防 災

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2011 年 3 月に発生した東北地方太平洋沖地震津波による甚大な被災を背景に，津波避難ビルの重要性が再認識されています。そして，津波による漂流物の避難ビルへの衝突や，漂流してきた自動車の発火による火災の避難ビルへの延焼を防止するためには，避難ビルの周囲を漂流物衝突防止工（防衝工）で囲むことが有効です。ただし，防衝工が避難の障害となる可能性があるため，その影響を検討しました。また，防衝工の配置による，避難ビルに作用する津波波力の影響について検討しました。

津波避難ビルを，自動車やがれき等の津波漂流物の衝突から守るため，また，漂流物からの延焼防止を図るために，全周に杭式防衝工を設置します。この時の，防衝工が避難行動へ与える影響を検討し，避難者から見た防衝工間の開口率と圧迫感の関係と，ビル内に避難し，待機中に避難者が感じる安心感について考察しました。また，津波の波形や規模を変えて水理模型実験を実施し，津波避難ビルに作用する津波波力と防衝工の配置・形状の関係を明らかにしました。

防衝工を千鳥配置にすることにより，避難時には，避難者に開口を広く見せることができることを示しました。一方，避難後，津波が引くまで避難ビル内で待機する際には，直線的な配置の方が壁のように感じられ，安心感を得られる可能性があるため，最適な防衝工配置については，アンケート調査などによる客観的な検討が今後の課題です。津波避難ビルに作用する津波波力については，水理模型実験により，直線配置の場合には，防衝工のない場合と比較して 22％波力が低減される場合がある等，防衝工設置による波力の変化特性を明らかにしました。また，防衝工配置については，千鳥配置では，波力の低減が見られず，千鳥を逆に配置した裏千鳥配置では，波力が低減することを明らかにしました。

REPORT OF TAISEI TECHNOLOGY CENTER 2013 NO.46 39

水理模型実験の様子津波シェルターのイメージ図

＊1　技術センター 土木技術研究所 水域・環境研究室＊2　技術センター 建築技術研究所 防災研究室＊3　東北大学

津波避難ビルに設置された漂流物衝突防止工の影響について　

羽角 華奈子＊１・伊藤 一教＊１・織田 幸伸＊１・池畠 由華＊2・今村 文彦＊3

Influence of Fender Piles to Protect a Tsunami Refuge Building　Kanako HASUMI, Kazunori ITO, Yukinobu ODA, Yuka IKEHATA and Fumihiko IMAMURA