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「わが社の新製品、新技術/シリーズ5:アマダ」 2015 年 1 月
1 全国厚板シヤリング工業組合
加工領域拡大、高品質レーザ、省エネ、フルレンジ自動連続運転、省スペースを実現
NEW ファイバーレーザマシン 「ENSIS-3015AJ」
株式会社アマダ
ブランク開発部門
1.はじめに -レーザマシンの市場動向-
CO2 レーザマシンが板金加工用途として本格的に普及し始めてから、既に 30 年以上が経
過しています。
その中で発振器出力の拡大、マシンの高速化、システムの自動化など、技術は進化し続
け CO2 レーザマシンは切断用として確固たる地位を築き上げてきました。
これまでの金属加工、特にレーザ切断分野の主役は CO2 レーザ(ガスレーザ)でしたが、
さまざまな課題も抱えていました。
高出力を安定して得られる反面、発振効率が低いため熱に変換される割合が高く、大き
な冷却装置が必要で、特に板厚が厚くなるほどこの影響は大きくなります。この解決策として
弊社ではクーリングカットシステムを採用し、切断ポイントを冷却しながらの切断を提供して
います。
生産性向上に加えて変種変量、異種材加工への要求に対しては、①CO2レーザの特性
から金属への吸収率が低く高反射材の加工が困難、②消費電力が大きい、③材料への熱
影響が大きい、④ミラー、レンズ、ガス送風器などのメンテナンスが必要、という課題がありま
した。
これらを解決する技術として、YAG レーザをはじめとする固体レーザが発展してきましたが、
YAG レーザにもさまざまな課題があります。①発振効率が低く消費電力が大きいため高い
集光性を得るのが困難、②経過時間によるビームの変化(熱レンズ)、③レーザ励起用フラ
ッシュランプの寿命が短く定期的な交換が必要、などがありレーザ切断の分野では CO2 レ
ーザが主流であり続けました。
その後、高出力で高い集光性を得ることができる固体レーザであるファイバーレーザの開
発が進み、1998 年に kW クラスの高出力化が実現されてから金属加工分野で急速に普及
が進みました。当初、ファイバーレーザは3mm 以下の薄板では加工速度・加工品質の両面
で CO2 レーザを圧倒するパフォーマンスを発揮しましたが、3mm を超える厚板では加工速
度・加工品質の面で CO2 レーザにおよびませんでした。
そのようなファイバーレーザの課題、すなわち薄板から厚板までのフルレンジ加工、加工
領域の拡大というニーズが生まれてきました。
この課題に対応するため、アマダが開発した画期的な「ENSIS-3015AJ」の最新テクノロ
ジーを以下に紹介します。
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2.ファイバーレーザマシンの優位性
ファイバーレーザマシンの優位性は、主に次の3項目が挙げられます。
① 高効率レーザ加工
② 省エネルギー
③ 低消耗品・メンテナンスの容易化
① 高効率レーザ加工
CO2 レーザと比較して、ファイバーレーザはビーム品質が良く、集光径をより小さく絞るこ
とが可能なので、集光点のエネルギー密度を高くすることができます。
また、プラズマに対する透過性にも優れているため、アルミ材の薄板領域での超高速加
工を実現することが可能となりました。
CO2 レーザの波長が 10.6μm なのに対して、ファイバーレーザの波長は 1.08μm である
ため、各種金属に対して高い吸収率を持っています。これにより銅、真鍮、チタンといった
CO2 レーザでは比較的加工の難しかった高反射材や難加工材の加工を可能とし、加工領
域の拡大を図ることが可能となりました。
② 省エネルギー
ファイバーレーザ発振器は発振効率が高く、CO2レーザ発振器と比較し1/3の電力(当社
比較)で稼働させることが可能となり、圧倒的な省エネルギー効果を実現することができます。
さらに発振効率が高いためロスするエネルギーも少なくなり、周辺設備(冷却装置等)の能
力も抑えることができるので、あわせて省エネルギー化を図ることができます。
当然、CO2 レーザと比較して大幅なランニングコスト削減が可能となります。
③ 低消耗品・メンテナンスの容易化
CO2 レーザ発振器は電源、放電空間、ガス送風器、熱交換器、共振器、光学系ミラーなど、
