isep news letter 2012年度 第4四半期

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ISEP News Letter 2012. No.4

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ISEP News Letterは、四半期ごとにISEP会員を対象として発行する環境エネルギー政策研究所の活動報告です。

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Page 1: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

ISEP News Letter2012. No.4

Page 2: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

「安倍コベ」ワールドから未来を見据えて何もかもが反転してしまいました。たちの悪い「悪夢」を見ている気分ですが、

「現実」です。今なお世論の大多数は脱原発を望んでいるとはいえ、官邸を20万人もの人が包囲

した「熱気」は消えてしまいました。福島では、今なお16万人もの人が避難したままですが、中央のメディアからは急速に原発関連のニュースが消えつつあります。「熱気」の薄れも一因ですが、「アベノミクス景気を冷やすから」という理由で政権に批判的な記事を自粛する動きがあると聞きます。何と愚かなことでしょう。その間に、安倍自民党政権のもとで、この国の環境エネルギー政策はまったくの「安倍コベ」「デタラメ」になろうとしています。国のエネルギー基本計画を議論する審議会から、飯田自身をはじめとする脱原発派はほぼ一掃され、代わって極端な原発推進論者が参加しました。京都プロセスから離脱した気候変動政策などは崩壊状態といえます。まだ「嵐の前の静けさ」ですが、7月の参議院選挙後で仮に自民党が過半数を取っ

た場合には、官邸を原子力ムラの中心人物(甘利明経済再生大臣、今井尚哉政務秘書官、柳瀬唯夫事務秘書官)で固める安倍自民党政権は一気に牙をむきだしてくると思われます。これに対して、どのように未来を構想するべきでしょうか。環境エネルギー政策

研究所では、自然エネルギー未来白書2013の公表を皮切りに、「コミュニティパワー国際会議2013」など全国各地でコミュニティパワーを進めるための支援活動を立ち上げています。折しも、「人類史第四の革命」を迎えつつある世界の自然エネルギーを追い風

に、地域からのエネルギーデモクラシーがフクシマ後の日本を変えてゆく。これこそが確かな未来を切り拓いてゆくことは間違いありません。

■ ご挨拶

所長 飯田哲也

主席研究員 松原弘直

昨年2012年は日本の「自然エネルギー元年」と位置づけられ、全国各地域で自然エネルギー事業の検討が始まっています。一方、国のエネルギー政策全体では、昨年9月に前政権が決定した「革新的エネルギー・環境戦略」が政権交代により見直されることになりそうです。3.11以前に戻ったような委員会の顔ぶれで、これまでの国民的議論の結果を無視をした「エネルギー基本計画」の検討が始まっています。一方、自然エネルギー政策については、昨年7月からようやくスタートした固定価

格買取制度により、日本国内においても太陽光発電を中心に急成長を始めていますが、電力系統への接続や様々な規制など多くの課題が残されています。その経緯については最新の「自然エネルギー白書2013」に詳しくまとめていますので、是非、ご覧ください。その後、2013年1月末までの設備認定は737万kWに達していますが、そのうち9割

を太陽光発電が占め、特に出力1000kWを超えるメガソーラーの割合が大きくなっています。これは、現在の事業用の太陽光発電の買取価格の設定が一律であることに起因していると考えられます。今年度の新規設備の買取価格については、太陽光だけ一律で1割下げる決定がされましたが、明らかに規模により建設コストに違いがあることが分かっていることから、小規模な地域主導型の事業に取っても不公平にならないコストベースでの買取価格になることをISEPから提言しています。さらに、自然エネルギーの普及に不可欠な発送電分離や電力自由化を睨んだ電力

システムの改革方針が政府により3月に決定されましたが、これから数年をかけて法制化をしながら3段階で進められる改革は、まだまだ骨抜きにされる可能性があり、ISEPでもその監視および検証と提言を行っています。

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■ 2012年度 第4四半期 活動概要

1月

2月

3月

15日-17日:アブダビ自然エネルギー国際会議(ADIREC)開催16日:【プレスリリース】新レポート「世界自然エネルギー未来白書2013」を発表24日:【プレスリリース】自然エネルギー固定価格買取制度の調達価格等見直しにあたり

