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2015年 ISO9001 ISO14001 改定のポイント

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2015年

ISO9001 ISO14001

改定のポイント

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~はじめに~

ISO9001 にとっては 4 回目の改定で 2000 改定以来の大改定、

ISO14001 にとっては 2 回目の改定で初めての大改定と言われる 2015

年改定。しかも初めて2つのメジャーな規格が今回同時に改定されます。

この改定規格への対応にあたっては、まず今回の改定の「精神」「思想」と

いうべきものを理解することが非常に重要です。

この小冊子では、今回の改定版における大きなポイントを通じて、改定の

「思想」を説明しています。

改定規格への対応の第一歩として活用していただければ幸いです。

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<もくじ>

2015 年改定の目的 3

改定規格の構造 4

改定の重要なポイント 6

移行までに実施すべきこと 20

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2015 年改定の目的

今回の改定には、1つの大きな目的があります。

「期待される結果」を達成する上で

より有効なマネジメントシステムにする!

「審査のための ISO」「役に立たない膨大な文書」「本業と乖離したシステ

ム」・・・。ISO マネジメントシステムの運用に対してこれまで様々な批判

がされてきました。

一方で、ISO9001 は「一貫して適合した製品・サービスの提供と、それ

による顧客満足の向上」、ISO14001 は「汚染の予防を含む環境保護」と

いった、それぞれの規格から「期待される結果」があります。

「役に立たない」「形骸化した」システムから脱し、それぞれの規格が目指

す「期待される結果」の実現に役立つシステムにすること。

これが、今回の規格改定の最も大きな目的と言えるでしょう。

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情報技術の高度化に合わせ、

グローバル化はますます進み、

これまで想像すらしなかった場面で

ビジネスチャンスが生まれ、一方でリスクも発生するなど、

組織を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。

組織がこの急速な変化に対応し、「期待される結果」を達成することがで

きるために、規格自体も変化をしていかなくてはならないのです。

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改定規格の構造

今回の改定規格の構造には、大きな特徴があります。それは、

マネジメントシステム規格の「共通構造」が

採用された

ということです。

ISO(国際標準化機構)では、ISO9001、ISO14001 のほかにも様々

なマネジメントシステム規格を策定しています。

しかしこれまでは規格の章立てや表現などが統一されていなかったため、

複数の認証を取得していた場合、統合運用に困難な部分もありました。

そこで、2012 年、マネジメントシステムの共通要素(HLS/コモンテ

キスト/付属書 SL)が開発され、以降、開発・改定されるマネジメント

システム規格はこの共通要素に各規格固有の要素を加えた形で作成するこ

とが決められました。

これにより、複数のマネジメントシステム規格を運用している組織は、

今回の改定をより良い統合システム構築のための絶好の機会とすることが

できるでしょう。

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改定の重要なポイント

それでは、今回の改定規格ではどのような点が変わるのでしょうか。

細かい文言まで見ていけば多くの変更がありますが、まずはそれらの

変更の背景にある「思想」を理解することが重要です。

そこで、数ある変更のうちもっとも大きいと思われる

7つの主な変更点

にあえて絞って、その背景にある意図とともに見て行きたいと思います。

共通構造による主な変更点が5つ、

ISO9001 固有の要素による主な変更点と、

ISO14001 固有の要素による主な変更点がそれぞれ 1 つずつ、

合わせて右に挙げた7つです。

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次のページから、これらの変更点を詳しく見ていきましょう。

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○変更点その1(共通)

