希土類添加licaalf6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関する研究 著者 河口 範明 学位授与機関 Tohoku University 学位授与番号 11301甲第15420号 URL http://hdl.handle.net/10097/56580

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希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーション特性に関する研究

著者 河口 範明学位授与機関 Tohoku University学位授与番号 11301甲第15420号URL http://hdl.handle.net/10097/56580

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博士論文

希土類添加 LiCaAlF6の単結晶育成及び

シンチレーション特性に関する研究

河口 範明

平成25年

Page 3: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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目次

第 1 章 序論..................................................................................................................4

第 2 章 実験方法 ........................................................................................................15

2.1 希土類添加 LiCaAlF6 の単結晶育成方法 ........................................................16

2.1.1 単結晶育成方法の検討 .............................................................................16

2.1.2 マイクロ引き下げ法による希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の育成 .........19

2.1.3 チョクラルスキー法による Eu:LiCaAlF6 単結晶の育成 .......................22

2.1.4 結晶性の評価方法 ....................................................................................25

2.2 透過・発光スペクトルの評価 ........................................................................26

2.2.1 透過スペクトル評価方法 .........................................................................26

2.2.2 X 線励起発光特性の評価方法 ..................................................................29

2.2.3 励起スペクトル評価方法 .........................................................................31

2.3 中性子応答特性の評価 ....................................................................................33

2.3.1 中性子励起発光の減衰曲線の評価方法 .................................................33

2.3.2 中性子励起時の発光量の測定方法 .........................................................33

2.3.3 ガンマ線ノイズレベルの評価方法 .........................................................35

2.4 中性子線透過像の撮像試験 ............................................................................37

2.4.1 中性子ビーム ............................................................................................37

2.4.2 Eu:LiCaAlF6 単結晶による中性子撮像器 ...............................................39

2.4.3 中性子線透過像の試験方法 .....................................................................41

第 3 章 結果と考察 ....................................................................................................42

3.1 希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の育成結果 .........................................................43

3.1.1 マイクロ引き下げ法による希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の外観 .........43

3.1.2 チョクラルスキー法による希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の外観 .........45

3.1.3 結晶性の評価結果 ....................................................................................47

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3.1.4 単結晶育成結果の考察 .............................................................................49

3.2 透過・発光特性の評価結果 ............................................................................50

3.2.1 Ce:LiCaAlF6 の評価結果 ...........................................................................50

3.2.3 Eu:LiCaAlF6 の評価結果 ...........................................................................58

3.2.4 Pr:LiCaAlF6 の評価結果 ...........................................................................65

3.2.5 透過・発光特性についての考察 ..............................................................70

3.3 中性子応答特性の評価結果 ............................................................................71

3.3.1 中性子励起発光の減衰曲線の評価結果 .................................................71

3.3.2 中性子励起時の発光量の測定結果 .........................................................75

3.3.3 ガンマ線ノイズの評価結果 .....................................................................79

3.3.4 中性子応答特性の考察 .............................................................................82

3.4 中性子線透過像の撮像試験 ............................................................................84

3.4.1 Eu:LiCaAlF6 単結晶による中性子線透過像条件の検討結果 ................84

3.4.2 中性子ビームポートを利用した中性子線透過像の撮像試験結果 ......86

3.4.3 放射線管理区域外における中性子線透過像の撮像試験結果 ..............91

3.4.4 中性子線透過像の撮像試験結果の考察 .................................................94

第 4 章 結論................................................................................................................95

参考文献 .......................................................................................................................97

謝辞 ............................................................................................................................ 103

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第 1 章 序論

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放射線には X 線、ガンマ線、α 線、β 線、中性子線などの種類があり、物質

との相互作用には図 1.1 に示すような違いがある。α 線は 4He の 2 価の陽イオン

が高い運動エネルギーを有するもので、紙で遮蔽される。β 線は電子が高い運

動エネルギーを有するもので、薄い紙であれば透過するが、アルミ箔で遮蔽され

る。高エネルギーの光である X 線やガンマ線は重元素と相互作用して減衰しやす

く、十分な厚みの鉛ブロック等を透過できない。中性子線は鉛等の重元素をも透

過する高い透過性があり、一方で炭素や水素などの軽元素と相互作用しやすいと

いう X 線、ガンマ線にない特徴を有している。現在、港湾における貨物検査など

では X 線透過像による非破壊検査が用いられているが、中性子線透過像は X 線透

過像との相補的な利用、つまり、X 線では捕らえきれない対象を撮像する用途へ

の応用が期待される。中性子線は、例えばニトロ基を有する爆薬等と相互作用し

やすいため、仮に中性子線透過像を補助的に用いれば、X 線透過像だけでは鉛ケ

ース等に収納することで検査をすり抜けてしまうような危険な貨物をおぼろげ

にでも撮像し、通過を防ぐことができるものと考えられる。X 線源と比べると、

可搬型の中性子線源で照射可能な量は少ないため、従来の中性子イメージングは

多量の中性子線が照射可能な大規模な放射線管理区域でのみ実現されており、こ

のような用途に展開するには高い検出効率を有する検出器の開発が重要である

ものと考えられる。本研究では撮像用途への固体中性子シンチレーターの応用を

想定して研究を実施した。

図 1.1. 放射線の透過性を表す模式図

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従来の中性子線検出器は、石油資源探査における地中の中性子検層、放射線管理区

域における中性子線量のモニタリング等の産業分野や、米国や欧州を中心とした空

港・港湾・国境での核物質不拡散、核テロ防止を目的としたセキュリティ分野で利用

されており、3Heと中性子線との 3He (n, p) T 反応を利用する3Heガスを用いた比例計

数管が検出器として用いられてきた。中性子線はエネルギーに応じて呼称があり、熱

中性子(約0.025eV)、熱外中性子(約1eV)、低速中性子(0.03~100eV)、中速中性

子(0.1~500keV)、高速中性子(500keV 以上)などに分類されるが、3He (n, p) T 反

応の発生確率は高エネルギーの高速中性子では著しく低く、3He比例計数管の検出感度

が低くなるため、主な検出対象はエネルギーの低い熱中性子線である。高速中性子を

検出する場合は、ポリエチレンなどの減速材を用いて、高速中性子を熱中性子まで減

速させてから検出する方法が用いられており、例えば3Heを用いた中性子線検出器を球

形ポリエチレン減速材で覆うレムカウンターやボナー球スペクトロメーターが使用さ

れている。

このように中性子検出に用いられてきた3Heガスであるが、水素爆弾の原料で

ある3H(トリチウム)を製造する際の副産物であるため、米国の核軍縮による需

給のアンバランスに伴う枯渇が問題視され始めており、近年、価格が著しく高騰

している。また、元来、検出効率の点からガス式検出器は小型化が難しく、高電圧の

印加を必要として取り扱いが不便であるということもあり、代替技術の開発が求めら

れている[1.1]。固体中性子シンチレーターはその代替候補の一つである。また、先

述した中性子イメージングを汎用化するためにも、ガス比例計数管よりも省スペ

ースで高検出効率が実現可能な固体中性子シンチレーターが求められる。

中性子シンチレーターとは中性子を照射した際に発光し、速やかに消光する

(蛍光寿命が短い)材料で、光検出器と組み合わせることで中性子検出器とし

て用いることができる。シンチレーターの蛍光寿命が長いと、連続して多量の

放射線が照射された際に発光が完全に消光する前に次の発光が重なって起きて

しまうため、検出器に搭載した際に計数可能な放射線量が低くなってしまう。

概ね数マイクロ秒以下の蛍光寿命の発光がシンチレーターとして利用可能であ

る。そのような蛍光寿命の短い中性子シンチレーターの発光中心については、

ガンマ線シンチレーターの発光中心として添加される希土類イオンの Ce3+、Eu2+、

Pr3+の 5d-4f 電子軌道遷移に伴う発光が利用可能である。発光中心を励起させる

までの過程は中性子線と X 線・ガンマ線とでは全く異なるものの、同じシンチ

レーターとして、既に広く実用化されている X 線・ガンマ線シンチレーターの

研究成果は中性子シンチレーターの研究の参考になるため、ここで X 線・ガン

マ線シンチレーターについて説明する。

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ガンマ線と物質の相互作用は複数あるが、ガンマ線シンチレーターは全エネ

ルギーを付与する相互作用である光電吸収を利用する。ガンマ線が原子と衝突

した際に、光電吸収により軌道電子が飛び出すがこの電子を光電子と呼ぶ。光

電子の運動エネルギーは下記の式(1)にて表される[1.2]。

T = Eγ - I …式(1)

T は軌道電子の運動エネルギー、Eγ はガンマ線のエネルギー、Ι は軌道電子の

束縛エネルギーを表す。つまり、ガンマ線と物質との相互作用により生じる光

電子は、ガンマ線のエネルギーに応じた運動エネルギーを有する。シンチレー

ター中を移動する光電子は、数十 eV で一対の電子-ホール対を生成して、運動

エネルギーを減らす。有する運動エネルギーが高い程、生じる電子-ホール対の

数が増加することになる。

電子-ホール対は発光中心で再結合して、その数に応じた光子を放出するため、

一度のイベント(光電吸収)で生じる光子数は励起エネルギーに概ね比例する。

そのため、使用するガンマ線シンチレーターの発光量のガンマ線のエネルギー

依存性を予め調べて検量線を作成しておくことで、未知の放射線源からのガン

マ線のエネルギーを調べることができる。その確度(エネルギー分解能)は、

ガンマ線シンチレーターの単位励起エネルギーあたりに生じる光子数、発光量

(Light Yield)に依存する。この分野で用いられるシンチレーターの「発光量」

の用語は光収率、発光効率のような意味合いと言っても良い。

発光量が励起エネルギーに「概ね」比例すると記述したのは、X 線・ガンマ線

のエネルギーに対して発光量が必ずしも比例しない場合があるからであり、そ

の「non-proportionality」については M. Moszynskiらを中心としてその起源等

の研究が進められており、国際学会 IEEE NSS/MIC のセッションの一つとなって

いる。

また、ガンマ線検出器に照射されたあるエネルギーを持つガンマ線の量は、

光電吸収が起きたイベントの数から調べられ、ガンマ線検出器を標準ガンマ線

源で校正することで、計数したイベント数からガンマ線の量を測定できる。ガ

ンマ線と物質の相互作用のうち光電吸収を高確率で起こすためには物質の有効

原子番号、密度が高い必要があり、その確率は、経験的に概ね有効原子番号の

3.5 乗、密度の 1 乗に比例するとされ、重元素で構成された材料がガンマ線シン

チレーターとして用いられる。

ガンマ線シンチレーターの撮像用途への応用の代表例は癌診断に用いられる

Page 9: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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PET(Positron Emission Tomography)装置である。PET は通常細胞よりもブドウ