15日: 自然エネルギー未来展望ワークショップ開催21日:「国会エネルギー調査会準備会」(第18回)25日: コミュニティ・パワー会議2013開催 「自然エネルギー世界白書2012」日本語版公表

6日: 【プレスリリース】「世界自然エネルギー未来白書」日本語版を発表7日: 「国会エネルギー調査会準備会」(第19回)9日:地域エネルギーイニシアチブ(仮称)公開発起人集会15日:【プレスリリース】再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度 平成25年度調達

価格改定案に対する意見27日: 原発ゼロノミクスキャンペーン立ち上げシンポジウム(飯田所長出演)28日: 「国会エネルギー調査会準備会」(第20回)

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今年1月、アブダビで開催された自然エネルギー国際会議(ADIREC)にて、「世界自然エネルギー未来白書(Renewables Global Futures Report, GFR)」が初めて発表されました。「世界自然エネルギー未来白書」は、ISEPとREN21(21世紀のための自然エネルギー政策ネットワーク、本部:フランス・パリ)との2年間にわたる協働作業のもと、世界の170名以上の自然エネルギー分野のトップリーダーへのインタビューや近年に発表された50余りの未来シナリオ等から、ISEP研究部長エリック・マーティノーが新しいコンセプトでまとめた画期的なレポートです。

「世界自然エネルギー未来白書」の発表に際してISEP研究員古屋将太がマーティノー研究部長に行ったインタビュー記事の抜粋をご紹介します。(元記事:SYNODOS http://synodos.jp/international/245)

インタビュー:自然エネルギーの未来は、わたしたちの選択の問題である(エリック・マーティノー × 古屋将太)

■ 予測以上に進んだ自然エネルギーの普及古屋  このレポートで書かれているように、いまは「変革の時(Transformational time)」であり、このレポートは自然エネルギーの新たなステージの方向性を媒介するように思います。

エリック  たしかに、わたしたちは「未来をどのように考えるか」という点で大きなターニングポイントに立っています。それは技術やコストの観点からではなく、「考え方」そのものについてです。

たとえば、国際エネルギー機関(IEA)のシナリオが典型的ですが、過去のシナリオを見てみると、自然エネルギーについては25年ぐらい毎年ほとんど変わらない内容で、基本的に未来に対して非常に保守的なものでした。しかし、この2~5年間にさまざまな研究機関から出されたものに新たなシナリオ、新たなビジョン、新たな視点が現れたのです。つまり、この数年のあいだに「考え方」の変革のようなことが実際に起こりはじめているのです。そして、50~100という十分な研究が出そろった現在は、それを捉えるちょうどいいタイミングだといえます。

古屋 単刀直入に、50~100のシナリオを消化してみた結果、どのような発見があったのでしょうか?エリック  まず、過去に発表された予測よりもはるかに自然エネルギーの導入が進んでいるということがわかります。10年前の予測値を見てみると、それらは現在の実績値よりもはるかに小さいのです。

過去のシナリオでは長期予測(2030~50年)で自然エネルギーの割合は15~20%ぐらいだと考えられていましたが、現在すでに世界の自然エネルギーの割合は17~18%になっています。そして、今日のシナリオでの長期予測は、穏健な見通しでも30~45%、積極的な見通しでは50~90%が現れています。

つまり、自然エネルギーの普及の見通しには上端と下端があり、多くのシナリオでより多くの自然エネルギーが導入されると見ているのです。そして、それらの見通しはすでに確立された手法で、世界中の多くの専門家によって何年もかけてレビューされているため、きわめて信頼性の高いものだといえます。なによりも大きな発見は「より多くの自然エネルギーが導入されることが可能である」と考えられていることです。

■ 特集 自然エネルギーの未来「世界自然エネルギー未来白書」

編集:渡邊素子

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■ 技術や経済性の問題ではなく、わたしたちの選択の問題エリック  より多くの自然エネルギーを導入することは技術的には実現可能なのですが、問題は、人々が「わたしたちはそれを実行する必要がある」とか「未来のためにそれは必要なのだ」と考えられるかどうかなのです。10年前であれば、自然エネルギーを推進する一部の人々がそのように考えていたのですが、現在ではほぼすべてのシナリオでそういった考え方がとられるようになってきています。

