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使使1 使使使使2 使使使写真1 エコピタ液剤製品写真 右上:希釈液は無色透明 図1  エコピタ液剤散布前後のナミハダニ電子顕 微鏡写真 表1 エコピタ液剤適用作物・病害虫名 作物名 適用病害虫(○) トマト、ミニトマト 100~ 200倍 いちご 100倍 野菜類 (いちご、トマト、 ミニトマトを除く) 豆類(種実) いも類 ごま 花き類・観葉植物 かんきつ 100~ 300倍 果樹類 (かんきつを除く)100倍 表2 エコピタ液剤の有用昆虫への影響表 種類名 ステージ 試験方法 安全性 ミヤコカブリダニ 虫体散布法 成虫 チリカブリダニ 成虫 成虫 薬液風乾後接種 ヤマトクサカゲロウ 中齢幼虫 虫体浸漬法 若齢幼虫 薬液風乾後接種 タイリクヒメハナカメムシ 成虫 虫体浸漬法 ナミテントウ 中齢幼虫 コレマンアブラバチ マミー マミー浸漬法 オンシツツヤコバチ マミーカード浸漬法 ミツバチ 散布後乾けば問題なし 薬剤の影響(◎:死亡率0~30%、○:30~80%、△:80~99%、 ×:99~100%)天敵に対する薬剤の影響指数はバイオロジカル コントロール協議会で定める室内試験の評価指数に準じる 上:散布前(気門周辺が鮮明に見える) 下:散布後(気門を含む全身が被膜されている) IPM 使26 Monthly Journal of Agriculture & Extension 2016 Vol.53 1月号

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Page 1: IPM - kyoyu-agri.co.jp · PDF file特集 ipmの安定技術を探る よそ2週間)。 放飼後に害虫の「つぼ」を見つけ ウ放飼を検討する(図2)。を散布する。

エコピタ液剤は、食品にも使用さ

れる還元澱粉糖化物(還元水あめ)

を有効成分とした気門封鎖剤である

(写真1)。合成農薬とは異なる特長

を有し、施設果菜類を中心に普及し

ている。今回、その特長と使用上のポ

イントを紹介する。

エコピタ液

剤の特長

1・害虫の気門をふ

さいだり、絡め

とることで薬剤抵抗性を発達させ

た害虫にも効果を発揮する(図1)。

・うどんこ病にも効果を発揮する。

・野菜類、花き類・観葉植物、果樹

類登録を有し、幅広い作物に使用

できる(表1)。

・使用回数に制限がなく、また、収

穫前日まで使用できる。

・ミカンハダニに対して殺卵活性を

有する。

・天敵・有用昆虫への影響が少ない

(表2)。

・有機JAS規格適合資材である。

上手な使い方

2⑴丁寧な散布が一番大事

気門封鎖剤はかかった病害虫に効

果を発揮する。そのため、下葉や葉

裏など、薬液をかけにくい場所も丁

寧に散布することが重要である。

⑵連続散布が二番目に大事

気門封鎖剤には残効がない。また、

ミカンハダニを除くハダニ類やコナ

ジラミ類への殺卵活性に乏しい。そ

のため、1回目で成虫、幼若虫を防

除し、2回目でふ化した幼若虫を防

除することが効果的である。

⑶イチゴで使用する場合

ア 

天敵放飼前

エコピタ液剤は、カブリダニとも

併用できる。放飼前にハダニ類など

の密度を極力減らすために、2つの

使い方をお勧めする。

①殺ダニ剤との混用散布(表3)

殺卵活性の高い薬剤と混用散布し、

補完的に使用する。

②ローテーション防除に加える

天敵に対する影響日数の短い薬剤

を散布した後、放飼まで密度を抑え

るために単剤で連続散布する。

イ 

天敵放飼後

カブリダニが流され、増殖の遅れ

る可能性があるため、定着前は影響

の少ない薬剤でも散布は避ける(お

写真1 エコピタ液剤製品写真    右上:希釈液は無色透明

図1 ��エコピタ液剤散布前後のナミハダニ電子顕微鏡写真

表1 エコピタ液剤適用作物・病害虫名

作物名希釈倍数

適用病害虫(○)

ハダニ類

アブラムシ類

コナジラミ類

うどんこ病

トマト、ミニトマト 100~200倍 ○ ○ ○ ○

いちご

100倍

○ ○ ○ ○野菜類

(いちご、トマト、ミニトマトを除く)

○ ○ ○ ○

豆類(種実) ○ ○ ○ ○いも類 ○ ○ ○ ○ごま ○花き類・観葉植物 ○ ○ ○ ○かんきつ 100~

300倍 ○ ○ ○果樹類(かんきつを除く)100倍 ○ ○ ○

表2 エコピタ液剤の有用昆虫への影響表種類名 ステージ 試験方法 安全性

ミヤコカブリダニ 卵

虫体散布法

◎成虫 ◎

チリカブリダニ卵 ◎成虫 ○成虫 薬液風乾後接種 ◎

ヤマトクサカゲロウ 中齢幼虫 虫体浸漬法 ○若齢幼虫 薬液風乾後接種 ◎

タイリクヒメハナカメムシ 成虫 虫体浸漬法 ○ナミテントウ 中齢幼虫 ○コレマンアブラバチ マミー マミー浸漬法 ◎オンシツツヤコバチ 蛹 マミーカード浸漬法 ○ミツバチ 散布後乾けば問題なし

※ 薬剤の影響(◎:死亡率0~30%、○:30~80%、△:80~99%、×:99~100%)天敵に対する薬剤の影響指数はバイオロジカルコントロール協議会で定める室内試験の評価指数に準じる

上:散布前(気門周辺が鮮明に見える)下:散布後(気門を含む全身が被膜されている)

協友アグリ株式会社 

普及・マーケティング部

園芸剤チーム 

花田 浩平

IPM 時

代にぴったり、害虫ピタリ!

