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「情報社会と科学」LATEX講習編
LATEX文章作成練習用テキスト今井 裕 (鹿児島大学大学院理工学研究科物理・宇宙専攻)
2010年 7月 20日 作成2010年 10月 18日 改訂
はじめに
このテキストは LATEX2εの書式で書かれています。2回の講義で一通りエッセンスを網羅できるようにしているつもりです。このファイルに導入されたコマンド、マクロ、体裁を大いに引用し、今後の課題レポート作成に役立てて下さい。講義は、LATEXファイルの中身とコンパイル後出力される清書された文書とを比較しながら進めて行きます。これら2つのファイルを同時に見られるように表示を工夫しましょう。前者の編集後速やかに後者のどこが変化したのか確認しながら作業を進めましょう。
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目 次
第 1章 1日目:基礎編—普通のLATEX文章を一通り作成する— 3
1.1 LATEX文書を作成する — LATEXコンパイラの使用 — . . . . . . . . . . . . . 3
1.2 LATEX文書の体裁を決める — preamble の設定 — . . . . . . . . . . . . . . . 3
1.3 書きたい事を箇条書きにする . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3
1.4 相互参照 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
1.5 数式を挿入してみよう . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4
第 2章 2日目:応用編—LATEX文章で科学レポートを作成する— 6
2.1 参考文献のリストを作成し、文章中で引用しよう . . . . . . . . . . . . . . . 6
2.1.1 リスト作成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
2.1.2 文章中での文献の引用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
2.2 図を挿入してみよう . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6
2.3 LATEXで表を作成してみよう . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
2.4 マクロを利用しよう . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7
第 3章 「情報社会と科学」LATEX講習編のレポート課題 8
付 録A 何故LATEXが必要か 9
A.1 電子文書と印刷文書との使い分け . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
A.2 LATEX文書とWORD文書の違いと使い分け . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9
付 録B トラブルシューティング 11
付 録C このドキュメントの作成について 12
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第1章 基礎編—普通のLATEX文章を一通り作成する—
1.1 LATEX文書を作成する — LATEXコンパイラの使用 —
簡単な preambleとmain text を作成して、実際に LATEX文書を表示してみよう。実際の手順は 1.3を参考にすること。
1.2 LATEX文書の体裁を決める — preamble の設定 —
今後いろいろな場面で同じLATEXファイルを加工して使えるように、 preambleのコマンドを一通り書き出すことを勧めます。以降文章によって、preamble中のパラメータの数値を調整すれば良いのです。
1.3 書きたい事を箇条書きにする書きたいことを併記させる(順番は関係ない)場合は \itemize を使う。
例文: 電子文章作成のメリットを最大限に生かそう。そのメリットとは、以下にまとめることができる。
♦ 編集が容易: 消しゴムが不要なので、思いつくままに書いたり消したりできる。ただし、一度書いたものは、不要であると断定できるまで、何処かに書き残しておくこと。
♦ 単語、文法チェック機能: LATEXファイルでもテキストファイルとしてWORDで読み込むことができ、WORDの諸機能を利用できる。
複数の項目を順番に列記する場合、項目数が問題になる場合は \enumerate を使う。例文: LATEX文章作成のための準備