戦略的思考とリスクベースの思考の重視

今回の改定では何と言ってもこれが最大の変更点と言えるでしょう。

具体的には、改定規格の 4.1(組織及びその状況の理解)、4.2(利害関

係者のニーズ及び期待の理解)、6.1(リスク及び機会への取組み)とい

った項目が主に関係します。

まずここでは、組織の内外の状況(4.1)、そして関連する利害関係者の

要求(ニーズ・期待)を把握(4.2)することが必要になります。ここで

の意図はあくまで経営者が高次のレベルでこれらのことについて「ざっく

りと」理解をしていることですが、それらを考慮して組織が取り組むべき

リスク・機会を明らかにし、取り組みの計画を立てる(6.1)ことが必要

になります。

これらは要求事項としては全く新しいものですが、組織としては無意識・

非公式な形にせよ、すでに実施されていることも多いのではないでしょう

か。なぜなら組織を経営する以上、内外の状況(顧客、業界、社会などの

動向や人材、設備といった資源の状況)についてまったくの無関心・無理

解でいることはありえないでしょうし、それに基づくリスクやチャンスの

判断をまったくしていないということは考えにくいからです。そしてこれ

ら組織の状況とそれに基づくリスクを捉えて何をすべきか・すべきでない

かを判断するのが戦略といえます。

従ってここでは、自分たちの組織が置かれた状況をどのように把握し、そ

の情報に基づいてどのようなリスクや機会を想定し、そしてそのうちの主

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要なリスクや機会に対してどのように対応すべきかの計画が考えられてい

ることが重要です。

このような戦略的な検討や判断が組織内のどのような仕組みの中で実施さ

れているかは、組織によって大きく異なるでしょう(経営企画室や経営戦

略室のような専門部隊によって実施されている組織もあるでしょうし、多

くの中小企業では社長の頭の中で行われていることもあるでしょう)。し

かしここで重要なことは、組織の状況や対応すべきリスクや機会をきれい

な「リスト」としてまとめることではなく、組織の状況に基づいて把握さ

れたリスク・機会がマネジメントシステムの計画に反映される「仕組み」

をもち、その結果それらが実施され、評価され、必要な改善が行われてい

ることです。したがって、この変更点に対しては、このような視点から自

分たちのシステムを見直すことが重要です。

自分たちのシステムは、自分たちの組織の状況から特定された

リスク・機会に対する取り組みが計画の中に反映されるように

なっているだろうか?

考え方のポイント

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○変更点その2(共通)

リスクと PDCA に基づくプロセスアプローチ

の重視

これは特に ISO9001 で顕著ですが、ISO14001 でもプロセスアプロー

チ(という言葉は使われていませんが)が実質的に採用されていると考え

ることができるでしょう(4.4)。

ここでは、「リスク」と「PDCA」と「プロセスアプローチ」の関係が重

要になりますが、これを理解するには、ISO9001 の以下の記述(0.1)

が参考になります。

「ISO9001 は PDCA サイクル及びリスクベースの思考を組み込んだ、

プロセスアプローチを採用している」

これは、「リスクベースの思考」と「PDCA サイクル」を含むより上位の

概念として「プロセスアプローチ」が捉えられている、ということを意味

しています。つまり、プロセスが期待通りの結果を達成できない「リス

ク」をあらかじめ考え、それに対応してプロセスを計画することで、でき

るだけ問題の発生を予防する手立てを講じつつ、PDCA サイクルを回し

てプロセスを維持・改善していく、ということが「プロセスアプローチ」

である、ということです。

「リスク」は上記「変更点その1」でも出てきましたが、様々なレベルが

あります。「変更点その1」では組織やシステム、戦略レベルのリスクが

主に念頭に置かれていましたが、当然プロセスレベルのリスクというもの

もあり、プロセスアプローチとの関係では、このプロセスレベルのリスク

が特に関連します。

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「リスク」とは「不確かさの影響」と定義されているように、何らかの不

