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ISSN 1346-9029 研究レポート No.431 June 2016 包括的富指標の日本国内での応用(一) 人的資本の計測とその示唆 上級研究員 楊 珏

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ISSN 1346-9029

研究レポート

No.431 June 2016

包括的富指標の日本国内での応用(一)

人的資本の計測とその示唆

上級研究員 楊 珏

包括的富指標の日本国内での応用(一)

人的資本の計測とその示唆

要旨

持続可能な社会を構築するためには、将来世代のニーズを損なわない前提で、現在世代

の効用を高めることが求められている。我々の社会は、持続可能な発展を達成できるかど

うかが喫緊かつ第一の課題となる。包括的富指標は社会の持続可能性を測るため開発され

たもので、この指標によって経済・環境・社会的側面を統合的に評価することが可能とな

った。包括的富指標は人的資本、人工資本、自然資本などによって構成されている。我が

国の場合は、人的資本のシェアが最も高いため、本稿では、人的資本の蓄積の特徴や時空

間的分布変化を分析するとともに、その持続可能性を考察・評価する。推計の結果、国全

体で見た人的資本の純変化および一人あたりの水準は、2000 年以降は減少していることが

明らかになった。持続可能な発展を実現するには、人的資本の増加を中心とする重層的政

策の構築が重要である。また、都道府県別にみると、地域間の水準に大きなばらつきが生

じているが、近年では収束傾向もみられた。分析の結果、人的資本の減少は産業構造や労

働政策などの問題につながる可能性が高い。今後、賃金の安定化や労働参加率の向上を図

るには、国・地域レベルでの産業構造の改善や都市計画による適切な誘導などが不可欠で

あると示唆された。

キーワード:持続可能な発展、包括的富、人的資本、地域間格差

目次

1 はじめに ............................................................................................................................. 1

2 包括的富指標による持続可能性の評価 .............................................................................. 2

3 人的資本の計測 .................................................................................................................. 3

3.1 人的資本の計測方法 .................................................................................................... 3

3.2 人的資本の構成項の算出 ............................................................................................... 4

3.2.1 教育を受けた年数の算出 ........................................................................................ 4

3.2.2 都道府県別生涯賃金現在価値の算出 ...................................................................... 5

3.2.3 推計結果のロバスト性評価 ..................................................................................... 6

4 人的資本の推計結果 ............................................................................................................. 7

4.1 全国の推計結果 ............................................................................................................. 7

4.2 都道府県別の推計結果 ................................................................................................... 9

4.2.1 都道府県別人的資本の推計結果 .............................................................................. 9

4.2.2 都道府県別人的資本の構成項の比較 .................................................................... 12

4.2.3 労働参加率による調整の分析結果 ....................................................................... 17

5 考察 .................................................................................................................................... 19

参考文献 ................................................................................................................................ 25

