keysight technologies 10の基本事項 dc電源について知っておく … · 2020-03-11 ·...
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Keysight Technologies10の基本事項DC電源について知っておくべきこと
Application Note
はじめに測定ツールの動作を理解することにより、テスト手法の改善に関する知見が得られます。電源の最先端の性能と安全機能を活用して、より簡単で効果的なテストセットアップを柔軟に構築できます。ここで説明する電源に関する10の基本事項に従って、これらの機能を活用してください。
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目次
1 定電圧モードまたは定電流モードで動作するように、電源を正しくプログラムする / 3
2 リモートセンスを使用して負荷での電圧レギュレーションを行う / 4
3 電源を使用してDUTの電流を測定する / 5
4 電源の出力を直列/並列に接続して出力をアップする / 6
5 電源からDUTへの雑音を最小限に抑える / 7
6 内蔵の電源保護機能を使用してDUTを保護する / 8
7 出力リレーを使用してDUTを物理的に切断する / 9
8 電源に内蔵されているデジタイザを使用して動的波形を捕捉する / 10
9 電源リストモードを使用して任意の電圧波形を作成する / 11
10 電源をラックにマウントするためのヒント / 12
用語集 / 13
リソース / 14
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電源の出力は、電圧設定、電流制限値設定、負荷抵抗に応じて、定電圧(CV)モードまたは定電流(CC)モードで動作します。ほとんどの場合、電源出力はCVモードまたはCCモードで動作しますが、非レギュレーション(UNR)モードと呼ばれる第3のモードに電源が入ってしまう、特殊な状況がいくつかあります。これら3つのモードを理解すれば、より簡単に電源を正しくプログラムできます。
定電圧
負荷で電流制限値設定以上の電流が必要ない場合には、電源は定電圧(CV)モードで動作します。オームの法則(V=I×R)から、負荷抵抗の変化に応じて電圧を維持するには、電流を増減する必要があります。電流Iout=Vs/RLが電流制限値設定より少なければ、電源は設定電圧で出力のレギュレーションを行います。図1では、電源は、Iout=Vs/RLを満たしながらVsの水平ライン上で動作します。
定電流
負荷抵抗が小さくなり(DUTコンポーネントがフェールした場合など)、負荷抵抗RL
がRCを下回った場合(ここで、RCは電源電圧設定と電流制限値設定の比)、電源は電流レギュレーションを行います。この場合も、オームの法則から、電流制限値設定で電流が一定になり、電圧が変化しま
す。この動作モードは、定電流(CC)と呼ばれています。図1では、電源は、Vout=IS×RLを満たしながらISの垂直ライン上で動作します。
非レギュレーション状態
電源が出力電圧/出力電流のレギュレーションを行えない場合、出力のレギュレーションができなくなり、非レギュレーション(UNR)モードになります。電圧も電流も対応する設定ポイントに達することはなく、電圧/電流が安定する値は予測不可能です。UNRモードはさまざまな理由で発生する可能性がありますが、あまり一般的ではありません。
UNRの原因としては、以下が考えられます。
– 電源で内部障害が発生している。
– AC電源ライン電圧が仕様範囲を下回っている。
– 負荷抵抗がRCである。これは、出力がCVからCC、またはCCからCVに遷移する値です(図1を参照)。
– 別の電源が電源出力両端に接続されている(複数の出力が並列に使用されている場合など)。
– 出力がCVからCCまたはCCからCVへの遷移中である。この遷移に起因して、一時的にUNRが発生した可能性がある。
クロスオーバー
図1:電源の出力特性
定電圧モードまたは定電流モードで動作するように、 電源を正しくプログラムする1DC電源の基礎
3
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電源と負荷間のリード線に抵抗が存在しないことが理想です。実際には、リード長やワイヤーゲージに応じて、リード線抵抗は大きくなります。このため、電源がリード線で電流を流した場合に、負荷側の電圧が低下する可能性があります。これを補正するには、リモートセンシングを使用してこのような電圧降下を補正します。
