navigation system for visually-impaired...

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社団法人 電子情報通信学会 信学技報 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, IEICE Technical Report INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS Copyright ©2009 by IEICE 視覚障害者歩行支援システム 測位と障害物検知に関する予備評価 蔵田武志 1, 2 興梠正克 1 石川智也 1 亀田能成 2 青木恭太 3 石川准 4 1 産業技術総合研究所 2 筑波大学 3 宇都宮大学 4 静岡県立大学 E-mail: [email protected] あらまし 本稿では,筆者らが開発した視覚障害者歩行支援システムの測位及び障害物検知に関する予備評価に ついて報告する.まず,従来,健常者向けに開発されていた歩行者デッドレコニング(PDR)が視覚障害者の歩行 パターンに適用可能かを調査した.次に,東京八重洲地下街(屋内)及びその周辺の歩道(屋外)を実証ルートと して, GPSWi-FiPDR,アクティブ RFID,画像認識のそれぞれを用いた測位結果及びそれらの統合結果,さら にルートマッチングを用いた結果の比較評価を実施した.障害物検知については,レーザ式測域センサ(LRF)と 触覚ディスプレイを用いた路面状態提示システムの動作確認及び使用感の予備調査を行った. キーワード 視覚障害者歩行支援, センサフュージョン, PDR, 障害物検知, 触覚インタフェース Navigation System for Visually-Impaired Pedestrians -- Preliminary Evaluation of Position Measurement and Obstacle Detection -- Takeshi KURATA 1, 2 , Masakatsu KOUROGI 1 , Tomoya ISHIKAWA 1 , Yoshinari KAMEDA 2 , Kyota AOKI 3 and Jun ISHIKAWA 4 1 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology 2 University of Tsukuba 3 Utsunomiya University 4 University of Shizuoka Abstract This paper reports on a preliminary evaluation of position measurement and obstacle detection techniques implemented in a navigation system for visually-impaired pedestrians that we had developed. First, we examined the capability of pedestrian dead reckoning (PDR) developed originally for physically-umimpaired pedestrians for walking patterns of visually-impaired pedestrians. Secondly, setting a demonstration route at “Yaesu Chika-gai” Underground mall (indoor area) and the surrounding sidewalks (outdoor area) in Tokyo, we conducted a demonstrative experiment to compare each of positioning measurement result obtained by PDR, GPS, Wi-Fi, active RFID and image recognition, sensor fusion and route matching. As for obstacle detection, we checked how it worked, and performed a preliminary usability test. Keyword Visually-impaired pedestrian support, Sensor fusion, PDR, Obstacle detection, Tactile interface 1. はじめに 視覚障害者の行動範囲の拡大促進のために歩行支 援システムの果たすべき役割は非常に大きい.歩行支 援には,いわゆるナビゲーションと歩行移動時の安全 確保とが必要である. これまで提案または開発されてきた視覚障害者用 のナビシステムでは, RFID タグ等のセンサインフラを 用いる方式 [1] GPS を用いる方式とが試みられてき [2] .前者には新たにインフラを整備する必要がある という問題があり,限定的な環境における実験にとど まっている.後者は,新たにインフラを整備する必要 はないが,市街地で頻発するマルチパス等に起因する 大きな誤差に対処できないという問題がある.文献 [1] では,点字ブロックに埋め込まれた RFID と歩行者デ ッドレコニング( PDR)とを組み合わせる方法が紹介 されている.これに対して筆者らは,視覚障害者専用 のインフラを大規模に整備するという普及シナリオを 想定せずに,広域の屋内外環境で歩行支援を実現する ためのシステム開発に取り組んだ [3,4] .本システムで は, GPSWi-Fi PDR,画像認識(,もしインフ ラが整備されていればアクティブ RFID)を用い た個別の測位処理,それらの結果を用いたセンサ 統合処理,さらに設定ルートを用いたマップマッ チングにより,ナビゲーションのための測位情報 を得ることができる(図 1 ). 歩行移動時の安全確保支援については,レーザ測域 セ ン サ( LRF: Laser Range Finder )を 用 い た ユ ー ザ 前 方 路面の凹凸の計測と触覚ディスプレイを用いた路面の

