の結果とを比較検討した

ところ,簡便法による値は厳密解及び有限要素解による結果とかなり良く合い,実用上は簡便法で十分差

し支えないことが認められた。9) すなわち,βにはこのようなねじ山の等価頂角の半分β〔式(39)〕を用い,かつ負荷面の傾角αには実際

の値を用いれば,θ1の式(36)はねじ山が対称形と非対称形とにかかわらず適用できるとしたのである。

表 1-ねじ山荷重集中係数の変化

変化パラメータ パラメータの値 ねじ山荷重集中係数 H

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噛合い長さ比 L / D

1/2 1 2

1.79 3.34 6.67

ピッチ比 a / D

1/16 1/8 1/4

3.80 3.34 2.79

ねじ山頂角 2β(度)

45 60 75

3.40 3.34 2.84

負荷面摩擦係数 μ

0.1 0.2 0.3

3.05 3.34 3.71

表 1 は,Sopwith が図 1 のねじ込み式構造の場合を対象として,式(36)で f =0,α=βとおいた対称

形のねじ山に対する計算式により,ねじのかみ合い長さ L,ピッチ a,頂角 2β,摩擦係数μなどのパラメ

ータをそれぞれ 1 つだけ変化し,他のパラメータを固定して,各パラメータの変化によるねじ山荷重の集

中係数 H の変化を調べた計算例である。 これを見ると,かみ合い長さ比 L / D が大きくなるに従って H の値は非常に増大し,かみ合い長さを増

しても端部のねじ山の負担はほとんど軽減しないことがわかる。これに比べると他のパラメータの H に対

する影響はそれ程大きくはないが.ピッチ a が大きくなる程,ねじの頂角 2βが大きい程,又ねじ面の潤

滑を十分にして摩擦係数μの値を小さくする程 H の値は小さくなり,端部のねじ山の負担が軽減されるこ

とがわかる。 4.静荷重に対するねじ継手の強度評価 以上述べた連続ねじのねじ山荷重の集中に対応して.かみ合い端のねじ山の底部には大きな応力が発生

し,それがねじ継手の破損の原因になっていることは,これまでの多数の破損事例や実験結果から明らか

である。 次の解説[B]で詳しく述べるが,連続ねじのねじの谷底にはねじ山荷重によって生じるねじ山の曲げ及び

せん断による応力集中と,おねじ部材又はめねじ部材に働く軸応力のねじ切欠きによる応力集中の重畳作

用で,高いピーク応力が発生する。しかし,適当な延性と靱性を有する材料の場合には,静荷重によるね

じ山の破壊は多くは図 12 に示すおねじ又はめねじの基部断面 AB 又は CD に沿うせん断で起こり,ねじ

底の応力集中はあまり破壊

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図 12-ねじ山のせん断長さ AB 及びCDのとり方 に影響しないことが認められている。もちろん,AB,CD 断面内のせん断応力の分布も一様ではなく,そ

の最大値τmaxは同断面の平均せん断応力τmの 1.5 倍くらいに達するであろうが,静荷重条件でのねじ山

基部のせん断破壊は AB,CD 断面の平均せん断応力τm によってほば律せられることが認められている。

そこで委員会では,静荷重条件でのねじの破壊はこの平均応力説により律せられるとして差し支えないと

考えた。 ただし,AB,CD 断面での平均せん断応力τmは継手かみ合い端での最大ねじ山荷重に対するものをと

るべきであって,ねじ継手に作用する総軸方向荷重を W (N),ねじ 1 山に作用する軸方向荷重の最大値を

W0 (N),単位軸長当りのねじ山荷重の最大値を Fmax (N/mm),かみ合い全長 L におけるその平均値を Fm (N/mm),ねじのかみ合い数を n,ピッチを a とすれば

L

WHFHF m maxmaxmax ==

n

WHW max0 =

の関係があるから,Hmaxが生じるおねじ基部の AB 断面では,平均せん断応力τmは

ABD

nWHABD

LWaHABDaF

m1

max

1

max

1

max //πππ

τ ===

または,

ABD

Wm

1

0

πτ = (40)

同様にして,めねじ基部の CD 断面でのτmは

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CDD

Wm

2

0

πτ = (41)

で求められる。ここに,D 1はめねじの内径,D 2はおねじの外径である。

AB ,CDの長さは(図 12 参照)

βtan)(2 1DDaAB −+= (42)

βtan)(2 2 DDaCD −+=

で与えられる。ただし,D はねじ継手の有効径である。 初期締付け時におけるこの応力は一種の固有応力であり,多分に 2 次応力的性格をもつものであるが.

端の第一山のτmが材料の降伏せん断応力τyに達して崩壊すると,次の第二山に負荷が移り,崩壊が伝播

して,ねじの初期締付け効果が急減し運転圧力の保持能力が失われるという事情を考慮すると,初期締付

け応力も強度評価上は 1 次応力として扱うべき性格をもつものと考えるべきである。一方,運転荷重によ

る応力は明かに 1 次応力である。よって,かみ合い端のねじ山基部断面 AB,CD に生ずる式(40),(41)の平均せん断応力τm は初期締付け時も運転荷重作用時も共に 1 次膜応力として扱い,その崩壊限界はτy

とするのが妥当と考えられる。 この 1 次膜応力に対する許容値は崩壊限界の 2/3 を基準にとって定めるというのが,ASME Code,SecⅢ,及び SecⅧ div.2,ならびに JISB8266 などにおける基本的な考え方になっている。そこで,これに

従い上のτm に対する許容値τaとして

ya ττ32

= (43)

をとるものとする。そして Mises の理論に従い,同一材料の引張りに対する降伏点σy と降伏せん断応力

τyとの関係を

yy στ 6.0= (44)

とおけば

ya στ 4.0= (45)

となる。一方,同じねじの基部断面におけるせん断応力の最大値τmaxはこのときτmax=1.5τm=τy程度

の高い値に達しているわけであって,特に降伏比γ=σy /σB(σBは引張り強さ)の高い材料の場合には,

最終破壊までの余裕が少なく,かつ,切欠き感受性が高い性質があるので,破壊が平均応力のみならず τmaxやねじの谷底の応力集中にも影響される心配もある。そこで,設計の信頼性,安全性確保の観点から,

上の許容値τa の設定には降伏点σy のみならず引張り強さσB からの制限も必要と考えられ,委員会では

式(45)をさらに

Ba γστ 4.0= (46)

の形とし,γ=σy /σB≧0.85 の場合には,式(46)のγ値をγ=0.85 とおいてτaを定めるものとした。こ

こに,σy は材料の設計温度における降伏点又は 0.2%耐力,σB は材料の設計温度における引張り強さで

ある。 参 考 文 献

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(1) 日本機械学会編,機械工学便覧改訂第 6 版(昭 52),P.7-36 (2) D.D.Frederick,Resilient Vessel Closures and Connections for High Pressure-Temperature Service,

High-Pressure Technology,AIChE Chemical Engineering Progress Symposium Series,(1968) (3) H.A.Pohto,Brittle Failure of a Large 30,000psi Isostat and Its Twin Vessel Comparison Analysis,

Proc. 2nd Int. Conf. on High Pressure Engng.,IME(1975),P. 67~85 (4) 第 6 回 高圧ガス設備担当者会議資料(京都,昭 58 年 10 月)。 (5) “ねじ構造の強度設計指針”,高圧ガス,21 巻,1 号(1984),31~37。 (6)鵜戸口英善,“ねじ構造の強度設計指針の経緯とその理論的背景”,高圧ガス,21 巻,1 号(1984),

19~30。 (7) 北郷薫,長島利行,“高圧設備におけるねじ構造の解析と強度-その 1,ねじ山の変形”,高圧ガス,

20 巻,12 号(1983),609~620。 (8) 岩崎雅光,幸田真一,“高圧設備におけるねじ構造の解析と強度-その 2,ねじ継手の荷重分布”,高

圧ガス,21 巻,2 号(1984),66~76。 (9) 佐藤栄一.“高圧設備における構造の解析と強度-その 3,のこ歯ねじ”,高圧ガス,21 巻,4 号(1984),

176~184。 (10) D.G.Sopwith,The Distribution of Load in Screw Threads,IME,App. Mech. Proc. 159(1948),

P. 373~383 (11) R.J.Pick&D.J.Burns,Finite Element Analysis or Threaded End Closures of Thick-Walled Vessels,

Engineering Solids under Pressure,IME(1971),P. 15~25

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解説 [B] ねじ構造の疲労解析について 1.疲労設計指針の作成経緯 高圧下で運転される圧力容器などの高圧設備において,耐圧部にねじ締付け構造を用いる必要のある場

合がいろいろあるが,既存の規格や技術基準等には,ねじ構造に関する従来の多数の研究や調査の結果を

活かした合理的な強度設計の方法を示したものがほとんど見当たらない。 そこで,昭和 57 年の春に,

高圧ガス保安協会の特定設備検査委員会,構造分科会でこの問題を取り上げ,圧力容器などの高圧設備に

おける耐圧部のねじ構造に対して,もっと合理的で信頼性があり,しかも平易で一般技術者に使いやすい

形の強度設計指針を作成しようと計画した。その後,詳細な理論解析や実験資料の検討と設計指針案の作

成作業を行うために,ねじ構造小委員会を設けて鋭意指針案の作成に努力し,計画したねじ構造の強度設

計指針のうち,静荷重に関する部分をとりまとめて昭和 58 年の秋に報告した。 (1) この静荷重部分に関す

る「ねじ構造の強度設計指針」及びその解説や解析資料等は「高圧ガス」誌に発表されている。(2)(3)(4)(5)(6) この設計指針におけるねじ構造の静荷重に対する強度評価では,主としてねじ山荷重の不均等分布に着

目し,かみ合い端のねじ山の底部に大きな応力が発生して,これがねじ継手の破損の原因になるものとし,

ねじ山荷重が最大となるかみ合い端のねじ山における基部断面の平均せん断応力を妥当な許容応力値に抑

える設計方式をとっている。 周知のごとく,ねじの谷底部にはねじ山荷重によって生ずるねじ山の曲げ及びせん断などによる応力集

中と,おねじ部材又はめねじ部材に働く軸方向応力のねじ切欠きによる応力集中の重畳作用で,高い値の

ピーク応力が発生する。しかし,適当な延性と靭性を有する材料の場合には,静荷重によるねじ継手の破

損の多くはこのかみ合い端のねじ山基部断面に沿うせん断で起こり,ねじ谷底部の応力集中はあまりこれ

に影響しないことが認められている。このような事実と使用上の便宜を考えて,上述の設計指針ではねじ

山基部断面における平均せん断応力の値でもって,静荷重時の強度評価を行う方法をとっている。 しかし,高圧設備は,振動問題を別としても,起動・停止や運転圧力の変動など,多かれ少かれ荷重の

繰返しを受けるのが普通であり,高圧設備におけるねじ構造部の破損事故の多くは,繰返し使用による疲

労損傷に起因して発生しているのが実情である。従って,高圧設備におけるねじ構造部の強度評価は静荷

重のみならず,一般には繰返し使用に対する疲労強度を併せ考えて行うべきものである。この繰返し使用

による疲労破損は,一般に応力の値の高い局部から発生した疲労き裂が,使用中に成長して全体の破壊に

至る性格のものであるから,局部における応力の値,すなわち,ねじ構造ではねじ山荷重の集中するかみ

合い端部における谷底部のピーク応力が,ねじ構造の疲労強度に対し支配的な影響をもつものである。 そこで,ねじ構造小委員会では昭和 58 年以来,疲労強度の専門家を新たに委員に加えて,ねじ谷底部

の応力集中問題の理論的,実験的解析,並びにねじ継手の疲労強度に関する多数の文献資料を調査検討す

るとともに,種々の解析計算と実験的検証をも実施して検討を重ね,「ねじ構造の強度設計指針,4.ねじ部

の疲労設計」の原案を作成した。この作成に当ってねじ構造小委員会で検討した主な項目は (1) ねじ谷底部に生ずる集中応力の簡易計算法 (2) 繰返し荷重を受けるねじ構造のねじ谷底部に働くピーク応力振幅の算定法と疲労強度の評価法 (3) ねじ継手に関する応力集中係数と疲労強度減少係数の関係 (4) 疲労設計指針の適用範囲と疲労解析の免除規定 などである。これらの各項目について調査と検討を重ね,合理的で信頼性が高くかつ平易を旨とする疲労

設計の指針案作成にこぎつけるまでには,予想外の長日時と多大の努力を要することになった。 以下に,このねじ部の疲労設計の指針を作成するに当って,ねじ構造小委員会で行った解析や調査の結

