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日本標準商品分類番号 87119 腰椎穿刺による髄腔内投与の実際 スピンラザ ® の投与方法 1. 腰椎穿刺に必要な条件 2. 入院から退院までの流れ 3. 腰椎穿刺前の準備 4. 腰椎穿刺・髄腔内投与の実際 5. 穿刺部位の処置、患者さんのモニタリング ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p2 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p3 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ p6 ・・・・・・ p7 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者 【禁忌】(次の患者には投与しないこと) 脊髄性筋萎縮症(SMA)の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師がいる 安全に実施するために必要なスタッフを確保することができる 緊急時に適切な処置を行うことができる 本冊子では、スピンラザの腰椎穿刺による髄腔内投与を適切かつ安全に実施する方法の例を紹介しております。 スピンラザの投与は、髄腔内投与に関する標準的手順に則って行ってください。 なお、下記の条件を満たす施設でのみ行ってください。 衞藤 薫 先生 東京女子医科大学 小児科  下村 英毅 先生 兵庫医科大学病院 小児科 【監修】 平成29年8月~平成30年3月 乳児型以外の脊髄性筋萎縮症 にも投与可能になりました

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日本標準商品分類番号 87119

腰椎穿刺による髄腔内投与の実際スピンラザ®の投与方法

1. 腰椎穿刺に必要な条件2. 入院から退院までの流れ3. 腰椎穿刺前の準備4. 腰椎穿刺・髄腔内投与の実際5. 穿刺部位の処置、患者さんのモニタリング

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p2

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p3

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ p4

・・・・・・・・・・・・・・・・・ p6

・・・・・・ p7

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

● 脊髄性筋萎縮症(SMA)の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師がいる● 安全に実施するために必要なスタッフを確保することができる● 緊急時に適切な処置を行うことができる

本冊子では、スピンラザの腰椎穿刺による髄腔内投与を適切かつ安全に実施する方法の例を紹介しております。スピンラザの投与は、髄腔内投与に関する標準的手順に則って行ってください。なお、下記の条件を満たす施設でのみ行ってください。

衞藤 薫 先生 東京女子医科大学 小児科  下村 英毅 先生 兵庫医科大学病院 小児科【監修】

平成29年8月~平成30年3月

2017年9月作成SPI-JPN-0259SPI007SW03

乳児型以外の脊髄性筋萎縮症にも投与可能になりました

脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者さんは、筋力低下により呼吸不全が起こりやすいため、血中酸素飽和度(SpO2)及び脈拍数(HR)のモニター装置、酸素、吸引装置、救急カートを準備しておく必要があります。

□ ベッド□ SpO2モニター□ HRモニター□ 酸素□ 吸引装置

処置室の設備(例)

□ 救急カート(バッグバルブマスク、アンビューバッグ、挿管チューブ、救急蘇生の薬剤等)

スピンラザの投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行ってください。安全に実施するため、必要なスタッフを確保できる医療機関でのみ行ってください。

□ 腰椎穿刺・髄腔内投与(腰椎穿刺手技に習熟した医師)□ 患者さんの体位固定(医師または看護師)□ 鎮静・麻酔、呼吸・循環管理(医師)□ 処置前後のバイタルサイン確認、処置の介助(医師または看護師)□ スピンラザの確認(薬剤師)

各役割と医療スタッフ(例)

腰椎穿刺には22Gまたは23Gスパイナル針を用います。その他、清潔を保つための器具を用意してください。

処置に必要なアイテム(例)

□ スピンラザ□ 22Gまたは23Gスパイナル針□ 5mLシリンジ□ 18-20G針(薬剤吸引用)□ スピッツ管

□ 滅菌手袋□ 滅菌したドレープと手技トレイ□ 皮膚消毒用イソジン□ シャープスコンテナ□ 滅菌ガーゼ、接着包帯

医療スタッフ

器 具

設 備

腰椎穿刺に必要な条件 入院から退院までの流れ患者さんには、処置を行う当日の朝までに来院(入院)していただき、感染チェックや診察、運動機能評価、持参薬の確認などを行います。絶食後、必要に応じて鎮痛・鎮静処置を行い、スピンラザの髄腔内投与を行います。処置前から処置後まで、バイタルサインや呼吸・循環をモニタリングします。処置後はバイタルサインや有害事象を確認しながら、患者さんには臥位で安静に過ごしていただきます。翌日に再度診察を行い、有害事象などを確認後、退院、という流れになります。