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Page 1: Navigation System for Visually-Impaired …seam.pj.aist.go.jp/papers/distribution/2010/SIG-MR...Abstract This paper reports on a preliminary evaluation of position measurement and

社団法人 電子情報通信学会 信学技報 THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, IEICE Technical Report INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS

Copyright ©2009 by IEICE

視覚障害者歩行支援システム ~ 測位と障害物検知に関する予備評価 ~

蔵田武志 1, 2 興梠正克 1 石川智也 1 亀田能成 2 青木恭太 3 石川准 4 1産業技術総合研究所 2筑波大学 3宇都宮大学 4静岡県立大学

E-mail: [email protected]

あらまし 本稿では,筆者らが開発した視覚障害者歩行支援システムの測位及び障害物検知に関する予備評価に

ついて報告する.まず,従来,健常者向けに開発されていた歩行者デッドレコニング(PDR)が視覚障害者の歩行

パターンに適用可能かを調査した.次に,東京八重洲地下街(屋内)及びその周辺の歩道(屋外)を実証ルートと

して, GPS,Wi-Fi,PDR,アクティブ RFID,画像認識のそれぞれを用いた測位結果及びそれらの統合結果,さら

にルートマッチングを用いた結果の比較評価を実施した.障害物検知については,レーザ式測域センサ(LRF)と

触覚ディスプレイを用いた路面状態提示システムの動作確認及び使用感の予備調査を行った. キーワード 視覚障害者歩行支援, センサフュージョン, PDR, 障害物検知, 触覚インタフェース

Navigation System for Visually-Impaired Pedestrians -- Preliminary Evaluation of Position Measurement and Obstacle Detection --

Takeshi KURATA1, 2, Masakatsu KOUROGI1, Tomoya ISHIKAWA1, Yoshinari KAMEDA2,

Kyota AOKI3 and Jun ISHIKAWA4 1National Institute of Advanced Industrial Science and Technology 2University of Tsukuba

3 Utsunomiya University 4University of Shizuoka Abstract This paper reports on a preliminary evaluation of position measurement and obstacle detection techniques

implemented in a navigation system for visually-impaired pedestrians that we had developed. First, we examined the capability of pedestrian dead reckoning (PDR) developed originally for physically-umimpaired pedestrians for walking patterns of visually-impaired pedestrians. Secondly, setting a demonstration route at “Yaesu Chika-gai” Underground mall (indoor area) and the surrounding sidewalks (outdoor area) in Tokyo, we conducted a demonstrative experiment to compare each of positioning measurement result obtained by PDR, GPS, Wi-Fi, active RFID and image recognition, sensor fusion and route matching. As for obstacle detection, we checked how it worked, and performed a preliminary usability test.

Keyword Visually-impaired pedestrian support, Sensor fusion, PDR, Obstacle detection, Tactile interface 1. はじめに

