isep news letter 2012年 第3四半期

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ISEP News Letter 2012. No.3

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ISEP News Letterは、四半期ごとにISEP会員を対象として発行する環境エネルギー政策研究所の活動報告です。

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Page 1: ISEP News Letter 2012年 第3四半期

ISEP News Letter2012. No.3

Page 2: ISEP News Letter 2012年 第3四半期

平素より温かいご支援を賜り有難うございます。今回の政権交替は、「浦島太郎の玉手箱政権」(浜矩子同志社大大学院教授)と喩えられるとおり、原発事故に代表される自らの失政も反省しないまま、旧い時代遅れの考えで、原発推進政策や電力独占への回帰へと進もうとしています。「民主党への失望」のあまり、国民は、とんでもない時代錯誤の政治を表舞台に引きずり出してしまいました。ここは「失われた20年」が「30年」とならない踏ん張りが必要と思われます。議席数では圧勝した新政権は、さっそく「民意を得た」とばかりに、原発ゼロの方針を見直し、上関原発(山口県)をはじめとする原発新増設の推進や核燃料サイクル推進へと、3.11原発事故がなかったかのごとく、先祖返りの政策を打ち出しています。新政権がどこに向かおうとも、時代は分散型・分権型へと大きく転換しつつあります。中でもエネルギーの地域分散化・分権化こそ、本物の改革と本当の豊かさへの入り口となります。一つ先の時代を指し示すことが当研究所(ISEP)の社会的使命であり、それを日本中の地域で一つひとつ実現してゆくことが今年の主題です。大きな時代の転換期にあって、もはや時代も政策も後戻りすることはありません。いかに「旧い政治」が過去に戻そうとしても、時の理があり、ものの道理があるかぎり、変革は必然です。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

■ ご挨拶

所長 飯田哲也

再生可能エネルギーの全種全量固定価格買取制度(FIT)が昨年7月に施行されてから11月末迄に、約365万kWの設備が認定されるに至りました。11月迄に稼動したのはその40%程度(10kW以下余剰買取太陽光が中心)ですが、明らかに本制度が再生可能エネルギー発電事業の導入促進に極めて大きな役割を果たし始めています。しかしながらヨーロッパの先進事例から明らかなように、この制度を生かしていくためには買取条件の最適化を継続していく必要があります。例えば太陽光について言えば、地域事業の普及のためにも中小規模とメガソーラーとの価格を分けることも必要です。ISEPとしてもこうした制度の改善・最適化について検討し提言していくことがこれから極めて重要と考えています。一方で、ISEPの掲げる地域主体の再生可能エネルギー事業は、FIT制度は必要条件ではあるものの制度だけでは普及しません。そのために必要となるのは地域での「人」と「場」作りとそれを継続していく仕組みを作ることです。ISEPはこのコンセプトを柱とした環境省「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討委託業務」の地域支援事業者として平成23年度から活動してきました。現在では全国15地域の支援をしており、特にこの12月には小田原市と静岡市の地域協議会が中心となった地域エネルギー事業会社が発足しました。こうした成果をしっかり育てていくとともに、市民・地域事業のネットワークを国内外で繋げていくことがISEPの責務として捉えています。

研究員 浦井彰

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■ 2012年度 第3四半期 活動概要

10月

11月

12月

10日:【イベント】エイモリー・ロビンス博士緊急来日記念セミナー「誰がエネルギー社会を変えるのか~エネルギーの不安から世界を解放するビジネスの力」 飯田哲也 登壇

11日:【プレスリリース】エアコン冷媒、HFC32への転換は本質的解決ではない16日:【プレスリリース】「エネルギー永続地帯」2012年版試算結果(速報版)の公表 について千葉大学 倉阪研究室+環境エネルギー政策研究所

3日:【イベント】eシフトブックレット2号出版記念・eシフトシンポジウム「自然エネルギーと発送電分離~電力を市民の手に!」飯田哲也 講演

8日:【イベント】国会エネルギー調査会準備会 第16回 企業と環境展2012 オープニングセミナー 「地球環境とエネルギービジネスの未来」飯田哲也 基調トーク

14日:【イベント】国会エネルギー調査会準備会 第17回【プレスリリース】eシフト: 脱原発を柱とするエネルギー基本計画策定を求める要請を提出

17日:【イベント】つながり・ぬくもりプロジェクトシンポジウム開催18日:【イベント】WorldShift Forum 2012 所長飯田哲也 出演21日:【委員会】原子力規制委員会有識者ヒアリング 飯田哲也 出席28日:【イベント】飯田哲也×雨宮処凛「自然エネルギーと、脱原発ムーヴメントの今」

