agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689ja.pdfは、高調波歪みや混変調があります。imdは帯域内および帯域外のスペクトラム・...

20
Agilent E8267C PSGベクトル信号発生器用 2トーン/マルチトーン・パーソナリティ Application Note 1410 マイクロ波周波数の2トーン およびマルチトーン信号の生成は これまで、容易なことではありま せんでした。 E8267C PSGベクトル信号発生器は、簡 単にマルチトーン信号を作成すること ができます。PSGはI/Q変調器とベース バンド発生器を備えた初のマイクロ波 信号発生器です。このベクトル手法に より、以前はRFドメインでしか利用で きなかった複雑なI/Q変調を容易に作成 することができます。さらに、テスト 信号の確度と再現性が向上し、テスト 時間と測定器のコストが削減できます。 2トーン/マルチトーン・ パーソナリティの主な機能: 非線形歪みテスト信号のセットア ップ/生成 テーブル・エディタ・ユーザ・イ ンタフェースを使用して容易にカ スタム仕様のマルチトーン・パタ ーンを作成可能 内蔵ベースバンド発生器の処理能 力を活用したI/Q波形の瞬時計算 相対トーン間隔とパワーが設定可能 初期位相関係が設定可能(固定ま たはランダム) ピーク・ツー・アベレージ統計の 表示 カスタム構成とI/Q波形の保存/呼 出しが可能 E8267C PSGベクトル信号 発生器の主な機能: 250kHz~20GHzの周波数レンジ 最大+18dBmの出力パワー ベースバンド発生器内蔵 80MHzのRF変調帯域幅 柔軟な波形シーケンサ 信号品質を最適化するたのI/Qオフ セット、振幅、位相の変更が可能 波形再生用の32Mサンプル (160MB)ベースバンド・メモリ 波形保存用の1.2Gサンプル(6GB) ハードディスク LANやGPIBによる接続

Upload: leliem

Post on 16-Jul-2019

216 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

AgilentE8267C PSGベクトル信号発生器用2トーン/マルチトーン・パーソナリティ

Application Note 1410

マイクロ波周波数の2トーンおよびマルチトーン信号の生成はこれまで、容易なことではありませんでした。

E8267C PSGベクトル信号発生器は、簡単にマルチトーン信号を作成することができます。PSGはI/Q変調器とベースバンド発生器を備えた初のマイクロ波信号発生器です。このベクトル手法により、以前はRFドメインでしか利用できなかった複雑なI/Q変調を容易に作成することができます。さらに、テスト信号の確度と再現性が向上し、テスト時間と測定器のコストが削減できます。

2トーン/マルチトーン・パーソナリティの主な機能:

● 非線形歪みテスト信号のセットアップ/生成

● テーブル・エディタ・ユーザ・インタフェースを使用して容易にカスタム仕様のマルチトーン・パターンを作成可能

● 内蔵ベースバンド発生器の処理能力を活用したI/Q波形の瞬時計算

● 相対トーン間隔とパワーが設定可能● 初期位相関係が設定可能(固定またはランダム)

● ピーク・ツー・アベレージ統計の表示

● カスタム構成とI/Q波形の保存/呼出しが可能

E8267C PSGベクトル信号発生器の主な機能:

● 250kHz~20GHzの周波数レンジ● 最大+18dBmの出力パワー● ベースバンド発生器内蔵● 80MHzのRF変調帯域幅● 柔軟な波形シーケンサ● 信号品質を最適化するたのI/Qオフセット、振幅、位相の変更が可能

● 波 形 再生用の 3 2 M サ ン プル(160MB)ベースバンド・メモリ

● 波形保存用の1.2Gサンプル(6GB)ハードディスク

● LANやGPIBによる接続

Page 2: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

2

IMDとは? . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3

IMDの特性評価の方法 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4

概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4

位相関係への依存 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4

アナログ・テスト信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .7

ベクトル・テスト信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .9

アナログ・テスト信号対ベクトル・テスト信号 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .12

PSGベクトル信号発生器2トーン/マルチトーン・パーソナリティ . . . . . . . .14

2トーン・パーソナリティ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .15

マルチトーン・パーソナリティ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .16

仕様 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .18

エンハンスド・マルチトーン用Signal Studio . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .18

接続性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .19

推奨構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .19

オーダ情報 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .19

PSGファームウェアのアップデート . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .19

関連カタログ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .20

参考資料 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .20

目次

Page 3: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

3

IMDとは?

通信業界では2トーンやマルチトーン信号を使用して、コンポーネント、デバイス、サブシステムおよびシステムの各レベルで、非線形歪みのテストを行っています。相互変調歪み(IMD)は特別なタイプの非線形歪みです。これ以外の非線形歪みには、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分間の望ましくない相互変調の結果として生じます。相互変調は、妨害成分や非線形伝達関数を持つデバイスにより生じます。図1は、非線形デバイスの入力に周波数f1とf2の2トーンがあるときに生じるIMD成分を示しています。

図1. 非線形デバイスにより通常発生する2トーンIMD成分

非線形歪みはイコライゼーション・テクニック(線形現象にのみ働く)を使用して補正することはできません。この結果、コンポーネントからシステム・レベルまでの非線形動作の影響を定量的に評価することは、送信機や受信機の設計や検証プロセスで重要な部分となっています。高レベルのIMDは、システムの性能を低下させるだけでなく、隣接チャネルと干渉し、大きな非線形を示します。帯域内IMDとは、テスト対象のコンポーネント、デバイスまたはシステムのチャネル帯域幅内に入る相互変調成分です。このタイプの歪みは、フィルタリングできず、必要な信号に直接干渉するため、特に望ましくありません。また、帯域外歪みの発生も、評価して対処しなければならない(近くのスペクトラムの専門家に聞いてください)好ましくない動作ですが、一般に簡単なフィルタリングで問題を修正することができます。

