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介護ロボット用触覚センサネットワークシステム
上図(a)表面:MEMS 力センサ,(b)裏面:信号配線,中間層に信号処理用 LSI(回路)が集
積化されている
下図:ロボットアームにフレキシブル配線を介して集積化触覚センサを取り付けた例
少子高齢化社会に役立つ介護ロボットのための触覚センサを開発しています。MEMS によ
る力センサと専用 LSI とを 1 つのチップに集積化することによってはじめて可能となる高
速・高精度センシング,割込み通信,少配線,小型,低消費電力などの特徴を併せ持つ触
覚センサ素子デバイスを開発しています。これを用いれば,ロボット体表面全体に数千,
数十万もの触覚センサ素子から成る高密度触覚が実現できます。図は集積化した触覚セン
サ素子デバイスの例です。上面の容量型 MEMS センサで力を検知し,その直下に接合され
ている LSI で信号処理した後に,その LSI の裏から伝送線路上に信号を送ることで,ロボ
ット表面に貼り付けることができます。専用の LSI を集積化していることで複雑な信号処
理,伝送処理を実現できます。MEMS と LSI のウェハレベル接合,MEMS センサ,LSI に
よる信号処理・伝送処理,ネットワークシステムそして実装などの領域で研究を進めてい
ます。材料,デバイスからシステムまで横断的・総合的な技術が必要な研究ですが,研究
室の総力を結集し,実際に動くセンサシステムを構築しました。トヨタ自動車株式会社,
株式会社豊田中央研究所と協力し,実際のロボットへの搭載を目指しています。
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可変 SAW(表面弾性波)フィルタ LSI 上に集積化した高周波 MEMS フィルタ
携帯電話に代表される無線情報通信機器に用いられる高周波 MEMS を研究しています。無
線情報通信の普及によって電波資源は逼迫しており,今後は幅広い周波数範囲から空いて
いる周波数帯域を認識・選択するコグニティブ無線システムが求められています。そのた
めに,MEMS 技術を駆使して,マルチバンド/チューナブルフィルタ(携帯電話等の電波
の周波数選択デバイス)や高周波 MEMS スイッチ(周波数切り替えデバイス)を LSI 上に
作製しています。また,無線機器をはじめあらゆる電子機器の周波数基準を提供するクロ
ック発振器の研究も行っています。これらの研究開発では国内の複数の大手電子部品企業
と共同し,実用化を目指しています。
燃料制御用マイクロバルブとそれを組み込んだ小形燃料電池システム
携帯電話,ノートパソコンなどの携帯情報機器向けに,マイクロ燃料電池,そのための材
料,マイクロ流体デバイスなどを研究しています。上図は小形直接メタノール燃料電池
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(DMFC)の燃料濃度を制御するマイクロバルブで,パナソニック電工と共同開発したもの
です。アクチュエータの発生力が小さいという MEMS の欠点を補うために,「圧力バランス
機構」を開発しました。このマイクロバルブを小形 DMFC に搭載して,発電試験も行いま
した。
表面弾性波を用いた受動無線温度センサ
配線を取り出し難い被測定体(たとえば回転するタイヤや旋盤),あるいは長期間のモニタ
リングが必要なシステムに取り付ける無線センサを研究しています。上図は表面弾性波を
利用する受動無線センサで,電池なしで動作します。同様の原理の圧力センサも企業と共
同で開発しました。
炭化珪素(SiC)の微細構造
腐蝕環境や高温環境で用いるマイクロシステムを,耐熱性,化学安定性,耐磨耗性などに
優れる炭化珪素(SiC)を材料にして実現することを目指しています。SiC はその優れた特
性ゆえに加工が難しいので,微細加工技術や製造装置の開発を行いながら,高温歪センサ,
耐腐食性真空センサ,ガラスプレスモールドなどを開発しています。左図は,SiC の選択成
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長技術によって作製した SiC のマイクロ振動センサ構造です。また,右図は,光ディスク
の読み取り部などに用いるマイクロ光学素子をプレス成型するための SiC 製の型(モール
ド)で,この技術は企業に移転されました。
ウェハレベルパッケージングされた MEMS 陽極接合できる LTCC 基板(新パッケージ
ング材料)
微細構造を有する MEMS は埃や水分に弱いため,小さな入れ物に入れ気密封止します。こ
れをパッケージングと言います。パッケージングは MEMS のコストの多くを占める手間の
かかるプロセスであるため,その低コスト化が必須です。また,機器の小形化に応えるた
め,パッケージングは益々小さくしていかなければなりません。これに対して,我々はウ
ェハ上で MEMS を一括してパッケージングするウェハレベルパッケージング技術の開発に
取り組み,陽極接合できる LTCC 基板(左図)をニッコー株式会社と共同で実用化しました。
横駆動 PZT アクチュエータ
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多層構造 PZT アクチュエータ
MEMS は動く微小機械であり,駆動力を発生するアクチュエータはその基本要素です。し
かし,微小世界で十分な駆動力を得ることは容易ではありません。様々なマイクロアクチ
ュエータがありますが,我々は高性能化の余地が大きい PZT アクチュエータの研究に取り
組んでいます。横方向 PZT アクチュエータや多層構造 PZT アクチュエータのような新構造
のアクチュエータの開発,また高性能 PZT 薄膜の形成技術の開発にも取り組んでいます。
このようなアクチュエータは,高周波信号を切り替えるマイクロスイッチやレーザーをス
