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エコピタ液剤は、食品にも使用さ
れる還元澱粉糖化物(還元水あめ)
を有効成分とした気門封鎖剤である
(写真1)。合成農薬とは異なる特長
を有し、施設果菜類を中心に普及し
ている。今回、その特長と使用上のポ
イントを紹介する。
エコピタ液
剤の特長
1・害虫の気門をふ
さいだり、絡め
とることで薬剤抵抗性を発達させ
た害虫にも効果を発揮する(図1)。
・うどんこ病にも効果を発揮する。
・野菜類、花き類・観葉植物、果樹
類登録を有し、幅広い作物に使用
できる(表1)。
・使用回数に制限がなく、また、収
穫前日まで使用できる。
・ミカンハダニに対して殺卵活性を
有する。
・天敵・有用昆虫への影響が少ない
(表2)。
・有機JAS規格適合資材である。
上手な使い方
2⑴丁寧な散布が一番大事
気門封鎖剤はかかった病害虫に効
果を発揮する。そのため、下葉や葉
裏など、薬液をかけにくい場所も丁
寧に散布することが重要である。
⑵連続散布が二番目に大事
気門封鎖剤には残効がない。また、
ミカンハダニを除くハダニ類やコナ
ジラミ類への殺卵活性に乏しい。そ
のため、1回目で成虫、幼若虫を防
除し、2回目でふ化した幼若虫を防
除することが効果的である。
⑶イチゴで使用する場合
ア
天敵放飼前
エコピタ液剤は、カブリダニとも
併用できる。放飼前にハダニ類など
の密度を極力減らすために、2つの
使い方をお勧めする。
①殺ダニ剤との混用散布(表3)
殺卵活性の高い薬剤と混用散布し、
補完的に使用する。
②ローテーション防除に加える
天敵に対する影響日数の短い薬剤
を散布した後、放飼まで密度を抑え
るために単剤で連続散布する。
イ
天敵放飼後
カブリダニが流され、増殖の遅れ
る可能性があるため、定着前は影響
の少ない薬剤でも散布は避ける(お
写真1 エコピタ液剤製品写真 右上:希釈液は無色透明
図1 ��エコピタ液剤散布前後のナミハダニ電子顕微鏡写真
表1 エコピタ液剤適用作物・病害虫名
作物名希釈倍数
適用病害虫(○)
ハダニ類
アブラムシ類
コナジラミ類
うどんこ病
トマト、ミニトマト 100~200倍 ○ ○ ○ ○
いちご
100倍
○ ○ ○ ○野菜類
(いちご、トマト、ミニトマトを除く)
○ ○ ○ ○
豆類(種実) ○ ○ ○ ○いも類 ○ ○ ○ ○ごま ○花き類・観葉植物 ○ ○ ○ ○かんきつ 100~
300倍 ○ ○ ○果樹類(かんきつを除く)100倍 ○ ○ ○
表2 エコピタ液剤の有用昆虫への影響表種類名 ステージ 試験方法 安全性
ミヤコカブリダニ 卵
虫体散布法
◎成虫 ◎
チリカブリダニ卵 ◎成虫 ○成虫 薬液風乾後接種 ◎
ヤマトクサカゲロウ 中齢幼虫 虫体浸漬法 ○若齢幼虫 薬液風乾後接種 ◎
タイリクヒメハナカメムシ 成虫 虫体浸漬法 ○ナミテントウ 中齢幼虫 ○コレマンアブラバチ マミー マミー浸漬法 ◎オンシツツヤコバチ 蛹 マミーカード浸漬法 ○ミツバチ 散布後乾けば問題なし
※ 薬剤の影響(◎:死亡率0~30%、○:30~80%、△:80~99%、×:99~100%)天敵に対する薬剤の影響指数はバイオロジカルコントロール協議会で定める室内試験の評価指数に準じる
上:散布前(気門周辺が鮮明に見える)下:散布後(気門を含む全身が被膜されている)
協友アグリ株式会社
普及・マーケティング部
園芸剤チーム
花田 浩平
IPM 時
代にぴったり、害虫ピタリ!