視覚障害者の行動範囲の拡大促進のために歩行支

援システムの果たすべき役割は非常に大きい.歩行支

援には,いわゆるナビゲーションと歩行移動時の安全

確保とが必要である. これまで提案または開発されてきた視覚障害者用

のナビシステムでは,RFID タグ等のセンサインフラを

用いる方式 [1]と GPS を用いる方式とが試みられてき

た [2].前者には新たにインフラを整備する必要がある

という問題があり,限定的な環境における実験にとど

まっている.後者は,新たにインフラを整備する必要

はないが,市街地で頻発するマルチパス等に起因する

大きな誤差に対処できないという問題がある.文献 [1]では,点字ブロックに埋め込まれた RFID と歩行者デ

ッドレコニング(PDR)とを組み合わせる方法が紹介

されている.これに対して筆者らは,視覚障害者専用

のインフラを大規模に整備するという普及シナリオを

想定せずに,広域の屋内外環境で歩行支援を実現する

ためのシステム開発に取り組んだ [3,4].本システムで

は,GPS,Wi-Fi,PDR,画像認識(,もしインフ

ラが整備されていればアクティブ RFID)を用い

た個別の測位処理,それらの結果を用いたセンサ

統合処理,さらに設定ルートを用いたマップマッ

チングにより,ナビゲーションのための測位情報

を得ることができる(図 1). 歩行移動時の安全確保支援については,レーザ測域

センサ(LRF: Laser Range Finder)を用いたユーザ前方

路面の凹凸の計測と触覚ディスプレイを用いた路面の

tomoyo
テキストボックス
信学技報MVE2010-64, pp.67-72 (2010)
Page 2: Navigation System for Visually-Impaired …seam.pj.aist.go.jp/papers/distribution/2010/SIG-MR...Abstract This paper reports on a preliminary evaluation of position measurement and

グ機

ぞれ

各セ

精度

凹凸

本シ

いて

及び

図 1.視覚

1.主だった

機能に関する

れ,コストな

センサ機能の

度,計測不可

くは短距離移

凸の提示を組

システムに実

本稿では,ま

て概観し,3

ドレコニング

ターンへの適

トにおける各

る.さらに,

び使用感の予

覚障害者歩行

た位置方位計

る比較.各コ

なし,コスト

の H,M,N/可.方位につ

移動での計測

組み合わせた

実装した [4].まず次節にお

3節で健常者

グ(PDR)技

適用について

各センサの比

5節では,

予備調査結果

行支援システ

計測手法のコ

ストの N,Lト低,コスト

/A はそれぞ

ついて移動な

測ができない

た障害物検知

おいて,屋内

者向けに開発

技術 [5,6]の視

て述べる.4

比較評価の結

障害物検知

果について紹

ムの概略図

ストやセンシ

L,M,H はそ

中,コスト高

れ,高精度,

しでの計測,

場合は N/A.

機能を開発し

外測位技術に

された歩行者

覚障害者の歩

節では,実証

果について報

機能の動作確

介する.

シン

それ

高.

,も

し,

につ

者デ

歩行

証ル

報告

確認

2. 屋位

が,

きる

対象

表 1可能

まと

カメ

(便

Rea学的

る 自

Nav

Sen

バー

トを

があ

イン

ステ

物,

こと

きい

外で

が期

(擬

する

能な

がら

また

する

Mes情報

一種

ステ

( IDが実

屋内外測位

位置や方位を

残念ながら

るという状況

象ごとに少し

1 は,下記に

能な技術の特

とめたもので

(A)GPS の

(B)超音波

メラなどのユ

便宜上 LPS: L(C)装着・

ality)マーカや

的位置合わせ

(D)加速度

自 蔵 セ ン サ

vigation Syste(E)マップ

( F ) 上 記

nsor-Data Fus

(A)の GPSーしているに

を(少なくと

あげられる.

ンターネット

テムも提案さ

木陰,屋内

と,伝達遅延

いことなどが

での上記の問

期待されてい

遮蔽に関して

擬似衛星)と

ることにより

な範囲を拡大

ら現状では,マ

た,インフラ

る.なお,GPssaging Syste報を直接送信

種である.

(B)の LPSテムを構築し

D と位置情報

実現される.

位技術 を計測するた

らどれか1つ

況にはない.

しずつ異なる

に示すヒトの

特徴を,特に

である.

のように複数

波,電波(RFユビキタスセ

Local Position携帯型カメ

や自然特徴点

せや認識手法

度,角速度,

群 を 用 い た

em,PDR) プマッチング

の 各 手 法 を

ion)

S の利点とし

にも関わらず

も)利用者

D-GPS や RTトとの組み合

されている.