1

1. はじめに

持続可能な発展は今世紀の中心的なコンセプトである。Rockstrom et al. (2009) および

Steffen et al. (2015) は、「地球の限界」という概念を提起し、人類活動は既に地球の許容

範囲を超えていることを警告した。そのため、従来の経済成長目標としての発展指標であ

る GDP を新たな持続可能性指標に代わることが求められ、これまで「エコロジカル・フッ

トプリント」や「より良い暮らし指標」など多数の持続可能性指標が開発されてきた1。し

かしながら、その多くは短期的な評価指標で、現在我々の経済活動が将来世代の厚生に与

える影響を含めた持続可能性評価ができていない。

2012 年に Arrow らによって開発された包括的富指標2(Inclusive Wealth Index) は従来

の持続可能性指標の問題点を克服し、経済体の資本ストックを包括的に推定することで、

国ベースまたは地域ベースの生産能力を定量的に提示することができた。2012 年 6 月に開

催された国連持続可能な開発会議において「地球環境変化の人間・社会的側面に関する国

際研究計画」(IHDP)は複数のパートナーと共同で包括的富指標を用いた報告書を発表し

た(UNU-IHDP and UNEP 2012)。この包括的富報告書の初版は 20 カ国しか推計ができ

なかったが、2014 年に UNU—IHDP および国連環境計画(UNEP)が共同でリリースした

包括的富報告書(UNU-IHDP and UNEP 2014)では 140 カ国までカバーした。この第二

版では持続可能性の観点から各国において現在の生産・生活水準を維持・向上させるため

のキャパシティーを定量的に分析した。2016 年版も現在編集中で、指標のさらなる改善が

期待されている。

このように、包括的富指標は、現時点で最も注目されている持続可能性指標の 1 つであ

る。この指標を用いて、資本蓄積の観点から地域間の衡平など地域開発の課題に関して考

察し、また、地方における持続可能な社会の創出に向けた施策の在り方について検討する

ことで新たな知見が得られるかもしれない。のちほど、詳しく説明するが、包括的富指標

は人的資本、人工資本と自然資本などによって構成されている。包括的富報告書によると、

日本の包括的富(国レベル)の中、人的資本の割合が最も高く、約 72%(2008 年)を占め

ている。いかに人的資本を維持するのか、日本の持続可能な発展戦略において非常に重要

である。そこで、本研究ではこの人的資本の算出を中心に、国・県レベルのデータベース

を作成し、人的資本の経年変化と特徴を分析しながら、持続可能な地域社会の構築に有効

な政策提言を試みる。本稿の構成は次の通りである。まず、包括的富指標の全貌を簡単に

紹介する。次に、都道府県別の人的資本を計測し、その時空間的特徴を把握する。また、

人的資本の維持について若干の考察も行う。

1 エコロジカル・フットプリント(Ecological Footprint)とは、1992 年に開発された指標で、人類活動

による生態系への負荷を人口ベースで計測するもので、資源の過剰消費を把握することを可能にした。現

在は、WWF をはじめ、国際環境 NGO が主体として計測している。より良い暮らし指標(Better life Index)

とは、2011 年に OECD が開発した指標で、幸福度を中心に生活の質などを計測するものである。 2 包括的富は新国富と呼ばれる場合もある。本稿では、国だけではなく都道府県も研究対象とするため、

包括的富と呼ぶ。

2

図表1 包括的富の構成図表

(出所)筆者作成

2. 包括的富指標による持続可能性の評価

包括的富指標の評価対象は経済体の生産基盤である。生産基盤は制度と資本ストックに

よって構成される。ここでの制度とは、法律や規定、政府に対する信用などであるが、定

量化する指標がないため、包括的富報告書では、資本ストックのみ議論する。本稿で扱う

資本ストックは人的資本、人工資本および自然資本とする3(図表 1)。包括的富指標の最大

の特徴は、シャドウプライス4の導入によって、これまでのフローを中心とした国民会計か

らストックにシフトし、将来世代の厚生を包括に推計することを可能にした。また、図表

1に示すように、二酸化炭素の排出費用など負の資本ストックの増加要因も包括的富計算

のフレームワークに含まれている。

推計されたストックの総

和は包括的富( inclusive

wealth)となり、その純変

化は Genuine Savingsとも

呼ばれる。ある経済体に対

して、包括的富の純変化と

一人あたりの水準が減少し

なければ、その経済体は持

続可能と評価する。ここで、

包括的富の構成項(各資本

の水準)について特に評価

基準は設けられておらず、

互いに代替可能と仮定して

いるため、弱い持続可能性に基づくアプローチとなる5。包括的富の概念は、これまでの応

用対象である国に限らず、地域経済体にも適用可能のため、持続可能な地域の構築に有用

な情報を提供できると考えられる。

地域を対象とした先行研究としては、Mumford (2012) と Yamaguchi et al. (2015)があ

る。Mumford (2012)はアメリカ 48 州を対象に、枯渇自然資本(exhaustible natural capital)、

土地、人工資本と人的資本を推計した。大きい発見が 2 点である。まず、各州間の格差が

非常に小さい。また、GRDP(growth regional domestic product)の増加率が高い地域にお

いて包括的富の増加率が低い傾向がある。このため、彼は一人あたり包括的富の増加率が

一人あたり GRDP の増加率よりも低い場合、長期的に包括的投資(教育、インフラ、資源

3 人的資本、人工資本と自然資本のほか、健康資本、社会関係資本、財政資本を対象とする研究もあるが、

本稿では都道府県単位で計測するために必要なデータが限られているため、健康資本と社会関係資本を考

慮しない。 4 シャドウプライスとは、単位あたり資源を利用することでもたらされる便益である。 5 持続可能性の評価は、弱い持続可能性アプローチと強い持続可能性アプローチに分けられる。弱い持続