15・16日:【イベント】Nuclear Free Now!脱原発世界会議2 古屋研究員 登壇19日:【イベント】飯田哲也×雨宮処凛「自然エネルギーと、脱原発ムーヴメントの今28日:【プレスリリース】「永続地帯2012年版報告書」(確報版)の公表について

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自然エネルギー事業を地域に根付いたものにしていく。そのための地域エネルギー事業体が続々と立ち上げられています。昨年度から始まった環境省による「地域主導型再生可能エネルギー事業化検討業務」で選ばれた15地域からも、地域エネルギー事業を担う事業会社が設立されています。2012年末には、「しずおか未来エネルギー株式会社」や「ほうとくエネルギー株式会社」(小田原市)などが事業活動を始めました。ISEPとしてこうしたプロセスの支援業務を担うなかで、いくつかの教訓が見えてきました。

■ 中心的な主体のリーダーシップと協同自治体であれば首長のリーダーシップと明確な方針のもと、担当部局、関連部局のそれぞれが

連携しつつ、民間との協同が進められる形が一つの理想でしょう。また民間主体であれば、中心人物が積極的にまわりを巻込みながら、行政とも良い関係を築いていくことが肝要です。自然エネルギー利用機器の選定や事業スキーム、資金調達手法といった技術面を固めることはもちろん必要ですが、中心となる推進役という「人」の要素が極めて重要です。

■ 地域の様々な主体が集まる「場」の設定各地域において、さまざまな立場の方を集めた協議会や市民懇談会を開催しています。ここで

厚く幅広いネットワークが構築できるかが、事業の立上げと発展に大きく関わっています。ネームバリューのある委員を集めた形式的な「委員会」ではなく、地域エネルギー事業のあり方やそれぞれの立場からの関わり方などを実質的に議論していくことで、目的を共有し、役割分担もなされます。また資金調達を考えれば、地銀や信金といった地元金融機関との関係性をこの段階で築いておくことも大事です。

■ 地域の未来に資する自然エネルギー事業自然エネルギー事業そのもののスキーム自体は、いくつかのパターンに収斂します。その事業

が地域自然エネルギー事業となるかどうかは、1、2で述べた地域の「人」の関わりに加え、エネルギー以外の要素との結びつき、地域らしさの発揮が関わっています。地域の良いところも悪いところも見つめた上で、地域の未来にとって自然エネルギー事業がどのような貢献を行うのか、そうした視点は地域エネルギー事業を根付かせ、発展させるでしょう。自然エネルギーによる介護施設の温熱供給を事業化させれば、福祉と経済の発展と結びつきます。市民参加や環境教育も自然エネルギーとの親和性が高い分野です。また地域の歴史や文化と自然エネルギー普及を結び付ければ、より地域らしさを備えたエネルギー事業となります。前述の小田原市の「ほうとく自然エネルギー」のほうとく(=報徳)とは、小田原ゆかりの二宮尊徳の教えに基づいています。小田原では、自然エネルギー事業を通した地域の再発見が起こっているのです。こうした教訓をISEPが現在支援している各地域において活かしていきます。

  ISEPでは2月25日に山口県宇部市のときわ公園湖水ホールにおいて、コミュニティ・パワー会議2013を開催いたします。国内外からコミュニティ・パワー事業に取り組む人々を招き、知見の共有や新たなネットワークづくりを促進します。ぜひお越し下さい。(詳細はこちら http://www.isep.or.jp/library/4134)

■ 研究レポート

地域からの自然エネルギー山下紀明 (ISEP主任研究員)

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前号のニュースレターでも報告しましたが、2012年の世界風力エネルギー賞は、オーストラリアではじめて市民風車を実現させた「ヘップバーン風力協同組合(Hepburn Wind)」が受賞しました。世界風力エネルギー会議では、このプロジェクトでコミュニティ・オフィサーを務めるタリン・レーンさんと同じセッションで報告したこともあって意気投合し、詳しい話を聞きに行くことを約束しました。そして、2012年11月22~25日にかけて、ISEP研究パートナーの丸山康司氏(名古屋大学)、西城戸誠氏(法政大学)と共同でオーストラリア・ヴィクトリア州におけるコミュニティ・パワーの動向についての調査をおこないました。