内など空が遮

延やマルチパ

がある.なお

問題の多くが

いる. ては,衛星と

呼ばれる装

,利用者側

大することも

マルチパスの

ラ整備・運用

PS レシーバが

em: 屋内に設

信)は(B)

S の場合,送

し,三辺測量

報とが対応)

GPS も送信

ための技術は

ですべての状

また,モノ,

技術や情報が

屋内外位置方

コストと機能

の軌道衛星を

FID,Wi-Fi),ンサインフラ

ning System ラを用いた

点などに基づ

地磁気,気圧

た 自 蔵 航 法

を 利 用 し た 統

しては,広大な

,インフラ整

側は考えなく

TK-GPS,さ

わせなど,よ

問題点として

蔽された場所

スなどの精度

,準天頂衛星

解決もしくは

と同じ信号を

置を局所的に

の装置を変更

試みられてい

の影響はやは

コストの問題

が利用可能な

設置したタグ

の ID 検知に

信機と受信機

の原理や,単

に基づくこと

機(衛星)と

は多岐にわた

状況をカバー

ヒト,車等

が必要とされ

方位計測に適

能に関して取

を用いる手法

,光通信,監

ラを用いる手

と呼称) AR(Augmen

づく画像の幾

圧などを計測

( INS: Iner

統 合 手 法 (SD

な屋外空間を

整備や運用コ

くてよい点な

らに,それら

より高精度な

ては,高層建

所では使えな

度への影響が

星の登場で,

は軽減するこ

をスードライ

に設置して提

更せずに測位

いる.しかし

はり避けられ

題が新たに発

な IMES( Indグから緯度経

に基づく手法

機のセットで

単なる ID 検

とによって測

と受信機のセ

たる

ーで

等の

れる.

適用

取り

法 監視

手法

nted 幾何

測す

rtial

DF:

をカ

コス

など

らと

なシ

建築

ない

が大

こと

イト

提供

位可

しな

ず,

発生

door 経度

法の

でシ

検知

測位

セッ

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トで成り立っているが,高々30 個前後の衛星を配置す

ることにより地球規模の測位可能としている.ところ

が LPS では,測位サービスを提供しようとする場所に

多くの装置を設置するためのコスト,設置装置の IDと位置との対応付け等のデータベースを生成したり管

理したりするためのコスト,設置装置の個体差(例:

電波出力特性など)を校正するためのコスト,電源供

給や通信網維持のための運用コスト等の様々なコスト

を負担する必要がある.しかも利用者側の装置の業界

標準が定まっていないという問題点もある. RFID について,表 1 には端末コストが低いと記載し

た.これは,パッシブ型かアクティブ型かにも依存し,

インフラ型にリーダを置くのか(インフラ側からネッ

トワークに情報を送るのか),端末側をリーダにするの

か(端末側からネットワークに情報を送るのか)によ

ってもかなり異なってくる.広範囲をカバーするには

インフラを安価にすべきであり,大人数のヒトを対象

とする場合は端末側(利用者側)を安価にすべきであ

るため,そのバランスがシステム設計では求められる.

また,マルチホップ通信によるリーダや基地局の削減

についての取り組みも継続的に進められている. LPS の中で,現時点で最も実用化が進んでいるのは

Wi-Fi を用いる手法であるといってもよいであろう.

コ ン シ ュ ー マ 用 途 に 適 し た も の と し て は ,

PlaceEngine[10]のように都市部を中心に遍在している

Wi-Fi 基地局情報を収集し利用する方法がある.また,

UWB (Ultra Wide Band)はマルチパスにも比較的強い

とされ,今後の測位の高精度化が期待される. なお,LPS は送信機と受信機のセットでシステムが

構築されると上述したが,監視カメラの場合は,それ

に当てはまらず,端末がなくてもヒトの位置方位計測

を行うことができる.顔認識や歩容認識等の技術を適

用すれば,端末なしでもある程度ヒトの ID を割り出

すことも可能である. (C)の画像を用いた手法では,カメラとマーカと

のペアによって ID,位置,向きを求めるもの,データ

ベースに蓄積された撮影位置・方位の既知な画像群と

入力画像とを比較して位置と向きを求めるもの [9],Visual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等によって,周囲の作業環境の 3 次元構造を復元しな

