復活期すjalカーゴ - 日刊cargo | 物流総合専門紙 | … august 2008 13...

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大型機、B747-400Fに統一 JALカーゴの今年度のフリート計画の ポイントは①大型貨物機をすべてB747- 400F に統一する②中型貨物機は B767- 300F 型 3 機を中国・東南アジア路線で機 動的に配置するの2点だ。大型貨物 機では、残っていた在来型のB747-200F 型4機は今年度中にすべて退役させ、売 却する。B747-400F 型 8 機で直行化による 機材稼働率、燃費効率の向上を推進して いる。中型貨物機は昨年導入したB767- 300F 型 3 機を需要に応じてアジア域内で 柔軟に配置し、需要増に対応している。ま た、省燃費については機材更新のほか、 機体ペイントの見直しやコンテナの軽量化 に取り組んで、成果を出している。 前年度からのフレーター路線便数の見 直しは、主にアジア路線で実施した。中 国線では、従来1地点で折り返していた天 津、大連行き端未便をコ・ターミナル化し、 週2便あった中部→天津→関西線は休止。 青島線は成田~青島折り返しを1便増便 して週2便とする一方、関西→青島→成田 線を週2便から1便にした。このほか成田 CARGO AUGUST 2008 11 復活期す JAL カーゴ 特集 1 復活期す JAL カーゴ CARGO AUGUST 2008 10 復活期すJALカーゴ 復活期すJALカーゴ 特集 1 表1 日本航空インターナショナルの貨物便運航ルート一覧(2008年夏季スケジュール) 成田→アンカレジ→シカゴ→アンカレジ→成田 B747-400F 4 火~金 成田→アンカレジ→ニューヨーク→アンカレジ→成田 B747-400F 6 火~日 成田→シカゴ→アンカレジ→成田 B747-400F 1 成田→シカゴ→ニューヨーク→アンカレジ→成田 B747-400F 1 成田→ロサンゼルス→成田 B747-400F 7 火~土=1便、日=2便 関西→アンカレジ→シカゴ B747F 1 金(ノースウエスト機材) 成田→アムステルダム→ロンドン→成田 B747-400F 2 火・木 成田→アンカレジ→アムステルダム→フランクフルト→成田 B747-400F 1 成田→アンカレジ→フランクフルト→成田 B747-400F 3 火・木・土 成田→アンカレジ→ロンドン→アムステルダム→成田 B747-400F 1 成田→パリ→成田 B747-400F 4 水・木・土・日(エールフランス機材) 成田→アマルティ→フランクフルト→アマルティ→成田 MD11F 3 月・水・金(ルフトハンザ機材) 関西→アマルティ→フランクフルト→イエーテボリ→アスタナ→関西 MD11F 3 火・木・土(ルフトハンザ機材) 成田→関西→上海→関西 B767F 5 火~金 成田→上海→成田 B747-400F 6 木・金=1便、火・土=2便 成田→広州→成田 B767F 1 成田→青島→成田 B767F 2 木・金 関西→青島→成田 B767F 1 関西→大連→関西 B767F 1 成田→天津→大連→成田 B767F 1 成田→天津→大連→関西 B767F 1 関西→天津→大連→成田 B767F 1 成田→上海 MD11F 1 水(中国貨運航空機材) 成田→香港→成田 B747-400F 5 水~日 成田→香港→中部 B747-400F 1 関西→香港→成田 B767F 4 火~金 成田→ソウル→関西 B747-400F 1 関西→台北→関西 B767F 2 火・金 成田→台北→成田 B747-400F 5 火~木・土・日 成田→クアラルンプール→ジャカルタ→成田 B767F 2 木・土 成田→クアラルンプール→マニラ→関西 B767F 1 成田→シンガポール→バンコク→中部 B747-400F 3 火・水・木 成田→シンガポール→バンコク→成田 B767F 2 月・金 成田→バンコク→マニラ→成田 B767F 1 関西→バンコク→ホーチミン→関西 B767F 2 水・土 成田→シンガポール→成田 B747-400F 1 木(シンガポール航空機材) 関西→シンガポール B747-400F 1 金(シンガポール航空機材) 合計週 94 便 (自社便=74 便、うち B747-400F =47 便、B767F=27 便) ルート 機 種 週間便数 運航曜日 “こだわりの品質”で付加価値を提供 燃費よい機材に統一、関連会社も統合 “こだわりの品質”で付加価値を提供 燃費よい機材に統一、関連会社も統合 日本航空インターナショナル貨物郵便本部(JALカーゴ)は、燃料油高騰や航空貨物の減退など環境が悪化 する中で、今年度内に燃費のよくないB747-200型フレーター4機全機を退役させ、大型機はB747-400Fに 統一して燃費効率を向上させるほか、中型機はB767-300Fで機能性を駆使してマーケットに対応していく。 また、サービスの原点に立ち返って「こだわりの品質」を掲げ、基本的なサービス品質の向上に加え、「J PRODUCTS」などで付加価値サービスを提供、「JALCARGO」ブランドのステータスをさらに高めていく。関 連会社を統合し、業務重複を避けるなどムダの排除も徹底、厳しい環境の中でサバイバル競争に打ち勝つべ く諸施策を推進する。復活を期すJALカーゴにスポットを当てる。 (稲垣 健、葉山明彦、山本佳典)