糖を吸収しやすい癌細胞の性質を利用し、18Fという標識元素を含むブドウ糖を患者に

投与して、癌細胞の近傍に 18F元素を集める。18Fは崩壊する際に陽子を放出する半減

期の短い放射性同位体であり、放出された陽電子は近傍の原子中の電子と対消滅し、

電子の静止質量に等しいエネルギー(511keV)のガンマ線が二方向に放出される。こ

の際に放出されるガンマ線は元の電子と陽電子の運動量を保存するため、正反対の運

動量を持ち、反対方向へ対となって放出される。この 511keV の対消滅ガンマ線を対

面する検出器でほぼ同時に計測し、そのわずかな差から三次元的な位置情報を計測す

るため、ガンマ線シンチレーターとしては蛍光寿命が短いことが求められる。また、

PET 用途に限らず検出器の感度はシンチレーターの発光量によって決まるため、シン

チレーターは発光量が高いことが求められるが、どの程度の発光量のシンチレーター

が撮像用途に用いられているのか、という点に関しては、これまでに開発された材料

が参考になる。

最も蛍光寿命が短いシンチレーターの一つとしては BaF2 の core-valence

luminescence (CVL) が知られている。 この発光は内殻の電子遷移に伴う特殊な発光

で、発光量は 1300-1400 photons/MeV である[1.3-1.4]。その蛍光寿命の短さから、高

エネルギー物理等の分野で研究、基礎実験に用いられている。発光量が低過ぎ

る場合は、光検出器で定常的に発生する電気的なノイズとシンチレーション光

による信号との区別ができないため、そもそも用いることができないが、BaF2

の CVL は少なくとも単一の検出器として利用するのに許容できる発光量である

と言って良いだろう。撮像用途としては、時間情報がより重要になる次世代型

PET の Time-Of-Flight(TOF)型 PET への利用が検討されたが、結局、実用化して

おらず、イメージングの用途に対しては発光量が不十分であるものと考えられ

る。

現在、PET 用シンチレーターとして主に用いられているは Ce:Lu2SiO5(LSO)で

あり、その発光量は 28000 photons/MeV である[1.5-1.7]。LSO は BaF2の CVLよりも

一桁高い、PET 用として許容できる発光量ではあるが、対消滅ガンマ線の時間分

解を行うために必要になる非常に短い蛍光寿命(40 ナノ秒)と、ガンマ線が検

出可能な高い有効原子番号を有するという条件の元での最良な材料と言える。

実際、蛍光寿命がマイクロ秒オーダーでも良く、ガンマ線よりは透過性がない X

線を検出対象とするため、ある程度の有効原子番号でも良い X 線 CT の用途には

より発光量の高いシンチレーターが用いられている。現在、X線 CTの用途で用いられ

ている材料は Tl:CsIで、その発光量は 61000 photons/MeV[1.8]、蛍光寿命は 1 マイ

クロ秒程度[1.9]である。

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また、ガンマ線用シンチレーターにもう一つ求められる特性として潮解性が

少ないことが挙げられる。シンチレーター研究の分野では、材料の潮解性は、

yes(あり)、no(なし)、slightly(わずか)等と定性的に記述され、定量的に

は議論されていないが(筆者は水への溶解度が参考になると考えている)、伝統

的なシンチレーター材料の Tl:NaI のように、潮解性があるものは一面をガラス

等の透明体としたアルミニウムのケースにパッケージングされて用いられてい

る。近年、PET 用のシンチレーターとして用いられる LSO は潮解性が確認できな

い安定な材料である。Tl:CsI はエタノールには可溶だが、潮解性がほとんどな

い化合物で、室温、大気中での利用は特に問題なく、実験室レベルではパッケ

ージングなどせずに剥き出しの状態で長期的に用いられている。

一方で、 LSO や Tl:CsI に比べて潮解性が激しいシンチレーターとして

Ce:LaBr3、Eu:SrI2 が知られている。これらは激しい潮解性のため、パッケー

ジングしないと室温の大気中において短時間で水分を吸収して液状になる。シ

ンチレーション特性は、それぞれ、 75000 photons/MeV [1.10-1.12]、 120000

photons/MeV[1.13-1.15]という高い発光量を有するなど、従来の材料よりも優れて

いる。厳重なパッケージングを施して、携帯型放射線検出器に搭載されている

が、その高い性能にも関わらず LSO や Tl:CsI の代替として PET や X 線 CT に搭

載されていない。

現実的に、大気中で潮解性が激しい材料が撮像用途に用いられていないのは、

加工と単結晶育成の難しさが原因ではないかと考えられる。加工については、

潮解性が激しい場合、PET に搭載されるシンチレーターアレイ化[1.16]のような複

雑な加工は難しいものと考えられる。C. L. Melcher らと共同研究する Siemens

社は自社の PET 装置に搭載する LSO 単結晶を製造しているが、LSO が大気中で取

り扱えることから、加工工程は高度に自動化されている。また、単結晶育成技

術については、乾燥室での湿度管理で製造が可能な伝統的なシンチレーターの

Tl:NaI ですら、製造元の違いによりエネルギー分解能に若干の差が生じるのが

現状で、潮解性が激しい場合、単結晶育成工程における特性の制御が難しいの

ではないかと考えられる。もちろん今後の技術革新で、これらの材料の撮

像用途への利用が進む可能性は十分にあるが、現時点で潮解性が激しい

材料は撮像用途への適用は難易度が高いものと考えられる。

以上に示した X 線・ガンマ線シンチレーターの特性をまとめたものを、

表 1 に示す。 X 線・ガンマ線シンチレーターとして求められる条件は、

先述した放射線阻止能(高い有効原子番号・密度)に加え、低残光性や

高放射線耐性なども挙げられるが、代表的な特性は表 1 に示すものであ

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る。中性子線透過像の撮像へ用いる中性子シンチレーターは、 PET のよ

うに二方向に放射される対消滅ガンマ線を検出対象としないので、 X 線

CT に搭載される Tl:CsI に近い性能の材料を目指すべきである。つまり、

表 1.1 より、蛍光寿命が数マイクロ秒以下で、潮解性が少なく、その上

で、発光量が高い材料を目指すべきであることがわかる。

表 1.1 主な X 線・ガンマ線シンチレーターの特性

撮像用途

発光量

(photons/

MeV)

潮解性

蛍光

寿命

(ns)

BaF2(CVL) - 1400 わずか 0.8

LSO PET 28000 なし 40

Tl:CsI X 線 CT 61000 わずか 1000

Ce:LaBr3 - 75000 激しい 30

Eu:SrI2 - 120000 激しい 1200

また、中性子シンチレーターとガンマ線シンチレーターの大きな違いとして、

励起の過程が全く異なる点が挙げられる。中性子線と物質の相互作用で発光中

心を励起できる現象としては特定の元素との中性子捕獲核反応が知られている。

3He 比例計数管が 3He (n, p) T 反応、下記式(2)を利用するのに対し、固体中性子シ

ンチレーターは下記式(3)、式(4)で示される核反応を利用する[1.17]。

neutron + 3He → 3H + 1H + 0.764 MeV …式(2)

neutron + 6Li → 4He (2.05 MeV) + 3H (2.75 MeV) …式(3)

neutron + 10B → 7Li (1.0 MeV) + 4He (1.8 MeV) <7%>

→ 7Li (0.83 MeV) + 4He (1.47 MeV) + γ-ray (0.48 MeV) <93%>

…式(4)

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式(3)、式(4)の核反応はいずれも中性子を捕獲して、高い運動エネルギーを