次に、わたしたちは広範な自然エネルギー導入を実現する上で、もっとも信頼できる現実的な方法はどういったものなのかを考える必要があります。

たとえば「自然エネルギーは変動するので蓄電設備がなければ多く導入することはできない」という考え方があり、しばしば人々はこれを当たり前のこととして考えてしまいます。これについては、アメリカの政府系研究所ですら、研究の結果「大量の蓄電設備なしでも自然エネルギー80%は可能である」と述べているのです。

古屋 他のオプションがあるにもかかわらず、過去の考え方に縛られてもっとも信頼できる現実的な方法が見えなくなってしまうというのは大変興味深いですね。

このレポートを読んでみて、「より多くの自然エネルギーが導入される未来が実現するかどうかは、技術の問題でも、経済性の問題でもなく、わたしたちがそれを「選択(Choice)」するかどうかの問題なのです」という一文が、このレポートの中心的なメッセージだと感じました。

■ 日本が再び自然エネルギー分野でリーダーシップを取り戻すために古屋  このレポートは地域で自然エネルギーに取り組む人たちが未来を考える上でも非常に有用かと思います。地域で自然エネルギーの取り組みをはじめようとする人たちがこのレポートをどのように読んだり、使ったりすることを期待していますか?

エリック  わたしとしては、このレポートが人々、とくにコミュニティのリーダーたちの新しい発想につながればいいと思っています。

わたしが専門家たちにインタビューするなかで、地域コミュニティが風車などの自然エネルギーを所有することで社会的受容性が高まるというコメントを多く聞きました。そうすることで利益を得るのは地域の外の誰かではなく、地域コミュニティになるのです。小規模な投資家の小規模なファンドを束ねれば、それは意義あるリソースになります。

新しい発想で、新しいコミュニティ・ファンドの手法、新しいオーナーシップのかたちを開発して、わたしたちの選択肢が増えることを期待しています。

そして新しい選択肢を通じて、多くの人々が「ああ、これが本当に未来につながっているんだ」とか「わたしたちが未来をリードするんだ!」と思うようになることを期待します。きっと「置いてけぼりを食うのはいやだ」と思う人は、新しい発想や仕組みを学ぼうとするでしょう。

もうひとつ期待することは、市民やコミュニティのグループが活動するなかで、政府や自治体に対して「もっとわたしたちにできることはたくさんあるはずだ」といった声を投げかけることです。これまでの各地の経験を踏まえれば、そういった政治的プレッシャーが実際に新しい政策や実践につながってきました。

1990年代まで、日本は太陽光発電と太陽熱温水器の分野で世界のリーダーでしたが、この10~15年でその地位を他の国々に奪われました。いまや年間の市場成長ではトップ5位にも入っていません。日本はふたたびリーダーシップを取り戻さなければならないとわたしは考えていますが、そのためには誰もが本気で追いつこうとしなければなりません。そして、それはつねに市民やコミュニティの取り組みからはじまるのです。

「世界自然エネルギー未来白書(日本語版)」 http://www.isep.or.jp/images/library/GFR2013jp.pdf 「自然エネルギー世界白書2012(日本語版)」 http://www.isep.or.jp/images/library/GSR2012jp.pdf

Page 6: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

ISEPでは、国内外のコミュニティ・パワーの実践者や専門家と、これからコミュニティ・パワーに取り組む人々の対話を通じて地域に根差した自然エネルギーのあり方を探ることを目的として昨年度から「コミュニティ・パワー会議」を開催しています。2013年2月25日に山口県宇部市にて開催された「コミュニティ・パワー会議2013」では、3つのセッションから構成されるプログラムのもと、海外スピーカー、ISEPスタッフ、国内各地のコミュニティ・パワー実践者がそれぞれのテーマについて活発な議論をおこないました。

