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Autodesk Inventorによる3次元設計で 目指すフロントローディング型の 新たな開発体制 株式会社LIXIL ユーザ事例 Autodesk ® Inventor ® Autodesk ® Showcase ® AutoCAD ® 2011年4月、建材・住設機器最大手 のLIXILグループは、住生活産業の グローバルリーダーを目指し傘下5 社を統合。売上高1兆円超、社員約6 万人余の株式会社LIXILを設立し た。そしていま、さらに強まるグロー バル化への流れのもと、同社は設計 品質のさらなる向上と効率化を目指 し、設計3次元化への展開を開始し ている。Autodesk Inventorを始 め多様なオートデスク製品をベー スに進むその取組みについて、同 社IT推進本部の吉田幸治氏とLIXIL インフォメーションシステムズの藤 井孝雄氏にうかがった。 オートデスク製品を核とする設計標準化 「昨年4月に統合した5社―トステム、 INA X、新日軽、サンウエーブ 工業、東洋エクステリアは、それまでもグループ会社として協力関 係にありましたが、個々の具体的な製品開発の手法はやはりそれ ぞれのやり方がありました。ただ、異なるやり方の中にも共通部分 はあります。たとえば統一以前から5社のほとんどが設計に AutoCAD ® を使っていたんですよ」。そう語る吉田幸治氏は金属・ 建材IT推進部のCADグループのリーダー。CADグループは、開発 ツールであるCADの活用法やカスタマイズなど技術的側面から 商品開発の生産性向上を支援しており、CADに関する情報収集 や研究も常時行っているのである。 「各社が以前からAutoCADを使っていたのは、あくまで偶然です。 しかし建材メーカーの私たちにとってお客様は建築業界。その業界 のデファクトスタンダードであるAutoCADが普及していたのは当 然かもしれませんね」。そう語る藤井孝雄氏が勤務するLIXILイン フォメーションシステムズはLIXILのIT推進部門の開発部隊。特に開 発2部では、CADやPDMなど、商品開発の支援システム全般を担当 している。藤井氏によれば、AutoCAD以外にもLIXILには多数の オートデスク製品が導入されていると言う。まず商品設計や生産準 備用の「Autodesk Inventor」、プレゼン用の高品位なビジュアライ ゼーションを担う3D CG「Autodesk ® 3ds Max ® 」、インタラク ティブな3D CGシミュレーション「Autodesk ® Showcase ® 」や解 析ツール「Autodesk ® Moldflow ® 」も使われているのだ。 「たまたまみんなが使っていたAutoCADですが、バージョンも揃え てしまえば、各社間でアプリケーション等の流用等も可能になり、 CADに関するノウハウも共有しやすくなるはず。そうなれば私たち が次のステップとして目指している、商品開発における設計ノウハ ウの共有もスムーズに進められると考えています」(吉田氏)また、 同社では現在5社統合にともなう課題の一つとして設計プロセス 改革に取り組んでいる。これは「グローバルに通用する新しい企業 文化の創造」という新生LIXILの企業テーマに基づいた施策。そし て、その中核にある重要課題の1つがInventor(金属系部門)を核 とする製品開発の設計3次元化なのである。 設計3次元化で目指す生産性30%アップの目標 「LIXILの中でも、サッシや玄関ドアを中心とする私たち金属系部 門の商材は直線部分が多く、立体もほとんど断面形状で表せま す。しかし、実は部品や縦横の部材が合わさる箇所など、立体的 な視点で検討すべき部分も少なくありません。構想段階の検討で 不具合が見つけられず、試作段階でようやく不具合が発覚して結 局手戻りに……ということもあるんですね。こうした不具合を無 くしたいというのが、今回の設計プロセス改革の出発点のひとつ なんです」(吉田氏)。 「3次元化推進の背景には、グローバル化を目指すLIXILの新しい 企業戦略があります。新生LIXILはよりグローバルな市場を目指し ており、そのために開発部門も大きく生産性を向上させる必要が あったのです。示された目標は30%アップ。そこで私たちが注目し たのがInventorによる設計3次元化への挑戦でした」(吉田氏)。 「3次元化のプロジェクトが動き始めたのは2010年頃でした。私 たちIT部門とCADユーザである商品開発部門のスタッフ系メン バーが集まり、まず3次元CAD製品の選定を行いました。 株式会社LIXIL IT推進本部 金属・建材IT推進部 CADグループ グループリーダー 吉田 幸治 氏 株式会社LIXIL インフォメーションシステムズ 開発2部 商品システム開発グループ グループリーダー 藤井 孝雄 氏