持つ重粒子線を生成する。重粒子線は、物質と相互作用やすく、容易にシンチ

レーターを励起できる。α線(4He2+)の場合は、物質中の原子と非弾性散乱し

て、軌道電子を電離、励起し、1回で 100~200eV の運動エネルギーを失いなが

らシンチレーター中を進み、最終的に近くの電子を得て止まる。この際に非弾

性散乱した原子から電離した電子(二次電子)による励起が発生、電子-ホール

対が生成、発光中心における再結合で発光する。他の重粒子線も同様の過程で

シンチレーターを励起する。核反応で発生する重粒子線のエネルギーは一定の

ため、中性子のエネルギーに依存せず同じ中性子シンチレーターから 1 イベン

トごとに生じる光子数は一定になる。つまり、ガンマ線シンチレーターのよう

にエネルギーを測定することはできないが、そのイベント数から照射された量

を測定することができる。

6Li や 10B は、3He 同様、高エネルギーの高速中性子にはほとんど反応しない

ため、ポリエチレンなどの減速材を用いて、熱中性子まで減速させて核反応の確率を

増加させて検出するのが一般的である。その検出効率は、核反応による熱中性子の中

性子捕獲断面積と、シンチレーターの厚みから計算できる。ただし、現実的な応用の

場では、全ての中性子を減速して熱化できるとは限らず、シンチレーター中で減速さ

せて検出する場合もあり、理論計算以上の厚みのシンチレーターを用いることで、中

性子の検出効率を高められる場合も多い。

中性子シンチレーターとして利用できる核反応を起こす元素の候補として、

Gd も挙げられるが、Gd と中性子の核反応は低エネルギーのガンマ線が生成する

ため、励起エネルギーが低く高い発光量が得られにくく、一般的には用いられ

ていない。Ce:6Li6Gd(11BO3)3 粉末を樹脂に分散したシンチレーターなど、微粒

子の形態での利用を試みた例等があるが、他の核反応を利用した中性子シンチ

レーターに比べると研究例は少ない[1.18]。

10B を含有する中性子シンチレーターについては、10B が 6Li よりも中性子捕獲

により生成する重粒子線の運動エネルギーが低いため、発光量が低くなる場合

が多い[1.19-1.26]。また、ガンマ線も同時に生成しノイズ源になりやすいため、10B

を含有する中性子シンチレーターは、現時点ではあまり主流ではなく、今後の

開発に期待したい材料である。

結局、現時点では 6Li を含有する中性子シンチレーターが最も有望であると考

えられる。6Li を含有する中性子シンチレーターの模式図を図 1.2 に示す。結晶

中に 6Li と発光中心として希土類元素を含む。中性子が照射された際に 6Li と核

反応を起こし、生成した重粒子線で発光中心が励起され発光する。希土類以外

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12

の発光中心を利用するものとして Cu:Li2B4O7 (LBO)[1.27]なども報告されているが

発光量は微弱である。伝統的な 6Li を含有する中性子シンチレーターとして、

Ce 添加リチウムガラスと Eu:LiI がある [1.28]。リチウムガラスは潮解性がないが、

その発光量は 7000 photons/neutronで、X線 CTに用いられる Tl:CsIと比べると、光

子数の少ない発光が得られやすい。Eu:LiI は Ce:LaBr3、Eu:SrI2 と同様に激しい

潮解性があり、現実的な撮像用途への応用は難しい。

図 1.2.中性子シンチレーターの模式図

ガンマ線シンチレーターが重元素で構成される必要があるのに対し、中性子シ

ンチレーターが高い中性子検出効率を有するにはシンチレーター中の 6Li 密度

が高い必要がある。天然 Li 中には 6Li は 7.5%程度しか含まれないが、6Li

を 95%程度まで濃縮した原料が入手可能であり、それを用いることで検

出効率を高められる。また、化合物中の Li 含有量が高いこと、検出効率

が十分になる厚みに加工してもシンチレーション光を取り出すことので

きる透明なバルク体であることも重要である。潮解性がなく Li 濃度が高

い化合物は理想的には LiF であるが、イオン半径と価数の違いから、希

土類等のシンチレーターの発光中心として用いられる不純物元素を添加

できないため、常識的にシンチレーターとして許容される発光は得られ

にくい。結局、希土類等を添加可能な化合物が中性子シンチレーターの

候補として選ばれやすいが、希土類が添加可能なイオン半径、価数のサ

イトとして重元素を含むことは避けるべきである。重元素を含むとガン

マ線によっても励起されて発光しやすくなり、中性子線による発光と区

別しにくくなるからである。そのような条件を満たす化合物はそれほど

多くはなく、調査対象はある程度、限定される。

Page 14: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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既存の中性子シンチレーターの特性をまとめたものを表 1.2 に示す。

表 1.2 より、撮像用途に適した中性子シンチレーターとして、前述した

蛍光寿命数マイクロ秒以下で、潮解性が少ないことに加え、リチウムガ

ラスに比べて有効原子番号が低く、発光量が高い材料の開発を目指すべ

きであることがわかる。

表 1.2 従来の中性子シンチレーターの特性 [ 1 . 2 8 ]

潮解性

発光量

(photons/

neutron)

有効原子

番号 Zeff

発光

波長

(nm)

蛍光

寿命

(ns)

リチウム

ガラス

なし 7000 26 395 75

Eu:LiI 激しい 50000 52 470 1400

Page 15: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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本論文は、これまで研究例が少なかったフッ化物単結晶に着目して新規中性

子シンチレーター材料の探索を行った結果として見出した希土類添加

LiCaAlF6(以下、本論文で LiCAF と呼称する)単結晶に関する研究成果をまとめ

たものである。筆者らは希土類添加 LiCAF の中性子応答特性を初めて報告して

以来[1.29]、様々な検討を行ってきたが[1.30-1.46]、本論文はその成果の一部と新た

な検討を行った結果を含む

筆者らが初めて報告した中性子シンチレーター特性は、材料探索の過程で作

製したその他の Li 含有フッ化物、Ce:LiYF4、Ce:LiKYF4、Ce:LiSrAlF6、Eu:LiSrAlF6、

LiF/CaF2、LiF/Eu:CaF2、LiF/Ce:CaF2、LiF/SrF2、Mn:LiCAF、Cu:LiCAF、Co:LiCAF

に比べて良好なものだった。また、希土類添加 LiCAF の透過スペクトル、光励

起・X 線励起発光の系統的評価により、その発光原理を調査した結果も本論文に

含む。これらの結果の一部は既報の内容と類似のものも含むが、中性子シンチ

レーターとしての応用を念頭に系統的に調査、考察された例はこれまでにはな

かった。また、応用試験として中性子線透過像の撮像を行い、撮像用途への適

用可能性を検討した結果も併せて示す。

Page 16: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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第 2 章 実験方法

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2.1 希土類添加 LiCaAlF6の単結晶育成方法

2.1.1 単結晶育成方法の検討

単結晶の育成方法は、気相成長法、溶液成長法、融液成長法の三種類

に分類できる。

気相成長法は気体原料から何らかの基板上に単結晶膜を積層させて

いく育成法で、化学気相成長( CVD)法、物理気相成長 (PVD)法、等が挙

げられる。溶媒や坩堝材などが必要ないため、高純度な単結晶が得られ

やすいが、育成速度が遅く製造コストが高くなりやすい。温度を上げる

と溶融せずに揮発してしまうような材料、例えば、半導体デバイス基板

用の GaN、 AlN、 SiC などの単結晶を得るのに適している [2. 1]。

溶液成長法は溶媒を用いる単結晶育成法で、水熱合成法、アモノサー

マル法、フラックス法、等が挙げられる。揮発しやすい材料の育成が可

能になることに加え、溶媒によって高融点材料の融点を下げて育成する

ことができるという特徴を有する。しかし、溶媒を用いるために高純度

化が難しい等の欠点もある。先述した GaN、 AlN、 SiC の単結晶に加え、

ZnO 単結晶などの単結晶育成が可能である。また、時計や電子機器の水

晶振動子に利用される水晶( SiO2 単結晶)は水熱合成で製造されており、

広く利用されている [2 .2]。

融液成長法は、種結晶を起点として融液を一方向凝固させる単結晶育

成法で、目的とする単結晶の溶融体が得られる場合に利用できる。坩堝

を用いない方法として、ベルヌーイ法、 Floating zone (FZ)法が、坩

堝を用いる方法としてブリッジマン -ストックバーガー (BS)法、チョク

ラルスキー (Cz)法、 Edge-defined film-fed crystal growth (EFG)法、

マイクロ引き下げ法などがある。

ベルヌーイ法 [2.3]は炎熱により空中で溶融させた原料を堆積させて育

成する手法で低コストな製造法だが、高品質の単結晶は得られにくい。

人工宝石用のサファイア( Al2O3 単結晶)はベルヌーイ法で得られている。

FZ 法 [2 .4]はバルク原料を一方から溶融させ、溶融される領域を移動さ

せる育成法であり、 坩堝を用いないので高純度結晶が得られる反面、

大口径化が難しいとされる。不純物が性能に影響しやすいパワーデバイ

Page 18: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

17

ス用の Si 単結晶は FZ 法で育成される。

BS 法 [2 .5- 2. 8]は坩堝内で原料を溶融させ、坩堝の移動により、坩堝内で

融液を一方向凝固させる育成法である。坩堝内で凝固させるため、育成

する単結晶に比べて坩堝の熱膨張係数が大きい場合には、冷却時の応力

でクラックが入りやすく、また坩堝と溶融原料との濡れ性が結晶品質に

影響しやすいなど、坩堝材料の選定が難しく、また坩堝内の種結晶まで

溶融させてしまわないように高度に温度制御する必要があり、育成条件

を探すまでに解決すべき点が多い。しかし、単結晶育成の条件を見出す

ことができた場合には無人運転が容易で、後述する Cz 法より低コスト

で製造しやすい利点があり、GaAs 単結晶やサファイアの育成に用いられ

る。

Cz 法 [2 .9 -2. 12 ]は坩堝内で溶融させた原料に、上から種結晶を接触させ

て引き上げる方法で、比較的容易に大口径単結晶が得られる。また、FZ

法と同様に、種結晶の接触部から直胴部までに径が極端に小さい部分を

形成することで転位を低減させるネッキング法が適用できる。FZ 法より

も大口径化が可能で育成速度を速くできることから低コスト化が容易

で、ネッキング法による無転位化が可能なことから、FZ 法で育成する程

の純度が必要ないものの無転位化が必要な汎用の半導体基板用 Si 単結

晶の育成には Cz 法が用いられる。また、ガンマ線用シンチレーターの

LSO も Cz 法により生産されている。 Cz 法は高品質な大口径単結晶が比

較的容易に得られる手法と言えるが、欠点として坩堝よりも小さな径の

単結晶を引き上げることになるため、BS 法に比べて大口径の坩堝が必要

になり、加熱効率が悪くなる点、また、毎回、単結晶化しきれない溶融

原料が残り、製造コストを重視すると残った原料の再利用が必要になり、

不純物が原料中に濃縮しやすい点が挙げられる。

EFG 法 [2 .13 -2 .1 8]は Stepanov法[2.19-2.22]とも呼ばれる育成する結晶の形状制御性に

優れた育成手法である。Cz 法と類似の育成炉で、坩堝に任意の形状の穴の

開いたダイを設置し、ダイの穴から毛細管現象で上昇する融液を種結晶

に接触させて引き上げて一方向凝固させる育成法で、穴の形状によって

育成する単結晶の形状制御が可能であり、 GaN 系 LED 基板用サファイア

や熱電対の保護管などの種々の形状のサファイアの育成手法として用

いられる。融液が毛細管現象で上昇するためには融液とダイの濡れ性が

良い材質が必要になるため、適切なダイの材質を見つけられないと利用

できない。

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マイクロ引き下げ法 [2 .23 ]は EFG 法を上下逆さまにしたような構成の育

成方法で、坩堝底に開いた小さな穴から漏れ出す融液を種結晶に接触さ

せて引き下げる手法である。種結晶を接触させて引き下げても良いが、

小口径の単結晶であれば金属ワイヤーなどの先端に接触させて固化さ

せた微小な結晶から単結晶を育成することが可能である。マイクロ引き

下げ法は毛細管現象で融液を上昇させる必要がないため、適切なダイの

材質を検討する必要のある EFG 法と違い、ダイの材質を検討しなくとも

結晶育成が可能である。形状制御により評価に最小限必要なサイズの結

晶を容易に得られることから、材料探索に適した手法であると言える。

LiCAF については融液成長法によるコングルエント育成が可能である

[2. 24 ]。そのため、これまでに述べた結晶成長法の特徴を鑑みて、本研究

では基礎的な中性子応答特性の評価用の小サイズのサンプルはマイク

ロ引き下げ法で作製し、その評価結果が良好で、応用特性評価まで行っ

たサンプル( Ce、 Eu 添加)はチョクラルスキー法で作製した。

出発原料としては、 LiF、 CaF2、 AlF3、希土類フッ化物( EuF3、 CeF3、

PrF3)を用いたが、中性子を検出するのに 6Li の核反応を利用するため、

LiF については、天然 Li 中には 7.5%程度しか含まれない 6Li を 95%まで

濃縮した原料を用いた。

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2.1.2 マイクロ引き下げ法による希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の育成

マイクロ引き下げ法による単結晶材料の育成は、図 2.1、図 2.2 に示す外観と

構造の結晶育成装置を用いた。高純度カーボン製のヒーター(サセプター)、断

熱材、坩堝などで構成され、高周波誘導加熱方式で昇温する構成である。坩堝

底には 2mm 径の穴があいている。

出発原料としては LiF、CaF2、AlF3、希土類フッ化物( EuF3、CeF3、PrF3)

