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首都大学東京 MRエラストグラフィによる 生体組織弾性率計測と 新しいMRエラストグラフィ機器の開発 沼野智一 1) , 川畑義彦 2) 1) 首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 放射線科学域 2) 高島製作所株式会社 本研究・発明に関して,他企業との連携に支障はありません.

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Page 1: MRエラストグラフィ機器の開発 - JST...首都大学東京 MRエラストグラフィによる 生体組織弾性率計測と 新しいMRエラストグラフィ機器の開発

首都大学東京

MRエラストグラフィによる 生体組織弾性率計測と

新しいMRエラストグラフィ機器の開発

沼野智一1), 川畑義彦2)

1) 首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 放射線科学域 2) 高島製作所株式会社

本研究・発明に関して,他企業との連携に支障はありません.

Page 2: MRエラストグラフィ機器の開発 - JST...首都大学東京 MRエラストグラフィによる 生体組織弾性率計測と 新しいMRエラストグラフィ機器の開発

首都大学東京 1. MR エラストグラフィの概要 ・Elastography ・Introduction ・臨床研究で利用されるMRE 2. MRエラストグラフィの方法 ・MREパルスシーケンス ・MREに必要な装置 3. 新しいMRE用加振動装置の開発 ・振動周波数と空間分解能 ・開発の目的 ・ボールバイブレータ方式の採用 ・プロトタイプの試作 ・性能評価試験 ・ファントムMRE実験 4. まとめ

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首都大学東京 Elastography -弾性率画像法-

-graphy:画像法 elasticity:弾性

angio-:血管の ultrasonic:超音波

tomo-:切断

tomography:断層画像法

angiography:血管造影法

ultrasonography:超音波画像法 elastography:弾性率画像法

MR Elastography

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首都大学東京

1.25%

0.75%

0.50% 1.00% 2.00%

局所的に寒天濃度の異なるファントムを作成.

30mm

μ: ずれ弾性率(Elastogramの画素値) ρ: 密度 人体を水と近似して1g/cm3 λ: 振動波の波長 Wave Imageの波長を計測 f: 振動波の周波数 既知である

Wave Image

Elastogram

Introduction -Magnetic Resonance Elastography-

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首都大学東京

Fig. 4—39-year-old man with hepatic adenoma. A, T2-weighted MR image (A) shows hyperintense 8-cm adenoma (arrow) in right lobe of liver. B, Gadolinium-enhanced 3D spoiled gradient-recalled echo MR image shows intense arterial phase enhancement (arrow). Washout was evident in portal venous phase (not shown). C, Axial MR elastographic wave image shows good illumination of tumor (circle). Waves in tumor have slightly longer wavelength than those in surrounding normal liver parenchyma. D, Elastogram with region of interest corresponding to tumor shows shear stiffness value of tumor is 3.1 kPa and of surrounding liver is 2.4 kPa.

MR Elastography of LiverTumors: Preliminary Results AJR 190:1534–1540 (2008)

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首都大学東京

[kPa]

本学での実施例 - 50Hz腰部加振-

このvolunteer-studyは(公)首都大学東京健康福祉学部研究安全倫理委員会の承認(受理番号10085)を得ている.

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首都大学東京

[kPa]

本学での実施例 - 75Hz肩部加振-

このvolunteer-studyは(公)首都大学東京健康福祉学部研究安全倫理委員会の承認(受理番号13001)を得ている.

棘上筋

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首都大学東京 MREパルスシーケンス

微小変位検出用傾斜磁場 Motion Sensitizing Gradient: MSG ・極性が逆で大きさが同じ2つの ローブをもつ双極傾斜磁場 ・振動周期と同じ周期で印加すると 最も効果が高い ・振動周期との同期が計れている場合,MSGの印加回数と共に効果増大 ・MSGの強度共に効果増大

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首都大学東京 MREに必要な装置

- MRI system -

Achieva 3.0T (Philips)

制御用コンソール

各種電源・制御装置

3.0T超伝導マグネット

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首都大学東京

MREに必要な装置 -加振動装置-

加振用パワーアンプ XTi 1000 (AMCRON) LabVIEW8.6, DAQ M-series

USB-6221(National Instruments)

加振用音圧発生器 Subwoofer TIT320C-4 12” (Dayton)

自作振動Pad

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首都大学東京

実験装置構成 Control room

Technical room

Magnet room

Electronic circuit connection

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首都大学東京

振動周波数と空間分解能 Magnitude Elastogram

100Hz 200Hz [kPa]

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首都大学東京 開発の目的 音圧式加振器の利点と欠点 利点 ・振動の周波数,位相などを容易に制御できる

・構造がシンプルで扱いやすい 欠点 ・加振周波数によっては十分な振幅が取れない場合がある (加振周波数はMREの空間分解能を左右する重要な因子) ・加振源と振動部が離れている ・エネルギー効率が良いとはいえない (音圧レベル90[dB/W・m]で1%)

音圧式加振器の欠点を補うMRI対応加振動装置として (MREのさらなる空間分解能向上を目指して) ボールバイブレータ(air-vibrator)を利用した

新しい加振動装置を開発し,MR Elastogramを得る.