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果と指針に規定する項目の根拠などについて,その要点をまとめて紹介する。 2. ねじ谷底部に生ずるピーク応力 連続ねじのねじ谷底部に生ずるピーク応力の要因としては,ねじ山に働く荷重により,ねじ山の曲げや

せん断など,ねじ山の変形に起因する応力 σsと,ねじ山を有する部材の当該断面に働く軸応力がねじ切欠

き底で増大するための応力集中に起因する応力 σaの 2 つがあり,ねじ谷底部のピーク応力はそれらの合成

からなるものと考えられる。 2.1 ねじ山荷重に基づくねじ谷底部のピーク応力

ねじ山に働く荷重に基づいてねじ谷底部に生じるピーク応力 σsとして,Heywood(7)は光弾性実験による

研究結果等に基づき,荷重を受ける任意形状の突起物の根元フィレット部に生じるピーク応力を与える次

の算定公式(これを Projection Formula と呼んでいる)を提案した。そしてこの式は任意形状のねじ山,

歯車の歯,のこ歯などに精度よく適用できることを述べている。

)2

sin45.05.1( 1

21

1 ebeea

wKtsβ

σ ++= (1)

ここに,ねじ山の場合,σsはねじ山荷重 w1 (N/mm)に基づくねじ谷底部のピーク応力であり,a1,b,e

及びβ1はそれぞれ図 1 に示す寸法と角度を表わす。

図 1-Projection Formula(1)の記号 この式の右辺括弧内の第 1 項は w1と合わせて,ねじ山荷重 w1によるねじ山基部 P 点での公称曲げ応力,

第 2 項はねじ山荷重 w1による P 点での直応力(荷重点近接による応力増加),第 3 項はねじ山基部 P 点で

の公称せん断応力(P 点におけるフィレット曲線の接線方向)を与える項である。そして,括弧外の Kt

はこれらの公称応力からピーク応力 σsを求めるための応力集中係数であって,次式で与えられる。

7.0)(26.01

ReKt += (2)

ただし,Rはねじ谷底フィレット曲線のP点での曲率半径, eはP点からねじ山中心線までの距離である。

なお,式(1)の w1 はねじ山つる巻線の単位長さ当りのねじ山荷重で,そのねじ継手軸方向成分を w,ねじ

のかみ合い有効長さにおける w の平均値を wmとし,又ねじ山荷重の分布係数を H,ねじ継手に働く軸方

向総荷重(かみ合い有効長さにおける w の総和)を W (N),ねじの有効径を D,ねじのかみ合い有効総数

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を n とすれば,任意点での軸方向ねじ山荷重 w (N/mm)は

DnWHHww m π

== (3)

で与えられる。 Heywood は,式(1)が荷重 w1を受ける任意形状の突起物基部フィレット上の任意点 P でのピーク応力を

非常に正確に与え,P 点をフィレットに沿って移動しながら σsを計算することにより,その最大値とその

発生点が見つかるが,ねじ山の場合の最大応力発生点は,荷重点がフィレットに近づけば,ねじ山のフラ

ンク基部からフィレット沿い約 30°進んだ点,荷重点がフィレットから遠ざかれば,約 12°進んだ位置

になるといっている。 ねじ構造小委員会では,種々調査検討の結果,σs の見積り計算にはこの Heywood の公式を適用するの

が適当であることを認めたが,設計指針の計算式としてはなるべく簡便でその適用が確実であることが望

ましいので,図 1 におけるねじ谷底フィレット部の任意点 P に対する寸法 a1,b,e,角度 β1を図上で求

めて式(1)に用いる代りに,次のように近似して簡便化をはかることにした。 先づ,図 2 に示すような対称三角ねじ結合の場合には,谷底フィレット部の最大応力発生点 P を近似的

にねじ谷底の中央にとり,又,軸方向ねじ山荷重 w がねじ山高さの中央に働くものとみなす。そうすると,

式(1)のβ1は P 点におけるフィレット曲線の法線と荷重 w の作用線とのなす角として,β1≒π/2 となり,

又 a1,b,e,R の寸法は

21eh

a ≒ , 2ae≒ ,

βcos1ab≒ , ρ=R

とおくことができる。ただし,he はねじ山の実高さ,a はねじのピッチ,βはねじ山の半角,ρはねじ谷

底のフィレット半径である。従って,式(1)は

図 2-対称形三角ねじの場合

awKts 1=σ (4)

++

+= 1cos9.03)

2(26.01 7.0

1e

et h

aahaK β

ρ (5)

となる。

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次に,図 3 に示すような非対称形のこ歯ねじ結合の場合にも,軸方向ねじ山荷重 w はねじ山高さの中央

に作用するとみなすが.式(1)においてねじ山基部の P 点における公称曲げ応力等を算出した過程を考える

と,この場合にはねじ山頂角の 2 等分線に直角に距離 e をとり.かつ,この 2 等分線への垂直線と谷底フィ

レット曲線との接点を最大応力発生点 P にとるのがより妥当な近似と考えられる。

図 3-非対称形のこ歯ねじの場合

そうすると,式(1)における寸法 a1,e,b,R は

21eha ≒ , )cos(

2αβ −

ae≒ , αcos

1ab≒ , ρ=R

とおくことができる。又,角βlは P 点におけるフィレット曲線の法線と軸方向ねじ山荷重 w とのなす角

として

)(21 αβπβ −−≒

となるが,簡単のため安全側の近似としてβl=π/2。従って式(1)を式(4)の形におけば,Kt1は次の式(6)で与えられる。

)cos(

11)cos(cos9.0)cos(

32

)cos(26.017.0

1 αβαβα

αβραβ

+−

+−

+=e

et h

aa

haK

(6) ただし,αは図 3 に示すように,のこ歯ねじの負荷面側フランク角である。式(6)はα=βなる対称三角ね

じの場合には,前の式(5)に一致する。上の式(4),(5),(6)における Kt1はねじ山荷重 w によりねじ谷底部

に生ずるピーク応力σsを w / a の倍数として示した応力集中係数である。

表 1-ねじ山荷重によるねじ谷底部ピーク応力に対する応力集中係数 Kt1

(σS=Kt1・w/a)

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出典 ねじの種類

疲労設計指針 式(5), (6)

有限要素法に

よる計算値(8) 西田の値(9) 大滝の値(10)

ウィットねじ, W1” ウィットねじ, W4” JIS 台形ねじ, 外径 90φ JIS 台形ねじ, 外径 26φ BS のこ歯ねじ, 4.5” BS のこ歯ねじ, 1”

6.54 6.54 9.49 8.85 6.80 6.80

6.79 7.07 11.50 11.50 7.68 7.70

5.89*)

4.51*)

注 *) 原論文ではσS=2.09 w(9) 及びσS=1.42 w(10) と示されている。 これらの係数にピッチ a を乗じた値を Kt1として表示した。

表 1 は,ウィットねじ,JIS 台形ねじ及び BS のこ歯ねじについて,上記の式(5)及び(6)により計算した

応力集中係数 Kt1の値と,ねじ構造小委員会で有限要素法による解析で求めた Kt1の値(8),ならびに西田(9)

及び大滝(10)の研究による Kt1の値を比較したものである。Heywood の公式から導いた上記の簡略式(5),(6)による Kt1 の値は,小委員会で求めた有限要素法による値に比べやや低めの値となっているが,ねじ山に

は半径方向の荷重成分も作用することを考えると,上記の簡略式(5),(6)は設計指針用簡便式として十分実

用に適するものと判断される。 2.2 軸荷重に基づくねじ谷底部のピーク応力 ねじ山を有する部材に軸荷重が作用すると,ねじ谷底部には部材の公称軸応力よりもはるかに高いピー

ク応力 σaが発生する。このような軸応力のねじ切欠きによる応力集中については,過去において非常に沢

山の研究が発表されている。そのうち最も有名かつ簡単なのは Neuber(11)の多重切欠きに関する理論解か

らの公式であって,それによれば軸荷重に基づくねじ谷底部のピーク応力 σaは次式により与えられる。

A

WKta 2=σ (7)

γρ

et

hK 212 += (8)

ここに,W は考察下の横断面に働く軸荷重,A はねじ部材の有効断面積で,Kt2は部材横断面の公称応力(平

均応力)に対するねじ谷底郎の応力集中係数を表わす。 Neuber の解ではこの応力集中係数 Kt2を式(8)により与えているわけであって,式(8)の右辺の heはねじ山

の実高さ,ρはねじ谷底のフィレット半径であり,γは切欠きの多重による応力集中緩和係数(Stress Relief Factor)と呼ばれるもので,ねじのピッチ a とねじ山高さ heの比 a / heの関数として与えられてい

る。 そこで,ねじ構造小委員会では,ウィットねじ棒の縦断面の形状を有する板に一様引張りを与える場合

のねじ谷底部の応力集中係数 Kt2を,上述の Neuber の式(8)で計算し,これを西田(9),Hetenyi(12)らの光弾

性実験値,大滝(10)の複素応力関数による解析値,ならびに小委員会で行った有限要素法による計算値(8)と

比較してみた。表 2 にその結果を示す。 表 2-軸荷重によるねじ谷底部ピーク応力に対する応力集中係数 Kt2

(σa=Kt2・W / A),(W1”ウィットねじ)

Page 24: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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出典 Kt2

Neuber の公式(8)[多重切欠きに関する理論解](11)

西田の値[光弾性実験値](9)

Hetenyi の値[光弾性実験値](12)

大滝の値[複素応力関数による解析値](10)

ねじ構造小委員会の値[有限要素法による計算値](8)

3.99

2.15

2.64

2.52

2.40

これからわかるように,Neuber 公式以外の Kt2の計算値並びに実験値が Kt2=2.2~2.6 であるのに対し,

Neuber 公式による Kt2の計算値は約 4 で,他の値の 1.5~1.9 倍の値となり,大幅に他を上まわっている

ことが認められる。ねじ構造小委員会では,さらに JIS メートルねじ,JIS 台形ねじ.BS のこ歯ねじな

どについても,有限要素法を用い,同様の応力集中係数の計算を試みた。その結果はいずれも Kt2=2.1~2.5 の値となった(8)。そこで小委員会では,高圧設備のねじ構造を対象として,上の Neuber 公式の修正法

や適用法,ならびに突起物基部フィレットの応力集中に関する他の公式の適用法についてもいろいろ検討

を加えたが,Neuber 流の公式による計算値はいずれも小委員会の有限要素法による計算値よりかなり高

くなることが認められた。このため,ねじ構造小委員会では Neuber 流の公式の採用をあきらめて,本設

計指針では式(7)における応力集中係数 Kt2,すなわち,ねじ部材の軸応力に対する応力集中係数の値は,

ねじの種類,形状にかかわらず

5.22 =tK (9)

にすることにした。 2.3 ねじ谷底部の合成ピーク応力 上述のねじ山荷重 w によるねじ谷底フィレット部の応力 σ1は,図 4(a)に示すように左右やや非対称形の

分布を呈するが,ねじ部材の横断面に働く軸荷重によるねじ谷底フィレット部の応力 σ2は,図 4(b)に示す

ような左右対称形の分布を呈する。これら σ1,σ2の応力分布を重畳すれば,ねじ継手においてねじ山荷重

と軸荷重が同時に作用する場合の,ねじ谷底フィレット部における合成の応力分布が得られるわけである。 Heywood によれば(7),(13),図 4(a)に示した σ1の分布において,そのピーク値 σsはメートルねじ,ウィッ

トねじなどの対称三角ねじの場合には,θ1 ≒ 60°-α(α:ねじ山負荷面のフランク角)の位置に生ず

る。一方,図 4(b)に示した σ2の分布において,そのピーク値 σaはねじ谷底中央,すなわち,θ2=0 の位

置に生ずる。従って,これら σ1 と σ2 の合成応力の最大値とその発生位置を正確に知るためには,σ1 と σ2

のねじ谷底フィレット部における正確な分布を求める必要があるが,それにはかなり面倒な解析を必要と

する。設計指針においてはそのような詳細解析を避け,近似値でもよいからなるべく簡便にそれを求め得

るようにすることが望ましい。これについて Heywood は,このような合成応力のピーク値 σmaxが次の実

験式によって十分正確に求められることを提案している。

Page 25: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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図 4-ねじ山荷重及び軸荷重によるねじ谷底部の応力分布

)/(1max

sa

sa C σσ

σσσ

++= (10)