可能性アプローチは、技術進歩などによって異なるタイプの資本が互いに代替可能と仮定する。一方、強

い持続可能性アプローチは生態系や資源などの絶対量に限界があるとし、資本間の代替性を認めない。

3

保護政策)が必要と訴えた。宮城県を対象に震災前後の包括的富を推計・比較した

Yamaguchi et al. (2015) は、国ベースの持続可能性評価は地域の特徴を反映できず、ボト

ムアップ的なアプローチが補完的な材料となると指摘した。本稿では、これらの研究結果

を踏まえ、人的資本に注目し、その時空間の変化や、地域間の格差など様々な側面から現

状を把握し、政策提言を試みる。

3. 人的資本の計測

人的資本は経済学において、古くから重視されてきた。アダム・スミスの『国富論』で

は、労働力の集積が分業を可能にし、さらに機械の発明や技術の進歩をもたらしたと指摘

した。つまり、生産過程において労働力人口は経済成長に大きな影響を与えるのである。

しかし、単純労働や資本に頼る製造業から情報やイノベーションに依存するサービス業に

転換しつつある現代社会において、労働力の量よりも生産力を生み出す知識や能力、つま

り、労働力の質が人的資本として重要な要素とされるようになった。そこで、近代の人的

資本の研究は、労働力の質を表す教育年数や職経験などのデータを用いて、人的資本の計

測や人的資本が経済成長への寄与に関する分析を行ってきた。たとえば、Schultz(1961)

では人的資本への投資は経済成長に影響を与える重要な要素であると議論した。また、

Becker(1964)は初めて教育の収益率の研究を行い、教育の経済的価値を推定した。ミク

ロレベルの研究において、Mincer(1974)は、教育および職経験が人々の所得と指数型の

関係であるという理論を構築し、実証研究を行ってきた。その後、Klenow and

Rodríguez-Clare (1997)は Mincer の手法を参考にし、国レベルの人的資本の推計法を構築

した。この推計法による計測はやや大きな値となるが、近年、人的資本への投資は物理的

投資(人工資本)より有効であると述べた研究もあり(Woodhall 2001)、後に Arrow らに

より開発された包括的富指標にもこの推計法を取り入れられた。このように、人的資本の

個人の所得やマクロ経済発展への寄与は大きいとされ、また、これを実証するために人的

資本の計測方法を精緻化してきた。

3.1. 人的資本の計測方法

現在、人的資本の計測は、主にコストベースと所得ベースの 2 つのアプローチに分けら

れる。コストベースアプローチとは、教科書のコストや教育時間コストなど教育にかけた

コストを推定する手法である(Kendrick(1976)に詳しい)。一方、所得ベースアプローチは

教育や職業訓練のアウトプットに基づく手法である(Jorgenson and Fraumeni

(1989,1992)に詳しい)。コストベースアプローチは過小評価の傾向があるため、所得ベース

アプローチを応用する研究が多くみられる。

4

本稿では、UNU-IHDP (2012)の報告書を参考に、所得ベースアプローチを用い、教育年

数と収益率の相関が線形かつ一定であることを仮定し、数式(1)を用いて、推計を行う6。

人的資本 = 𝑒𝐸𝑑𝑢∗𝜌 × 𝑃𝑜𝑝𝑢𝑙𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛(> 15) × ∫ �̅� ∗ 𝑒−𝛿∗𝑡𝑇

𝑡=0𝑑𝑡 (1)

ここで使われたパラメータは下記のように定義する。

Edu: 教育を受けた年数(average years of schooling);

ρ: 人的資本の収益率, 0.085/年7;

Population: 15 歳以上の人口(未就業も含む)8;

T:予想残存勤務年数。年齢・性別毎、定年までに勤務年数を乗じた期待値の合計

から算出;

�̅�: annual rental price 雇用者賃金(平均化したもの);

δ: 割引率(=0.05);

