mizuho-topics-2020-6 06176 マンスリーウォッチャー...

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トピックス1 下期に大型取引が増加、前年度を上回り通期で 約4兆5千億円に ~2019年度の国内不動産の売買実績~ ����� 2 トピックス2 東京圏の中古マンション市場における価格と物件属性 ~住戸面積や築年数よりも利便性重視の傾向が強まる~ ������������������������ 6 マンスリーウォッチャー 東京都における分譲マンション竣工戸数と 中古マンション取引件数 ������������� 8 2020 6 June

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Page 1: mizuho-topics-2020-6 06176 マンスリーウォッチャー 東京都における分譲マンション竣工戸数と 中古マンション取引件数 8 20206 June 2 u 2020 みずほ信託銀行

トピックス1 下期に大型取引が増加、前年度を上回り通期で�約4兆5千億円に�~2019年度の国内不動産の売買実績~� �����2

トピックス2 東京圏の中古マンション市場における価格と物件属性~住戸面積や築年数よりも利便性重視の傾向が強まる~�������������������������6

マンスリーウォッチャー東京都における分譲マンション竣工戸数と�中古マンション取引件数��������������8

2020

6June

Page 2: mizuho-topics-2020-6 06176 マンスリーウォッチャー 東京都における分譲マンション竣工戸数と 中古マンション取引件数 8 20206 June 2 u 2020 みずほ信託銀行

2 June, 2020 みずほ信託銀行 不動産トピックス

下期に大型取引が増加、前年度を上回り通期で約 4兆 5千億円に~ 2019 年度の国内不動産の売買実績~

2019年度(2019年4月~2020年3月)に公表された、主に法人による国内不動産の売買取引額※1

は、前年度比24.5%増加して総額4兆4,843億円でした。取引1件での売買額※2が100億円以上となる大規模な取引(以下、大型取引という。複数物件の一括売買を含む。)の総額が増加したことが寄与しており、大型取引が占める割合は年度通期(金額ベース)で65.4%、下期(同)は71.9%に上ります。売買市場で大型取引の存在感が高まった状況を受け、本稿は大型取引を切り口にして売買実績を概括します。

前年度比で売買総額が 24.5%増加。大型取引の構成比は下期 7 割に上昇

[図表1-1]下期に急伸し、年度通期の不動産売買総額は約4兆5千億円に

[図表1-2]大型取引が総額の過半を占める

年度下期に売買額が増加。世界金融危機後3 位となる実績で、通期の総額を押し上げ2019年度に売買当事者の情報開示や報道な

どによって公表された国内不動産の売買総額は4兆4,843億円(以下、億円単位で記載。「約」の表記は省略。)でした。上期(2019年4月~9月)は1兆7,242億円で前年同期比微減でしたが、下期(2019年10月~2020年3月)は世界金融危機後、半期単位で第3位となる2兆7,601億円で、同49.7%増でした[図表1-1]。売買の総件数は、上期が2014年度以降減少傾向で推移、下期も直近の2年度は400件台にとどまりました。市場では売買対象となる物件の品薄化がいわれており、売買件数の減少にその一端がうかがえます。

図表1-1、1-2のデータ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

大型取引の割合は上昇傾向で、2019 年度下期は売買総額の 7 割の構成比2019年度の売買実績の特徴として、大型取

引の増加が挙げられます[図表1-2]。上期の大型取引は9,457億円で前年同期を7.1%下回りましたが、下期は前年同期を102.9%上回って2兆円に迫り(1兆9,854億円)、半期単位でみて世界金融危機後の最高額でした。この結果、年度通期で大型取引の総額が2兆9,311億円(前年同期比46.8%増)となりました。大型取引の増加に伴い、売買総額に占める割合が高まっており、2019年度下期は71.9%が大型取引によるものでした。その割合は2012年度以降長期的には上昇傾向で、売買市場で大型取引の存在感が高まっています。

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2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

各年度に公表された国内不動産の売買総額と総件数

金額(上期) 金額(下期) 件数(上期) 件数(下期)

(金額:兆円) (件数:件)

(年度)▲サブプライムローン問題表面化▲サブプライムローン問題表面化

▲世界金融危機▲世界金融危機

▲東日本大震災▲東日本大震災▲第2次安倍内閣発足▲第2次安倍内閣発足新型コロナウイルスの感染拡大▲新型コロナウイルスの感染拡大▲

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2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