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Page 1: 株式会社LIXIL Autodesk Inventorによる3次元設計で … · Autodesk Inventorによる3次元設計で 目指すフロントローディング型の 新たな開発体制

Autodesk Inventorによる3次元設計で目指すフロントローディング型の新たな開発体制

株式会社LIXILユーザ事例

Autodesk® Inventor®

Autodesk® Showcase®

AutoCAD®

2011年4月、建材・住設機器最大手

のLIXILグループは、住生活産業の

グローバルリーダーを目指し傘下5

社を統合。売上高1兆円超、社員約6

万人余の株式会社LIXILを設立し

た。そしていま、さらに強まるグロー

バル化への流れのもと、同社は設計

品質のさらなる向上と効率化を目指

し、設計3次元化への展開を開始し

ている。Autodesk Inventorを始

め多様なオートデスク製品をベー

スに進むその取組みについて、同

社IT推進本部の吉田幸治氏とLIXIL

インフォメーションシステムズの藤

井孝雄氏にうかがった。

オートデスク製品を核とする設計標準化

「昨年4月に統合した5社―トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ

工業、東洋エクステリアは、それまでもグループ会社として協力関

係にありましたが、個々の具体的な製品開発の手法はやはりそれ

ぞれのやり方がありました。ただ、異なるやり方の中にも共通部分

はあります。たとえば統一以前から5社のほとんどが設計に

AutoCAD®を使っていたんですよ」。そう語る吉田幸治氏は金属・

建材IT推進部のCADグループのリーダー。CADグループは、開発

ツールであるCADの活用法やカスタマイズなど技術的側面から

商品開発の生産性向上を支援しており、CADに関する情報収集

や研究も常時行っているのである。

「各社が以前からAutoCADを使っていたのは、あくまで偶然です。

しかし建材メーカーの私たちにとってお客様は建築業界。その業界

のデファクトスタンダードであるAutoCADが普及していたのは当

然かもしれませんね」。そう語る藤井孝雄氏が勤務するLIXILイン

フォメーションシステムズはLIXILのIT推進部門の開発部隊。特に開

発2部では、CADやPDMなど、商品開発の支援システム全般を担当

している。藤井氏によれば、AutoCAD以外にもLIXILには多数の

オートデスク製品が導入されていると言う。まず商品設計や生産準

備用の「Autodesk Inventor」、プレゼン用の高品位なビジュアライ

ゼーションを担う3D CG「Autodesk® 3ds Max®」、インタラク

ティブな3D CGシミュレーション「Autodesk® Showcase®」や解

析ツール「Autodesk® Moldflow®」も使われているのだ。

「たまたまみんなが使っていたAutoCADですが、バージョンも揃え

てしまえば、各社間でアプリケーション等の流用等も可能になり、

CADに関するノウハウも共有しやすくなるはず。そうなれば私たち

が次のステップとして目指している、商品開発における設計ノウハ

ウの共有もスムーズに進められると考えています」(吉田氏)また、

同社では現在5社統合にともなう課題の一つとして設計プロセス

改革に取り組んでいる。これは「グローバルに通用する新しい企業

文化の創造」という新生LIXILの企業テーマに基づいた施策。そし

て、その中核にある重要課題の1つがInventor(金属系部門)を核

とする製品開発の設計3次元化なのである。

設計3次元化で目指す生産性30%アップの目標

「LIXILの中でも、サッシや玄関ドアを中心とする私たち金属系部

門の商材は直線部分が多く、立体もほとんど断面形状で表せま

す。しかし、実は部品や縦横の部材が合わさる箇所など、立体的

な視点で検討すべき部分も少なくありません。構想段階の検討で

不具合が見つけられず、試作段階でようやく不具合が発覚して結

局手戻りに……ということもあるんですね。こうした不具合を無

