nihongo1

4

Click here to load reader

Upload: akao-koichi

Post on 04-Jun-2015

693 views

Category:

Education


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: Nihongo1

- 1 -

2011年5⽉20⽇

「日本語表現法」2011年度 社会学科クラス 論証の例題

反駁① 死刑になりたいがために犯罪を起こす犯罪者がいるのではないか。

② 「人の命を奪った者は命をもって償うべきだ」という死生観が日本人には根強いとあ

るが、死刑を執⾏された人も命を奪われたという部分では同じではないだろうか。

③ 内閣府の調査で質問に答えた人の⺟数が不明である。81.4%と聞くと多いように思わ

れるが、⺟数が少ない場合は⼀概に多いとは⾔えす、根拠の正当性がなくなる。

④ 「人の命を奪った者は命をもって償うべきだ」とする死生観と、「場合によっては死

刑もやむを得ない」という回答は同じ意味の内容ではないので、この根拠は事実を支える

ことができてない。矛盾が生じている。

⑤ 内閣府の調査で「生かしておいて罪の償いをさせたほうが良い」と答えた人が約60人

いることから命を持って償うべきだという死生観が一概に日本人の考え方だということは

できない。また、調査の中でも回答した人がいるように、人を殺すことは刑罰であっても

人道に反することである。

⑥ 「人の命を奪ったものは命をもって償うべき」とする死生観が日本人に根強い為にこ

の結果が得られた、とは必ずしも⾔えない。なぜなら、死刑制度の存置に賛成した理由と

して「凶悪犯罪を犯した者は命で償うべき」を挙げた者の割合はわずか54.7%であっ

たからだ。6割にも満たない意⾒を採りあげて、それを「⽇本人に根強い」と表現するの

には無理がある。

⑦ 「場合によって死刑もやむを得ない」と答えた者のうち、その理由を「死刑を廃⽌す

れば,被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」と答えた者が50.7%いた。

気持ちというものは本人にしか分からないものであり、それを他人がある事実の根拠とす

るには不⼗分だ。

⑧ 「場合によっては死刑もやむを得ない」というのは、「できれば死刑は⾏ってほしく

ない」という意⾒の裏返しでもある。/被告人が死刑になった事件と似たような事件がま

た起こることもあり、「抑⽌⼒」があるとは⾔い切れない。

⑨ ⽇本人にそのような死生観が根強いこと、⼤多数の意⾒に従うことを人間の命

を奪う死刑を正当化する理由の根拠にしていいのか。/そもそも本当にそういった死生観

が現代の日本人に根強いのか。/冤罪のリスクがある場合、「人の命を奪った者は命をも

って償うべきだ」とする死生観が日本人に根強いという根拠だけで死刑をしてしまってい

いのか。

⑩ 被害者やその家族の無念を晴らす⼿段として死刑を使うということは許されるのか。

/被害者やその家族に対しての同情で死刑制度を容認してよいのか。

⑪ 「どんな場合でも死刑は廃止すべきである」と答えた者の割合も20歳代,40歳代で高

くなっている。

⑫ いくら犯罪者であったとしても、殺してしまえば、その刑を執⾏した人も人殺しにな

ってしまうし、犯罪者にもその人の死を悲しむ家族がいる。

⑬ 死刑とは命を償うために実⾏されるものではない。/死刑とは実⾏することで国⺠に

⾒せ⽰し、同じ犯罪を犯さないようにさせるためである。/命をもって償うといっても被

告に反省が⾒られなければ意味がない。/場合によっては死刑もやむを得ないという意⾒

