marsh eng main 1 - マーシュジャパン(marsh …ƒžーシュ提供...

5
マーシュ提供 のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です 新時代を迎える日本の 企業保険市場

Upload: ngoduong

Post on 05-Oct-2018

225 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Marsh Eng main 1 - マーシュジャパン(Marsh …ƒžーシュ提供 のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です Paper size: 210mm x 270mm 新時代を迎える日本の

マーシュ提供のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です

Paper size: 210mm x 270mm

新時代を迎える日本の企業保険市場

LONDON26 Red Lion SquareLondonWC1R 4HQUnited KingdomTel: (44.20) 7576 8000Fax: (44.20) 7576 8500E-mail: [email protected]

NEW YORK111 West 57th StreetNew YorkNY 10019United StatesTel: (1.212) 554 0600Fax: (1.212) 586 1181/2E-mail: [email protected]

HONG KONG6001, Central Plaza18 Harbour RoadWanchaiHong KongTel: (852) 2585 3888Fax: (852) 2802 7638E-mail: [email protected]

Page 2: Marsh Eng main 1 - マーシュジャパン(Marsh …ƒžーシュ提供 のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です Paper size: 210mm x 270mm 新時代を迎える日本の

2 © The Economist Intelligence Unit 2007

新時代を迎える日本の企業保険市場

著作権について

全ての権利はエコノミスト・インテリジェンス・ユニットに帰属する。本報告書の内容について、執筆者と発行者は可能な限り検証を行った。本報告書の内容に基づき、いかなる損失が生じた場合でも、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットは責任を負わない。本報告書の全部または一部を、エコノミス

ト・インテリジェンス・ユニットの事前承諾なしに複製、情報検索システムに保存、電子的・機械的・複写・録音・その他のいかなる方法あるいはいかなる形式による配信は禁じられている。© 2007 Economist Intelligence Unit. All rights

reserved.

Page 3: Marsh Eng main 1 - マーシュジャパン(Marsh …ƒžーシュ提供 のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です Paper size: 210mm x 270mm 新時代を迎える日本の

© The Economist Intelligence Unit 2007 3

新時代を迎える日本の企業保険市場

はじめに

「新時代を迎える日本の企業保険市場」は、マーシュのスポンサー協力のもとにエコノミスト・インテリジェンス・ユニットが作成した日本の保険市場に関する調査報告書である。本プロジェクトはマーシュにスポンサー協力を得ているが、本報告書の内容についての一切の責任はエコノミスト・インテリジェンス・ユニットにある。取材、机上調査および執筆は、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの編集チームが担当した。本報告書に記載した調査結果および見解は、必ずしもスポンサーの意見を反映したものではない。執筆は湯浅し津とデイヴィッド・ディヒーリ、日本語訳は和田翻訳室が担当した。 作成にあたっては広範な机上調査を行い、

さらに日本の保険市場の第一線でご活躍の方々や規制当局、専門家の皆様などに取材した。取材にご協力いただいた全ての方々に深く感謝する。2007年1月

Page 4: Marsh Eng main 1 - マーシュジャパン(Marsh …ƒžーシュ提供 のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です Paper size: 210mm x 270mm 新時代を迎える日本の

4 © The Economist Intelligence Unit 2007

新時代を迎える日本の企業保険市場

エグゼクティブ・サマリー

日本の損保業界は、ここ10年ほど、あらゆる面で変革期を迎えている。保険料率は自由化され、保険 ブローカー制度の導入も認められた。また、保険各社の大規模な合従連衡も行われている中で、企業保険市場だけはおおむね手つかずのままなのはなぜだろうか。最大の原因として、長年維持されてきた日本の損保市場の構造、特に機関保険代理店(グループ内保険代理店)の伝統的な存在が挙げられるだろう。しかし、それだけではなく需要不足も大きな原因であり、日本企業を取り巻く事業環境ではあらゆるリスクが高まっているにも関わらず、リスクマネジメントの概念がほとんど理解されていないため、企業向けの高度な保険商品に対する需要が乏しい。日本では上級管理職の任期が短く長期的な視野に欠けることも、この傾向に拍車をかける結果となっている。最近では大災害が頻発しており、たとえ大企業であっても地震やリコールに対して保険の備えがないケースがあるという事実が露見している。マーシュのスポンサー協力により作成された

本調査報告書の概要は次の通りである。• 規制緩和は、まだ企業保険市場にさほどの影響を与えていない。日本の保険市場の他の分野では、1990年代に始まった規制緩和が大きな変革をもたらした。例えば個人保険の分野では、1997年以降、つまり、すでに保険料率が自由化される前から、急速な変化が起きている。これはアメリカン・ホーム保険やチューリッヒ保険などの外資系保険会社が上陸し、きめこまかくリスク等級分けした自動車保険の強力な販促攻勢をかけたため、日本の保険会社も対応せざるを得なくなった。しかし企業保険の分野では、このような競争の起爆剤となるものが存在せず、その一因として、市場参加者が比較的少ないことが挙げられる。個人向け保険のように、保険商品の高度化を図るに足るほどの取引が存在しない。しかし、理由はそれだけではない。第一に、日本の損保会社は複雑な保険引受の