入院から退院までの患者さん・各医療スタッフのフロー(例)

*3:鎮痛・鎮静の例̶ 処置30分前にリドカイン等を配合した貼付剤を穿刺予定部位に貼付、必要に応じて処置直前にミダゾラムによる鎮静(東京女子医科大学)処置直前にチアミラールナトリウムによる鎮静(兵庫医科大学病院)各薬剤の使用にあたっては、それぞれの最新添付文書をご参照ください。

*1:経口摂取制限時間の例̶ 清澄水は2時間、母乳は4時間、人工乳あるいは固形物は6時間(「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」、日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会、2013)。ただし患者さんの状態に応じて適切に調整する。

*2:透視を含む

医師または看護師

患者さんの体位固定

9:00 11:00 12:00 13:00 翌日

医師 鎮静・麻酔管理、呼吸・循環管理

医師または看護師

処置の介助

処置前の体温、血圧、SpO2、HR測定

処置後の体温、血圧、SpO2、HR測定、有害事象確認

薬剤師 スピンラザ、持参薬の確認

【使用上の注意】2.重要な基本的注意(抜粋):(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。 6.小児等への投与:早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

患者さん来院

退院(処置)処置後

1時間安静、試飲後経口開始

処置前は一定時間、経口摂取を制限*1

医師スピンラザの確認 腰椎穿刺・髄腔内投与処置

再度診察、有害事象確認(必要に応じて

鎮痛・鎮静処置)*3運動機能評価

感染チェック、診察(側弯がある場合は

超音波、X線*2検査を考慮)

(または前日から入院)

2 3

脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者さんは、筋力低下により呼吸不全が起こりやすいため、血中酸素飽和度(SpO2)及び脈拍数(HR)のモニター装置、酸素、吸引装置、救急カートを準備しておく必要があります。

□ ベッド□ SpO2モニター□ HRモニター□ 酸素□ 吸引装置

処置室の設備(例)

□ 救急カート(バッグバルブマスク、アンビューバッグ、挿管チューブ、救急蘇生の薬剤等)

スピンラザの投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行ってください。安全に実施するため、必要なスタッフを確保できる医療機関でのみ行ってください。

□ 腰椎穿刺・髄腔内投与(腰椎穿刺手技に習熟した医師)□ 患者さんの体位固定(医師または看護師)□ 鎮静・麻酔、呼吸・循環管理(医師)□ 処置前後のバイタルサイン確認、処置の介助(医師または看護師)□ スピンラザの確認(薬剤師)

各役割と医療スタッフ(例)

腰椎穿刺には22Gまたは23Gスパイナル針を用います。その他、清潔を保つための器具を用意してください。

処置に必要なアイテム(例)

□ スピンラザ□ 22Gまたは23Gスパイナル針□ 5mLシリンジ□ 18-20G針(薬剤吸引用)□ スピッツ管

□ 滅菌手袋□ 滅菌したドレープと手技トレイ□ 皮膚消毒用イソジン□ シャープスコンテナ□ 滅菌ガーゼ、接着包帯

医療スタッフ

器 具

設 備

腰椎穿刺に必要な条件 入院から退院までの流れ患者さんには、処置を行う当日の朝までに来院(入院)していただき、感染チェックや診察、運動機能評価、持参薬の確認などを行います。絶食後、必要に応じて鎮痛・鎮静処置を行い、スピンラザの髄腔内投与を行います。処置前から処置後まで、バイタルサインや呼吸・循環をモニタリングします。処置後はバイタルサインや有害事象を確認しながら、患者さんには臥位で安静に過ごしていただきます。翌日に再度診察を行い、有害事象などを確認後、退院、という流れになります。

入院から退院までの患者さん・各医療スタッフのフロー(例)