気門封鎖剤『エコピタ液剤』の上手な使い方
26Monthly Journal of Agriculture & Extension 2016 Vol.53 1月号
IPMの安定技術を探る特 集
よそ2週間)。
放飼後に害虫の「つぼ」を見つけ
た際は、スポット的にエコピタ液剤
を散布する。その後状況を見て追加
放飼を検討する(図2)。
ウ
注意点
果実がマルチと接した状態で散布
すると、日中熱せられてふやける場
合がある。開花期以降は収穫後に散
布する。
⑷トマト・ミニトマトで使用する場合
ア
コナジラミ類防除
夏から晩秋のタバココナジラミ
(バイオタイプQ)徹底防除時期は、
殺虫剤の効果を補完するため、20
0倍での混用散布をお勧めする。
エコピタ液剤は幼虫にも効果を発
揮するが、成虫の密度を落とす力に
特に優れている。そのため、殺卵活
性の高い殺虫剤との相性が良い。
冬場から春先まで
飛び込み量が減る時
期は、殺虫剤温存の
ためローテーション
の間に単剤で散布す
る。
イ
うどんこ病防除
物理的に病原菌を
覆い、耐性菌にも効
果を発揮する。一方
で、予防効果に乏し
く、発生初期の散布
をお勧めする。
病斑が多数みられ
る場合は、殺菌剤と
混用散布することで、
より安定した防除効
果が期待できる。
さらに、ジーファイン水和剤との
混用は繰り返し散布でき、お勧めで
ある。
⑸施設カンキツで使用する場合
エコピタ液剤はミカンハダニに対
して殺卵活性を有する(写真2)。
秋口(被覆後)から春先に散布す
ることで、高い防除効果を発揮する。
また、散布によって気孔を塞ぐこと
もない(写真3)。
⑹リンゴなどに使用する場合
ハダニ類の薬剤抵抗性発達が問題
となる産地で、殺ダニ剤散布前後に
補正的に使用することをお勧めする。
また、天敵に対する影響も少なく、
土着天敵を活用する圃場にもお勧め
である。
ただし、二十世紀などの青ナシで
は褐点症状、果粉のある果樹では果
粉溶脱を生じる場合があり、使用は
避ける。終
わりに
3天敵製剤は環境を整えて使用すれ
ば、高い効果を発揮する。エコピタ
液剤はそこに貢献できる。百聞は一
見にしかず、ぜひ一度お試しいただ
きたい。
定着まで薬剤散布を
極力避ける
育苗期 生育期 収穫期定植 開花
エコピタ液剤の一番の使用時期は、天敵放飼前のハダニ類、アブラムシ類、コナジラミ類、うどんこ病を徹底防除する時期
月に数回、他剤と混用してエコピタ液剤を散布
単剤での連続散布か、殺ダニ剤と混用散布
スポット散布
スポット散布
エコピタ液剤散布後の各種害虫、うどんこ病菌の写真
図2 エコピタ液剤位置づけ例(イチゴ)
写真5 SSでの散布も問題ない 写真4 ��毛茸中のハダニ類にも効果を発揮する
写真3 カンキツ葉裏の気孔 左:水処理後 右:エコピタ液剤散布後
写真2 散布後のミカンハダニ卵卵柄が折れ、全体が被膜されている
表3 イチゴでの混用事例(殺ダニ剤、殺菌剤抜粋)薬剤名
殺ダニ剤
カネマイトフロアブル、コテツフロアブル コロマイト水和剤、サンマイトフロアブル スターマイトフロアブル、ダニサラバフロアブル ニッソラン水和剤、バロックフロアブル、ピラニカEWマイトクリーン、マイトコーネフロアブル、ロディー乳剤
殺菌剤
アミスター20フロアブル、アントラコール顆粒水和剤 オーソサイド水和剤80、カリグリーン カンタスドライフロアブル、キノンドーフロアブル ゲッター水和剤、サンヨール乳剤、サンリット水和剤ジーファイン水和剤、ジャストミート顆粒水和剤スコア顆粒水和剤、ストロビーフロアブルスミレックス水和剤、セイビアーフロアブルダイマジン水和剤、トップジンM水和剤、トリフミン水和剤 バイコラール水和剤、バリダシン液剤5 パンチョTF顆粒水和剤、フルピカフロアブル、ベルクート水和剤ベンレート水和剤、ポリオキシンAL水和剤ポリオキシンAL乳剤、モレスタン水和剤、ラリー水和剤 ルビゲン水和剤、ロブラール水和剤
27 技術と普及 1