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カビの制御-IPMに則って 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所保存修復科学センター 佐 野 千 絵

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カビの制御-IPMに則って

独立行政法人国立文化財機構

東京文化財研究所保存修復科学センター

佐 野 千 絵

カビ被害の防止 -本日の内容-

1.カビ(微生物) の生態を知る

2.資料への影響を知る

3.環境制御による予防と監視

4.カビが繁殖した場合の処置方法

収納箱に資料をしまう

上蓋のみ

ちょっと壊れかけ

相対湿度変化を緩和できる

収納箱のテスト

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日付

温度

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るい

は相

対湿

度%

RH

room Temp, °C room RH, % Large Temp, °C Large RH, % small Temp, °C small RH, %

蒸れ

温度が上がると湿度が上がる「蒸れ」が見られる

資料保存の考え方の変化

修理してもオリジナルには戻らない

劣化→資産の減少

処置中心

被害が生じた後の対策

予防中心

被害を未然に防ぐ対策

Preventive Conservation

文化財の価値の喪失

コスト

価値

価値

環境整備

修理経費

①色がつく(分生子に色、色素産生、フォクシング)

②根が張る(文化財内部に菌糸が生長、物理的破壊)

③資料そのものを傷める(代謝物の有機酸などで、化学的影響)

カビによる影響の周知

被害事例

文化財のカビ被害防止チャート(2004年)

カビの成長

• 水・栄養・酸素などの条件がそろって細胞分裂を開始する

• はじめに基質内で水平方向に成長する(充分に栄養を摂取する、見つけにくい)

• 第二段階で気中菌糸が立ち上がる(気がつく)

• 環境条件により分生子、菌核、耐久性のある厚膜胞子などを作る

→繁殖あるいは休眠

合成樹脂を栄養源とする場合

合成樹脂に載った塵埃から菌糸が成長する場合

合成樹脂は疎水性のものも多く、かえって結露しやすいため、修理後の文化財にカビが生えることがある

合成樹脂にもカビが生える

手垢など有機物汚れ、塵埃から菌糸成長がみられる

刀やガラスにもカビが生える

カビの生育

資料を構成する材料(紙、木材、絹、毛など)や糊,膠など、資料由来の栄養分

修復・装幀 新しい栄養分の供給

革製品,動物標本,植物標本等のタンパク源そのもの

ほこり、カビの死骸など

水の量

水の利用しやすさ

カビの生えやすさに、大きく影響

栄養分

資料とカビ

カビ被害の受けやすさと関連して

各種材料と劣化-材料化学の視点から

• 有機物主体

書籍・古文書

漆工芸品

染織品

絵画

• 無機物

土器

陶磁器

金属器

刀剣類

鉱物顔料

• 構造を持つ複合材質でできている • 合成物より天然物は均質である

• 均質なものは長寿命

• 偏析など、製作技術次第で混合物になる

• 混合物は経年変化で分離する

• 有機物は堅く脆くなる

寿命の長さの一般則

一点モノの美術品

>中央政権の歴史史料

>歴史資料

地方文書・公文書・アーカイブ・マイクロフィルム

>民俗資料

現代美術・画像/映像

>薄利多売の工業製品・生活資材

>一時的な資料・インスタレーション

均質性が重要

紙の作り方 良質の和紙の場合

楮、ミツマタ、ガンピの靱性繊維を取り出す

トロロアオイ、ノリウツギなどの「ねり」を加えて、水中で分散させる

漉きあげる

多糖類・・・カビの栄養源になる有機物

アルカリで煮る

叩く

塵取り

繊維を取り出す

カジノキ、ガンピ、コウゾ、マユミ、ミツマタ

わら

亜麻

木綿(ラグ)

サトウキビ

芭蕉

針葉樹、広葉樹

紙の原材料のいろいろ

赤字:糖分が多くて短繊維

食害を受けやすい

デンプン と セルロース

A

A

A

A

紙の製造ー寿命に影響する要因

• 植物繊維の取り出し方

繊維の長さ

夾雑物の量

叩解による物理的損傷

填料・添加物

綴じ

図は、阿波和紙 http://www.awagami.or.jp/awawashi/koutei.htmlから借用

皮革ー皮から革へ

• 脂を除き、タンパク質(主にコラーゲン繊維)を変性させる「なめし」工程を加えたもの

• 柔軟性を持たせるために合成脂を加える

CH-COOH

NH

アミノ酸

Pro(プロリン) 光に弱い化学構造

図は http://fhu.meblog.biz/article/2764373.html からお借りしました

油脂・・・脂肪酸に分解

• 水酸化ナトリウムNaOH などのアルカリで加水分解させることを、けん化 と呼ぶ。

⇔油脂はアルカリに弱い

タンパク質 → アミノ酸

アミノ酸 はペプチド結合を持つ

絹の劣化

加水分解

C N O H

日本画用絵絹はセリシン質を残した状態

染織品は、セリシン層を除いた状態に精錬されている

窒素源の有無は、生物の生育に影響する

例)ヒメカツオブシムシは動物食なしに生育完了しない

アミノ酸

にかわ

タンパク質

牛やウサギなどの動物由来と、魚由来ではアミノ酸組成が大きく異なるので分別が可能

にかわは精製されて、分子量が調整されている

生物被害を受けやすい

生産者(植物)