■ セッション 1

基調講演:クリストファー・スティーブンス(オンタリオ持続可能エネルギー協会、執行代表)モデレーター:古屋将太(環境エネルギー政策研究所、研究員)パネリスト:井筒耕平(美作地域おこし協力隊、コーディネーター)、大津愛梨(九州バイオマスフォーラム、理事)、加藤丈晴(エネルギーシフト山形勉強会、コーディネーター)、藤本雅史(岩国エネルギー井戸端会議、コーディネーター)

セッション1では、クリストファー・スティーブンス氏とコミュニティ・パワー実践者が、それぞれのコミュニティ・パワープロジェクトの経験を紹介し、議論しました。現場での主な障壁として、国の政策の影響や資金調達、住民との合意形成の難しさがあげられ、その上で、コミュニティと人々の「意志」と「選択」こそが重要であると再確認しました。住民との積極的なコミュニケーションが不可欠であり、その過程で知識や経験を共有し、少しずつ取り組みを積み重ねることで持続性が生まれ、同時にコミュニティ・パワーが生まれることが指摘されました。

■ セッション 2

基調講演:ソーレン・ハーマンセン(サムソ・エネルギー・アカデミー、代表)モデレーター:山下紀明(環境エネルギー政策研究所、主任研究員)パネリスト:小田切奈々子(自然エネルギー信州ネット、事務局コーディネーター)、政処剛史(宝塚市環境部環境室新エネルギー推進課、副課長)、上原公子(脱原発をめざす首長会議、事務局長)、山戸孝(祝島千年の島づくり基金、事務局長)

セッション2では、実際に自然エネルギーによって100%エネルギー需要を賄うことを実現したデンマーク・サムソ島の経験と実績を参考に、日本における持続可能なコミュニティのあり方を具体的に議論しました。コミュニティならではの問題点なども多く提起され、自然エネルギーを基軸とするバランスのとれた電力システム改革や、プロジェクトの長期的な枠組みと目標設定の必要性が共有されました。さらに、コミュニティ・パワーの実践には一般市民の自然エネルギーに対する理解のさらなる向上が重要であり、現場の実情を反映した細かな情報公開が求められているということも議論されました。

コミュニティ・パワー会議 2013 報告 猪又弘毅 (ISEPインターン)

Page 7: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

■ セッション 3

基調講演:タリン・レーン(ヘップバーン・ウィンド/エンバーク、コミュニティ・オフィサー)モデレーター:飯田哲也(環境エネルギー政策研究所、所長)パネリスト丸山康司(グリーンエネルギー青森、理事長)、矢口伸二(中国ウィンドパワー株式会社、代表取締役社長)、安渓遊地(山口県立大学、教授)、松本武士(みらい山口ネットワーク、エネルギー部長)

セッション3では、自然エネルギーの社会的受容性と地域住民とのコミュニケーションの大切さが強調されました。設備導入と共に、イベントの企画や広報活動など地域の人々の自然エネルギーについての情報提供や普及啓発も、社会的受容を実現させる上で欠かせません。また、農業や漁業など地域の産業が自然エネルギー事業の担い手となって総合一次産業化につなげることの重要性も指摘されました。地域の人々がコミュニティに利益を還元するかたちで自然エネルギー事業を展開することが、持続可能な地域づくりに直結するという点は、他のセッションと共通する議論でした。

このように、世界と日本の各地から多くのコミュニティ・パワーの成功事例が共有され、建設的な議論がおこなわれました。今回のコミュニティ・パワー会議をきっかけとして、現地では今後も継続的に地域の自然エネルギーに取り組もうとする動きが生まれ、全国および世界に広がるネットワークが登壇者と参加者の間に生まれました。

■ 海外ゲストによる祝島訪問コミュニティ・パワー会議の翌日、祝島自然エネルギー100%プロジェクトを視察するために3名の海外ゲストスピーカーが祝島を訪れました。島内で現在進行中の自然エネルギープロジェクトを視察、検討し、祝島のコミュニティ・パワーのさらなる活性化を島民といっしょに議論しました。