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Page 1: 復活期すJALカーゴ - 日刊CARGO | 物流総合専門紙 | … AUGUST 2008 13 復活期すJALカーゴ 特集 1 ~広州線は機材をB747FからB767Fに 機材変更した。台湾線は日本アジア航空

大型機、B747-400Fに統一

JALカーゴの今年度のフリート計画の

ポイントは①大型貨物機をすべてB747-

400Fに統一する②中型貨物機はB767-

300F型3機を中国・東南アジア路線で機

動的に配置する―の2点だ。大型貨物

機では、残っていた在来型のB747-200F

型4機は今年度中にすべて退役させ、売

却する。B747-400F型8機で直行化による

機材稼働率、燃費効率の向上を推進して

いる。中型貨物機は昨年導入したB767-

300F型3機を需要に応じてアジア域内で

柔軟に配置し、需要増に対応している。ま

た、省燃費については機材更新のほか、

機体ペイントの見直しやコンテナの軽量化

に取り組んで、成果を出している。

前年度からのフレーター路線便数の見

直しは、主にアジア路線で実施した。中

国線では、従来1地点で折り返していた天

津、大連行き端未便をコ・ターミナル化し、

週2便あった中部→天津→関西線は休止。

青島線は成田~青島折り返しを1便増便

して週2便とする一方、関西→青島→成田

線を週2便から1便にした。このほか成田

CARGO AUGUST 2008 11

復活期すJALカーゴ 特集 1復活期すJALカーゴ

CARGO AUGUST 200810

復活期すJALカーゴ復活期すJALカーゴ

特集 1

表1 日本航空インターナショナルの貨物便運航ルート一覧(2008年夏季スケジュール)