高次消費者

二次消費者

一次消費者(植食者)

分解者

屋内の加害要因 ・・・主に消費者型の生物

有機物をエネルギー源として摂取する

生産者と消費者

大部分の細菌、カビ、虫、動物など

無機化合物(二酸化炭素など)だけを炭素源とし、無機化合物あるいは光をエネルギー源として生育する生物

光合成独立栄養生物 植物やそのほかの光合成生物

化学合成独立栄養生物 無機化合物を酸化してエネルギーを得る細菌

藍藻(シアノバクテリア) 光合成によって酸素を作る

独立栄養生物

窒素は窒素固定細菌や根粒菌以外では食物連鎖を通じて取り込む必要がある

自然界では窒素は不足しがち

カビ以上の高等な生物は生育を完了し繁殖するためにタンパク質素材のものを加害する

生体を構成する重要な元素

-炭素、窒素、リン-

カビ被害防止対策確立へのフレームワーク

• カビ被害への理解促進

生態・文化財への影響→予防・監視へ

回避

遮断

監視

対処

見直し

利用できる水分量の抑制→空調、室間の差圧調整

塵埃の低減、浮遊粉塵除去→フィルター利用

検出方法の普及→LED点光源の利用

ガス燻蒸利用時の基準、保護具と廃棄

汚染拡大防止

資料のカビ被害防止

-IPMに則って-

カビの回避

カビの生育

資料を構成する材料(紙、木材、絹、毛など)や糊,膠など、資料由来の栄養分

修復・装幀 新しい栄養分の供給

革製品,動物標本,植物標本等のタンパク源そのもの

ほこり、カビの死骸など

水の量

水の利用しやすさ

カビの生えやすさに、大きく影響

栄養分

カビが利用できる栄養源を減らす

• ほこりの除去、カビの死骸のクリーニング

1. 定期的な吸引清掃

2. 清拭

3. 塵埃の堆積防止

4. 清浄な空気の供給

5. 塵埃持ち込みの低減

粒子状物質の影響

• 摩耗

• 汚損

• カビの発生→フォクシング

• 資料表面の水分量上昇

→ガス状物質の濃縮・

カビ繁殖の誘因

主要な粉塵の粒子径

• 2μmを境に挙動が異なる

1mm 1μm=1/1000mm 1nm=1/1000μm

顕微鏡で見える 肉眼で見える 電子顕微鏡で見える

花 粉

細 菌 ウィルス

カ ビ たばこの煙

エアワッシャー

エアフィルター HEPAフィルター

電 気 集 塵

空中を浮遊

空気清浄機が必要 床に沈降 吸引清掃で清浄化

粒子の粒径分布

http://www.env.go.jp/air/info/mpmhea_kentou/05/mat01_1-1.pdf

土壌粒子は、サイズが大きい

粒子状物質の大気中からの除去

http://www.env.go.jp/air/info/mpmhea_kentou/05/mat01_1-1.pdf

蓄積領域の粒子の大気中の寿命が長い

黄砂_資料管理上の問題

• 吸着した化学物質にも注意

環境省HPより

PM2.5 とは

• 粒径が2.5マイクロメートル以下の大気中の微小粒子状物質

• 環境基準制定(2009年)

• 一年平均値に係わる基準値 15μg/m3

• 一日平均値に係わる基準値 35μg/m3

• 2011年度にPM2.5モニタリングが多くの自治体で始まる

• 健康影響や文化財影響は未解明 2011年度の連続測定結果に基づく全国的なPM2.5汚染の状況解析、板野ほか、大気環境学会誌、48(3)、154-160

(2013)