キャンするマイクロミラーデバイスに応用されます。
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研究室の技術小史
静電容量型集積化圧力センサ
静電容量型真空センサ(キャノン・アネルバ)
静電容量型集積化圧力センサ
静電容量型圧力センサは,ダイヤフラムとそれに対向する電極との間の静電容量が,ダイ
ヤフラムの変形によって変わることを利用します。我々は,真空封止された圧力基準空間
からの電気配線取り出し法を工夫し,上図の静電容量型集積化圧力センサを豊田工機(現
JTEKT)と共同で実用化しました。また,キャノン・アネルバと共同で,静電容量型真空圧
力センサも実用化しました。
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マイクロ流路・マイクロバルブ・ISFET を集積化した血液検査チップ
松尾教授(江刺教授の先生)と江刺教授が開発した ISFET(Ion-Sensitive Field Effect Transistor)
は,pH センサとして様々なところで用いられています。上図は,マイクロ流路,マイクロ
バルブ,および ISFET を集積化した血液検査チップです。これは,江刺教授が開発し,ク
ラレと新電元が実用化した血管内 pH/pCO2モニタ用 ISFET センサにおいて,血管内ではセ
ンサを校正できないという問題を解決するために開発されました。昨今,このような医療
マイクロデバイスの研究は広がりを見せており,実用化が期待されています。
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電磁駆動 2 軸光スキャナ(日本信号)
光スキャナの用途には,共焦点顕微鏡,カテーテル先での OCT(Optical Coherence
Tomography),網膜ディスプレイ,携帯型レーザディスプレイなどがあります。我々は,日
本信号と共同で上図の電磁駆動光スキャナを開発し[31],現在,これは鉄道のホームドアの
障害物検知などに利用されています。
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振動ジャイロ(トヨタ自動車)
振動ジャイロは,構造体を一方向(x 方向)に振動させておき,これが回転すると,コリオ
リ力によって直行方向(y 方向)にも振動は発生する原理を用いた角速度センサです。我々
は,トヨタ自動車と共同で上図の振動ジャイロを開発し,現在,これはレクサスなどの車
体安定化システム(Vehicle Stability Control System)に用いられています。
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静電浮上回転ジャイロセンサ(東京計器)
東京計器と共同で開発した静電浮上回転ジャイロセンサは,直径 1 mm のシリコンリングを
6 軸フィードバック制御で静電浮上させ,7 万 rpm 以上で回転させることで,2 軸の角速度
と 3 軸の加速度を同時に計測します。これは,従来の振動ジャイロセンサと比べて桁違い
に高い性能を有しており,GPS や地図情報に頼らないナビゲーション,ロボットの姿勢制
御などへの応用が期待されています。
熱駆動型高周波 MEMS スイッチの構造
高周波 MEMS スイッチ(アドバンテスト)
高周波 MEMS スイッチ
MEMS スイッチは,機械的に接点を ON/OFF する超小形スイッチです。このようなスイッ
チでは,接点が汚染されたり酸化されたりしないように,内部を清浄な環境に真空/気密
封止することが重要です。我々は,貫通配線付きガラスウェハの陽極接合によって真空封
止された高周波 MEMS スイッチを開発し,アドバンテストはこれを LSI テスタ用に実用化
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しました。現在,この高周波 MEMS スイッチは仙台の同社工場で生産され,地域の産業振
興・雇用創出にも貢献しています。
陽極接合できる LTCC 基板
絶対圧センサ,ジャイロ,MEMS スイッチなどの多くの MEMS は,気密封止されています。
我々は,ニッコーと共同で,MEMS の気密封止に用いる陽極接合可能な LTCC(Low
Temperature Cofired Ceramic)基板を開発しました。従来からある積層セラミック基板の製造
工程で,貫通配線はもちろん,内部配線や受動素子を LTCC 基板内に作製できます。この
LTCC 基板による真空封止の高い信頼性は実証済みであり,MEMS の真空封止法の切り札と
して応用が広がっています。
超小形ガスタービンのロータ(2007 年)
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超小形ガスタービン発電機試作 1 号機(2012 年)
超小形ガスタービン発電機
2002 年頃から自立ロボットなどのために超小形ガスタービン発電機を研究し,IHI などと共
同で,2007 年,圧縮機翼車直径にして 16 mm という世界 小のガスタービンエンジンのサ
イ ク ル 成 立 を 達 成 し ま し た
(http://www.tohoku.ac.jp/japanese/press_release/pdf2007/20070808_gas.pdf)。
2012 年,IHI は上記成果を基に,携行型超小形ガスタービン発電機の試作機を完成させまし
た(http://www.ihi.co.jp/ihi/press/2011/2012-2-16/index.html)。直径約 8 cm×長さ 12 cm の本体
を含む全てのシステムがアタッシュケース内に納まっており,400 W の定格発電出力を有し
ます。既存のレシプロエンジン発電機と比べて静粛性や排気ガスのクリーン性に優れてお
り,室内で使ってもストレスになりません。