Page 8: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

■ 平成25年度調達価格の検討過程の概要2012年7月に固定価格買取制が施行されてから、はじめての買取価格改訂が行われた。買取価格に検討にあたり、2013年1月21日に第8回調達価格等算定委員会が開かれ、第9回(2月19日)、第10回(3月6日)と議論を重ね、第11回(3月11日)で平成25年度の調達価格・調達期間案が公表された。太陽光の調達価格については、10kW未満が38円/kWh(平成24年度:42円/kWh)、10kW以上が36円/kWh(税抜)(税込で37.8円/kWh、平成24年度:40円/kWh(税抜)、42円/kWh(税込))に引き下げられた。それ以外の電源については調達価格の据え置きとなった。

■ 調達価格の検討過程の課題とISEPからの意見環境エネルギー政策研究所は現行の固定価格買取制について見直しが必要な点を指摘し、複数回、意見書等を発表してきた[1][2]。ここではこの意見の中から特に着目すべき点について言及したい。

1 調達価格と期間に関して� 太陽光(10kW以上)については、第10回委員会資料[3]で明らかになったように、規模でシ

ステム費用は大きく異なる。委員会で提示された調達価格36円/kWh(税別)は1000kW以上のシステム費用(28万円/kW)を基礎にしているが、1000kW未満のシステム費用の平均値は40万円/kWhを超えている。また、平成24年度の調達価格を決定する際の本委員会の昨年4月の意見書[4]では、10kW以上については、発電規模が大型化しても顕著なスケールメリットは認められなかったとあるが、コストの違いが明確になったからには、「区分」を設けるのが適切である。

� バイオマス(石炭混焼)については、35万kWの石炭混焼バイオマス発電設備が1件認定されているが、石炭混焼設備は発電設備全体の新規投資は不要であり、他のバイオマス発電とは明らかにコスト構造が異なる。たとえ1件であってもそのコスト構造を開示すべきであり、その上で、そのコスト構造に適した調達価格を新たに設定すべきである。石炭火力発電はCO2排出が非常に多い発電である。本制度の設備認定を受けることにより採算性が向上し、その運転が促進されることとなってはならない。

2 送電網への優先接続および優先給電について� 送電網への優先接続が達成されるための最大限の努力を電気事業者が行うために、やむを得ない理由で接続を拒否する場合には、必ず第三者による情報開示内容の正当性の評価を義務付けそれを公開すると共に、電気事業者には送電系統の増強や出力変動への対応に関する計画を示すことを義務付けるべきである。

� 地域の電力系統の整備状況により、出力抑制を前提とした系統連系が行われる場合には、出力抑制による機会損失が発電事業者の事業に悪影響を及ぼさないようにできるだけ配慮すべきである。

固定価格買取制の平成25年度調達価格の検討過程と課題道満治彦 (ISEPインターン)

Page 9: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

3 情報公開と自然エネルギー統計の整備� 本制度による認定設備の情報は、本委員会での検討時点では、非常に限定的にしか公開され

ておらず、3月14日にようやく2012年12月末現在データが公開されるなど、その公開スピードは適切とは言えない。認定設備情報(発電所名、所在地、発電事業者名、発電出力、認定日、設備費用等)はすべてタイムリーに公開することにより、第三者からも検証可能な仕組みとすべきである。

� 本制度の実施状況やその効果を適切に評価し、自然エネルギーの本格的な普及に向かうためには、統計の整備が不可欠である。太陽光発電を始め、風力発電、小水力発電、バイオマス発電に関する統計データの整備は途上である。設備の認定・導入に伴うデータと共に、地域別の発電量のデータなどを月ごとに集計し、公表する必要がある。

4 自然エネルギー導入の政策目標の策定� 自然エネルギーの本格的な導入には様々なメリットがあり、現在検討中の新エネルギー基本

計画などで、中長期的な視野でしっかりとした政策目標を掲げる必要がある。

5 大規模な自然エネルギー事業の進め方� 太陽光発電のメガソーラー事業(1000kW以上)を進める場合には、土地利用などに対する社会

的合意をスムーズに進めるための制度作りが必要である。風力発電については、従来より数万kW規模のファームが主流となっており、優先接続制度や送電網の整備、土地利用に対する社会的合意をスムーズに進めるための制度作りが必須。具体的には、予防的な土地利用のゾーニングや地域のオーナーシップ、意思決定プロセスへの参加、事業利益の地域還元といった施策が社会的合意形成のために重要である。