だと、どの範囲で死刑を実⾏してよいのか曖昧になり、新たな問題につながる。/日本人

の死生観は「死んでも魂となり生き続ける」というものであり、命をもって償うことに意

Page 2: Nihongo1

- 2 -

味が⾒出だしにくい。

⑭ 「場合によっては死刑もやむをえない」とあるが、死刑の場合の判断基準は何なのか。

死生観が日本人に根強いから死刑はするべき、というのはあいまいすぎるのではないか。

命を命で償って誰が得をするのか。

⑮ 死刑に犯罪の抑⽌⼒があるとは⾔えない。死刑判決を受けた同種の事件からほどなく,

似たような事件が起きるケースがある。例えば,佐賀・⻑崎連続保険⾦殺人事件(平成10

年10⽉)と本庄保険⾦殺人事件(平成11年5⽉)。どちらも保険をかけた⾝内を殺害し保険

⾦を騙し取ったことで死刑判決を受けている。

⑯ 「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者(1,668人)に,将来も死刑を廃

止しない方がよいと思うか,状況が変われば将来的に死刑を廃止してもよいと思うか聞い

たところ,「将来も死刑を廃止しない」と答えた者の割合が61.7%,「状況が変われば,

将来的には,死刑を廃止してもよい」と答えた者の割合が31.8%となっている。

・今現在死刑を廃止することに疑問を抱く者も、将来は死刑を廃止することも考えている。

よって、「死刑を廃⽌すべきでない」という論証は成り⽴たない。

⑰ 「人の命を奪ったものは命をもって償うべきだ」とあるが、国が死刑によって人の命

を奪うことは許されるのか。/被害者家族は死刑によって本当に救われるのか。

⑱ ・根拠の部分に「日本人には根強い」とあるが、これは明らかに確かなものではなく、

なぜこのようなことが言えるのか記述がないことから、はっきりとした根拠とは言えない。

⑲ 死刑による抑⽌⼒は統計的に証明されていない。

⑳ 原調査では「どんな場合でも廃止」と「場合によって廃止」の二つの選択肢のみしか

与えておらず、いずれにせよ該当者へ廃止の方向へ向かわせているので81.4%はここ

で提⽰される意⾒においてふさわしいデータとは⾔えない。

㉑ 「人の命を奪った者は命を持って償うべきだ」とする死生観が⽇本人には根強いとあ

るが、それは主に古来の切腹、⾃決から派生するものであり、時代が替わりつつあるのだ

から、古くからの死生観にこだわっていて良いとは思えない。

㉒ 確かに、凶悪犯罪を防⽌するためには、効果がある刑罰が必要である。そして、死刑

は人権国家ではもっとも重い刑罰であると考えられている。しかしながら、死刑は本当に

もっとも重い刑罰なのだろうか。死刑になれば、罪に苦しむことはない。死んで罪を償う

よりも、罪を背負いながら生きていく方がつらくて苦しく、重い刑罰になるのではないか。

㉓ 死生観が根強いからという理由で、死刑を⾏うべきではない。/生かしておくこと=

釈放ではない。終身刑なら刑務所から出られないから、一般社会で犯罪を犯すことはない。

しかし、日本の終身刑は、実質的には終身刑ではない。/死刑になることが、被害者らの

報いになるとは限らない。/「抑⽌⼒」になっておらず、凶悪犯罪が未だにおきている。

反論①事: 動機を「死刑になりたかった」と述べる犯罪者がいる。

根: 死刑があるから凶悪事件を予防できている、と考えるのは早計だろう。

②・いくら凶悪な犯罪を⾏っていても命の重さは同じだと思うので、それを奪ってしまう

のは良くない。

・もし冤罪が晴れたとき、死刑執⾏後にはその人物に償いようがない。

・死刑判決を下す人、執⾏する人たちが重たい罪悪感などを感じてしまうのではないか。

③人の命を奪う、ということに罪があるならば、罪人を死刑にすることにも罪があること

