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Title 損益相殺
Author(s) 三木, 正雄
Citation 商業と経済, 14(1), pp.47-78; 1933
Issue Date 1933-08-25
URL http://hdl.handle.net/10069/26990
Right
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
-
損
益
相
殺
三
木
正
雄
はしが音
節二軍
第二章節
一
第三章節
一
第四章節
一節西
紀
寵
損益相殺の音義
損益粕殺の意義及び根按 第二 損益相殺と相殺
損益相殺と賠償者の代位及び過失相殺
損益相殺と賠償者の代位 第二 損益相殺と過失相殺
相殺ぜらろべ与利益
積極的利益及び滑極的利益 第二 財産的利益
賠償義務発生原因から生じ実利益
第三 損益粕穀の認められる範囲
第三 新なる筍立的利益
一撃誠 二 損害賠償義務萱生原因
(イ)組説 (ロ)保険金請求橙 (〇年金
三 相営因果関係
(ニ)扶養請求措
(ホ)第三者の膚興
は
し
が
き
損害賠償は私法上鼓も重要な問題の一つであり、且又最も困難な問題の一つである。損
損 益 相 殺
四七
-
商
業
と
経
済
四八
害賠償に関しては幾多の研究すべき事項が包含せられてゐるのであるが、就中損害賠償の
範園如何、印ち如何なる損害が賠償せらるべき損害であるかに関しては損盆相殺.過失相殺
等頗る面倒な問題が纏ってゐる。
損害賠償の問題は先進ドイツ皐界にあっても、一個溺立の研究に迄護展せしめられ乍ら.
而も命その根抵に幾多の疑問が包蔵せられてゐる。
我図に於ても回より今後の努力に侯
つ所が多く、殊に損盆相殺の問題の如、きは僅かに一二の研究(詰1〉を見るのみ、それ以外には
教科書中に筒壁に鰯れられてゐるに過ぎないといふ朕態である。
以下少しくこの問題に就て考察して見ゃうο
(詰1)
坂千秋氏「損益相殺ハのOBm】
05pzozagsrEZC〉二就テ」法泉協合雑誌第三七巻五11七披。
何ドイYに於げろ二の問題
ι閲すろ論文としては、。。円
52♂一UUJF10『丹市己
mpgur一。rgm
げ
oE忠宮山内口出向・
2Z542。r524q好例の唱す
J
考書とす。
第
一
章
永島
‘説
抑々損害賠償の目的は被害者(不法行震に於ける被害者及び債務不履行に於ける債樫者
を含む。
以下同じ)、の受けた損害を填補し、之をして出来る丈け損害を受けなかったと同一
の朕態に回復せしめるにある。
故に賠償の範囲を決定するに蛍つでも、此の損害賠償制度
-
の目的に顧みて、被害者の受けた損害額を基本とするを要する。
若し之より砂い時は、砂い
丈け損害賠償の目的を達することを得ないと共に、叉之より多い時は、その多い丈け損害賠
償の使命を逸脱することになる。
民事責任と刑事責任の分化した現代にあっては、損害賠
償には刑罰的意義なく、議防的作用なく、その目的は一に銃生の損害を除去する結に存する。
被
害
者
と
雄
も
賠
償
に
図
っ
て
不
蛍
の
利
得
を
匁
す
べ
き
で
は
な
い
し
、
叉
加
害
者
と
艇
も
浩
重
の
負
携
に・即吟せしめらるべきではない。
損害額と賠償額とが完全に符合一致し些一の淫庭なき
と、乙損害賠償の理想である。
新践に損害賠償にあっては、一方に於て賠償義務者をして、損害に就き十分の賠償を鍔さ
める必要があると共に、他方に於ては賠償樫利者をして、賠償を受けることに因って、不蛍の
利得を矯さしめでもならない。
この後の目的の震にロ
lマ
法
以
来
諸
閣
法
制
に
認
め
ら
れ
大
る
主
な
る
制
度
と
し
て
次
の
三
者
を事けることが出来る。
一、賠償者の代位
二、損盆相殺
三、池失相殺
損
盆
キ日
殺
四九
-
商
業
と1
経
済
五O
而して本論文は此の中の損盆相殺の研究巻目的とするものである。
以下に辛守分って
考察しゃう。
第
二
章
損
盆
相
殺
の
意
義
第
損盆相殺の意義及び根践
賠償模利者が損害巻受けると同時に利金をも得にときは、共の利盆と損害とを差引いて
損害賠償の範囲を定める制度を損盆相殺若くは損得相殺、利盆相殺、利害相殺
(8百七
88H一。
}口口一のロロ戸九
ωEロ♂〈
25FEP27ロロロm
。〔]R品5m一止のrgm)といふ。
査し損害賠償の目的は上述せる如く損害を受けた者をして、出来る丈け損害を受けなか
ったのと同一の朕態に回復せしめるにある
J
故に損害賠償は被害者の損害を償ふに十分
なことを要すると共に、叉之に因つて被害者をして新なる利得を鍔さしめではならない。
故に損害を愛生せしめた事賢から利盆をも生じたときはその損害と利盆との差額が印
ち異の損害額であり、従って賠償せらるべき額なのであり、若し加害者をして利盆を差引か
ない全額を賠償せしめるときは.加害者に過重の負擦を強ひることに依って被害者に不蛍
の利得をおさしめることになり、損害賠償制度の精神に背馳する
之郎ち損盆相殺の認め