この式の最初の項目は、教育への投資から得られる平均の教育資本を計測している。教

育を受けた年数が長いほど、最終的に収益も高くなる。これを第二の項目、教育を受けた

人口と相乗すると、地域、または国全体の教育資本が得られる。最後の項目は、平均化し

た余剰の生涯賃金現在価値である。ここで注意しなければならないのは、ここの生涯賃金

現在価値は一般的にいうサラリーマンの生涯賃金とは異なり、現時点の人口構造から推計

される平均の余剰生涯賃金現在価値である。この手法には以下のような特徴がある。まず、

収益や生涯賃金の現在価値を単純化するため平均値で算出している。また、賃金の構造は

将来も同じく維持されていくと仮定し、それぞれの年度の余剰の生涯賃金現在価値を推計

する9。

3.2. 人的資本の構成項の算出

3.2.1. 教育を受けた年数の算出

教育を受けた年数(Average years of schooling)に関しては、都道府県別に、初等・中等・

高等教育など教育レベル毎に教育を受けた人口や、15 歳以上人口の割合を用い、県民の受

けた教育年数の平均値を算出する。具体的には、教育レベル毎に必要となる学習年数×(教

育レベル毎の卒業人口/15 歳以上人口)である(数式 2)。

𝑦𝑒𝑎𝑟𝑠 𝑜𝑓 𝑠𝑐ℎ𝑜𝑜𝑙𝑖𝑛𝑔𝑗 = ∑𝑃𝑜𝑝𝑖𝑗

𝑇𝑝𝑜𝑝𝑗× 𝑡𝑖

6𝑖=1 (2)

ここで、j:都道府県; i:教育レベル, i={1,2,3…6};

6近年では、人的資本の非市場価値の計測について多数の研究が行われてきたが、そのためには時間の機会

費用に関してより詳細なデータが必要であるため、本稿では、非市場価値の部分を計測しない。 7 本稿では、人的資本の収益率は UNU-IHDP and UNEP (2012) 包括的富報告書の値を使用する。 8包括的富報告書には 15 歳以上の人口と設定しているが、その理由は、それぞれの国の平均教育水準を満

たしている年齢であるとしているため、本稿でも同じく 15 歳以上にした。 9既存研究では、賃金の増加率を仮定する場合もあるが、日本ではこの 20 年間減少傾向にあるため、現在

と将来は同じ水準であると仮定する。

5

Pop:教育レベル毎の卒業人口;

Tpop:15 歳以上人口-「不詳」10;

t :それぞれの教育レベルにおいて卒業するための必要年数;

推計に用いたデータは、国勢調査の第 2 次基本集計 都道府県別(1970, 1980, 1990, 2000,

2010)である11。

国勢調査の教育レベルの分類は、小学校・中学校、高校・旧中、短大・高専、大学・大

学院、在学者、未就学者である。そのため、i={1,2,3…6}となり、t={9,12,14,16,x,0}である。

ここで、x(在学者の教育年数)に関しては、都道府県別在学者数内訳(文部科学省 1991-2013)

を用いて、推計を行った。ただし、文部科学省のデータ区分は国勢調査と異なる部分があ

る。そこで、それぞれのレベルの教育年数の中間値を用い、在学者数の平均教育年数を推

計した。具体的には、小学校(3 年)、中学校(7.5 年)、高等学校(10.5 年)、盲聾学校(9

年)、養護学校(9 年)、高等専門学校(13 年)、短期大学(13 年)、専修学校(13 年)、大学

(14 年)などである。ただし、データが欠損している 1990 年の在学者平均教育年数は 1991

の結果を用いた。また、1970 年と 1980 年の在学者平均教育年数は 10 年とした12。

3.2.2. 都道府県別生涯賃金現在価値の算出

都道府県別生涯賃金現在価値の算出に用いたデータは、賃金構造基本調査の第 1 表『年

齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額』の

企業規模計13である。教育データに合わせて 1970、1980、1990、2000 年と 2010 年のデー

タを用いた。調査項目の定義については、厚生労働省・賃金構造基本調査に詳しい。

具体的には、15~64 歳145 歳段階15年齢別性別企業規模計欄の「きまって支給する現金給

与額」および「年間賞与その他特別給与額」を利用し、各年都道府県別男女別の平均化し

た生涯賃金を算出する。ここで、それぞれ調査した年の賞与を使用しており、賃金水準と

同じく、2000 年には最も低い水準となっている。なお、推計された値を 2009 年基準にし、

都道府県消費者物価指数による調整も行う。

10「不詳」とは、教育を受けたかどうかが不明な項目である。2010 年の国勢調査では『不詳』という項目

が追加されているが、それ以前の年は総数に含まれていたため筆者が算出した。 11 国勢調査は 10 年毎の大規模調査と中間年(5 年目)の簡易調査に大別され、教育に関する事項は大規模

調査のみ含まれている。 12 1991 年以後のデータを見ると、在学者の平均教育年数は卒業者の平均教育年数に近似する傾向がある

ため、1970 年と 1980 年の平均教育年数をすべでの県において 10 年にした。本稿では就業構造基本調査

(ネットで入手可能なのは 1992、1997、2002、2007、2012 年のみである)の教育データも検討したが、

2000 年以降のデータと国勢調査の結果が大幅に異なる部分があるため、国勢調査のデータのみを使用する。 13 企業規模計:ここでは事業所 10 人以上のみを対象としている。事業所 5~9 人で働く人口は事業所 10