ここに,σmaxはねじ谷底郎における合成応力のピーク値,σs及び σaはそれぞれねじ山荷重及び軸荷重に

基づくねじ谷底部応力のピーク値である。C はこれら σsと σaの合成のための重畳係数で,その値はねじ山

形状ならびにそれによるねじ谷底フィレット部における σs及び σaの発生位置の角度差(θ1-θ2)に依存

する。そして,Heywood は種々の光弾性実験の結果から,C の値を次式により与えている。 2

4460

=αC (11)

ただし,αはねじ山負荷面のフランク角(度)である。

Page 26: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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図 5-ねじ谷底部合成ピーク応力の FEM 計算値及び実験直と Heywood の式との比較 ねじ構造小委員会では,このような合成応力ピーク値の求め方の妥当性を検証するため,ウィットねじ

と台形ねじについて,有限要素法による解析を行い,σs及び σaを求めるとともに,合成ピーク値 σmaxを求

めて,上記の Heywood の提案式(10),(11)による σmaxの計算値と比較した。その結果を表 3 及び図 5 に

示す。表 3 において σmean=W / A はねじ部の平均軸応力であって,番号 1~4 の σs /σmean,σa /σmean, σmax /σmean,ならびに σsの発生角θ1及び σaの発生角θ2は,小委員会で有限要素法により求めた値を示す。

なお番号 5 は参考のため西田(9)による値を付記したものである。

表 3-ねじ山荷重及び軸荷重によるねじ谷底部のピーク応力 σs及び σaの値と 発生位置,ならびに合成ピーク応力 σmax

号 ねじの種類 出 典 σs/σmean σa/σmean σmax/σmean

σsの発生

角θ1

(°)

σaの発生

角θ2

(°)

重畳係数

C

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1 2

ウィットねじ,W1” ウィットねじ,W4”

ねじ構造小委員会資料(8) 有限要素法による計算値

4.52 5.78

2.4 2.4

5.72 6.8

42 54

0 0

0.546 0.546

3 JIS 台形ねじ,90φ 〃 8.9 2.2 10.35 42 15 0.465

4 JIS 台形ねじ,26φ 〃 6.4 2.2 7.7 52 18 0.465

5 ウィットねじ,W1” 西田(9) 光弾性実験値 3.86 2.15 5.36 37 0 0.546

表 3 に示した C の値はウィットねじについては Heywood の式(11)によっているが,台形ねじの場合に

2

4445

=αC (12)

の式によっている。ウィットねじの場合にはθl ≒ 60°-α,θ2 = 0 となり,θ1-θ2 ≒ 60°-αと

なるので,この値が式(11)の分子に用いられていると考えられる。台形ねじの場合には表 3 及び図 5 中に

示してあるように,θl ≒ 60°-α,θ2 = 15°と近似でき,θ1-θ2 ≒ 45°-αとなるので,Heywoodの式に従ってこの値を式(12)の分子に用いることにした。

図 5 は表 3 に示した有限要素法による σmax /σaの値と k =σs /σaとの関係をプロットし,式(11)又は(12)による C の値を用いた Heywood の式(10)と比較したものである。なおこの図には表 3 に示した西田の値

も記入してある。この図より,両者はかなりよく合っていると認められ,三角ねじには式(11),台形ねじ

には式(12)の C を用いれば,Heywood の提案式(10)はねじ谷底部の合成応力のピーク値を求める上で実用

上十分信頼できるものと考えられる。 なお,非対称形ののこ歯ねじの場合にも,ねじ谷底部におけるピーク応力 σs と σa の発生点の間の角は θ1-θ2 ≒ 60°-αと近似できるので,設計指針ではのこ歯ねじの場合も係数 C の値は対称三角ねじの

場合と同様,式(11)を用いて求めるものとしている。 3.繰返し荷重によるピーク応力の振幅 前節では,ねじ山荷重及び軸荷重に基づくねじ谷底部のピーク応力を算定する方法について述べた。そ

こで次には,圧力容器などの高圧設備のねじ構造部において,設備の運転使用時に生ずべきねじ山荷重及

び軸荷重の算定が必要になる。とくにねじ構造部の疲労強度を評価するためには,使用時におけるそれら

の荷重の繰返しによる変動幅を考える必要がある。荷重の変動幅としては,ねじを解放した状態から締付

け状態に至るときの初期締付け荷重,締付け状態において最高運転圧力が繰返されるときの荷重の変動幅,

ならびに運転中の圧力変動に基づく荷重の変動幅などを考慮しなければならない。 3.1 締付け時及び運転時のピーク応力 ねじ山荷重及び軸荷重によるねじ谷底部のピーク応力をそれぞれ σs及び σaとし,初期締付け時における

それらをそれぞれσsi 及びσai,運転圧力 Pm の作用時におけるそれらをそれぞれσspm 及びσapm とする。

ただし,Pmは任意の運転圧力(内圧)で,P0は最高運転圧力,Pm(m=1,2,……)は P0より低い第 m番目の運転圧力を意味する。これらの σsi,σai,σspm,σapmの値を前述の式(4)及び(7)によって求めるために

は,初期締付け時及び運転時の各々において,荷重の最大変動幅を生ずる位置でのねじ山荷重 w 及び軸荷

重 W の最大変動幅の値が必要である。しかし,初期締付け時及び運転時において,ねじ構造のどの部分に

ねじ山荷重 w 及び軸荷重 W の最大変動幅が発生するかは,ねじ結合構造の様式により異なるので,ここで

は具体的に,先づ図 6(a)及び(b)に示すようなねじ込みフランジによる胴の結合構造の場合を考察すること

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とする。

図 6-ねじ込みフランジ式ねじ構造

この様式の結合構造において,ねじのかみ合い長さに沿ってねじ山荷重 w が変化する分布の模様は,ボ

ルトの初期締付け時及び運転時とも,次式で示される。(2),(3)

{ }θθθθ

θcosh)cosh()1(

sinh 11

1 kkwwH

m

+−−== (13)

ここに,H はねじ山荷重の分布係数で,右辺括弧内の k は 初期締付け時には

21

21 AA

Akk+

== (14)

運転時には

)1(121

22 W

WAA

Akk pm−+

== (15)

にとる。ただし,式(14),(15)において A1は胴(おねじ部材)の横断面積,A2はフランジ(めねじ部材)

の横断面積,W1はボルトによる初期締付け荷重,Wpmは内圧 Pmの作用時の運転荷重で

mpm PGW 2

= (16)

で与えられる。ここに,G は図 6(a),(b)に示すガスケット接触径である。なお式(13)において,θは考え

るねじ山の位置を表わす変数で,フランジ上面(図 6 の B 面)からねじ山のつる巻線に沿って測った長さ

s とねじ継手の特性係数αとの積,すなわちθ=αs であり,θ1はフランジ下面(図 6 の A 面)に対する

s の値 s1とαとの積,すなわちθ1=αs1である。 なお,w は任意点θ=αs におけるねじ山荷重,wmは,

ねじの有効かみ合い長さにおける w の平均値であって,

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DL

aWDnWwm ππ

11 == (17)

で与えられる。ここに,D はねじの有効径,n はねじの有効かみ合い山数,L はねじの有効かみ合い長さ,

a はねじのピッチである。この式(17)では,運転時もボルト荷重の増加がないものとし,wmは初期締付け

時も運転時も変わらないとしている(2)。 式(13)による H の値又はねじ山荷重 w=H wmは,ねじのかみ合い長さの中央では低く,両端(図 6 の A,

B 断面の位置)で最高となる形の分布を呈する。それら両端の最高値は θ=0(図 6 の B 断面)で

初期締付け時: { }1111

11 cosh)1(

sinhkkH +−= θ

θθ

(18)

運 転 時 : { }2121

12 cosh)1(

sinhkkH +−= θ

θθ

(19)

θ=θ1(図 6 の A 断面)で

初期締付け時: { }1111

1'1 cosh)1(

sinhθ

θθ kkH +−= (20)

運 転 時 : { }1221

1'2 cosh)1(

sinhθ

θθ kkH +−= (21)

となる。これら H1,H2,H ’1,H ’2に式(17)の wm を乗ずれば,ねじのかみ合い長さの両端部に生ずる初期

締付け時及び運転時の最高ねじ山荷重 wmaxが得られる。これより,初期締付け時及び運転時に最高ねじ山

荷重 wmaxにより生ずるねじ谷底部のピーク応力は,式(4)及び(17)を用い,次式で与えられる。 図 6 の A 断面において

初期締付け時:DLWHKtsi π

σ 1'1

1= (22)

運 転 時 :DLWHKtspm π

σ 1'2

1= (23)

図 6 の B 断面において

初期締付け時:DLWHKtsi π

σ 111= (24)

運 転 時 :DLWHKtspm π

σ 121= (25)

これらの応力式において,W1はボルトによる初期締付け荷重であり,運転圧力 P0及び Pm(m=1,2,…

…)の影響は式(15)の k2,従って式(19),(21)で与えられる H2,H ’2の中に含まれている。 次に,図 6 のねじ構造で胴体部に働く軸荷重は,初期締付け時には A 断面に圧縮荷重が働き,B 断面で

は 0 である。また,運転時には内圧 Pm(m=0,1,2,……)が作用するときは,A 断面では圧縮荷重

W1-Wpm,B 断面では引張荷重 Wpmが働く。ただし,Wpmは式(16)で与えられる内圧 Pmによる軸荷重であ

る。従って,胴体部の有効横断面積(おねじ部材の最小断面積)を A とすれば,初期締付け時及び運転時

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に軸荷重により生ずるねじ谷底部のピーク応力は,式(7)を用いて次式で与えられる。 図 6 の A 断面において

初期締付け時:A

WKtai1

2=σ (圧縮応力) (26)

運 転 時 :AWW

K pmtapm

−= 1

2σ (圧縮応力) (27)

図 6 の B 断面において

初期締付け時: 0=aiσ (28)

運 転 時 :A

WK pm

tapm 2=σ (引張応力) (29)

以上の式(22)~(29)により σsi,σspm,σai,σapm を求めると,図 6(a),(b)に示したねじ込みフランジ式の

結合構造において,フランジの上下面に相当する胴体の A 断面及び B 断面におけるねじ谷底部の合成ピー

ク応力は,初期締付け時及び運転時において,式(10)により次のように求められる。

初期締付け時:)/(1 siai

siaii C σσ

σσσ

++= (30)

圧力 Pmでの運転時 :)/(1 spmapm

spmapmpm C σσ

σσσ

++= ,(m=0,1,2……)

(31) ただし,疲労解析ではピーク応力の値そのものよりその変動値が問題となるので.本疲労設計指針では安

全側の簡単化として,σai,σapm が圧縮応力のときは,その絶対値を式(30),(31)に用いて,合成ピーク応

力 σi,σpmを算出するものとしている。 以上と全く同様にして,ねじ込みプラグ式,袋ナット式などのねじ結合構造においても,ねじかみ合い

長さの端部におけるねじ山荷重の最高値,及び当該断面に働く軸荷重を,初期締付け時及び運転時につい

て求めることにより,ねじ部材の危険断面におけるねじ谷底部の合成ピーク応力を算定することができる。

本疲労設計指針には,そのようにして得られた各結合形式の場合のピーク応力の算定公式が示されている。 3.2 ピーク応力の振幅とその繰返し回数 材料の疲労強度を支配する主な外的要因は繰返される応力の振幅とその繰返し回数である。もちろん,

繰返される応力の平均値(平均応力)も疲労強度に影響するが,その影響を考慮して作成された設計疲労

曲線に基づいて疲労強度の評価を行う場合には,平均応力の影響は改めて考慮する必要はない。 ねじ構造において,ねじ谷底部に繰返される合成ピーク応力の変動には,ねじの締付け及び解放に基づ

くものと,ねじを締付けた状態において働く最高運転荷重の繰返し,ならびに運転中の荷重の変動に基づ

くものなどがある。 図 7(a),(b)はそれらの原因に基づいて生じるねじ谷底部合成ピーク応力の変動を模式的に示したもので

ある。ねじ構造の結合方式及び考える断面の位置によって,初期締付け時のピーク応力 σiよりも,圧力 Pm

が作用する運転時のピーク応力 σpmの方が高くなる場合〔図 7(a)〕と,逆に低くなる場合〔図 7(b)〕とが

ある。

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図 7-ねじ谷底部合成ピーク応力の繰返しと変動幅

対象とする高圧設備の供用期間中におけるねじ継手の締付け解放の繰返し回数を(ni),最高運転圧力

P0の総繰返し回数を(n0),P0よりも低い第 m 番目の運転圧力 Pmの総繰返し回数を(nm)とする。 σpm>σiの場合〔図 7(a)〕には,最大の応力変動幅はねじを解放した状態から,ねじを締付けてさらに最