-
らるべき所以である
J
例へば競馬に於て騎手が契約に違反して激しく馬に鞭打ち、その結果競馬には優勝して
応の所有者は懸賞金を獲得したが、馬は第死し式場合には騎手は馬の発死に封して債務不
履行に基く損害賠償義務を負携するが、その額は馬の債格から懸賞金額を控除したもので
ある。此
の損盆相殺の制度は既にロ
iマ法に於てハ註1
〉法典に明かに認められる所であり、その
後立法例の特に明文を以て之を定めてゐるものは稀であるが、損盆相殺の許さるべきこと
は.墜設の一般に認める所である。
而してイギリス.フランスハ詰2
〉の準設は唯僅かに賠償額算定問題中に於て、断片的に之を
論じてゐるに止まり、根本的立場を決定することを避けてゐるが、ドイツ(註3)並にアメリカ
合衆国ハ詰4
〉にあっては、通設は損害賠償は被害者をして不蛍の利得を鍔さしめるべきもの
ではないと云ふ、上漣しに損害賠償の目的、性質に基いて、解格上之を認めてゐる。
我民法も亦損盆相殺を明文を以て規定してはゐないのであるが、法文上特別の根擦はな
くともロ
l
マ法以来一般に認められてゐる所であり、且理論上寧ろ常然の事に局するとし
て通訟はドイツ及びアメリカ合衆図の通説と同一
の見地から之を肯定してゐるoハ註5
、註6
〉
損
盆
ヰ日
予殺
五
-
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2・rREHdE2・rrgmHOJ4urEzrと・
ハ本館ノ請求権ハ他人カ被持者ヲ扶養スレ義務ヲ負フヨトニヨリ
除尿セラレルヨトナジ)との旨岳明らかにし℃おろo且この第四項の規定は次除の人為殺し六場合に於げぁ、
被告者に封して扶養請求権た有し
tbk者の加害者に封すろ損害賠償請求権に準用ぜられて白ろ〈ドイ
y民法
第八回関係二項Uo之等の規定は特別の場合にが、て損益相殺の詐されないこと在、明文品以て定めておろもので
わっ丈、その反釘解梓として一般の場合には損益相殺ゐ詐すものと併すろときは、ドイ
y民法に於げろ損益相
殺の法文上の根践の一と潟すことが出来ろであらう。
第
損盆相殺と相殺
損盆相殺は相殺(のOE5HEZPKF三5己5
5四)と云ふ名穏を有するが、法律上謂ふ所の相殺では
、h
問、0
4ん
BM
国有の意義に於ける相殺にあっては.二個の同種の目的を有する債権の封立を必要
とし、それ等の間に差引が行はれるのであるが、損盆相殺に於てはこんノの同種目的の債権の
封立は存在せ宇、本来賠償義務者は利盆に封して溺立の債植を有するものではない。
ヨ「
の債艇の間に於ける差引ではなくて、一
クの賠償債搭に付てその範閏を制限するに過ぎな
。損害賠償に就て原朕回復主義や採り(この場合に於ても損金相殺を認むべきニとに付て
は後述参照)、而も損害と同時に生じに利盆に関して法定譲渡主義に依らないときはニクの
債椛(損害賠償請求椛と利盆譲渡請求椛)の針立を生中
J
るも、之原版回復主義に基く止むを得
f員
盆
キ日
耳IL;I::i
五
-
商
業
と
経
済
五四
ない結果であって、且この場合に於てもその二ヶの債権は同種の目的を有せ歩、従ってその
聞に差引は行はれない。(註1
〉(註2)
(詰1〉
原歌川復主義た採
ι場合に於て、若し上越の封立すろ二例の依躍が同種の目的た有すろことが偲にあるとして
も、その場合には金銭賠償主義に依ろ場合と同じく、範囲の制限ぜられに一個の賠償債権のみが存在すろこと
となリ、債植の封立は存しない。蓋し原扶回復主義に依ろ場合に債棋の封立在生ずろのは、原版同復主義その
ものに基く止むた得ない結果であり、例外的に損害と利径とが同種のものであ広場合には、債権の封立在認め
ろ必要が存しないからであろu
〈註2〉
向損益相殺は営事者の援用品侠って、始めて殻力た止すろ・ものではない。此の引にが、ても岱事者の意思表示た
要件とマろ回有の相殺と匝別すろことが出来るo
第
損盆相殺の認められる範閏
損盆相殺は本来賠償権利者をして不岱の利得を鍔さしめない匁めに存在する制度であ
る。
従って損害賠償の場合にのみ認められるものであり、而して損害賠償であれば、債務不
履行に基くと不法行錯に基くとを問は?、叉故意過失に基いて責任を賃ふ場合(過失責任)た
ると、過失なくして責任を負ふ場合一無過失責任)仁るとを匝別しない。
更に叉賠償に付き金
銭賠償主義に依る場合のみなら歩、原版回復主義に依る場合にも認めらるべきものである。
この最後の場合に於ては、金銭賠償主義に於けるが如く利盆の限度に於て賠償請求慌の
-
範囲の紛少を生中るものと匁す『)とを得ないから賠償義務者は完全に其の賠償義務を履
行し、被害者在して原肢に回復せしむべく、然る後に賠償権利者の取得しに利盆の返還請求
桜を取得するか、叉は法律上賞然其の移轄を生ホ
J
るものと解しなければならない。
然るに論者或は損盆相殺の観怠を以て、唯金銭賠償主義を採る場合に於てのみ認めらる
べきものと匁して、原紙回復主義の下に於けるその存在を否認し、その論擦として損盆相殺
は損害賠償の範囲を決定するに付き、損害額から利盆額を減殺するに依って成立するもの