くしたいというのが、今回の設計プロセス改革の出発点のひとつ

なんです」(吉田氏)。

「3次元化推進の背景には、グローバル化を目指すLIXILの新しい

企業戦略があります。新生LIXILはよりグローバルな市場を目指し

ており、そのために開発部門も大きく生産性を向上させる必要が

あったのです。示された目標は30%アップ。そこで私たちが注目し

たのがInventorによる設計3次元化への挑戦でした」(吉田氏)。

「3次元化のプロジェクトが動き始めたのは2010年頃でした。私

たちIT部門とCADユーザである商品開発部門のスタッフ系メン

バーが集まり、まず3次元CAD製品の選定を行いました。

株式会社LIXIL IT推進本部 金属・建材IT推進部CADグループ グループリーダー吉田 幸治 氏

株式会社LIXIL インフォメーションシステムズ開発2部商品システム開発グループグループリーダー藤井 孝雄 氏

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当時市場に出回っていた3次元CADを集め、3カ月

くらいかけていろいろな角度から比較検証したん

です。そして、最終的に選んだのがInventorでし

た」(吉田氏)。選定理由としてまず上がったのは

2次元CADとの親和性の高さだ。全社へ普及済み

のAutoCADと同じオートデスクファミリーとし

て、2D/3D間のデータ連携もスムーズであるこ

とが重視されたのだ。同様に、Inventorのカスタ

マイズのしやすさとそのためのサポート体制の充

実も大きかった。

Inventorで膨大な3Dモデルを自動展開するために

「1つの商品でも、サイズや部材の使い分けで膨大

なバリエーションが生まれるのが当社の商材の特

徴です。たとえば主力の断熱玄関ドア“フォラー

ド”も基本的なデザインだけで数十種。しかもそ

れぞれ規格品と特注品ごとにさまざまなサイズが

展開されます。さらにドアに付ける片袖や両袖、

欄間の有無、また躯体側の納まりやキーにも多様

な仕様があり、これらが全て掛算され多くのバリ

エーションを生み出すのです」(吉田氏)。この膨

大なバリエーション1個1個の3Dモデルを作ると、

その数は何千何万というオーダーに達する。とう

てい現実的とは言えないのだ。しかし、構造や仕

様の検討は主要モデルで行うにせよ、残るサイズ

違い・仕様違いによるバリエーションはパラメト

リックで検証しなければならない。

「そうなるとやはり設計者の負荷が大きくなり過

ぎるわけです。そこで、この部分を効率化できるア

プリケーションが必要でした。上手くパラメトリッ

クを取り入れて3Dモデルを自動展開するシステム

ですね」(藤井氏)。同氏らは大塚商会の協力を

得てパラメトリックテーブルを作り、寸法や仕様違

いごとに部品や部品が付く場所、加工内容の違い

などによるモデル作成を自動化し、その結果から

スピーディに設計品質を判断できるアプリケー

ションの開発を検討。CADカスタマイズで20年

余の実績を持ち、オートデスク製品に関するノウ

ハウも豊富に蓄積した大塚商会ならではの高度な

技術サポートだったと言えるだろう。

「それにLIXILの今後海外展開が本格化していく中、

オートデスク製品が果たす役割も大きくなっていま

す。海外サプライヤ等との情報交換が密になりデー

タ提供の機会も増えていくと考えられますが、グ

ローバルスタンダードのオートデスク製品を使え

ば、当然海外とのやり取りもスムーズに進むので

す」(吉田氏)。現地メーカーとの共同開発等を含

むLIXILの海外展開は着々と進んでいる。たとえば

すでに世界的水回りブランド「アメリカンスタン

ダードアジア・パシフィック」や世界一のカーテン

ウォールメーカー「ペルマスティリーザ」等を子会社

化しており、今後、技術交流が進んでいくと言う。

フロントローディングの開発/製造体制へ

「とはいえ、当社の設計3次元化はまだまだ始まっ

たばかり。実際にInventorを使える人もそれほど多

くはありませんから、まずは設計者たちにInventor

の操作を身に付けてもらうことが課題となります。

それには私たち自身がスキルアップする必要があ