気門封鎖剤『エコピタ液剤』の上手な使い方

26Monthly Journal of Agriculture & Extension 2016 Vol.53 1月号

Page 2: IPM - kyoyu-agri.co.jp · PDF file特集 ipmの安定技術を探る よそ2週間)。 放飼後に害虫の「つぼ」を見つけ ウ放飼を検討する(図2)。を散布する。

IPMの安定技術を探る特 集

よそ2週間)。

放飼後に害虫の「つぼ」を見つけ

た際は、スポット的にエコピタ液剤

を散布する。その後状況を見て追加

放飼を検討する(図2)。

ウ 

注意点

果実がマルチと接した状態で散布

すると、日中熱せられてふやける場

合がある。開花期以降は収穫後に散

布する。

⑷トマト・ミニトマトで使用する場合

ア 

コナジラミ類防除

夏から晩秋のタバココナジラミ

(バイオタイプQ)徹底防除時期は、

殺虫剤の効果を補完するため、20

0倍での混用散布をお勧めする。

エコピタ液剤は幼虫にも効果を発

揮するが、成虫の密度を落とす力に

特に優れている。そのため、殺卵活

性の高い殺虫剤との相性が良い。

冬場から春先まで

飛び込み量が減る時

期は、殺虫剤温存の

ためローテーション

の間に単剤で散布す

る。

イ 

うどんこ病防除

物理的に病原菌を

覆い、耐性菌にも効

果を発揮する。一方

で、予防効果に乏し

く、発生初期の散布

をお勧めする。

病斑が多数みられ

る場合は、殺菌剤と

混用散布することで、

より安定した防除効

果が期待できる。

さらに、ジーファイン水和剤との

混用は繰り返し散布でき、お勧めで

ある。

⑸施設カンキツで使用する場合

エコピタ液剤はミカンハダニに対

して殺卵活性を有する(写真2)。

秋口(被覆後)から春先に散布す

ることで、高い防除効果を発揮する。

また、散布によって気孔を塞ぐこと

もない(写真3)。

⑹リンゴなどに使用する場合

ハダニ類の薬剤抵抗性発達が問題

となる産地で、殺ダニ剤散布前後に

補正的に使用することをお勧めする。

また、天敵に対する影響も少なく、

土着天敵を活用する圃場にもお勧め

である。

ただし、二十世紀などの青ナシで

は褐点症状、果粉のある果樹では果

粉溶脱を生じる場合があり、使用は

避ける。終

わりに

3天敵製剤は環境を整えて使用すれ

ば、高い効果を発揮する。エコピタ

液剤はそこに貢献できる。百聞は一

見にしかず、ぜひ一度お試しいただ

きたい。

定着まで薬剤散布を

極力避ける

育苗期 生育期 収穫期定植 開花

エコピタ液剤の一番の使用時期は、天敵放飼前のハダニ類、アブラムシ類、コナジラミ類、うどんこ病を徹底防除する時期

月に数回、他剤と混用してエコピタ液剤を散布

単剤での連続散布か、殺ダニ剤と混用散布

スポット散布

スポット散布

エコピタ液剤散布後の各種害虫、うどんこ病菌の写真

図2 エコピタ液剤位置づけ例(イチゴ)

写真5 SSでの散布も問題ない 写真4 ��毛茸中のハダニ類にも効果を発揮する

写真3 カンキツ葉裏の気孔    左:水処理後 右:エコピタ液剤散布後

写真2 散布後のミカンハダニ卵卵柄が折れ、全体が被膜されている

表3 イチゴでの混用事例(殺ダニ剤、殺菌剤抜粋)薬剤名

殺ダニ剤

カネマイトフロアブル、コテツフロアブル コロマイト水和剤、サンマイトフロアブル スターマイトフロアブル、ダニサラバフロアブル ニッソラン水和剤、バロックフロアブル、ピラニカEWマイトクリーン、マイトコーネフロアブル、ロディー乳剤

殺菌剤

アミスター20フロアブル、アントラコール顆粒水和剤 オーソサイド水和剤80、カリグリーン カンタスドライフロアブル、キノンドーフロアブル ゲッター水和剤、サンヨール乳剤、サンリット水和剤ジーファイン水和剤、ジャストミート顆粒水和剤スコア顆粒水和剤、ストロビーフロアブルスミレックス水和剤、セイビアーフロアブルダイマジン水和剤、トップジンM水和剤、トリフミン水和剤 バイコラール水和剤、バリダシン液剤5 パンチョTF顆粒水和剤、フルピカフロアブル、ベルクート水和剤ベンレート水和剤、ポリオキシンAL水和剤ポリオキシンAL乳剤、モレスタン水和剤、ラリー水和剤 ルビゲン水和剤、ロブラール水和剤

27 技術と普及 1