多種多量の部品にて構成されており、メンテナンスの課題を抱えています。
特に光学系のミラーやレンズなどは、一定周期ごとにクリーニングが必要となり、機械停止
およびランニングコスト増大の原因となっています。
ファイバーレーザ発振器はレーザモジュール、コンバイナー、ビームシャッターなどで構成
され、定期的なメンテナンスがほとんど不要な構造となっています。
また、外部光学系においては CO2レーザの場合、ミラー伝送のために伝送空間を密閉し、
さらにパージエアなどでクリーン度を保つ必要があります。その場合でもミラーは汚染される
ため、定期的なクリーニングが必要となっています。さらに伝送空間を密閉する光軸ジャバラ
なども消耗品のため、寿命を見越した定期交換が必要となります。
一方、ファイバーレーザの場合は、発振器のシャッターユニットから加工ヘッドまでをプロ
セスファイバーにて接続し、光が自由空間に出ない構造となっており、外部の汚染が少なく、
定期的なメンテナンスがほとんど不要な構造となっています。
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3.現行ファイバーレーザマシンラインナップ
「ENSIS-3015AJ」を紹介する前に、まずその土台となった弊社ファイバーレーザマシン
を紹介します。
① FOL-3015AJ ( ”3015” は最大加工寸法 3070mm×1550mm を示します) アマダは4kW ファイバーレーザ発振器「AJ-4000」を自社開発し、リニア駆動を搭載した
高速・高精度マシンとして「FOL-3015AJ」を開発し、2011 年より市場投入しました。(図1)
図1 ファイバーレーザマシン「FOL-3015AJ」
② FLC-3015AJ/FLC-4020AJ FOL-3015AJ の高速・高精度を受け継ぎ、自社製ファイバーレーザ発振器「AJ-2000」を
搭載し、マシンサイズのシリーズ化、自動化ソリューション提案、フレキシブルレイアウト、安
定稼働支援ツールなどに対応して、「FLC-3015AJ」を 2013 年4月より市場投入しました。
(図2)
図2 3軸リニアドライブ・ファイバーレーザマシン「FLC-3015AJ」
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③ LCG-3015AJ 自社製ファイバーレーザ発振器「AJ-2000」を加工機に搭載して、省スペース化と省エネ
ルギー化を徹底追求したマシン「LCG-3015AJ」を 2013 年 11 月に発表し、2014 年より市
場投入しました。(図3)
図3 グローバルスタンダード・ファイバーレーザマシン「LCG-3015AJ」
4.NEW ファイバーレーザマシン 「ENSIS-3015AJ」
それでは、本テーマである NEW ファイバーレーザマシン「ENSIS-3015AJ」 を紹介しま
す。
ENSIS-3015AJ は出力2kW のファイバーレーザ発振器と特殊光学部品によるビーム可
変ユニット搭載の相乗効果により、基本性能を格段に向上した画期的なレーザマシンです。
(図4)
図4 省エネ・変種変量・ワイドレンジ・ファイバーレーザマシン「ENSIS-3015AJ」
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自社製ファイバーレーザ発振器(2kW)を搭載し、独自の光コントロール技術により、従来
4kW で切断していた厚板を加工することができます。世界で初めての試みであり、最適最
少電力で稼働した省エネルギー効果は絶大なものがあります。(図5)
図5 最適最少電力による2kW での厚板加工
5.「ENSIS-3015AJ」 5 つのテクノロジー
① 1 台のマシンで薄板から厚板までの切断が可能
② 省エネ効果による効率の向上
③ フルレンジ自動連続運転(人的資源の省力化)
④ 発振器 50%のサイズダウンによる機電一体型省スペースを実現
⑤ イージーオペレーション
上記5つのテクノロジーの詳細を以下に示します。
① 1 台のマシンで薄板から厚板まで切断が可能
ファイバーレーザマシンは薄板の高速切断が得意で、厚板の切断に関しては CO2 レーザ
に見劣りするという認識が一般的でした。アマダではこのポイントに着目し、板金加工に最適
なビーム制御技術を自社開発し、このビームを自在に可変させることで、ますます多様化す
