japan libraryassociation20141101sanochie
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相対湿度変化を緩和できる
収納箱のテスト
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前
日付
温度
℃あ
るい
は相
対湿
度%
RH
room Temp, °C room RH, % Large Temp, °C Large RH, % small Temp, °C small RH, %
蒸れ
温度が上がると湿度が上がる「蒸れ」が見られる
資料保存の考え方の変化
修理してもオリジナルには戻らない
劣化→資産の減少
処置中心
被害が生じた後の対策
予防中心
被害を未然に防ぐ対策
Preventive Conservation
文化財の価値の喪失
コスト
価値
価値
環境整備
修理経費
①色がつく(分生子に色、色素産生、フォクシング)
②根が張る(文化財内部に菌糸が生長、物理的破壊)
③資料そのものを傷める(代謝物の有機酸などで、化学的影響)
カビによる影響の周知
被害事例
文化財のカビ被害防止チャート(2004年)
カビの成長
• 水・栄養・酸素などの条件がそろって細胞分裂を開始する
• はじめに基質内で水平方向に成長する(充分に栄養を摂取する、見つけにくい)
• 第二段階で気中菌糸が立ち上がる(気がつく)
• 環境条件により分生子、菌核、耐久性のある厚膜胞子などを作る
→繁殖あるいは休眠
カビの生育
資料を構成する材料(紙、木材、絹、毛など)や糊,膠など、資料由来の栄養分
修復・装幀 新しい栄養分の供給
革製品,動物標本,植物標本等のタンパク源そのもの
ほこり、カビの死骸など
水の量
水の利用しやすさ
カビの生えやすさに、大きく影響
栄養分
各種材料と劣化-材料化学の視点から
• 有機物主体
書籍・古文書
漆工芸品
染織品
絵画
• 無機物
土器
陶磁器
金属器
刀剣類
鉱物顔料
• 構造を持つ複合材質でできている • 合成物より天然物は均質である
• 均質なものは長寿命
• 偏析など、製作技術次第で混合物になる
• 混合物は経年変化で分離する
• 有機物は堅く脆くなる
寿命の長さの一般則
一点モノの美術品
>中央政権の歴史史料
>歴史資料
地方文書・公文書・アーカイブ・マイクロフィルム
>民俗資料
現代美術・画像/映像
>薄利多売の工業製品・生活資材
>一時的な資料・インスタレーション
均質性が重要
紙の作り方 良質の和紙の場合
楮、ミツマタ、ガンピの靱性繊維を取り出す
トロロアオイ、ノリウツギなどの「ねり」を加えて、水中で分散させる
漉きあげる
多糖類・・・カビの栄養源になる有機物
アルカリで煮る
叩く
塵取り
繊維を取り出す
紙の製造ー寿命に影響する要因
• 植物繊維の取り出し方
繊維の長さ
夾雑物の量
叩解による物理的損傷
填料・添加物
綴じ
図は、阿波和紙 http://www.awagami.or.jp/awawashi/koutei.htmlから借用
皮革ー皮から革へ
• 脂を除き、タンパク質(主にコラーゲン繊維)を変性させる「なめし」工程を加えたもの
• 柔軟性を持たせるために合成脂を加える
CH-COOH
NH
アミノ酸
Pro(プロリン) 光に弱い化学構造
図は http://fhu.meblog.biz/article/2764373.html からお借りしました
タンパク質 → アミノ酸
アミノ酸 はペプチド結合を持つ
絹の劣化
加水分解
C N O H
日本画用絵絹はセリシン質を残した状態
染織品は、セリシン層を除いた状態に精錬されている
窒素源の有無は、生物の生育に影響する
例)ヒメカツオブシムシは動物食なしに生育完了しない
無機化合物(二酸化炭素など)だけを炭素源とし、無機化合物あるいは光をエネルギー源として生育する生物
光合成独立栄養生物 植物やそのほかの光合成生物
化学合成独立栄養生物 無機化合物を酸化してエネルギーを得る細菌