振幅�

周波数�f1 f2 2f1 2f2

2次IMD�(f2-f1)�

5次IMD�(3f1-2f2)�

3次IMD�(2f1-f2)�

5次IMD�(3f2-2f1)�

3次IMD�(2f2-f1)�

2次IMD�(f1+f2)�

2次高調波�

3次高調波�

代表的なチャネル帯域幅�

3f1 3f2

Page 4: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

4

IMDの特性評価の方法

概要図2に示すように、被試験デバイス(DUT)にマルチトーン・テスト信号を印加して、DUTの出力をスペクトラム・アナライザで調べることによりIMDを測定します。たとえば、2トーン相互変調歪みは、増幅器の非線形動作を特性評価するときに行われる一般的な測定です。DUTの通過帯域内の、パワーが等しい2つのディスクリート・トーンをDUTの入力に印加します。その結果生じた高調波および相互変調歪み成分をスペクトラム・アナライザで測定します。5次や6次のIMDや高調波のような低レベルの歪み成分を測定する場合は、広いダイナミック・レンジを備えたスペクトラム・アナライザが適しています。1これらの測定を基に3次インターセプト・ポイント(TOI)のような性能指数を求めることができます。

図2. 2トーン・テスト信号を使用してIMD成分を測定するための従来のセットアップ

デバイスやシステムの帯域幅が広い場合は、一般にマルチトーン信号を使用して非線形歪みの特性を評価します。DUTの帯域幅にわたって複数のトーンを配置することにより、通過帯域の特性評価をより効率よく行うことができ、クレスト・ファクタがより高い信号でDUTにストレスをかけることができます。

位相関係への依存特定の周波数で測定されるIMDは、テスト信号を構成するトーンの位相関係に大きく依存して、変化します。図3に示すように、時間軸上の各ポイントでトーンがどのように加算されるかがその位相分布によって決まることを考えると、このことが予測できます。コンポジット信号のタイム・ドメインのプロファイルでは、個別のトーンが強め合って加算されるか、弱め合って加算されるかにより、ピーク・ツー・アベレージの比が異なります。

1. このドキュメントのすべての測定に、AgilentPSAパフォーマンス・スペクトラム・アナライザ・シリーズが使用されています。ダイナミック・レンジ、速度、確度についての最先端技術を統合したPSAを使用しました。PSAの歪み測定機能を最適化する方法など、PSAシリーズのスペクトラム・アナライザの追加情報については、このドキュメントの最後にある関連カタログのセクションを参照してください。

f1

f2

DUT スペクトラム・�アナライザ�Σ

信号発生器#1

信号発生器#2

Page 5: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

図3b

複数の周波数を加算する場合、周波数成分の位相関係がコンポジット信号のタイム・ドメイン・プロファイルやピーク・ツー・アベレージ特性に影響を及ぼします。図3aは、初期位相がすべてのトーンで同じ場合のコンポジット信号を示しています。図3bは、初期位相がランダムに設定されているトーンのコンポジット信号を示しています。

IMDがトーンの位相関係に依存していることは明らかですが、ある位相でのIMDテスト結果から、トーンの位相関係やコンポジット信号のピーク・ツー・アベレージ比を基にして、別の位相におけるIMDテスト結果を予測することはできません。すなわち、IMDテストの結果は統計的な意味ではトーンの位相関係とは強い相関がないということです。つまり、DUTの通過帯域内でスペクトル成分の位相関係が時間に対して変化するため、DUTの非線形歪み特性は予測不可能な変化をします。この結果、単一の位相セットによるテストでは、IMDを適切に評価するための十分な情報が得られないことが分かります。

実際の動作条件下で取りうる、DUTの通過帯域内のスペクトル成分のあらゆる位相関係(すなわち、あらゆる位相セット)を使用して、デバイスの非線形歪み性能の評価を試みることは、非現実的です。では、ワースト・ケースのデバイス・ストレス条件をシミュレートするために、結果的にクレスト・ファクタが高くなるコンポジット信号を使用してテストしたらどうでしょうか?

Σ DUT

y=+1� � � �0� � � �

y=-1

y1(t)=sin(ω1t)�y1(0)=0

y2(t)=sin(ω2t)�y2(0)=0

y3(t)=sin(ω3t)�y3(0)=0

y4(t)=y

1+y

2+y

3

時間(t)�

y=+1� � � �0� � � �

y=-1

時間(t)�

y=+1� � � �0� � � �

y=-1

時間(t)�

y=+3� � � �0� � � �

y=-3

時間(t)�

5

Σ DUT

y=+1� � � �0� � � �

y=-1

y5(t)=sin(ω1t+21 )゚�y5(0)=-0.3584

y6(t)=sin(ω2t)�y6(0)=0

y7(t)=sin(ω3t-157.5 )゚�y7(0)=0.3827

y8(t)=y5+y6+y7

時間(t)�

y=+1� � � �0� � � �

y=-1

時間(t)�

y=+1� � � �0� � � �

y=-1

時間(t)�

y=+3� � � �0� � � �

y=-3

時間(t)�

図3a

Page 6: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

ランダム位相セット23次IMD-60.22dB

6

この信号の生成には、コンポジット・テスト信号の各ディスクリート・トーンの位相をそろえて、個別のトーン・パワーを100%強め合って加算するということが含まれます。その結果、DUTは、同様の負荷条件となる最大のピーク・ツー・アベレージ比を受けます。このテストにより信頼性の高いデバイスが得られますが、最も一般的な動作条件を代表しているものではありません。実際には、特に位相変調信号を考えた場合、DUTの通過帯域内のスペクトル成分は時間に対して連続的にランダムに変化します。