であり、従って原朕回復に依る損害賠償の場合には斯様な方法は性質上不可能であるとい
ふニとを主張するのである。
而して此の場合賠償義務者をして不蛍の利得を鍔さしめな
い匁めには賠償者の代位の法理に依るを以て足hw、損盆相殺の観念は之を用ふる必要がな
いと論ホノるu
惟ふに損盆相殺の典型的なものは金銭賠償の場合に認めることが出来る。
併し乍ら損
盆相殺を金銭賠償の場合のみに限定し、原朕回復に依る賠償の場合に於ては存在しないと
解するのは誤謬である。
因より原獄回復に依る賠償にあっては、損害額から直接に利盆額
を差引するが如きことは反封論者の指過するやうに性質上不可能であるが.抑々損盆相殺
の本質は利盆の限度に於て賠償義務者の責任を軽減する貼に存し、損害額から直ちに利盆
損
盆
相
殺
玉五
-
商
業
と
経
済
五六
額を差引くと云ふ貼に存しないっ
原朕回復主義を採る場合に於ても原朕回復に依って賠
償搭利者が十分の賠償を受けた時は、その得大る利盆は之を賠償義務者をして保有せしむ
べきことは、反針論者と離も既に認める所であり、然る時は之を損盆相殺の一態様と解して
何等差支ない。
叉この場合賠償植利者の得ーにる利盆を義務者に移轄すべきこと守、賠償者の代位の観念
を以て説明するのは、損盆相殺と賠償者の代位の雨制度の本質的差異を明らかにせざるに
出でた誤謬である。
査し賠償者の代位は賠償模利者をして全額の賠償を得しめることを
快く可からざる要素と匁し、それと同時に賠償者をして不治の利得を匁さしめない鍔めに、
その得たる利盆の移碍を認めるものである。
之に反して抗盆相殺は本来全額の賠償を奥
へることを目的とするものではなく、利盆を差引きたる具の損害の範囲に於て賠償義務を
認めるを以て足れりとするものであるが、唯原朕回復主義を採る場合には、斯様な方法に依
るニとは事官不可能であるから、止むを得宇一方に於て全額の原燃回復請求構を行はしめ
ると共に、他方に於ては利盆の移轄を認めるのである。
従って此の場合に於てもそれが賠
償者の代位に非ぎることは性質上明らかである。
尚之に就ては失辛に於て拐、盆相殺と賠
償者の代位との異同に付き論宇る所を参照せられたいえ誌1〉
-
(註1〉
坂氏前掲九六三頁九六四頁以下。
第
三
章
損
盆
相
殺
と
賠
償
者
の
代
位
及
び
過
失
相
殺
先に第一宇に述べた加く損害賠償に因って賠償権利者をして不蛍の利得を受けしめな
い銭めに‘ロ
l
マ法以来諸図法制の認め.る制度の主なるものに損盆相殺、賠償者の代位及び
過失相殺の三者がある。
而して此の三者は夫々回有の特色と領域とを保有し、一を以て他
を夜ふ能は守、裁然と恒別せらるべきものであるが、而も三者其の立法の趣旨を同うし同一
目的を以て設けられに制度であるから、相互に密接なる関係を有し、相依り相侠って以て各
々その致用を完全に後揮し符べきものである。
従って之等の制度相互間の関係と異同や
明らかならしめることは、本論文の目的にる損盆相殺の概念を明確ならしめる匁めに必要
であると考へられるから、以下損盆相殺と賠償者の代位及び損盆相殺と過失相殺の二つに
分って筒皐に之に就て考究しゃうο
第
損盆相殺と賠償者の代位
損害賠償義務者は賠償に依って、椛利者が有してゐ仁椛利に付て椛利者に代位する(民法
損
盆
本日
殺
五七
-
商
業
と
経
済
五八
第四二二傍、ドイツ民法第二五五傑コ
之を賠償者の代位叉は賠償に依る代位
3zrsmpまると
一一二日ふ。.例へば甲が乙から寄託せられてゐ大物を過失に依って丙の鋳めに滅失又は段損せられ、
乙に封して其の物の債格の全部を賠償したときは、甲は乙が丙に封して有する不法行鍔に
基く損害賠償請求権の移轄を受ける。
賠償者の代位はロ
l
マ法以来諸図法制の認める所であり、我が民法亦債務不履行に因る
損害賠償に付て明文を置いてゐる
u
而して此の規定は不法行匁に因る損害賠償其の他契
約上の損害賠償に就ても亦之を類推遁用すべきものである0
〈註1〉
ハ詰1U
前商法第四一五除は損害保険に闘して、「保険ノ目的ノ全部カ滅失ジタル場合ニ於テ保険者カ保険金額ノ全部ヲ
支却ヒタルトキハ被保険者カ其目的二付キ有セル襟利ヲ取得ス云々」と規定しておろ。
賠償者の代位は完全なる賠償を受けた樺利者をして向従来の権利守保有せしめるのは、
賠償義務者の負捻に於て賠償権利者をして不蛍の利得を受けしめるものであり、損害賠償
の目的に反するといふ根擦に基いて認められた制度であ,
O、その賠償権利者の不常利得排
除の目的を有する姑に於ては損盆相殺と遣も具らないが、その目的を達する手段として此
-
の二者は全然異った性質を持ってゐる。
(イ)損盆相殺は賠償徳利者の受けた損害から得ーに利盆を差引くことに依って具の損害額
従って賠償綴を決定し、以て賠償樫利者をして不蛍利得を得しめること守排除するに反じ
て、賠償者の代位は賠償権利者保護の匁めに一
旦全損害額の賠償請求権を認めると共にそ
の有してゐ大権利の賠償義務者への移轄を認め、以て賠償椛利者をして不常利得を受けし
めるニとを阻止する制度である。
この貼に雨者の根本的差異が存在する叫