高運転圧力に至る過程及びその逆過程時に生じる。それを⊿σiとし,その繰返し回数を niとすれば ⊿σi=σp0 , ni=(ni) となる。次に,ねじを締付けた状態で最高運転圧力 P0が繰返されるときの応力変動幅を⊿σ0とし,その繰

返し回数を n0とすれば ⊿σ0=σp0-σi , n0=(n0)-(ni) となる。応力が σiから σp0に至り,σp0から σiに戻る変動過程は,上の⊿σiの繰返し過程で既に(ni)回だ

け勘定されているから,⊿σ0の総繰返し回数は n0=(n0)-(ni)と勘定する。 ねじの締付け状態で最高運転圧力 P0 より低い運転圧力 P1 が(n1)回繰返し作用するときの応力変動幅

⊿σ1とその繰返し回数 n1は ⊿σ1=σp1-σi , n1=(n1) また,最高圧力 P0 で運転中,運転圧力が P2 に変化する総回数を(n2)とすれば,この場合の応力変動幅

⊿σ2とその繰返し回数 n2は ⊿σ2=σp0-σp2 , n2=(n2) で与えられる。以下同様に扱えばよい。

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次に,σpm<σiの場合〔図 7(b)〕には,最大の応力変動幅⊿σiは初期締付け時の応力 σiの繰返しで与えら

れるから,⊿σi及びその繰返し回数 niは ⊿σi=σi , ni=(ni) で与えられる。また,ねじを締付けた状態で最高運転圧力 P0が作用するときの応力変動幅⊿σ0及びその総

繰返し回数 n0は ⊿σ0=σi-σp0 , n0=(n0) で与えられる。この応力変動過程の繰返しは前の⊿σi の繰返し過程では勘定されていないから n0=(n0)

となる。また,ねじの締付け状態において最高運転圧力 P0 より低い運転圧力 P1 が総計(n1)回繰返され

るときの応力変動幅⊿σ1とその繰返し回数 n1は ⊿σ1=σi-σp1 , n1=(n1) 又,最高圧力 P0 で運転中,運転圧力が P2 に変化する総回数を(n2)とすれば,それによる応力変動幅

⊿σ2とその繰返し回数 n2は ⊿σ2=σp2-σp0 , n2=(n2) で与えられる。 以上の他にも運転圧力 Pm の変動過程にはいろいろの場合が考えられるが,要するに応力の変動幅⊿σm

とその繰返し回数 nmを適確に見積ることが,疲労強度を評価する上で大切である。 4.ねじ構造における応力集中係数と疲労強度減少係数 前節で考察したように,高圧設備におけるねじ構造部に働く繰返し荷重は,初期締付け荷重及び運転の

発停,運転圧力の変動が主体であるから,その疲労強度の評価は主として低サイクル領域において考えれ

ばよい。第 2 節で述べたように,ねじ継手におけるねじ谷底部の応力集中係数はかなり高い値になるので,

高圧設備の使用中に生じるねじ谷底部のピーク応力は材料の塑性領域に入る可能性が大いにあると考えら

れる。しかし,谷底の局部以外は当然弾性領域にあるように設計されているはずであるから,設備が荷重

の繰返しを受けても,ねじ谷底部はひずみ制御の繰返し状態にあると考えてよい。このようなひずみ制御

の低サイクル疲労にあっては,切欠きによる疲労強度減少係数 Kf は切欠きの弾性的応力集中係数 Kt に等

しくとれば安全側であるというのが,ASME Boiler and Pressure Vessel Code,SecⅧ, div.2,ならびに

JIS B 8266 「圧力容器の構造-特定規格」などにおける疲労解析法の一つの柱になっており,これらの

規格では局部に生じる弾性的ピーク応力の値によって,部材の疲労強度の評価を行う方式をとっている。

ただし,これらの規格では,切欠きが非常に鋭くて Ktの値が非常に高くなる場合,一般の圧力容器に用い

られる中低強度の材料では,Kfは Ktよりもはるかに低くなるので,Kf=5 以上の値をとる必要はないとも

述べている。 このような規格の背景をなす切欠きの弾性的応力集中係数 Kt と疲労強度減少係数 Kf との関係について

は,過去に非常に多くの研究が行われており,結果も多様であるが,一般に長寿命側の高サイクル疲労に

おいては,Kt<2.5 では Kf≒Kt であるが,Kt>2.5 では Kf<Kt となることが知られている。ところが,ひ

ずみ振幅の繰返しが支配的因子となる低サイクル疲労においては,き裂発生寿命は局部に繰返されるピー

クひずみの範囲で決まり,ピークひずみの範囲は弾性的応力集中係数 Kt の値から評価されるとする研究

(14),(15),とくに,疲労破損までの繰返し回数が 102回以下で,大きな塑性ひずみの繰返される極低サイクル

の領域では,切欠きによるひずみ集中係数 Kεは弾性的応力集中係数 Ktよりも大きくなるので,Kf>Ktと

なるという研究も沢山あって,上記の ASME Code,Sec.Ⅲ及び Sec.Ⅷ,div.2 ならびに JIS B 8266 で

は,このような場合に簡易弾塑性解析法を適用して,Ktの割増しにより Kfを求める方法を提示している。

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しかし,これらの規格の解説書によれば(16),一般に 2 次応力が働く高応力部に対してシェークダウン

(Shakedown)を条件とする許容限界が守られている設計では,広範囲にわたる塑性ひずみの繰返しは抑

止されるので,上述のように Kf>Ktとなることは防止されると述べている。 ねじ構造小委員会では,以上各種の文献による研究結果や規格内容の背景を参照して,対象とする高圧

設備におけるねじ構造については Kf=Kt の立場をとり,ねじ継手の応力集中係数 Kt を精度よく適切に算

定して,ねじ谷底部に繰返されるピーク応力の振幅を求めるとともに,これを十分な安全性を見込んで作

成された材料の設計疲労曲線と比較して,ねじ構造の疲労強度を評価することとした。この方法は実用に

おいて大変便利であり,かつそれにより構造の安全性も十分に確保されるものと考える。 5. 設計疲労曲線と累積使用係数 5.1 設計疲労曲線 高圧設備のねじ構造に対する疲労設計指針で対象となる材料は.JIS B 8266 に指定されている圧力容器

用各種炭素鋼,低合金鋼,及びフェライト系ステンレス鋼,オーステナイト系ステンレス鋼などの高合金

鋼が主体であって,それらに対する設計疲労曲線としては JIS B 8266 に規定されているものをそのまま

採用することとした。それらの設計疲労曲線は ASME において,多数の疲労試験資料を基に最小二乗法

を用いて最適疲労曲線を求め,それに平均応力の影響を加味して修正を施し,応力振幅に対しては 2,繰

返し回数に対しては 20 の安全率を用いて作成されたものであって,十分な検証資料と使用経験をもち,

その信頼性が保証されている(16)。 5.2 累積使用係数 この設計疲労曲線を用い,先に求めたねじ谷底部に生じる合成ピーク応力の振幅⊿σi / 2,⊿σ0 / 2, ⊿σ1 / 2,⊿σ2 / 2,……,⊿σk / 2 が各単独に作用する場合の許容繰返し回数 Ni,N0,N1,N2……,Nkを求

める。そして,対象とする高圧設備の供用期間中におけるそれら各応力振幅の総繰返し回数 ni,n0,n1,

n2……,nkを推定すれば,当該ねじ構造の供用期間終期における累積使用係数

k

k

i

i

Nn

Nn

Nn

Nn

Nn

U LLL++++=2

2

1

1

0

0 (32)

が求められる。当該ねじ構造の疲労強度は U ≦ 1 (33) の条件により,合格と判断される。 式(32)における Ni,N0,N1,N2……,Nk を設計疲労曲線の元である最適疲労曲線から求めた場合,

U=1 となるとき確率 50%で疲労破壊を生ずる,というのが疲労に関する Miner の直線被害則であって,

式(33)の判定式は.最適疲労曲線と設計疲労曲線との間に設けられた十分な安全率を含み,材料や荷重の

ばらつき,表面仕上げ効果,環境効果, 寸法効果等を補って安全な運転を保証するものと言える。 6. 疲労解析の免除 以上述べた本設計指針による疲労解析は,これをすべての高圧設備のねじ構造部に適用しなければなら

ないということではない。高圧設備には,荷重があまり繰返されないものもあり,又,類似の形状寸法の

ねじ構造で過去の運転実績から明らかに安全であることが証明される場合もある。そのような場合には.

面倒な疲労解析による強度評価の手数を省いても差支えないわけである。 JIS B 8266 では,疲労解析の免除規定の一つ(条件 A)として,最小引張強さ(規格値)が 550 N/mm2

Page 34: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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を超えない一般鉄鋼材料に対して, 1) 起動及び停止を含む全範囲の圧力サイクルの予想(設計)繰返し回数, 2) 圧力変動の範囲が設計圧力の 20%を超える運転圧力サイクルの予想繰返し回数,及び 3) 指定限度を超える熱応力の繰返し回数,

の 3 つの総和が 1000 回以下である場合には,疲労解析を免除することができるとしている。この規定は,

疲労強度を評価すべき部位に繰返される見掛けの弾性応力振幅の最大値⊿σmax が,1 次応力に対する許容

限界及び切欠きによる応力集中を考慮して,引張強さ Su の値に等しい 550 N/mm2 になるものとみなし,

設計疲労曲線よりその許容繰返し回数を求めると 1000 回となること。従って,それよりも低い有意の応

力振幅の繰返し回数 2)及び 3)を最大応力振幅の繰返し回数 1)に加えた合計繰返し回数が 1000 回以下なら

ば十分に安全側であること。又,有意の圧力変動による応力振幅の下限⊿σmin として最大応力振幅⊿σmax の 20%,すなわち⊿σmin=110 N/mm2とすれば,それに対する許容繰返し回数は設計疲労曲線により 105

回以上の十分に高い値となることが確かめられること。これらのことがらを根拠として,この免除規定の

条件 A が設けられたものと解釈される。 ところで,本指針で対象としているねじ構造では,ねじ谷底部に生じるピーク応力は式(30),(31)で計

算され,それより 3.2 の所述に従って求められる最大応力振幅⊿σmax (応力振幅は 3.2 で計算される応力

の 1/2 であることに注意)は,Su≦550 N/mm2の材料の場合に,上述の 550 N/mm2の値よりもかなり高

くなる場合があり得る。この最大応力振幅⊿σmax はねじ山の形状,ねじ構造の結合方式などにより異なる

が,1 次応力の許容眼界として,静荷重の場合に規定したように,ねじ山基部断面における平均せん断応

力を許容値τa=0.4γSu(γは材料の降伏比)に抑えるものとし,式(5),(6)及び(9)によるねじ谷底部の応

力集中係数 Kt1及び Kt2,ならびに式(11)又は(12)による重畳係数 C を用いて,式(30),(31)より ⊿σmax を推算すると,その値は高い場合でも⊿σmax =834 N/mm2程度であり,⊿σmax =981 N/mm2に達すること

は先づない。そこで,Su≦550 N/mm2 のフェライト系鉄鋼材料に対する設計疲労曲線より ⊿σmax =981 N/mm2に対する許容繰返し回数を求めると,N=200 回を得る。 次に,Suが 550 N/mm2を超え 895 N/mm2未満のフェライト系鉄鋼材料に対して,同様に本設計指針の

算式ならびに有限要素法による解析結果に基づいて推算すると,ねじ谷底部に繰返される応力振幅の最大

値として⊿σmax =1180 N/mm2 をとれば妥当であると推定される。この値に対し,安全側の選択として Su=790~895 N/mm2の鉄鋼材料用の設計疲労曲線を用いて許容繰返し回数を求めると,N=100 回を得る。 オーステナイト系ステンレス鋼及びニッケルクロム鉄合金の場合(ただし,N≦106の設計疲労曲線の場