経験が乏しく、市場のニーズに応えた商品の開発経験も少ない。第二に、保険の買い手側の知識不足も挙げられ、これは保険会社も保険商品も画一的だった護送船団時代の名残と言えるだろう。第三に、大手企業グループを中心に グループ内保険代理店(機関代理店)を抱えるケースが圧倒的に多く、この種の機関代理店の中には改革をめざす意欲に欠けているところもある。• 企業保険市場に変化が見られない一因として、保険の買い手側の知識不足が挙げられるが、日本企業の中にはグローバルに事業展開し、欧米企業が利用するような保険を要求する場合もある。しかし、そのような企業は日本では100社程度にとどまり、それ以外の企業との差はきわめて大きい。多くの企業は未だに保険をほとんど選択の余地のない既製品と考えており、特定の保険会社一社からあらゆる保険を一括購入する場合が多い。この場合、損害賠償保険など新種の保険は、従来からある火災保険等との兼ね合いから引受が行われる場合がある。このため個々の保険に係るコストを把握しづらくなるほか、買い手は新しい保険商品に対して積極的な関心を寄せようとしないのが現状だ。例えば、昨今、製品リコールが頻発しているが、有事発生時に対応コストを補填する保険を購入しているメーカーはごくわずかであると言われる。• 日本の保険市場への外資系保険会社の参入はまだわずかである。外資系損保会社の元受正味収入保険料が損保市場全体に占める割合は、わずか4%前後である。その大きな原因は、先に挙げたように、大企業グループなどが機関代理店を所有する仕組みにあり、上場企業の実に80%がこの方式を採用しているという。金融危機を経て、グループ内での伝統的な株の持ち合いが解消するにつれ、外資系保険会社は保険数理(いわゆるアクチュアリー)や商品開発に関する豊富な経験に基づく プレゼンテーション機会だけは与えられるようになったが、日本企業は情報収集の一環としてプレゼ

Page 5: Marsh Eng main 1 - マーシュジャパン(Marsh …ƒžーシュ提供 のエコノミスト・インテリジェンス・ユニット白書です Paper size: 210mm x 270mm 新時代を迎える日本の

© The Economist Intelligence Unit 2007 5

新時代を迎える日本の企業保険市場

ンテーションを聞きはしても実際に発注する例は少なく、結局は機関代理店に同じスキームの保険商品を作らせて保険会社に引き受けてもらう。このため外資系保険会社は、系列化されていない中小企業をターゲットにするしかない。また、海外保険市場では重要な役割を果たしている保険ブローカー(保険仲立人)が認知されていないことも、外資系保険会社の営業活動を一層困難にしており、2005年の保険仲立人が占める割合は、損保市場全体のわずか0.2%にとどまった。

今後の展望現在見られるいくつかの傾向から判断すると、企業向けの保険商品には今後一層の高度化が求められるようになり、その結果として保険市場が大きく変わると予想される。中でもとくに重要な傾向とは、日本企業を取り巻く事業環境では如実にリスクが増加していることだと言えよう。製造業を筆頭に日本企業の市場は、アジア市場へと次第にシフトしてきている。2004年における日本企業の海外子会社の所在地を見ると、24%が中国である。欧米に進出する日本企業の場合には現地保険会社で保険手配を行うが、アジア進出の場合には、現地保険市場がまだ十分整備されていないことが手伝い、日本の保険会社は顧客のニーズを満たすために現地保険商品の開発をせざるを得ない。また日本国内では、2009年に日本版サーベンス・オクスリー法(J-SOX法)が施行の予定であり、内部統制が厳格化されるほか、財務報告 プロセスの厳格な基準も導入される。これらはす

べて新たな保険需要につながると期待できる。しかし、保険販売の今後の動向はより不透明

である。競争激化と業界再編の煽りを受けて、保険代理店数は1996年のピーク時に62万件であったのに対して、今日では27万件にまで激減した。その一方で機関代理店の数は横ばい状態にあり、この傾向は今後も続くと推察される。保険仲立人など他の保険仲介業者は、機関代理店と共存する道を探るよりなく、すでに一部ではそうした動きが出始めている。外資系保険会社の将来的な展望はどのように

予測されるだろうか。少なくとも理論上は、外資系保険会社が置かれた状況は改善されるはずだろう。株式の持ち合いの解消が進むにつれ、日本企業はグループ外からの保険調達に興味を示すようになり、海外での勤務経験のある経営幹部が、 リスクマネジメントの概念やノウハウを本社にもたらす例も多い。外資系保険会社はグローバルな商品開発に長けており、グローバル化する日本企業にとって魅力的な利点のひとつだ。また、諸外国におけるコーポレート・ガバナンスや会計 システムに対応した経験も豊富である。しかしながら、現在の日本の保険市場では、今なお機関代理店が強大な影響力を示している。結局のところ、今後の市場動向は保険の買い手

次第であろう。保険商品の多様化は進み、保険の売り手も同様に多様化してきている。あとは多くの日本企業の経営陣が、さらに包括的に保険を考慮する、つまり、市場で調達できる最も効率的な保険商品を購入するべきだと決断するだけである。