人以上の十分の一であるため、今回は省略した。ただし、農林漁業は賃金構造基本調査の対象となってい

ないため、本研究ではそれ以外の産業労働人口を対象にしている。 14 データの年齢区分には 18 歳以上と記述。 15 1970 年には 40 歳前後で 5 歳段階と 10 歳段階に分かれているが、1980 年以後は 5 歳段階となる。

6

3.2.3. 推計結果のロバスト性評価

(1) 労働参加率による影響

前述したように、人的資本は経済体の労働力スキルセットの経済価値である。人的資本

を推計する際に用いた人口は 15 歳以上の人口、つまり、義務教育を受けた労働力人口であ

る。しかし、日本の場合、女性の労働参加率が低く、2010 年の全国平均では 49.4%で、OECD

平均の 52.9%よりも低い(図表 2)。特に 1992 年以来、緩やかに減少していることが分か

った。そのため、労働参加率を考慮する場合としない場合との結果が大きく変わる可能性

がある。労働参加率を考慮すると、実際に生産活動に参加する人的資本を推計することと

なり、これまでの経済成長との関係がより明確になると考えられる。そこで、本稿では、

就業構造全国基本調査データ(総務省統計局 1977-2012)を用いて、労働参加率の考慮の

有無によるロバスト性評価も行う。

図表 2 女性労働参加率の比較(日本と OECD 平均)

(出所)World Bank データより筆者作成

(2)雇用人口ベースと住居ベースの比較

人的資本の推計に用いるデータは行政区分に基づいているため、人的資本は住居ベース

のものである。しかし、サービス産業の大都市への集中や都市家賃の高騰などによって、

形式地域と呼ばれる都道府県や市区町村のような行政区域と、同質地域や結節地域と呼ば

れる経済活動の類似性や相互依存関係が強い地域の不一致が生じている。実際、生産に貢

献している雇用人口ベースと住居ベースの人的資本は大幅に離れている可能性がある。た

とえば、2010 年に東京都で働く人口のおよそ 18%、約 240 万人は東京都以外の県に住んで

いる(国勢調査 2010)。したがって、住居ベースで計測すると、約 240 万人の人的資本が

東京都に計上されなくなる。より正確に地域の人的資本を把握するため、都道府県の昼夜

間人口比率(15 歳以上の就業・通学者を対象)が乖離している県を対象に、生産ベースと

住居ベースの人的資本の比較を行う必要がある。本稿では、研究対象期間において昼夜人

口差がつねに常住人口の 10%を上回った県を対象に比較を行う。

7

4. 人的資本の推計結果

本節では、全国、都道府県の人的資本の推計結果をまとめながら、都道府県間の格差や

ロバスト性評価について述べる。

4.1. 全国の推計結果

全国の人的資本を試算した結果を図表 3 に示す。1970 年の 2,290 兆円16から 2000 年の

18,300 兆円まで大幅に増加したが、十年後の 2010 年には 17,000 兆円まで減少したことが

明らかとなった。その原因を探るためには、人的資本のそれぞれの構成項の時系列変動を

検討する必要がある。

図表 3 人的資本の推移

(出所)筆者作成

まず、教育水準の変化を見ると、全国 15 歳以上の平均教育年数は過去 40 年で約 2 年向

上した。2010 年には全国平均で 12.30 年に達し、高卒を超える水準になった。図表 4 に示

すように、大学・大学院卒の比率は 1970 年の 4.7%から 2010 年の 18.3%にまで上昇した。

教育年数の増加は労働参加時期を遅らせる効果があるものの、より高い収益をもたらせる

ため、人的資本の総量に直接マイナスの影響がないと推測できる。

図表 4 15 歳以上の教育水準の推移 (1970-2010)