合)には,最小引張強さ Suが 550 N/mm2を超える特別な材料を除くことにすれば,この種の材料は一般

に降伏比が低くてγは 0.5 以下であり,ねじ山基部断面における許容せん断応力が低く抑えられる結果,

本指針案の算式に基づくねじ谷底部の応力振幅の最大値は⊿σmax=735 N/mm2 を超えることはない。

そしてこの値をこの種高合金材料に対する設計疲労曲線に用いて許容繰返し回数を求めると,N=1000 回

を得る。 よって,JIS B 8266 の疲労解析免除規定の条件 A に準じ,本指針案のねじ構造に対する疲労解析免除

の条件として,最大応力振幅の繰返し回数及び有意の圧力変動による応力振幅の繰返し回数の総和が, 上述の 3 種の材料について,それぞれ 200 回,100 回及び 1,000 回を超えないこととする規定を設けた。 次に,有意の圧力変動幅の下限を,これも JIS B 8266 の条件 A に準じ,設計圧力の 20%とすると, それに基づく応力変動の振幅⊿σmin は,対象とするねじ構造の場合には最大応力振幅⊿σmax の 20%以下

となると言える。何故なら,ねじ構造では初期締付け荷重の上に運転荷重が重ね合わされて,3.2 に述べ

たように応力変動が生じるので,ねじ継手に繰返される最大の応力変動幅は,締付け状態で最高運転圧力

Page 35: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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P0が作用するときの応力 σp0か,初期締付け時の応力 σiのいづれか大きい方で与えられ,ねじ締付け後の

最高運転圧力 P0の繰返しによる応力変動幅はそれら両者の差|σp0-σi|で与えられる(図 7 参照)。従って,

運転中の有意の圧力変動幅の下限を設計圧力 P0の 20%とすれば,それによる応力の変動幅 2⊿σminは最高

運転圧力 P0の繰返しによる応力変動幅|σp0-σi|の 20%にはなるが,初期締付けを考えた最大の応力変動

幅 σp0又は σiの 20%よりかなり低い値になり,10%以下になる場合も多いことが推算される。 そこで, Su ≦ 550 N/mm2 のフェライト系鉄鋼材料の場合に⊿ σmin =( 0.1~ 0.2)⊿ σmax , ⊿σmax=981 N/mm2とおいて,それに対する許容繰返し回数をこの種材料の設計疲労曲線より求めてみる

と,⊿σmin=0.1⊿σmax=98.1 N/mm2に対しては N=4.5×105回,⊿σmin=0.15⊿σmax=147 N/mm2に対し

ては N=7×104回,⊿σmin=0.2⊿σmax=196 N/mm2に対しては N=2.2×104回となる。これらの繰返し回

数が十分に高くて,有意の圧力変動幅を設計圧力の 20%に打切ることが安全上妥当であるか否かについて

は,なお検討を要するところであるが,最大応力振幅⊿σmax より低い種々の応力振幅の繰返しの影響をす

べて⊿σmax の繰返しと同等として,1) + 2)の合計繰返し回数が N≦200 回の場合を疲労解析免除とする規

定は,一般には非常に安全側のものである。実際に,供用期間中におけるねじの締付け回数ならびに最高

運転圧力の繰返し回数,及び運転中の圧力変動が設計圧力の 20%以上のものの繰返し回数を,総計 200回以内で実情をシミュレートして適当に配分し,累積使用係数 U を計算してみると,設計圧力の 20%以

下の圧力変動による影響を非常に多めに考慮してもなお U<1 となって,十分安全であることが検証され

る。なお,Su=550~895 N/mm2のフェライト系鉄鋼材料,及びオーステナイト系高合金材料に対する設

計疲労曲線(ただし,N≦106の設計疲労曲線の場合)は,長寿命側で Su≦550 N/mm2の鉄鋼材料の設計

疲労曲線よりかなり上側に来て,疲労強度が大きい性質を呈するので,有意の圧力変動を設計圧力の 20%以上とすることの安全性は一層大きいことを検証することができる。 以上のような種々の検討を行った結果,ねじ構造小委員会では,本設計指針で対象としている高圧設備

のねじ構造部に対し,疲労解析免除の妥当な条件として 1) 起動,停止及び締付けを含む全範囲の応力サイクルの予想(設計)繰返し回数 2) 圧力変動の範囲が設計圧力の 20%を超える運転圧力サイクルの予想繰返し回数 をとり,1) + 2)の合計繰返し回数が次の 3 種の材料に対して,それぞれに指定する限界の回数を超えない

こと,すなわち (1) 最小引張強さ(規格値)が 550 N/mm2 を超えない炭素鋼,低合金鋼,フェライト系ステンレス鋼

……… 200 回 (2) 最小引張強さ(規格値)が 550 N/mm2を超え 895 N/mm2未満の炭素鋼,低合金鋼,フェライト系

ステンレス鋼 ……… 100 回 (3) 最小引脹強さ(規格値)が 550 N/mm2を超えないオーステナイト系ステンレス鋼,ニッケルクロム

鉄合金(ただし,N≦106の設計疲労曲線の場合) ………1,000 回 という規定を設けることとした。このような条件を満足すれば,高圧設備のねじ構造部は供用期間中に推

定される繰返し使用に対して,疲労解析を免除しても十分に安全性が保証できると考える。 なお,JIS B 8266 における疲労解析免除の規定では,条件 A は最小引張強さ Suが 550 N/mm2を超えな

い一般鉄鋼材料にのみ適用できるものとなっているが,別に条件 B が設けられていて,これを満足すれば

Su>550 N/mm2の鉄鋼材料の場合にも疲労解析が免除されるという道が開かれている。本設計指針では適

用の簡便化のため,条件 B に準ずる免除規定を設けず,条件 A を拡大して Su>550 N/mm2の一般鉄鋼材

料にも疲労解析が免除できるように規定している。そして,ここに規定した条件は,JIS B 8266 の条件 Bに当てはめてみると,むしろかなり厳しい内容となっており,JIS B 8266 の条件 B の規定を十分に満足

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するものである。 7. 結 語 この「ねじ構造の強度設計指針」は,高圧ガス保安法の対象となる圧力容器や高圧配管などの高圧設備

における耐圧部のねじ構造に対して.従来の設計法よりも合理的で信頼性が高く,かつ平易で,一般技術

者に使い易い形の強度設計指針を提供することを目的としたものである。設定された指針項目には,その

背景に多数のかなり複雑な理論解析や実験的検証が存在している。また,それらに基づいて作成された本

設計指針は,慣用されている従来の方法よりもかなり精細で複雑であり,実用が甚だ面倒なように見える

かも知れない。しかし.上述の平易を旨とする趣旨に沿い,一般技術者が各指針項目に従い平易に間違い

なく強度解析を実行し得るように構成されている。 この強度設計指針は,高圧ガス保安協会の特定設備検査委員会(構造分科会)の中のねじ小委員会にお

いて原案が作成され.親委員会の慎重審議と承認を得て,第 6 回及び第 8 回の高圧ガス設備担当者会議に

提出され,討議を経たものである。この指針は高圧設備における耐圧部のねじ構造に対し設計の安全性を

評価するための一つの拠りどころを与えるもので,自主基準的な性格の技術指針と解されたい。

参 考 文 献 (1) 第 6 回 高圧ガス設備担当者会議資料(京都 昭 58 年 10 月)。 (2) “ねじ構造の強度設計指針”,高圧ガス,21 巻,1 号(1984),31~37。 (3) 鵜戸口英善,“ねじ構造の強度設計指針の経緯とその理論的背景”,高圧ガス,21 巻,1 号(1984),

19~30。 (4) 北郷薫,長島利行,“高圧設備におけるねじ構造の解析と強度-その 1,ねじ山の変形”,高圧ガス,

20 巻,12 号(1983),609~620。 (5) 岩崎雅光,幸田真一,“高圧設備におけるねじ構造の解析と強度-その 2,ねじ継手の荷重分布”,高

圧ガス,21 巻,2 号(1984),66~76。 (6) 佐藤栄一,“高圧設備における構造の解析と強度-その 3,のこ歯ねじ”,高圧ガス,21 巻,4 号(1984),

176~184。 (7) R. B. Heywood,Designing against Fatigue,Chapman and Hall Ltd., London,(1962),261~265。 (8) 長島利行,高圧ガス保安協会,特定設備検査委員会,ねじ小委員会資料 No. 107,108,113,145(昭

58~59 年) (9) 西田正孝,“ねじの応力について”, 理研彙報,22(昭 18),385。 (10)大滝英征,“ボルトナット結合体のボルト谷底における応力分布”,日本機械学会論文集,37 巻,303

号(昭 46-11),2197。 (11)H. Neuber,Kerbspannungslehre,Z. Aufl.,(1958),163。 (12)M. Hetenyi,Journ. Appl. Mech.,10(1943),A-93。 (13)R. B. Heywood,Designing by Photoelasticity,Chapman and Hall Ltd.,London,(1952),240~

244。 (14)鵜戸口英善,三橋俊作,和田知之,“低サイクル疲れにおける切欠き効果について(第 1 報)”,日本機

械学会論文集,34 巻,268 号(昭 43-11)

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(15)鵜戸口英善,野末康博,“低サイクル疲れにおけるり切欠き効果について(第 2 報)”, 日本機械学会

論文集,41 巻.344 号(昭 50-4)。 (16)“Criteria of the ASME Boiler and Pressure Vessel Code for Design by Analysis in SectionⅢ and

Ⅷ,Division 2”,ASME(1969)。

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解説 [C] 平成 19 年の改定内容について 1.改訂の概要 今回の主要改訂事項を以下の a)~g)に示す。 a) 設計指針の保守的部分の改善 従来指針の問題点: 大径のねじ込み式構造に適用すると設計が保守的になり過ぎる。 改善内容 : 大径のねじ込み式構造については,有限要素法の解析例を数多く調査しその

結果を元に設計式を規定した。 詳細を以後の 2. 大径のねじ込みふたの荷重集中係数 に記述する。

b) 異材ねじへの適用拡大 従来指針の問題点: おねじ,めねじの縦弾性係数がほぼ同一の場合に適用が限られていた。 改善内容 : 縦弾性係数が異なる場合の計算式を確立し現実的な範囲で縦弾性係数が最も

異なる組み合わせに対してその影響を調べたところ,影響は小さいことがわか

った。同様なことが有限要素法でも確認できた。 このため,縦弾性係数の比が 0.5~2.0 の範囲では,同一の縦弾性係数として

扱って良いとした。 詳細を以後の 3. 縦弾性係数が異なるねじ接合 に記述する。

c) 断続ねじへの適用拡大 従来指針の問題点: 連続ねじに適用が限られていた。急速開閉ふたなどには断続ねじ構造が使わ

れることがあり設計式がなかった。 改善内容 :断続ねじに適用できる設計式を規定した。

詳細を以後の 4. 断続ねじを持つねじ込みふた に記述する。 d) 設計疲労曲線の追加 従来指針の問題点: 設計疲労曲線は 2 種類しか用意されていなかった。

改善内容 : ねじ構造によく使われる材料用に,新たに 3 種類の設計疲労曲線を追加 した。この設計疲労曲線は使用する際,計算された応力振幅を平均応力の影響

を考慮して補正する必要があるためその方法も示した。 詳細を以後の 5. 設計疲労曲線 に記述する。

e) ピーク応力計算式の追加と削除 従来指針の問題点: フランジ式の場合,ピーク応力が高くなるフランジ側の応力計算式が示され

ておらず疲労評価されていなかった。 他方,ねじ込み式の場合,明らかに

応力が低くなる側の疲労評価も要求していた。 改善内容 : フランジ式の場合,ピーク応力が高くなるフランジ側の応力計算式を追加し

た。一方,ねじ込み式の場合,明らかに応力が低くなる側の応力計算式を削除

した。

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2.大径のねじ込みふたの荷重集中係数

KHK 基準「ねじ構造の強度設計指針(KHK E 014-1986)」は,一般的に,ねじ径が大きくなると荷重

集中係数 Hmaxが大きくなり保守的な設計になる。今回,この点を改善するため,ねじ構造の有限要素法に

よる解析例を調査し,ねじ込み式のねじ部に適用する設計式を規定した。以下にその概要を示す。

今回,ねじ込み式のねじの荷重集中係数 Hmaxの設計式を以下のように改訂した。

2.73 < θ1 ≦ 15 の範囲: Hmax = 2.15 θ1 0.246 (但し,かみあいねじ山数 ≧5 とする)

θ1 ≦ 2.73 の範囲: Hmax = θ1 cothθ1 (従来の指針の式)

ここで,θ1:部材及びねじ山の剛性とねじのかみあい長さに関係する定数

( )

( ) ( ) ( )( )( )

−−−

++−

=

βνφαβ

ωθtan2tantan

/4

20

23

2

20

2223

22

1

DDDDDDD

fhDa

DL

Hmax と θ1の関係を図 1(縦軸,横軸とも常用対数)に示す。同図で傾斜が 45゜の線は従来の KHK 指

針の設計式 Hmax = θ1 cothθ1 である。同図には,有限要素法による 18 ケース 1) , 2), 3), 4), 5), 6) , 7) の解析結果