成田→アンカレジ→シカゴ→アンカレジ→成田 B747-400F 4 火~金成田→アンカレジ→ニューヨーク→アンカレジ→成田 B747-400F 6 火~日成田→シカゴ→アンカレジ→成田 B747-400F 1 日成田→シカゴ→ニューヨーク→アンカレジ→成田 B747-400F 1 月成田→ロサンゼルス→成田 B747-400F 7 火~土=1便、日=2便関西→アンカレジ→シカゴ B747F 1 金(ノースウエスト機材)成田→アムステルダム→ロンドン→成田 B747-400F 2 火・木成田→アンカレジ→アムステルダム→フランクフルト→成田 B747-400F 1 金成田→アンカレジ→フランクフルト→成田 B747-400F 3 火・木・土成田→アンカレジ→ロンドン→アムステルダム→成田 B747-400F 1 土成田→パリ→成田 B747-400F 4 水・木・土・日(エールフランス機材)成田→アマルティ→フランクフルト→アマルティ→成田 MD11F 3 月・水・金(ルフトハンザ機材)関西→アマルティ→フランクフルト→イエーテボリ→アスタナ→関西 MD11F 3 火・木・土(ルフトハンザ機材)成田→関西→上海→関西 B767F 5 火~金成田→上海→成田 B747-400F 6 木・金=1便、火・土=2便成田→広州→成田 B767F 1 日成田→青島→成田 B767F 2 木・金関西→青島→成田 B767F 1 木関西→大連→関西 B767F 1 木成田→天津→大連→成田 B767F 1 金成田→天津→大連→関西 B767F 1 水関西→天津→大連→成田 B767F 1 日成田→上海 MD11F 1 水(中国貨運航空機材)成田→香港→成田 B747-400F 5 水~日成田→香港→中部 B747-400F 1 火関西→香港→成田 B767F 4 火~金成田→ソウル→関西 B747-400F 1 火関西→台北→関西 B767F 2 火・金成田→台北→成田 B747-400F 5 火~木・土・日成田→クアラルンプール→ジャカルタ→成田 B767F 2 木・土成田→クアラルンプール→マニラ→関西 B767F 1 火成田→シンガポール→バンコク→中部 B747-400F 3 火・水・木成田→シンガポール→バンコク→成田 B767F 2 月・金成田→バンコク→マニラ→成田 B767F 1 土関西→バンコク→ホーチミン→関西 B767F 2 水・土成田→シンガポール→成田 B747-400F 1 木(シンガポール航空機材)関西→シンガポール B747-400F 1 金(シンガポール航空機材)

合計週94便 (自社便=74便、うちB747-400F=47便、B767F=27便)

ルート 機 種 週間便数 運航曜日

北米線

欧州線

中国線

その他のアジア線

“こだわりの品質”で付加価値を提供燃費よい機材に統一、関連会社も統合“こだわりの品質”で付加価値を提供燃費よい機材に統一、関連会社も統合

日本航空インターナショナル貨物郵便本部(JALカーゴ)は、燃料油高騰や航空貨物の減退など環境が悪化

する中で、今年度内に燃費のよくないB747-200型フレーター4機全機を退役させ、大型機はB747-400Fに

統一して燃費効率を向上させるほか、中型機はB767-300Fで機能性を駆使してマーケットに対応していく。

また、サービスの原点に立ち返って「こだわりの品質」を掲げ、基本的なサービス品質の向上に加え、「J

PRODUCTS」などで付加価値サービスを提供、「JALCARGO」ブランドのステータスをさらに高めていく。関

連会社を統合し、業務重複を避けるなどムダの排除も徹底、厳しい環境の中でサバイバル競争に打ち勝つべ

く諸施策を推進する。復活を期すJALカーゴにスポットを当てる。 (稲垣 健、葉山明彦、山本佳典)

Page 2: 復活期すJALカーゴ - 日刊CARGO | 物流総合専門紙 | … AUGUST 2008 13 復活期すJALカーゴ 特集 1 ~広州線は機材をB747FからB767Fに 機材変更した。台湾線は日本アジア航空