*3:鎮痛・鎮静の例̶ 処置30分前にリドカイン等を配合した貼付剤を穿刺予定部位に貼付、必要に応じて処置直前にミダゾラムによる鎮静(東京女子医科大学)処置直前にチアミラールナトリウムによる鎮静(兵庫医科大学病院)各薬剤の使用にあたっては、それぞれの最新添付文書をご参照ください。

*1:経口摂取制限時間の例̶ 清澄水は2時間、母乳は4時間、人工乳あるいは固形物は6時間(「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」、日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会、2013)。ただし患者さんの状態に応じて適切に調整する。

*2:透視を含む

医師または看護師

患者さんの体位固定

9:00 11:00 12:00 13:00 翌日

医師 鎮静・麻酔管理、呼吸・循環管理

医師または看護師

処置の介助

処置前の体温、血圧、SpO2、HR測定

処置後の体温、血圧、SpO2、HR測定、有害事象確認

薬剤師 スピンラザ、持参薬の確認

【使用上の注意】2.重要な基本的注意(抜粋):(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。 6.小児等への投与:早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

患者さん来院

退院(処置)処置後

1時間安静、試飲後経口開始

処置前は一定時間、経口摂取を制限*1

医師スピンラザの確認 腰椎穿刺・髄腔内投与処置

再度診察、有害事象確認(必要に応じて

鎮痛・鎮静処置)*3運動機能評価

感染チェック、診察(側弯がある場合は

超音波、X線*2検査を考慮)

(または前日から入院)

2 3

【使用上の注意】2. 重要な基本的注意(抜粋):(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。 6. 小児等への投与:早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

針を装着した5mLシリンジを用いて、はじめに投与量以上のスピンラザをシリンジに吸引し、シリンジ・針の脱気を行いつつシリンジ内のスピンラザを規定量に合わせます。(注意事項)●スピンラザをシリンジに吸引した後、6時間以内に使用しなかった場合は、廃棄してください。●患者さんの容体の変化など、処置ができなくなった場合に、バイアルが未開封で未使用の場合は、冷蔵庫に戻してください。

シリンジの準備

腰椎穿刺領域の皮膚を消毒します*4。L3-L4部位から始めて外側に向かい、L2-L3部位、L4-L5部位を含む範囲まで消毒するようにします。消毒を行ったら、滅菌ドレープを設置します。

*4:消毒の例 ̶ 術者の手洗い中に、他のスタッフが消毒を行う(東京女子医科大学)手洗い後、術者が消毒を行う(兵庫医科大学病院)

穿刺部位の消毒

脊髄

くも膜下腔CSF

スパイナル針

L3

L4

馬尾(神経根)

L5

スパイナル針の穿刺部位は、腸骨稜の最も高い部分に位置するL3-L4部位またはL4-L5部位です。穿刺部位は、触診などによりあらかじめ確認しておきます。

超音波、X線*3検査の使用について●重度の脊柱変形(側弯など)を生じている患者さんで、穿刺部位の確認が困難な場合は、手技に習熟した麻酔科医の立ち会いのもと、X線透視、超音波検査の使用を考慮してください。

●実施する際は、施設のプロトコルに従ってください。

穿刺部位の確認

患者さんの体位は、膝屈曲位に固定します。膝を胸の方に近づけ、胴をしっかり曲げます。

(注意事項)●患者さんの状態によっては、体位を変えることで、呼吸停止、心停止の恐れがあります。常に呼吸状態、SpO2、HRなど、バイタルサインを確認してください。

●バイタルサインを常に確認できるスタッフが参加するようにしてください。

●人工呼吸を行っている患者さんの場合、カニューレが抜けたり、マスクが脱げないように注意してください。

患者さんの体位固定

スピンラザは、投与する前に室温に戻します。急速に温めることは避けます。また、投与前にバイアルを確認し、スピンラザの溶解液が無色透明で浮遊物がないことを目視にて確認します。

バイアルの準備・確認

腰椎穿刺前の準備

患者さんには、処置前に一定時間、経口摂取を制限します*1。

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者は、本剤の投与の禁忌です。また、呼吸器などの感染症、呼吸循環不全、頭蓋内圧亢進状態、出血傾向、穿刺部の感染・汚染、腰椎手術後などは腰椎穿刺の禁忌です。側弯などの脊柱変形が疑われる患者さんの場合には、事前に超音波、X線検査で穿刺部の評価を行うことを考慮してください。