のプロット点と,その最小二乗近似式の線 Hmax =1.60 θ1 0.246 並びに,最大プロット点を通り最小二乗近

似式の線に平行な線(設計で用いる線)Hmax =2.15 θ1 0.246 も表示している。 従来の KHK 指針の線と

今回改訂した設計式の線とは θ1 = 2.73 で交差し,θ1 が大きくなるにつれ両者の開きは次第に大きくなる。

有限要素法解析で用いた主要な諸元を参考までに表 1 に示す。表 1 に示すデータのうち,

(1) アンダーカット付きで初期締付荷重が作用するもの(ポイント No.11-1, 11-3, 12-1, 12-3)は

プロットに含めていない。アンダーカット付きの大径のねじふた等には初期締付荷重が作用しない

ようにシール設計するのが一般的なためである。 また,

(2)特殊なねじ形状のもの(ポイント No.7, 9)もプロットから除外している。

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1

10

100

0.1 1 10 100θ1

Hm

ax

図 1-Hmax-θ1関係

◆ Hmax(FEM) KHK 基準 設計曲線 累乗(Hmax(FEM))

KHK 基準 Hmax=θ1/tanh(θ1)

設計曲線 Hmax=2.15θ10.246

FEM 解の最小二乗近似 (累乗)

Hmax=1.60θ10.246

Page 41: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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表 1-有限要素法解析で用いた主な諸元

α:荷重を受ける面のフランク角 U.C. :アンダーカット ヤング率:おねじ/めねじ

γ:背面の傾斜角 かみ合い長さ:(山数-0.5)×ピッチ

ポイント ねじ 形状 有効径 ピッチ 谷底の 山数 かみ合い θ1 Hmax 備考

No. 種別α

(°)γ

(°)U.C. (mm) (mm)

丸み(mm)

長さ(mm)

KHK FEM

1 三角ねじ 30 30 有 432.3 19.05 2.62 5 85.73 0.569 1.106 1.61切り欠きねじ(4セグメント)特認案件

2 標準のこ歯 7 45 無 502.9 25.4 3.06 5 114.3 1.711 1.83 1.863 標準のこ歯 7 45 無 502.9 25.4 3.06 6 139.7 2.091 2.16 1.954 修正のこ歯 7 36 有 423.4 25.4 - 9 215.9 3.334 3.34 25 標準のこ歯 7 45 無 400.1 12.7 - 13 158.8 3.581 3.59 2.7 切り欠きねじ6 修正のこ歯 7 54 有 951.23 25.4 2.77 11 266.7 4.642 4.643 2.55 特認案件7 修正のこ歯 0 45 - 324 20 - 16 310 12.2 12.2 3.33 集計から外す8 修正のこ歯 0 45 無 177 10 - 20 195 15.43 15.43 4.219 修正のこ歯 0 30 - 323 20 - 16 310 61.98 61.98 3.27 集計から外す10 修正のこ歯 7 54 有 834.5 25.4 2.8 17 419.1 5.79 6.51 1.55 特認案件

11-1 三角ねじ 30 30 有 106.1 3 0.433 14 40.5 1.29 1.5 5.99 M108、初期締付時11-2 1.29 1.85      圧力荷重のみ11-3 1.29 3.75      初期締付荷重+圧力12-1 修正のこ歯 3 30 有 106 3 0.37 14 40.5 3.0 3.01 4.66 M108、初期締付時12-2 2.14      圧力荷重のみ12-3 3.16      初期締付荷重+圧力13 三角ねじ 30 30 無 22.05 3 0.433 6 16.5 2.57 2.4 1.4714 三角ねじ 34 有 88.56 3 17.7 51.5 2.41 2.45 2.58 M90、2.58は実験値

15 三角ねじ 30 30 - 18.019 1.58750.229m0.115f

6.929 10.206 2.32 2.37 2.433/4-16UNF、初期締付時(ヤング率 110/189 GPa)

↓ 2.32 1.37          運転時

16 三角ねじ 30 30 - 18.019 1.58750.229m0.115f

6.929 10.206 2.18 2.24 2.463/4-16UNF、初期締付時(ヤング率 189/189 GPa)

↓ 2.18 1.38          運転時

17 三角ねじ 30 30 - 18.019 1.58750.229m0.115f

6.929 10.206 2.18 2.24 2.483/4-16UNF、初期締付時(ヤング率 110/110 GPa)

↓ 1.4          運転時

Page 42: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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3.縦弾性係数が異なるねじ接合 「ねじ構造の強度設計指針(KHK E 014 - 1986)」の適用は,おねじとめねじの縦弾性係数がほぼ同一の

場合に限られていた。ねじの焼き付け防止あるいは耐食性確保の観点から,おねじ材料とめねじ材料の

材質を変えることがあり,その際,縦弾性係数が異なることがある。このような場合にも指針が適用でき

るように定式化し縦弾性係数を現実的な範囲(縦弾性係数の比が 0.58~1.7 の範囲)で変えてその影響を

調べてみたが影響はあまり大きくないことを確認した(以下の計算例参照)。 同様のことを有限要素法

解析でも確認した。そのため,今回の改訂では,縦弾性係数の比が 0.5~2.0 の範囲では縦弾性係数の違い

を考慮しなくても良いと規定している。 今回検討した範囲を超えるケースが出てきた場合の参考に供す

るため検討した資料を以下にまとめて示す。

3.1 おねじ及びめねじの縦弾性係数が異なる場合の計算式

ねじ込みフランジを例にとる。

図 2-ねじ継手要素における荷重と変形

a) ねじ山荷重の集中係数 H' の計算

上図において,左端面より任意の距離 x の断面に働くおねじの軸力を Q ,めねじの軸力を R とする。 同様に,距離 x + dx の断面に働くおねじの軸力を Q + dQ ,めねじの軸力を R + dR とする。 おねじ, めねじの dx 間における伸びをそれぞれ du1 ( > 0 ),du2 ( < 0 )とすれば,それらの和 du は

du = du1 - du2 = { Q /(E1 A1 )-R /(E2 A2) }dx =(1 / E1) { Q /A1-(E1 / E2) (R /A2) }dx =(1 / E1) [ Q /A1-{ R /(A2 / γ) }]dx となる。 ここで,

γ = E1 / E2 E1= おねじの縦弾性係数 E2= めねじの縦弾性係数 A1= おねじの断面積 A2= めねじの断面積 附属書 A の式(4)より,

Page 43: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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du / dx = (1/ K) dF / dx = (1 / E1) [ Q /A1-{ R /(A2 / γ) } ] -------- (1) ここで, F = ねじの軸方向単位長あたりの軸方向ねじ山荷重 式(1) を x で微分すると, d2F / dx2= (K / E1) [ (1 /A1) (dQ / dx)-{1 / (A2 / γ ) } (dR / dx) ] 附属書 A の式(1) (F = dQ / dx) 及び式(2) (F = -dR / dx )を上式に代入すると, d2F / dx2= (K / E1) { F /A1 + F / (A2 / γ ) }= (K / E1) { 1 /A1 + 1 / (A2 / γ ) }F または,

d2F / dx2 - α1

2 F = 0 , α12 = (K / E1) { 1 /A1 + 1 / (A2 / γ ) } --------- (2)

式(2) は,おねじとめねじの縦弾性係数が異なる場合のねじ山分布荷重 F を与える基礎方程式

であって,一般解は式(3)で与えられる。 F = A cosh α1x + B sinh α1x --------- (3) 境界条件は次式で与えられる。 x = 0: Q = -(W1-∆W2) , R = 0 --------- (4) x = L: Q = W2 , R = -(W1+∆W1) ここで, W1 = 初期締付ボルト荷重 W2 = 運転荷重 ∆W1 = 運転荷重によるボルト荷重の増加分 ∆W2 = ガスケット荷重の減少分 L = ねじの有効かみあい長さ dF / dx = Aα1 sinh α1x + Bα1 cosh α1x を式(1)に代入し境界条件を適用すると,

(1/ K) (dF / dx)X=0= (α1/ K) B = (1 / E1) { Q / A1-R / (A2 / γ ) }X=0 = -(W1-∆W2) / (E1 A1) (1/ K) (dF / dx)X=L= (A α1 sinh α1L + B α1 cosh α1L ) / K = (1 / E1) { Q / A1-R / (A 2 / γ ) }X=L = (1 / E1) { W2/ A1+(W1+∆W1) / (A2 / γ ) }

上式から A , B を求め,

Fm = (W1+∆W1) / L k' = { (A2 / γ ) / (A1 + A2 / γ ) }{ 1-W2 / (W1+∆W1) } --------- (5)

Page 44: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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α1x = θ ' , α1L = θ1'

とおけば,ねじ山荷重の集中係数 H' は,

H' = F / Fm = (θ1' / sinh θ1' ) { k' cosh(θ1' -θ ') + (1-k' )cosh θ ' } ------- (6)

b) ねじ継手の軸方向相対変位 u に対するバネ定数 K ,ねじ継手の特性係数 α1 ,無次元長さ θ1' の計算

おねじとめねじの軸方向相対変位量 u は指針の参考その1の式(17)と附属書 A の式(17)から,

u = (w / E1)(h1 + f1 + k1) + (w / E2)(h2 + f2 + k2) = { (h1 + f1 + k1) + (E1 / E2)(h2 + f2 + k2) }(w / E1) = { (h1 + f1 + k1) + γ (h2 + f2 + k2) }(w / E1) = λ'(w / E1) --------- (7)

ここで,

λ' = (h1 + f1 + k1) + γ (h2 + f2 + k2)

w = ねじのつるまき線の単位長あたりに作用する軸方向ねじ山荷重

h1 = おねじのねじ山の曲げ及びせん断によるたわみ係数。

= (1-ν12){B1 ln c-{(c-1) / c }{B21 + B3 (c-1) / c }

f1 = おねじのねじ山基部の傾きによるたわみ係数。

= 6 (1-ν12) (c-1) (c-T) / (π c2 tan2 β) m (m = 0.3 )

k1 = ねじ山荷重の半径方向成分によりおねじに生じる軸方向たわみ係数。

= tanβ [(D /a) {A / A1-(1 + ν1 ) / 2}tan(α-φ) -2ν1 A / A1]

h2 = めねじのねじ山の曲げ及びせん断によるたわみ係数。

= (1-ν22){B1 ln c-{(c-1) / c }{B22 + B3 (c-1) / c }

f2 = めねじのねじ山基部の傾きによるたわみ係数。

= 6 (1-ν22) (c-1) (c-T) / (π c2 tan2 β) m (m = 0.3 )

k2 = ねじ山荷重の半径方向成分によりめねじに生じる軸方向たわみ係数。

= tan β [(D /a){ A/A2+(1 + ν2) / 2 }tan(α-φ)-2ν2 A / A2]

B1, B3 , T , c については附属書 A の式(29)~式(31)に同じ。

B21, B22 は附属書 A の式(29)の B2 の式の ν をそれぞれおねじのポアソン比 ν1 , めねじの

ポアソン比 ν2 に置き換えたもの。

α, β, φ, D , a , A , A1, A2 は指針に同じ。

Page 45: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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ねじ山荷重 F とおねじとめねじの軸方向相対変位量 u との関係式 F = K u に式(7)を代入し F と w の関係式に等置すると,

F = K u = K λ'(w / E1)= w πD / a

上式より

K = (πD / a ) (E1 / λ') --------- (8)

ねじ継手の特性係数 α1は,式(2)から,

α1 = [ (K / E1) { 1 /A1 + 1 / ( A2 / γ ) } ] 0.5

= [ { (πD ) / (aλ') }{ 1 /A1 + 1 / ( A2 / γ ) } ] 0.5

θ1' は,

θ1' = α1L = [ { (πDL2) / (aλ') }{1 /A1 + 1 / ( A 2 / γ ) } ] 0.5

c) まとめ

以上から,以下の(1)~(3)の置き換えをすれば,ねじ山荷重の集中係数 Hmax,ねじ部のせん断応力 及びねじ谷底部における合成ピーク応力を指針の式を使って求めることができ,また,フランジ式, ねじ込み式,袋ナット式にも適用可能であることが分かる。