斯くの加く損盆相殺と賠償者の代位とはその目的を同うし、且外形上も頗る類似してゐ
るが、全然別個の制度でありその相似貼にとらはれて、之等の間に存する区別を否認するの
は訣である。ハ詑1〉
此の外向此の根本的差異に基いて生じた汲生的差異として、次の数クのものを導けるこ
とが出来る。
ロ)利盆の性質を異にする
損盆相殺に供せらるべき利盆は損害賠償義務愛生原因に因って賠償権利者が取得した
新なる利金である。
然るに代位せらるべき利盆は斯くの如き新なる利盆ではなくして、従
来権利者の有してゐに利盆であるか、叉は愛生しに損害に代るべきもの郎も代償物である。
損
-1'--'" 1nt
相
殺
五九
-
商
業
と
経
済
六O
例へば賃借入の過失に依って物を盗まれに場合には、賃借入は所有者に封して債務不履
行に因る賠償義務を負ふと共に、その物の所有様、一従来権利者の有してゐ大利岸壁及所有者が
盗賊に封して有する賠償請求様へ代償物)に付て所有者に代位するが如きである3
命賃借入が過失に依って賃借家屋を焼失せしめた場合には、損盆相殺に依って家屋の債
格から焼残りの材木等の動産の債格を差引いに残金が莫の賠償額と考へらるべきである。
かh
る動産は新なる利盆に非宇して焼失家屋の代償物であるが故に、此の場合を以て賠償
者の代位の一場合とも解し得るやうに見えるが、斯様な動産は一般の代償物と兵り毘なる
債権ではないから、損害額から之が債格や差引いた残額を賠償額と忽しでも、賠償請求様者
の保護に快ける所はない。
従って向損盆相殺の一場合と解すべきである。
(ハ)利盆の後生原因を異にす
損盆相殺に供せらるべき利盆は損害賠償義務愛生原因たる事質に因って生じた利盆で
あることを要し、それ以外の原因から生じに利盆に及ばない(之に就ては第四半参照)。
例
ば馬の引渡の債務が履行遅滞にある場合に於て、債務者は損害賠償義務を負ふが、遅滞の間
債様者が節約し得た飼養料は賠償義務愛生原因から生じた利盆であるから、飼養料の債格
を損害額から控除し得べきが如きである。
-
之に反して代位の目的大り得べき利盆は賠償義務愛生原因大る事責から生じたに非ぎ
ら利盆ーにるを要する。
得する盗人に封する賠償請求権は盗人の不法行錯に基くものであり、受寄者の賠償義務愛
例へば受寄者、か過失に依って受寄物を盗まれに場合に、所有者の取
生原因たる受容者の債務不履行以外の事責に基くものである。
従って代位の目的にり得
べき利盆であって、損盆相殺の目的とはなり得ない。ハ詫1)
(詰1〉
∞の-5ニ54οコ同052・
第
損盆相殺と過失相殺
損害に付いて被害者にも一牟の責守負ふべき事情の存する場合に於ては、被害者の過失
と加害者(債務者、不法行鍔者)の過失とを差引、相殺して損害賠償の問題を決すべきことは、ロ
ーマ法(詰1
〉以来立法例〈註2
〉及び皐設の殆んど一致する所である。之を過失相殺
(35H)23片山。
2-宮30H一宮25HUSEZロ)と謂ふ。
(誌1)
坂氏前掲ο
(詰2)
氏法第四一入除、第七二二係二項。ドイ
y民法第二五四除υ
損
ノJ、:Jlll..
本日
;.
-
商
業
と
経
湾
--L. /、
過失相殺は自己の被った損害に針して一平の責に任宇べき被害者が、その全損害の負携
を加害者に譲って自らは全額の賠償や受けるのは、損害賠償の精神に反するが故に.被害者
をして不蛍の利得を食らしめざる匁めに設けられた制度である貼に於て損金相殺と目的
を同じうするが、損盆相殺と賠償者の代位との聞に於けるが如くごの二者の間にも亦同一
目的を注する鍔の手段として本質的差異を有してゐる。
過失相殺は被害者にも亦損害に付き一半の責任の存する場合に、何等之を顧慮すること
なしに被害者をして全額の賠償を受けしめるときは、本来損害の一部を自ら負捻すべき被
害者をして、自己の負携すべき部分まで加害者に碍嫁せしめ、損害賠償の使命な逸脱して被
害者に不蛍の利得を奥へることになるからごの結果を防止する鍔めに具に加害者の責に
蹄すべき損害額を決定する制度である。
従って莫の損害賠償額を決定する制度、換ニ一目すれば賠償請求椛の有無並びに範国を定め
る制度たる貼に於ては損盆相殺と全然同一であり、雨者と賠償者の代位とは此の貼に於て
明瞭に匹別し得られるのである。
斯様に損盆相殺と過失相殺の二者は賠償請求椛の有無及範囲を決する制度大る黙に於
-
て全然軌を一にするが、而も白根本的な相兵在窺ふことが出来る。
(イ)一は全損害の中加害者の責に腕すべき範園を明らかにすることに依って、賠償せらる
べき損害額を決定するものであわ、他は損害と同時に愛生した利盆を差引くことに依って、
呉の損害額を決するものである。
斯くの如く損盆相殺にあつては被害者の責に蹄すべき
事情存せ守、過失相殺にあっては差引かるべき利盆が存しない。
(ロ)我が民法第四一
八傑は債務不履行に基く損害賠償に就て↓債務ノ不履行ニ関シ債樺者
ニ過失アリタルトキハ裁判所ハ損害賠償ノ責任及ヒ其金額ヲ定メルニ付キ之ヲ鴎酌ス」と
定め、叉同法第七二二傑二項は不法行震に基く損害賠償に就てベ被害者ニ過失アリタルトキ