診 察

*1:経口摂取制限時間の例 ̶ 清澄水は2時間、母乳は4時間、人工乳あるいは固形物は6時間(「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」、日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会、2013)。ただし患者さんの状態に応じて適切に調整する。

必要に応じて、鎮痛処置を行います*2。鎮静・麻酔は必須ではありませんが、体動等により安全に手技を行うことが困難と考えられた場合には鎮静処置や麻酔を行います*2。

(注意事項)●常に呼吸状態、SpO2、HRなど、バイタルサインを確認してください。鎮静を行う際、緊急時に挿管困難が予測される場合には、小児患者に対応できる麻酔科医、集中治療医、救急医との連携が推奨されます。

鎮痛・鎮静*2:鎮痛・鎮静の例 ̶ 処置30分前にリドカイン等を配合した貼付剤を穿刺予定部位に貼付、必要に応じて処置

直前にミダゾラムによる鎮静(東京女子医科大学)処置直前にチアミラールナトリウムによる鎮静(兵庫医科大学病院)各薬剤の使用にあたっては、それぞれの最新添付文書をご参照ください。

*3:透視を含む

処置に用いる器具を準備します。術者は、手洗いをし、滅菌手袋、滅菌ガウン、サージカルマスク、サージカルキャップ等を装着します。

器具の準備

滅菌ガーゼ滅菌手袋

スパイナル針

5mLシリンジ

滅菌した手技トレイ 滅菌していない手技トレイ

皮膚消毒用イソジン

マーカーで印をつけたスピッツ管

接着包帯シャープスコンテナ

器具の例

2歳(730日齢)を超える患者にはヌシネルセンとして1回12mg(5mL)を投与します。2歳以下の患者には、脳脊髄液の容量が少ないため、日齢で調節した投与量を投与します。

投与量の確認

投与スケジュールについて●乳児型SMAに対しては最初の9週に4回(初回投与後、2週、4週及び9週)の負荷投与を、その後4ヵ月に1回の維持投与を行います。

●乳児型以外のSMAに対しては最初の12週に3回(初回投与後、4週及び12週)の負荷投与を、その後6ヵ月に1回の維持投与を行います。

日齢によるスピンラザ投与量各投与時の日齢 用量 投与液量 0~90日齢 9.6mg 4mL91~180日齢 10.3mg 4.3mL181~365日齢 10.8mg 4.5mL366~730日齢 11.3mg 4.7mL

5mL12mg731日齢~

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【使用上の注意】2. 重要な基本的注意(抜粋):(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。 6. 小児等への投与:早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

針を装着した5mLシリンジを用いて、はじめに投与量以上のスピンラザをシリンジに吸引し、シリンジ・針の脱気を行いつつシリンジ内のスピンラザを規定量に合わせます。(注意事項)●スピンラザをシリンジに吸引した後、6時間以内に使用しなかった場合は、廃棄してください。●患者さんの容体の変化など、処置ができなくなった場合に、バイアルが未開封で未使用の場合は、冷蔵庫に戻してください。

シリンジの準備

腰椎穿刺領域の皮膚を消毒します*4。L3-L4部位から始めて外側に向かい、L2-L3部位、L4-L5部位を含む範囲まで消毒するようにします。消毒を行ったら、滅菌ドレープを設置します。

*4:消毒の例 ̶ 術者の手洗い中に、他のスタッフが消毒を行う(東京女子医科大学)手洗い後、術者が消毒を行う(兵庫医科大学病院)

穿刺部位の消毒

脊髄

くも膜下腔CSF

スパイナル針

L3

L4

馬尾(神経根)

L5

スパイナル針の穿刺部位は、腸骨稜の最も高い部分に位置するL3-L4部位またはL4-L5部位です。穿刺部位は、触診などによりあらかじめ確認しておきます。

超音波、X線*3検査の使用について●重度の脊柱変形(側弯など)を生じている患者さんで、穿刺部位の確認が困難な場合は、手技に習熟した麻酔科医の立ち会いのもと、X線透視、超音波検査の使用を考慮してください。