電源のセンスリードは、通常、工場出荷時には出力端子に接続されています。ただし、長い負荷リード線を持つセットアップやリレーとコネクタを持つ複雑なセットアップの場合は、出力端子の電圧が負荷の電圧を正確に表すわけではありません。(図2)
ワイヤーのゲージや長さによっては、負荷の接続部の抵抗により、負荷側の電圧が必要以上に低くなる可能性があります。例えば、大電流が流れる場合は、負荷リード線が短くても電圧降下が大きくなります。下表のさまざまな配線ゲージの抵抗について考えます。
一般に、配線(ケーブル)が3ゲージ増加するごとに、抵抗が2倍になります。安全性を考慮して、負荷の電流要件にあった適切なゲージのケーブルを選択する必要があります。負荷側にリモートセンスを接続することにより、リード線を短くしたり、ワイヤーゲージを小さくすることなく、電圧レギュレーションを実現できます。
リモートセンス端子を負荷に接続すれば、内蔵のフィードバック増幅器が、出力端子ではなく負荷での電圧を直接検出します。制御ループが負荷での電圧を直接検出するため、負荷リード線のゲージ、負荷リード線の長さ、出力リレー、コネクタに起因する電圧降下に関わらず、電源は負荷電圧を一定に保つことができます。
リモートセンスを使用する場合、以下の点に注意してください。
– センスリードには、2線式ツイスト・ペア・シールド・ケーブルを使用します。
– センス・リード・ケーブルのシールドをケーブルの一端だけグランドに接続します。
– センスリードと負荷リードを撚り合わせたり、束ねたりしないでください。
– センス端子は出力のフィードバック経路の一部なので、センス端子の回路をオープンにしないでください。
-- キーサイトでは、内蔵センス保護抵抗を使用しています。これらの抵抗は、センスリード線が間違ってオープンになった場合に、出力電圧の上昇を数パーセント以内に抑えます。
– 多くの電源が補正できる負荷リードの最大電圧降下量は数V程度です。
リモートセンスを実装する手順(図3):
1. メイン出力からセンス端子を取り外します。
2. 各センス端子を適切な極性の負荷接点に接続します。
3. 必要に応じて、電源をリモート・センス・モードまたは4線式モードに設定します。
図2: センスを出力端子に 接続した場合の 6フィート(約1.8 m)の14 AWGリード線の 効果。リード線で 0.3 Vの電圧降下が 発生しています(リード線当たり0.15 V)。
図3: リモートセンスを 使用した負荷リード線の電圧降下の補正
表1:各種ワイヤーゲージの1フィート (30.5 cm)当たりの抵抗(単位:mΩ)
ワイヤーゲージ (AWG)
抵抗 (mΩ/ft)
22 16.1
20 10.2
18 6.39
16 4.02
14 2.53
12 1.59
10 0.999
2DC電源の基礎
リモートセンスを使用して負荷での 電圧レギュレーションを行う
+
+
+
S
--
---
---+-----
S
+OUT
+OUTおよび-OUTの負荷リード線はそれぞれ6フィート(約1.8 m)、14 AWG
+OUTおよび-OUTの負荷リード線はそれぞれ6フィート(約1.8 m)、14 AWG
OUT
5.0 V0.015 Ωリード抵抗
0.015 Ωリード抵抗
5 Vにプログラムされた電源
負荷
+
+
S
--
---
+-----
S
+OUT
OUT
5.3 V
0.015 Ωリード抵抗
0.015 Ωリード抵抗
5 Vにプログラムされた電源
負荷
4.7 V
+
---5.0 V
10 A
10 A
4
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電流計、電流シャント、または電源に内蔵されているリードバック(測定機能)を使用することにより、DUTの電流を正確に測定することができます。最終的には、それぞれの利点と欠点を考慮した上で、より優れた方法を選択してください。通常は、電源の電流測定機能を使用することにより、必要な測定確度が得られます。
電流計
DUTの電流を測定するには、ベンチ用デジタルマルチメータ(DMM)を電流計モードで使用するのが一般的な方法です。電流計には確度が仕様化されているという利点がありますが、電流計を挿入するには回路を遮断する必要があります。また、測定できるDMMの最大電流には限界があり、通常は数Aです。
外部電流シャント/DMM
シャントを使って電流を測定することもできます。電流シャントを使用すれば、電流容量に応じて、最適なシャント抵抗を簡単に選択できます。確度は、DMMの電圧測定確度とシャントの精度に依存します。この方法では非常に確度の高い結果が得られますが、測定に悪影響を及ぼす可能性のある誤差も存在します。以下のような見過ごされることが多い厄介な問題にも、注意を払う必要があります。
– 熱起電力:異種金属により熱電対が形成され、電圧が発生します
