mfb回路の実験07...cv-1と基本は同じです.第6図の3...

3
スピーカ1コを固めてダミー として使う スピーカに関する認識が一歩進ん で単なる非繰越の抵抗からモーシ ョナル・インピーダシス+その他(直 流抵抗およびインタクタンス分)に変 わるだけで,アンフ歴の仕事は一度 に増えます. 今回は最近まで知らなかったこと の確認を真空管単段シングル・アン プとフル・レンジ・スピーカという 最小単位の素材で行ってみました. 以下の文中では, ①スピーカの全インピーダンス:Z。 ②モーショナル・インピーダンス :Zm(スピーカ側から見たもの) ③ボイスコイル・インピーダンス :Zv ④ボイスコイル直流抵抗:Rv ⑤ボイスコイルのインタクタンス分 :Z~ ⑥モーション速度:Ⅴ ⑦スピーカ駆動電流:I。 と記述します.現在の私の理解度は, Z。=Zm+Z, Z,=Rv+Zl V∝I。×Zm JAN.2003 12GN7Aシングルによ MFB回路の実験 ●ユニットを固めてダミーで使う 1右方のユニットはセンター・キャ ップをはずして撞唐剤でボイス・ コイルを固定した 野口 伸一 の3式がすべてで定電流駆動すれ ばZvの影響を受けずにZmを駆動 できるが,Zmのfo共振に対処でき ない.また,定電圧駆動すればf。共 振をかなり制動できるが,Zl≧Zmと なる帯域ではZmをリニアに駆動で きない,という程度です. 使用したスピーカは,中古品売買 の店で2個購入したフオステクスの 121K21(@170)という汎用の楕円 スピーカで1個のモーションを止 めてダミーとしました.モーション を止める作業は,センター・キャッ プをカットして瞬間接着剤をセンタ ー・ポールとボイス・コイルの間に しみ込ませるだけの簡単なものでし た.第1図が実測‘のZ。特性です. SP-1をDM-1(Z,)としました.Z, の部分は非可動なので;バラツキが 少ないようです. SP-2とDM-1を使用して,ブリ ッジ型MFBとその変形回路を試 50 40 30 20 10 0 しました.MFB動作の認識方法と しては,スピ「カ(SP-2)の端子間 電圧の周波数常陸が(DM-1)のイン ピーダンスの周波数特性と相似にな ればよし,とします.モーションを つぶし,かつ電流駆動した理想形と いうわけです. 12GN7A単段アンプ 高G.n管12GN7Aを使った 段シングル・アンプはシングル・ア ンプ・ファンには気になる存在で 過去に試された人も多いのではない かと推測します.今回はパワー・ア ンプとしては扱っていませんので, データは取りませんでしたが,単段 パワー・アンプとして十分に実用に なる力を持っていると感じました. 第2回が全回路図です.単段アンプ 2系列と電源部からなる単純なアン プですが,わかりづらいと思われる 点のみ補足します. 出力は7kQ負荷で3.5W出ま した.22Kと160Pによる高域減 衰回路はOPTのあばれ対策です. 常法のOPTl次または2次にC Rをだがせる方法では電流出力アン プの高域インピーダンスが下がって 使いものになりませんでした. i i S P 二1 ー営 SP - 2 ー- DM-1 i i i iii 1 i iii m S i i iii 10 100 †000 10000 1億m Hz 〈第1図〉 使用ユニット のインピーダ ンス特性 93

Upload: others

Post on 10-Jun-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: MFB回路の実験07...CV-1と基本は同じです.第6図の3 0の代わりにDM-1(Zv)を使って I。XZmのみを検出し,電圧負帰還し ています.fo付近ではZ,≒R,です

スピーカ1コを固めてダミー

として使う

スピーカに関する認識が一歩進ん

で単なる非繰越の抵抗からモーシ

ョナル・インピーダシス+その他(直

流抵抗およびインタクタンス分)に変

わるだけで,アンフ歴の仕事は一度

に増えます.

今回は最近まで知らなかったこと

の確認を真空管単段シングル・アン

プとフル・レンジ・スピーカという

最小単位の素材で行ってみました.

以下の文中では,

①スピーカの全インピーダンス:Z。

②モーショナル・インピーダンス

:Zm(スピーカ側から見たもの)

③ボイスコイル・インピーダンス

:Zv

④ボイスコイル直流抵抗:Rv

⑤ボイスコイルのインタクタンス分

:Z~

⑥モーション速度:Ⅴ

⑦スピーカ駆動電流:I。

と記述します.現在の私の理解度は,

Z。=Zm+Z,

Z,=Rv+Zl

V∝I。×Zm

JAN.2003

12GN7Aシングルによる

MFB回路の実験

●ユニットを固めてダミーで使う

1右方のユニットはセンター・キャ

ップをはずして撞唐剤でボイス・コイルを固定した

野口 伸一

の3式がすべてで定電流駆動すれ

ばZvの影響を受けずにZmを駆動

できるが,Zmのfo共振に対処でき

ない.また,定電圧駆動すればf。共

振をかなり制動できるが,Zl≧Zmと

なる帯域ではZmをリニアに駆動で

きない,という程度です.