ハ裁判所ハ損害賠償ノ額ヲ定ムルニ付キ之一プ酪酌スルコトヲ得」る旨規定してゐる。
而して活設はこの第四一
八傑と第七二二傑二項の法丈の差異に者眼して、過失相殺に就
き債務不履行の場合と不法行鍔の場合との聞に失の二クの差異在認めてゐる。(詫1〉
(ご債務不履行にあっては賠償責任の有無及び金額の多寡に付て債権者の過失を酪酌す
るに反し、不法行匁にあっては躍に金額の多寡に付てのみ之を酪酌するつ
(二)依務不履行にあっては「裁判所ハ問的ス」と規定せるに反し、不法行怨にあっては「裁判所
ハ酪酌スルコトヲ得」と規定してゐる。
故に前者に於て裁判所が債権者に過失があったと
損
えコ、
企主
相
設
...... ノ、
-
商
業
と
経
済
六四
一一員ふ事賃上の認定を侍したに拘はら示、之を酪酌しないのは違法の判決であり、従って上告
の理由と鍔し得るが、後者に於てはさうではない。
従って弐の結果を生守る。
第一に不法行符の場合の過失相殺にあっては、縦令被害者に重大な過失があっても、加害
者に全然責任が無いものとする諮には行かないコ
之に反して債務不履行の場合にあって
は、債楼者に重'大な過失があれば、加害者の行震と損害との間に相常因果関係なしとして加
害者に全然責任を認めない場合が存し得る。
損盆相殺に於ては、利盆が損害と同
C程度か叉はそれ以上に上るときは、全然加害者に責
任のない場合が存する。
この貼に於て債務不履行に於ける過失相殺と同様であり、不法行
震に於けるそれと兵る
J
第二に不法行震の場合の過失相殺にあっては、裁判所は被害者の泡失を認定し乍ら、而も
全然之を酪酌しないでも差支ない。
従って被害者の過失の存在が全然賠償額に影響しな
い場合が存する。
之に反して債務不履行の場合にあっては、裁判所は債椛者の渇失を認定
すれば、必宇之を酪酌せねばならない勺
損盆相殺の場合に於ては、利盆ハ註2)があれば、必?差引かれる。
この知に於て債務不履行
-
の場合の損金相殺と類似し、不法行策の場合のそれと兵る。
而して拐盆相殺と債務不履行に於ける過失相殺とを比較すれば、形式的には前者は裁判
所の間的を伎にないで、利盆を差引いにものが蛍然呉の損害額を構成するのであり、之に反
して後者は裁判所の酪的に依って、始めて賠償額が確定するといふ差異はあるが、資質的に
考ふるときは前者と雌も賠償義務者の差引かるべき利盆に関する裁判上の主張を必要と
し、後者に於て債務者の債植者に過失ありたる旨の主張を要すると事賃上殆んど差異が存
在しない。
「、士』lLJ
/丹一
U「
ld¥
山一川井博士、梅博士、末弘博士、横田博士、磯谷皐士、反封岡松博士。
前鳩山博士ハ日本依培法総論〉は九一一具にが、ては、「余ハ法文ノ字句ニ多少ノ差兵アルニ拘ハラメ此ノ知ニ於テ
宅位校不股行上ノ責任ト不法行局上ノ責任トニ付キ差共ヲ認メザルヲ以テ債権法ノ本質ニ遁合スシモノト信メ」
とぜられ乍ら、九七瓦に於ては斗然
νドモ盟諸上位務不夜行ト不法行局トノ間ニ此ノ如キ差異ヲ設グペキ理由
-一之ジキヲ以テ併特上知者ナU差兵ヲ認メザωwヲ正営トスベジ0
」と論ぜられ、果してこの雨者の場合岳会然同
一に取扱ふべしとぜられろのか、或は然らざろか蛇ろ疑問であるd
この脱別の理論上不営なることに閲しては、鳩山博士、磯谷皐士。
損害と一定の関係あろ利益にあJ
必要寸ちのは言ふまでもない。
(詰2〉
第
四
章
相
殺
せ
ら
る
ペ
き
利
盆
第
積極的利盆及び消極的利盆
損
盆
本目
殺
六五
-
商
業
と
経
済
六六
損害賠償の目的たる損常一向に積極的損害
(εBEESドOHmgmw}uou一円76円∞のrp合口)
と消極的損害
(522522B♂。
Emgmoロソ円。
2一三回)とがあると同じく、損金相殺の客際大る利盆にも積極的利
盆(一555050片mg∞)と消極的利盆(含
EEEの
οmmωま)とを考へることが出来る。
前者は被害者が
新に取得した金銭其の他の財産上の利盆であり、例へば前掲の競馬の例に於ける懸賞金の
如きである。
後者は被害者がその受くべかりし損害を売れにに因る利盆であり、例へば上
漣の応の引渡債務の遅滞に於ける飼養料の如きである
J
第
財産的利盆
相殺に供せらるべき利盆は財産的利盆たるを必要とするのであって、躍なる精紳的、感情
的利盆に止まる限りは損金相殺の客酬胞にるや得ない。
我が民法第七
一O傑(ドイツ民法第八二三傑参照)は非財産的利盆の損害に封しでも、不法
行局却に基く金銭的損害賠償請求搭を認めてゐるが故に、非財産的利盆も亦損盆相殺の封象
たり得るが如くにも解せられるが、非財産的利盆は仮令損害と関聯して後生しても、その性
質上相殺に供せられるを得ないと解すべきではなからうか。
第
新なる溺立的利盆
相殺に供せらるべき利盆は新なる獄立的利盆い限るコ
-
新なる利盆仁るを要する
新なる利盆とは従来存在しなかつに利盆を謂ふのである。
従って例へば賃借入の過失
に依って賃借物が山町一まれた場合に於ける賃借物の所有慌の如きは、賠償者の代位の目的大
り得るが損盆相殺の客憶にり得ない。
獄立的利盆にる在要する
猫立的利盆とは損害と直接関係なく、溺立して後生し仁利盆を謂ふ。