■ ヘップバーン風力協同組合2011年、ヘップバーン風力協同組合は、オーストラリア南

部ヴィクトリア州デイルスフォードのレオナルド丘に2,000kWの風車を2基建設しました。もともと環境保護や有機農業などに熱心に取り組む人が多い地域だったという背景もある中で、たまたま現地に住んでいたデンマーク人がコミュニティの風力発電を地域の人たちに呼びかけたのがきっかけとなり、このプロジェクトの構想が生まれました。オーストラリアではじめての協同組合形式の風力発電ということで、計画から建設までの道のりは険しく、資金調達はもちろんのこと、さまざまな許認可の取得にも長い時間がかかり、実に6年の歳月をかけてこのプロジェクトは実現されました。協同組合の設立にあたっては、地域の住民に優先的にシェアを取得できるように募集をおこない、2011年7月時点で1,700人のメンバーが参加し、900万ドルが集まりました。最終的には銀行融資と補助金をあわせて1,310万ドルを調達しました。

■ 社会的受容の課題オーストラリアの風力発電は2010年時点で1,052基、

1,880MWとまだまだ発展の途上にあり、政策的にもさまざまな課題があります。メルボルンで風力発電事業の開発事業者にインタビューをおこなった際に、景観や生物多様性に加え、オーストラリアでは特に近隣住民の騒音(低周波)への不安が大きいという話を聞きました。ヘップバーン風力協同組合の建設許認可を取得する際にも、州議会には325件の賛成と18件の反対の意見が寄せられ、反対意見の中には騒音への不安を訴えるものがあったとのことです。そういった不安について、ヘップバーン風力協同組合では、科学的なデータにもとづいて人々とコミュニケーションを重ね、不安に応えると同時に、プロジェクトへの参加を促していったとのことです。

■ 参考Hepburn Wind http://hepburnwind.com.auEmbark http://www.embark.com.au/

オーストラリアのコミュニティ・パワー古屋将太 (ISEP研究員)

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国内のエネルギー供給に占める自然エネルギーの割合が4%程度しかない日本において、都道府県や市町村別などの地域毎に評価することで、より大きな割合で自然エネルギーを供給している地域を見出し、自然エネルギーにより持続可能な地域を将来に渡り増やしていくことが重要です。千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所(ISEP)の共同研究「永続地帯研究会」では、2007年から毎年、日本国内の地域別の自然エネルギー供給の現状と推移を明らかにしています。地域における自然エネルギーの割合が、その地域の持続可能性の指標として有効になると考えたからです。その地域の特性に応じて太陽光や風力、小水力、地熱、バイオマスなどの様々な自然エネルギーを活用した実績を指標として評価することにより、これまで経済的な指標などでは捉えられなかったその地域の持続可能性を評価し、より発展させることが可能となります。ここでは、2012年12月末に発表された最新の「永続地帯2012年版報告書」 のデータをもとに、地域別の自然エネルギーの供給割合から各地域の特徴や持続可能性を考えてみたいと思います。

都道府県別にみると、2011年3月末時点で推計した地域別の自然エネルギーの供給量から、大分県、富山県、秋田県など11県で、民生および農水部門の電力需要と比較した自然エネルギー供給の割合は10%を超えています(図1)。都道府県毎に特徴があり、大分県では地熱発電が大きな割合を占めています。水資源の豊富な富山県では小水力発電が多く、秋田県ではこれらの地熱発電や小水力発電に加えて風力発電が盛んです。また、電力と熱を合わせたエネルギー需要に対する自然エネルギー供給の割合が、8県で10%以上となっていますが、全国的に普及している太陽熱以外に、温泉熱などの地熱利用や木質バイオマスの熱利用が各地域で行われています(図2)。さらに、全国の52の市町村において、自然エネルギー供給の割合が100%以上になっていることが推計されましたが、それらの地域ではすでに設置されている地熱発電、小水力発電や風力発電の発電所で発電され、地域外に自然エネルギーの電力を供給しています。一方、東京都や大阪府など大都市では、エネルギーを大量に消費しているため、太陽光発電や太陽熱利用がある程度進んでいるにも関わらず、この自然エネルギー供給の割合が1%以下と非常に小さいことが特徴です。しかしながら、単位面積あたりの自然エネルギーの供給量では神奈川県が全国で最も大きくなっており、都市部特有の傾向があります。そのため、都市部で自然エネルギーの供給の割合を増やすためには、自然エネルギーが豊富で、供給が可能な地域と都市との連携が不可欠となっていることもわかります。