藍藻(シアノバクテリア) 光合成によって酸素を作る
独立栄養生物
窒素は窒素固定細菌や根粒菌以外では食物連鎖を通じて取り込む必要がある
自然界では窒素は不足しがち
カビ以上の高等な生物は生育を完了し繁殖するためにタンパク質素材のものを加害する
生体を構成する重要な元素
-炭素、窒素、リン-
カビ被害防止対策確立へのフレームワーク
• カビ被害への理解促進
生態・文化財への影響→予防・監視へ
回避
遮断
監視
対処
見直し
利用できる水分量の抑制→空調、室間の差圧調整
塵埃の低減、浮遊粉塵除去→フィルター利用
検出方法の普及→LED点光源の利用
ガス燻蒸利用時の基準、保護具と廃棄
汚染拡大防止
カビの生育
資料を構成する材料(紙、木材、絹、毛など)や糊,膠など、資料由来の栄養分
修復・装幀 新しい栄養分の供給
革製品,動物標本,植物標本等のタンパク源そのもの
ほこり、カビの死骸など
水の量
水の利用しやすさ
カビの生えやすさに、大きく影響
栄養分
主要な粉塵の粒子径
• 2μmを境に挙動が異なる
1mm 1μm=1/1000mm 1nm=1/1000μm
顕微鏡で見える 肉眼で見える 電子顕微鏡で見える
花 粉
細 菌 ウィルス
カ ビ たばこの煙
エアワッシャー
エアフィルター HEPAフィルター
電 気 集 塵
空中を浮遊
空気清浄機が必要 床に沈降 吸引清掃で清浄化
PM2.5 とは
• 粒径が2.5マイクロメートル以下の大気中の微小粒子状物質
• 環境基準制定(2009年)
• 一年平均値に係わる基準値 15μg/m3
• 一日平均値に係わる基準値 35μg/m3
• 2011年度にPM2.5モニタリングが多くの自治体で始まる
• 健康影響や文化財影響は未解明 2011年度の連続測定結果に基づく全国的なPM2.5汚染の状況解析、板野ほか、大気環境学会誌、48(3)、154-160
(2013)
国内の分布
• 南の方が濃度が高い傾向
• 春季・秋季に濃度が高い
北 ■>35μg/m3 >15μg/m3 □< 15μg/m3
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 南
上手な掃除の仕方
• 水拭きが先 ディスポの不織布、あるいは殺菌効果のある洗剤で洗浄・脱水したクロスを使用
• 掃除機は後
• 排気が床にあたらないよう、持ち上げられる軽い掃除機が良い
• 繰り返しの掃除が有効
• 壁・天井も10年に一度、吸引掃除
書架、棚、保管箱の外側を清掃
空気清浄機の利用
• 目の細かいフィルターでろ過するタイプを選ぶ
• HEPA等、目の細か
いタイプを選ぶ
• 吸い込み・吹き出し
範囲に限界あり 送風機などを増設して補う
細かな粒子は浮遊
1ケタしか減らない
粗い粒子は床に沈降
掃除!
基本的な施設要件ー安全な建物
• 浸水しない立地
• 地震で崩れない建物
• 漏水のない建物
• 十分な断熱性能がある屋根・壁
• 資料を安全に取り扱える十分なスペースがある
• やや爽やかで快適な温度湿度環境
• 温度湿度の変化はゆるやか
• ゆるやかな気流
• 深呼吸できる清浄な空気
• 見やすい照明
• 害虫に侵入されにくい開口部 箱
部屋
雨漏りしない屋根
亀裂のない壁
保管空間の相対湿度とカビの成長
• グラフの読み方
80%RHの空間では、約2週間でカビが生長
70%RHの空間では、
約180日
65%RHの空間でも、
2~3年
Michalski(1999), ICOM-CC
温度湿度のモニタリング
• 相対湿度が65%を超えない
• 相対湿度が40%を下回らない
• 短期の急激な変動は避けるべき
• 温度については、資料の安全を図るために、取り扱う人間に負担が少ないよう27℃を超えない
結露を避ける
低温マイクロ庫
隣接区画との温度差に注意
→室内に温度むらを作らない
外部が内部より低温の時期
金属板ではめ殺した窓
低温になった空間の湿度が高くなる
→含水率上昇
資料庫で カビ発生
冷気
冷気
事務室
夏に事務室だけ冷房を入れると
カビの発生位置は事務室近傍に動く
資料点検 のタイミング