– シャントの校正ミス:正確な読み値を得るには、シャント抵抗を校正する必要があります
– 自己発熱効果:電流による温度上昇により、シャント抵抗が変化する可能性があります
こうした懸念に加えて、電流シャントを使用するには、シャントを直列に接続するために回路を遮断する必要があります。ラック・マウント・システムで電流シャントを使用するには、リレーやスイッチを含む複雑な接続が必要になります。
内蔵電流リードバック(測定機能)
電源に内蔵されている測定機能を使用することにより、電流シャントの接続に伴う問題を回避することができます。電源の電流測定機能は、電源の出力定格を実現するために、内部シャントを使用しています。DUTを取り外したり、DMMを接続する必要はありません。
高品質の電源を使用することによって得られる測定確度レベルについて考えます(表2)。
電源の測定仕様は、外部シャントに影響を与える誤差を考慮しています。このため、ご使用の電源の測定機能は、特に電源の定格出力電流の10 %~ 100 %の範囲の電流については、ほとんどの電流測定アプリケーションに対応できるだけの高い確度をすでに備えている可能性があります。
以下が必要な場合は、内蔵電流測定機能をご検討ください。
– 接続機器の削減:リレー、スイッチ、配線が不要
– 使いやすさ
– A単位で直接測定する電源
– 回路の切断が不要
– 仕様確度:確度の値はシャント誤差を考慮済み
– 同期測定:リードバック(測定機能)は他の電源関連のイベントで開始するようにトリガ可能
表2:電源の相対電流リードバック確度 (測定確度)
電源の 電流リードバック確度(測定確度)
出力 電流レベル
確度 (代表値)
定格出力の100 % 0.1 %~ 0.5 %
定格出力の10 % 0.5 %~ 1 %
定格出力の1 % 約10 %
3DC電源の基礎
電源を使用して DUTの電流を測定する
5
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2個以上の電源の出力を直列に接続して電圧を上げたり、並列に接続して電流を増やすことができます。
出力を直列に接続して電圧を上げる場合は、以下の注意事項を守ってください。
– 出力のフローティング電圧(出力端子アイソレーション)定格を超えてはならない
– いずれの電源の出力にも逆電圧をかけてはならない
– 電圧定格と電流定格が同じ出力だけを直列に接続する
電圧の合計が必要な値になるように、各電源の出力を個別に設定します。そのためにはまず、負荷が安全に処理できる最大電流制限値に各出力を設定します。次に、各出力の電圧の合計が必要な電圧になるように設定します。例えば、2個の出力を使用している場合は、各出力を必要な電圧の1/2に設定します。3個の出力を使用している場合は、各出力を必要な電圧の1/3に設定します。
出力を並列に接続して電流を増やす場合は、以下の注意事項を守ってください。
– 1個の出力は定電圧(CV)モードで、残りの出力は定電流(CC)モードで動作させる
– 出力負荷は、CC出力をCCモードにしておけるだけの電流を引き込まなければならない
– 電圧定格と電流定格が同じ出力だけを並列に接続する
合計が必要な電流制限値になるように、すべての出力の電流制限値を等しく設定します。CV出力の電圧をCC出力の電圧値より少し低い値に設定します。CC出力は、
設定された値まで出力電流を供給し、CV
ユニットの電圧と一致するまで出力電圧を落とし、全負荷の需要を満たすのに必要なだけの電流を供給します。
負荷の電圧を直接検出するには、直列または並列セットアップでリモートセンスを使用します。一部の電源については、各出力を「リモートセンス」用に意図的に設定する必要があります。これは「4線式モード」と呼ばれることもあります。
直列接続でのリモートセンスの 使用:
リモートセンスを直列構成で使用する場合は、各出力のリモートセンス端子を直列に配線して、負荷に接続します(図4を参照)。
並列接続でのリモートセンスの 使用:
リモートセンスを並列構成で使用する場合は、各出力のリモートセンス端子を並列に配線して、負荷に接続します(図5を参照)。
並列に接続された出力の設定を簡素化するために、「出力のグループ化」と呼ばれる高度な機能をサポートしている電源もあります。最大4個の同一出力を「グループ化」できるので、1個の大電流出力のように、グループ化した出力をすべて制御することができます。
電源の出力を直列/並列に接続して 出力をアップする
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+-- 負荷
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+-- 負荷