る変種変量生産に対応できるマシンにしました。
ファイバーレーザの薄板加工能力の特長と CO2レーザの厚板加工能力の特長を融合した、
最適なビームコントロールを実現しました。(図6)
薄板加工
厚板加工
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これによりレンズ交換などの段取りなしに、薄板から厚板(フルレンジ)まで切断が可能とな
ります。
図6 ビームコントロールイメージ図
② 省エネ効果による効率の向上
ファイバーレーザによる省エネルギー効果はもとより、2kW で4kW 相当の厚板切断を可
能にすることで最適最少電力での稼働が実現可能となり、さらなる省エネが見込めます。
厚板の加工は4kW 相当の電力が必要でしたが、2kW 相当の電力で充分となり、約 37%
の省エネルギー効果が発揮されます。(図7)
図7 2kW と4kW の消費電力量比較
最最適適ビビーームムココンントトロローールル
薄板 厚板
フファァイイババーーレレーーザザ、、CCOO22レレーーザザのの特特長長をを融融合合
ビーム形状イメージ
<ファイバーレーザ>
ビーム形状イメージ
<CO2 レーザ>
加工時
加工時
待機時待機時
0
2000
4000
6000
8000
10000
12000
14000
16000
AJ4000 AJ2000
約 37%ダウン
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③ フルレンジ自動連続運転(人的資源の省力化)
システムアップの一例として、今回新たにファイバーレーザ加工用のマニプレーター装置
「MPL シリーズ」と高速フォーク式パレットチェンジャー「ASFH-3015」が加わりました。
MPL はシャトルテーブル(LST)上の材料搬入・製品取り出しを手動から自動にシステム
アップできる装置となっています。さらに素材・製品用自動倉庫 MARS に接続することも可
能となっているため、さらなる長時間の自動連続運転にも対応可能となります。(図8)
LST+MPL(レーザ用マニプレーター) LST+MPL+MARS(自動倉庫) 図8
さらに自動連続運転を安定稼働させるためのオプションとして、ピアス監視や加工監視を
行う「加工モニタリング」、加工に最適なノズルを自動で交換する「ノズルチェンジャー」、厚
板安定加工をサポートする「WACS」があります。
④ 発振器 50%サイズダウンによる機電一体型省スペースを実現
光モジュールを1モジュール当り2kW とすることで、高出力・高品質なレーザビームを実現
するとともに、約 50%のサイズダウンに成功しました。これによりマシン本体にモジュールとし
て発振器をビルトイン化して搭載することが可能になり、面積当たりの生産性を大幅に向上
することができます。(図9)
図9 加工機リア側に発振器を搭載した「ENSIS-3015AJ」
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⑤ イージーオペレーション AMNC 3i 最新型 NC 装置 AMNC 3i は、素早くスマホ感覚で操作できます。大画面のため視認性
がよく、1度に多くの機能・情報を表示できるので、操作性の飛躍的な向上、段取り時間の大
幅な短縮、品質・設備管理のサポートまで多くの新機能を実現しました。
6.アマダの開発体制と今後の展開
CO2 レーザからファイバーレーザに発展してきたように、レーザは常に発展を繰り返し続け
ています。時代のニーズは変種変量生産、省エネルギー、さらなる加工領域の拡大を求め
ています。
加工機メーカーが発振器を外部調達しているのに対して、アマダは「機械、制御、発振器、
光学機器、ソフト、周辺など」を一体で開発する総合力で、エンジニアリングのアマダを実現
しております。
アマダは金属加工機械の総合メーカーとして、板金加工に特化したファイバーレーザ技術
の開発環境を整えるとともに、トータルソリューションとして自動化に向けたさらに上流のソフ
トウエアおよび溶接までを視野に入れた、他社との差別化を図るレーザマシンの開発に取り
組んでまいります。
【お問い合わせ先】
・グローバル特販部 特定法人グループ 豊田 圭二 (TEL:0463-91-8139) または
・ソリューション企画部 レーザ企画グループ 佐藤 裕二 (TEL:0463-96-3127)