CARGO AUGUST 2008 13

復活期すJALカーゴ 特集 1復活期すJALカーゴ

~広州線は機材をB747FからB767Fに

機材変更した。台湾線は日本アジア航空

(JAA)の路線を引き継ぎ、関西~台北を

B767Fで週2便新設。これに伴い、JAA

が行っていた成田→関西→台北→成田

(週1便)を取りやめるとともに、成田~台

北折り返し便を1便増便して週5便とした。

欧米線では特にフレーターの変更はな

かったが、昨年までに欧州線の旅客便は

ミラノ線を除きB747からすべてB777に切

り替えて、燃費効率の向上と貨物スペー

スの供給増を図った。今年は8月からニ

ューヨーク線、9月からサンフランシスコ線

を順次、B777に切り替えた。来年はシカ

ゴ、ロサンゼルス線も入れ替え、同様に供

給スペースを増やす。

「基本品質向上」で勝負

JALカーゴが今年度、力を入れている

のが品質向上で、「こだわりの品質」を掲

げて「JALCARGO」ブランドのステータス

をさらに高めることを目標にする。こだわ

りの品質は「基本的なサービス品質の向

上」に加え、「付加価値サービスの提供」で

実現を目指す。燃油サーチャージが高騰

する中で航空貨物の海運シフトが顕著と

なっているが、こうした時期にこそ航空貨

物のJALCARGOのサービス品質をアピ

ールする必要があるとして取り組んでい

る。

基本サービスの品質向上としては、貨物

の品質管理体制の強化や、JALカーゴ50

年の歴史の中で培ってきた貨物取り扱い、

運送などのノウハウを伝承し、安全・確

実・迅速なサービスを提供していく。こう

した空港現場の技術を社内的にも評価し

ようと、ノウハウの蓄積や関係者の提言お

よびアドバイスを行う「アドバイザリーマイ

スター」、そのアドバイスを受けて必要な

作業指示などを行い、後進にノウハウを伝

承する「積み付けマイスター」といった認定

制度を設けた。現在、成田空港でそのプ

ログラムを実施しており、関西空港と中部

空港でも導入していく。

こうした基本品質の重視は、国内のみ

ならず海外でも要求される。特に海外の

空港貨物現場は、ハンドリングを現地会社

に託さねばならないため、国内以上に不

安な面がある。前年度はJALカーゴの基

本品質のノウハウを凝縮したDVDを各国

語(日本語、英語、中国語)で作成したが、

今後はマイスターを教官として現地に派遣

し、品質指導を行うことも視野に入れて

いる。

マイスター制度のほか、中国ではこの制

度が始まる前にその土地の特性を考慮し

た地域密着型の品質向上の取り組みとし

て「チームQUE」(quality up enhancement)