国内の分布

• 南の方が濃度が高い傾向

• 春季・秋季に濃度が高い

北 ■>35μg/m3 >15μg/m3 □< 15μg/m3

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 南

ほこり対策の基本

• 入れない

• 持ち込まない

吸着能力の高い壁

調湿性能の高い箱

薄様紙

資料は保管箱に入れて収納

ドアを閉める

外気の取入れには塵埃除去フィルターを

上手な掃除の仕方

• 水拭きが先 ディスポの不織布、あるいは殺菌効果のある洗剤で洗浄・脱水したクロスを使用

• 掃除機は後

• 排気が床にあたらないよう、持ち上げられる軽い掃除機が良い

• 繰り返しの掃除が有効

• 壁・天井も10年に一度、吸引掃除

書架、棚、保管箱の外側を清掃

塵埃堆積の防止

• 天面に薄葉紙をかける

• 保管箱にいれる

埃除け

和綴じの横積みのものは、中性紙箱で保管

土壌粉塵の持ち込み防止

• 室内履きの利用

• 閉架書庫利用のルール

靴の履き替え、手洗い、

• 閉架書庫の扉は閉める

温湿度の安定化も図れるので一石二鳥

土壌1gに100万の微生物が・・・

清浄な空気の供給

• プレフィルターだけだと塵埃は堆積

扉は夜間閉める

昼間も閉めることを推奨

空調吹出口

最下段は床から上げる

埃除けの設置

吹出し口を定期清掃

空気清浄機の利用

• 目の細かいフィルターでろ過するタイプを選ぶ

• HEPA等、目の細か

いタイプを選ぶ

• 吸い込み・吹き出し

範囲に限界あり 送風機などを増設して補う

細かな粒子は浮遊

1ケタしか減らない

粗い粒子は床に沈降

掃除!

空気の流れを作る -天吊りの送風機-

集密棚の方向にあわせて送風機が設置されており、部屋内の温度の均一化に有効

塵埃も巻き上げないので、空気環境清浄化に良好

カビが利用できる水を減らす

• 空間の相対湿度を制御する

基本的な施設要件ー安全な建物

• 浸水しない立地

• 地震で崩れない建物

• 漏水のない建物

• 十分な断熱性能がある屋根・壁

• 資料を安全に取り扱える十分なスペースがある

• やや爽やかで快適な温度湿度環境

• 温度湿度の変化はゆるやか

• ゆるやかな気流

• 深呼吸できる清浄な空気

• 見やすい照明

• 害虫に侵入されにくい開口部 箱

部屋

雨漏りしない屋根

亀裂のない壁

保管空間の相対湿度とカビの成長

• グラフの読み方

80%RHの空間では、約2週間でカビが生長

70%RHの空間では、

約180日

65%RHの空間でも、

2~3年

Michalski(1999), ICOM-CC

温度湿度のモニタリング

• 相対湿度が65%を超えない

• 相対湿度が40%を下回らない

• 短期の急激な変動は避けるべき

• 温度については、資料の安全を図るために、取り扱う人間に負担が少ないよう27℃を超えない

温度むらをなくす→湿度むらがなくなる

• 壁・床・天井の温度差は0.5℃以内におさめたい

• 湿気だまりを見つけて、解消する

• 結露を避ける

さまざまな温度湿度測定機器

3ヶ月ごとの校正が必要

2~3年に一度は校正を

温度測定機器

結露を避ける

低温マイクロ庫

隣接区画との温度差に注意

→室内に温度むらを作らない

外部が内部より低温の時期

金属板ではめ殺した窓

低温になった空間の湿度が高くなる

→含水率上昇

資料庫で カビ発生

冷気

冷気

事務室

夏に事務室だけ冷房を入れると

カビの発生位置は事務室近傍に動く

空調の吹き出し温度は低い

羽の向きが悪いと、冷気が直接当たることも起こる

通常、冷気は真下に落ちる

吹き出し温度は設定温度より3

~6℃低い

温度・湿度の測定

測定器の置き場

• センサーに風の当たらない場所で

• 床から70cm~120cmの高さに

温度むら・湿気だまりの解消

ー送風機の利用ー

• 入り隅

• 低位置

下から 30cmに 湿気は たまる

地震対策

資料のカビ被害防止

-IPMに則って-

カビの遮断

資料点検 のタイミング

• 貸借前後の点検・記録

• 台風、集中豪雨、豪雪

• 外気温の急激な変化のあった時

• 温湿度設定を変えた時(特に、設定温度を下げた時)

カビが生えやすい資料を選んで点検

(被害があれば、撮影・場所を記録しすぐに除去)

収納前の資料清掃と隔離

• 収納前の点検と一緒に塵埃を払う

• カビの被害を受けている可能性があれば、他の資料から隔離して保管

資料のカビ被害防止

-IPMに則って-

カビの監視

斜光線を当てる

LEDのように輝度が高い照明が写しやすい

ガラス面の上のカビコロニーの写真を撮る

×フラッシュ

背景が濃い色の場所を選ぶ

近接撮影モード

カビコロニーの写真を撮る 監視手法

ATP量測定で活性を評価する方法も

付着菌量の評価

滅菌綿棒で直接採取する方法。清拭できる対象については、生培地を接触させて採取することもある。定量的に行うのは難しい。

• 利点 生育する可能性のある菌種を把握できる。

• 欠点 現在生育中の菌のみの採取が難しい

現在は、ATP量測定で評価する手法も採用されるようになってきた→活性度は明確に区別できる

滅菌綿棒による試料採取 培養後の様子

落下菌の採取

• 生培地のフタを 一定時間 開けて、落ちてくる胞子を自然に受け止める方法

• 利点 器材が要らない

• 欠点 偏りが大きく、再現性がない

種類を判断するための定性的な方法

浮遊菌計測 • 種類と数がわかる

• 乾性カビしか捕まらない

• 定期的に測定して異常を判断する必要がある

RCSサンプラー BIOサンプラー

区域

落下細菌数

落下真菌数

浮遊細菌数

浮遊真菌数

付着細菌数

付着真菌数

(5分あたりの個数)