(1) ねじ山荷重の集中係数 Hmax の式は指針の式による。

ただし,θ1 は指針の式(14)によるのではなく前述の θ1' による。 また,k は指針の式によるが,

その際,めねじの断面積 A2 は(A2 / γ)に置き換える。 ここで,γ はおねじの縦弾性係数 E1と めねじの縦弾性係数 E2の比 E1 / E2 である。

(2) θ1' の計算に用いる λ' は λ' = (h1 + f1 + k1) + γ (h2 + f2 + k2) から求める。

(3) h1, f1, k1, h2, f2, k2 は指針の参考その1の 式 (4)---- h1, h2 ,

式 (6)---- f1, f2 ,

式(14)---- k1 ,

式(15)---- k2 によるが以下の置き換えを行う。

h1 ----- ν → ν1 (おねじ部材のポアソン比)

B2 式の ν → ν1 (おねじ部材のポアソン比)

h2 ----- ν → ν2 (めねじ部材のポアソン比)

B2 式の ν → ν2 (めねじ部材のポアソン比)

f1, k1 ----- ν → ν1 (おねじ部材のポアソン比)

f2, k2 ----- ν → ν2 (めねじ部材のポアソン比)

d) 計算例

弁のねじ込み部を例にとる。

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(計算諸元)

ねじの呼び 3 / 4 - 16 UNF ねじ接合の形式: ねじこみ式

使用材料 CASE 1: おねじ JIS H3100 C6301 ,

めねじ ASTM A276 TYPE316

CASE 2: おねじ ASTM A276 TYPE316 , めねじ ASTM A276 TYPE316

おねじの内径 D0 9.525 mm ねじの有効径 D 18.019 mm めねじの内径 D1 17.331 mm

おねじの外径 D2 19.050 mm

めねじ部材の外径 D3 25.400 mm

ねじのピッチ a 1.5875 mm

ねじ谷底の丸み半径 ρ 0.229 mm ねじ山の実高さ he 0.974 mm

基本山形の高さ b 1.375 mm ねじ山のフランク角 α 0.524 rad ( =30 度) ねじ山半角 β 0.524 rad (=30 度) おねじの谷底の切取高さ e 0.229 mm

ねじの有効かみあい長さ L 10.206 mm

ねじの有効かみあい数 n 6.429 ねじの摩擦角 φ 0.197 rad (=11.3 度) ポアソン比 ν1 , ν2 0.3 初期締付荷重 W1 7921.84 N 内圧による全荷重 W2 9902.31 N

(計算)

断面積 おねじ A1 = (π / 4)(D 2 -D02) = 183.8 mm2

めねじ A2 = (π / 4)(D32 -D 2 ) = 251.7 mm2

縦弾性係数 CASE 1: おねじ E1 = 110,000 N / mm2 ,

めねじ E2 = 189,000 N / mm2 CASE 2: おねじ E1 = 189,000 N / mm2 , めねじ E2 = 189,000 N / mm2 γ = E1 / E2

CASE 1: γ = 0.582 CASE 2: γ = 1.0

c = 2(b-e)/ b = 1.67 A = (π / 4)D 2 = 255 mm2

h1 = h2 = 1.25 f1 = f2 = 0.18 k1 = tan β[(D /a){A/A1-(1 + ν1) / 2}tan(α-φ) -2ν1A / A1] = tan0.524[(18.019 /1.5875){255/183.8-(1+0.3) / 2}tan(0.524-0.197)-2×0.3×255/183.8] = 1.158

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k2 = tan β [ (D /a){ A/A2+(1 + ν2) / 2 }tan(α-φ) -2 ν2 A / A2 ] = tan0.524[(18.019 /1.5875){255/251.7+(1+0.3)/ 2}tan(0.524-0.197)-2×0.3×255/251.7] = 3.346 λ' = (h1 + f1 + k1) + γ (h2 + f2 + k2) CASE 1: λ' = (1.25 + 0.18 + 1.158 ) + 0.582 (1.25 + 0.18 + 3.346 ) = 5.37 CASE 2: λ' = (1.25 + 0.18 + 1.158 ) + 1.000 (1.25 + 0.18 + 3.346 ) = 7.36 θ1' = α1 L = [{(πDL2)/ (aλ')}{1 /A1 + 1 /(A2 / γ) } ] 0.5

CASE 1: θ1' = [{(3.14×18.019×10.206 2)/ (1.5875×5.37)}{1 / 183.8 + 1 /(251.7/0.582)}] 0.5 = 2.32 CASE 2: θ1' = [{(3.14×18.019×10.206 2)/ (1.5875×7.36)}{1 / 183.8 + 1 /(251.7/1.000)}] 0.5 = 2.18 H' max = θ1' coshθ1' / sinh θ1'

CASE 1: H' max = 2.32×cosh2.32 / sinh 2.32 = 2.37 CASE 2: H' max = 2.18×cosh2.18 / sinh 2.18 = 2.24

ねじ部のせん断応力

おねじのせん断長さ AB1 = a / 2 + (D -D1)tan β = 1.191 mm めねじのせん断長さ AB2 = a / 2 + (D2-D )tan β = 1.389 mm

計算に用いる軸方向荷重 W W = max { W1 , W2 }= 9902.31 N ねじ一山に作用する軸方向最大荷重 W0 W0 = H' max ×W / n

CASE 1: W0 = 2.37×9902.31 / 6.43 = 3650 CASE 2: W0 = 2.24×9902.31 / 6.43 = 3450

おねじのせん断応力 τmax τmax = W0 / (π D1 AB1 ) CASE 1:τmax = 3650 / (3.14×17.331×1.191 ) = 56.3 N / mm2

CASE 2:τmax = 3450 / (3.14×17.331×1.191 ) = 53.2 N / mm2

めねじのせん断応力 τmax τmax = W0 / (π D2 AB2 )

CASE 1:τmax = 3650 / (3.14×19.05 ×1.389 ) = 43.9 N / mm2 CASE 2:τmax = 3450 / (3.14×19.05 ×1.389 ) = 41.5 N / mm2 3.2 有限要素法による検討 前記 3.1 の計算諸元に対して,おねじとめねじの縦弾性係数を表 2 に示すように変え,有限要素法で

各ねじ山のせん断力分布を求めた。7)

a) 解析モデル 初期締付時の解析モデルを図 3 に,内圧作用時の解析モデルを図 4 に示す。内圧作用時はプラグまで モデル化している。

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表 2-縦弾性係数(N/mm2)

おねじ めねじ

Case-1 1.10E+05 1.89E+05

Case-2 1.89E+05 1.89E+05

Case-3 1.10E+05 1.10E+05

Case-4 1.10E+05 2.00E+07

Case-5 2.00E+07 1.10E+05

b) 解析結果 図 5 と図 6 に平均せん断力に対する各ねじ山のせん断力の分布を示す。検討結果を以下に示す。 (1) 初期締付時

通常の金属の組合せ(Case-1~Case-3)では,縦弾性係数の違いの影響はほとんどない。 せん断力の分担はガスケットに一番近いねじ山が一番大きく,離れるにつれて徐々に減衰する。 本計算モデルの場合,通常の金属の組合せでは平均せん断力に対する倍率は最大で 2.48 である

(Hmax = 2.48)。 (2) 内圧作用時

通常の金属の組合せでは,縦弾性係数の違いの影響はほとんどない。 通常の金属の組合せでは,せん断力の分担は 2 番目と 3 番目のねじ山(おねじとプラグとの接触

箇所から約 45 度の位置)が一番大きい。 本計算モデルの場合,縦弾性係数が極端に違うケース(Case-4,5)を除けば,平均せん断力に

対する倍率は最大で 1.40 である。 おねじの縦弾性係数が極端に大きい場合(Case-5)はおねじはほぼ剛体変形し Pure Shear 状態に

なる。このため,せん断力の分担は初期締付時とほぼ同じになる。 c) まとめ

(1) 本計算モデルの場合,有限要素法で求めた Hmax は 2.48 であり,前記 3.1 に示した計算式から

求めた値 (Case-1 では 2.37,Case-2 では 2.24) にほぼ一致する。 (2) 通常の金属の組合せ(縦弾性係数の比が 0.58~1.7 の範囲)では縦弾性係数の組合せの影響は

ほとんどない。 (3) Pure Shear の状態に近づくと Hmax が大きくなる。

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図 3- 初期締付時の変形(150 倍)とせん断応力分布(Case-1)

図 4-内圧作用時の変形(80 倍)とせん断応力分布(Case-1)

N1 N2 N3 N4 N5 N6 N7

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初期締付時

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

N1 N2 N3 N4 N5 N6 N7

ねじ山(左から右への順)

平均

せん

断力

に対

する

倍率

Case1

Case2

Case3

Case4

Case5

図 5-平均せん断力に対する各ねじ山のせん断力の倍率(初期締付時)

内圧作用時

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

3.0

3.5

4.0

N1 N2 N3 N4 N5 N6 N7

ねじ山(左から右への順)

平均

せん

断力

に対

する

倍率

Case1

Case2

Case3

Case4

Case5

図 6-平均せん断力に対する各ねじ山のせん断力の倍率(内圧作用時)

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4.断続ねじを持つねじ込みふた 急速開閉ふたなど,開閉を頻繁に行う装置のふた部には断続ねじが使われることがある (図 7 参照)。

今回,断続ねじに適用できるよう指針を改定した。(指針 1.2 b),式(14),式(16),4.4.2 の式 参照) 以下に,断続ねじに関連した式を誘導する。

図 7-断続ねじの例

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連続ねじの基本式を展開しながら修正を加えていく。式の展開上,一つのねじ接合形式を取り上げる必

要がある。ここでは,フランジ式を例にとる。

図 8-ねじ継手要素における荷重と変形

a) ねじ山荷重の集中係数 H' の計算

上図において,左端面より任意の距離 x の断面に働くおねじの軸力を Q ,めねじの軸力を R とする。 同様に,距離 x + dx の断面に働くおねじの軸力を Q + dQ ,めねじの軸力を R + dR とする。 おねじ, めねじの dx 間における伸びをそれぞれ du1 ( > 0 ),du2 ( < 0 )とすれば,それらの和 du は

du = du1- du2 = { Q / (E A1)-R / (E A2) }dx = (1 / E ) (Q /A1-R /A2)dx となる。

ここで,

E = おねじ,めねじの縦弾性係数 A1 = おねじの断面積 A2 = めねじの断面積

附属書 A の式(4)より,

du / dx = (1/ K) dF / dx = (1 / E ) (Q /A1-R /A2) -------- (9)

ここで,

F = ねじの軸方向単位長あたりの軸方向ねじ山荷重

式(9) を x で微分すると,

d 2F / dx2= (K / E ) { (1 /A1) (dQ / dx)-(1 /A2) (dR / dx) } 附属書 A の式(1) (F = dQ / dx) 及び式(2) (F = -dR / dx ) を上式に代入すると, d 2F / dx2= (K / E ) (F /A1 + F /A2)= (K / E ) {1 /A1 + 1 /A2) F

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または,

d 2F / dx2 -α2F = 0 , α2 = (K / E ) (1 /A1 + 1 /A2) --------- (10)

式(10) は,ねじ山分布荷重 F を与える基礎方程式であって,一般解は式(11)で与えられる。

F = A cosh αx + B sinh αx --------- (11)

境界条件は次式で与えられる。

x = 0: Q = -(W1-∆W2) , R = 0 x = L: Q = W2 , R = -(W1+∆W1)

--------- (12)

ここで, W1 = 初期締付ボルト荷重 W2 = 運転荷重 ∆W1 = 運転荷重によるボルト荷重の増加分 ∆W2 = 運転荷重によるガスケット荷重の減少分 L = ねじの有効かみあい長さ dF / dx = A α sinh αx + B α cosh αx を式(9)に代入し境界条件を適用すると, (1/ K) (dF / dx)X=0 = (α / K) B = (1 / E ) (Q / A1-R /A2)X=0 = -(W1-∆W2) / (E A1) (1/ K) (dF / dx)X=L= (A α sinh αL + B α cosh αL ) / K = (1 / E ) (Q / A1-R /A2)X=L = (1 / E ) {W2 / A1+(W1+∆W1 ) / A2}

上式から A , B を求め, Fm = (W1+∆W1) / L k' = { A2 / (A1 + A2)}{1-W2 / (W1+∆W1) } a x = θ , α L = θ1

--------- (13)

とおけば,ねじ山荷重の集中係数 H' は,

H' = F / Fm = (θ1 / sinh θ1) { k' cosh(θ1-θ) + (1- k' ) coshθ } ------- (14)

ここまでは,微小要素の変形,適合条件及び力の釣合,ならびに,ねじかみ合い部の境界条件で あり,連続ねじ,切欠ねじに共通に成立つ。

b) ねじ継手の軸方向相対変位 u に対するバネ定数 K ,ねじ継手の特性係数 α ,無次元長さ θ1 の計算

おねじとめねじの軸方向相対変位量 u は参考その 1 の式(17)と附属書 A の式(17)から,

u = (w / E )(h + f + k1) + (w / E )(h + f + k2)