従って仮令新なる
利盆であっても、従来被害者の有してゐた利盆の愛形又は代償仁るべきものは此慮に所謂
溺立的利金ではない。
第
四
賠償義務後主原因から生じに利金
がl--
言t
上述の如く財産上の新なる溺立的利盆は総て損盆相殺に供せられ得るのであるが、然ら
ば各個の場合に於て相殺せらるべき利盆の範園如何。
ニの問題に封して我時間ハ註1
〉並びにドイツ〈詰2
〉の一週一誌は相蛍因果関係の見地に立ってゐ
るコ
印ち賠償せらるべき損害の範囲を定めるに治って、「賠武義務者の行伐に基いて直接若
くは間接に愛坐しに.凡ゆる相岱因果関係ある結果は、損害ハZREo-一)のみなら宇利盆(〈25一一)
お
ム
弘d:
~ll
殺
六七
-
商
業
と
経
済
六八
も亦顧慮せらるべきである。」
と云ふ原則を主張してゐる。
同様にアメリカ合衆園の翠読(詑3
〉も「違法行匁そのものに基いて後生せしに非ぎる」
(38門
250ιSF020ロmEPのこZ主主)利盆在相殺から除外してゐる。
Ego-一ロは相岱因果関係誌に左祖してドイツ民法第二五四傑ハ詰4〉の類推遁用に依り、利盆
が主として賠償椛利者に依って後生せしめられた場合には、損盆相殺は認め得ないとして
ゐる。ハ註5〉
相蛍因果関係設が利盆と加害行矯との間の密接な来聯関係を以て、相殺せらるべきや否
やの匝別の標識としてゐるのに反して、ロヨロσ口元は利盆と損害との間の内部的牽聯(山口口2・2
Nロム
558ZロmN三moY842R一一ロロ〔】∞のゲロ
(}3〉在必要としてゐる。
「同一の事買が損害と利盆とを愛生せしめ、且その二者が内部的牽聯を有するときは相殺
せらるべきである。」八詑6
〉
相殺に供せられる忽めに利金と損害との軍一性(巴与の一
7・
8〈。吋
HCEZRZの一一)を要求する設
は一氾時ドイツに於て盛に唱へられる所であるが、之亦同じ傾向を治ふものと謂ふことが出
来る。(詑7)
宜一牲の観念は明総なる把握が困難であり、従って之に閲する見解は多種多様
である。
この設を採る多くの堕者は利金と損害との同時の愛生と云ふことまで必要とし
-
ドrQt-C,
O(担;)')
Cm-i )
関与毛主引'認ヨ
i謹+1'"11¥活性+1
~ ~~~ヨ~~+1。
( ;S-:】)
Ocrtlllann a.
a. 0; ebellso
Reichs~er;cht in
st:indigcr Rc
じhtsprcchllng,vg
l. RGZ. 80,
15!): ,,~ach dcr G
rund-
s:itzcn des
BG B.
ist im }、alle
der Schadenselsatzpilicht allch
dcr nur mittelbare
Sch
‘tdcn Zll
crsetzen. Glcich
・
crlll,
出cn
wird allch
ciu n
m mittelbar
durch das Schadenbrin~cndc Verbalten des
Ersatzpflichtigcn fur
den
GcsclJridigt
巴n
hcrbeigcfubrtcr Vorteil
zur Allsgleichnng
Zll bringen sein,
sofern .
. . . . adLiqnatcr
Zusammen-
hang besteht
.・・・“
〈認め)
Sedgwick a.
a. O. S
OO.
(t,言咽)
Hat bei
der Entstchung de::5 Schadens cin
Versch叶den
dcs Be
白cl
tun~ Zllm
Ersatzc sowic uer Umfang dcs
ZlL
leistenden Ersatzes
von dcn Umstiinden,
insb~son:1ere
davon ab,
inwicwcit der Sdudcn vorwicgcnd von dem eincn
oder dem andercn Tcile
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印cht
wordcn ist.
I顎~\制
剖1\と壮
i認さ
j号制
I!認
4くト、p尽ミ,.t...J!r"え虫包\市捻対ρ沼田ぇ判(古\持主栄I\~苓~-f弐刊
ι;;"1ト$:~\ち
311:許制I!m
P慰安
1;;..尽と干ミ爪誌記
;;"1ト-N爪N
ィJ(探求~認Q~理科〉。
ci泊。)
Rumclin, Arch. Civ Prax.
!)O S.
211.
〈括。)
Dernbll昭,
Burg R
ll,
31, Nr. 3.
(t!jト)Leonhard,
S.:huldrecht, S.
207f.;
¥'. Brcdow,
S. 40.
(;担f世1お
)
0巴白叫I刊t加l11a山a川a
nn,
K王omm. V
o印r山.bc児m己l川口
. z机zu
S鈴S2.1!)
一5日.1;
S出ta叩udin昭
gc町rじ,
Vo叫rbe己m
.Z剖L礼1
S総S2引4却9一
5日4.