がらカメラの 3 次元運動を求めるもの等がある.近年,

Google ストリートビューのように撮影位置・方位の既

知な画像群がウェブから入手しやすくなっている. (D )の自蔵航法は大きく INS と PDR とに分けられ

る.どちらも,装着・携帯型自蔵センサ群(加速度,

角速度,磁気,気圧等)に基づく自律式推測航法であ

るが,前者は対象がヒトかどうかに関わらず適用でき

る.ただし,加速度の二重積分に基づくために短時間

で誤差が蓄積してしまうという問題がある. 歩行者にのみ適用可能な PDR には,センサを足先に

装着する,腰部に装着する,携帯端末に内蔵するなど

の方法がある.足先の場合,加速度・角速度の積算と

歩行時に足が着地した際のゼロ速度更新(ZUPT: Zero Velocity Update)により,多様な歩行動作(階段の昇

降動作や斜め前,横方向,後ろ方向への歩行等)に対

しても,別々にモデルを持たずに計測ができるが,セ

ンサの装着性,センサの耐久性,メンテナンス性など

の課題がある. 腰部装着や携帯端末内蔵の場合,加速度・角速度の

時系列パターンを認識し,歩行速度を推定し積算する

ことで位置を逐次更新する.また,装着性,メンテナ

ンス性は歩数計程度であり良好であるが,上述の多様

な歩行動作の差や個人差の吸収のために個別に歩行モ

デルを獲得し,歩行動作認識や歩幅推定に用いる必要

がある. 自蔵航法では,重力方向,角速度,地磁気情報をカ

ルマンフィルタ等で組み合わせることで,ジャイロの

ドリフト,磁場の歪みや外乱要因などの各センサの欠

点を補償しながら,方位情報についても逐次更新する.

このように,(D)や(C)では,測位だけではなく,

方位計測も可能である. さらに,腰部装着型や携帯端末内蔵型の場合,歩く,

走る,座る,横たわる,(ある特定の)作業をする,エ

レベータに乗るなどの動作種別を認識するための情報

もセンサから得られるという大きな利点がある.その

ような動作識別には,SVM や AdaBoost などの機械学

習手法が広く適用されている [7]. ただし,自蔵航法の性能がいくら向上しても累積誤

差を取り除くことは困難であり,また,絶対位置を与

える必要があるため,通常は(E)のマップマッチン

グを含むいくつかの手段を相補的に組み合わせた統合

手法(F)を適用することになる [8].

3. 視覚障害者の歩行パターンと PDR 実証実験に先立って,まず,健常者と視覚障害者の

歩行パターン(例:白杖や足先等によって前方を確認

しつつ歩行)の違いが PDR の性能にどう影響するかを

調査した. 静岡県立大学において,PDR センサモジュールを腰

部に装着した視覚障害者(全盲)の被験者に白杖を使

った自立歩行と階段昇降,介添ありの歩行をしていた

だき,データを解析した.その結果,歩行動作および

階段昇降動作の検出アルゴリズムは正しく動作してそ

れぞれの動作を検出できた.しかしながら,自立歩行

についての加速度振幅に基づく歩行速度推定過程にお

いては,健常者向けのパラメータを用いると速度が本

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して

自立

タが

と速

若干

の歩

裏付

る実

自立

と介

図 2. 健常者

図 3.

のものより大

りについては

そこで,同じ

の歩行時の速

て比較した

立歩行につい

が示す直線と

に大きく逸れ

なしの自立歩

と,速度が本

きる.一方で

速度の分布が

干のずれがみ

歩行について

付けている.

この予備実験

実証ルートに

立歩行をして

・磁気)を取

介添ありのデ

者と視覚障害

歩行速度パラ

大きく出る傾

は,そのよう

じ被験者に対

速度と加速度

(図 2).この

いては,健常

と比べて,加

れていること

歩行時に健常

本来よりも大

で,介添あり

が健常者向け

みられるが概

ては歩行速度

験結果を検証

において上記

ていだきセン

取得した.得

データ分布に

害者の歩行速

ラメータと測

傾向が見られ

な傾向は見

対して,自立

度振幅をそれ

の結果より,

常者向けの典

加速度振幅と

とが分かる.

