living in two places 2030 story book - printer version
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日本学術振興会 先導的研究開発委員会「クライシスに強い社会・生活空間の創生」作『Living in
Two Places 2030 二拠点居住によるレジリエンス ストーリーブック』はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています
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仮 想 近接感
妻の恵美とは、今は月の半分は別居生活だ。
恵美はトキワ市で友人と一緒にお店をやっている。働
ける間は友達の多いトキワ市の暮らしが良いというこ
とで、月の半分は別々に暮らしている。働くのがしん
どくなれば、徐々にさくらビレッジで暮らす時間を長
くしようといっている。よく寂しくないかといわれる
が、必要な時はいつでもスマートフォンやTVのディ
スプレイでビデオ会話ができるのでさほど寂しくはな
い。夫婦関係も円満だと思っている。別々の時も週に
3日は食事の時間を合わせ、たわいない会話をしなが
ら食事をするのが習慣になっている。
ビデオ会話は必要な時だけだが、いつもはホームセン
ターで先月購入した金魚鉢型の仮想近接感装置を使っ
ている。この装置はペアで使うもので、トキワ市にい
る恵美の動きやまわりの音に応じて3D金魚の動きが
変化し、向こうの雰囲気が伝わってくる。まるで、隣
の部屋に住んでいるような感覚で、恵美が起きている
のか、寝ているのか、向うの様子がなんとなくわかる
ので安心である。