を設置。中国人スタッフも採用し、06年4

月に上海に技術者を送るなど、品質の管

理・向上に取り組みを始めた。JAL担当

の空港上屋スタッフを固定してもらい、チ

ームQUEが指導する。この結果、上海で

はイレギュラー件数がそれ以前の10分の

1に減った。教材には中国語版DVDを使

うなど現地スタッフに分かりやすく指導を

している。中国ではその後、広州、北京に

もチームQUEを拡大し、それぞれ地元に

合った教え方で、基本品質の向上を図っ

ている。

J PRODUCTSで付加価値提供

「こだわりの品質」を構成するもう一方

の付加価値の提供では、付加価値商品

「J PRODUCTS」のバージョンアップを

含め、多様化、高度化する顧客ニーズに

マッチした商品を販売拡大している。

JPRODUCTSは、貨物特質にあった

高度な取り扱い品質や最速のリードタイム

CARGO AUGUST 200812

u今年4月に西松遙社長から与えられたミッ

ションは、2010年3月の成田平行滑走路2500

m化、10年10月の羽田再拡張・国際化まで

に、貨物事業を利益を出すことができるビジネ

スモデルに再構築することだ。10年10月の羽

田再拡張・国際化に関して、国際発着枠の配

分は今年5月20日の「首都圏空港における国

際航空機能拡充プラン」で一定のガイドライン

が出されている。「成田と羽田で、どう効率的に

フレーターを運航していくか」などを検討しなけ

ればならない。各国との航空交渉にもよるが、

今年秋には大枠を固め、具体的な路便は09年

度になって考えることになる。また、羽田国際

線貨物地区では、TIACTの輸出入共同上屋を

活用することになるだろう。活用に当たっては、

われわれの要望を伝えていく。

uここ数年、貨物事業の売上規模は大きく

伸びていない。しかし、燃油価格を中心とした

運航コスト、あるいは空港固定費用などは確実

に増加している。さらに、羽田再拡張に伴い、

新たな設備投資も発生する。これらのコストを

いかに吸収して、どのように利益を出せるビジ

ネスモデルにするか。まずはそれが1番大きな

ミッションになる。

u燃油価格はこの1年で倍になった。貨物、

旅客ともに航空会社の努力だけでは吸収でき

ない状況だ。国内貨物も26年ぶりに値上げに

踏み切った。中期的にみると、成田北伸、羽田

再拡張の10年あるいはそれ以降を見たときに、

燃油価格をどうみるかは、現時点で判断しにく

い。ただ言えることは、楽観的想定はできない

ということだ。われわれは、できることをしっか

り数字にして説明する責任がある。地に足の

着いた計画をしっかりと作らなければならない。

今年度を初年度とする再生中期計画も、そうい

ったことを意識している。

uJALカーゴ50年の歴史のなかで、輸送方

法にいろいろな工夫を積み重ねている。航空

輸送の付加価値をアピールすることが必要で、

われわれも「J PRODUCTS」の商品名で付加

価値サービスを提供している。「JALカーゴなら

では」の高付加価値サービスをさらにアピール

したい。一般貨物がマジョリティであることに

変わりないが、平均単価を上げるという意味で

も高付加価値サービスを増やし、収入を増加

させる必要がある。また、空港上屋施設にお

けるオペレーションのノウハウを、荷主やフォ

ワーダーにもっと理解してもらいたい。輸送事

業に求められていることは「いかに速く、そして

安全に運ぶか」だ。輸送過程の作業、例えば

しっかりとした積み付けなどの貨物取り扱いノ

ウハウを改めてアピールしていく。

u品質に関しては「マイスタープログラム」

を導入した。貨物取り扱いに関するノウハウ

の伝承について「アドバイザリーマイスター」や

「積み付けマイスター」といった資格化する取り

組みを進めている。会社として、こうした技術を

しっかり認める制度を立ち上げた。成田のJA

Lカーゴサービス(JCG)で先行して導入してお

り、関空や中部のオペレーション現場にも広げ

ていく方針だ。さらにマイスターで培ったノウハ

ウを海外にも提供し、海外発貨物についてもJ

ALカーゴのスタンダード品質の浸透につなげ

ていく計画だ。ISO認証も着実に取得しており、

顧客の貨物をしっかりと安全に届ける体制を構

築している。

u通関を含めて貨物の搭載にかかわる諸手

続き簡素化なども課題と認識している。フォワー

ダーなどの関係者と協力しなければならない。世

界共通のテーマとしてペーパーレス、省力化、コ

スト削減を考えていきたい。また、航空会社とし

てのコスト削減策として燃油高騰に対して軽量

化にも取り組まなければならず、ペイントを施して

いないフレーターも運航している。軽量化は永遠

のテーマ。また「エコ」の取り組みも重要。貨物

積み付け時に使用するラッピング、発泡スチロ

ールの再利用も取り組みの課題。現在、成田で