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+-- 負荷
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+S
--S
+OUT--OUT
電源
+-- 負荷
図4:直列接続とリモートセンス
図5:並列接続とリモートセンス
4DC電源の基礎
6
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DUTがDC電源入力の雑音の影響を受けやすい場合、できる限り入力の雑音を最小限に抑える必要があります。以下に、3つの簡単な手順を紹介します。
低雑音電源を選択する
雑音を最小限に抑えるには、まず電源を考慮します。
電源から発生する雑音をフィルターで除去するのは難しいので、最初に超低雑音電源を使用します。これは、リニアレギュレーション電源を使用すれば実現できますが、リニア電源は大型で、大量の熱を発生する可能性があります。別の方法として、スイッチングレギュレーション電源を使用することを検討してください。最新のスイッチング電源テクノロジーは、出力の雑音がリニア電源と同程度にまで向上しています。代表的なリニア電源と高性能スイッチング電源の雑音の比較については、表3を参照してください。
表3:リニアレギュレーション電源と スイッチングレギュレーション電源の 雑音の比較
最初に実効値/ピークツーピーク値の低い出力電圧雑音仕様の電源を選択するのが最適ですが、DUTへのリード線を適切に接続することにより、雑音を最小限に抑えることも可能です。
電源とDUT間のシールド接続
電源とDUTの間の接続では、雑音を拾ってしまうことがよくあります。誘導性結合、容量性結合、無線周波数干渉など、さまざまな干渉があります。多くの雑音低減方法がありますが、最も効果的なのは、負荷やセンスリードの接続に2線式シールドケーブルを使用することです。
シールドケーブルを使用する場合は必ず、シールドの一端だけをグランドに接続してください。例えば、図6に示すように、電源側のシールドをグランドに接続します。どちらの側のシールドも接続しないと、容量性のピックアップ雑音が増加する可能性があります。
シールドの両端をグランドに接続しないでください。グランドループ電流が発生する可能性があります。図7は、電源グランドとDUT間の電位差に起因して発生したグランドループ電流を示しています。グランドループ電流によって配線上に電圧が生じて、DUTに雑音として現れる可能性があります。
適切なシールドとケーブルインピーダンスのバランスにより、電源の低雑音特性を維持することができます。
出力とグランド間の インピーダンスをバランスする
コモン・モード・ノイズは、コモンモード電流が電源の内部からグランドに流れて、ケーブルインピーダンスなどのグランドに対するインピーダンスに電圧が発生した場合に生じる雑音です。コモンモード電流の影響を最小限に抑えるには、電源のプラスとマイナスの出力端子からグランドへのインピーダンスを等しくします。DUTのプラスとマイナスの入力端子からグランドへのインピーダンスも等しくする必要があります。そのためには、コモン・モード・チョークを出力リード線と直列に接続し、各リード線とグランド間にシャントキャパシタを挿入します。
+S--S
+OUT
--OUT
シールド
シールド
DC入力
電源
+
--
DUT
+S--S
シールド
グランド2グランド1
グランドループ電流がシールド内を流れる
∆Vグランド
DC入力
電源
+--
DUT
電源からDUTへの雑音を 最小限に抑える
雑音の 実効値
p-p雑音
リニア レギュレーション電源
~ 500 μV ~ 4 mV
スイッチング レギュレーション電源
~ 750 μV ~ 5 mV
図6:シールドはケーブルの一端だけでグランドに接続されています
図7:シールドの両端を接続すると、グランドループ電流が発生します
5DC電源の基礎
7
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DC電源には通常、感度の高いDUTや回路を電圧や電流による損傷から防ぐ機能があります。電源の保護回路が作動すると、保護回路は出力をオフにして、アラームを表示します。一般的な保護機能としては、過電圧保護と過電流保護の2種類があります。
テストでは、DUTを保護するこれらの保護機能を理解することが重要です。
過電圧保護(OVP)
OVPは、DUTを過度の電圧から保護するためにV単位の値で設定します。電源の出力電圧がOVP設定値を超えると、保護機能が働いて、出力がオフになります。