6 その他の課題� ここに挙げた課題以外にも、バイオマス発電が持つ特有の課題、住宅用太陽光発電の余剰買

取、電気料金への賦課金に関する仕組みへの理解促進、回避可能原価の算定方法など多くの課題を有している(詳細はプレスリリース参照)。これらの課題を一つ一つ解決していくことが自然エネルギーの促進に大きな原動力になる。

[1] 2013年1月24日【プレスリリース】「自然エネルギー固定価格買取制度の調達価格等見直しにあたり」 http://www.isep.or.jp/library/4149

[2] 2013年3月15日【プレスリリース】「再生可能エネルギー電気の固定価格買取制度 平成25年度調達価格改定案に対する意見~ 発電のコスト構造が異なる場合には、新たな区分を設けるべき~」 http://www.isep.or.jp/library/4379

[3] 調達価格算定委員会第10回資料http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/010_haifu.html [4] 調達価格等算定委員会-「平成24年度調達価格及び調達期間に関する意見」http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/report_001.html

Page 10: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

本書では、福島原発事故の事例を中心に原発の危険性やそれを取り巻く仕組みの脆弱性を改めて指摘するとともに、日本社会が原発依存から脱却するためにどのような課題と展望があるのかを技術的、経済的、社会的側面から明らかにします。原発の稼働を停止するだけではなく、廃炉や使用済み燃料の処理を完了させるという本当の意味での原発ゼロに向けた技術的なアプローチや挑戦についても具体的な方策を解説しています。また欧州に倣った再生可能エネルギーの普及や省エネルギーの取り組みにより、わが国でも経済成長を伴いながら現実的に原発脱却が十分可能であると主張しています。廃炉事業を産業として雇用拡大の機会としてとらえるような新しい視点を展開しているのも本書の特徴です。最終章では以前から日本の原発開発に疑問を投げかけてきた著者が、その歴史を振り返り福島原発事故に至るまでの経緯を辿る中で、日本国民全体として受け止めるべき反省点とそれを原発脱却へ向けた動きへの転換に活かすための方策を探ります。 

福島原発事故は、原発の持つ巨大な潜在的危険性を悲劇的に証明し、「想定しないことは起こらないという想定」に基づいてリスクを肥大化させた日本の原発開発と安全管理体制の根本的な問題を露呈させました。多くの国民がそのような原発に依存し続け、将来に禍根を残すことを望んではいません。本書は一方で、電力政策を選び取る面で主権者としての主体性を発揮して来ず、専門家任せ、国任せにしてきた責任が大多数の国民にあることを指摘している点で画期的です。また原発の恐ろしさは事故による放射能汚染や被ばくにとどまらず、廃炉や核燃料処理にかかる費用や現存する使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物が数万年に渡り将来世代に与える影響があることを主張し、原発がいかにリスクの高いものであるかを効果的に議論しています。様々な側面から見て原発は現代と将来の人類にとってあまりにも負担の重いものであり、脱原発社会に移行することは原発事故を防げなかった我々の果たせる最低限の責務であると言えるでしょう。

ISEPインターン 和田 直樹

『「原発ゼロ」プログラム』(かもがわ出版)安斎 育郎・舘野 淳・竹濱 朝美

『「原発ゼロ」プログラム』著者:安斎育郎・舘野淳・竹濱朝美四六判 240ページ価格:1800円(税抜)出版社:かもがわ出版 (2013/3)ISBN: 978-4-7803-0608-8 C0036

