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特集/排熱回収の最新技術
Vol.62 No.12 2010 45
HRS UXバーナは,「工業用燃焼炉の安全通則(JIS
B 8415:2008)」で「一台で給気および排気を同時に
行わせる機能を持つリジェネバーナ」と定義されたシ
ングルリジェネバーナである。メーカーによってはセ
ルフリジェネバーナとも呼ぶ。一台でリジェネ運転で
きるので,床または天井へバーナを取り付ける管式加
熱炉やバーナ付蓋を着脱する取鍋予熱にも適用できる。
使用できる燃料はガス燃料に限らず,油ダレの原因と
なる交互切換を伴わないため,液体燃料も容易に利用
でき,従来はリジェネバーナを採用できなかった分野
および新しい用途が期待される。
HRS UXバーナの特徴と効果的な利用例について紹
介する。
1.HRS UXバーナは単一バーナでリジェネ
運転
二台を一組として,短時間に交互に切り換えながら
燃焼するリジェネバーナをJIS B 8415では交互燃焼式
リジェネバーナと呼ぶ。交互燃焼式では燃焼している
バーナは設置されたバーナの半数となり,切り換えの
度にバーナは点火,消火を繰り返す。
HRS UXバーナは一台で給気及び排気を同時に行わ
せる機能をもつ連続燃焼式リジェネバーナである。一
台のバーナに複数の蓄熱ユニットを備えており,一部
の蓄熱ユニットで炉内排ガスを吸引して蓄熱している
間,他の蓄熱ユニットで燃焼空気の予熱を行うことに
NFK HRS UXバーナ(連続燃焼リジェネバーナ)の特徴と利用例
一台で給気と排気を同時に行える連続燃焼式バーナが登場。取鍋予熱や管式加熱炉への適用が見込まれる。 (編集部)
日本ファーネス㈱
宮田 誠,軽石 健志,石母田 浩敬
特集/排熱回収の最新技術──ヒートポンプ,リジェネバーナ
よって,蓄熱・放熱を繰り返す(図-1参照)。この方
式ではバーナは点火・消火せずに連続燃焼する。蓄熱
している状態の蓄熱ユニットを排気モードと呼び,放
熱している状態の蓄熱ユニットを空気モードと呼ぶ。
バーナが連続燃焼であるため,交互燃焼式リジェネバ
ーナと比べ炉内圧力変動を抑制できるが,図-2のよう
に空気モードと排気モードの切換タイミングをずらす
ことで,炉内圧力の変動をより少なくすることができ
る。図-1の例では,燃焼空気を送り込む送風機を用意
しているが,炉内圧力で排風するために排風機を省略
している。また,交互燃焼式リジェネバーナに見られ
図-1 HRS UXバーナの切換動作
送風機
C,D,E
A,B
DC
B A
E
切換時間
メディアA
メディアB
メディアC
メディアD
メディアE
空気モード 排気モード
排気モード
排気モード
排気モード
空気モード
空気モード
空気モード
空気モード
0 6 12 18 24 30秒
図-2 空気モードと排気モードのタイミング
46 月刊「省エネルギー」
るバーナの点消火に伴う燃料や安全制御の切換が不要
で,システムは単純となる。
2.HRS UXバーナの構造
NFKではHRS UXバーナを構成する燃焼ユニット,
切換機,蓄熱ユニットなどを標準ユニット化しており,
それらの組み合わせにより,燃焼量,燃料種など多様
な客先の要求仕様に対応できるようにしている(図-3,
図-4参照)。HRS UXバーナでは,蓄熱ユニットをメ
ディアカセット,空気・排気の切換弁をスイッチバル
ブと呼ぶ。
3.UXバーナの不可視火炎と均一加熱特性
HRS UXバーナはNEDOのプロジェクト1),2)で開
発された高温空気燃焼技術により,燃料と燃料の自然
着火温度を超える高温予熱空気を高速で炉内に吹き込
み,大量の炉内ガスを巻き込みながら燃焼する。この
ため,高温空気燃焼の特徴である透明度の高い火炎を
炉内全域に渡って均一に分布させることにより,被加
熱物の表面温度を均一に加熱することが可能である。
HRS UXバーナは高分子ガスまたは液体燃料を一
次燃焼部(UX燃焼機構という)により分解した後で,
高温空気で二次燃焼するため,炉内温度が約800℃以
上では,火炎は透明となる。冷起動時(図-5参照)の
可視火炎は高温時(図-6参照)の透明火炎になる。炉
内温度の上昇とともに透明度の高い火炎が形成される
様子をhttp://www.furnace.co.jp/product/hrs/hrsux/