確定な要素を原因として起こる結果、という意味です。例えば製造プロセ

スの品質面でのリスクと言った場合は、何らかの不確定な要素(設備の稼

動や要員の力量、材料の品質の安定性、手順の解釈のバラツキなど)が結

果として製品の不良につながる可能性、と考えることができます。不良と

いう結果につながる要素の影響度の大きさは組織の状況によって異なるで

しょうが、自分たちとしてどのような要因によって不良が発生してしまう

可能性が高いかを考え、そのような不確かな要因をつぶすための管理をプ

ロセスの中に組み込み(リスクに基づくプロセスの計画)、それに基づい

てプロセスを実施し、それでも問題が発生しそう・発生してしまったとき

は必要な手を打ち、プロセスを改善する(PDCA サイクル)ということ

になります。

「PDCA」と「プロセスアプローチ」は今までの ISO9001 でも言われ

てきましたが、今回の改定ではそこに「リスクベースの思考」という概念

が加わり、より「問題発生の予防」が重視されています。ただ、この考え

方は従来も意図されていたものであり、今回明確に要求事項として表に現

れてきた、と言えるでしょう。

ISO9001 を中心に説明しましたが、この基本的な考え方は ISO14001

でもまったく同様です。ISO14001 の 2015 年版では従来の「手順」

という言葉がすべて「プロセス」に置き換わり、「リスク」と「PDCA」

に基づいてプロセスを計画・運用管理していくことが求められています。

自分たちのシステムに必要なプロセスが適切に特定され、それ

らのプロセスがリスクに基づいて計画され、PDCA に基づい

て運用管理されるようになっているだろうか?

考え方のポイント

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○変更点その3(共通)

事業プロセスへの統合

これが明確に言及されているのは改定規格の 5.1 くらい(ISO14001 で

はその他にも数箇所出てきますが)ですが、その意味するところは非常に

大きく、今回の改定の目的を達成する上での中核的な要素のひとつと言っ

てもよいくらい、非常に重要な変更点です。具体的には、5.1 において

「トップマネジメントが、要求事項を組織の事業プロセスに統合すること

によってリーダーシップとコミットメントを実証しなければならない」と

いう形で要求されています。

それでは「要求事項の事業プロセスへの統合」とは何を意味するのでしょ

うか。組織の「事業プロセス」とは、平たく言えば組織で実際に運用され

ているプロセス(仕事の流れ)、ということです。つまり、規格の要求事

項を、あくまで組織で実際に運用しているプロセスの中に組み込んで対応

してください、ということです。

今までの ISO9001 や 14001 の運用の中で大きな問題となってきたの

が、これらの規格要求事項に対応するために構築されたマネジメントシス

テムが組織の実際の運用とかけ離れたものになってしまっている、という

ことでした。マネジメントシステムの形骸化を防ぎ、有効なマネジメント

システムの運用につなげるためにも、規格の要求事項を組織の実際の「事

業プロセス」に組み込まなければならないという強い思いが規格作成者に

あり、それがこのような形で要求事項に現れたと考えられます。

それでは、具体的にはどうしたら良いのでしょうか。

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最も重要なことは「規格の要求事項から考える」のではなく、あくまで

「組織のプロセスから考える」ということです。言い換えると、「規格の

要求事項を満たすためにどうするか」と考えるのではなく、「自分たちは

どのようなプロセスで動いていて、その結果規格の要求事項が満たされて

いるか」と考える、ということです。今回の改定では、「品質マニュア

ル」や「環境マニュアル」の明示的な要求はなくなりましたが(「環境マ

ニュアル」の要求は元々ありませんでしたが)、これも、「マニュアル」と

いうと規格要求事項の裏返しのものをイメージしてしまうからであり、そ

のようなマニュアルは審査対応には役立つかもしれませんが、組織の実際

の業務にはほとんど役立たないでしょう。その代わりに新しい改定規格で

は、「組織のマネジメントシステムのプロセスを必要な程度文書化する」

ことが要求されることになりますので、あくまで「自分たちのプロセスは

どのようになっているのか」を自分たちに分かりやすいように、必要な程

度文書化することが重要です。

自分たちのシステムを構成するプロセスが正しく把握され、そ

れらのプロセスの中で規格要求事項が実現されるように必要

な文書化が行われ、実施されているだろうか?

考え方のポイント

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○変更点その4(共通)