Page 11: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

東日本大震災を契機に、今までよりより明らかになった日本のエネルギー政策の問題点。その問題を解決するために求められる節電と再生可能エネルギー普及へのエネルギーシフト。本書では、日本の現在までのエネルギー政策に問題を設定し、その問題に対して海外や日本において再生可能エネルギーの普及政策リードしている先進的な事例を扱いながら、問題解決の方策を提案しています。3部構成からなるこの本では、第1部でまず、日本のこれまでのエネルギー政策の問題点を指摘します。高度経済成長以来、経済活動の拡大と重なるよう拡大してきたエネルギー政策が、環境面や安全からいかに持続不可能であるかが述べられています。そして、脱原発という安全面と温暖化対策等の環境面を共に持続可能にするために、再生可能エネルギー推進を土台とした小規模分散型の社会の実現が求められるとまとめています。第2部では、海外に焦点をあて、再生可能エネルギー普及で成功している地域野の事例をとりあげています。ドイツにおける先進的な固定価格買取制度における国の政策面のリードの必要性や、アメリカ・ハワイ州が主体となり、連邦政府だけでなく化石燃料依存のコストを危惧する地域の電力会社までの多様なステークホルダーを巻き込んでいる必要性が強調されています。日本における先進的な事例を紹介している第3章では、東京都や横浜市といった都市でも、大分県別府市などの地方でも、地域市民や地域企業の参加を促していることなどが共通点として挙げられています。国内国外の先進的事例に通底することは、1つは再生可能エネルギー事業が新たな地場産業を生み出すなどで地域づくりにつながること、もう1つは住民不在の大企業ではなく市民参加の計画運営がなされていることという意義があります。これらの事例を見る中で、再生可能エネルギーの意義を生かすためにも、再生エネルギー産業を支えていくためにも、日本の将来を考えるのであれば必然的に政策面の支援が政局に左右されずに持続的に行われるべきだと感じます。

ISEPインターン 庄司 友

『 先進例から学ぶ再生可能エネルギーの普及政策』(本の泉社)上園 昌武:編著

『 先進例から学ぶ再生可能エネルギーの普及政策』編著: 上園昌武A5判 248ページ価格:1700円(税抜)出版社:本の泉社 (2013/3/10)ISBN978-4-7807-0919-3 C0036

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■ インターン・レポート

中学生の頃から資源枯渇問題や地球温暖化に興味を持ち、再生可能エネルギーの分野で国際的に協力できるエンジニアとなるため米国に留学しました。ドイツでのインターンや発電技術を中心に機械工学を勉強する中で、再生可能エネルギーの本格的な普及には技術面以外での取り組みも重要であることを知りました。ISEPのインターンでは再生可能エネルギーに関わる政治経済を勉強し、これまでの中央集中型とは異なる地域分散型電力供給の導入に向け微力ながら貢献したいと考えています。また、将来的にはそれらの側面を見据えた技術開発に取り組んでいきたいと思っています。

和田 直樹米国インディアナ州立パデュー大学機械工学科卒、8月からカリフォルニア大学バークレー校大学院  機械工学科修士課程入学予定。専門は海洋再生可能発電技術。

多くの方々と同様、震災を機に自然エネルギーの分野に関心を持ちました。モラルのない不自然なものが嫌いです。環境に配慮し、人類の英知と技術を用い、自然を持続可能な方法で活かし、利益をあるべきところへ戻す、そんな自然エネルギーに本能的に同調しています。ISEPにはビジョンがあります。既存の慣例やシステムにとらわれず、新しいものをつくっていこうという個人の姿勢と、それをサポートしていこうという組織の姿勢が非常にいいバランスで動いているのではないでしょうか。ISEPスタッフのみならず、ISEPネットワークを通じて、優秀な方々から直接学ぶことができる現在の環境に非常に感謝しています。今後は、ネットワークを拡大しつつ、今まで以上に能動的かつ効率的に、一つ一つ結果を残していきたいと考えています。

猪又 弘毅豪州カーティン大学社人類学・社会学専攻

会員のみなさまへの重要なお知らせ

2012年秋、環境エネルギー政策研究所は事務所を移転いたしました。

新事務所: 〒164-0001 東京都中野区中野4-7-3TEL: 03-5942-8937 FAX: 03-5942-8938

今後ともISEPは持続可能なエネルギー社会の実現に向けて鋭意努力してまいります。会員のみなさまにおかれましては引き続きご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

Page 13: ISEP News Letter 2012年度 第4四半期

ISEP News Letterは、四半期毎に会員のみなさまを対象として発行する環境エネルギー政策研究所の活動報告です。

認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所  〒164-0001  東京都中野区中野4-7-3  TEL: 03-5942-8937  FAX: 03-5942-8938  Eメール: [email protected]