●実施する際は、施設のプロトコルに従ってください。

穿刺部位の確認

患者さんの体位は、膝屈曲位に固定します。膝を胸の方に近づけ、胴をしっかり曲げます。

(注意事項)●患者さんの状態によっては、体位を変えることで、呼吸停止、心停止の恐れがあります。常に呼吸状態、SpO2、HRなど、バイタルサインを確認してください。

●バイタルサインを常に確認できるスタッフが参加するようにしてください。

●人工呼吸を行っている患者さんの場合、カニューレが抜けたり、マスクが脱げないように注意してください。

患者さんの体位固定

スピンラザは、投与する前に室温に戻します。急速に温めることは避けます。また、投与前にバイアルを確認し、スピンラザの溶解液が無色透明で浮遊物がないことを目視にて確認します。

バイアルの準備・確認

腰椎穿刺前の準備

患者さんには、処置前に一定時間、経口摂取を制限します*1。

本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者は、本剤の投与の禁忌です。また、呼吸器などの感染症、呼吸循環不全、頭蓋内圧亢進状態、出血傾向、穿刺部の感染・汚染、腰椎手術後などは腰椎穿刺の禁忌です。側弯などの脊柱変形が疑われる患者さんの場合には、事前に超音波、X線検査で穿刺部の評価を行うことを考慮してください。

診 察

*1:経口摂取制限時間の例 ̶ 清澄水は2時間、母乳は4時間、人工乳あるいは固形物は6時間(「MRI検査時の鎮静に関する共同提言」、日本小児科学会・日本小児麻酔学会・日本小児放射線学会、2013)。ただし患者さんの状態に応じて適切に調整する。

必要に応じて、鎮痛処置を行います*2。鎮静・麻酔は必須ではありませんが、体動等により安全に手技を行うことが困難と考えられた場合には鎮静処置や麻酔を行います*2。

(注意事項)●常に呼吸状態、SpO2、HRなど、バイタルサインを確認してください。鎮静を行う際、緊急時に挿管困難が予測される場合には、小児患者に対応できる麻酔科医、集中治療医、救急医との連携が推奨されます。

鎮痛・鎮静*2:鎮痛・鎮静の例 ̶ 処置30分前にリドカイン等を配合した貼付剤を穿刺予定部位に貼付、必要に応じて処置

直前にミダゾラムによる鎮静(東京女子医科大学)処置直前にチアミラールナトリウムによる鎮静(兵庫医科大学病院)各薬剤の使用にあたっては、それぞれの最新添付文書をご参照ください。

*3:透視を含む

処置に用いる器具を準備します。術者は、手洗いをし、滅菌手袋、滅菌ガウン、サージカルマスク、サージカルキャップ等を装着します。

器具の準備

滅菌ガーゼ滅菌手袋

スパイナル針

5mLシリンジ

滅菌した手技トレイ 滅菌していない手技トレイ

皮膚消毒用イソジン

マーカーで印をつけたスピッツ管

接着包帯シャープスコンテナ

器具の例

2歳(730日齢)を超える患者にはヌシネルセンとして1回12mg(5mL)を投与します。2歳以下の患者には、脳脊髄液の容量が少ないため、日齢で調節した投与量を投与します。

投与量の確認

投与スケジュールについて●乳児型SMAに対しては最初の9週に4回(初回投与後、2週、4週及び9週)の負荷投与を、その後4ヵ月に1回の維持投与を行います。

●乳児型以外のSMAに対しては最初の12週に3回(初回投与後、4週及び12週)の負荷投与を、その後6ヵ月に1回の維持投与を行います。

日齢によるスピンラザ投与量各投与時の日齢 用量 投与液量 0~90日齢 9.6mg 4mL91~180日齢 10.3mg 4.3mL181~365日齢 10.8mg 4.5mL366~730日齢 11.3mg 4.7mL

5mL12mg731日齢~

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【使用上の注意】2.重要な基本的注意(抜粋):(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。 6.小児等への投与:早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