(1) LATEXコンパイラ(講義ではWinShell(「すべてのプログラム」⇒「TeX」と移動すればたどり着く)を使う)を開く。
(2) 編集ファイルを開く。新規作成の場合は、簡単なLATEX文章を作ってコンパイルする。
第 1章 1日目:基礎編—普通の LATEX文章を一通り作成する— 4
(3) LATEXファイルのコンパイルは、「実行」⇒「LaTeX」を2回実行し、「実行」⇒「PDFLa-
TeX」を1回実行すれば完了する。
(4) 作成済みに仕上がり文書ファイル(PDFファイル)を開いて (「実行」⇒「PDF閲覧」)、編集ファイルと並べて表示する。コンパイルを実行する度に表示を更新する。
(5) 予備編集ファイルも開いておく。文書が短ければ編集ファイル=予備編集ファイルでも良い。 これは内容の一部の記述を一時的に退避するためのものである。
(6) 参考にする資料を見やすいところに置く。
(7) お茶を用意する。それから、編集作業を開始する。
1.4 相互参照多分 LATEXでのみ可能だと思われる機能がこの「相互参照」である。LATEXファイル中
の任意の章・数式・文献を \label (文献を参照する場合については 2.1章で説明)を使って参照する場合のキーワードをそれらが出現する場所で指定しておけば、同じLATEXファイル中の任意の場所で \ref を使って参照することができる。この場合は、コンパイルを二度実行する必要がある。一度目のコンパイルで .toc (table of contents) ファイルが作成され、それを元に二度目のコンパイルで各参照箇所に適切な番号が充てられる。
1.5 数式を挿入してみようLATEXが理系で良く使われる所以は、文章中に数式を取り込むことが頻繁に行われるか
らである。文中に数式を入れる場合は$ 記号で囲む。
E = mc2 =m0√
1 − (v/c)2≈ m0c
2 +1
2m0v
2 + · · · . (1.1)
この式は Einsteinが発見した。複数行にわたる式:
cosh x =ex + e−x
2
=1
2
(1 + x +
x2
2!+
x3
3!+ · · · + xn
n!+ · · ·
)
+1
2
(1 − x +
x2
2!− x3
3!+ · · · + (−1)n xn
n!+ · · ·
)
第 1章 1日目:基礎編—普通の LATEX文章を一通り作成する— 5
= 1 +x2
2!+
x4
4!+ · · · + x2n
(2n)!+ · · · (1.2)
=∞∑
n=0
x2n
(2n)!(1.3)
これは、cosh xの x = 0の回りのTaylor展開である。行列:
A11 A21 A31
A12 A22 A32
A13 A23 A33
x
y
z
=
a
b
c
(1.4)
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第2章 応用編—LATEX文章で科学レポートを作成する—
2.1 参考文献のリストを作成し、文章中で引用しよう2.1.1 リスト作成参考文献のリストは、文章の最後に載せてあるので参照すること。引用文献として明示する場合は、著者名、著作名、出版元、巻・号、頁(開始/終了)出
版期日などを情報に入れる。
2.1.2 文章中での文献の引用このように引用できる。: [1]
2.2 図を挿入してみようLATEX(LATEX2ε)文章に図を挿入する場合は、次のようにする。
図 2.1: NASAが提供するチャンドラX線衛星の画像(キャッツアイ星雲)。
第 2章 2日目:応用編—LATEX文章で科学レポートを作成する— 7
2.3 LATEXで表を作成してみよう
表 2.1: 基礎物理定数
単 位名称と記号 数 値
S I C G S
万有引力定数 G 6.6720(41) ×10−11N·m2·kg−2 ×10−8dyn·cm2·g−2
真空中の光速度 c 2.99792458(1.2) 108m·s−1 1010cm·s−1
電子の質量 me 9.109534(47) 10−31kg 10−28g
素電荷 e
{1.6021892(46)
4.803242(14)
10−19C 10−20emu
10−10esu
2.4 マクロを利用しようPreamble 中でも本文中でも指定できるが、何度も使う文字入力をマクロを使って短縮入
力するようにすれば、文章作成がはかどる。マクロを使わずコピー& ペーストで素早く入力可能かもしれないが、後で入力内容を変更する時は、再びこのコピー& ペーストを実行しなければならない。具体的には下記のような例がある。
• 本文中の変数あるいは数式:例:恒星からの質量放出率 M¯yr−1(実際に入力する場合は $M_{\odot}{\rm yr}^{-1}$ と入力しなければいけない)
• 表などで頻繁に出て来る記号など(上の表でも使われている)
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第3章 「情報社会と科学」LATEX講習編のレポート課題
