mortarity po zoo nh odu - 農林水産省ホームページ 4 pom phy dom zoo bottom do odu...
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195
15.数値解析の活用(播磨灘)
15.1目的
別編にて播磨灘を対象海域とした HSI モデルが構築されたが、環境観測データが乏しい
海域においては HSI分布を作成することは難しい。ここでは観測データが乏しい海域で数
値解析結果を有効に活用し、HSI モデルの精度向上を図ることを目的とする。なお、用い
る流動モデルは播磨灘を対象海域とした前章のモデルと同一である。
15.2 数値解析の活用例(低次生態系モデル)
(1)低次生産モデルの概要
浮遊系の低次生産は、窒素循環の KKYSモデル(Kamiyamaら、1995)をベースに、リンの
コンパートメントを追加したモデルを使用する。栄養塩の開境界条件は、中山ら(2009)
と同様に水温の関数として付与する。
Gra
zin
g
Mo
rtar
ity
Mo
rtar
ity
Ex
cret
ion
Decomposition
Remineralization
Nit
irif
i-ca
tio
n
Sinking
NO3
NH4
PO4
POM
PHY
DOM
ZOO
Bottom
DO
ODU
Oxidation
Extracellular Excretion
Respiration
Photosynthesis
Reaeration
図-15.2.1 浮遊系低次生態系モデルの概要
196
(2)結果 1:低次生態系モデルの再現性について
浮遊系低次生態系モデルの再現性の検証は中山ら(2009)によって行われている。図
-15.2.2にその一例を示し、主な所見を以下に整理する。
・全体的な濃度はある程度再現できている。
・春季ブルームなど、一時的に濃度が大きく変化する現象は表現できていない。
・生物、化学過程のパラメータの検討が必要である。
・外界から、または底泥からの栄養塩供給も今後の課題である。
図-15.2.2(1) 低次生態系モデルの再現性比較(硝酸塩、2005 年)
※ 中山ら(2009)より抜粋
計算結果(硝酸塩)
紀伊水道
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
大阪湾
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
播磨灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
備讃瀬戸
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11NO
3 (m
mo
l/L
)
燧灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
安芸灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
広島湾
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
伊予灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
周防灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
NO
3 (m
mo
l/L
)
131 132 133 134 135
33・
34
21
34567
89
・秋季以降の増加傾向は表現できている
・春季~夏季の枯渇状況を再現できていない
1
2
3
4
5
67
8
9
0369
1357911
Ch
l.a
( mg
/L) 計算結果(表層) 瀬戸総合(表層)
浅海定線(表層) 計算結果(底層)
瀬戸総合(底層) 浅海定線(底層)
197
図-15.2.2(2) 低次生態系モデルの再現性比較(クロロフィル a、2005年)
※ 中山ら(2009)より抜粋
計算結果(Chl.a)
紀伊水道
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
播磨灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
備讃瀬戸
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
燧灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
安芸灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
広島湾
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
伊予灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
周防灘
0
3
6
9
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
大阪湾
0
3
6
9
12
15
18
1 3 5 7 9 11
Ch
l.a ( m
g/L
)
131 132 133 134 135
33・
34
21
34567
89
1
2
3
4
5
67
8
9
・一時的な増加を表現できていない
・全体的な濃度はある程度再現できている
0369
1357911
Ch
l.a
( mg
/L) 計算結果(表層) 瀬戸総合(表層)
浅海定線(表層) 計算結果(底層)
瀬戸総合(底層) 浅海定線(底層)
198
(3)結果 2:有機物量の空間分布
浮遊系低次生態系モデル結果のうち、表層における懸濁態有機物(PON)、溶存態有機物
(DON)、植物プランクトン、動物プランクトン、および溶存酸素量(DO)分布を図-15.2.3
に、底層における各分布を図-15.2.4に示す。動物プランクトンを除くと、淀川河口域で
濃度が高い。
図-15.2.3 表層における低次生態系モデル結果
図-15.2.4 底層における低次生態系モデル結果
懸濁態有機物 溶存態有機物 植物プランクトン
動物プランクトン 溶存酸素
懸濁態有機物 溶存態有機物 植物プランクトン
動物プランクトン 溶存酸素
199
(4)結果 3:HSIモデルとの比較
マダイ稚魚の環境因子は、SIモデルの検討より、以下の項目となっている。
1)水深:5~10m 前後
2)藻場:アマモ場、ガラモ場が主な生息場
3)底質の CODが 20 mg/g 以下(参考:水産用水基準、内湾沿岸域は 2mg/L 以下)
水深については、数値モデルの入力データとしてある。藻場については、SIモデル構築
時の藻場データを使用可能であるが、現在の計算格子(1km格子)の解像度では表現不可能
なため課題が残る。
底質の CODについて、現行の低次生態系モデルは浮遊系のみであるため、底質の CODは
表現不可能である。また浮遊系の CODについても、モデル内では CODは解いていないため
直接比較はできない。ここでは CODではなく、TOC(懸濁態有機物+溶存態有機物+植物プラ
ンクトン+動物プランクトン)の結果で表現する。図-15.2.5にマダイ稚魚の HSIモデル結
果、マダイ稚仔魚分布、および浮遊系低次生態系モデルによって算出された、水深、TOC
分布を示す。
図-15.2.5 HSIモデル結果と、低次生態系モデル結果の比較
+ 藻場
マダイ稚魚の HSI結果 マダイ前期仔魚分布
水深
(20m以浅)
底層付近の
有機炭素量
200
【参考】
「エスチャリー循環によって海域が分断されるため、マダイ浮遊卵が海峡(備讃瀬戸)の東
西で交流しない」について
・吉井川、旭川河口域で低塩分水が見られるが、備讃瀬戸周辺では潮流が早く、東西の
分断は見られない。よって、エスチャリー循環によって海域が分断されることは無い
と考えられる。
表層の流速と塩分分布(スナップショット)