を用いた。コングルエント育成が可能なことから LiF、CaF2、AlF3 は 1:1:1

の化学量論組成比で混合し、希土類を添加する場合はイオン半径の近い

CaF2 を所定量減らした。希土類の仕込み量は 1%であった。そのような

比で合計 1.5g 秤量し、混合した原料をカーボン坩堝に充填した。

結晶育成の工程は下記の手順で行った。

(1) 10-4Pa まで減圧した後、雰囲気ガス (Ar 95%、CF4 5%) を導入する。

(2) 高周波誘導加熱により原料を融点まで溶融する。

(3) るつぼ底穴より金属ワイヤーと融液を接触させて固化させ、引き下げて結

晶化させる。

(4) 70~80%原料を結晶化させた後で育成を終了し、ヒーター温度を下げる。

以上により、基礎特性の評価に十分な最小サイズの結晶が効率的に得られる。

70~80%原料を結晶化させた段階で育成を終了するのは、希土類濃度が残留溶

融体に濃縮され融点が下がり、坩堝底穴から溶融体が漏れ、育成した結晶に付

着した場合に熱衝撃によりクラックが入ってしまうためである。

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図 2.1. マイクロ引き下げ法単結晶育成装置の外観

Page 22: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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図 2.2 マイクロ引き下げ法単結晶育成装置の模式図

Page 23: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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2.1.3 チョクラルスキー法による Eu:LiCaAlF6 単結晶の育成

チョクラルスキー法による単結晶材料の育成は、図 2.3 に示す外観、図 2.4

に示す構造の装置を用いた。高純度カーボン製のヒーター(サセプター)、断熱

材、坩堝などで構成され、高周波誘導加熱方式で昇温する。

出発原料として LiF、CaF2、AlF3、希土類フッ化物( EuF3、CeF3)を用い

た。コングルエント育成が可能なことから LiF、 CaF2、 AlF3 は 1:1:1 の

化学量論組成比で混合し、希土類を添加する場合はイオン半径の近い

CaF2 を所定量減らした。希土類の仕込み量は 2~ 4%であった。そのよう

な比で合計 2.7kg 秤量し、混合した原料をカーボン坩堝に充填した。

結晶育成の工程は下記の手順で行った。

(1) 10-4Pa まで減圧した後、雰囲気ガス (Ar 95%、CF4 5%) を導入。

(2) 高周波誘導加熱により原料を融点まで溶融 。

(3) 種結晶を融液に接触し、固化させ、自動直径(重量)制御で所定の形状で

引き上げて結晶化させる。

以上により、応用検討に必要なサイズ(直径 55mm)の結晶が得られる。種結

晶としては c 軸の無添加 LiCAF を用い、引き上げ速度 1.5 mm/h、シード軸回転

速度 10 rpm で行った。

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図 2.3. チョクラルスキー法による単結晶育成装置の外観

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図 2.4. チョクラルスキー法による単結晶育成装置の模式図

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2.1.4 結晶性の評価方法

チョクラルスキー法は伝統的な単結晶育成手法であるが、マイクロ引き下げ

法については、比較的新しい手法であるため、単相の化合物が期待通りできて

いることを確認するため、粉末 X 線回折法によって評価した。

X 線回折とは、X 線が結晶格子で回折を示す現象で、粉末 X 線回折とは、粉末

のように多数の単結晶がランダムな方向を向いた集合体の X 線回折を測定する

手法のことを言う。

粉末 X 線回折で得られる回折 X 線ピークは様々な方向を向いた単結晶からの

回折ピークの集合となる。既知物質は入射角と回折強度がデータベース化され

ているため、データベースを照合することで測定サンプルの結晶構造の同定を

行うことができる。

本論文ではマイクロ引き下げ法による Ce:LiCAF の透明部を乳鉢で粉砕し、粉

末 X 線回折装置により、X 線回折ピークを測定し、データベースの LiCAF のピー

クパターンと比較した。

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2.2 透過・発光スペクトルの評価

2.2.1 透過スペクトル評価方法

発光原理の調査は、透過スペクトル及び、光励起・X 線励起発光の系統的評

価により実施した。透過スペクトル・光励起スペクトルの評価で、励起準位の

調査、及び、特定の準位を励起した際の発光を調べることが可能である。また、

中性子線励起発光ではなく X 線励起発光の評価を行ったのは、類似の結果

が得られることと、利用可能な中性子源のフラックスが小さいため積算

の発光強度が低く十分な波長分解能の発光スペクトルが得られ難いこ

とが理由である。

透過スペクトルの評価には、分光計器社製の特注品 の光学特性評価装置[2.25]

を用いた。 図 2.5 に外観写真を、図 2.6 に模式図を示す。

励起源としては、重水素ランプ、X線発生器(W 管球)を備えており、光検出器

側には回折格子、CCD を用いている。大気中で減衰する波長 200nm 以下の真空紫

外光を検出するため窒素雰囲気のチャンバー中に測定系を構築し、窒素置換後

に測定を行った。

本装置は長波長側の透過率の測定には対応していないため、長波長側の透過

率の測定は、市販の日本分光株式会社製 V530 UV/VIS スペクトロメーターを用

いた。こちらは測定系の窒素置換はできないが、波長 200~800nm の透過率が評

価できる。光源には重水素ランプ、ハロゲンランプを備えている。

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図 2.5. 透過発光特性評価装置の外観

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図 2.6. 透過発光特性評価装置の模式図

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2.2.2 X 線励起発光特性の評価方法

X 線励起発光スペクトルは 2.2.1 項で述べた窒素置換可能な分光器で測定し

た。

高時間分解能の X 線励起発光特性の評価には、浜松ホトニクス社特注品[2.26]

を用いた。

図 2.7 に X 線励起ストリークカメラの模式図を示す。励起源としては、パル

スレーザーを光電材料に照射、パルス電子線を発生させ、 W に照射することで

パルス X 線を生成している。測定可能な波長範囲は 110~900 nm で、時間分解

能は 80 ピコ秒の高い時間分解能の X 線励起発光の時間分解測定が可能である。

本実験は九州工業大学の柳田健之先生のご協力で実施させていただいた。

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図 2.7. X 線励起ストリークカメラの模式図[2.26]

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2.2.3 励起スペクトル評価方法

励起スペクトルの測定は、極端紫外光(50~200nm の短波長の光)を照射可能

なシンクロトンにて行った。

シンクロトロンとは加速器の一種で、粒子の加速に合わせて磁場と加速電場

の周波数を制御して、加速粒子の軌道半径を一定に保ちながら加速を行うもの

である。高エネルギーの電子は軌道を曲げると光を発するが(シンクロトロン

輻射)、大強度の高エネルギー光を得る目的で電子を加速するシンクロトロンが

用いられる。この際に得られる光は高強度で強い指向性を持つ白色光で、この

光を放射光とも呼ぶ。また、このような設備は放射光施設と呼ばれる。

本論文では、そのようなシンクロトロン設備の一つ、自然科学研究機構 分子

科学研究所 極端紫外光研究施設(UVSOR)を利用した。図 2.8 に実験に用いた

設備の外観を示す。設備に付属する分光器、CCD を利用し、サンプルをサンプル

フォルダーにセットして、励起波長を変えながら、発光強度をプロットし励起

スペクトルを作成した。

本実験は東北大学越水正典先生のご協力で実施させていただいた。

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図 2.8.UVSOR、極端紫外光励起発光特性測定系の外観

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2.3 中性子応答特性の評価

2.3.1 中性子励起発光の減衰曲線の評価方法

中性子シンチレーター特性の評価は 252Cf 密封線源を中性子線源として用い、

光電子増倍管(PMT)により発光を受光して行った。PMT は浜松ホトニクス製の

R7600U-200 を使用した。PMT は一般にシンチレーション式の放射線検出器に搭

載される高感度な光検出器で、本実験は検出器性能に直結する重要な評価にな

る。

中性子密封線源 252Cf は日本アイソトープ協会より購入したものを用いた。

この核種は自発核分裂により平均 2.3MeV の中性子を放出し、248Cm に崩壊する。

半減期は 2.65 年である。

図 2.9 に測定の模式図を示す。蛍光減衰曲線の評価は、PMT からの信号をオ

シロスコープで読み取ることで波形を記録し、記録した波形より波高が 1/e に

減衰するまでの時間である蛍光寿命を評価した。

2.3.2 中性子励起時の発光量の測定方法

中性子密封線源 252Cf を励起源として用い、中性子照射時の PMT にて受光、PMT

からの信号を図 2.9 に示した模式図のアナログモジュールにより信号処理して

波高分布スペクトルを評価し、発光量を調べた。シェイピングアンプで設定す

るシェイピングタイムは、蛍光寿命に対して十分な時間とした。Eu:LiCAF を測

定する際には 3 マイクロ秒に設定し、その他のサンプルは全て 0.5 マイクロ秒

に設定した。

蛍光減衰曲線が PMT から生信号を評価するのに対し、波高分布スペクトルは

信号強度の統計分布を評価する手法で、正確な信号強度を統計的に評価するこ

とができる。

発光量は、標準試料として市販の Ce 添加リチウムガラスを用い、相対比較法

により求めた。

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図 2.9. 中性子応答特性の評価方法の模式図

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2.3.3 ガンマ線ノイズレベルの評価方法

2.3.2 項と同じ測定方法で、励起源として 252Cf の代わりに 60Co ガンマ線密封

線源を用いてガンマ線励起による波高値を測定、中性子励起による波高値を比

較し、ガンマ線との波高弁別性能を評価した。

60Co ガンマ線密封線源は中性子シンチレーターのガンマ線不感度を確認す

るのに一般的に用いられる密封線源である。図 2.10 に示す崩壊図に示す通り、

ベータ崩壊した 60Co から 60Ni が生成、ガンマ崩壊により二種類のエネルギーを

有するガンマ線を放出する。ガンマ線のエネルギーはそれぞれ、1.17MeV、

1.33MeV である。60Co の半減期は 5.27 年である。

252Cf 密封線源と同様、日本アイソトープ協会より購入したものを利用した。

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図 2.10. 60Co 放射性同位体の崩壊図

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2.4 中性子線透過像の撮像試験

2.4.1 中性子ビーム

独立行政法人日本原子力研究開発機 JRR-3(Japan Research Reactor-3)の

MUSASI 多目的単色熱中性子ビームポートを利用した。

JRR-3 は日本原子力研究開発機構が保有する研究用原子炉施設で軽水減速軽

水冷却重水反射体のプール型原子炉である。最大熱出力は 20MW で、炉心の最大

熱中性子束は、約 2×1014 neutrons/cm2・sec である。

MUSASI ポートで得られる中性子線のエネルギーは 13.5meV、量(フラックス)