椎間を確認して穿刺します。※脳脊髄液に血液が混じっていた場合は、一度針を抜いて、止血し、上下いずれかの部位に再び穿刺します。

スピンラザの注入後、スパイナル針を抜き、穿刺部位に滅菌ガーゼを置き、接着包帯を置きます。針はシャープスコンテナに廃棄します。処置後、患者さんは、ベッドで1時間は頭部を挙上しない体勢(臥位など)で安静に過ごしていただきます。

留置したスパイナル針から、スピンラザの投与量と同程度の量の脳脊髄液(CSF)をスピッツ管に採取します。

スピンラザを充填したシリンジをスパイナル針に取り付けます。※空気が混入しないよう、スピンラザ液が表面張力で盛り上がっている状態のシリンジを、髄液がスパイナル針のハブから盛り上がっているタイミングで取り付けるようにします。

スピンラザは、1~3分かけてゆっくりと注入します。その際、漏れがないことを確認します。ただし、逆流確認はしないでください。

※針に触れないように注意しながら、患者さんの背中に片手を当てるなどの手技で、シリンジの位置を安定させて注入します。

腰椎穿刺

穿刺部位の処置

合併症が認められなければ、患者さんは、退院後は通常の日常生活に戻ることが可能です。2~3日は、スピンラザの副作用、髄腔内投与に伴って認められる可能性のある有害事象の有無などに注意し、発熱を含む有害事象が認められれば、ただちに医療機関に連絡していただくことを伝えます。

退 院

患者さんが処置後24時間は安静に過ごしていただくよう、患者さん、ならびに患者さんのご家族に説明します。スピンラザの副作用、髄腔内投与に伴って認められる可能性のある有害事象の有無や、バイタルサインを確認します。

・ 脚のしびれ、うずき・ 血液の漏出または注射部位の痛み・ 排尿障害・ 頭痛

・ 背部痛・ 発熱・ 嘔吐・ 意識障害

処置後のモニタリング

脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された乳児を対象とした第Ⅲ相シャム(疑似的)処置対照二重盲検試験(Study CS3B、日本を含む国際共同試験)において、本剤群80例のうち9例(11.3%)に副作用が認められた。主な副作用は発熱(2.5%)、頻脈、貧血母斑、蜂巣炎、処置後腫脹、眼振、血管炎、体温低下、体温上昇(各1.3%)であった。生後6ヵ月を超えてから発症した脊髄性筋萎縮症患者を対象とした第Ⅲ相シャム処置対照二重盲検試験(Study CS4、日本を含む国際共同試験)において、本剤群84例のうち24例(28.6%)に副作用が認められた。主な副作用は頭痛(9.5%)、背部痛(8.3%)、発熱(7.1%)、腰椎穿刺後症候群(2.4%)、嘔吐(2.4%)であった。

●バイタルサイン(血圧、HR、SpO2など)

●髄腔内投与に伴って認められる可能性のある有害事象の有無

●スピンラザの副作用の有無・ 発熱、頭痛、背部痛など

処置後のモニタリング

脳脊髄液(CSF)の採取

シリンジの装着

スピンラザの髄腔内投与

腰椎穿刺・髄腔内投与の実際 穿刺部位の処置、患者さんのモニタリング

例1 例2

投与手技に関してご不明な点がございましたら、下記にご連絡ください。

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【使用上の注意】2.重要な基本的注意(抜粋):(1)本剤の投与は、脊髄性筋萎縮症の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師のもとで行うこと。 6.小児等への投与:早産児における有効性及び安全性は確立していない(使用経験が少ない)。早産児では脳脊髄液量が少ないため、脳脊髄液中濃度が上昇するおそれがある。

椎間を確認して穿刺します。※脳脊髄液に血液が混じっていた場合は、一度針を抜いて、止血し、上下いずれかの部位に再び穿刺します。

スピンラザの注入後、スパイナル針を抜き、穿刺部位に滅菌ガーゼを置き、接着包帯を置きます。針はシャープスコンテナに廃棄します。処置後、患者さんは、ベッドで1時間は頭部を挙上しない体勢(臥位など)で安静に過ごしていただきます。