使用したスピーカは,中古品売買

の店で2個購入したフオステクスの

121K21(@170)という汎用の楕円

スピーカで1個のモーションを止

めてダミーとしました.モーション

を止める作業は,センター・キャッ

プをカットして瞬間接着剤をセンタ

ー・ポールとボイス・コイルの間に

しみ込ませるだけの簡単なものでし

た.第1図が実測‘のZ。特性です.

SP-1をDM-1(Z,)としました.Z,

の部分は非可動なので;バラツキが

少ないようです.

SP-2とDM-1を使用して,ブリ

ッジ型MFBとその変形回路を試

50

40

30

20

10

0

しました.MFB動作の認識方法と

しては,スピ「カ(SP-2)の端子間

電圧の周波数常陸が(DM-1)のイン

ピーダンスの周波数特性と相似にな

ればよし,とします.モーションを

つぶし,かつ電流駆動した理想形と

いうわけです.

12GN7A単段アンプ

高G.n管12GN7Aを使った単段シングル・アンプはシングル・ア

ンプ・ファンには気になる存在で

過去に試された人も多いのではない

かと推測します.今回はパワー・ア

ンプとしては扱っていませんので,

データは取りませんでしたが,単段

パワー・アンプとして十分に実用に

なる力を持っていると感じました.

第2回が全回路図です.単段アンプ

2系列と電源部からなる単純なアン

プですが,わかりづらいと思われる

点のみ補足します.

出力は7kQ負荷で3.5W出ま

した.22Kと160Pによる高域減

衰回路はOPTのあばれ対策です.

常法のOPTl次または2次にC

Rをだがせる方法では電流出力アン

プの高域インピーダンスが下がって

使いものになりませんでした.

i  i

S P 二1 ー営

一  一  S P -2 ○ー - D M -1 ○

ii  i i i i 1i  ) i i im S

i  i i i i

10       100      †000     10000    1億m

Hz

〈第1図〉使用ユニットのインピーダ

ンス特性

93

Page 2: MFB回路の実験07...CV-1と基本は同じです.第6図の3 0の代わりにDM-1(Zv)を使って I。XZmのみを検出し,電圧負帰還し ています.fo付近ではZ,≒R,です

K:4-・16il  3tl

橿 ’’に

RL

も品3菰Ec2 Ebb

●CV-1アンプゲイン1.2/8il

〈第6図〉証アンプCV-1

7 K :4 -・16 0

コ ▲ ▲R L

b 請 3訃

Ec2 Ebb

●CV-2アンプ:ゲイン1.1/80

〈第8図〉電圧アンプCVセi

OPT2次巻線の中点タップは便利

です.電流アンプではOPTに泣か

され,電圧アンプでは楽させてもら

った,という次第です.以上の4種

のアンプを組み合わせて実験を行い

ました.

(1)電流アンプ+MFB

Z,の影響を受けずにZmの制動

をする代表的な方式です(第9図).

見てお気づきだと思いますが,Rkを

除けばcc-1というよりも第6図の

CV-1と基本は同じです.第6図の3

0の代わりにDM-1(Zv)を使って

I。XZmのみを検出し,電圧負帰還し

ています.fo付近ではZ,≒R,です

から,完全な電圧アンプです.

(2)仮想MFB電流アンプ+MFBの回路構成

が,電流アンプと電圧アンプの併用

というか,住み分けのようなものと

気付いてできた回路(第10図)です.

帰還回路を使わなくても同等の効果

が得られるのでこう名付けました.

第11回は500HzをOdBとして

MFB動作の確認をしたもので,

cc-1+MFB(やや負性インピーダン

ス制動ぎみです),仮想MFBともに

JAN.2003

〈第7図〉CV-1の出力イン

ピーダンス特憧 ol

0

-1

-210       100

ほぼ予定どおりとなりました.写真

A Bは,Z,(Zl)の影響をキャンセ

ルせずに電圧ドライブすると,高域

のスピーカ駆動電流がナマることを

示しています.

この仮想MFBは任意のパワー・

アンプ(電流,電圧および負性インピー

ダンス)が使用でき,電流アンプでな

ければタメだといわれて,いまのア

ンプはどうするんだと悩む必要があ

りません.Z,の影響をキャンセルす

るプリアンプを作ったわけです.

ところで電流アンプには,Zvの

影響を受けないという以上の(電圧

アンプに対する)優位性があるのでし

ょうか.