リーダーシップの重要性の強調

変更点1、3とも関係しますが、今回の改定では経営トップのリーダーシ

ップの重要性が今まで以上に強調されています。特に ISO14001 にとっ

ては、今まで経営者の責任について明確に規定した項目はありませんでし

たから、大きな変更と言えるでしょう。

これは、具体的には 5.1「リーダーシップ及びコミットメント」の項目

で、「マネジメントシステムに関するリーダーシップとコミットメントを

実証しなければならない」として規定されています。「コミットメント」

という言葉は、日本人にはあまり馴染みのない言葉ですね。訳語としては

「約束」や「関与」といった言葉があてられることが多いですが、カルロ

ス・ゴーン氏が日産に来たときに盛んに使った言葉として記憶されている

方も多いかもしれません。ゴーン氏が使っていた「コミットメント」とい

う言葉に込めた意味から考えると、単なる「約束」や「関与」よりももっ

とずっと強く、「覚悟を持った本気の取り組み」とでも言うべき内容を意

味していると理解することができ、この 5.1 でもそのような意味として

捉えるべきでしょう。

では、どのようなことを通じてトップは「リーダーシップとコミットメン

ト」を実証しなければならないのでしょうか。これについては、

ISO9001 では a)〜j)の 10 項目、ISO14001 では a)〜i)の 9 項目を挙

げて、トップが実施すべきことを規定しています。中でも注意を要するも

のとして特筆すべきことは以下のようなことでしょう。

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マネジメントシステムの有効性への説明責任をもつ

方針・目標を組織の戦略的な方向性や状況と整合させる

マネジメントシステム要求事項を組織の事業プロセスに統合させる

マネジメントシステムが意図した結果を達成できるようにする

他の管理層がリーダーシップを発揮できるように支援する

「説明責任」とは最近よく聞かれる言葉ですが、マネジメントシステムが

有効に機能しているのか、課題は何かといったことについて、トップとし

て大局的な視点から把握し、自分の言葉で説明することが重要です。ま

た、方針や目標が組織の戦略的方向性や組織の状況(これについては変更

点1も参照)に合致していなかったり、マネジメントシステムの要求事項

が組織の実際の事業プロセス(これについては変更点3を参照)とは別に

対応されていたりしたのでは、せっかくのマネジメントシステムが形骸化

してしまいます。したがって、トップはそのようなことのないように、組

織の実態とマネジメントシステムを整合させ、マネジメントシステムが意

図した結果を達成することができるようにすることの責任を持っていま

す。さらに、リーダーシップはトップだけが発揮すべきものではなく、そ

れぞれの階層のマネジャーによって発揮されるべきものでもあるため、ト

ップはそのような各階層でのリーダーシップが発揮されるようにサポート

することも求められていることにも注意が必要です。

このように、トップにはマネジメントシステムを有効に機能させる上で非

常に大きな責任が期待され、要求されているのです。

トップは、マネジメントシステムを有効に機能させるために

自ら本気で取り組んでいるだろうか?

考え方のポイント

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○変更点その5(共通)

「パフォーマンス評価」の重視

これも今回の改定で非常に重要な変更の一つです。「パフォーマンス」と

は言い換えれば「結果」です。

マネジメントシステム規格は、言うまでもなく「システム」規格、つまり

仕組みの規格ではありますが、だからといってその結果には関心を払わな

い、ということではありません。そもそもマネジメントシステムを構築

し、運用するのは、ISO9001 であれば「一貫して適合した製品・サービ

スの提供と顧客満足の向上」、ISO14001 であれば「汚染の予防を含む

環境保護」といった目的を実現するためであり、その目的に対して有効な

システムになっていなければ、運用する意味がありません。また、ISO の

マネジメントシステムを導入している組織において不祥事が起こったり、

そこまでいかなくても品質や環境面で十分な成果が出ていない、という批

判があったことも事実です。

ISO としてはこのような問題を重視し、「アウトプットが重要である」と

いう共通認識の下、今回の規格改定を進めてきました。したがって、あく

まで「望ましい結果を生み出すためのシステム」であるということを理解

し、「システムのためのシステム」「ISO のためのシステム」にならないよ

うにすることが重要です。

それでは、これは具体的にどのような要求事項として現れてくるのでしょ

うか。細かく見ていくと、「意図した結果」「パフォーマンス」「有効性」

といった形で規格の至るところに出てきますが、特に重要なのは、

PDCA の P(計画)、C(チェック)、A(処置)の各段階でしょう。

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つまり、

「P」:「意図した結果」を達成できるように、「パフォーマンス」や「有

効性」を評価する方法を含めて計画する。(4.1、4.4、6.1 など)

「C」:実施した結果が「有効」であるか、「パフォーマンス」を監視、測

定、分析、評価する。(9.1、9.3 など)

「A」:「パフォーマンス」や「有効性」を改善する。(10)

ということです。

言い換えれば、マネジメントシステムの運用において、常に「パフォーマ

ンス」や「有効性」を意識することを求めている、とも言えるでしょう。

結果をどのように評価するかが計画の中で明らかにされ、実施

した結果が適切に監視、測定、分析、評価され、その結果必要

な改善が行われるような仕組みになっているか?