留置したスパイナル針から、スピンラザの投与量と同程度の量の脳脊髄液(CSF)をスピッツ管に採取します。

スピンラザを充填したシリンジをスパイナル針に取り付けます。※空気が混入しないよう、スピンラザ液が表面張力で盛り上がっている状態のシリンジを、髄液がスパイナル針のハブから盛り上がっているタイミングで取り付けるようにします。

スピンラザは、1~3分かけてゆっくりと注入します。その際、漏れがないことを確認します。ただし、逆流確認はしないでください。

※針に触れないように注意しながら、患者さんの背中に片手を当てるなどの手技で、シリンジの位置を安定させて注入します。

腰椎穿刺

穿刺部位の処置

合併症が認められなければ、患者さんは、退院後は通常の日常生活に戻ることが可能です。2~3日は、スピンラザの副作用、髄腔内投与に伴って認められる可能性のある有害事象の有無などに注意し、発熱を含む有害事象が認められれば、ただちに医療機関に連絡していただくことを伝えます。

退 院

患者さんが処置後24時間は安静に過ごしていただくよう、患者さん、ならびに患者さんのご家族に説明します。スピンラザの副作用、髄腔内投与に伴って認められる可能性のある有害事象の有無や、バイタルサインを確認します。

・ 脚のしびれ、うずき・ 血液の漏出または注射部位の痛み・ 排尿障害・ 頭痛

・ 背部痛・ 発熱・ 嘔吐・ 意識障害

処置後のモニタリング

脊髄性筋萎縮症(SMA)と診断された乳児を対象とした第Ⅲ相シャム(疑似的)処置対照二重盲検試験(Study CS3B、日本を含む国際共同試験)において、本剤群80例のうち9例(11.3%)に副作用が認められた。主な副作用は発熱(2.5%)、頻脈、貧血母斑、蜂巣炎、処置後腫脹、眼振、血管炎、体温低下、体温上昇(各1.3%)であった。生後6ヵ月を超えてから発症した脊髄性筋萎縮症患者を対象とした第Ⅲ相シャム処置対照二重盲検試験(Study CS4、日本を含む国際共同試験)において、本剤群84例のうち24例(28.6%)に副作用が認められた。主な副作用は頭痛(9.5%)、背部痛(8.3%)、発熱(7.1%)、腰椎穿刺後症候群(2.4%)、嘔吐(2.4%)であった。

●バイタルサイン(血圧、HR、SpO2など)

●髄腔内投与に伴って認められる可能性のある有害事象の有無

●スピンラザの副作用の有無・ 発熱、頭痛、背部痛など

処置後のモニタリング

脳脊髄液(CSF)の採取

シリンジの装着

スピンラザの髄腔内投与

腰椎穿刺・髄腔内投与の実際 穿刺部位の処置、患者さんのモニタリング

例1 例2

投与手技に関してご不明な点がございましたら、下記にご連絡ください。

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日本標準商品分類番号 87119

腰椎穿刺による髄腔内投与の実際スピンラザ®の投与方法

1. 腰椎穿刺に必要な条件2. 入院から退院までの流れ3. 腰椎穿刺前の準備4. 腰椎穿刺・髄腔内投与の実際5. 穿刺部位の処置、患者さんのモニタリング

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本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者

【禁忌】(次の患者には投与しないこと)

● 脊髄性筋萎縮症(SMA)の診断及び治療に十分な知識・経験を持つ医師がいる● 安全に実施するために必要なスタッフを確保することができる● 緊急時に適切な処置を行うことができる

本冊子では、スピンラザの腰椎穿刺による髄腔内投与を適切かつ安全に実施する方法の例を紹介しております。スピンラザの投与は、髄腔内投与に関する標準的手順に則って行ってください。なお、下記の条件を満たす施設でのみ行ってください。

衞藤 薫 先生 東京女子医科大学 小児科  下村 英毅 先生 兵庫医科大学病院 小児科【監修】

平成29年8月~平成30年3月

2017年9月作成SPI-JPN-0259SPI007SW03

乳児型以外の脊髄性筋萎縮症にも投与可能になりました