より多くのトーンがテスト信号に追加されると、全トーンの位相がそろう確率は著しく低くなります。ピーク・パワーの生成確率が低下すると、この事象に基づく設計上のトレードオフがますます非現実的になります。この結果、最大ピーク・ツー・アベレージ比の条件に対応するために必要な設計努力が根拠のないものなります。それでも、デバイスがワースト・ケースのピーク・ツー・アベレージ比を処理できるか安全のために知りたい場合は、後で説明するベクトル信号手法により、位相を容易にそろえることができます。

さらに重要なことは、ピーク・ツー・アベレージ比が高いということが、全周波数で高レベルのIMDが生じることを意味しないことです。図4に示すように、DUTによって生成されるIMDのレベルはマルチトーン・テスト信号の位相関係に基づいて変化します。トーンの初期位相がそろっている場合(すなわち、ワースト・ケースのピーク・ツー・アベレージ比)、3次IMD成分は-52.89dBcとなっていることに注目してください。しかし、トーンがランダムな初期位相設定の場合、ランダム位相セット#1では3次IMD成分が-48.65dBc、ランダム位相セット#2では3次IMDが-60.22dBcとなっています。ワースト・ケースのピーク・ツー・アベレージ比(すなわち、定位相セット)が最大の3次IMDレベルとはならないことが明らかです。位相のそろったトーンのみを使用してテストが行われると、ランダム位相セット#1と関連したIMD性能の問題は明らかにされません。

定位相セット3次IMD-52.89dB

ランダム位相セット13次IMD-48.65dB

図4. 異なる位相セットのテスト信号を使用した場合の3つの異なるIMD測定の結果

Page 7: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

7

ワースト・ケースのピーク・ツー・アベレージ比はワースト・ケースのIMDレベルを意味せず、IMDはテスト信号の位相関係によって大きく変わります。このため、正確にIMD性能を評価するには、ランダム位相セットによる複数のテスト信号を使用して収集したIMDテスト結果を統計的にサンプリング解析しなければなりません。ある信頼度レベルで実際の動作条件を適切に表わす複合テスト結果を得るために、どれだけのランダム位相のテスト結果を平均化する必要があるかは、中心極限定理から求めることができます。後で説明しますが、ベクトル信号手法を使用して、ランダム位相セットのマルチトーン信号を生成することにより、このテストを容易に実行できます。IMD性能を解析するための統計的なテクニックについては、関連カタログのセクションのAgilent Technologiesのカタログを参照してください。

アナログ・テスト信号

IMDを測定するための従来のアナログ・セットアップを図5に示します。このセットアップでは、個別の連続波(CW)信号発生器からの2つの信号をコンバイナで加算して2トーン・テスト信号を作成しています。複数のアイソレータを使用して、確実に信号発生器同士が互いに干渉しないようにしているため、テスト装置に起因するIMDは最小限に抑えられています。代表的なアイソレータでは、順方向パスでの0.5~1dBの損失と引き換えに、逆方向パスに20dBのアイソレーションが得られます。各信号発生器の出力に付けた増幅器を使用して、信号発生器のレベルを変更せずに、相対トーン・パワーを微調整します。これにより、信号源でのIMDは一定に保たれます。ロー・パス・フィルタを使用してテスト信号の帯域外スペクトル成分を最小限に抑えます。信号を加算するコンバイナは損失が少なく十分なアイソレーションがあり、テスト信号にわずかな歪みしか与えないものを使用する必要があります。コンバイナの出力にある可変アッテネータを使用して、各信号発生器を手動で調節せずに、DUTの入力におけるコンポジット信号のレベルを変更することにより、信号源のIMDを一定に保ちます。

図5. 2トーンIMD測定を実行するための従来のアナログ・セットアップ

IMD測定を実行するために使用される従来のマルチトーン信号の生成方法は、特にトーン数が増えるにつれて、測定器の数が多くなります。複数台の信号発生器からのCW信号(トーン)をすべて加算して、目的のテスト信号を作成します。図6は複数台のCW信号発生器を使用したマルチトーンIMD測定のセットアップを示しています。

Σ

アイソレータ�

AMP LPF

PSG CW信号発生器�

PSG CW信号発生器�

アッテネータ�DUT

PSAスペクトラム・アナライザ�

コンバイナ�

Page 8: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

8

図6. マルチトーンIMD測定を実行するための従来のアナログ・セットアップ

この方法は長年使用されてきましたが(主に適切な代わりの方法がないという理由で)、テストの総コストが高く、かなり複雑なテスト・セットアップです。2トーン・テスト・セットアップの場合と同様に、DUTの入力の前で互いに相互変調しないように、各CW信号発生器間に十分なアイソレーションがあることが重要です。

このテスト・セットアップに関する主な欠点は、CW信号発生器の位相を体系的に初期化できないことです。5分間から10分間、スペクトラム・アナライザに表示されるIMD性能の変動を観察していると、CW信号発生器の位相関係が時間に対して変化していることがわかります。前に説明したように、これは異なる位相セットによるIMD結果を収集するには望ましいことです。しかし、CW信号発生器が互いにゆっくりとドリフトし、体系的に初期化することはできません。この結果、従来の方法では、実際の動作条件の統計的なテスト結果を得るために非常に長い時間がかかります。