の動画で提供している。
4.効果的利用例
納入事例は,1997年に始まり,2010年10月現在でテ
スト炉およびスクラップ&ビルド炉以外の31炉のすべ
てが運転継続中である。取鍋予熱用5炉を除いて,管
式加熱炉用である。管式加熱炉の実績のうち,9炉が
円筒竪型炉であり,残りの22炉が三菱化工機殿経由の
小型オンサイト水素製造装置(最新タイプはHyGeia:
図-3 ユニットによる構成
一次燃焼タイル
PMPパイロットバーナ
燃焼ユニット
スイッチバルブ(切換機)
メディアカセット(蓄熱ユニット)
空気排気
型番 UX-212s5
燃焼量 1MW(86万kcal/h)
パイロットバーナ 10〜20kW
メディアカセット数 5個
燃料ガスタイプ 写真に示す
燃料油タイプ ガンを変更して可
取付フランジ OD 1,300mm
炉体開口部 φ1,170mm
重量 800kg
高さ(取付フランジから上) 1000mm
高さ(取付フランジから下) 477mm
断熱厚さ 377mm
図-4 HRS UX-212s5バーナの外観とサイズ
炉内温度500℃では輝度の高い可視火炎となり,切換動作と共に火炎が移動する
図-5 冷起動時の可視火炎
図-6 高温時の透明火炎
炉内温度800℃では透明火炎となり,火炎根元がブルーに見える
特集/排熱回収の最新技術
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ハイジェイアと呼ぶ)であ
る。
高温空気燃焼とリジェネ
効果によりコンベクション
やエアプレヒータなしで80
%以上の熱効率を得られ,
NOxの レ ベ ル も15ppm
(6%O2換 算 )@870 ℃( 都
市ガス13A)と十分低い。
対応可能な燃料も,主燃料
として,都市ガス,LPG(プ
ロパンおよびブタン)のよ
うなガス燃料,ナフサ,灯
油,A重油のような液体燃
料で実績がある。パイロッ
ト燃料としては,都市ガス,
LPG,水素などが使われて
いる。また,水素製造装置
用バーナでは,補助ガスガ
ンを装備することで,水素
分離過程で発生するPSA
オフガスが主要燃料として
有効利用されている。
円筒竪型管式加熱炉(図
-7参照)および取鍋予熱装
置(図-8参照)への適用実績例を示す。管式加熱炉へ
の適用では,単なる排熱回収効果だけでなく,均一加
熱による管表面温度の低下により伝熱管の寿命延長も
期待できる。取鍋予熱装置では,交互燃焼式リジェネ
バーナと比較して,軽量小型であるために蓋上への配
置が容易で,取鍋を転倒させなくても予熱が可能であ
る。また,従来バーナを使用した場合と比較して昇温
時間の短縮も可能である。今後も取鍋予熱と管式加熱
炉への適用拡大が見込まれるが,その他の利用可能分
野への適用も期待される。
5.まとめ
HRS UXバーナはユニークなリジェネバーナであり,
用途はまだ十分に開拓されていない。現在用意されて
いるHRS UXバーナの最大燃焼量は20kW(1.7万kcal/
h)タイプから1MW(86万kcal/h)タイプであるが,
排熱回収が未了である小型管式加熱炉や取鍋予熱の市
場から判断すると,約2.3MW(2,000,000kcal/h)まで
のスケールアップが求められる状況にあり,開発を進
めている。
参考文献1) NEDO,高性能工業炉の開発成果報告書,平成5年3月
〜平成11年3月2) NEDO,高温空気燃焼制御技術の開発成果報告書,平成
12年3月〜平成16年3月
図-7 管式加熱炉への適用
炉下に配置できるコンパクトなUXバーナ
プロセス流体出口
プロセス流体入口
伝熱管(ヘリカルコイル)
UXバーナで排熱回収した低温排気を接続
管式加熱炉への適用実績
仕様
種類 円筒堅型管式加熱炉
炉内断熱 セラミックファイバ
炉内サイズ φ1808×H3000
伝熱管 φ100×TCD1,400
燃焼方向 上向き
燃焼量 500kW
燃料 天然ガス
熱効率 80〜90%
図-8 取鍋予熱装置への適用
取鍋
強循環で底まで十分加熱
排風機に代わるエジェクタ
蓋の上に配置できるコンパクトなUXバーナ
取鍋予熱装置への適用実績
仕様
用途 取鍋予熱装置
炉内断熱 レンガ
炉内サイズ φ2,322×H2,128
燃焼方向 下向き
燃焼量 600kW
燃料 A重油
燃料削減率 45%