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LDFの基礎と可能性 1 1

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LDFの基礎と可能性

111

1 イントロダクション 1-1 原理 1-2 レーザ血流計の進歩 1-3 Integrated probe 1-4 Integrated probe (ファイバーレスの特徴) 3 自律神経評価テスト 4 ショックモニタ 5 神経ブロック評価 5 神経ブロック評価 6 PAD 評価. 6-1 SPP(Skin Perfusion Pressure Test:皮膚灌流圧試験 7 PPI(末梢動脈インターベンション治療)の術中モニタ

2

レーザ血流計は診断のための機器として開発され(当初はHe-Ne ガス

レーザが使われた)、20 年以上の歴史がある。国内でも1980 年代から

1990 年代にかけて全国の大学病院の様々な診療科目で主に研究用に

採用され、多くの論文の発表が続いた。

しかし、ファイバーが揺れることによるアーチファクト(生体信号なのか揺

れによるノイズなのか判定できない)の問題、光ファイバが折れやすいな

どの理由から臨床現場から敬遠されていた。

2000年以降、安定した半導体レーザが開発され、電子部品の小型化が

進み、Integrated probe(ファイバーレス プローフ)が開発されるに至り、また、

微小循環(末梢血管)が注目されるようになった事で新たな展開が始まっ

ている。

3

プローブ先端より出力されたレーザ光は、皮膚表面に照射されることで皮膚組

織内を散乱しながら血管内で移動している赤血球に衝突する。

移動している赤血球により散乱されたレーザ光は、赤血球の移動速度に比例

した周波数変調(ドップラーシフト信号⊿λ )を受けた光と、静止している赤血

球によるドップラシフト信号0による干渉され、 P(ω)=0+⊿λが、発生され光

ビート(揺らぎ)信号と成り、強度変調を伴った動的なスペックルを形成した散乱

光になる。そして、後方あるいは前方に散乱した光は検出器で受光され電気光になる。そして、後方あるいは前方に散乱した光は検出器で受光され電気

信号に変換される。

故にレーザ血流計は、 ⊿λを直接的に評価するのではない事から、広義の上

でのドップラー血流計とされている。

光電変換後の電気信号は、P(ω)と成った交流(AC)電圧に周波数重み付け

を行ない、検出される光の強度で有る直流(DC)電圧で正規化することで以下

の式のように(Perfusion flow) が求められる。

Perfusion Flow =∫ωP(ω)/<I(t)>2 = ∫ ω = ∫ √2πfA/DC

A= Calibration Parameter 4

強い強度が重なり合う部分と弱い強度が重なり合う部分が斑点模様に成って

レーザーユニットの前面に、白乳色の樹脂球体を置くと矢印の方向に出力された。レーザー光に対し、球体の中心部から離れた部分に斑点模様が現れる。

この斑点模様は、レーザー光の干渉現象による散乱光パターンで有り、スペックルと呼ばれる。

が重なり合う部分が斑点模様に成って現れる。

この球体の中に、移動する粒子が存在すると揺らぎが発生し、パターンが時間的に移動する事で動的なスッペクルが形成される。

スペックル

5

Continuous Doppler Power Spectrum

Po

we

r

Frequency [rad/s]

P(ω)

CalculatePerfusion Flow =∫ωP(ω)/<I(t)>2

⊿λ(ドップラーシフト信号 )を受けた光と、

静止している赤血球によるドップラシフト信号0による干渉され、 P(ω)=0+⊿λが、発生され光ビート(揺らぎ)信号と成る。

1- 2 レーザ血流計の進歩

0Laser beam λ0

P(ω)=0+⊿λ

Moving particle

stationary particle

Perfusion Flow =∫ωP(ω)/<I(t)>2

= ∫ ω = ∫ √2πfA/DC

Pe

rfu

sio

nFl

ow

(t)

この揺らぎの周波数(角速度)に対する速度との線形性は、光の波長に依存し、7.5mm/sec迄と成る。 6

r1r2

d’=5.7mmd=3mm

d

d’