• 貸借前後の点検・記録
• 台風、集中豪雨、豪雪
• 外気温の急激な変化のあった時
• 温湿度設定を変えた時(特に、設定温度を下げた時)
カビが生えやすい資料を選んで点検
(被害があれば、撮影・場所を記録しすぐに除去)
斜光線を当てる
LEDのように輝度が高い照明が写しやすい
ガラス面の上のカビコロニーの写真を撮る
×フラッシュ
背景が濃い色の場所を選ぶ
近接撮影モード
カビコロニーの写真を撮る 監視手法
ATP量測定で活性を評価する方法も
付着菌量の評価
滅菌綿棒で直接採取する方法。清拭できる対象については、生培地を接触させて採取することもある。定量的に行うのは難しい。
• 利点 生育する可能性のある菌種を把握できる。
• 欠点 現在生育中の菌のみの採取が難しい
現在は、ATP量測定で評価する手法も採用されるようになってきた→活性度は明確に区別できる
滅菌綿棒による試料採取 培養後の様子
区域
落下細菌数
落下真菌数
浮遊細菌数
浮遊真菌数
付着細菌数
付着真菌数
(5分あたりの個数)
(20分あたりの個数)
(100リットルあたりの
個数)
(100リットルあたりの
個数)
(25平方センチメートルあたりの
個数)
(25平方センチメートルあたりの
個数)
汚染区域
100以下
100以
下
100以下
30以下
準清潔区域
50以下 30以下 40以下 30以下 10以下
清潔区域
30以下 10以下 10以下 5以下
数値は、アメリカ航空宇宙局(NASA(ナサ))の定める空気清浄度クラスに対応しており、清潔区域はNASA(ナサ)基準の清浄度100,000にほぼ対応する。(「カビ専門家会合」より、文部科学省HP)
高湿度の環境で発生
被害はそれほど大きくない
カビを食べているのでカビ対策が必要
チャタテムシ 高湿度指標昆虫
シミ
チャタテムシに比べると、糊をばりばりと食べるので修理後の本や、ふすまなどの被害例が顕著に
ゴキブリ 食害のほか、フン害も顕著
<被害があれば即処置、
被害がないのに処置するのは無駄>
• 活動中のカビである(臭気がある)
• 大面積でカビ発生
化学薬剤に頼らない処置を検討
化学薬剤による処置を検討
(公財)文化財虫菌害研究所の認定を受けた方法で行う
処置後はカビ死骸除去のためにクリーニングが必要
顕著な被害状況ではない
/進行中ではない カビ被害への処置
1 カビを不活性にする(乾燥) 2 物理的に除去する 専門家に相談 保護具を使う マスク、手袋、作業着
空気清浄機、ミュージアムクリーナーなどを用いて、空気の流れのあるところでカビを筆などではらう
用具等の処理
• 作業中に使用したマスクや手袋など繰り返し使用するものは、洗濯したのち十分に日光にあてて殺菌消毒する。
• 拭き取りに用いた布等は、拭き取り除去したカビ等によりその他の環境を汚染しないように、厚手のポリエチレン袋を二重にした袋に入れ、しっかり口を絞め、すみやかに焼却処分の手配をする。
• 滅菌のためのオートクレーブ処理ができる事業所等に処理を依頼するのが最善。
殺菌等に使用した薬剤
• 使用あるいは保管している薬剤について、急性毒性に加えて引火性についても注意が必要。
• 化学物質安全性データシート(MSDSシート)を取り寄せて、保管や廃棄上の注意を熟知し、化学物質リスクに対して準備する。
• 産業廃棄物としての処理が必要 「廃棄物の処理および 清掃に関する法律 」
エタノール
危険有害性の要約 引火性液体/生分解性良し
応急措置 水で洗浄
保管 火気を避ける、冷暗所、通風
物理的および化学的性質
引火点 13℃
爆発限界3.3~19.0vol%、
蒸気密度 1.59(床に溜まる)
廃棄上の注意
余ったものは焼却処分、容器は水洗してから廃棄
カビを拭い取った布等は・・・多量の場合は産廃へ
カビ被害防止対策
回避
遮断
監視
対処
見直し
利用できる水分量の抑制→空調、室間の差圧調整
塵埃の低減、浮遊粉塵除去→フィルター利用
検出方法の普及→LED点光源の利用
ガス燻蒸利用時の基準、保護具と廃棄
汚染拡大防止
保管環境を見直さないと被害は再発します