考え方のポイント

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○変更点その6(ISO9001 固有)

組織の知識

ISO9001 固有の変更点で最も大きなものといえるのが、この「組織の知

識」(7.1.6)でしょう。これは今までにはなかった全く新しい要求事項

といえます。この要求事項が含められた意図は、組織の固有技術の伝承や

更新に問題があり、それが原因で重要な技術的な知識が不足した結果、品

質問題が発生しているケースが少なからずあるため、組織の固有技術的な

知識も品質マネジメントシステムの中で確実に管理することにあります。

ただ、「知識」と言ってもそれが具体的にどのようなものまで含まれるの

か、というと必ずしも明確ではなく、そこがこの要求事項の分かりにくい

点でもあります(「知識」といってもあまりに広くてあいまいなため、ど

のような知識までを対象にして管理したらいいか分かりにくいですね)。

これに対して、規格では、まず「プロセスの運用と製品・サービスの適合

のために必要な」知識、と言い、そして注記の中で、「組織固有のもので

経験から得られるもの」ということが言われています。ここから考える

と、「知識」としては例えば以下のようなものがありうるでしょう。

・ 組織の業種固有の技術的・専門的な知識

・ 過去の成功や失敗事例から得られた教訓

・ 個々人が経験的に持っている「ワザ」や「コツ」など

注意すべきなのは、ここで言う「知識」には、いわゆる「形式知」といわ

れるような文書化された知識だけでなく、文書化されない「暗黙知」も含

まれるという点です(むしろ、その方が多いかもしれません)。だとする

と、次の問題は、そのような「暗黙知」を含めた「知識」をどのように

「管理」するのか、ということでしょう。

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ここで重要なのは、これらの「知識」を「プロセスの効果的な運用」や

「適合した製品・サービスの提供」という目的のために活用できるように

することです。つまり、事業を継続していく中で、いつのまにか必要な

「知識」が失われてしまって適切な品質を維持できなくなったり、新たに

必要な「知識」が不足して問題が発生してしまったりすることがないよう

に、必要な程度「知識」を伝承・獲得していく仕組みを構築することが重

要です。例えば、熟練者による教育や技能の認定制度、過去の失敗事例の

データベース化による活用、新規事業計画時での情報収集や調査といった

ことが例として考えられるでしょうが、これらに限られることではなく、

組織の状況に応じて柔軟に考えることが重要です。

ここまで読んで、これは「力量」の要求と重なると思われる方もいらっし

ゃるでしょう。実際、ある仕事に必要な「力量」を得るためには、それに

必要な「知識」を得ることが含まれるでしょうし、その意味で両者は実際

の仕組みの上では重なる部分も多くあると思います。また、「過去の失敗

からの教訓」という意味で考えると「是正処置」と重なる部分もあるでし

ょう。「是正処置」はある特定の不適合が再発することを防止するための

処置ですが、「是正処置」も言いかえればその不適合の経験からの教訓を

活かすことと言えますので、当然関係してきます。このように、ある仕組

みが規格の複数の要求事項に同時に関係している、ということはよくある

ことですので、規格要求に一つずつ個別に応えようとするのではなく、自

分たちの今あるシステムを出発点として、規格要求にどのように対応して

いるのかを考えると良いでしょう(これが「事業プロセスとの統合」でも

あります)。

自分たちのシステムは、過去の経験からの教訓や、ベテランが

持つワザやノウハウなどが継承され、将来にわたって活用でき

るようになっているか?