Page 54: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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= {(h + f + k1) + (h + f + k2)}(w / E ) = λ(w / E ) --------- (15) ここで,

λ = (h + f + k1) + (h + f + k2) w = ねじのつるまき線の単位長あたりに作用する軸方向ねじ山荷重 h = ねじ山の曲げ及びせん断によるたわみ係数。 = (1-ν2){B1 ln c-{(c-1)/ c }{B2 + B3 (c-1) / c } f = ねじ山基部の傾きによるたわみ係数。 = 6 (1-ν2) (c-1) (c-T) / (π c2 tan2β) m (m = 0.3 ) k1 = ねじ山荷重の半径方向成分によりおねじに生じる軸方向たわみ係数。 = tanβ [ (D /a) {A / A1-(1 + ν) / 2} tan(α-φ ) -2νA / A1 ] k2 = ねじ山荷重の半径方向成分によりめねじに生じる軸方向たわみ係数。 = tanβ [ (D /a) { A/A2+(1 + ν) / 2} tan(α-φ ) -2νA/A2 ] B1, B2, B3 , T , c については附属書 A の式(29)~式(31)に同じ。 α, β, φ , D , a , A , A1, A2 は指針に同じ。 ω:断続ねじのねじの占有率 ω = 1.0 - つる巻線 1 周長当たりの断続部の割合

ねじ山荷重 F とおねじとめねじの軸方向相対変位量 u との関係式 F = K u に式(15)を代入し F と w の関係式に等置すると,

F = K u = K λ(w / E )= w (ω π D) / a ねじ 1 ピッチ当たりの軸方向力で考えると F a = w (ω π D)となる。 従って,切欠ねじの場合には(πD)の代わりに,ねじ 1ピッチ当たりの連続部のねじ長さωπDを用いる。 上式より

K = ( ω πD / a ) (E / λ) --------- (16) ねじ継手の特性係数 αは,式(10)から, α = { (K / E ) (1 /A1 + 1 /A2) } 0.5 =[{ (ω π D ) / (aλ) }(1 /A1 + 1 / A2) ] 0.5

θ1 は,

θ1 = αL = [{ ( ω π D L.2 ) / (aλ) }(1 /A1 + 1 /A2) ] 0.5

Page 55: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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θ1

2 = (αL)2 = { ( ω π D L.2 ) / (aλ)}(1 /A1 + 1 /A2 ) = { ( ω πD L.2 / a ) /{ λ A1 A2 /(A1 + A2) } ------- (17) 上式を指針の式(14)の形に変形する。 ここで, A1 = π (D.2-D0

2)/4 A2 = π (D3

2-D.2)/4 λ = 2 (h + f ) + k1 + k2 k1 = tanβ [ (D / a ) { A / A1 -(1 + ν)/ 2 }tan(α-φ )-2 νA / A1 ] k2 = tanβ [ (D / a ) { A / A2 +(1 + ν)/ 2 }tan(α-φ )-2 νA / A2 ] A = π D 2/4 上の k1, k2の式で{ }の後ろの tan( )は,tan(β-φ )の代わりに荷重を受ける側のフランク角 α を用いた tan(α-φ )にしている。 λA1 A2 / (A1 + A2) に上式の A1, A2, λ を,k1, k2に上式の A1, A2, A を代入して式を展開すると, λA1 A2 / (A1 + A2) = (π D 2/ 4) (D / a )【 tanβ tan(α-φ )+2 (a / D) [ (h + f ) (D 2-D0

2) (D32-D 2) /

{ D 2 (D3

2-D02) } -ν tanβ ] 】

式(17)に上記の λ A1 A2 / (A1 + A2)を代入すると, θ1

2 = { (ωπD) L2/a }/《 (π D 2/ 4) (D / a )【 tanβ tan(α-φ ) + 2 (a / D) [ (h + f ) (D 2-D0

2) (D32-D 2) / {D 2 (D3

2-D02) } -ν tanβ ] 】 》

整理すると,

( )

( ) ( ) ( )( )( )

−−−

++−

=

βνφαβ

ωθtan2tantan

/4

20

23

2

20

2223

22

1

DDDDDDDfh

Da

DL ------- (18)

c) まとめ

以上から,次の(1)~(3)の置き換えをすれば,ねじ山荷重の集中係数 Hmax,ねじ部のせん断応力

及びねじ谷底部におけるピーク応力を指針の式を使って求めることができる。

Page 56: :サ:ノ:ク:ス:ヒ - KHK:サ:ノ:ク:ス:ヒ 41/59 41 図2-ねじ込みフランジ管継手 図3 はこの場合のねじ山荷重の分布を実験解析した例を示すもので,縦軸にねじ山の番号をとり,横軸に

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(1) ねじ山荷重の集中係数 Hmax の式は指針の式による。 ただし,θ1

2は指針の式(14)の右辺にねじの占有率 ωを乗じたものとする。 (2)ねじ部のせん断応力 τmaxの計算式の分母に出てくるねじの周長にはねじの占有率 ωを乗じる。 (3) ねじ谷底部のピーク応力のうち,σsi , σspm の計算式の分母に出てくるねじの周長にはねじの

占有率 ωを乗じる。 5.設計疲労曲線 a) 使用する設計疲労曲線の出典を次に示す。

指針の図 6 ---- KHK「ねじ構造の強度設計指針(KHK E 014-1986)」 同 図 7 ---- KHK「超高圧ガス設備に関する基準 8) (KHK S 0220 (2004) )」 同 図 8 ---- KHK「ねじ構造の強度設計指針(KHK E 014-1986)」 同 図 9 ---- KHK「超高圧ガス設備に関する基準 (KHK S 0220 (2004) )」 同 図 10 ---- KHK「超高圧ガス設備に関する基準 (KHK S 0220 (2004) )」

今回の改訂で指針の図 7,図 9 及び図 10 に示す設計疲労曲線を追加した。

図 7,図 9,図 10 の詳細については,KHK「超高圧ガス設備に関する基準 (KHK S 0220 (2004) ) 」の

解説を参照されたい。 今回追加した設計疲労曲線,図 7, 図 9の曲線A及び図 10には平均応力の影響が考慮されていないため,

使用する際,計算された応力振幅を平均応力の影響を考慮して補正することが必要である(附属書 C の

解析例参照)。

図 9 と図 10 について補足説明する。 図9----- この図の出典である ASME Code Section Ⅷ Div.2 の疲労曲線では PL+PB+Q の大きさで

3 本の曲線の使い分けをすることになっているが,ねじ構造の場合 PL+PB+Q の値は従来求め

ていないため PL+PB+Q の大きさで 3 本の曲線の使い分けをすることは止めた。 3 本の曲線

のうち一番上の線は PL+PB+Q≦185N/mm2 の場合に使用することになっているが,

PL+PB+Q の計算はしていないため保守的にはなるが採用しなかった。2 番目と 3 番目の線は

共に PL+PB+Q>185N/mm2 の場合に使用することになっているが,その使い分けは2番目

は平均応力の補正をする場合,3 番目は平均応力の補正をしない場合であり,今回はこの 2 本

の曲線を採用することにし PL+PB+Q>185N/mm2 という条件は除いた。 図 10----- この図の出典である KHK「超高圧ガス設備に関する基準」の設計疲労曲線では

材料の強度を考慮して 3 本の曲線を与えているが,一番強度の高い熱処理材 H900 の曲線は 今回採用しなかった。 強度の高い熱処理材 H900 , H925, H1025 は応力集中が高いところ

に使われると割れやすいという損傷事例を考慮したためである。 適用できるのは熱処理材

H1075 , H1100, H1150 であるが,その場合でもピークひずみ範囲<0.01 という適用条件を付

けた。

b) 縦弾性係数による応力振幅の補正 計算された応力振幅は運転温度における縦弾性係数を使って求められたものである。一方,設計疲労曲

線の縦軸の値は室温で実施されたひずみ制御の一軸両振り疲労試験のひずみ振幅に室温における縦弾性係

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数を乗じた仮想的な弾性応力振幅になっている。このため設計疲労曲線を使用するには,計算された応力

振幅を運転温度における縦弾性係数(Ed)で除して運転時のひずみに直して,その後,室温における縦弾

性係数(E)を乗じて室温ベースの応力振幅にする必要がある。 すなわち,縦弾性係数による応力振幅の補正のためには,計算された応力振幅に比(E/Ed)を乗じる必要が

ある。 c) 108回設計疲労強度の規定

今回,108 回設計疲労強度を規定したのは,所定の圧力まで加圧するのに数多くの脈動を伴う圧縮機な

どでは,脈動まで含めた繰返回数が設計寿命中に設計疲労曲線の上限回数 106 回とか 107 回を越えること

があり,このような場合でも疲労評価を可能にするためである。108 回設計疲労強度の詳細については,

KHK「超高圧ガス設備に関する基準」の解説を参照されたい。

d) 設計疲労曲線の代表点のデータ 設計疲労曲線の補間の便を考え表 3 に設計疲労曲線の代表点のデータを示す。代表点から外れる応力振

幅または設計繰返回数は,両対数グラフ上で線形補間して求める。108回まで線形補間が可能である。

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表 3-設計疲労曲線のデータ (回数 対 応力振幅値)

→ 回数 応力振幅値 : N/mm2

10 50 100 500 850 1,000 5,000 10,000 12,000 50,000 100,000 500,000 106 5 *106 107

図6 実線 2,890 1,580 1,200 688 ------ 537 337 303 296* 200 179 151 138 ------ ------

図6 点線 3,990 1,890 1,410 723 ------ 571 330 262 ------ 158 138 92.9 86.1 ------ ------

備考:応力振幅値の右肩に*印のついているところは設計疲労曲線の尖点となるところである。以後、同様

10 50 100 500 1,000 2,000 5,000 10,000 ------ 50,000 100,000 500,000 106 5 *106 107

図7 実線 3,190 1,690 1,330 856 743 664* 508 429 ------ 322 297 263 255 244 242

図7 点線 3,570 1,810 1,390 840 709 ------- 533* 421 ------ 296 267 228 219 206 203

10 50 100 500 850 1,000 5,000 10,000 12,000 50,000 100,000 500,000 106 5 *106 107

図8 4,870 2,380 1,800 1,020 ------- 819 523 441 ------ 319 281 213 195 ------ ------

106 2 *106 5 *106 107 2 *107 5 *107 108 109 1010 1011

図9 A 195 157 136 127 122 118 117 116 114 114

図9 B 195 157 127 113 105 98.4 97.1 95.7 94.3 93.6

10 30 100 300 ------ 1,000 5,000 10,000 35,000 50,000 100,000 500,000 106 5 *106 107

図10 H1075 2,840 1,730 1,170 970* ------ 715 ------ 450 ------ ------ 357 ------ 297 ------ 248

図10 H1150 2,840 1,730 1,170 970* ------ 715 ------ 423 ------ ------ 330 ------ 274 ------ 229

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参考文献 1) " 特認資料 "

2) R.J.Pick and D.J.Burns "Finite Element Analysis of Threaded End Closures of Thick-Walled Vessels" Eng. Solids under Pressure, Proc. of Instn Mech. Engrs 1971 P.15~P.25

3) D.J.Burns, A.Chaaban, G.Mraz "Load, Stress and Fatigue Analysis of Threaded End

Closures" PVP Vol.125 P.63~P.71

4) 小林光男, 金子剛史, 辺見信彦 "圧力容器ねじ端の応力解析(ねじ山形状の応力分布 への影響)" 設計工学 Vol.35 , No.8 (2000 年 8 月) P.30~P.37

5) 田中道彦, 北郷薫 "有限要素法によるねじ締結体の解析" 日本機械学会論文集(C 編) 46 巻 412 号(昭 55-12) P.1491~P.1503 6) 小林光男 , 田中道彦 , 丹羽直毅 , 鈴木健司 , 三浦宏文 , 北郷薫 "高圧設備における

圧力円筒ねじ端の荷重分布の検討(実験)" 高圧ガス Vol.42 No.10(2005) P.39~P.46

7) 佐藤拓哉,李日星 "ねじ構造における縦弾性係数の違いの影響に関する検討" 高圧ガス保安協会 ねじ分科会 第2回分科会資料 2006 年 12 月 8) 高圧ガス保安協会基準「超高圧ガス設備に関する基準( KHK S 0220(2004) )」