教育レベル 1970 1980 1990 2000 2010

未就学 (0 年) 0.7% 0.4% 0.2% 0.2% 0.1%

小学校・中学校(9 年) 51.7% 38.6% 29.4% 23.3% 17.3%

高等学校(12 年) 30.1% 38.1% 42.0% 43.6% 42.7%

短大・高専(14 年) 3.7% 5.7% 9.6% 13.0% 13.6%

大学・大学院(16 年) 4.7% 8.0% 8.7% 11.7% 18.3%

在学 (x 年) 9.1% 9.3% 10.1% 8.2% 7.9%

(注)x は年別、都道府県別に異なる。(出所)筆者作成

16 本稿ではデフレ変動を考慮するため、賃金などは 2009 年日本円を基準にしている。また、地域毎、男女

毎の平均値ではなく、それぞれの人的資本の推計を行ったため、国連の推定よりは値は小さくなった。

8

続いて、15 歳以上人口、特に労働力人口の総数や年齢構成を確認すると、15 歳以上人口

は 2000 年以来減少傾向にあることがわかった。また、労働力人口の年齢構成をみると(図

表 5)、15 歳から 64 歳の労働力人口は 2000 年以後減少している。また、15 歳から 29 歳の

割合は 2000 年以後急減している。労働力人口の高齢化が余剰生涯賃金現在価値の減少に大

きく関連していることが簡単に推測できる。

図表 5 5 歳段階の労働力人口の推移

(出所)労働力調査(長期時系列)と日本統計年鑑(平成 28 年版)により筆者作成

実際、平均化した余剰の生涯賃金現在価値の推移を確認すると(図表 6)、1970 年代から

2000 年代までは男女ともに上昇が見られていたが、2000 年後はともに減少傾向になる。図

表に示すように、特に男性の生涯賃金の現在価値の減少幅が大きい。

図表 6 平均化した生涯賃金現在価値の男女別推移(2009 年水準)

(出所)筆者作成

9

このように、全国人的資本は 2000 年以来減少しており、その原因は、人口減少、人口構

成の高齢化や生涯賃金の現在価値、特に男性の賃金減少によるものであることが分かった。

4.2. 都道府県別の推計結果

4.2.1. 都道府県別人的資本の推計結果

前項では 2000 年以降の人的資本は大幅に減少したことが分かったが、この減少は都道府

県においてどのような特徴があるのかについて本項で検討する。図表 7 には各都道府県の

人的資本をまとめた。

時系列的に見ると、多くの県においては 1970 年から 1980 年の人的資本は約 3~4.5 倍と

急速な成長を遂げたが、2000 年から 2010 年の間は減少に転じ、増加した県は愛知、熊本

のみとなった。特に、京都、茨城、福岡などでは大幅な減少が見られた。

横断的に比較すると、東京は常に1位の座を守っている。その規模は、最も低い県であ

る鳥取県の約 36 倍に当たる。2000 年までの 2 位は大阪だったが、2010 年には神奈川に超

えられた。既存研究(徳井・牧野・児玉・深尾 2013)でも、大阪府の人的資本は神奈川県

ほど伸びてないとされているが、その本当の原因は生産ベースと住居ベースの差にあると

思われる。図表 7 の推計は住居ベースのもので、夜間人口のみで推計すると確かに神奈川

県のほうが規模が大きい。しかしながら、神奈川住民の約 79.4 万人(約 9%)は県外で働

いている。県外労働者を神奈川の人的資本から除外すると、大阪ほど高くない。大阪の労

働者は、逆に府外に住むケースが多い(人口の約 5 %)。大阪と神奈川の住居ベースに基づ

く人的資本の差は約 30 億円で、79.4 万人で換算すると一人あたり 3,778 円となる。一人あ

たり人的資本はこれよりはるかに大きいため、実質人的資本は大阪府のほうが上だと考え

られる。同じように、昼夜人口差が常住人口の 10%を上回った県、埼玉(11%)、千葉(10%)、

奈良(10%)(国勢調査 2010)は実際の人的資本は図表 7 の数値よりも低い。それぞれ、

埼玉 845 億円、千葉 774 億円、奈良 161 億円であった。なお、東京都の場合、労働人口の

18%は都外に住むため、生産ベースの人的資本は推計値よりも 1.3 倍ぐらい大きいと推測

される。したがって、生産ベースに基づく人的資本の上位の都道府県は、東京、大阪、神

奈川、愛知、埼玉、千葉、兵庫、福岡、北海道、静岡となる。なお、生産ベースと住居ベ

ースの上位十位における順位の違いは、大阪と神奈川のみであった。

10

図表 7 都道府県別人的資本(単位:百億円 2009 年水準)

(注)1.図表中の数値は住居ベースの人的資本である。2. 沖縄の返還は 1971 年であるため、1970 年の

国勢調査には沖縄のデータが欠損となる。

(出所)筆者作成

11

図表 8 人的資本の変化(2000-2010)