上期100億円未満 上期100億円以上 下期100億円未満 下期100億円以上下期の100億円以上の取引割合 通期の100億円以上の取引割合

(金額:兆円) (割合:%)取引1件あたりの価格ランク別にみた売買総額の推移

(年度)

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2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

対前年度増減率

(年度)

(%)

金額 件数

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3みずほ信託銀行 不動産トピックス � June,�2020

大型取引の売却額・取得額とも外資系が増加。外資間売買は年度で 1 兆 1 千億円に

[図表1-3]�外資系法人による大型売却が増加

[図表1-4]�取得も外資系法人の増加が顕著 [図表1-6]米中シンガポール3か国の売却急伸

[図表1-5]�外資系法人相互の大型取引が増加 [図表1-7]米国の法人による取得が7千億円超

外資系法人による大型取引が増加

大型取引における売主を外資系法人※3と日本の企業や団体等(以下、国内法人という。)に分けてその売却額を集計すると、金融緩和等の経済財政政策の効果などで不動産市況が復調に転じた2012年度下期以降、外資系法人による大型売却が顕著となり※4、続いて外資系売主の金額割合が上昇しています[図表1-3]。住宅などの複数一括売却が複数件あった2017年度上期と2019年度下期は、大型売却の過半が外資系法人によるものでした。大型取引における買主の動向も売主の場合と類似しています[図表1-4]。円安が進んだ2014

図表1-3〜 1-7のデータ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

年度に外資系法人による取得額の増加が顕著※5

となりました。2017年度上期と2019年度下期は、大型取得の過半が外資系法人によるものでした。大型取引の売主と買主の関係別に売買額

を集計すると[図表1-5]、スポンサーが系列のJ-REITに大型物件を譲渡したなどにより、国内法人間の売買がこれまで最多ですが、長期的には2014年度以降減少傾向です。2019年度下期は、中国の安邦保険集団から米国のブラックストーン・グループが賃貸住宅220棟のポートフォリオを取得するなどで合計9,105億円の外資間売買があり、国内法人間の売買額を上回りました。

売買とも、米国系法人が大型取引の主力

法人の本拠地である国・地域別に外資系法人による大型取引を集計すると、売買共にファンドの運用会社を中心に米国が主力です[図表1-6、1-7]。2019年度下期は、前述の賃貸住宅ポートフォリオなど大型取引で米国系が総額7,200億円を取得しました。当該取引事例の売主は中国の金融グループで、2019年度下期の中国系による大型売却額を押し上げました。また、シンガポールの法人による大型売却が急増したことも当期の特徴の一つでした。

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上 下 上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

外資系法人 国内法人 外資系法人が占める割合

(兆円)

(年度)(期)

(割合:%)1件100億円以上の不動産売却における売主本拠地別・売却総額

▲サブプライムローン問題表面化▲サブプライムローン問題表面化

▲世界金融危機▲世界金融危機

▲東日本大震災▲東日本大震災

▲第2次安倍内閣発足▲第2次安倍内閣発足

新型コロナウイルスの感染拡大▲新型コロナウイルスの感染拡大▲

上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

外資系法人 国内法人 外資系法人が占める割合

(兆円)

(年度)(期)

(割合:%)1件100億円以上の不動産購入における買主本拠地別・取得総額

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0.00.20.40.60.81.01.21.41.61.82.0

▲第2次安倍内閣発足▲第2次安倍内閣発足

▲世界金融危機▲世界金融危機 新型コロナウイルスの感染拡大▲新型コロナウイルスの感染拡大▲

▲東日本大震災▲東日本大震災▲サブプライムローン問題表面化▲サブプライムローン問題表面化

上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19(年度)

(期)

売主法人の所在地別にみた1件100億円以上の不動産売却総額

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米国 シンガポール 香港 中国 英国 独 豪

(億円)

2007年度以降で合計1,000億円以上の売却が把握できた7か国・地域を表示

上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

(兆円)

(年度)(期)

1件100億円以上の不動産売買における売主と買主の関係別売買額

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外資→外資 外資→国内 国内→外資 国内→国内

上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19(年度)

(期)

買主法人の所在地別にみた1件100億円以上の不動産取得総額(億円)

2007年度以降で合計1,000億円以上の取得が把握できた7か国・地域を表示

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米国 シンガポール 香港 中国 独 ノルウェー 韓国

米国7,200億円

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4 June, 2020 みずほ信託銀行 不動産トピックス

複数一括での大型取引が増加。系列外取引が約 8 割を占め、浮動的な市場構造に大型取引のうち単独物件の売買額が最多だが、複数一括売買が追い上げ大型取引のうち多数を占める取引タイプは、1