エネルギー永続地帯の試算では、地域毎にエネルギーの需要量と、自然エネルギーの供給量を推計しています。この報告書では、2010年度のデータを対象にしていますが、太陽光発電のデータだけを見ても業界団体などから公表されている統計データだけでは、地域別の設備導入状況や供給量を推計することには多くの困難を伴います。地域別の住宅用太陽光発電設備の導入量は、2009年にスタートした限定的な固定価格買取制度により、各電力会社が導入データを管理していますが、公表はされていません。また、発電量については余剰買取であるために、自家消費を含む全ての供給量は把握されていません。ISEPが毎年発行している「自然エネルギー白書」においても、発電設備の容量から自家消費分を含む発電量を推計しています。ドイツでは2000年から制度がスタートし、環境省(BMU)の元に自然エネルギー統計の整備機関が設けられ、毎年、詳細なデータを公表しています。2012年7月にスタートした事業用太陽光発電や風力発電などの全量全種の固定価格買取制度により、今後、様々な自然エネルギーの統計データが整備され、公表される

エネルギー永続地帯~地域別の自然エネルギー供給状況~松原弘直 (ISEP研究員)

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ことが期待されます。このエネルギー永続地帯の指標をさらに有効なものにし、各地域での自然エネルギー導入の成果を評価できるように、自然エネルギー統計の整備はとても重要な課題です。

図1: 都道府県別の自然エネルギーの電力の供給割合(「永続地帯2012年版報告書」より)

図2:都道府県別の自然エネルギー(電力および熱)の供給割合(「永続地帯2012年版報告書」より)

参考リンク: 永続地帯ポータルサイト http://sustainable-zone.org/

「永続地帯2012年版報告書」http://sustainable-zone.org/index.php?Sustainable%20Zone#tf0c961c「自然エネルギー白書2012」 http://www.isep.or.jp/jsr2012

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去る衆院選では、エネルギー政策が重要な争点のひとつでしたが、結果は自民党の圧勝に終わりました。これにより、民主党政権が掲げた「2030年代に原発稼働ゼロ」を目指すとしたエネルギー政策の見直しが表明されました。自民党の政権公約には、原子力の安全第一と、再稼働の可否について3年以内の結論を目指す

ということ、また10年以内に電源構成のベストミックスを確立する、とあります。結局議論の先送りのようにも思えますが、安易に旧来の原発維持路線に回帰することなく、か

つての55年体制下の原子力政策を反省し、問題点を総括することから始めてほしいものです。本書は、その原子力政策がいかに歪んだ構造にあるのかを明かしていきます。執筆者のお三方

は、ずっと以前から国の原子力政策に接し、異を唱えてきました。飯田氏はかつて「原子力ムラ」の内側にいた技術者として、佐藤氏は原発立地自治体の首長として、河野氏は自民党のなかでただ一人原発の問題点を指摘してきた議員として、それぞれの立場から立体的に”ムラ”の病理をあぶり出します。全体で八章から構成され、第一章「「原子力ムラ」という虚構」を飯田氏が、第二章「原発と

ともに―̶福島の戦い」を佐藤氏が執筆しています。第三章「東北大震災から原発事故へ」と第四章「原発からの脱却と日本の電力エネルギーの未来」は河野氏の人気ブログ「ごまめの歯ぎしり」から、震災後に更新した部分を再構成した内容となっています。そして第五章「フクシマへの道̶―分岐点は六ヶ所にあった」、第六章「上関原発新規立地・最後の攻防戦」、第七章「人災としての福島第一原発事故」、第八章「エネルギーの未来像」では再び飯田氏が執筆を担当しています。本書を通読することで、原発から自然エネルギーへとシフトすることが、決して左翼的でもユ

ートピア的思考でもなく、現実的、合理的で実現可能な選択肢であることが読み取れます。執筆者の方々の主張が異端視されることなく、今後のエネルギー政策の議論においても中心的

論点として活発な議論が交わされ、真の国民的合意が形成されることを願います。

ISEPインターン 菅原 奈己

『「原子力ムラ」を超えて - ポスト福島のエネルギー政策』(NHK出版)飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎  

『「原子力ムラ」を超えて ポスト福島のエネルギー政策』

著者:飯田哲也・佐藤栄佐久・河野太郎単行本(ソフトカバー):256ページ価格:1,050円出版社:NHK出版 (2011/7/26)ISBN-10: 4140911816ISBN-13: 978-4140911815