D M -1

5 1Q  E c z

E b b

S P -2

〈第9図〉cc-1+MFB回路

●cc-2アンプ

1000    10000   †00(東関

(3)負性インピーダンスによる制

動回路

これはスピーカ121K21のQ。

(Q。)が1.6もあることから,やって

みることになった予定外の実験で

す.わたくしは,いままでスピーカ

の端子間電圧がfo付近でフラット

なら制動は効いており,音圧常陸に

ピークは出ないと思っていました

カキ汎闇スピーカのおかげでまちが

いぼ気が付いたわけです.

思いきってZmの完全制動を目指

すこととなりま.した弗かなりの電

流正帰還を安定にかける必要があ

り,しかも特性のよくない基本アン

プを使用するために回路構成に苦心

しました.原理的には(1)電流アン

プ+MFBでも可能なのですが….

第12図がその回路で負荷その

ものが帰還素子となった低インピー

ダンス帰還回路です.A=2℃ Zm

が小さくなる高域では発振しますの

で,A<2の50%帰還回路を基本ア

ンプに使用しました.変な回路です

●CV-1アンプ

7 K :16fl D M -1 7K :4-16fl

E c2 E b

3 0

N  ここ= Ec2 E b

千 言7

  B

b

S P-2

I RD35A

一一◎    +A  正Io

rO

DM-1=ZV

SP-1=Zv+Zm

8D35A

CVアンプのroと同じ抵抗をダミー

とシリーズにすると,

I(ro+Zv)A

・rO+Zv≫Zmとなる中高域では

loeIA……電流駆動となる

・あ付近ではroによって制動される

〈第10図〉帰還回路を使わない仮想MFB回路

95

Page 3: MFB回路の実験07...CV-1と基本は同じです.第6図の3 0の代わりにDM-1(Zv)を使って I。XZmのみを検出し,電圧負帰還し ています.fo付近ではZ,≒R,です

5

0

 

5

 

0

 

5

 

0

 

5

 

1

l

 

調で

i 川i

M FBD M -1 -

cc-lii

M 1 i1000     10000   10000O

Hz

〈第111図〉CCl+MFB

と仮想MFB

の周波数特性

7 K:4・-16 Q 4-16 0 :7K

E C2 E bb

  [

E bb E c2

∠ = ゝ ∠ 二 、

D M -l S P-2

R D 35 A   ●C V -2ア /プ ×2    R D 3 5A

∩ + A  rO z量 O  rO     +A

D M -l   S P -2

VlnA(A-1)

Zm+(2-A)(Zv+ro)

〈第12図〉

負性インピーダンス制動回路

A=2のとき:Io=2Vin/Zm→IoZm=2Vin∝速度V

が,純粋に回路を愉しむという観点

では今回の製作中いちばんでした.

まともな高性能非反転電圧アンプを

使用するなら,入力直列の電流正帰

還で簡単に実験できるでしょう.

第13,14図がスピーカ端子間電

圧の測定結果です.いまのところわ

たくし自身,動作がうまくいったと

きの端子間電圧を推定できないレベ

ルなので確信はありませんが,ス

12

10

8

準 6

4

2

0

0

5

0

5

0

2

np

ピーカのZ。特性をひっくり返した

ようなゲイン特性になっており,負

性インピーダンス制動にまちがいは

ないようです.f。付近での出力イン

ピーダンスはほぼ-Zv(≒-Rv)n

を達成しています.Zmが全域で定電

圧駆動されていればf。からゲイン

が二直線に右肩上がりになるはずで

すが…・・・

電流検出にDM-1と8mを便っ

i i i i i

i○ ヽ

、iヽ ,ヽ

○ ヽl 8 li

i i iしm e ○○1

i i 【

10      100     1000    10000   10強調O

Hz

」 i 1i i

DM-1! SP-2

i l )

i89ii

10  100 1紺 10000 書償調

96

〈第13図〉負性インピーダンス制動時の利得特性

〈第14図〉

負性インピー

ダンス制動の利得とスピー

カのインピーダンス

〈写真A〉仮想MFBの10kHz出力波形.上:SP-2+10間,下:1(1端子電圧.高域での駆動亀流が減衰しない

鰐:真B〉簡圧駆動時の出力波形

だ比較では,高域のゲインに大きな

差が出ています.普通の負性インピ

ーダンス駆動が高域ではひずみが多

くなって使いものにならない,とい

うことも確認できました.この回路

をものにできるのは帰還回路の熟達

者,あるいはそれを目指す挑戦者で

しょうか.オーディオ帯域Ⅴ一定

(=Zmの完全制動)が目標ですが,加

速度一定とするために右肩上がりの

入力信号が必要となるでしょう.わ

たくしはとりあえずこれで退散する

iことはしました.

実験後のアンプは,仮想MFB用

の電流出力プリアンプとして改良を

加え,完成させたいと思います.

平均出力100mV程度のかわい

い実験でも,MFB周辺回路とスピ

ーカの挙動を理解するにはずいぶん

と役に立ちました相手を知ろうと

もせず,た糊さえ込むだけではや

はりうまくいかないようです.もっ

と知れば押さえ込む必要もなくなる

かもしれません.

ラ ジオ技術