は約 8×105 neutrons/cm2・sec で、放射線管理区域となっている。MUSASI ビー

ムポートを用いることで、密封線源よりもフラックスが大きく、なおかつ炉心

からの経路で十分にコリメートされており平行度の高い熱中性子束が得られる。

図 2.11 に MUSASI ビームポートの外観を示す。中性子線透過像の撮像時は、

写真のビームポートの前に試作した撮像器を設置し、設備付属のシャッターの

開閉を切り替えることで熱中性子ビームの照射、非照射とした。

本試験は、平成 22 年度中性子利用技術移転推進プログラム 課題番号 10B-A54、

新規フッ化物中性子シンチレーターを用いた中性子検出実験の一環として行っ

た[2.27]。

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図 2.11. JRR-3 MUSASI 中性子ビームポートの外観

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2.4.2 Eu:LiCaAlF6 単結晶による中性子撮像器

中性子撮像試験は、図 2.12 に示すような中性子シンチレーターの発光を位置

敏感型光電子増倍管(PS-PMT)で検出する構成で行った。

図 2.13 に示すように、PS-PMT に PHOTONIS 社製 XP85012 を用い、クリアパル

ス社製 64ch 信号読み出し回路を組み合わせて用いた。

読みだした信号は、64ch のもので、出力された 8×8 の信号を電荷重心法(信

号強度×座標/全信号強度)により Microsoft Excel のマクロを用いて描画プ

ログラムを作成、128×128 に変換した。有効な信号強度の範囲の設定機能も実

装し、ノイズ信号を除去して描画した。

図 2.12.中性子撮像器の模式図

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図 2.13. PS-PMT-読み出し回路の模式図

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2.4.3 中性子線透過像の試験方法

図 2.14 に示すような構成で、中性子線透過像の撮像試験を行った。

具体的には、チョクラルスキー法によって得られた Eu:LiCAF 単結晶を直径 2

インチ、厚み 0.5mm の円板状に加工し、PS-PMT の受光面に光学グリースを用い

て接着して試作した撮像装置を用いた。被写体には、中性子を吸収しやすいカ

ドミウムを用い、結晶上にマスクとして固定した。この状態で JRR-3 MUSASI ポ

ートで熱中性子を約 10 分間照射し、PS-PMT からの信号を取得した後に、電荷

重心演算によって画像化した。

また、被写体と撮像器に距離がある場合に撮像ができるかどうか確認する目

的で、カドミウムのマスクを被写体として用い、試作した中性子線撮像器と被

写体との距離を 30mm とした場合の撮像も実施した。

さらに同様の試験は、放射線管理区域内にある JRR-3 MUSASI ポートによる中

性子線照射だけでなく、放射線管理区域外で利用可能な約 100kBq の放射能の

252Cf 密封線源でも行った。

図 2.14.中性子撮像試験の模式図

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第 3 章 結果と考察

Page 44: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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3.1 希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の育成結果

3.1.1 マイクロ引き下げ法による希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の外観

Ce, Eu, Pr 添加 LiCAF 単結晶サンプルをマイクロ引き下げ法によって作製し、

得られた結晶は 2mm×10mm×1mm サイズに加工研磨した。

図 3.1 に示す通り、育成直後の表面は揮発成分の付着により白濁しているよ

うに見えるが、加工後は透明体が得られており、クラックやボイド・インクル

ージョンのない、特性評価に最小限必要なサイズの結晶が得られた。

また、Pr:LiCAF 単結晶を育成した際に結晶化させずに残った原料はわずかに

黄緑色に着色していたが、これは PrF3 の原料粉末の色によるものと考えられる。

CeF3、EuF3 原料粉末は白色であり、Ce:LiCAF、Eu:LiCAF 単結晶を育成した際に

結晶化させずに残った原料も白色であった。

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図 3.1. マイクロ引き下げ法による希土類添加 LiCAF 単結晶の外観

Page 46: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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3.1.2 チョクラルスキー法による希土類添加 LiCaAlF6 単結晶の外観

図 3.2 にチョクラルスキー法による Eu:LiCAF 単結晶の外観の一例を示す。育

成直後は揮発成分が表面に付着して白っぽく見えるが、切断、研磨によって得

られた単結晶サンプルは透明で、ボイドやインクルージョンは見られなかった。

種結晶としては c 軸の無添加 LiCAF を用い、引き上げ速度 1.5 mm/h、シード

軸回転速度 10 rpm で育成し、育成終了部で下凸形状を形成したことによりクラ

ックがない直径 2 インチ単結晶の育成に成功した。

以上により、応用検討に必要なサイズの Eu:LiCAF 単結晶が得られた。

評価用のサンプルとして、10mm×10mm×1mm サイズに切り出して、10mm×10mm

の面を両面研磨したものを作製した。また、中性子線透過像の撮影用に 0.5mm

厚に切断した直径約 2 インチのディスクを両面研磨したものを作製した。

Page 47: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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(a) 育成直後

(b) 加工研磨後

図 3.2. チョクラルスキー法による Eu:LiCAF 単結晶の外観の一例

(a)育成直後、(b)加工研磨後

Page 48: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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3.1.3 結晶性の評価結果

3.1.1 項で得られたマイクロ引き下げ法による Ce:LiCAF 単結晶の粉末 X 線回

折を測定した。結果を図 3.3 に示す。

粉末 X 線回折ピークより、既存の粉末 X 線回折パターンのデータベースとの

照合により、LiCAF 単相が得られていることが確認できた。

不純物を高濃度に添加した場合には X 線回折ピークのずれが確認されること

がある。そういった場合、イオン半径の大きな不純物の添加により結晶格子が

大きくなった場合は低角側に、イオン半径の小さな不純物の添加により結晶格

子が小さくなった場合は高角側にピークがシフトする。希土類添加 LiCAF 単結

晶の場合は、ピークシフトは確認できなかった。これは結晶中に希土類を添加

可能な濃度が低く、結果としてピークシフトがほとんどなかったため、観察で

きなかったものと考えられる。

Page 49: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

48

20 30 40 50 60 70 802 θ [°]

回折強度

[a.u

.]

1 0

1

1 0

2

1 1

21

0 4

2 0

2

1 1

4

2 1

2

2 0

5

2 0

6

1 0

6

1 1

6

2 1

5

2 1

0

2 0

3

2 0

0

1 0

31

1 0

1 0

0

0 0

4- -

- -

2 1

3

2 2

2

- - - -

- - 3 0

0

1 0

7

図 3.3. マイクロ引き下げ法で得られた Ce:LiCAF 結晶の粉末 X 線回折ピーク

Page 50: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

49

3.1.4 単結晶育成結果の考察

マイクロ引き下げ法、チョクラルスキー法ともに、評価に適したサイズの単

結晶サンプルを得ることができた。マイクロ引き下げ法においても単相の LiCAF

が得られていることが確認できた。6Li 濃縮原料を用いたことによる結晶育成へ

の影響は特に見られず、通常の融液成長法のチョクラルスキー法が適用できる

ことから、生産性という観点から希土類添加 LiCAF は問題ない材料であると考

えられる。

また、坩堝の材質としても比較的安価なカーボンを用いることができ、結晶

化させずに坩堝内に残留した原料も、容易に取り外すことができた。坩堝から

溶融固化体が取り出せるかどうかは、坩堝材と溶融原料の熱膨張係数及び濡れ

性の関係で決まる。坩堝の方が原料より熱膨張係数が大きいと、溶融原料が凝

固する際に、坩堝の方が大きな収縮が起こるため、冷却時に溶融固化体に応力

がかかったり、物理的なかみ合わせが生じて外れにくくなったりする。また濡

れ性に関しては、原料と坩堝の濡れ性が良い場合は、坩堝の壁面に原料が付着

してしまい、取り外しにくくなる。

カーボンは比較的、熱膨張係数が小さい材料として知られており、また、LiCAF

溶融原料との濡れ性も悪く、理想的な坩堝材料であると言える。このような特

徴から、ブリッジマン-ストックバーガー法のような坩堝の中で結晶化させる手

法で LiCAF を育成する場合も、カーボン坩堝を用いることができるものと考え

られる。ブリッジマン-ストックバーガー法は無人運転が可能であり、チョクラ

ルスキー法よりも低コストの製造が実現できる可能性があるため、将来的な生

産性の向上も期待できる。

Page 51: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

50

3.2 透過・発光特性の評価結果

3.2.1 Ce:LiCaAlF6 の評価結果

図 3.4 に Ce:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトルを、図 3.5 に

Ce:LiCAF の励起スペクトル、図 3.6 に Ce:LiCAF の光励起発光(PL)スペクトル、

を示す。

透過スペクトルより約 170nm, 270nm に吸収ピークを確認し、285, 310nm にシ

ンチレーターに利用可能な Ce3+ 5d-4f 遷移に伴う発光を確認した。

シンクロトロン UVSOR にて測定した励起スペクトルより、約 115nm, 170nm,

240~270nm にピークを確認した。約 115nm のピークはバンドギャップに相当す

るものと考えられる。約 170nm, 240~270nm のピークは 4f から 5d 準位への励

起に相当すると考えられる。これは透過スペクトルと矛盾しない結果である。

シンクロトロン UVSOR にて測定した 112, 166, 268nm の励起波長による PL ス

ペクトルから Ce3+ 5d-4f 遷移に伴う発光を確認した。5d 準位の低い準位まで無

輻射遷移し発光しているものと考えられる。

以上より、予想される Ce:LiCAF のエネルギー準位図は、図 3.7 のようになる

と考えられる。

Page 52: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

51

図 3.4. Ce:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトル

Page 53: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

52

図 3.5. Ce:LiCAF の励起スペクトル

Page 54: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

53

図 3.6. Ce:LiCAF の PL スペクトル

Page 55: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

54

図 3.7. LiCAF に添加された Ce3+のエネルギー準位図

Page 56: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

55

次にストリークカメラを用いて高時間分解能の X 線励起発光の評価を行った

結果を図 3.8 に示す。パルス X 線を利用した 80 ピコ秒の時間分解能の測定の結

果、X 線励起において Ce:LiCAF は、10 ナノ秒 オーダーの遅い rise time を有

することを確認した。図 3.9 に示す同一装置で測定した Ce:LiLuF4 がナノ秒オー

ダーの rise time であるであるのに比べても明確に遅い rise time であること

がわかる。

この 10 ナノ秒 オーダーの遅い rise time の原因の候補の一つとしては Ce3+

濃度が低く、励起により発生した電子-ホール対が、発光中心を励起するまでに

時間がかかっていることが考えられる。しかし、今回得られた結果では Ce の添

加濃度に対して rise time に明確な差異は見られなかった。つまり、異なる濃

度の Ce:LiCAF の rise time が大きく変化していないことから、別の原因で遅い

rise time が得られているものと推察される。

Ce:LiCAF が遅い rise time を有することについて、過去に N.Shiran らが無添

加 LiCAF で観察できる Self-trapped exciton (STE) 準位の発光が Ce を添加し

た場合に Ce3+にエネルギー遷移することにより生じているものと考察している。

実際、彼らの報告する 300nm 帯の遅い STE 発光と、図 3.4 からわかる Ce:LiCAF

の吸収ピークは重なっており、フェルスター型のエネルギー移動が起きている

ものと考えられる。つまり、本論文で明らかになった rise time の Ce 濃度依存

性の結果は、彼らの説を支持するものと考えられる。

Page 57: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

56

0 10 20 30時間 [ns]

強度

[a.u

.]

