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製品・技術紹介 103 JFE 技報 No. 43 2019 2 月)p. 103-104 Copyright © 2019 JFE Steel Corporation. All Rights Reser ved. JD フェンス(小規模渓流対策工) JD Fence for Small Mountain Stream 1. はじめに 近年,流域面積さく,下流流路準備できないゼ 次谷等小規模渓流土砂災害対策急務となっている谷出口まで宅地造成されている場合ひとたび土石流 発生すると家屋全壊する被害発生する2014 広島土砂災害のように同時多発的発生すると,被害甚大となる人家 5 戸以上等土石流による土砂災害れがある石流危険渓流,全国8 9 千箇所(平成 14 年度公表) 1指定されているが,砂防堰堤等1 基以上整備されてい 渓流222対策んでいないJD フェンスジェイディフェンスゼロ次谷等規模渓流土砂災害対策特化,従来不透過型堰堤工事費削減及施工期間短縮った製品である2. JD フェンスの特長と適用範囲 2.1 特長 1JD フェンスは,下流流路準備できないゼロ次谷 小規模渓流設置可能土石流・流木対策工である 2宅地造成谷出口までせまった地域,生活用道路 および鉄道保全する箇所する3JD フェンスは透過構造であるため流木確実できる2.2 適用範囲 JD フェンスは,以下合致する場合適用できる1) 流路不明瞭常時流水がない場合 2) 流出土砂量がおよそ 1 000 m 3 以下場合 3最大粒径20 cm 以上,土砂とともに流出する捕捉させる場合 3. 構造 柱材H 形鋼使用,土石流中礫・流木衝突する 横材には鋼管した構造である。概要図図1 断面,土石流流体力および堆砂圧して合理的である三角形形状とする。土石流中礫・流木衝突ネルギーは,鋼管変形のたわみ変形にて吸収さは 2 m5 m 標準とする4. 機能検証(水理模型実験) JD フェンスは横材した不透過型構造とな るため,不透過型堰堤比較,同条件での土砂流木捕捉機能確認した4.1 実験の概要 実験土石流発生水路・河道・扇状地・住宅地をモデル して,縮尺 1/30 実施した。水理模型実験状況写真 1 4.2 実験結果 4.2.1 土砂捕捉率 不透過型堰堤 87.9%,JD フェンス 88.7であり,同等以 2018 11 29 日受付 図 1 構造概要図 Fig. 1 Diagrammatical view 写真 1 模型実験状況 Photo 1 Experimental scene

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製品・技術紹介

- 103 -

JFE技報 No. 43(2019年 2月)p. 103-104

Copyright © 2019 JFE Steel Corporation. All Rights Reserved.

JD フェンス(小規模渓流対策工)

JD Fence for Small Mountain Stream

1.はじめに

近年,流域面積が小さく,下流に流路が準備できないゼロ次谷等の小規模渓流の土砂災害対策が急務となっている。谷出口まで宅地造成されている場合も多く,ひとたび土石流が発生すると家屋が全壊する等の被害が発生する。2014年の広島土砂災害のように同時多発的に発生すると,被害は甚大となる。人家 5戸以上等で土石流による土砂災害の恐れがある土石流危険渓流は,全国で約 8万 9千箇所(平成 14年度公表)1)

が指定されているが,砂防堰堤等が 1基以上整備されている渓流は約 22% 2)

と対策が進んでいない。JDフェンス(ジェイディフェンス)は,ゼロ次谷等の小

規模渓流の土砂災害対策に特化し,従来の不透過型堰堤と比べ工事費の削減及び施工期間の短縮を図った製品である。

2.JD フェンスの特長と適用範囲

2.1 特長

(1)  JDフェンスは,下流に流路が準備できないゼロ次谷等の小規模渓流に設置可能な土石流・流木対策工である。

(2)  宅地造成が谷出口までせまった地域や,生活用道路および鉄道を保全する箇所に適する。

(3)  JDフェンスは透過構造であるため流木を確実に捕捉できる。

2.2 適用範囲

JDフェンスは,以下に合致する場合に適用できる。(1) 流路が不明瞭で常時流水がない場合(2) 流出土砂量がおよそ 1 000 m3以下の場合(3)  最大粒径が 20 cm以上で,土砂とともに流出する流木を捕捉させる場合

3.構造

柱材に H形鋼を使用し,土石流中の礫・流木が衝突する横材には鋼管を密に配した構造である。概要図を図1に示す。断面は,土石流流体力および堆砂圧に対して合理的な形状である三角形形状とする。土石流中の礫・流木の衝突エネルギーは,鋼管の凹み変形と梁のたわみ変形にて吸収す

る。高さは 2 m~5 mを標準とする。

4.機能検証(水理模型実験)

JDフェンスは横材を密に配した不透過型に近い構造となるため,不透過型堰堤と比較し,同条件での土砂と流木の捕捉機能を確認した。

4.1 実験の概要

実験は土石流発生水路・河道・扇状地・住宅地をモデル化して,縮尺 1/30で実施した。水理模型実験の状況を写真 1に示す。

4.2 実験結果

4.2.1 土砂捕捉率不透過型堰堤 87.9%,JDフェンス 88.7%であり,同等以

2018年 11月 29日受付

図1 構造概要図

Fig. 1 Diagrammatical view

写真1 模型実験状況

Photo 1 Experimental scene

JDフェンス(小規模渓流対策工)

- 104 -JFE技報 No. 43(2019年 2月)Copyright © 2019 JFE Steel Corporation. All Rights Reserved. 禁無断転載

上の効果を確認できた(図 2)。4.2.2 巨石捕捉率

不透過型堰堤は,巨石が堰堤に衝突したときに跳ね上がり,下流に流出しやすい。巨石捕捉率は,不透過型堰堤94%,JDフェンス 100%(全量捕捉)であった(図 3)。

4.2.3 流木捕捉率流木は水面付近を流下するので,不透過型堰堤では水通

しから流出しやすい。流木捕捉率は,不透過型堰堤 60.5%,JDフェンス 100%(全量捕捉)であった(図 4)。

5.施工実績

2018年 8月時点で,施工実績は 5件である。施工例を写真 2および写真 3に示す。

6.おわりに

本製品は 2018年 10月に建設技術審査証明(砂防技術)3)

を取得した。今後,施工性の向上等により商品力をさらに高め,一層

の土砂災害の削減に貢献していきたい。

参考文献 1) 国土交通省ホームページ.都道府県別土砂災害危険箇所.http://www.

mlit.go.jp/river/sabo/link20.htm 2) 国土交通省ホームページ.土砂災害危険箇所の整備状況.http://www.

mlit.go.jp/river/sabo/taisaku_syojoho/kikenkasyo_seibijokyo.pdf 3) (一財)砂防・地すべり技術センター.建設技術審査証明(砂防技術)報告書.小規模渓流対策工 JDフェンス(土石流フェンス).

〈問い合わせ先〉JFE建材 防災技術部 TEL:03-5715-7870  FAX:03-5715-1035 ホームページ:http://www.jfe-kenzai.co.jp/

図2 土砂捕捉率

Fig. 2 Sediment capture rate

図3 巨石捕捉率

Fig. 3 Boulder capture rate

図4 流木捕捉率

Fig. 4 Driftwood capture rate

写真2 施工例(兵庫県)

Photo 2 Construction case (Hyogo Prefecture)

写真3 施工例(福島県)

Photo 3 Construction case (Fukushima Prefecture)