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Nanotechリーフレット/ 「カーボン」 A4_4P(表 1- 表 4)No.26_グラフェンを活用した高感度汎用FETバイオセンサ材料の研究開発
26PROJECT
成果の概要
タンパク質の高感度検出によって、アレルギーやがんの早期発見が可能になります。しかし、従来の検出方法である蛍光マーカー法には、工程が複雑、時間がかかる、装置が高価などの問題がありました。そこで現在、これらの問題を解決できる電気的検出法が注目されています。この方法では、高価な処理液が不要で、即時性がある簡単な装置で検出が可能となります。本プロジェクトでは、高感度で様々なタンパク質を特異的に検出できる安価なグラフェンFETバイオセンサを実現するために材料開発を進めました。センサの原理は蛍光法と同じ抗原抗体反応を使っており、特異的な検出が可能です。また、構造は通常のFETと上下を反転し、高感度を実現しました。センサとしての特性は、表1のように蛍光法と同等以上で、これに替わるデバイスとしての可能性を示すことができました。さらに、このセンサを用いたシステムを図1のように作製し、将来のデバイスのイメージを示しました。
個人の健康、食品管理のために、蛍光マーカー法と同等以上の感度とダイナミックレンジ特性を有するFETバイオセンサを開発
グラフェンを活用した高感度汎用FETバイオセンサ材料の研究開発プロジェクト名称
本プロジェクトでは、バイオセンサの普及を目指し、様々な検体を高感度で検出可能な汎用性を持ったバイオセンサ材料の開発を行い、現状の蛍光マーカー法と同等以上の特性をもつグラフェンFETバイオセンサを実現できました。今後、FETセンサの特性を活かして集積化し、マトリックス状のセンサチップを開発することができれば、ごく少量のサンプルから数多くのタンパク質を検出することが可能となるでしょう。これまで、特殊な機関でのみ検査が可能だった血液や、食品の検査が個人レベルで可能となれば、病気の早期発見や、食品中のアレルギー物質の検出が即座にできるようになり、健康管理や食の安全性の改善の一助になると考えています。このために、5年後の製品化を目指して開発をすすめる予定です。
少量のサンプルから、一度に数多くのタンパク質の検出を可能にし、個人レベルでの健康、食品管理を目指す今後の展望
問い合わせ先
プロジェクト参加機関
(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構電子・材料・ナノテクノロジー部 TEL:044-520-5220
メルク(株) 大阪大学
FET FET ELISA)
IgE 4.7ng/ml 105 8.1ng/ml 104 12ng/ml 102
HSP 0.07ng/ml 105 0.04ng/ml 102
表1:グラフェンバイオセンサの特性と蛍光法との比較
図1:グラフェンバイオセンサシステムのプロトタイプ
グラフェンFETバイオセンサを用いたセンサシステムのプロトタイプ
マトリックス状のバイオセンサチップのイメージ
病気を早期発見、NEDOが拓くけんこうなくらし
高感度グラフェンバイオセンサーで迅速診断
Nanotechリーフレット/ 「カーボン」 A4_4P(2-3)No.26_グラフェンを活用した高感度汎用FETバイオセンサ材料の研究開発
レセプターで被われていない表面を別のタンパク質で修飾することで、特異的な検出に貢献
抗原抗体反応をグラフェンFET表面で起こさせ、トップゲート構造を採用することで高感度を実現
抗原抗体反応に用いる抗体は、通常、大きな分子で、グラフェンの表面から遠いところで、タンパク質の吸着が行われます。デバイ長は、グラフェンの表面から数nmの距離で、この中の電荷はドレイン電流に大きな影響を与えるため、抗体による吸着では、感度が低くなってしまいます。これを改善するために、抗体の吸着部位だけを分離したフラグメント抗体や分子の小さいアプタマーをレセプターとして用いることで、高感度化することができました。
アプタマーやフラグメント抗体を用いることで、タンパク質がグラフェン表面により近いところで吸着し、高感度化に成功
安価な酸化還元グラフェンで作成したFETセンサが、蛍光マーカーと同等の特性を発揮
剥離やCVDによるグラフェンは移動度は数百cm2/Vs以上あり、高感度が期待されますが、デバイスの作製工程が複雑になり、安価なセンサの実現には時間がかかると思われます。一方、酸化還元グラフェンは溶液状にすることができ、デバイスの作製に印刷工程を適用でき、コストを下げることができます。このため、本プロジェクトでは酸化還元グラフェンによってFETを作製し、移動度とセンサ特性を評価しました。移動度は、6cm2/Vsと剥離やCVDグラフェンより2桁以上低い値でしたが、感度は剥離グラフェンによるセンサより一桁程度低い特性にとどまり、蛍光マーカー法と同等のセンサ性能を示しました。
アプタマーなどのレセプターでグラフェン表面を修飾しても、修飾されない部分がタンパク質を非特異的に吸着してしまうため、特異的な検出がさまたげられます。これを防ぐために、蛍光マーカー法でも用いられているブロッキング技術を導入しました。
検出原理 ブロッキング技術
酸化還元グラフェンの評価
高感度化技術
小型レセプターによる高感度化技術 酸化グラフェン水分散液
Ag/AgCl
DrainSource
Graphene
SiO2
Si substrate
Chamber
グラフェンFETバイオセンサの構造
グラフェンの表面をアプタマーや抗体で修飾することによって、選択的に特定のタンパク質を吸着できます。通常、タンパク質は電荷をもっており、FETのチャネルに作用し、キャリアの濃度を変えるため、ドレイン電流が変化します。このドレイン電流の変化を測定することでタンパク質の定量的な計測が可能になります。トップゲート構造とすることで、タンパク質の吸着をより高感度で行うことができます。