(20分あたりの個数)

(100リットルあたりの

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(25平方センチメートルあたりの

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汚染区域

100以下

100以

100以下

30以下

準清潔区域

50以下 30以下 40以下 30以下 10以下

清潔区域

30以下 10以下 10以下 5以下

数値は、アメリカ航空宇宙局(NASA(ナサ))の定める空気清浄度クラスに対応しており、清潔区域はNASA(ナサ)基準の清浄度100,000にほぼ対応する。(「カビ専門家会合」より、文部科学省HP)

高湿度の環境で発生

被害はそれほど大きくない

カビを食べているのでカビ対策が必要

チャタテムシ 高湿度指標昆虫

シミ

チャタテムシに比べると、糊をばりばりと食べるので修理後の本や、ふすまなどの被害例が顕著に

ゴキブリ 食害のほか、フン害も顕著

資料のカビ被害防止

-IPMに則って-

カビの対処

カビ発見後の対応

①カビ発生資料の隔離

②カビ発生資料周辺の点検

③カビ被害の状況(規模)の把握

④カビ発生原因の解明

⑤環境整備

⑥カビ発生資料の処理

⑦用具の廃棄

<被害があれば即処置、

被害がないのに処置するのは無駄>

• 活動中のカビである(臭気がある)

• 大面積でカビ発生

化学薬剤に頼らない処置を検討

化学薬剤による処置を検討

(公財)文化財虫菌害研究所の認定を受けた方法で行う

処置後はカビ死骸除去のためにクリーニングが必要

顕著な被害状況ではない

/進行中ではない カビ被害への処置

1 カビを不活性にする(乾燥) 2 物理的に除去する 専門家に相談 保護具を使う マスク、手袋、作業着

空気清浄機、ミュージアムクリーナーなどを用いて、空気の流れのあるところでカビを筆などではらう

カビ処置の際の注意

• アレルギー 殺菌しても反応

• 病原性 日和見感染に注意

綿のマスクで良い

(分厚いもの)

作業着を着用

(頻繁に洗濯)

作業区画の確保

• スタッフが普通に出入りする場所や,ほかの文化財が保管されている場所をカビで汚染したりしないよう,作業用のスペースを確保する。

用具等の処理

• 作業中に使用したマスクや手袋など繰り返し使用するものは、洗濯したのち十分に日光にあてて殺菌消毒する。

• 拭き取りに用いた布等は、拭き取り除去したカビ等によりその他の環境を汚染しないように、厚手のポリエチレン袋を二重にした袋に入れ、しっかり口を絞め、すみやかに焼却処分の手配をする。

• 滅菌のためのオートクレーブ処理ができる事業所等に処理を依頼するのが最善。

殺菌等に使用した薬剤

• 使用あるいは保管している薬剤について、急性毒性に加えて引火性についても注意が必要。

• 化学物質安全性データシート(MSDSシート)を取り寄せて、保管や廃棄上の注意を熟知し、化学物質リスクに対して準備する。

• 産業廃棄物としての処理が必要 「廃棄物の処理および 清掃に関する法律 」

エタノール

危険有害性の要約 引火性液体/生分解性良し

応急措置 水で洗浄

保管 火気を避ける、冷暗所、通風

物理的および化学的性質

引火点 13℃

爆発限界3.3~19.0vol%、

蒸気密度 1.59(床に溜まる)

廃棄上の注意

余ったものは焼却処分、容器は水洗してから廃棄

カビを拭い取った布等は・・・多量の場合は産廃へ

カビ被害防止対策

回避

遮断

監視

対処

見直し

利用できる水分量の抑制→空調、室間の差圧調整

塵埃の低減、浮遊粉塵除去→フィルター利用

検出方法の普及→LED点光源の利用

ガス燻蒸利用時の基準、保護具と廃棄

汚染拡大防止

保管環境を見直さないと被害は再発します

文化財のカビ被害防止チャート

• 東京文化財研究所ホームページにて公開中(ダウンロード可)

http://www.tobunken.go.jp/~ccr/pub/antikabic

hart.jpg

・本日の資料はSlideShareにて公開中

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