Ce:LiCAF原料仕込みCe濃度

4%

3%

2%

図 3.8. Ce:LiCAF の X 線励起発光の高時間分解測定

Page 58: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

57

0 10 20 30時間 [ns]

強度

[a.u

.]

図 3.9. Ce:LiLuF4 の X 線励起発光の高時間分解測定

Page 59: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

58

3.2.3 Eu:LiCaAlF6 の評価結果

図 3.10 に Eu:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトルを、図 3.11

に Eu:LiCAF の励起スペクトル、図 3.12 に Eu:LiCAF の PL スペクトル、を示す。

透過スペクトルより 200, 300nm に吸収ピークを確認し、370nm 以下の波長で

シンチレーターに利用可能な Eu2+ 5d-4f 遷移に伴う発光を確認できた。同時に

約 600nm にも発光を確認したが、Eu3+に由来する発光であると考えられ、わずか

に Eu3+を含有しているものと考えられる。

シンクロトロン UVSOR にて測定した励起スペクトルより、約 215nm, 290nm に

ピークを確認した。バンドギャップに相当するピークは明瞭には観察されなか

ったが、約 215nm, 290nm のピークは 4f から 5d 準位への励起に相当すると考え

られる。これは透過スペクトルと矛盾しない結果である。

216, 290nm の励起波長による PL スペクトルから両者とも Eu2+ 5d-4f 遷移に伴

う発光を確認したため、5d 準位の低い準位まで無輻射遷移して発光するものと

考えられる。

以上より、予想される Eu:LiCAF のエネルギー準位図は、図 3.13 のようにな

ると考えられる。

Page 60: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

59

図 3.10. Eu:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトル

Page 61: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

60

図 3.11. Eu:LiCAF の励起スペクトル

Page 62: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

61

図 3.12. Eu:LiCAF の PL スペクトル

Page 63: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

62

図 3.13. LiCAF に添加された Eu2+のエネルギー準位図

Page 64: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

63

次にストリークカメラを用いて高時間分解能の X 線励起発光の評価を行った

結果を示す。 図 3.14 に示すパルス X 線を利用した 80 ピコ秒の時間分解能の測

定の結果、X 線励起において Eu:LiCAF は、ナノ秒 オーダーの rise time を有

することを確認した。

Ce:LiCAF が 10 ナノ秒オーダーの rise time を有するのと比較すると

Eu:LiCAF の方が短いことがわかる。元来、Ce、Eu 添加シンチレーターはナノ秒

オーダーの rise time であることが知られており [3.2]、図 3.10 からわかる

Eu:LiCAF の吸収波長と N.Shiran らによって報告されている STE 発光の波長[3.1]

の重なっていないことで、母材からのエネルギー遷移がない通常の結果が得ら

れたものと推察される。

また、図 3.14 より Eu 濃度の増加とともにわずかに rise time が短くなって

いるのがわかる。これは Eu 濃度の増加とともに、X 線による励起で生成される

多数の電子-ホール対が発光中心である Eu2+を励起するまでの時間が短くなっ

ているためであると考えられる。

Page 65: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

64

0 10 20 30時間 [ns]

強度

[a.u

.]

Eu:LiCAF原料仕込みEu濃度

4%

3%

2%

1%

図 3.14. Eu:LiCAF の X 線励起発光の高時間分解測定

Page 66: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

65

3.2.4 Pr:LiCaAlF6 の評価結果

図 3.15 に Pr:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトルを、図 3.16

に Pr:LiCAF の励起スペクトル、図 3.17 に Pr:LiCAF の PL スペクトル、を示す。

透過スペクトルより 200nm に吸収ピークを確認し、X 線励起発光スペクトルよ

り 200~400nm の波長に発光を確認したが、これはシンチレーターに利用可能な

Pr3+ の 5d-4f 遷移に伴う発光であると考えられる。

また、シンクロトロン UVSOR にて励起スペクトル、PL スペクトルを測定した。

励起スペクトルより、約 115nm, 190~270nm にピークを確認したが、約 115nm

のピークはバンドギャップに相当するものと考えられる。約 190~270nm のピー

クは 4f から 5d 準位への励起に相当すると考えられる。これは透過スペクトル

と矛盾しない結果である。

116, 192nm の励起波長による PL スペクトルから Pr3+ 5d-4f 遷移、4f-4f 遷移

に伴う発光を確認した。5d 準位まで無輻射遷移して発光しているものと考えら

れる。

以上より、予想される Pr:LiCAF のエネルギー準位図は、図 3.18 のようにな

ると考えられる。

Page 67: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

66

図 3.15. Pr:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトル

Page 68: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

67

図 3.16. Pr:LiCAF の励起スペクトル

Page 69: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

68

図 3.17. Pr:LiCAF の PL スペクトル

Page 70: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

69

図 3.18. LiCAF に添加された Pr3+のエネルギー準位図

Page 71: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

70

3.2.5 透過・発光特性についての考察

透過スペクトル及び、光励起・X 線励起発光の系統的評価の結果、Eu、

Ce、Pr 添加 LiCAF で、それぞれシンチレーターとして用いることのでき

る短い蛍光寿命を有する Eu2+、Ce3+、Pr3+の 5d-4f 電子軌道遷移に伴う発

光が確認された。

また、Eu:LiCAF については Eu3+の赤色発光が、Pr 添加 LiCAF では 4f-4f

発光が同時に観察された。 Eu2+の発光と比べ、 Eu3+の発光の強度は 1/10

程度だった。これらはシンチレーターとして用いることができない蛍光

寿命の長い発光である。

Pr 添加 LiCAF の発光は予想されるエネルギー準位図より 5d-4f、4f-4f

の両方の電子軌道遷移が起こったものと考えられる。

Eu:LiCAF については、原料 EuF3 中の Eu の価数は 3 価だが、 LiCAF 結

晶中に固溶させた際に、Ca2+のサイトを置換してほとんどは Eu2+となり、

一部は Eu3+のまま固溶したものと考えられる。

ともかく、いずれの希土類を添加した場合も 5d-4f 遷移を含む発光が得られ

ているため、短い蛍光寿命を有するものと考えられ、シンチレーターとしての

利用が期待できるものと推察される。

Page 72: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

71

3.3 中性子応答特性の評価結果

3.3.1 中性子励起発光の減衰曲線の評価結果

図 3.19、図 3.20、図 3.21 に 中性子線励起による Ce:LiCAF、 Eu:LiCAF、

Pr:LiCAF の蛍光減衰曲線をそれぞれ示す。252Cf からの中性子をポリエチレ

ンで減速し、サンプルに照射し、光電子増倍管で発光を受光、オシロスコープ

により蛍光減衰曲線の観察に成功していることがわかる。

また、Ce:LiCAF、Eu:LiCAF、Pr:LiCAF の中性子照射時の蛍光寿命(1/e に

減衰するまでの時間)は、それぞれ約 40, 70, 1500 ナノ秒で、シンチレーター

として利用できる短い蛍光寿命を有する事がわかった。

蛍光寿命は一般に Ce3+, Pr3+, Eu2+ を添加した無機結晶の 5d-4f 遷移発光で観

察される蛍光寿命と同じオーダーであったため、3.2 項で観察された結果から

5d-4f 遷移発光が起きているとした考察と矛盾しない結果であるものと考えら

れる。

Page 73: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

72

-2 -1 0 1 2 3 4[×10-7]

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

時間 [秒]

発光強度

[a.u

.]

図 3.19. 中性子線励起による Ce:LiCAF の蛍光減衰曲線

Page 74: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

73

-0.5 0 0.5 1[×10-5]

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

時間 [秒]

発光強度

[a.u

.]

図 3.20. 中性子線励起による Eu:LiCAF の蛍光減衰曲線

Page 75: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

74

-2 0 2 4 6 8[×10-7]

0

0.5

1

1.5

2

2.5

3

時間 [秒]

発光強度

[a.u

.]

図 3.21. 中性子線励起による Pr:LiCAF の蛍光減衰曲線

Page 76: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

75

3.3.2 中性子励起時の発光量の測定結果

Ce:LiCAF、 Eu:LiCAF、 Pr:LiCAF の 252Cf による中性子照射時の波高分布ス

ペクトル(検出信号強度の統計分布)の測定結果をそれぞれ図 3.22、図 3.23、

図 3.24 に示す。いずれのサンプルも電気的ノイズによる信号の波高値を超える

チャンネル数にイベントを計数でき、特に Ce:LiCAF、Eu:LiCAF を用いた場合は、

明瞭なピークが得られた。Pr:LiCAF の発光量は微弱であったため、PMT の電気

的ノイズと明確には分離できなかったが、70 チャンネル付近にピークが確認で

きた。

ピーク値を市販のリチウムガラス GS20 と比較したところ、Ce:LiCAF、

Pr:LiCAF、Eu:LiCAF は、それぞれリチウムガラス GS20 の 0.33 倍、0.016 倍、

6.0 倍 の 波 高 値 が 得 ら れ た 。 リ チ ウ ム ガ ラ ス GS20 の 発 光 量 は 概 ね

7000photns/neutron 程度であるとされており、Ce:LiCAF、Pr:LiCAF、Eu:LiCAF、

の発光量はそれぞれ、約 2300、110、42000 photons/neutron に相当するもの

と考えられる。

また、発光量が高いサンプル程、ピークの半値幅が狭い傾向だったが、これ

は光検出器の性能が同じ場合に、シンチレーターのエネルギー分解能がその発

光量に依存するためであり、このことからも Eu:LiCAF が高い発光量を有してい

ることがわかる。

Page 77: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

76

0 200 400 600 800 1000チャンネル数

計数

[a.u

.]