OVPは常にオンです。電源のOVPは、工場出荷時には通常、電源の最大定格出力よりもはるかに高い値に設定されています。OVPトリップ電圧は、DUTを過度の電圧から保護でき、しかも通常の出力電圧の変化によって誤ったトリッピングが発生するのを防げる値に設定します。変動は、負荷電流の変化など、出力の過渡条件で発生する可能性があります。
注意:ほとんどの電源では、OVPはセンス端子ではなく、出力端子の電圧に応答します。リモートセンスを使用している場合、負荷リードによる電圧降下を考慮して、OVPトリップ電圧を高く設定してください。
OVP回路は過電圧状態に瞬時に対応できますが、出力電圧自体が降下するのには時間がかかります。出力の降下時間は、電源と電源の出力に接続されている負荷のダウンプログラミング機能によって異なります。一部の電源には出力の間にシリコン制御整流器(SCR)があり、OVPが作動すると始動し、電圧降下がずっと速くなります。
過電流保護(OCP)
ほとんどの電源に、出力電圧設定と電流制限値設定があります。電源は、電流制限値設定の値(A単位)に基づいて、過度の電流が流れるのを防ぎます。定電流(CC)モードでは、出力電流が電流制限値に保たれますが、出力はオフにはなりません。その代わりに、電圧が設定電圧以下に低下し、電源はCCモードで電流制限値設定の電流を出力し続けます。
DUTに過度の電流が流れるのを防ぐために、OCPは出力を遮断します。OCPをオンにすれば、電源がCCモードに入ると、保護機能が働き、出力がオフになります。実際には、OCPは電流制限値設定をトリップ値(A単位)にします。電流制限値は、DUTを過度の電流から保護でき、しかも負荷電圧の変化などの出力の過渡条件で発生する可能性のある通常の出力電流の変化に起因する誤ったトリッピングを防止できる値に設定します。電源のOCPは、工場出荷時にはオフになっています。
内蔵の電源保護機能を使用してDUTを 保護する
図8:電源のフロントパネルの過電圧保護、過電流保護、定電圧、定電流モード表示
6DC電源の基礎
8
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「出力オフ」状態に設定すれば電源の出力が完全にオープンになると思われるかもしれませんが、そうではない場合があります。「オフ」に設定した場合に、モデルや電源にインストールされているオプションによって、出力インピーダンスが異なる場合があります。「出力オフ」状態では通常、出力電圧と出力電流がゼロに設定され、内部の電力生成回路がオフになります。ただし、出力端子がDUTから物理的に切断されていれば別ですが、これらの設定によってDUTとの間に電流が流れなくなるわけではありません。
電源の出力が「オフ」でも完全にオープンでない場合は、さまざまな理由でDUTのテストに悪影響が及ぶ可能性があります。
– DUTに、電源出力に直接接続されているDC電源がある。
– DUTに、逆極性構成の出力に接続されているDC電源がある。
– DUTが過度の容量性負荷の影響を受けやすい。
– DUTによって電源出力の電圧が変化する。
一部の電源モデルには、電源出力をDUT
から完全に切断できる内部出力リレーオプションがあります。図9のリレーは、「出力オフ」設定を使用してDUTに電流が流れるのを完全に阻止した場合にオープンになります。ただし、リレーオプションをインストールしても、一部のモデルでは、出力端子とシャーシグランドの間に出力キャパシタや容量結合回路が依然として接続されている場合もあります。これは、リレーの位置に原因があります。このため、DUTはこれらのコンポーネントに接続されたままになります(図10を参照)。
電源出力とDUTの間を完全に切断する必要のあるクリティカルなアプリケーションでは、完全に切断する出力リレーオプションがあるかどうか電源メーカーに問い合わせてください。この構成が入手できない場合には、独自の外部出力切断リレーを使用しなければならない場合もあります。
外部リレー構成のマイナス面は、テストセットアップのコストと複雑さが増すことと、余分なスペースが必要なことです。リレーを挿入し、電源出力とリレーをリード線で接続し、リレーを制御するための方法が必要となります。外部リレーの開閉を他の電源関連のイベントと同期させることは容易ではない場合もあるかもしれません。
内蔵出力切断リレーを使用できれば、外部リレーに比べて以下の利点があります。
– それほど複雑ではない
-- 配線が少ない
-- 外部リレー制御回路がない
– 占有スペースが小さい
– リレーの開閉と他の電源関連のイベントとの同期性能に優れている
– 過電圧や過電流などの障害条件が発生するとリレーがオープンになる
反転保護ダイオード
電源内部
RFI/ESDフィルター
内部出力リレー