Σ

アイソレータ�

AMPLPF

アッテネータ�

DUT

PSAスペクトラム・アナライザ�

コンバイナ�

Σ

Σ

外部機器�PSG CW信号発生器のバンク�

Page 9: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

9

ベクトル・テスト信号

マルチトーン信号を作成するために複数のアナログ信号発生器からのCW信号を加算するのではなく、ベクトル手法を用いた1台の信号発生器で、テスト信号を生成することができます。PSGベクトル信号発生器では、内蔵ベースバンド発生器とI/Q変調器を利用して、固定またはランダムの初期位相でマルチトーン信号を作成できます。図7に、PSGベクトル信号発生器を使用してマルチトーン・テスト信号を生成するハードウェア・セットアップの概略を示します。

図7. ベクトル手法を使用してマルチトーン・テスト信号を生成するためのセットアップの概略

この手法は、複雑な変調を使用して正確で再現性の高いマルチトーン・テスト信号(最大64トーン)を生成します。このテスト信号は、各トーンの特性を個別に設定して、帯域内や帯域外の歪み測定を実行するように容易に構成できます。マルチトーン波形はベースバンド周波数で作成されますが、I/Q変調器を使用して目的の搬送波周波数にアップコンバートします。この概念を説明するために、図8の例について考えてみます。

Σ

アイソレータ�

AMPLPF

コンバイナ�

外部機器�PSG CW信号発生器のバンク�

I

Q

E8267C PSGベクトル信号発生器�内蔵べースバンド発生器�

Page 10: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

10

図8. I/Q変調器を使用したマルチトーン信号の生成1

変調波が同相(I)パスに供給され、ゼロが直交(Q)パスに供給される場合(図8a)、2つのトーンが搬送波周波数を中心に対称に生成されることに注目してください。これは、通常はDSBSC-AM(両側帯波抑圧搬送波振幅変調)と呼ばれています。この下の図8bと図8cは、どのようにしてシングル・トーンをつくることができるかを示しています。個別のトーン・パラメータ(すなわち、振幅、位相、周波数)を完全に制御してディスクリート・トーンを生成するには、変調波をIとQの両方のパスに供給します。Qパスの変調波の符号によって、トーンは搬送波周波数より高い周波数に現れたり(図8b)、低い周波数に(図8c)に現れたりします。IパスとQパスの両方で追加の周波数成分を変調波に加えることにより、この概念を拡張してマルチトーン波形を生成することができます。

1. 次の三角関数の式を使用して、コンポジット信号s(t)を求めることができます。s(t):2cos(x)cos(y)=cos(x-y)+cos(x+y)および2sin(x)sin(y)=cos(x-y)-cos(x+y)

xa(t)=cos(wot)�

Σ-90゜�

ya(t)=0

ミキサ�

ミキサ�

I

Q

sa(t)=cos(wct)cos(wot)�

cos(wct)�

sin(wct)�

=1/2[cos(wc-wo)t+cos(wc+wo)t]�

xb(t)=cos(wot)�

Σ-90゜�

yb(t)=-sin(wot)�

ミキサ�

ミキサ�

I

Q

sb(t)=cos(wct)cos(wot)-sin(wct)sin(wot)�

cos(wct)�

sin(wct)�

=cos(wc+wo)t

xc(t)=cos(wot)�

Σ-90゜�

yc(t)=+sin(wot)�

ミキサ�

ミキサ�

I

Q

sc(t)=cos(wct)cos(wot)+sin(wct)sin(wot)�

cos(wct)�

sin(wct)�

=cos(wc-wo)t

�(fc-fo) fc (fc+fo)周波数�

|sa(f)|�

|sb(f)|�

|sc(f)|�

�(fcfc (fc+fo)周波数�

�(fc-fo) fc 周波数�

(8a)

(8b)

(8c)

Page 11: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

11

信号は内蔵ベースバンド発生器を使用してディジタル的に作成されるため、現在では相対トーン間隔、相対トーン・パワー、初期トーン位相をディジタル精度で制御できます。Agilentのベクトル・ソリューションを使用して、測定器のフロント・パネルから、またはGPIBやLANインタフェースを使用してリモートでこれらのパラメータを設定することができます。この手法では、テスト信号の構成時に、固定またはランダムの初期位相を選択できます。この機能を内蔵ベースバンド発生器のシーケンス機能と組み合わせることにより、一連のランダム位相セットによる効率的なテストを実現できます。図9は2トーンおよびマルチトーンIMD測定を実行するためのベクトル・テストのセットアップを示しています。

図9. 2トーンおよびマルチトーンIMD測定を実行するためのベクトル・テストのセットアップ

I

Q

DUT

PSAスペクトラム・アナライザ�

E8267C PSGベクトル信号発生器�内部ベースバンド発生器�

アイソレータ�

Page 12: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

12

アナログ・テスト信号対ベクトル・テスト信号

以下は、マルチトーン・テスト信号を生成するために、従来のアナログ手法と新しいベクトル手法を使用した場合のそれぞれの主な利点と欠点をまとめたものです。いずれの手法もマルチトーン信号を生成するために使用できますが、以下に説明されているようにベクトル手法を使用する場合には多数の利点があります。しかし、多数の利点があるとともに、ベクトル手法を用いてマルチトーン・テスト信号を生成する場合に生じる新しい測定上の問題もいくつかあります。以下にこれらの問題を示しますので、ベクトル手法を使用して歪み測定を行う場合は注意してください。