Ce:LiCAF(287ch) Li-ガラス(870ch)

図 3.22. Ce:LiCAF とリチウムガラスの波高分布スペクトル

Page 78: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

77

0 200 400 600 800 100チャンネル数

計数

[a.u

.]

Eu:LiCAF(526ch)Li-ガラス(87ch)

図 3.23. Eu:LiCAF とリチウムガラスの波高分布スペクトル

Page 79: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

78

図 3.24. Pr:LiCAF とリチウムガラスの波高分布スペクトル

Page 80: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

79

3.3.3 ガンマ線ノイズの評価結果

良好な中性子応答特性が得られた Ce:LiCAF、Eu:LiCAFについて、252Cf による中性

子照射時と同じ測定条件で 60Co によるガンマ線を照射した際の信号強度を調べた結

果をそれぞれ図 3.25、図 3.26 に示す。60Co は一般に中性子シンチレーターのガンマ

線不感性の確認に用いられる核種である。図 3.25より Ce:LiCAF、Eu:LiCAFの両者と

も、60Co からのガンマ線励起による発光の信号強度に比べて、中性子励起の発光の方

が高い信号強度が得られることがわかった。

また、当然のことながら、60Co よりも高エネルギーのガンマ線が存在する測

定場では、ガンマ線ノイズの影響が大きくなることになる恐れがあるが、LiCAF

は有効原子番号が小さくガンマ線と相互作用する確率がもともと低く、ガンマ

線自身も高エネルギーになると物質との相互作用を起こす確率が低くなる。ま

た、撮像用途では鉛シールドによるガンマ線ノイズの低減などの装置上の工夫

が適用できるものと考えられる。これらのことより、本研究では深く検討しない

が、材料ごとに中性子線励起による発光量とガンマ線励起による発光量の比(α/β

比)が異なる原理については非常に興味深い。今回の Ce:LiCAFと Eu:LiCAFの結果を

比較しても、同じ母材に添加したにも関わらずα/β比は Ce:LiCAF の方が高いとい

う違いがある。C.W.E. van Eijk らの検討[1.18]でα/β比は母材の陰イオンの違いに

大きく影響されること等が経験的にわかっているが、材料ごとのα/β比の違いの原

理については、今後明らかにされ、系統的に説明できるようになることが期待される。

Page 81: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

80

0 100 200 300 400 500 600チャンネル数

計数

[a.u

.]

Cf

60Co

252

図 3.25. Ce:LiCAF の 252Cf、60Co 密封線源を

用いたガンマ線不感性の評価結果

Page 82: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

81

0 100 200 300 400 500チャンネル数

計数

[a.u

.]

Cf252

Co60

図 3.26. Eu:LiCAF の 252Cf、60Co 密封線源を

用いたガンマ線不感性の評価結果

Page 83: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

82

3.3.4 中性子応答特性の考察

これまでに得られた希土類添加 LiCAF の中性子シンチレーター特性の

評価結果を表 3.1 に示す。それぞれ、シンチレーターとして利用可能な

数マイクロ秒以下の蛍光寿命を有することがわかる。また、いずれの希

土類を添加した場合も潮解性がない点で安定性に優れ、有効原子番号が

低いためガンマ線に対する不感性の点で有利であると言える。中でも

Eu:LiCAF はリチウムガラスの約 6 倍の発光量が得られたことから、撮像

用途に適した材料であると考えられる。

表 3.1 希土類添加 LiCAF 単結晶の中性子シンチレーター特性

添加物

発光量

(photons/

neutron)

有効原子

番号 Zef f

発光

波長

(nm)

蛍光

寿命

(ns)

リチウム

ガラス [1 .2 8]

Ce 7000 26 395 75

LiCaAlF6 Pr 110 15 200-400 70

LiCaAlF6 Ce 2300 15 285,310 40

LiCaAlF6 Eu 42000 15 370 1500

ここで、Eu:LiCAF で高い発光量が得られた点について考察する。そもそもシ

ンチレーターの発光量は、下記式 (5)にて表される。

np=ne-h・ S・ Q …式 (5)

つまり、電子 -ホール対の数 ne-h、電子 -ホール対の輸送効率 S、発光

中心の量子効率 Q の積によって決まるとされるが、 Eu:LiCAF の場合、 Q

が高いために Ce、 Pr 添加 LiCAF より高い発光量が得られたものと考え

られる。しかし、どのような母材に Eu を添加しても高い発光量が得ら

れるわけではなく、例えば Eu:LiYF4 等は Eu3+の発光しか得られず蛍光寿

命の短い発光は検出できない。つまり、希土類元素の価数制御が重要で

Page 84: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

83

ある。結局、LiCAF 発光量が Eu 添加 > Ce 添加 > Pr 添加となった原因は Q の

違いによるものと考えられ、発光量が Ce:LiCAF よりリチウムガラスの方が高い

原因となった理由はS及び ne-h に起因するものと考えられる。

現実の母材結晶には様々なクエンチングファクターが存在し、励起エネルギ

ーが無輻射遷移で大幅に消費されることも多い。S及び ne-h の高い母材結晶を

探すには、現時点では実際に作製して都度調べることが確実であるが、事前に

予測できる点もある。例えば、バンドギャップが狭い方が母材から発光中心へ

のエネルギー遷移における無輻射遷移による損失が少ないといった予想が可能

である。材料設計において陰イオンを変えることができる場合は、臭化物やヨ

ウ化物のようなバンドギャップの狭い母材を選択することで高い発光量が得ら

れやすい。酸化物にもフッ化物よりバンドギャップが狭い材料が多く、リチウ

ムガラスで Ce:LiCAFよりも高い発光量が得られた原因の一つであると推察され

る。

中性子シンチレーターの場合は Li 元素を含有させなければならないが、一般

に単結晶育成の原料となる Li 化合物はフッ化物、炭酸化物を除いては、潮解性

を有し、それによって育成される結晶も潮解性を持ちやすい傾向にある。激し

い潮解性を有するシンチレーターは現実的に撮像用途に応用されにくいため、

LiCAF は数少ない潮解性のない有望な撮像用中性子シンチレーターの母材の候

補ではないかと考えられる。

Page 85: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

84

3.4 中性子線透過像の撮像試験

3.4.1 Eu:LiCaAlF6 単結晶による中性子線透過像条件の検討結果

中性子シンチレーターとして Eu:LiCAF を選択し、図 3.27 に示す手順で中性

子撮像器の試作を行った。マスクなどを用いずに 252Cf による中性子線を照射す

る動作試験では Eu:LiCAF の中性子線励起発光の検出に成功した。

図 3.27. Eu:LiCAF を用いた中性子撮像器の試作方法

Page 86: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

85

252Cf による中性子線を照射する動作試験で得られた 64ch の信号強度の統計

グラフを作成した結果を図 3.28 に示す。

図 3.28 より Eu:LiCAF の中性子線励起発光の検出に成功したことを表すピー

クが得られた。逆にピーク以外の部分は電気的なノイズに起因するものと考え

られる。そのため、ピークチャンネル周辺の信号のみを有効データ範囲とし

て撮像に利用し、電気的ノイズをプログラム上で除去することとした。

0 1000 2000 3000全信号波高 [チャンネル]

計数

[cou

nts]

図 3.28. Eu:LiCAF を用いた中性子撮像器の波高値スペクトル

Page 87: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

86

3.4.2 中性子ビームポートを利用した中性子線透過像の撮像試験結果

カドミウム製のマスクを結晶上に固定し、この状態で JRR-3 MUSASI ポ

ートで熱中性子を 10 分間照射し、位置敏感型光電子増倍管からの信号

を取得、電荷重心演算によって画像化した。マスクの形状は図 3.29 に

示すカドミウム板、カドミウムワイヤーを用いた。

中性子線透過像の撮像試験の結果を図 3.30に示す。用いた PS-PMTは 8×8

=64 チャンネルであり、1 イベントに対して 64 個の信号が得られる。これらの

信号を電荷重心演算により画像化した。一見して図 3.29 に示した被写体の形状

の中性子線透過像が得られていることがわかる。厚み 1mm のカドミウムに対し

て十分なコントラストを持ち、1 mm 径のピンホールや 1 mm 径のワイヤーによ

る複雑な図形を撮像するのに十分な位置分解能を有すると言える。以上より

Eu:LiCAF は、中性子線透過像の撮像に使用できる事がわかった。

図 3.29. 中性子線透過像の撮像に用いたカドミウムマスクの形状

Page 88: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

87

図 3.30. Eu:LiCAF 検出器によるカドミウムマスクの中性子線透過像

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88

次に、図 3.31 に示す形状のカドミウム板をマスクではなく被写体と

して用い、JRR-3 MUSASI ポートにて、試作した中性子線透過像撮像器と

被写体との間隔を 30mm として、中性子線透過像の撮影を行った結果を

図 3.32 に示す。一見して複数のアルファベット型の被写体のコントラ

ストがついており、撮像に成功しているのがわかる。

本 結 果 に よ り 、 被 写 体 と 撮 像 器 の 間 隔 が 30mm 程 度 あ る 場 合 も 、

Eu:LiCAF 中性子シンチレーターと JRR-3 MUSASI ポートの中性子ビーム

を用いれば、中性子線透過像を撮像可能であることが示された。

Page 90: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

89

図 3.31. 中性子線透過像の撮像に用いたアルファベット型の

カドミウムマスクの形状

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90

図 3.32. 被写体-撮像器間距離を 30mm とした際の

JRR-3 MUSASI ポートの熱中性子ビーム照射下の

アルファベット型のカドミウム板の中性子線透過像

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91

3.4.3 放射線管理区域外における中性子線透過像の撮像試験結果

最後に本研究の目的の一つである中性子イメージングの汎用化に向

けて、放射線管理区域外において利用可能な低フラックスの 2 52Cf 密封

線源を用い、同様の中性子透過像の撮像試験を行った結果を示す。

図 3.33 に被写体-撮像器間距離を 30mm とした際の 252Cf 密封線源からの中性

子線照射下のアルファベット型のカドミウム板の中性子線透過像の撮像

試験結果を示す。本試験には T 型の被写体を用いた。一見してカドミウ

ムの被写体の形状のコントラストがついておらず、撮像に失敗している

のがわかる。

次に図 3.34 に 被写体-撮像器間距離を 0mm とし、252Cf 密封線源からの中性子

照射下のアルファベット型のカドミウム板をマスクとして用いた場合の

中性子線透過像を示す。複数種類のアルファベット型のマスクの形状の

コントラストがついており、低フラックスの 25 2Cf 密封線源でも撮像に

成功していることがわかる。

このことより、被写体-撮像器間距離を 30mm とした際の 252Cf 密封線源を用

いた中性子線透過像の撮像が失敗した原因は、中性子線源に原因があることが

わかる。具体的には、JRR-3 MUSASI ポートの中性子ビームは平行度が高く、密

封線源のように放射状に中性子線が照射され、さらに乱雑な向きに散乱される

成分が多い場合は被写体を回り込んで直接、中性子線透過像撮像器に入射して

しまう中性子線が多く、結果として中性子線透過像のコントラストがついてい

ないものと考えられる。

Page 93: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

92

図 3.33. 被写体-撮像器間距離を 30mm とした際の

252Cf 密封線源からの中性子照射下の

アルファベット型のカドミウム板の中性子線透過像

Page 94: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

93

図 3.34. 被写体-撮像器間距離 0mm、

252Cf 密封線源からの中性子照射下の

アルファベット型のカドミウム板を

マスクとして用いた場合の中性子線透過像

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94

3.4.4 中性子線透過像の撮像試験結果の考察

PS-PMT に結合したシンチレーターの発光分布を電荷重心演算する際の位置

分解能 σ は下記の式(6)で得られる[3.3]。

σ=σe /Ne1/2・(δ/δ-1)1/2 …式(6)