(出所)筆者作成

12

各都道府県において、2000 年から 2010 年の人的資本が大幅に減少したため、この 10 年

間の人的資本の変化を注目する。地域分布でいうと九州、四国よりも関東や近畿の方が減

少幅が大きい。図表 8 には各都道府県の一人あたり人的資本の変化率(上)、および人的資

本の絶対変化量(下)を示している。図表中の階級区分はプラスとマイナスで分けて、マ

イナスに関しては等間隔で区分を行った。人的資本の総量と一人あたり水準が両方とも減

少したのは、岩手以外の東北各県、関東各都県、大阪と兵庫、福岡などである。徳島と鹿

児島では一人あたりの成長率が高いが、人口減少地域であるため、人的資本の純変化は小

さい。一方、愛知では人的資本総量が増加したものの、一人あたりの成長率はマイナスと

なってしまった。各県を比較した結果、人的資本の総量および一人あたり水準ともに増加

した唯一の都道府県は、熊本県である。また、隣接する県が比較的に変化の類似性が高い。

特に人的資本の純変化の図では、東北の南部から南関東、全体的に減少が大きい。また、

四国や九州において、部分的に隣接する県の変化パターンが類似している。なぜ、このよ

うな変化が見られたかについて、次項で詳しく考察する。

4.2.2. 都道府県別人的資本の構成項の比較

本項では、各都道府県の人的資本の減少原因を分析するため、人的資本の構成項である

平均教育年数、生涯賃金の現在価値と労働力人口について、それぞれの差異を詳細に検討

する。

まず、都道府県の平均教育年数の変遷を確認すると、すべての県において増加している。

また、1970 年と 2010 年を比較すると、都道府県間の差もやや縮小した。東京、神奈川、

千葉、埼玉、奈良、広島では高い水準を維持し、1970 年に比較的に教育年数の低い県であ

った青森、秋田と高知も、2010 年には増加した。ただし、最下位の県と東京との差はおよ

そ1年も開いている。その背景には、関東における大学の集中や高学歴者の都市部への移

動などが考えられる。また、先行研究(Abraham 2010)では、教育水準の高い両親は次世

代の教育水準に熱心で子供の教育水準も高くなる傾向があるため、教育年数の内生的な影

響も考えられる。

次に、都道府県の平均化した生涯賃金の現在価値を比較する。図表 10 には都道府県別に

男性の生涯賃金現在価値の 1970 年から 2010 年の変化を示している。すべての都道府県に

おいて、2000 年までは生涯賃金現在価値の水準が大幅に増加したが、2010 年以降は減少し

た。2000 年に男性の生涯賃金現在価値の平均は約 1 億 7 百万円であったが、2010 年には 9

千 5 百万円となった。およそ千 2 百万円の減少である。その間特に大幅に減少した都道府

県は大阪府、東京都、福岡県、宮城県である。また、減少幅の少ない県は熊本県と徳島県

(ともに約 150 万円)である。

そこで、それぞれの県の減少パターンを図表 9 でまとめた。生涯賃金の現在価値の減少

パターンを、大幅な減少(パターンA、B)とやや減少(パターンC)に分けた。パター

ンAは人口シェアの大きい年齢層で大幅な賃金減少が生じた都市化率の高い地域や広域圏

13

の中心地域でみられた。たとえば、東京では、2000 年と 2010 年の労働者年齢構成を比較

した結果、大きな変化は見られなかったが、賃金水準自体、特に 25-39 歳の賃金水準の減

少が顕著であった。また大阪では、人口シェアの多い 35-49 歳の賃金減が最も大きい。こ

れは、景気低迷や雇用政策の変化などによるパートとアルバイトのシェア増加によるもの

と考えられる。総務省の調査によると、パート労働者の比率は男性の場合、22%から 26%

に増えた。一般労働者とパート労働者の賃金水準差は勤続年数の増加によって拡大するた

め、平均化した賃金水準も減少した。

パターンBは、全般的に賃金水準が大幅に減少し、高齢化が進行している地域にあたる。

たとえば、秋田、山形と沖縄が挙げられる。特に、沖縄では、全年齢グループの減少率は

およそ 14%にも上る。その原因は、それぞれの県の産業構造や労働生産性にあると考えら

れる。たとえば、沖縄県の場合、観光産業などのサービス業を中心とする第 3 次産業のウ