になる。死刑執⾏に関わった人もまた罪人となってしまう。死刑執⾏に関わった人もまた

死刑にすべきであるということになる。すると、⽇本から死刑を執⾏する人がいなくなる

Page 3: Nihongo1

- 3 -

ため、⾃然と死刑制度は廃⽌されると思われる。

④事: 少なくとも過去10年間で10件以上の冤罪が発生している。

根: 多くの冤罪が発生してるということは、罪のない人が多く死刑になって殺されてい

ることを意味し、死刑制度は罪のない人を殺してしまう危険性がある。

⑤ 確かに、死刑を刑罰とすれば犯罪を減少させることができるかもしれない。しかし、

死刑にして殺してしまうより生きて罪の償いをさせるほうが犯罪者に苦しく、大変な思い

を味あわせることができると私は思う。内閣府の調査にもおよそ60人が「生かしておい

て罪の償いをさせるたほうが良い」と回答している。

⑥事: アムネスティーインターナショナルが、死刑制度廃⽌を⽬指して活動している。世

界的範囲の死刑廃⽌に関する国際条約『市⺠的および政治的権利に関する国際規約の第2

選択議定書』を採択した国が73ヵ国存在する。また、あらゆる犯罪に対して死刑を廃止

している国は95ヵ国である。

根:犯罪者には生きて償ってほしいという被害者の意⾒が存在する。死亡すれば更生する

チャンスを失ってしまう。たとえ国家であれども、人を殺すことは許されないという意⾒

が存在する。

⑦ 事:刑法が定めた死刑が憲法に違反している。

根:日本国憲法第36条では、公務員による残虐な刑罰は禁止されている。そして刑

法11条1項では日本の死刑は絞首刑であるとされており、絞首刑は十分に残虐な方法で

ある。

⑧ 事:⽇本とアメリカ以外の先進国では死刑制度は廃⽌、または執⾏凍結がされている。

根:現在、世界的な意⾒として死刑は廃⽌すべきだという⾵潮にある。

⑨ 人間の命は、人間が決めることができる事ではないと思う。人間の命を奪いながら審

判するという⽅法は正しくない。死刑執⾏で人間の命を奪う形式の処罰に反対する。

⑩ 死刑になったところで、被害にあった人やその家族の悲しみは無くなるというわけで

はない。生きて償うことの方が被告人にとっては辛い場合もある。

⑪ 事:世界の3分の2を超える国が、法律上、もしくは事実上死刑を廃⽌している。

根:世界⼈権宣⾔に明記されている⽣きる権利を侵害するから。/死刑に抑⽌⼒がない

というデータがでているため、死刑の抑⽌⼒としての効果を得られないと判断したから。

⑫ ⼤きな権⼒でも人間の生命をむやみに判断して殺すことはできない。それで生命は公

平で⼤切な存在であるので国家が生命に対して、いや,人間が人間に対して生命を奪うこ

とは⺠主社会を定着しなければならない現社会での死刑制度は恥辱的な法である。だから

犯罪者たちに対する措置と⼿段が死刑制度ではなく、他の解決策を考えて⾒た⽅が良い。

⑬ 事:カナダにおける死刑制度廃⽌前と死刑制度廃⽌後の人⼝10万人当たりの殺人

率をグラフにしたものによると、死刑制度を廃⽌する前の年である1975年の殺人率は

3.09件だが、死刑制度廃⽌後の1980年には2.41件に減っている。その後の殺

人率も減っていき、2003年には1.73件にまで殺人率が減ったのだ。カナダでは、

死刑制度廃⽌前に⽐べ、殺人率が約半分に減っているのである。

根:死刑制度があるから凶悪犯罪が減るという可能性は極めて低い。

⑭ 死刑に値するぐらいの罪を犯したのならば、死刑で殺してしまうのではなく、骨身に

しみるほど罪を反省させて償わせる⽅がいいのでないだろか。

⑮ 死刑を廃止すべきだと考える人に対しての調査において「生かしておいて罪の償いを

すべき」と述べる人は50%を占める。死刑を宣告された死刑囚は本当に真面目になると