この LATEX文書ファイルを編集して、あるテーマに関してのレポートをまとめること。テーマは自由だが、内容構成には以下の条件がある。
• 講義で学んだ基本的な項目を全て網羅すること。「目次」中で示された第1章、第2章の各項目を全て網羅すること。
• 本文のフォントサイズは 11ptあるいは 12ptにすること。
• 参考資料、参考文献も入れること (thelibliography環境を使って)。
• 表紙も入れて 4ページ以上 6ページ未満にすること。
• 他の講義の課題として提出するべきレポートを本課題として提出しても良いが、本課題の条件を全て満たしていること。
• 他の講義の課題レポートをLATEX文章で作成して提出した結果不利益を被る場合(例:手書きレポートの提出が求められているのにそうしなかったために減点された)が発生しても、今井は責任を持ちません。
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付 録A 何故LATEXが必要か
状況に依って使い分けて下さい。
A.1 電子文書と印刷文書との使い分け• 電子文書の特徴と用途
– 奇麗な体裁、多彩な書体、(正誤関係なく)確実な情報伝達形態
– 容易な編集作業、パソコン上で複製が容易
– 多くの人に回覧可能 ⇒データベース化が容易
• 印刷文書(手書きも含む)の特徴と用途
– 複製が困難(手間が掛かる、全く同じものを作成するのが困難)
– 正式文書は印刷文書(辞令など)、直筆でなければいけないもの(署名など)
• [演習] 以下のやり方が適切か、考えてみよう。
– ラブレターを電子メール(=一種の電子文書)でベタ打ち(キー入力で文章を作ること)で送る
– 文書ファイルを図のファイル (.png)等に変換して送信する
– 履歴書を LATEX文書で作成する
– 研究室が隣同士の学生/教員との間で電子メールで会話をやりとりする
– レポート課題を電子メールで提出する
A.2 LATEX文書とWORD文書の違いと使い分け• 事務系文書はWORD(ひと昔までは「一太郎」)ファイルが標準
– 大学/専門学校の講義で必ず取り上げられる
– 計算機の種類 (architecture)や operating system (OS)に依存する改行のタイミングなど
付 録A 何故 LATEXが必要か 10
– 様々な種類のファイル (図、表、数式等)の添付が可能
• 科学論文の投稿は LATEXファイルを用いるのが一般的
– プログラミング言語みたいなものである工夫すれば他のプログラムで自動作成が可能
– ArchitectureやOSに依らない: plain text が一番安心?
– 相互参照機能(文献、図、表、章項目などが対象)が頻繁に重宝される
– データベース (Astronomical Database System等)構築が容易参考文献、データ等、文章中の様々な情報がデータベースへ取り込むことが行われている。
– 多彩な数式/記号(それらの組み合わせ)が利用可能
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付 録B トラブルシューティング
LATEX文書は一種のプログラムなので、コンパイルの作業が必要であり、そのファイル中のバグ(=問題発生箇所)を取り除かなければならない。それでは、どのようにこのようなバグを効率良く取り除けるだろうか?
♣ コンパイル時のエラー: とにかくエラーメッセージを読む。
– どの行の何がどのように問題なのかを把握する。
– 何が問題か理解できない場合:
1. 問題が起きていそうな記述をコピー&ペーストで他のテキストファイルに退避させ、正しくコンパイルができる状態にまで元文書を加工する。
2. 退避させた記述を少しずつ編集文書へ組み込み、コンパイルをしながらどの操作によってエラーが発生したのかを把握する。
– \begin と \endの対応はとれているか?コメント文を入れて、これらの対応を分かり易くしよう。
♣ コンパイルはできるが、思い通りの場所に図や表を表示できない。
– その場所に表示するのを諦める。\begin{figure}や\begin{table}のオプションを変更する。
– LATEX文章中で、図や表を貼付けるための記述を挿入する場所を変更する。
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付 録C このドキュメントの作成について
• 日本語対応 LATEXコンパイラ (MaxTeX)のインストールのガイドhttp://www.geocities.jp/ball_rw/tex/install_leopard_new.html
• ダウンロード元http://www.tug.org/mactex/2009/
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関連図書
[1] 情報活用基礎,鹿児島大学編,2010年
[2] 伊藤和人,LATEX2ε トータルガイド,秀和システム,2000年