Case 1

Case 2

Sham skin

Only skin

Lambert-Beer lawA=-log I/Io=-log t= log Io/I

Sham skin4mm

Case 1は、指先を直接プローブ上に置き測定した結果である。これに対し、 Case 2は、測定

感度を確認する為に、模擬的な皮膚を想定した4mmの静止散乱板を置き測定した結果である。

この事より、理論値より導かれた結果に対し実際の感度は、4mm程度まで保証される事が確認できる。 7

ファイバー・プローブは、現在でも国内・海外のほとんどのメーカが採用している方式。

本体部内に発光部と受光部を設え、光はグラスファイバーで導かれる。

ファイバーを揺らすとファイバー内の光の経路が変化し、信号の乱れが生ずる。測定対象の動物や人間はできるだけ動かない状態に保つ必要がある。

そのため、測定がわずらわしく臨床分野には向かない。

また、ファイバーは折れやすいため、扱いには慎重を要する。

下図 は、ファイバー式の製品例でその内部構造である。下図 は、ファイバー式の製品例でその内部構造である。

8

Integrated probeは、1984 de Mul 等により考案され研究

報告されて来た。(オランダ)。

Integreted probe 方式

Fiber probe 方式 9

10

Perfusion Flow

ドップラーシフト信号、周波数分布比較方式

ドップラーシフト信号に周波数重み付けを行い、検出光量で正規化して行う方式

BPF Lowfc=40kHz

BPF Highfc=400Hz

M PU

Display

Flow = | VL | 2 / | VH |2

|VL|

|VH|

A / Dconverter

AMP

ドップラーシフト信号に周波数重み付けを行い、検出光量で正規化して行う方式

Perfusion Mass

ドップラーシフト信号、実行値方式

AMP BPF RMS Disply

A / DM PU

AMP BPF ω WFderivation

RMS

Disply

LPF

subtraction

division

A / D con・DSP ・M PU・ I/F

レーザー血流計

貯蔵器

小腸ループ

60

70

80

Flo

w

11

ポンプ

大腿動脈

腸間膜静脈

腸間膜主幹動脈

ヘパリン

注入血液量〔mL/min〕5 10 15 20 25 30 35 40

10

20

30

40

50

60

FLOWr=0.95

y=1.7x + 5.0

ファイバー式の欠点を克服するために、Integrated probe(ファイバーレス)が開発された。先端のプローブにLD(レーザダイオード)とPD(フォトディテクタ)

が組み込まれ、測定対象に直接当てることが可能。プローブから本体までは電線ケーブルに依るため、従来の光ファイバーによる問題を解消している。

下図 は、指にプローブをサージカルテープで固定し、指を動かしたときの波

形である。右図(ファイバーレス・プローブ)と比較してファーバー式プローブでは指を動かした時に波形が乱れる。

Integrated probe(ファイバーレス)を採用した血流計は特に臨床分野で用途が広がる可能性がある。が広がる可能性がある。

Integrated probe は、オランダのTwente大学でも研究され、その成果が論文などで発表されているが、海外では製品化はされていない。

Fiber-optic probes

Movement artifact

In vivo measurements

Integrated probe s

Movement artifact12

自律神経の中でも、副交感神経は障害されやすく、交感神経はかなり症状が進行してから起こる。自律神経機能検査法には、交感神経系及び副交感神経系のふたつに分けられる。*交感神経系の検査:起立試験、寒冷昇圧試験、起立時心電図R-R 間隔変動(BBV)等*副交感神経系の検査:安静時心電図R-R 間隔変動(BBV)、膀胱内圧測定等が上げられる。LDFを使用する評価テストの、バルサルバテストは、息こらえにより末梢の血流を低下させる試験である。その機序は、胸腔内圧の上昇により血圧の増加と誤って中枢が反射し副交感神経の急激な興奮状態によって心臓を抑制し末梢の血管を拡張させる。広くは、心拍変動を測定する事で行われるが、心疾患に於いては、判別を困難にさせている。

c

Valsalva maneuvre

a

PDV=c/a

難にさせている。1 分間の座位安静状態からValsalva テストを行い、皮膚毛細血管血流量減少速度(PBFdecreasing velocity:PDV)を、副交感神経評価指標として用いる。 (神戸大学医学部第二内科学教室:畑中祐司 レーザ皮膚血流計による糖尿病性自律神経障害の定量的分析 臨床病理)

PBF最大減少までの時間

c: PBF最大減少量

PDV:皮膚毛細血管血流

量減少速度

PDV=c/a

r = 0.6P<0.001

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バソモーション(血管運動)バソモーション(血管運動) での評価での評価

微小循環系の主要な役割は、物質の運搬である。血液中の水や溶質は、血管壁を通して周囲組織との間で交換される。

数学モデルから、血液灌流は、一定であるよりも周期的に変化している方が物質交換に有利であるとされている。

バソモーションは、血管内と組織間の物質交換効率を上げることが予想されてはいる。更にバソモーションは、血流量変化(flowmotion)の頻度と一致している。

(人間総合科学研究科 Effects of sympathetically induced vasomotion on tissue-capillary fluid exchange 桜井 照美 筑波大学)