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地球温暖化に対する関心や原子力発電への不信感・不安が高まる中で、「自然エネルギーを普及させたい」と考える人は多くとも、実際に自身が「参加」してその変革に携わる市民は未だ決して多くはない。そして彼らの殆どは参加の方法がわからないだけであり、その方法がわかれば、あるいは参加できる環境が整えばすぐにでも「当事者」として参加者になりうる存在なのではないだろうか。本書では大企業による巨大プロジェクトではなく、地域に根ざした自然エネルギーのプロジェ

クトを取り上げる事により、市民に対してある種の「みちしるべ」を示しているといえよう。そしてなにより、地域に根ざした比較的小さなプロジェクトにこそ自然エネルギーを普及・定着させるヒントがあるということを示している。構成としては全3章にまたがり、各地で自然エネルギーの普及に取り組んだ中心人物達への丁

寧なインタビュー取材を通じて、彼らが直面した「現実」と「思い」が描かれている。第1章では北海道グリーンファンドによる「はまかぜちゃん」を始めとした市民出資による風

車建設の広がりや、「おひさまの町」こと、長野県飯田市から広まった太陽光革命を取り上げながらその苦悩と工夫、そして「自然エネルギーを通じて何を成し遂げていきたいか」という夢が語られている。第2章では震災を機に端を発した自然エネルギーによる災害支援という世界初の試みについて、「つながり・ぬくもりプロジェクト」等を取り上げながら概説し、今後の展望について言及されている。最終章である第3章では3・11以降広まりつつある町の電力会社を始めとした日本版の「エネルギー・デモクラシー」への各地の取り組みや課題点、今後のカギが語られている。本書では市民出資のスキームや地域間連携、固定価格買取制度等の「仕組み」の面での説明

も充実しているが、なによりも「人の意志」に焦点を当てたものとなっている。本書に登場する人々の取り組みは地域社会に確実な変化をもたらしつつある。彼らが示しているのは、市民一人ひとりの小さな行動こそがこの国を根底から揺さぶる力となりうる、まさに「自然エネルギー革命」の原動力であるということだ。

ISEPインターン 松濱 昭平

『自然エネルギー革命をはじめよう - 地域つくるみんなの電力』(大月書店)高橋 真樹

『自然エネルギー革命をはじめよう』

著者:高橋真樹単行本:224ページ価格:1,800円出版社:大月書店 (2012/12/20)ISBN:9784272330799

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■ インターン・レポート

私は損保ジャパン環境財団が実施している「CSOラーニング制度」のプログラムで昨年6月から約8カ月インターンさせていただいています。私は自然環境保全や都市計画や造園分野について大学で学んでいます。その中で自然公園と地熱発電の関係などを代表とする、「自然環境と再生可能エネルギーの関係」に関して学びたいと思い、環境エネルギー政策研究所で学ばせて頂いています。今後は地域との関係性も見ながら、活動に取り組んでいきたいと考えています。

永田 裕千葉大学園芸学部緑地環境学科3年

私の生まれ育った町は陸前高田市です。震災以降、この町と縁もゆかりもない方々がたくさん助けてくださるのを見て、自分も何か貢献しなければと考えるようになりました。町がどのように再生していくか考えたときに、「環境」や「自然エネルギー」というキーワードがなんとなく浮かんできて、仕事を辞めて大学院に行こうと思いました。大学院入学前に、実際の自然エネルギー関連の活動の現場を勉強させていただきたく、ISEPで10月からインターンとして学ばせていただいております。4月から大学院のため仙台に引っ越します。インターンの期間も残りわずかですが、どうぞよろしくお願いいたします。

菅原 奈己 外資系広告代理店ファイナンス部門に勤務後、退職し、4月から東北大学大学院 環境科学研究科

環境政策技術マネジメントコースに入学予定

会員のみなさまへの重要なお知らせ

2012年秋、環境エネルギー政策研究所は事務所を移転いたしました。

新事務所: 〒164-0001 東京都中野区中野4-7-3TEL: 03-5942-8937 FAX: 03-5942-8938

今後ともISEPは持続可能なエネルギー社会の実現に向けて鋭意努力してまいります。会員のみなさまにおかれましては引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

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ISEP News Letterは、四半期毎に会員のみなさまを対象として発行する環境エネルギー政策研究所の活動報告です。

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所  〒164-0001  東京都中野区中野4-7-3  TEL: 03-5942-8937  FAX: 03-5942-8938  Eメール: [email protected]