出力キャパシタ
++
----
DUT
反転保護ダイオード
電源内部
RFI/ESDフィルター
内部出力リレー
出力キャパシタ
++
----
DUT
出力リレーを使用してDUTを物理的に 切断する
図10:一部の出力コンポーネントの内側に内部リレーがある電源の例。 リレーがオープンになっても、これらのコンポーネントはDUTに 接続されたままです。
7DC電源の基礎
図9:出力端子に内部リレーがある電源の例。リレーがオープンになれば、 DUTは完全に切断されます。
9
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ほとんどの電源がDUTの定常電圧/電流を測定できますが、一部の電源は動的な電圧/電流も測定できます。このような電源には、デジタイザが内蔵されています。
デジタイザは従来、アナログ信号を捕捉/記録するためのデータ収集に使用されます。デジタイザを使用して入力のアナログ信号を表示するオシロスコープと同様に、電源に内蔵されているデジタイザも、出力で発生した動的な電圧/電流の波形を捕捉できます。
基本的なデジタイザの動作
図11に、デジタイザによるアナログ波形のデータポイントへの変換を示します。トリガが発生すると、デジタイザはサンプリングを行い、バッファーに記録します。
デジタイジング測定では、以下の3つのパラメータのうちの2つを設定できます。
– タイムインターバル:サンプル間の時間
– サンプル数:必要なサンプル総数
– 捕捉時間:サンプルを捕捉するための全時間
2つのパラメータを設定すれば、以下の式に従って残りのパラメータが決まります。
捕捉時間=タイムインターバル× (サンプル数-1)
同様の方法で、トリガをかけて電源の出力電圧/電流の波形を捕捉するように、電源のデジタイザを設定することができます。電源のデジタイザは、波形データポイントの測定値を記録します。データを読み出して、任意の標準的なソフトウェアを使用して解析することができます。独自のカスタムプログラムやデバイス特性評価ソフトウェアを使用して、測定結果をタイムドメインに表示したり(オシロスコープビュー/データ・ロガー・ビュー)、統計解析を行うことも可能です。
デジタイザのアプリケーション例
電源をバッテリーの代わりに使用すれば、DUTに流れる電流に関する動的な情報を捕捉でき、DUTのバッテリーの電流ドレインをより詳細に解析できます。これにより、適切なデザイン調整を行なって、DUTのさまざまな動作モードの電力管理を最適化することができます。
図12に、電源出力デジタイザとデバイス特性評価ソフトウェアを使用して得られた、携帯電話の消費電流に関するサンプル波形を示します(これはオシロスコープのディスプレイではありません)。
デバイス特性評価ソフトウェアを使用した場合、捕捉したデータがタイムドメインにグラフィック表示されます。これは、オシロスコープが信号を表示するのと非常によく似ています。波形から、電流の状態(アイドル、受信、送信)を識別できます。もちろん、デバイス特性評価ソフトウェアを使用しなくても、デジタイズされたデータを解析することはできます。
USB、LAN、GPIBなどのバスインタフェースを使用して、デジタイズされた波形情報を捕捉して読み取ることができます。読み取ったデータは、フロント・パネル・ディスプレイの場合と同じように、電源によってデータから単一の数値が計算され、スカラー値として返されるか、値の配列として返されます。DC突入電流テスト中にピーク電流の引き込みなどの波形を捕捉するようにトリガオフセットを変更することにより、プリ/ポストトリガデータを収集することも可能です。
電源に内蔵されているデジタイザを使用して 動的波形を捕捉する
トリガ発生
測定サンプル(ポイント)
サンプル間のタイムインターバル
捕捉時間
= タイムインターバル × (サンプル数-1)
図11:デジタイザは、サンプリングによって、 アナログ波形をデータポイントに変換します。
図12:デバイス特性評価ソフトウェアは、電源に内蔵されているデジタイザを使用して、携帯電話の電源からの電流の引き込みを示すデータを捕捉できます。
8DC電源の基礎
送信電流パルス
受信電流
アイドル電流500 mA/Div2 ms/Div
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電源は通常、定電圧が必要なバイアス回路に使用されます。より高度なアプリケーションでは、任意の電圧波形(または電流)が必要な場合もあります。最新の電源は、どちらもリストモードを使って簡単に管理でき、電圧波形/電流波形アプリケーションにも対応できます。
リストモードとは