なぜ、従来のアナラグ信号手法を使用するのか?十分に確立されたテスト手法:マルチトーン・テスト信号を実現するためには、複数台のCW信号発生器からの信号を加算することが従来から必要でした。これは一般的なテスト手順で標準的な市販のテスト装置やアクセサリを使用して実現することができます。

アナログ手法での問題複雑なテスト・セットアップ:テスト信号は標準的なテスト機器を使用して実現できますが、テスト信号を生成するために必要な測定器の数を考えると、ハードウェアのセットアップが複雑になります。複雑な測定器構成のために、非線形歪み測定を実行するための測定器のセットアップにテスト時間の大半を消費してしまいます。

信号パラメータを簡単に変更できない:個別の信号発生器で各トーンを生成しているため、トーンを増やしたり減らしたりする場合、テスト・セットアップのハードウェアの変更が必要です。また、セットアップの後、各信号発生器の周波数やトーン・パワーを手動で調整しなければなりません。

ランダム位相セットの生成が難しい:ほとんどのCW信号発生器には、信号の位相を体系的に設定する機能がありません。この結果、従来のアナログ手法を使用してランダム位相セットを生成することは困難です。

高いテスト・コスト:複数台の測定器によるテスト・セットアップと測定を実行するために必要な時間のために、アナログ手法はテスト・コスト全体が高くなります。テスト信号に追加するトーンが増えるにつれ、測定器のコストとテスト時間が増加します。

なぜ、ベクトル信号手法を使用するのか?テスト手順の簡略化:PSGベクトル信号発生器のユーザ・インタフェースでいくつかの基本的な波形パラメータを設定するだけで、カスタム仕様の2トーンおよびマルチトーンIMDテスト信号を生成することができます。

信号パラメータの制御:思いのままにトーンをオン/オフにしたり、相対トーン間隔およびパワーのような一般的な信号パラメータを容易に変更したりできます。また、固定またはランダムの初期位相分布をディジタル確度で設定できます。

再現性の高いテスト・セットアップ:再現性の高いテスト結果を実現するための最初のステップは、再現性の高いテスト信号を見つけることです。ベクトル手法では、テスト波形を容易に保存してすばやく呼出して再生できるため、DUTは毎回、同じテスト信号で測定されます。

Page 13: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

13

正確で有意なテスト結果:ランダムな初期位相によるマルチトーン信号の結果は、実際の動作条件を適切にシミュレートするために必要です。ランダム初期位相は測定器のフロント・パネルから直接、またはGPIBやLANインタフェースを使用してリモートで作成することができます。

時間の節約:目的のテスト信号のセットアップにかける時間を減らして、測定にかける時間を増やすことができます。複数の位相によるテストを最適化するために、ベースバンド発生器の波形シーケンス機能を使用して波形切り換え時間を最小限にすることができます。

コストの削減:従来は複数のアナログ信号発生器と信号コンバイナが必要だったマルチトーン・テスト信号を、この信号発生器1台で作成できます。

ベクトル手法での問題点

利用可能なパワー:1台の信号発生器でマルチトーン信号を生成する場合、信号発生器からの全パワーは相対トーン・パワーの設定に基づいてオンになっているトーンに分割されます。この結果、従来のアナログ手法に比べるとトーンあたりのパワーは小さくなります。また、トーンの数が増えるにつれて、コンポジット信号のピーク・ツー・アベレージ比が大きくなります。これは、コンポジット信号パワーを大きくするために使用するすべての信号発生器と増幅器で考慮する必要があります。ピーク・パワーを調整するには、信号発生器の出力パワー・レベルを減らす必要があります。これにより、追加の歪みが信号発生器のオーバードライブによって生じることがなくなります。外部増幅器を使用する場合も、同様に対処します。さらに、マルチトーン信号に対応するために十分に広くフラットな通過帯域の線形増幅器を使用して、追加の歪みがDUTの入力より前で発生するのを回避する必要があります。

搬送波フィードスルー:I/Q変調器を使用して目的のマルチトーン信号を作成するので、偶数個のトーンの場合は、わずかに搬送波フィードスルーが現れます(奇数個のトーンの場合は、搬送波周波数に常に配置されるトーンがあります)。トーン間隔と等しいインターバルではなく、トーン間隔のインターバルの1/2に相互変調成分が生じるので、高いレベルの搬送波フィードスルーは好ましくありません。搬送波フィードスルーは消去できませんが、IおよびQ利得オフセットを最適化する簡単な反復手順を使って最小限に抑えることができます。この手順についての情報は、E8267C PSG User's Guideのマルチストーン・セクションのI/Q調整手順を参照してください。

DACによるイメージ:各トーンが搬送波周波数に対して非対称パターンでオンになる場合、DACによるイメージが発生します。イメージは、I/Q変調器の入力でわずかに直交位相から外れているIおよびQ信号の結果として生成されます。非対称トーン・パターンを使用する場合は、I/Q調整メニューの直交位相スキュー設定を少し調節することにより、イメージを最小限にすることができます。