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首都大学東京 ボールバイブレータ方式の採用

圧縮空気の流れ

光ファイバセンサ

4chの光ファイバセンサによって4つの振動位相検出する.

各センサの配置はリング円周上で, リング中心に点対象,かつそれぞれのセンサがなす角度が90o

複数の加振位相(0, π/2, π, 3π/2)で同期が可能

国内特許 (第5376593号) PCT国際出願中(PCT/JP2010/004037)

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首都大学東京

r W

ボールバイブレータ方式の採用

F: 加振力 (kgf)

N: 回転数 (rpm)

W: ボールの重量 (kg)

r: 回転中心からボール重心までの距離 (m)

g: 重力加速度 (9.8m/sec2)

・回転数は圧縮空気流量で可変

・ボールの種類を変えることで重量と 回転半径を可変

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首都大学東京 プロトタイプの試作

コンプレッサ 0.75LE-10.2S (日立産機システム)

圧縮空気の生成

ミストセパレータレギュレータ AWM20-02-BCE (SMC)

精密レギュレータ IR2020-02BG (SMC)

サーマルマスフローメータ TF-901S-101-P04 (東京計装㈱)

流量の調整と流量計測

バイブレータ本体 内臓ball 5/16 PEEK (高島製作所㈱)

対象の直接加振

サイレンサー

特許 第5376593号, U.S. Patent No.13/133,527, Europe Patent 10828032.2 Magnetic Resonance Elastography using an air ball-actuator. Magn. Reson. Imaging 2013 31:939-46

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首都大学東京 プロトタイプの試作

compressed air→

optic

al fi

ber

回転数

4ch

LabVIEW, USB-6221 (NATIONAL INSTRUMENTS)

回転数計・TTL発生器・TTL選択器

(高島製作所㈱)

←TTL 4ch

volta

ge

流量

MRI system

TTL→

1c

h

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首都大学東京 性能評価試験 ・圧縮空気流量と振動周波数の関係

・ボール回転数と振動周波数の関係

・変位量と振動周波数の関係

レーザー変位計 LK-G35, LK-GD500

(㈱キーエンス)

2.5kg寒天(1%)の負荷がかかっている 状態で性能評価する

ボールの直径,重量が異なるものを 数種類用意し,それぞれ検討した.

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首都大学東京 性能評価試験

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首都大学東京

sele

ct c

h

4ch

MRI system Bio Spec 20/30 system (BRUKER)

2.0T magnet console electronics

ファントムMRE実験 -動物実験用MRI装置による実施-

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首都大学東京 ファントムMRE実験 -動物実験用MRI装置による実施-

Magnitude image Elastogram [kPa]

Phan

tom

1

Magnitude image Elastogram [kPa]

Phan

tom

2

Page 22: MRエラストグラフィ機器の開発 - JST...首都大学東京 MRエラストグラフィによる 生体組織弾性率計測と 新しいMRエラストグラフィ機器の開発

首都大学東京

まとめ -従来技術と新技術の比較-

→音圧 5メートルほど

スピーカ 振動pad

従来技術: 音圧式 新技術: ボールバイブレータ式

周波数の上昇と共に加振量低下 周波数に依存することなく一定

振動発生源とpadが離れている 振動部分が直接的に対象を加振

高い周波数での加振量を 担保するために装置が大型化 音圧式に比べると小型

周波数,位相のコントロールが容易 (MRIに対して加振器が同調できる)

周波数のコントロールが 音圧式に比べて難しい

(加振器にMRIが同調する必要がある)

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首都大学東京

まとめ -実用化に向けた課題と応用先-

課題 臨床用MRI装置での応用を想定した場合,

MRI製造メーカの協力が不可欠

・本手法による加振はボールバイブレータの振動にMRIが追従する必要があり, 臨床機は標準でそのような機能を有していない.

・商用ベースでMREを実施する場合,MRE理論の特許技術利用のライセンスが必要.

応用先(画像診断技術分野以外で)

・ゲル状物質の弾性率計測

・食品の歯ごたえ(硬さ)の定量的評価 ・媒質内部を伝播する波の可視化 (計算機シミュレーションとの整合性確認)

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首都大学東京 まとめ -特許情報・問い合わせ先-

国内 「磁気共鳴エラストグラム(MRE)の作成方法及び作成装置,並びに磁気共鳴エラストグラム(MRE)作成用の ボールバイブレータ」 特許番号: 第5376593号 出願番号: 特願2009-256251 公開番号: 特開2011-098158 発明者: 沼野智一, 川畑義彦 特許権者: 公立大学法人首都大学東京, 高島製作所株式会社 国外 METHOD FOR PRODUCTING A MAGNETIC RESONANCE ELASTOGRAM (MRE), DEVICE FOR PRODUCING THE SAME, AND BALL VIBRATOR FOR PRODUCING THE SAME U.S. Patent Application: No.13/133,527 Europe Patent Application: 10828032.2 Inventors : Tomokazu NUMANO, Yoshihiko KAWABATA Patent Owner: Tokyo Metropolitan University

首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 放射線科学域 准教授 沼野智一 [email protected]

〒116-8551 東京都荒川区東尾久7-2-10 首都大学東京荒川キャンパス校舎棟519室 03-3819-1211 内線464