11 誌
444蛍包王者総制剖~図
53(泊
是認
・4く吠
-
商
業
と
経
沼
七O
相殺に供せらるべき利盆は摂害賠償義務費生原因に基いて生じた利盆大るを要する。
損害賠償義務後生原因とは損害賠償義務の後生と云ふ放果を生ぜしめる原因事買であり、
債務不履行、不法行匁及び契約上の賠償義務後生原因に分つことが出来る。
相丸山川因果関係
イ
帝怠
設
相殺に供せらるべき利盆は損害賠償義務後生原因と相岱因果関係ある利盆にることを
要する。
査し損害賠償の場合に、賠償せしめるを相常とする損害を以て、賠償義務後生原因
と相岱因果関係ぞ有する損害と鍔し、之に基いて賠償範囲を決定すると同じく、損盆相殺に
あっても相殺せしめるを相活とする利盆や以て、賠償義務後生原因と相蛍因果関係を有す
る利盆と局し、之に基いて相殺せらるべき利盆の範囲を決定するのを理論上正活と局すが
放である
J
然らば如何なる利盆そ以て賠償義務愛生原因と相蛍因果関係ある利盆と鍔すべきか。
一過説は相殺に供せらるべき利盆に関する相蛍因果関係を以て、賠償すべき損害に閲する
相常因果関係と全然同一の内容を有するものと匁じ、或る事賓が現資の場合に於て結果後
生の傑件大るのみなら中、一般の場合にも亦此の結果を後生せしめるに遁するものなりや,
-
否ゃを標準とし、他の一般の場合にも亦結果後生の傑件にるものには結果を愛生せしめる
に相常又は遁蛍なる原因カ存するものと侍してゐる。(註1
)
善良なる管理者を標準として
此の者の知り得べかりし事買を基礎とする見解も之と全然同一に腕するの(註2〉
然らば斯くの如き相蛍因果関係設を以て、損盆相殺に供せらるべき利盆の範国を正蛍に
決定するニとが出来るかと言ふに必しもさうではない。
以下問題となるべき利盆の各々
に付て吟味しゃっ。
(詰1)
鳩山博士、中島博士、三泌博士、来山早士、須賀皐士。
(註ユ〉
鳩山博士。
ロ
保険金請求権
賠償楳利者が保険契約に基いて、保険金請求搭を取得し叉は保険金を受取っムいことは、賠
償義務者の責任を宅も免除若くは軽減しないと云ふことに就ては、僅少の例外在除けば、製
設の一致する所である。
例へば自己の過失に依って物を盗まれに受寄者の債務不履行に基く賠償義務、或は故意
叉は過失に依って他人の所有物を段減しに者の不法行信に基く賠償義務は、その物に付き
保険契約の存することに依って些かも影響せられないっ
損
ノモ玉、:JllL
キ日
xrも泊三証
七
-
商
業
と
経
済
七
然るに遇誌に依れば、相蛍因果関係を有する利家は総べて相殺に供せらるべきものであ
る。
然らば保険金を相殺に供しないのは、之を以て損害賠償義務後生原因と相官因果関係
や有しない利盆となすものと考へなければならない。
、たが通話の主張する如く一般的に
考察して結果後生の傑件たる事査を基礎とし、或は加害者の知り叉は知り得べき事情に依
って相営因果関係の内容を定めるときは、保険金の如きは寧ろ相常因果関係ある利盆と解
すべき場合が存するのではなからうか。
加害者の知り叉は知り得べき事情に依るときは
,
蓋し保険契約の存在を加害者の知る場合、若くは知り得べき場合は非常
殊に然りである。
に多いからである。
然らば、斯くの如き場合に相岱因果関係ある利盆として損害額より保
険金額を相殺すべきゃと云ふに、その不蛍なることは論?るまでもない。
何となれば若し
相殺を詐すとせば加害者は損害を惹起せしめながら、被害者に封して保険金額を差引いた
残額の賠償義務を負捻するに止まるか、或は全然責任を負捻せざるニとh
なるからである
(勿論かくの如く解する場合にも、命保険者自身に封して不法行符に因る賠償義務は存し得
るが)ο
卑見に依れば、一般的じ考察して結果愛生の傑件たる事買を基礎とし、若くは加害者の知
り又は知り得べき事情に依って相蛍因果関係訟を主張することは正蛍である.か、之原則大
-
るに止まり相蛍因果関係の内容は之等の事官のみに基いて決定するを得ない。
或る場合
には一般的に観察して結果愛生の傑件仁る事宣に基くもの、乃至は加害者の矧り叉は知り
得べきものと雄も、相蛍因果関係なしと考ふべきことがある。
蓋し相蛍因果関係は物理的、
自然的因果関係に非宇して法的考察に依る因果関係であり、法の目的から考へて事賓と結
果との聞に因果関係ありやの問題を決すべきものなるが故である。
従って損害の場合に
於て、或る事資に基く結果と解するを安品川田とする損害を以て相官因果関係ある損害と符す
ぺきと同様に、利盆の場合に於ても、損害賠償義務食生原因に基くものと解して損盆相殺に
供するを安蛍とする利益を以て、相官因果関係ある利盆と侍すべきである。
かるが故に仮
令一般的考察に依れば或る事寅から愛生すべき利盆若くは加害者の知り又は知り得べき
事官に基く利盆と雌も、相殺に供するを安蛍とせない利盆は相蛍因果関係のない利盆であ
り、従って相殺から除外さるべきである。
保険金の如、きは宛も斯様な利金である。
蓋し保険契約は被保険者(叉は保険金受取人)の
利盆の匁めに締結せられるのであって加害者の負擦を軽減、免除せんが鍔めに鍔されるも
のではない。
然るにも拘ら?、若し保険契約の存するが匁めに損害額より差引かれるもの
とすれば、被保険者は損害賠償義務者に針して却って小なる搭利しか認め・られないことと
損
メJ、五五E
キ目
殺
七
-
商
業
と
経
済
七回
なる。
殊に損害保険の場合にあっては、保険者は被保険者が加害者より賠償せられなかっ
に損害額に付てのみ填補の責に任するのであり、印ち二次的な義務在負隠するに過ぎない
のであるから斯様な樺利があるからと云って加害者の賠償義務の軽減、完除を認めること
は出来ない。
斯くの如く保険金が損盆相殺から除斥せられるのは、その相殺に供すべき性
質の樫利にあら中、この意味に於て民主賠償義務後生成因と相官囚果関係なき刊盆大るに
因ゐ。
.--町、、