常者向けのパ

大きく推定さ

の歩行時に

けのパラメー

概ね近接して

度が適切に推

証するために

記と同じ被験

ンサデータ(

得られたデー

に基づいて得

速度パラメー

測位結果

た.一方,介

られなかった

歩行時と介添

ぞれ同時に記

まず介添なし

型的なパラメ

速度の分布が

これにより,

ラメータを用

れる現象を説

は,加速度振

タによる直線

おり,介添あ

定されること

,次節で説明

者に介添なし

加速度・ジャ

タを,介添な

られた直線回

介添

た. 添あ

記録

しの

メー

が下

,介

用い

説明

振幅

線と

あり

とを

明す

しの

ャイ

なし

回帰

表 2

パラ

類を

歩行

この

自立

なく

測位

階段

認識

2.実証ルー

図 4.各セ

ラメータ,健

を用いて,オ

行軌跡を描画

のように視覚

立歩行)の状

く視覚障害者

位性能を出せ

段昇降動作と

識・推定でき

トにおける各

表 3.各センサ

ンサや手法で

健常者向けの

フラインで P画した(図3

覚障害者の介

状況を事前に

者に対しても

せることが示

姿勢(方位

きることも確

各センサのカ

サの測位誤差

で得られた軌

典型的なパラ

PDR による測

). 添あり/なし

知ることで,

,PDR は同様

された.また

角)推定につ

認された.

バー率(時間

軌跡の一覧

ラメータの3

測位計算を行

し(白杖によ

健常者だけ

様に十分に高

た,歩行動作

ついても適切

間)

3種

行い,

よる

けで

高い

作・

切に

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4. 実証ルートでの測位評価 2 節では測位技術の定性的な比較について述べたが,

本節では,東京八重洲近辺での実証実験に基づく測位

技術の予備的な定量評価結果について報告する. まず,実証実験に用いた視覚障害者歩行支援システム

の 概 略 を 図 1 に 示 す . 本 シ ス テ ム で は , GPS ,

PlaceEngine[10]による Wi-Fi 測位,アクティブ RFID,

PDR [5,6],シーン画像認識 [9],ランドマーク画像認識

[4]のそれぞれで個別に測位を行うことができる.実証

実験では,GPS であれば衛星の数や DOP,RFID であ

れば電波強度,画像認識であれば DB 内の画像と入力

画像との類似の度合い等により,得られた測位結果に

信頼度を付与した(なお,信頼度を求めるのが難しい

場合は定性的な特性評価に基づく固定値を用いた).ま

た,PDR の信頼度については,位置補正をした最後の

状態から徐々に低くなるように経時変化させた.最後

に,各測位結果の中で最も信頼度の高いもの採用する

といった比較的単純なセンサ統合を行うとともに,実

証ルート情報を用いたマップマッチングによる補正処

理を施した.このように,本システムでは,2節で述

べた(A)~(F)の各分類のセンサや手法が用いら

れている. 実証ルートは,東京駅八重洲地下街中央口付近をス

タート地点とし,300m ほど地下街を歩行してから地上

に上がり,中央通り,さくら通りを通り東京駅八重洲

北口をゴール地点とする約 950m のルートとした.表 2は,実証ルートの歩行時間換算での各センサのカバー

率を示している.なお,実証ルートの屋内外比率は,

同じく歩行時間換算で,屋内 28%,屋外 72%であった.

なお,Wi-Fi 測位のために必要となる AP 情報は,八重

洲地下街ではプロジェクト関係者が重点的に収集した.

また,シーン画像 DB 及びランドマーク画像 DB は実

証ルート上のみ整備した. 以上のような条件で,前述の被験者1名がシステム

を装着し実証ルートを歩行した.歩行中の映像から手

動で割り出した位置を参照値として,各センサの測位

誤差を求めた.誤差の平均値,最大・最小値,及び標

準偏差を表 3 に示す.また,図 4 に各センサの測位結

果を地図上に軌跡として描画したものの一覧を示す.