相対トーン間隔:トーン間隔は内蔵ベースバンド発生器の80MHz RF変調帯域幅までに制限されています。最大相対トーン間隔は80MHzを(N-1)で割って求めることができます。ここで、Nはトーン数です。最大相対トーン間隔は、全トーンがオンであると仮定して計算されます。いくつかのトーンがオフになっている場合は、増加したトーン間隔は最大相対トーン間隔の複数倍となります。たとえば、5トーンがオンの場合、 最大相対トーン間隔は20MHzです。その後、トーン2がオフになると、トーン1からトーン3の間のトーン間隔は40MHzになります。相対トーン間隔は最小100Hzに設定できますが、トーン間隔はトーンごとに任意に設定することはできません。

Page 14: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

14

PSGベクトル信号発生器2トーン/マルチトーン・パーソナリティ

基本的に、2トーンおよびマルチトーンのいずれのパーソナリティも同様に操作できます。最初に、ユーザは信号パラメータ(トーン間隔、初期位相など)を設定し、アプリケーションを起動します。ベースバンド発生器は、マルチトーン信号を表わすI/Qサンプル・ポイントを求めて、再生用のベースバンド・メモリにロードします。その後、複雑なベースバンド信号がI/Q変調器に送られ目的の搬送波周波数にアップコンバートされます。トーンはPSGの搬送波周波数を中心に対称に配置され、全パワーは相対トーン・パワー設定に基づいて表1のようにトーン間で分配されます。

一般的なマルチトーン構成

トーン数 コンポジット・ コンポジット・ トーン毎の 最大相対トーンマルチトーン信号の マルチトーン信号の 最大平均パワー3 間隔4

ピーク・ツー・ 最大平均パワー2

アベレージ比1

2 3dB 15dBm 12dBm 80MHz

8 9dB 9dBm 0dBm 10MHz

16 12dB 6dBm -6dBm 5MHz

32 15dB 3dBm -12dBm 2.5MHz

64 18dB 0dBm -18dBm 1.25MHz

表1. 一般的なマルチトーン構成に対するPSGのマルチトーン信号生成機能

PSGパーソナリティの主な利点はテスト時間の短縮です。もちろん、オンにするトーン数が増えると計算時間は長くなりますが、波形構築速度はほとんど無視できる程度のものです。PSGの高速マイクロプロセッサには、64トーンがオンになっている波形をほんの数秒で計算する能力があります。また、PSGの波形の保存/呼出し機能を利用することにより、波形構築時間を1回の操作にまで短くすることもできます。

アプリケーションで作成したI/Q波形を、測定器の不揮発性メモリに保存して、素早く呼び出して再生できます。予めテスト信号を構築しておくと、いつでも呼び出したり、最高速の波形切り換え速度を実現するために、ベースバンド発生器の波形シーケンシング機能を使用することができます。この機能を使用して、複数のテスト波形をベースバンド・メモリにロードし、波形を再生する時間と長さを任意に定義することができます。すべての波形が予めベースバンド・メモリにロードされているため、再生中の波形の切り換え速度はわずかに数クロック・サイクルかかるだけです。

また、測定器のユーザ・インタフェースまたはリモートでPSGのI/Q調整機能を使用して変調器のアッテネータを微調整することにより、信号品質を最適化することもできます。信号品質の最適化についての情報は、PSGのマニュアルを参照してください。2トーンおよびマルチトーン・アプリケーションの全機能は、直接測定器のフロント・パネルからアクセスすることも、LANやGPIBインタフェース経由でリモートで使用することもできます。

1. トーンの初期位相が等しいと仮定。2. コンポジット信号のピーク・ツー・アベレージ比を調整するためにPSGの最大パワー(+18dBm)を減少させると仮定。

3. コンポジット信号のピーク・ツー・アベレージ比を調整するためにPSGの最大パワー(+18dBm)を減少させ、相対トーン・パワーを0dBに設定。

4. トーンはPSG搬送波周波数を中心に対称的に配置。

Page 15: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

15

2トーン・パーソナリティ2トーン信号は非線形歪みの解析のために最も広範に使用されています。PSG 2トーン・パーソナリティにより、図10のインタフェースにより、パワーと初期位相が等しい2トーンを迅速に生成できます。アプリケーションで調整可能な信号パラメータは、マルチトーン・パーソナリティのパラメータのサブセットとなります。最小限の機能セットは、基本的な2トーン信号の生成を容易にすることが目的であり、一般的な測定を効率良く行うことができます。内蔵ベースバンド発生器のRF変調帯域幅は、最大80MHzのトーン間隔に対応します。

A. 搬送波周波数を設定● 250kHz~20GHz

B. PSG信号の振幅を設定● パワーを各トーンに等分配

C. 相対トーン間隔を設定● 100Hz~80MHz

D. 搬送波周波数を中心にトーンを対称的に配置、またはオフセットし

て搬送波フィードスルーをマスクする

図10. 2トーン・パーソナリティのユーザ・インタフェース

A B

C

D

Page 16: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

16

マルチトーン・パーソナリティPSGマルチトーン・パーソナリティは、図11に示すように、2~64トーンのマルチトーン信号に対して、フル機能の柔軟性の高い構成メニューを提供します。図12の帯域内または帯域外のIMDテスト信号を、操作しやすいテーブル・エディタを使って迅速に構成できます。トーンのオン/オフ、相対トーン間隔、パワー、初期位相の変更は、測定器のフロント・パネルまたはGPIBやLANインタフェース経由でリモートで容易に行うことができます。