ノ、
年
ノ¥jlL
恩給、遺族扶助料等が摂盆相殺の客間同たり得る利盆であるか否かの問題も亦、保険金と同
一に解決することが出来るつ
蓋し之等の模利も活設の所謂相常因果関係ある利盆たり得
るのであわ、一般的考察に依って成る事賢から生宇べき利盆と考へ得る場合があり得るし、
叉殊に加害者が知り叉は知り得べき事情に基く利盆たり得る。
、たが之亦保険金同様被害
者の利盆の匁めに存するものであり、相殺に供せらるべき性質の利盆に非ざるは言ふまで
もない。
〈誌1〉
この意味に於て相蛍因果関係なき利盆と謂ふことが出来る0(註1〉
ドイ
y大審院は保険金の場合と呉リ、恩給.寡婦及び孤児扶助料の揚合に於ては、被害者若くは泣族の損害防
償請求健から之島相殺し、その限度に於て加害者岳免責ぜしめろことた許符
LてねろOHNON-HU
・∞・HAf
ロ唱
ω・AF∞hcpω
・uEUJ「()唱∞-HCωU叶
hwu
∞・ぬHAご∞♂∞-HOMNhcp
∞-AE)EH・
-
之に反して他の諸外国の法制は多くは保険金と之等のものとの聞に斯誌な国別た認めない。殊にアメリカ合
衆凶の列例はか、ろ区別た否定してねろo
英凶の列例はドイYと同一傾向にあり、同hHE-〉
2Egz〉2HCC∞に依って規定ぜられわい遺族の錦めの生命
保険に於げろ相殺の禁止
Lz厳格に併して、宴円仰の年金に機長しない。
フランス破虫院も最近にが、て前図家の年金た相殺に供
L得ぺき旨た宣言しておろ。
扶養請求搭
傷害若くは殺人に基く賠償請求模は、第三者が被害者(傷害の場合)叉はその遺族(殺人の場
合)の扶養を保障すべき責を負携することに依って消滅(若くは縮少)しない。
ドイツ民法第八四三傑四項及び第八四四保二項ハ註1
〉は明文を以てこの旨の規定を設け
てゐるが、ニの結に付き何等規定なき我が図に於ても同様に解すべきである。
査し扶養請
求椛も亦保険金、恩給等と同じく被害者叉は遺族の利金の潟めに存するものであって、加害
者の匁めに存するものでは無く、傷害若くは殺人に因って護・坐しに損害を被害者、遺族等の
賠償模利者が負捻するか、それとも第三者(扶養義務者)が引受けるかは、加害者には何の係り
もないからである。
故に損害後生原因に基いて被害者又は遺族の取得した扶養請求搭は
相殺に供せらるべき性質の利盆にあら示、従って賠償義務愛生原因と相蛍因果関係なき利
盆であると言はなけれはならない。〈詑2
〉
損
E二、1,凪
キIj
>'
-
商
業
と
経
沼
七六
(詑1〉
ヒ遇策二平第一註6妾昭…。
(詰4d〉
ドイ
y尚等商事裁判所及び大審院は、夫の殺害日依って扶養島英夫ぜろ家財の損害賠償請求椛からは、再婚に
依って第二の夫から受げろ扶養た相殺すぺき旨の列決ら典へてぬる。ドイ少の早設もこの知列例と同一であろ。
ネ
第三者の防相典
損害の後生に因って被害者が第三者から受けた贈奥吾、相殺に供せらるべきものと解す
るときは不治なる結果を生中る。
査しか』る賠典にあっては、雨常事者に加害者を利する
の意思が全然存在しないから、之あるに依って加害者の賠償義務が極減若くは苑除せられ
るものとは到底解し得ないからである。
かるが放にドイツの堕設及び判例は一致して被
害者が損害の笈・去に依って第三者から贈奥を受けたことを以て、加害者が抗開刑事由とする
ことを禁じてゐる。
抑々損害の愛生に依って第三者の鍔す賂奥に二つを同別することが出来る。
一は損害
愛生前に務め損害義生を傑件として附州市内を匁す場合であり、他は然ら?して損害後生後に
被害者に針して贈奥を錯す場合であるコ
損害後生後の熔奥に付ては大抵は活設の主張するが如き相蛍悶果関係設を以てしでも
相殺を否認し得るが、或る場合には之に依つてはニの結果を認め得ないことが存在する。
-
例へばオーストリアの枇合慣習に依れば、焼失家屋の所有者の鍔めに義損金の募集が匁
されることが屡々存するのであるが(註1
〉、か』る義損金の如きは一般的観察に依るも家屋
焼失に基く利盆と解すべきであるし、叉加害者の知り叉は知り得べかりし事情に依って生
じた利金と考ふべきである。
従って活設に依れば相蛍因果関係ある利盆として、相殺に供
しなければならないことになる。
併し乍ら此の結果は極めて不蛍である。
叉損害食生前に務め損害愛生を傑件として賠奥を儒す場合に於ても、通設に依れば相蛍
因果関係を有する利金として相殺に供せらるべきものと解しなければならない場合が存
する。
之亦かh
る利盆の性質上極めて不蛍な結果である。
本来かくの如き利金は被害者の鍔めに存在するものであって、加害者の震めに存するも
のに非.ざることは上述せる如くであり、従って相殺に供せらるべき性質のものに非るが故
に相蛍因果関係ある利盆ではないと解するを正蛍とする。
斯く解して始めて不蛍な結果
を救済することが出来るのである。
(詰1〉
ロ円・
51・J〈ニ
σ口同m-NZ門戸町一】
54。ロ己
2J12常一一江包括]丘与ロロね
(HFREgHPYF門戸門]】2AF0・出
hE門戸戸工
-EO『Cmy
。ω
×
〉く
×
×
之を要するに損金相殺の客憾にるべき利盆は、損害賠償の客般にる損害と同じく、損害賠
損
盆
本日
殺
七七
-
商
業
と
経
済
七A
償義務委生原因と相蛍因果関係を有するものに限り、而してその所謂相常因果関係は物理
的、自然的因果関係に非宇して法的因果関係である。
従って賠償議務愛生原因より後生し
たものとして相殺に供するを安蛍とする利盆は、印ち此の意味に於ける相岱因果関係ある
利盆であり、一般的観察上賠償義務後生原因に基いて生じたと解すべき利盆.乃至は加害者
の知り叉は知り得べき事情に依って後生せし利盆は原則として相官因果関係ある利盆で
あるが、必しも然ら
T。
斯くの如き利盆と雄も或る場合には相蛍因果関係宇佐有せざる利盆
と解すべき場合が存するのである。
(出
五
)
. 、