kesen transplant 201205
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ケセン・トランスプラントに寄せて 津波に曝された土地へのトランスプラント――この「移植」や「移住」を意味する言葉のもと、更地となった場所にアーティストが「移住」し、住まいや電力のインフラを立ち上げながら、アートやエネルギーを新たに「移植」していきます。こうして、イチから現地で育ったとは限らない要素を持ち寄り、失われたものを新たなしかたで植えなおし、やがて開花させることへの希望を、トランスプラントという言葉に込めました。 気仙地域の木材を利用した「くっつきハウス」は、地元の特産物を食べながら、参加者とアーティストとの会話が生まれる場となります。そうした交流を支える電力は、現地に今も残る瓦礫を素材にして建てられる「気仙藝術発電所」からの自然エネルギーによって供給されます。他にも、発電によるパフォーマンスや建物へのペインティングなど、多様な実践を通じて私たちの生命活動とエネルギーとの関係を体感できる場となります。 こうしてケセン・トランスプラントでは、海と山に囲まれた気仙地域の環境の豊かさを見つめながら、自然との関わりの中にある私たちの生活を、新たに描き出します。暮らしやエネルギーをめぐる私たちの実践が、被災地の未来のヴィジョンを共に考え、育てていくきっかけとなることを願っています。
池田 剛介