⾔われており、そんな反省している被告を死刑にしてはいけない。命をもって償うといっ

ても反省がなければ償ったと⾔い切れない。

⑯ 死刑にする判断基準は人によって違うため、全員が納得する判決は難しい。死んだか

Page 4: Nihongo1

- 4 -

らといって、償いをうけたかどうかはわからない。それよりは⻑期間収容し、労働等の貢

献をしつつ、⾃らが犯した罪の⼤きさを感じ、それについて反省する時間を設けたほうが

よいと考える。

⑰ 事:死刑判決がでたが冤罪といわれている事件は戦後で10件を超えている

根:被害者の遺族への同情などの思いが判決に反映されている

⑱ 事:内閣府の調査で「場合によっては死刑もやむを得ない」と答えた者で、状況が変わ

れば,将来的には,死刑を廃⽌してもよいと答えた者の世代別割合は、全体的に⾒て、世

代が下っていくにつれて⾼くなり、20〜29歳では47.4%であり、ほぼ半数近くが死刑を

廃止することに反対しているわけではない。

根:「死刑であっても殺人であっても人の命を奪うという点で同じである」という認識

が現在の若い世代には根付いている。

⑲ 事:死刑が凶悪犯罪の抑制になるとは限らない。

根:1989年,国連総会において,「死刑の廃⽌を⽬指す市⺠的及び政治的権利に関する

国際規約・第二選択議定書」が採択され、「死刑制度の抑⽌⼒を検証しようという研究で

は、死刑が終⾝刑よりも⼤きな犯罪抑⽌⼒になるという科学的根拠を発⾒することができ

なかった」と発表している。

⑳ 事:死刑は最も重い刑罰であり、人ひとりの命が裁かれる。

根:人の命の重さというものは、裁判所であっても図り知ることができない。

㉑ アメリカでは死刑を執⾏した後で無実が証明された事件がある。⽇本にも死刑を下し

た事件で冤罪が証明されたケースがある。無実の人を殺さないようにするためにも、死刑

は廃止すべきだと思う。

㉒ :仮に殺人者が死をもって詫びたところで、殺害された者が息を吹き返す訳でもなく

遺族の方々の悲しみが完全に掻き消される訳でもない。自分の命を投げ出せば人の命を奪

える訳でもない。人の命に替えられるものは何もない。もし殺⼈者に少しでも反省の意が

あるのであれば、少なくとも彼のできることは残された遺族のためにすべての生涯をささ

げることだと思う。

㉓ 「死刑もやむを得ない」とあるが、死刑は殺人と同じく、人間⼀人の命を強制的にな

くさせているものであり、生きて罪を償うこともできるはずだ。

㉔ 死刑でなくても無期懲役などで凶悪な犯罪は防げる。凶悪な犯罪が防げるのなら、死

刑にする必要はないのではないか。

㉕ 凶悪な犯罪を犯した者に対して、「命をもって償え」「死刑にしないと被害者がかわい

そう」「生かしておくと危険」。そのような考えをもつ日本人は、確かに多い。しかし、

そのような考えを持つ人が多いからといって、死刑を⾏うことは正しいのだろうか。例え

ば、鳩山前法務大臣が、「最も凶悪な事案の⼀つと思うから、宮崎を(死刑)執⾏すべきだ

と思うが、検討しろと私から指示した」と発言したことには、前に挙げたような考えを持

つ人でも、疑問を持つだろう。あくまでも判決を下すのは、他からの干渉を認めない、独

⽴した司法権をもつ裁判官であるはずだ。また、死刑を制定することが他の犯罪への「抑

⽌⼒」になると考えることは、確かに可能である。しかし、⼀向に凶悪犯罪が減少しない

のはなぜか。そもそも、日本には本質的な終身刑が存在しない。刑法28条では、無期懲

役中でも条件を満たせば仮釈放を許可するとある。したがって、無期懲役という刑が死刑

に⽐べると、軽く⾒られがちなのである。本質的な終⾝刑を作ることができれば、死刑が

必要でなくなるだろう。