式中の σe は光の拡がり、δは PMTの二次電子増倍率を表し、これらが PS-PMT

側の性能で決まる値であるのに対し、Ne はイベントあたりに発生する光電子数、

つまり、シンチレーターの発光量に依存する値である。本式はシンチレーター

の発光量が高い程、位置分解能が高くなることを表しており、Eu:LiCAF が十分

に高い発光量を有することが、本試験で高い位置分解能が得られた要因の一つ

と考えられる。

また、放射線管理区域外において低フラックスの密封線源を用いた中

性子透過像の撮像はあまり例がなく、カドミウムをマスクとして用いた

場合に撮像に成功していることから Eu:LiCAF は十分に高い中性子線検

出効率を有しているものと思われる。

カドミウム板を被写体とし、撮像器と被写体との距離を 30mmとした試験でも、

密封線源よりも平行度が高い中性子ビームを用いた場合は撮像に成功しており、

Eu:LiCAF を中性子シンチレーターとして用いた場合、中性子線撮像器の位置分

解能は十分に高く、それよりも中性子線源の平行度が撮像の成否に対して大き

く影響するものと考えられる。

Page 96: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

95

第 4 章 結論

Page 97: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

96

直径 2mm、直径 50mm の希土類添加 LiCAF 単結晶の育成に成功し、粉末 X 線回

折法により得られた結晶が単相である事を確認した。

Ce,Eu,Pr:LiCAF の透過スペクトル、X 線励起発光スペクトル、励起スペクト

ルを評価、その発光原理を明らかにし、シンチレーターに利用可能な蛍光寿命

が短い Ce3+、Eu2+、Pr3+の 5d-4f 遷移に伴う発光を有することがわかった。

Ce:LiCAF の X 線励起発光の時間分解評価を行い、比較的遅い rise time を有

することを見出し、その原因を考察した。

Ce,Eu,Pr:LiCAF の中性子応答特性を評価し、252Cf 密封線源による中性子線照

射時の発光量・蛍光寿命を明らかにし、Eu:LiCAF が潮解性のない単結晶中性子

シンチレーターの中で高い発光量を有することを見出した。

Eu:LiCAF をシンチレーターとして用いた中性子線撮像器を試作し、カドミウ

ムマスクによる中性子イメージング試験を実施、JRR-3 MUSASI ポートの中性子

ビームを用い、1mm の位置分解能を達成した。

同様に、カドミウム板を被写体とし、撮像器と被写体との距離を 30mm とした

試験では、撮像の成否に対し、撮像器性能よりも中性子線源からの中性子線の

平行度が大きく影響することがわかった。

以上より、新規中性子シンチレーター希土類添加 LiCAF の発光原理とその中

性子応答特性が明らかになった。また、Eu:LiCAF が撮像の用途に対して有望な

中性子シンチレーターであることが示された。撮像用途に高い性能を持つ中性

子シンチレーターが得られたことで、今後は可搬型の中性子線源やコリメータ

ー技術の進展も含めた技術開発による中性子イメージングの汎用化が期待され

る。

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[2.18] V.A. Tatarchenko, “Shaped Crystal Growth (Fluid Mechanics and Its Applications)”,

Klawer Academic Publishers, Netherlands, 2010.

[2.19] A.V.Stepanov, Izv. ANSSSR, Ser. Fiz, 33, 1946-1953, 1969 in Russian.

[2.20] A.V.Stepanov, Zhurnal Tekhnicheskoi Fiziki, 29, 381-393, 1959 in Russian.

[2.21] A.V.Stepanov, Soviet Physics Solid State, 8, 449, 1966.

[2.22] P.I.Antonov, S.P. Nikanorov and V.A. Tatarchenko, “The growth of controlled profile

crystals by stepanov’s method”, J. Cryst. Growth, 42, 447-452, 1977.

[2.23] A. Yoshikawa, T. Satonaga, K. Kamada, H. Sato, M. Nikl, N. Solovieva and T. Fukuda,

“Crystal growth of Ce:PrF3 by micro-pulling-down method”, J. Cryst. Growth, 270,

427-432, 2004.

[2.24] H.B. Chen, Shiji Fan, Haiping Xia and Yiting Fei, “Phase equilibria in the pseudo-binary

systems LiF–CaAlF5 and LiF–SrAlF5”, J. Cryst. Growth, 235, 596-602, 2002.

[2.25] N. Abe, Y. Yokota, J. Pejchal, F. Nara, T. Yanagida, N. Kawaguchi, K. Fukuda, M. Nikl,

and A. Yoshikawa, “Crystal Growth and luminescence Properties of Tm: BaF2 Single

Crystals”, Jpn. J. Appl. Phys., 49, 022601, 2010.

Page 103: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

102

[2.26] T. Yanagida, Y. Fujimoto, A. Yoshikawa, Y. Yokota, K. Kamada, J. Pejcha, V. Chani, N.

Kawaguchi, K. Fukuda, K. Uchiyama, K. Mori, K. Kitano and M. Nikl, “Development

and Performance Test of Picosecond Pulse X-ray Excited Streak Camera System for

Scintillator Characterization”, Appl. Phys. Express, 3, 056202, 2010.

[2.27] 河口範明, 福田健太郎, 吉川彰, 柳田健之, 藤本裕, 戸塚大輔, 渡辺賢一, "課題番

号 22-33 MUSASI 新規フッ化物中性子シンチレーターを用いた中性子検出実験",

http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/ryoushi/detail/1323226.htm, 文部科学省「中性

子利用技術移転推進プログラム」業務実施結果報告書, 中性子利用事例集(9)

その他 p12.

[3.1] N. Shiran, A. Gektin, S. Neicheva, M. Weber, S. Derenzo, M. Kirm, M. True, I. Shpinkov,

D. Spassky, K. Shimamura and N. Ichinose, “Energy transfer in pure and Ce-doped

LiCaAlF6 and LiSrAlF6 crystals”, Nucl. Instr. Meth. A, 537, 266-270, 2005.

[3.2] M.J. Weber, S.E. Derenzo and W.W. Moses, “Measurements of ultrafast scintillation rise

times: evidence of energy transfer mechanisms”, J. Lumin., 87-89, 830-832, 2000.

[3.3] 山下貴司, 平成 18 年度次世代 PET 開発研究報告書, 第 2 部 6.

Page 104: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

103

謝辞

本研究全体を通じて、ご指導いただきました東北大学理学部の福村裕史先生、

梶本真司先生をはじめとする福村研究室(有機物理化学研究室)メンバーの皆

様に感謝申し上げます。

本研究の肝である高時間分解能の発光測定、中性子線透過像の撮像や理論面

で数多くのご指導をいただきました九州工業大学の柳田健之先生に強く感謝申

し上げます。また、分子研 UVSOR における励起スペクトルの測定でご協力いた

だきました東北大学工学研究科の越水正典先生に感謝申し上げます。

本研究に必須の希土類添加 LiCAF 単結晶の育成技術においてご指導いただき

ました東北大学金属材料研究所の吉川彰先生、横田有為先生、黒澤俊介先生、

J. Pecjal 先生、鎌田圭先生、V. Chani先生、G. Boulon先生、A. Novoselov 先生、

M. Zhuravleva 先生、現 LG 電子の K. Kim 様、山路晃広様、現九州工業大学の藤本

裕先生、現国土交通省の阿部直人様、現昭和電工の古谷優貴様、現日本総研の

田中秀彦様、現千代田テクノルの杉山誠様、現旭硝子の若原慎吾様をはじめと

する吉川研究室メンバーの皆様に感謝申し上げます。

また、放射線透過像撮像器や放射線検出器関連技術全般についてご指導いた

だきました名古屋大学の渡辺賢一先生、山崎淳先生、広島大学の高橋弘充先生、

日本結晶光学の戸塚大輔様、クリアパルスの久保信様に感謝申し上げます。種々

の単結晶育成手法全般についてご教授いただきました信州大学の干川圭吾先生

に感謝申し上げます。

国際学会の場やメール等で研究内容について議論させていただきました

Institute of Physics, Academy of Sciences of The Czech Republic の M. Nikl

先生、Soltan Institute for Nuclear Studies の M. Moszynski 先生、Delft

University of Technology の P. Dorenbos 先生、C.W.E. van Eijk 先生に感謝申

し上げます。

社会人として博士後期課程への進学を快諾して下さいました(株)トクヤマ関

係者の皆様、故 倉元信行様、升野勝之様、岡本秀則様、柳裕之様、現職場関係

者の井上智弘様、縄田輝彦様、小川勝也様、乾洋治様、本研究テーマを含むフ

ッ化物単結晶材料開発プロジェクトマネージャーの須山敏尚様、中川正則様、

山本玲緒様、プロジェクトメンバーの福田健太郎様、日下部敦彦様、林康司様、

石津澄人様、現東北大学吉川研究室技術職員の長門久和様、現熊本高等専門学

Page 105: 希土類添加LiCaAlF6の単結晶育成とシンチレーショ ン特性に関す …

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校助教の二見能資様に感謝申し上げます。

最後に、家計からの学費の捻出を許諾して支えてくれた最愛の妻、及び、有

形無形の金銭的支援で支えてくれた両親に感謝いたします。

多数の方々のご指導、ご協力で本研究を完成させることができました。皆様、

誠にありがとうございました。