つの取引で売買される物件が1物件のもの(図表1-8と1-9で単独物件と表記。)で、2019年度はこの単独・大型取引の実績が1兆9,230億円でした[図表1-8]。単独・大型取引の総額の推移は100億円未満の売買総額と近似しており、不動産売買市場の動静を反映したものとみられます。2014年度以降、長期的には横ばいか微減傾向で推移しています。一方、最近の大型取引で増加した取引タイプ

が、前述した住宅ポートフォリオ等の複数物件の一括売買です。複数一括売買による大型取引は2019年度に1兆81億円で、2013年度の2,237億円から4.5倍に増加しました。J-REIT・私募REITの組成や増資に係る一括取得に加えて、海外の政府系投資ファンドや不動産ファンドなどの大規模資金による一括取得が顕著で、ここ数年は、取得した物件ポートフォリオを再売却する事例もみられます。こうした散発的な要因含みで、複数一括売買による大型取引が増加しています。なお、取引1件での売買額が100億円未満の取引(以下、大型未満という。)では、複数一括

売買による取引額は僅かで、単独物件の取引が大多数を占めます[図表1-9]。

複数一括売買による大型取引では、 系列法人間の売買の割合が相対的に小さい大型取引における複数一括売買では、例え

ばスポンサーからREITへの物件譲渡などの系列間取引※6があります。しかし、最近の傾向では資本関係がない外資系法人間の取引増加が顕著で、こうした浮動的な取引関係の増加が大型取引の売買総額の揺れに繋がっているとみられます。直近3か年の複数一括売買による大型取引を系列間取引か否かで区分して集計すると[図表1-10]、売買額が大きかった2017年度と2019年度では系列間取引の割合は20%前後にとどまりました。同じ大型取引でも単独物件の売買では系列間取引の割合が30%程度あり、売買総額の揺れも相対的に小さなものとなっています[図表1-11]。

概ね首位であったオフィスビルの売買総額を2019 年度下期は物流施設と住宅が逆転大型取引の売買総額を物件の用途別に集計

すると[図表1-12]、2007年度以降ほぼ一貫してオフィスビルが最多です。単独の大規模ビル売買や複数一括でのオフィスビルの売買が多く、これらが反映されています。また、時期によっては

[図表1-11]�単独物件の大型取引は系列間が3割[図表1-9]�1件100億円未満では一括売買は僅か

[図表1-10]�複数一括の大型取引は系列外中心[図表1-8]�大型取引の中心は単独物件の売買

図表1-8〜 1-11のデータ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

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2017 2018 2019

系列間 系列外 系列間取引の割合

(売買額:兆円) (割合:%)

(年度)

1件100億円以上の単独物件の売買における系列間と系列外取引

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総合計(左軸) 単独物件で100億円未満複数一括で総額100億円未満 100億円以上

(折線/属性別売買額:兆円)(縦棒/総合計:兆円)

(年度)

取引タイプ(単独・一括)別にみた100億円未満の売買の推移

2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

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2017 2018 2019

系列間 系列外 系列間取引の割合

(売買額:兆円) (割合:%)

(年度)

1件100億円以上の複数一括売買における系列間と系列外取引

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総合計(左軸) 単独物件で100億円以上複数一括で総額100億円以上 100億円未満

(折線/属性別売買額:兆円)(縦棒/総合計:兆円)

(年度)

取引タイプ(単独・一括)別にみた100億円以上の売買の推移

2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

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5みずほ信託銀行 不動産トピックス � June,�2020

コロナショック後の不動産売買市場の見通し2020年4月の不動産売買実績は前年同月から77.9%減少して889億円、5月は同じく87.3%の減少で500億円でした。移動制約や活動自粛で物件実査や売買交渉、意思決定が滞ったこと、市況の先行き不透明感から様子見姿勢が強まったことが背景とみられます。今後も、テナント企業

の業況・財務状態やBCM(事業継続管理)強化による不動産需要の変化、資金調達環境の変化等によって、売買市場が大きく変動する可能性があります。� (以上、都市未来総合研究所 平山�重雄)

住宅や物流施設、商業施設などの複数一括売買があり、これらの用途の売買額が増加しました。2019年度下期は、複数物件の一括売買等で物流施設と住宅の売買額がそれぞれ5千億円を超え、オフィスビルの売買総額を上回りました。大型未満の取引では[図表1-13]、必ずしもオ