A. 搬送波周波数を設定● 250kHz~20GHz● 搬送波周波数を中心にトーンを対称的に配置

B. PSG信号の振幅を設定

C. トーン数を設定● 2~64

D. 相対トーン間隔を設定● 100Hz~80MHz● アクティブなトーン数に依存

E. 固定またはランダムの初期位相を選択

F. 相対トーン・パワーの配分を設定● 0dB~-40dB● 全パワーを各トーン間で分配

G. 初期トーン位相を設定/表示

H. 個別トーンをオン/オフ

I. カスタム仕様のマルチトーン・セットアップの保存および再ロード

J. マルチトーン信号のCCDF特性をプロット

図11. マルチトーン・パーソナリティのユーザ・インタフェース

A B C

D

E

I

JF G H

Page 17: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

17

図12. 帯域内および帯域外歪み測定のためのマルチトーン信号

信号のピーク・ツー・アベレージ特性は、CCDF(相補累積分布関数)をPSGユーザ・インタフェースに直接プロットすることにより素早く求めることができます。これは、信号をDUTに印加する前に信号のピーク・パワーを知る必要がある場合に便利です。また、パワー増幅器などのデバイスの設計上のマージンのトレードオフを調べることができます。図13のCCDF曲線は、DUTが平均パワーからのパワー偏移を受ける時間%をプロットしています。CCDF曲線についての情報は、関連カタログのセクションを参照してください。

帯域外歪み

63トーン信号

初期位相=0°の全トーンによるPSGのCCDFプロット

初期位相=ランダムの全トーンによるPSGのCCDFプロット

コンポジット信号パワーが平均パワー以上になる時間%

平均パワーからのピーク・パワー偏移

コンポジット信号パワーが平均パワー以上になる時間%

平均パワーからのピーク・パワー偏移

ノッチ 帯域内歪み

図13. 位相がそろった63トーン信号によるCCDF曲線とランダム位相の63トーン信号によるCCDF曲線

Page 18: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

18

仕様

2トーンIM歪み

250kHz~3.2GHz <-45dBc、RFレベル<0dBm(代表値)

>3.2GHz~20GHz <-55dBc、RFレベル<0dBm(代表値)

Ref-4 dBmSampLog10dB/

LgAv10W1 S2S3 FC

(f):#f>50K#Swp

#Atten 6 dBMkr1 -20.00 MHz

-62.275 dB

Center 20.000 00 GHzRes BW 470 kHz VBW 470 kHz

Span 50 MHzSweep 1 ms

Marker-20.000000 MHz-62.275 dB

Ref 0 dBmNormLog10dB/

LgAv W1 S2S3 FC

(f):#f>50K#Swp

Atten 10 dBMkr1 -38.67 MHz

-41.19 dB

Center 20.000 00 GHz#Res BW 3 kHz VBW 3 kHz

Span 80 MHzSweep 10.72 s

Marker-38.670000 MHz-41.19 dB

Ref-4 dBmSampLog10dB/

LgAv10W1 S2S3 FC

(f):#f>50K#Swp

#Atten 6 dBMkr1 -8.00 MHz

-59.104 dB

Center 20.000 00 GHzRes BW 180 kHz VBW 180 kHz

Span 20 MHzSweep 2.36 ms

Marker-8.000000 MHz-59.104 dB

マルチトーンの測定結果 イメージ除去の測定結果>3.2GHz

マルチトーン

エンハンスド・マルチトーン用Signal Studio

2トーンおよびマルチトーン・テスト信号の信号品質を向上させるための、E8267CPSGベクトル信号発生器用のオプション・ソフトウェアがあります。エンハンスド・マルチトーン用Signal Studioは、E8267Cのオプション408で、PSGで生成するマルチトーン・テスト信号のIMD抑圧、RFフラットネス、イメージ抑圧および搬送波フィードスルー性能を大幅に向上させます。反復補正アルゴリズムに基づいてI/Q波形にプリディストーションを印加することにより、信号品質の向上を実現しています。このアプリケーションの情報については、Signal Studio for Enhanced

Multitone Technical Overview(カタログ番号5988-5639EN)を参照してください。

Page 19: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

19

接続性

E8267C PSGベクトル信号発生器には、測定セットアップを簡略化するための広範なI/O機能があります。10BaseT LANまたはIEEE-488 GPIBを使用したSCPIコマンドによる、ファームウェアのアップグレード、測定器への波形のダウンロード、測定器のリモート制御が可能です。LAN経由での制御には、AgilentのI/OライブラリのLバージョンが必要です。これは、AgilentのWebサイトwww.agilent.com/find/iolibからダウンロードできます。1

推奨構成

E8267C PSGベクトル信号発生器(以下のオプション付き):E8267C-520:250kHz ~ 20GHz周波数レンジ(必須)E8267C-002:32Mサンプル・メモリ付き内蔵ベースバンド発生器(必須)E8267C-UNR:位相雑音性能の向上E8267C-005:6GB内蔵ハードディスク・ドライブE8267C-408:エンハンスド・マルチトーン用Signal Studio

その他の構成でもご利用いただけます。E8267C PSGのオプションについての詳細は、関連カタログのセクションにあるPSG Vector Signal Generator Configuration

Guideを参照してください。

オーダ情報

測定器を新規に購入する場合2トーン・パーソナリティとマルチトーン・パーソナリティは、内蔵ベースバンド発生器を購入すると無料で提供されます。内蔵ベースバンド発生器はAgilentE8267C PSGベクトル信号発生器のオプションE8267C-002としてオーダできます。

歪みのないマルチトーンI/Q波形を作成するには、エンハンスド・マルチトーン用Signal Studioソフトウェアが必要です。これは、Agilent E8267C PSGベクトル信号発生器のオプションE8267C-408としてオーダできます。このソフトウェアを使用するには、PC(LANまたはGPIBカードと、最新版のWindows OS付き)とAgilent PSAシリーズ・スペクトラム・アナライザが必要です。追加情報については、Signal