考え方のポイント

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○変更点その7(ISO14001 固有)

ライフサイクルの視点の重視

ISO14001 固有の変更点では、何といってもこの「ライフサイクル」の

視点が強調されていることが重要な点として挙げられるでしょう。

それでは「ライフサイクル」とは何でしょうか。「ライフ」(生命)の「サ

イクル」(周期)、つまり「一生」ということです。何の一生かというと

「製品・サービス」の一生です。従って、組織は自分たちが提供する製

品・サービスの一生を考えて、それに関連する環境的な影響を考慮しなけ

ればならないわけです。(6.1.2)

今までの規格では「組織が管理できる」環境側面だけでなく「組織が影響

を及ぼすことができる」環境側面も考慮しなければならない、という形で

要求されていましたが(ISO14001:2004, 4.3.1)、今回の改定ではこ

の考え方を「ライフサイクルを考慮して」というより包括的で一般的な表

現で捉え直したと言えるでしょう。

では、具体的に「ライフサイクルを考慮」するとは、どのようなことを意

味するのでしょうか。これは、「誕生」(例 原材料の産出)から「死」

(例 製品の廃棄)に至るまでの製品・サービスの「一生」を考える、と

いうことです。例えば、組織がある製品を製造する製造業であれば、自分

たちが行う製造の段階だけでなく、その前の原材料の産出から材料の加

工、そして自分たちが加工した後、その製品が運搬され、顧客に使用さ

れ、最終的に廃棄されるまでの間に環境に与える影響を考慮する、という

ことです。

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どんな組織もこの製品ライフサイクルの中のある段階を担うプレーヤーで

あり、そのライフサイクルには、自分たちの上流(例 原材料産出業者、

材料加工業者など)と下流(例 運送業者、顧客、エンドユーザー、メン

テナンス業者、廃棄業者など)にも他のプレーヤーがいます。そして「調

達(購買)」によって上流に、「設計」によって上流と下流に影響を与える

ことができる可能性があります。そこで、改定規格では更にこれらの機能

(調達や設計)を通じて、ライフサイクルの上流・下流に対して必要な環

境上の配慮がなされるような管理を要求しています。(8.1)

今までの規格でも「組織が影響を及ぼすことができる環境側面」も考慮す

る、という形で要求されていた内容が、新たに「ライフサイクルの視点」

として捉え直されることで強調されていることを理解し、自分たちの組織

の中の、いわゆる「紙・ごみ・電気」に留まらない、より広汎な環境活動

を展開するきっかけとして改定規格の意図を捉えることが重要です。

自分たちのシステムは、自分たちの組織内の活動における直接

的な環境側面だけでなく、自分たちが提供する製品・サービス

のライフサイクル(一生)における環境側面に対して間接的に

及ぼすことができる影響も考慮しているか?

考え方のポイント

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移行までに実施すべきこと

ここまで改定の目的と背景、大きな変更点について述べてきました。

今回の改定の目的と大きな変更点の意図について、何となくイメージを掴

んでいただけましたでしょうか。

ここまでは、改定規格に対する対応のはじめの一歩ですが、それでは改定

規格への移行への準備はどのように行ったら良いのでしょうか。

ここでも重要なのは、

PDCA

です。

この小冊子で改定対応の準備の第一歩を踏み出された皆さんには、右の

手順を参考に、PDCA(Plan、Do、Check、Action)に基づいて、

3 年間の移行期間の間に着実な準備を進めていただくことを期待して

おります。

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~おわりに~

自分たちにとって役に立つシステムにするためには、「ISO のためのシステ

ム」「審査のためのシステム」にならないようにすることが大切です。

そしてそのためには、改定規格の意図を正確に把握し、自分たちの実際の

仕事(プロセス)の中で規格の要求事項を満たしていくことが重要です。

今回の改定では、規格は今まで以上に大きな自由度を認めています。つま

り、あくまで何をどこまで実施する必要があるかを判断するのは組織なの

です。

改定規格が認める大きな「自由」を組織のシステムに役立てるためには、

このシステムをどのように役立てたいか、ということについて、組織が明

確な「目的意識」をもつことが重要です。さもなければ、「自由を使う」の

ではなく、「自由に使われてしまう」ことになりかねません。

その意味で、今回の改定をより良いシステムづくりのための「チャンス」

と捉え、このチャンスを活かそうという「目的意識」をもって、改定規格

への対応を進めていただくことを望んでいます。

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