フィスビル中心の構成ではなく、オフィスビルの売買総額が商業施設や土地(更地・開発用地等)、

住宅等と拮抗する状況です。

東京圏の物件の売買額割合は低下傾向

物件の所在地域別では、大型取引も大型未満もともに東京圏の物件が金額最多でした�[図表1-14、1-15]。しかし、総額に占める東京圏の割合は低下傾向が続いており、2019年度はおよそ60%でした。

[図表1-12]�2019年度下期、物流と住宅が急伸 [図表1-15]�大型未満でも東京圏の割合低下

[図表1-13]�1件100億円未満は各用途拮抗

[図表1-14]�大型取引で東京圏の割合が大幅低下

図表1-12〜 1-15のデータ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

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上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

オフィスビル 商業施設 物流施設更地・開発用地等 住宅 ホテル

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その他の用途と用途不明は除いて図示した。

(年度)(期)

1件100億円以上の売買における物件用途別取引総額

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上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

東京圏 大阪圏 名古屋圏 その他の地域 東京圏が占める割合

(億円)

所在地不明と一括売買で所在地特定不能の取引は除いて図示した。

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(割合:%)1件100億円未満の売買における物件所在地別取引総額

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オフィスビル 商業施設物流施設

更地・開発用地等住宅 ホテル

(億円)

その他の用途と用途不明は除いて図示した。

(年度)(期)

1件100億円未満の売買における物件用途別取引総額

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上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下上下2007 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

東京圏 大阪圏 名古屋圏 その他の地域 東京圏が占める割合

(億円)

所在地不明と一括売買で所在地特定不能の取引は除いて図示した。

(年度)(期)

(割合:%)1件100億円以上の売買における物件所在地別取引総額

※ 1:本稿の不動産売買取引に係る実績データは都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」による。不動産売買実態調査は、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(適時開示規則)」に基づき東京証券取引所に開示された固定資産の譲渡または取得などに関する情報や、新聞などで報道された情報から、譲渡・取得した土地・建物の売主や買主、所在地、面積、売却額、譲渡損益、売却理由などについてデータの集計・分析を行うもの。情報公表後の追加・変更等に基づいて既存データの更新を適宜行っており、過日または後日の公表値と相違する場合がある。また、本集計では、海外所在の物件は除外した。金額は報道機関等による推計額を含む。数値化のため、「約」などの概数表記を省いたものや範囲表記の中間値を採用したものなど、報道された値を修正したものを含む。

※ 2:開示情報や報道記事の記載に基づく。※ 3:2017 年度は外資系法人などによる大型取引が多数あり、売

買総業種セクターの分類と内訳は下表のとおり。※ 4:不動産価格の上昇気配が強まったことなどで、世界金融危

機後に売却を保留した投資物件の売却の動きが生じた。※ 5:例えば 1ドル= 100 円から 120 円に円安が進むと、同額の

ドル支出で 2割多くの円資産を取得できることになる。※ 6:スポンサーと J-REITや親子会社など、明らかな関係者間取

引に限って系列間取引とし、関係不明は系列外取引とした。分類 内訳

国内法人等

J-REIT J-REITSPC・ 私募 REIT 等 SPC、 私募 REIT 等。外資系法人に分類されるものは除く。不動産・建設 不動産業、建設業

一般事業法人等

製造業 素材型、 組立加工型、 その他運輸 ・通信 陸運、 海運、 空運、 倉庫 ・運輸、 通信商業 小売業、 卸売業金融 ・保険 銀行、 保険、 証券 ・商品先物、 その他金融サービス 電気 ・ガス、 サービスその他事業法人 水産 ・農林、 鉱業、 医薬品等

公共等 ・その他 公共、 公共等、 その他法人、 インフラファンド、個人

外資系法人海外の企業、 ファンド、 REIT 等で、これらが出資する特定目的会社等のSPCを含む(日本の証券取引所に上場している(いた)法人は除く。)。不動産売買が公表された海外の個人を含む。

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6 June, 2020 みずほ信託銀行 不動産トピックス

東京圏の中古マンション市場における価格と物件属性~住戸面積や築年数よりも利便性重視の傾向が強まる~東京圏のマンション市場では中古マンションの成約件数が新築マンションの供給戸数を上回る状況

が続き、中古シフトが定着しています。本稿では東京圏の中古マンション市場における成約物件(以下、単に成約物件という。)の価格と物件属性(住戸面積、築年、立地)の変化を概観しました。