以下,この結果に基づいた各センサや手法に関する考

察を述べる. [GPS] 屋外のみをカバーしているが,その屋外でも

マルチパス等の影響により測位結果のブレが非常に大

きい場所があった.また,今回使用した GPS デバイス

は携帯電話内蔵 GPS のように基地局測位やホットス

タート等ができないものであったため,カバー率が低

くなった. [Wi-Fi 測位 ] 屋内外での測位が実現されている.た

だし,前述のように屋内は本プロジェクト関係者が重

点的に登録したデータが多いために精度が高く,屋外

は,オープンな DB を利用していることもあり他の場

所に引っ張られてしまうことが頻繁に起こっている. [RFID] 実験時のみ,八重洲地下街に 20m 前後おき

にアクティブ RFID タグを設置し,そのカバーエリア

においては比較的安定して測位ができていた.ただし,

このような環境を広域で実現するには,その社会実装

性を高める必要がある. [PDR] 本実証ルートではセンサ統合する必要があ

まりない程度の実用的な精度で歩行移動軌跡を推定す

ることができた.ただし,これは本実証ルート上に地

磁気が乱されている場所が比較的少なかったため,ジ

ャイロのドリフトが問題にならなかったためである.

これまでの他の実験も含めて総合的に判断すると,歩

行距離の 5%程度の誤差(例:100m の歩行で 5m)が

発生する. [シーン画像認識 ] 実装ルート上の画像 DB のみを用

いたため,高精度な測位を実現できている.自由なル

ートを歩く場合の精度について引き続き検討する必要

があるが,PDR や設定ルート等で画像 DB を絞り込む

というシナリオは容易に想定でき,今回はそれに近い

状況での実験ともいえる. [ランドマーク画像認識 ] 画像登録のためのパラメ

ータ数が多いため,今回の実験までに画像 DB を十分

に整備できなかったこともあり,カバー率が低くなっ

た.画像 DB の整備コストについて引き続き検討する

必要がある. [センサ統合 ]各センサ単体よりも優れた測位結果が

得られ,実証ルートにおいて平均 6.7m(標準偏差 5.5)の誤差での測位ができたことがわかった.

[マップマッチング ]マッチングに用いたルートデー

タは歩道を線として表現しているため,センサデータ

の方が正しくても,無理やりその線上に位置を補正し

てしまうことにより,センサ統合の結果よりも結果的

に誤差が増加した.ただし,さまざまな状況を考える

と,安定的な結果の取得のためには,やはり必要であ

ると考えられる.

5. 障害物検知の予備評価 各車両や歩行者に測位センサを付けて,お互いの位

置情報を共有することで衝突防止を試みる研究開発が

いくつも行われており,実際に有効な場面も多いと考

えられる.ただし,実社会においては,そのような情

報共有やスタティックな地図情報からだけではその存

在に関する情報が得られない障害物も多々あり,安心

安全の確保のためには自ら障害物を検知するシステム

が求められる.

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るユ

を触

わせ

Lユー

覚デ

せ,

立て

害物

覚デ

実験

者モ

LR分で

測す

てい

5.障害物検

図 1 の視覚障

ユーザ前方路

触覚ディスプ

せた障害物検

LRF は測距

ーザの前方約

出する.点字

向に4本のピ

ディスプレイ

,縦方向は,

てる ],陥没

物なし [ピン

ディスプレイ

八重洲近辺の

験を行い,2を検出し,触

モニタが障害

5 に動作例を

RF を小型軽量

ではなかった

のある屋外に

する場合,Sいるのか反射

検知と触覚デ

障害者歩行支

路面の凹凸の

プレイとして

検知機能も実

のためにレー

約 2m から左

字ディスプレ

ピン配列から

イの横方向を

路面の3状

または測定不

を立てない ]イとして機能

の屋内外での

29 箇所中 24触覚及で結果

害物を直感的

を示す.検出

量のものにし

たことがあげ

において黒い

S/N 比が極端

射していない

ディスプレイ

支援システム

の計測と,点

て用いた凹凸

実装されてい

ーザを1次元

右約±60 度

レイは,横方

らなり,本シ

をユーザの左

態(突起物あ

不能 [ピンを

])に対応さ

能させている

の様々な対象

4 箇所(83%果を提示し,

的に認知する

出失敗の主な

したため,レ

げられる.そ

いアスファル

端に悪くなり

いのかの判別

による提示の

には,LRF に

字ディスプレ

の提示を組み

る [4]. 元スキャンさ

の路面の凹凸

向に64本,

ステムでは,

右方向と対応

あり [ピンを

1本立てる ],せることで,

. 象に対して検

の精度)で障

数名の視覚障

ことができた

要因としては

ーザの出力が

のため,特に

ト等の路面を

,路面が欠落

がつかなくな

の例

によ

レイ

み合

させ,

凸を

,縦

,触

応さ

2本

,障

検出

障害

障害

た.