又バソモーションを数値的データとして表すのに、組織血流のStandard deviation (SD)をMEAN で除した変動係数coefficient of variation (CV)尚Stability index(SI)ををMEAN で除した変動係数coefficient of variation (CV)尚Stability index(SI)を求める事で皮膚微小循環の恒常性の確認を行う事が可能であり、SIが低値であ

れば安定しており高値であれば恒常性が破綻を来たし生体の不調を示すインデックスとなる事が、糖尿病における自律神経失調症の評価パラメータとして報告されている。(神戸大学医学部第二内科学教室:畑中祐司 糖尿病患者の皮膚微小循環恒常性の測定とその臨床的意義御 臨床病理)

Xi tn

SI = STBF/MTBFSTBF: Standard deviation of tissue blood flowMTBF: Mean tissue blood flowTissue blood flow (X)MTBF=∑xin・xi/nSTBF=√∑xin(Xi-X-)2/n

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Stability index (SI) means the coefficient of variation (CV) for the“standard deviation (SD) of tissue blood flow during the blood purification”divided by “mean tissue blood flow.”

- Normal Control vs. Hemodialysis Patient -S

Io

fH

ead

Blo

od

Flo

w 0.4

0.5

Hemodialysis Pt.N=89 (DM=49,NonDM=40)

Control N=13

P< 0.01

SI = SHBF/MHBF MHBF=∑xin・xi/nSHBF=√∑xin(Xi-X-)2/n

SI

of

Hea

dB

loo

dF

low

0

0.1

0.2

0.3

Control Non DM DM

P< 0.01

P< 0.05

Clinical Aspects of Hemodaiafiltration : Takasi SatoContrib Nephrol. Basel,2011,Vol168,pp195-203

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血流量変化(血流量変化(flowmotion)flowmotion)の頻度の周波数解析の頻度の周波数解析

PS (Power Spectrum)周波数解析

0.4

0.5

( Hz)

(被験者 健常者 12名 透析患者正常群 6名 血圧低下群 6名)

NS P< 0.01

頭部 下肢

バソモーション 心拍

0

0.1

0.2

0.3

健常者群 BP 正常群 BP 低下群 健常者群 BP 正常群 BP 低下群

バソモーション

周期 P< 0.01

0.128Hz

0.051Hz

P< 0.01 P< 0.01 P< 0.01

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四肢末梢の血流は、骨格筋血流や皮膚血流は、平均動脈圧とパラレルに変化する。これらの微小循環(組織血流)を見ることで体幹の広域循環動態を確認できる。

耳朶や頭頸部での組織血流は、平均動脈圧が60mmHg ~150mmHgの間では、血流量は一定に維持されている(脳血流のオートレギュレーションと同様な機序が想定される)。

尚、60mmHg 以下になると耳朶や頭頸部での組織血流は、急速に低下する。即ちショックに至る。

耳朶血流は、脳血流そのものではないが、外頸動脈の第一分枝の血流であり、耳朶血流を観ることは即ち脳も含めた頭頸部の血流を観ることとであり、耳朶血流を観ることは即ち脳も含めた頭頸部の血流を観ることと言える。

LDF用いた事例では、をショックモニタの応用例として、人工透析中に急激に血圧が低下する透析不対症の患者の連続モニタにおいて実績がある。 Wiederhielm:Am. j. Physiol. 225, 992/996 (1973)

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頭部血流低下と共に脈拍増加の後に血圧が低下

血圧低下を起こす透析患者の血流と血圧の測定データ例

ショックポイント

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手掌多汗症に対する胸腔鏡下胸部交感神経節焼灼術施行時では、交感神経の緊張で著しく減少した患者の指先の血流が、交感神経節焼灼術により、急速に増加して行くことが確認できる。

(血管無侵襲診断法 レーザドップラ 松原純一 より)

又星状神経ブロックに於いてもブロック後、患者の指先の血流が、急速に増加して行くことが確認できる。

1.手術開始2.交感神経節焼灼3.交感神経節焼灼4.手術終了

胸部交感神経節焼灼術

足趾腹側部

手掌第一指

ホルネルの発現

A.施術前B.星状神経ブロック開始

星状神経ブロック

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ホルネルの発現

ホルネル症候:血管網の拡張により、体表温が、上昇する。

下肢血管狭窄の原因である動脈硬化:PAD(PeripheralArterial Disease:末梢動脈疾患)のスクリーニングに関して

レーザ血流計による論文が過去に多く発表されていた。Integratedprobe(ファイバーレス)により、外来診察での使用が可能になり再評価を受けつつある。

PC&専用ソフト

レーザ血流計を2台組み合せて使用。

LDF

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