Studio for Enhanced Multitone Technical Overview(カタログ番号5988-5639EN)を参照してください。

サポートが必要な場合は、担当営業が、お客様が新しい測定器を適切に構成できるように支援します。問合せ先の情報については、www.agilent.com/find/assistをご覧ください。

アップグレード・キット2トーン・パーソナリティとマルチトーン・パーソナリティは、内蔵ベースバンド発生器を購入すると無料で提供されます。現在、E8267C PSGベクトル信号発生器をすでにお持ちで、内蔵ベースバンド発生器のアップグレード・キットの購入を希望される場合は、オプションE8267CK-002をご注文ください。

また、現在、ベースバンド発生器付きのE8267C PSG ベクトル信号発生器をお持ちで、エンハンスド・マルチトーン用Signal Studioアプリケーションに対応できるアップグレード・キット(ライセンス・キー)の購入を希望される場合は、オプションE8267CK-408をご注文ください。

PSGファームウェアのアップデート

ファームウェア・アップデートは、www.agilent.com/find/upgradeassistantからダウンロードできます。

1. Agilent製以外のGPIBインタフェース・カードをご使用の場合は、AgilentのI/Oライブラリのインストール手順書に従ってください。

Page 20: Agilentliterature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7689JA.pdfは、高調波歪みや混変調があります。IMDは帯域内および帯域外のスペクトラム・ リグロース(つまり、歪み)の主な原因であり、信号を構成する複数の周波数成分

www.agilent.com/find/emailupdates-Japan

Agilentからの最新情報を記載した電子メールを無料でお送りします。

電子計測UPDATE

関連カタログ

Brochures『Agilent PSG 信号発生器』カタログ番号 5988-7538JA

Data Sheet『Agilent E8267C PSG ベクトル信号発生器』カタログ番号 5988-6632JA

Configuration Guide『Agilent E8267C PSG Vector Signal Generator』カタログ番号 5988-7541EN

Technical Overview『Signal Studio Software for Enhanced Multitone』カタログ番号 5988-5639EN

マニュアル『Agilent E8267C PSG User's Guide』カタログ番号 E8251-90253

Application Note『Characterizing Digitally Modulated Signals with CCDF Curves』カタログ番号 5968-6875E

関連製品のカタログ『Agilent PSAシリーズ・スペクトラム・アナライザ』カタログ番号 5980-1284J

『Agilent PSA Performance Spectrum Analyzer Series - Optimizing Dynamic Range forDistortion Measurements』カタログ番号 5980-3081EN

『Spectrum Analysis Basics, Application Note 150』カタログ番号 5952-0292EN

Webアドレス

詳細はwww.agilent.co.jpをご覧ください。www.agilent.co.jp/find/psgwww.agilent.co.jp/find/signalstudiowww.agilent.co.jp/find/PSA

参考資料

論文Evaluating Communications System Performance in Multiple Signal Environments,David R. Koberstein, 1994, Wireless Communications Symposium, Hewlett Packard

March 19, 20035988-7689JA

0000-00DEP

サポート、サービス、およびアシスタンス

アジレント・テクノロジーが、サービスおよびサポートにおいてお約束できることは明確です。リスクを最小限に抑え、さまざまな問題の解決を図りながら、お客様の利益を最大限に高めることにあります。アジレント・テクノロジーは、お客様が納得できる計測機能の提供、お客様のニーズに応じたサポート体制の確立に努めています。アジレント・テクノロジーの多種多様なサポート・リソースとサービスを利用すれば、用途に合ったアジレント・テクノロジーの製品を選択し、製品を十分に活用することができます。アジレント・テクノロジーのすべての測定器およびシステムには、グローバル保証が付いています。製品の製造終了後、最低5年間はサポートを提供します。アジレント・テクノロジーのサポート政策全体を貫く2つの理念が、「アジレント・テクノロジーのプロミス」と「お客様のアドバンテージ」です。

アジレント・テクノロジーのプロミス

お客様が新たに製品の購入をお考えの時、アジレント・テクノロジーの経験豊富なテスト・エンジニアが現実的な性能や実用的な製品の推奨を含む製品情報をお届けします。お客様がアジレント・テクノロジーの製品をお使いになる時、アジレント・テクノロジーは製品が約束どおりの性能を発揮することを保証します。それらは以下のようなことです。● 機器が正しく動作するか動作確認を行います。● 機器操作のサポートを行います。● データシートに載っている基本的な測定に係わるアシストを提供します。

● セルフヘルプ・ツールの提供。● 世界中のアジレント・テクノロジー・サービス・センタでサービスが受けられるグローバル保証。

お客様のアドバンテージ

お客様は、アジレント・テクノロジーが提供する多様な専門的テストおよび測定サービスを利用することができます。こうしたサービスは、お客様それぞれの技術的ニーズおよびビジネス・ニーズに応じて購入することが可能です。お客様は、設計、システム統合、プロジェクト管理、その他の専門的なサービスのほか、校正、追加料金によるアップグレード、保証期間終了後の修理、オンサイトの教育およびトレーニングなどのサービスを購入することにより、問題を効率良く解決して、市場のきびしい競争に勝ち抜くことができます。世界各地の経験豊富なアジレント・テクノロジーのエンジニアが、お客様の生産性の向上、設備投資の回収率の最大化、製品の測定確度の維持をお手伝いします。