通常は、電源出力の電圧を不連続に変化するようにPCでプログラムすることができます。このように、プログラムによって電圧間の遷移を制御することにより、DUTをさまざまな電圧でテストすることができます。
リストモードでは、このような電圧シーケンスを作成して、内部信号や外部信号と同期させることができます。コンピューターを接続する必要はありません。個別にプログラムした電圧(または電流)ステップと、対応するステップ持続時間を設定します。各ステップの持続時間を設定した後、電源で直接リストの実行を開始します。持続時間またはトリガに応じて次のステップに移るように、電源を設定することも可能です。リストは、1回または複数回繰り返すようにプログラムできます(図13を参照)。
リストを作成するには、以下を設定します。
– 1回以上の電圧/電流ステップ:定義した電圧値または電流値
– 持続時間:各電圧/電流ステップに対応する持続時間
– 繰り返し回数:リストを繰り返す回数
テストでのリストモードの 2つの用途
電源のリストモードは、以下の2種類のテストを実行するのに有効です。
– 電圧シーケンステスト:DUTに不連続な入力電圧値を印加して測定するテスト。
– 電圧波形テスト:DUTに入力電圧波形を印加して測定するテスト。
どちらの場合も、入力信号によって電圧ステップのシーケンスが発生します。一方は複数のレベルの定常状態電圧があり、もう一方は連続的に変化する電圧プロファイルを持っています。これら2つのテストは通常、DUTのデザイン検証に用いられます。DC電源は帯域幅に制限があり、通常は数十kHzまでの周波数でのみ電圧波形を出力できます。また、ほとんどの電源が正の電圧だけを出力するユニポーラーデバイスです。
リストモードの使用方法
リストモードを使用して、車載用電子システムの電圧波形テストが行えます。内燃機関(コールドクランクとも呼ばれる)
の起動中は、電気式スターターモーターによって非常に大きな電流が引き込まれるため、バッテリーの電圧レベルが著しく低下します(図14を参照)。バッテリーの電圧はエンジンが回ると横這いになり、電気スターターがオフになると最終レベルに達します。
表4に示されている簡略化されたシーケンスをリストに入力して、車載用電子システムのECUデザインの検証テストを実行することができます。(追加のステップとして、電圧レベル間の遷移もシミュレートできます)。このようなテストにより、車載用エレクトロニクスが電力トランジェントの影響を受けないように設計できます。時間変動する電圧をDUTに印加する必要がある場合には、このようにリストモードが使用できます。
図13:リストは、トリガで始まる個別にプログラムされた電圧 (または電流)ステップのシーケンスです。
図14:リストステップで表された車載用コールドクランクのプロファイル
表4:車載用クランクの電圧プロファイル(図14)をシミュレートするのに使用する簡単なリスト
ステップ 電圧レベル 電圧値 持続時間0 Vlow 8 V 300 ms
1 Vplateau 12 V 500 ms
2 Vfinal 14 V 400 ms
トリガ
ステップ番号
0 1 2 3 4 5
持続時間
反復1
0 1 2 3 4 5反復2
繰り返し回数=2
電源電圧
Vlow
Vfinal
V
時間
plateau
300 ms 400 ms500 ms
電源リストモードを使用して 任意の電圧波形を作成する9DC電源の基礎
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テストラックを計画する際の測定システムのレイアウトの選択は、難しい問題です。選択を左右する多くの要件の中に、安全性、信頼性、性能があります。
特に、DC電源をラックに搭載する際には、以下のことに注意してください。
– 荷重配分ラックが不安定にならないようにするには、荷重を均一にしてください
– AC電源ライン入力過度の電流の引き込みを防ぐには、十分なAC電源ライン入力を供給してください
– 熱管理過度の温度上昇を防ぐためには、熱管理を適切に行ってください
– 磁界干渉磁界干渉を最小限に抑えるには、測定器を正しく配置してください
– 配線伝導/放射性ノイズを最小限に抑えるように配線してください
荷重配分
電源は通常、テストラックの中で最も重量のある測定器の1つです。電源をラックの下の方に搭載して、ラックの重心を下げて、ラックが傾かないようにしてください。(図15)
AC電源ライン
AC電源ラインの大きさを決める際には、ラック内の各測定器の最大電流定格に従って、AC電源ラインからラックに十分な電力が供給されるようにしてください。ほとんどの測定器が比較的一定の電流を引き込みます。ただし、電源のAC電源ライン電流は電源の出力負荷によって変化します。電源の出力の予想される最大負荷がわからない場合は、電源の最大定格入力電流を使用してワーストケースを考慮してください。