は,

が十

に日

を計

落し

なる.

6. ま本

と障

ムの

る評

の登

に拡

が望

また

村山

び協

[1]

[2]

[3]

[4]

[5]

[6]

[7]

[8]

[9]

[10

まとめ 本稿では,視

障害物検知機

の小型化,画

評価実験等が

登場で屋内外

拡大しつつあ

望まれる.

本実証実験は

た,湯瀬裕昭氏

山慎二郎氏(

協力をいただ

鵜沼宗利 , ットワーク歩行者の経テム -“, 情

石川准 , 兵援システム[高品質イン

厚生労働省究開発プロによる日常援 シ ス テhttp://wwwgyou/jiritsu

画像・GPS屋内外視覚す る研 究 平http://wwwgyou/jiritsuokuji06.htm

M. KourogBased on Self-ContaiISMAR200

M. Kourog“Indoor/OuEmbedded System”, IReality and2006.

M. KourogPedestrian Recognition

T. Ishikawa“Economic System for pp. 522-527

Yoshinari KView ImagUrban Area

0] Jun RekimConvergencSpace”, Inand the Inte

視覚障害者歩

機能の予備評

画像 DB の共

が今後の課題

外の位置情報

あるとも言え

謝 は,厚生労働

氏,青山知靖

宇都宮大),

だいた関係各

文 “ユビキタス

ク社会の到来経路誘導 -視報処理 , Vol.4

兵藤安昭 , “GPムの開発”, 情ンターネット

省平成 21 年ロジェクト「常利用可能な

ム の 開 発.mhlw.go.jp/b

ushien_projec等のセンサ

覚障害者歩行平 成 21 年.mhlw.go.jp/b

ushien_projecm gi and T. Ku

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GPS/RFIIn Proc. 16t Telexistence

i, T. IshikawDead R

n", In Proc. Pa, M. Kourog

and SynerIndoor Envir

7, 2009. Kameda and e Retrieval f”, In Proc. ICoto, “From

ce of Real Wternational Sernet (SAINT

行支援システ

価について述

創的な利用と

である.また

サービスの品

,各種屋内測

辞 省の支援を受

氏(ともに静

並びに実証ル

位に感謝の意

献 スコンピュー

来に向けて:4視覚障害者向45, No.9, pp.

PS による視覚情報処理学会ト ] 2005(2), p度障害者自立画像・GPS 等

な屋内外視覚に 関 す る

bunya/shougact/seika/S6abs統合による

行支援システ度 総 括 ・分 担

bunya/shougact/seika/S06R

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Yuichi Ohtfor PedestriaCPR, MoBT8Folksonomy

World ActiviSymposium o

T2007) keynot

テムの測位機

述べた.シス

と整備,さら

た,準天頂衛

品質格差がさ

測位技術の普

受けて行われ

静岡県立大学

ルートの提供

意を表する.

ーティングと.RFID を用い向け道案内シ918-922, 200覚障害者歩行研究報告 . Q

pp.51-56, 200立支援機器等等のセンサ統覚障害者歩行研 究 」 概

aihoken/cyousstract.pdf 日常利用可能テムの開発に担 研 究報 告aihoken/cyous

Report/Report_

onal PositionAnalysis w

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a, “First-Pern Navigation.21, 2010.

to Sensonomties and Onlon Applicatite, 2007.

機能

ステ

らな

衛星

さら

普及

れた.

),

供及

とネいたシス04. 行支QAI,

5. 等研統合行支要 , saji

能なに関書 ,

saji_M

ning with ra”,

ata, an

nsor cial

321,

d of tion

ata, king PaR,

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