はこれらのリサイクル活動を進めており、さまざ

まなエコプロジェクトに取り組んでいる。

u国内貨物は宅配貨物関連が伸びている

が、生鮮貨物などを含めると大幅に伸びると

は見ていない。今後もプラスマイナス1%の

成長率で推移するのではないかと見ている。

国内貨物は、旅客便のベリースペースを活用

しているが、貨物は需要便と閑散便の需給バ

ランスが極端。あくまでも旅客便ベースでス

ペースを考えてもらうことになるが、札幌や沖

縄、福岡など貨物需要の高い路線ではB777

型が運航されている。小型化は地方路線が中

心だ。

InterviewInterview 日本航空インターナショナル・平田邦夫取締役貨物郵便本部長

2010年に向け利益出るビジネスモデル構築こだわりの品質、高付加価値サービス提供

日本航空インターナショナルの平田邦夫取締役貨物郵便本部長は「2010年の成田北伸、羽

田第4滑走路供用までに、貨物事業を利益を出すことができるビジネスモデルに再構築する

ことが使命」と話す。羽田再拡張・国際化については「今年秋までにも大枠を、09年度に入っ

て具体的な路線、便数を検討する」と説明。羽田国際線貨物地区では、東京国際エアカーゴ

ターミナル(TIACT)の輸出入共同上屋を活用する方向で調整している。また、貨物事業拡充

のために輸送にかかわる「品質」を特に重視。「JALカーゴ50年の歴史のなかで、輸送方法に

いろいろな工夫を積み重ねている。他社がまねできないノウハウ、高付加価値サービスをし

っかりアピールしていく」と強調する。平田取締役は次のように語った。

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など、高次元な域の安全・確実・迅速を

売り物としている。その1つ「J WHEEL

SHIELD」は自動車メーカーの秘匿性の高

い試作車やコンセプトカーの輸送で、専用

シールドコンテナを使って密封し、安全性

を確保するとともに、外部から形状がまっ

たくわからないまま目的地に輸送するサー

ビス。以前からあった完成車輸送に特化

した「J WHEEL」をバージョンアップし、

06年12月に秘匿性を高めた商品として売

り出した。

今年6月に販売開始した「J CARRY」

は関連会社のジュピター・ジャパンと提携

したハンドキャリー・サービス。荷受け後

約3時間で空港から手荷物扱いで海外へ

飛び立つのでエクスプレス便でも間に合

わない緊急貨物にも対応できる。独特の

ノウハウを持ち、通関手続きもスムーズで

最後まで安心できるサービスだ。

さらに8月に売り出す「J DIRECT」は

未通関貨物を空港に直接搬入することで

トータルのリードタイム短縮を図るサービ

ス。通常、輸出前の通関、検量、検尺、ラ

ベリングを行うためフォワーダー上屋に一

度搬入するが、JAL上屋に直接搬入し、

検量、検尺、ラベリングはここで行うため、

その分リードタイムを短縮できる。フォワー

CARGO AUGUST 2008 15

復活期すJALカーゴ 特集 1復活期すJALカーゴ

ダーを対象としたテーラーメード型商品で

あり、貨物の搬入、輸出手続き、通関は従

来通りフォワーダーが実施する。付加価値

サ ービスの 提 供 では 、これら「 J

PRODUCTS」群を中心に、JALカーゴと

しての特性を出していく。

羽田でも貨物同送実施

羽田空港の2010年国際化が注目を集

める中で、一足先に羽田とソウル、上海の

市内空港を結ぶ定期チャーター便が脚光

を浴びているが、JALカーゴも新たな視点

でこの貨物同送に取り組んでおり、今年7

月にスタートした羽田~香港(チェク・ラップ・

コク空港)間でも初便から実施している。

羽田の定期旅客チャーター便は、05年

11月の羽田~金浦(ソウル)路線で、JAL、

全日本空輸(ANA)、大韓航空、アシアナ

航空とともに各1日1便でスタート。現在、

B747で1日2便を運航する。07年9月末

CARGO AUGUST 200814

表2 J PRODUCTS商品一覧

スピード軸系

緊急貨物輸送サービス。予約便への搭載を保証し①90分前まで貨物受付

JSPEED着地空港到着後も最速で引き渡し

②予約便への搭載保証③24時間/365日インターネット予約受付

JFREIGHT 指定便への優先的搭載、着地での迅速な引き渡しで時間指定の ①便出発120分前まで貨物受付ニーズに対応 ②予約便へ優先搭載

JCARRY 超緊急貨物の最速サービス。ハンドキャリーで迅速な通関、 ①便出発3時間前に受託して最速便搭乗安全・安心の確保 ②インテグレーターのエクスプレスに比べて圧倒的速さ

JDIRECT未通関貨物を空港直接搬入する輸送商品。 ①代理店上屋搬入を省きトータル・リードタイムを短縮フォワーダーが販売対象のテーラーメード商品 (8月販売開始予定)