ります。そこで大塚商会のSEに教えてもらって勉強

し、それをベースに社内向けの教育プログラムを作

りました」(吉田氏)。ベーシックな操作教育は既

に始まっており、数カ月かけて設計スタッフ全員に

Inventorの操作研修を行っていく計画だ。

前述の通り現状ではまだ同社では2次元が主役で

あり、初期構想 段階の断面検 討やスケッチも

AutoCADで行うことが多い。Inventorは構想モデ

ルの検討で3次元モデルを使う程度で、その後は

また2Dでの作業となっている。この2D/3Dの関

係を逆転させるのが吉田氏らの最終目標だ。

「目指しているのはフロントローディング。構想段

階から設計者が3次元モデルを作成し検討して、

そのモデルを下流工程に流して活用していくスタ

イルですね。設計はもちろん、検証や生産準備に

係わる付帯作業も3Dを最大限に利用して行い、

設計品質を作りこみ、以降の工程ではそのモデル

から必要な情報を切り出して利用するだけにした

いんです。そうすることで30%の生産性向上が可

能になる」(藤井氏)。

「とはいえ一気にそこまで持っていけるわけではな

いので、3Dによる構想設計の手法やLIXIL流3D

データの作り方、カスタマイズやPDMとの連携を

細かく検証しながら進めています。一歩一歩確か

めながら進んでいってる状態ですね。前述の3次

元設計トライアルを検討・試行錯誤している段階

ですが、来年度はその結果から将来的な見通しや

課題もはっきりしてくると思うので、これを踏まえ

て、次のステップではもっと多くの、それこそ1商材

ごとに1つずつ一気通貫の3次元設計にトライアル

したいですね」(吉田氏)。

Inventorで作成したモデルをShowcaseに取り込み、素早くプロモーション用に展開する活用の検討が進んでいる。カラーや素材のバリエーションもインタラクティブに見せられる

同様にInventorで作成した玄関ドア、サッシ等々をShowcaseに取り込み、家1棟まるごとの形で見せるトータルハウジングのプレゼンテーションも容易に行うことができる

Autodesk Inventorで作成した玄関ドアの3次元モデル。主要モデルをモデリングし、サイズや仕様などの違いによる膨大なバリエーションは、パラメトリックテーブルで自動展開させる

※Autodesk、AutoCAD、Inventor、Moldflow、Showcase、3ds Maxは、米国および/またはその他の国々における、Autodesk, Inc.、その子会社、関連会社の登録商標または商標です。その他のすべてのブランド名、製品名、または商標は、それぞれの所有者に帰属します。オートデスクは、通知を行うことなくいつでも該当製品およびサービスの提供、機能および価格を変更する権利を留保し、本書中の誤植または図表の誤りについて責任を負いません。© 2012 Autodesk, Inc. All rights reserved. MFG602-1205(Z)

オートデスク株式会社  www.autodesk.co.jp〒104-6024 東京都中央区晴海1-8-10 晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F

〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原3-5-36 新大阪トラストタワー3F

会社概要

株式会社LIXIL

本 社:東京都千代田区霞が関三丁目2番5号

霞が関ビルディング36階

代表者:藤森 義明

設 立:2001年10月1日

資本金:34,600百万円

従業員:23,916人(うち正社員15,771人)2012年4月1日 現在

事業概要:世界中の人びとの豊かで快適な住生活の未来

に貢献するために、優れた製品とサービスを提供。傘下に

販売や生産、メンテナンス、サービスなどを担うさまざま

な子会社を数多く有し、海外拠点も30カ国で展開。

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(取材 2012 年)
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