東京圏では、新築マンションの供給戸数が2014�年の消費増税の反動減となった以降、減少基調で推移しているのに対し、中古マンションの成約件数は2014�年を底に増加もしくは横ばいで推移し、2016�年以降4年連続して新築マンションの供給戸数を上回っています[図表2-1]※1。なお、直近の2020年3月は成約件数が前年同月比11.5%減となり、消費増税と大型台風の影響が重なった2019年10月の10.5%減を下回る大幅減

以下に示すように成約物件の価格※2は高額化が目立っています。他方、物件属性※2に関しては、成約物件の住戸面積には大きな変化がなく、築古化が進む中、都心へのアクセスや最寄り駅へのアクセスが重視される利便性重視の傾向が強まっています。利便性の良い立地のマンション単価は相対的に高いため、総括すると、住戸面積や築年数よりも利便性重視の傾向が強まっていることが、価格の高額化の一因になっていると捉えられます。なお、今後、テレワークが浸透すると都心アク

[図表 2-1]東京圏の中古マンションの新規登録件数・成約件数と新築マンション供給戸数

データ出所:�公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」(各号)、株式会社不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向」(各号)

東京圏のマンション市場は 4 年連続で中古の成約件数が新築の供給戸数を上回る

成約物件の価格の高額化は利便性重視の傾向が強まったことが一因

となりました。新型コロナウイルス感染拡大による流通各社の営業活動の縮小や景気先行き不透明感の増大による購入マインドの低下が一因と考えられ、今後の動向に注視が必要です。

セス重視の傾向が弱まる可能性があります。成約価格はボリュームゾーンの価格帯が 上方へシフト。高価格帯も増加成約物件の価格は3,000万円未満の価格帯の構成割合が減少し、2019年には5割を下回りました[図表2-2]。代わって、3,000~5,000万円、5,000~7,000万円の価格帯の構成割合が増加し、両者を合わせて4割強を占め、ボリュームゾーンの価格が上方へシフトしています。また、絶対数は少ないものの、7,000万円~1億円、1億円以上の高価格帯も成約件数が大幅に増加しており、

※1:新築マンションは供給戸数のため、実際に成約した戸数はこれよりも少なく、中古マンションの成約件数は仲介業者等が公益財団法人東日本不動産流通機構に成約報告した物件だけを集計した数値のため、実際に成約した件数はこれよりも多いと考えられ、成約ベースでの中古シフトは数値の単純比較以上に進んでいると考えられる。なお、両指標による市場規模比較は国土交通省「土地白書」や大手仲介会社などでも用いられている。

(注)本稿は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が本格化する前のデータ(最新 2020 年 3 月)を使用した考察です。

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120,000

140,000

160,000

180,000

200,000

220,000

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

100,000

110,000(分譲供給戸数、中古成約件数) (中古新規登録件数)

(年)1998 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19

分譲マンション供給戸数(戸) 中古マンション成約件数(件) 中古マンション新規登録件数(件)

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7みずほ信託銀行 不動産トピックス � June,�2020

成約価格は総じて高価格帯にシフトしています。築年数は築浅物件の割合が低下し、 築古物件の割合が上昇成約物件の築年数については、築浅物件(~築10年)の構成割合の低下と築古物件(築31年~)の構成割合の上昇が顕著です[図表2-3]。平均築年数は2010年の17.57年から2018年は21.00年と3.43年上昇しています。

専有面積は大きな変化なし。50~80㎡が6 割前後成約物件の専有面積の構成割合は大きな変化が見られず、50~80㎡が6割前後を占め、50㎡未満、80㎡以上がそれぞれ2割前後の状況が

[図表 2-2]価格帯別の成約件数(左図)と構成割合(右図)

[図表 2-3]築年帯別の成約件数の構成割合

[図表 2-4]専有面積帯別の成約件数の構成割合

[図表 2-5]�東京駅を起点とした距離圏別の�成約件数の構成割合 

[図表 2-6]�最寄駅からの時間別の成約件数の�構成割合

図表2-2〜2-6のデータ出所:�公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」(各号)および「年報マーケットウォッチ2018年・年度」

続いています[図表2-4]。立地は都心へのアクセスや最寄り駅への アクセスが重視される傾向が強まる成約物件の立地に関し、都心からの距離(東京駅を中心とした距離)は、10�km圏内と11~20km圏の構成割合が増加し、2018年は両者をあわせた構成割合が51.6%となり2010年の45.1%から6.5%pt上昇しています[図表2-5]。また、最寄り駅へのアクセスは、徒歩10分以内の構成割合が増加し、約7割を占め、都心へのアクセスや最寄り駅へのアクセスが重視される傾向が強まっています[図表2-6]。