産業軸商品精密機械対象の低衝撃輸送。半導体製造装置などの輸送 ①地上搬送時の低速走行

JCARE ニーズに対応 ②出発到着時の状況をEメール通知③時間指定引き渡し

JFRESH 生鮮貨物対象。鮮度維持のため輸送時間を短縮 ①予約便へ優先搭載②到着後90分で引き渡し

医薬品など保冷を必要とする貨物が対象。①要求に応じた摂氏マイナス20~20度の温度設定

JCOOL専用保冷コンテナによるサービス

②出発到着時に温度確認しEメール通知③予約便へ優先搭載①出発到着時に貨物の外装を確認し、Eメール通知

JART 美術品に適した衝撃の少ないサービス ②地上搬送時の低速走行③予約便へ優先搭載

JWHEEL 完成車の輸送に特化したサービス①ULD積み付け時に専用グローブ、衝撃材を使用し、ボディー保護②出発到着時に貨物の外装を確認しEメール通知

JWHEELのチューンアップ商品。①秘匿性の高い試作車、コンセプトカーには密封式の専用

JWHEELSHIELD専用シールドコンテナを使用

シールドコンテナ使用②環境に配慮したシールドコンテナ使用で梱包

こんぽう

コスト削減

商品名 内容 セールスポイント

※全オンライン地点をカバー、各商品ともEメールでトレーシング情報の自動提供が可能。

国 内 貨 物 郵 便 事 業 部

日本航空インターナショナルは昨年5月に本

社貨物郵便本部傘下の「国内貨物郵便事業部」

を設立した。国内貨物郵便の販売政策、空港

でのオペレーションを1つの組織で手掛ける体

制となった。国内貨物の企画・マーケティング

機能、空港オペレーションを1カ所に集約するこ

とで、顧客ニーズに的確、迅速に対応すること

が狙いだ。現在、羽田空港の西側貨物地区の

日本航空上屋に東京空港支店貨物郵便部とと

もにオフィスを置く。

グループの国内貨物の関連組織としては、ジ

ャルカーゴセールスの国内貨物郵便販売企画

部、東日本国内貨物郵便販売部、北海道販売

部、中部販売部、西日本販売部、九州販売部、

沖縄販売部がある。

2007年度の国内貨物取扱量は06年度比

2%減の約45万㌧。貨物の取扱比率(重量ベ

ース)は宅配30%、生鮮25%で、そのほかB2

Bの一般貨物やB2Cのダイレクトメールなど。機

材小型化が進み供給スペースは3%減だったが、

これをギャラクシーエアラインズやスカイマーク

とのコードシェアで補完した。郵便を合わせた

07年度の売上は約380億円。

08年度に入ってからの貨物動向は、生鮮は

燃油高騰の影響(長距離輸送の手控え、陸送

シフト、休漁など)や気候・天候の影響による出

荷減の傾向がみられる。宅配貨物は比較的堅調

に推移している。国内貨物郵便事業部の石坂

明部長は荷動きについて「08年度に入って弱含

み感もあるが、直近の7月は繁忙期ということも

あって堅調な貨物動向

だった」と説明する。

なお郵便は4月から

貨物としての取り扱い。

一部(バラ積みのゆうパ

ック)は7月まで猶予期

間を設けていたが8月1

日からバラ積み分も貨

物化した。また今年4月

から国内線貨物運賃を一律10%上げた。

08年度供給量は07年度比3%減の見通し。

引き続きコードシェアで補うなどをして、貨物

取扱量の減少は食い止める。また昨年度に羽

田の施設でもISO9001を取得。国内の最重要

基幹空港として品質向上に向け先陣を切った

形だ。

CS向上では、危険品取り扱いに関する専用

ダイヤルを設定して、質問・疑問に対応するなど

CS向上に向けた取り組みも進めている。取扱

量の拡大策では、優先取り扱い、生鮮などの特

殊取り扱いなど新商品を含めたさまざまな工夫

で新規需要拡大を図っていく方針。

さらに羽田国際線を活用した形で、羽田を中

継拠点とした国内~国際貨物需要を取り込む。

10年10月の羽田国際化を前にした段階で、現

行の羽田国際線を利用した形で国内線と国際

線の接続による貨物取扱量の拡大につなげる。

すでにチャーター便で運航している羽田~上

海・虹橋線、羽田~ソウル・金浦線、羽田~香

港線で同施策に取り組む。

優先取り扱いなど新商品で需要創出羽田国際化で一貫輸送需要開拓も視野

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石坂部長