熱管理
電源には通常、冷却ファンが内蔵されています。電源をラックにマウントする場合は、電源の空気取り入れ/排気用に十分なスペースを確保してください。DMM
などの熱に敏感な測定器は、高温がDMM
の測定値に悪影響を及ぼすおそれがあるので、電源には近づけないでください。
磁界の干渉
ほとんどのCRTディスプレイがLCDディスプレイに置き換わりましたが、CRTディスプレイを搭載した古いコンピューターやオシロスコープを使用している場合は、磁界の影響を受けやすいので注意してください。また磁界は、一部の測定器の性能や確度にも影響を及ぼすおそれがあります。例えば、電圧計の回路は、電源内部の磁界など、変圧器が発生する大きな磁界の影響を受けてしまいます。磁界に敏感な測定器(特にDMM)は、DC電源から離して設置してください。
配線
AC電源ケーブルは電気ノイズを放射する可能性がある上に、入力信号線も測定信号伝送線も電気ノイズの影響を受けやすいので、AC電源ケーブルを信号伝送ケーブルから離してください。
上部が重いとテストシステムのバランスが悪い
重心が低く、バランスの良いテストシステム
ラック前面
ラック前面
側面 側面
電源をラックにマウントするためのヒント
図15:テストシステムのバランスを保つためには、 下の方により大きくて重い測定器を設置してください。
10DC電源の基礎
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ダウンプログラミング電流シンク機能を備えた電源は、電圧レベルを出力端子の電圧レベルより低くプログラムした場合、電流を自動的にシンクします。ダウンプログラミングとは、電源の出力端子の両端を結ぶ内部負荷と考えることができ、出力電圧をすばやく低下させる働きをします。
DUT(Device Under Test)被試験デバイス
リニアレギュレーション電源制御素子を全波ブリッジ整流器および出力と直列に配置する電源のデザイン手法です。制御素子は、フィードバック回路によって制御される可変抵抗と考えることができます。フィードバック回路は、出力をモニターし、抵抗を調整して、出力電圧を一定に保ちます。
RFI/ESDフィルターRFI(無線周波数干渉)フィルターは、ノイズ電流をグランドに流すことにより、電源の不要な動作を防ぎます。同様に、ESD(静電放電)フィルターは、静電気をグランドに逃がすことにより、電源が損傷するのを防ぎます。
自己発熱効果(シャント)シャント抵抗を流れる電流は、電力を消費し(I2×R)、シャントを加熱するため、抵抗値が変動します。
SCR(シリコン制御整流器)DC電源の出力端子間に配置されたSCRは、過電圧状態が検出されると、電源の出力を直接短絡します。「クローバー」とも呼ばれるこの過電圧保護機能は、過度の電圧が負荷に流れるのを防ぎます。
スイッチングレギュレーション電源高速オン/オフスイッチのように動作するレギュレータ素子を使用する電源のデザイン手法です。デューティーサイクル(スイッチのオン/オフ時間の比)は、フィードバック回路によって制御されます。この回路は、出力をモニターし、デューティーサイクルを調整して、出力電圧を一定に保ちます。
熱起電力(EMF)回路を温度の異なる異種金属に接続すると、熱起電力による電圧が生じます。これは、金属間の接合部が熱電対を形成し、接合部温度に比例した電圧が発生するためです。このような接合は、DUT、リレー、マルチメータへの接合部など、金属のリード線を接続するすべての場所で発生します。
電圧/電流定格電源が出力可能な最大仕様電圧/電流。
用語集
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キーサイトの関連カタログ
『テスト時間を削減する電源の使用法 - 10のヒント』 5968-6359J http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5968-6359J.pdf
『電源製品について知っておきたい10のヒント』 5965-8239J http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5965-8239J.pdf
『Test-System Development Guide』 5989-5367EN http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5989-5367EN.pdf
リソース
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