(都市未来総合研究所 湯目健一郎)※ 2:最新公表値は価格が 2019 年、築年、専有面積および立地

関連が 2018 年(または年度。本文では年で統一して表記)。後者 3指標は 3時点の数値のみ表示�

(件数)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000成約件数

~3000万円 3000~5000万円 5000~7000万円7000~1億円 1億円~

2010 11 12 13 14 15 16 17 18 19(年) 2010 11 12 13 14 15 16 17 18 19(年)

(%)

~3000万円 3000~5000万円 5000~7000万円7000~1億円 1億円~

0102030405060708090100

成約件数の構成割合

(%)

(年)14

15

16

17

18

19

20

21

22

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2010 2014 2018

平均築年数

~築10年

築11~20年

築21~30年

築31年~

(平均築年数)

0

10

20

30

40

50

60

70

2010 2014 2018

50㎡未満

50~80㎡

80㎡以上

(%)

(年度)

(%)

(年度)0

5

10

15

20

25

30

2010 2014 2018*距離は、東京駅を起点とした各物件の最寄駅までの鉄道路線最短距離

~10km

11~20km

21~30km

31~40km

41~50km

51km~

(%)

(年度)0

10

20

30

40

50

60

70

80

2010 2014 2018

徒歩10分以内

11~20分以内

21分以上またはバス便

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■本レポートに関するお問い合わせ先■みずほ信託銀行株式会社 不動産業務部 大畑 善郎  TEL.03-3274-9079(代表)株式会社都市未来総合研究所 研究部 清水 卓、秋田 寛子 TEL.03-3273-1432(代表)

不動産トピックス 2020.6発  行 みずほ信託銀行株式会社 不動産業務部 〒 103-8670 東京都中央区八重洲 1-2-1 http://www.mizuho-tb.co.jp/編集協力 株式会社都市未来総合研究所 〒 103-0027 東京都中央区日本橋 2-3-4�日本橋プラザビル 11 階 http://www.tmri.co.jp/

東京都における分譲マンション竣工戸数と中古マンション取引件数東京カンテイのデータによると、東京都における分譲マンション※1のストック戸数は首都圏※2全体の50%にあたる190万戸(2019年末時点)です。年別の竣工戸数は、2005年をピークとし直近にかけて減少傾向です[図表3-1]。また、1993年前後と2010~ 2011年での竣工戸数の落ち込みは、前者は平成バブルの崩壊の影響、後者は世界金融危機等の影響と考えられます。国土交通省が公表している不動産取引価格情報を用いて、2017年と2018年と2019年の売買取引デー

タごとに竣工年別に整理した東京都における中古マンション※3の取引件数指数※4と年別の竣工戸数と比較すると、いずれの年の取引件数指数も1990~ 2012年までに竣工した中古マンションでは、上述した竣工戸数の落ち込みの時期を含めて年別の竣工戸数とほぼ同じような増減傾向です�[図表3-1]。なお、新築マンションの取得後間もない期間は、転売目的での取得ではすぐに売却されたり、新築在庫を中古として処分することなどがあるものの、住居として取得した場合では売却数は通常限られます。こうしたことから、築5年※5以内の中古マンションの取引件数指数は、いずれの取引年のデータにおいても全体的に少なく、築1年から築2年までは大きく変動する動きを示しています。

(以上、都市未来総合研究所 仲谷�光司)

[図表 3-1]分譲マンションの年別の竣工戸数と 2017~2019 年の中古マンションの取引件数

データ出所�国土交通省「不動産取引価格情報」、株式会社東京カンテイ「Kantei�eye」

※ 1:分譲の中古マンション※ 2:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県※ 3:不動産取引価格情報では、「中古マンション等」に区分されるものには、競売など特殊な事情による取引やマンション一棟

の取引が含まれているため、本稿では「取引の事情等」が空欄かつ「面積」が 300㎡未満の売買取引を抽出した。※ 4:データ項目にある「建築年」を竣工年とし、1990 年に竣工した中古マンションの取引件数を 100 とする指数※ 5:取引年を基準とし築年数を表した。例えば、2019 年の取引データでは、2019 年に竣工したマンションは築 1年とした。

0

1

2

3

4

5

6

7

8

0

50

100

150

200

250

300

350

400

竣工戸数(右軸) 2017年取引件数指数 2018年取引件数指数 2019年取引件数指数

竣工年

取引件数指数(1990年竣工分=100) 竣工戸数(万件)

1990 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19