ェートが高く、長期安定雇用には馴染みにくい点がある(依光 2005)。

一方、熊本と徳島では似たようなパターンが見られた。賃金水準は年齢層ごとに増減が

みられ、30-39 歳の労働者シェアがやや増加し、全体的に大幅な減少はなかった。

図表 9 男性の生涯賃金現在価値の減少パターン分析

(出所)筆者作成

女性の場合はやや異なる傾向がみられる(図表 11)。女性の生涯賃金現在価値は、2000

年にピークに達した以後、島根を除くとすべでの県において減少したが、2010 年に愛知を

はじめ、徳島、熊本、岐阜、鹿児島など多数の県において回復した。この変化には、女性

の賃金上昇や労働者年齢構成の変化が大きく寄与している。たとえば、愛知では年間賞与

はやや減少し、若年層のシェアも 45%から 34%まで減少したが、きまって支給する現金給

与額は増加したため、生涯賃金は増加した。鹿児島県においては、2000 年と 2010 年を比

べると、きまって支給する現金給与額はやや減少したが、女性の人口構成は 2000 年の 30

歳以下のシェア 36%に対し、2010 年は 45%まで上がった。また、熊本県に関しては、年齢

構成はやや若年層のシェアが拡大し、所得も変化が少ないため、女性の生涯年金が増加し

た。しかし、ここでも深刻なのは東北各県(岩手を除く)である。東北地方では 2010 年に

女性の生涯賃金水準の回復が見られない。その背景には、東北各県において、賃金水準は

14

少々増加したものの、労働人口の高齢化が進行し、50 代のシェアが最も高いため、生涯賃

金が減少傾向になるという状況に陥っている。

図表 10 男性の生涯賃金の現在価値(1970-2010 年)

(出所)筆者作成

15

図表 11 女性の生涯賃金現在価値 (1970-2010 年)

(出所)筆者作成

16

以上をまとめると、賃金減少が男性の生涯賃金の現在価値に大きなダメージを与え、女

性の 30歳以後の労働参加率や高齢化が女性の生涯賃金の現在価値にマイナスな影響を与え

ていることがわかった。特にダメージを受けていたのは、都市化率の高い都府県や産業構

造が偏っている地域である。児玉・乾・権(2012)では、産業ごとの労働生産性と賃金の変

化について詳細な分析を行った。彼らの研究によると、労働生産性の高い製造業において、

賃金水準の大幅な変化がなかったが、労働生産性の低いサービス業、特に小売業、飲食サ

ービス業、運輸業において、賃金が下落した。その原因は、非正規労働者の増加と労働時

間の抑制であると指摘された。実際、沖縄を例としてみると、卸売小売業や観光業を主体

とするサービス業の就業者数が最も多く、その中で非正規雇用の比率も高い(依光 2005)。

その結果、外的ショックへの対応力や回復力が弱く、生涯賃金の現在価値が不安定になり

やすい。

本稿の分析から、都市化率の高い東京都や大阪府において賃金(30 歳以上の賃金やボー

ナス)の減少が大きいことがわかった。都市部で集中するサービス業の賃金下落が、平均

化した生涯賃金の現在価値の減少に寄与していると考えられる。また、東北地方では男女

ともに高齢化が進み、賃金水準も大幅に低減したのが主要な原因である。

このような流れの中、熊本では、安定した生涯賃金現在価値を保ってきた。その原因は、

いくつか考えられる。34 歳以下の労働者シェアが男女ともに増加した。また、熊本県は都

市部の再開発や郊外の企業誘致などで若年層が労働参加しやすい環境を作り上げてきた。

この点については、次節で詳しく議論する。

続いては、15 歳以上人口の変化について分析する。図表 12 は 15 歳以上の人口増加率を

マッピングしたものである。ここでは、人的資本が大幅に減少した 2000 年から 2010 年の

間のみ注目する。

図表 12 15 歳以上人口の増加率(2000-2010)

(出所)筆者作成

17

図表 12 の中、色の濃淡は人口の変化率の大小を示している。黒は人口増加地域を示して

いる。たとえば、東京、千葉、神奈川、埼玉は黒で表示されており、1%の人口増加を示し

ている。また、東北各県(宮城を除く)では-1.5%の人口減少となる。図表に示すように、

この 10 年間は圧倒的に人口が減少している県が多い。人口減少の影響による人的資本の減

少が大きいと思われる。たとえば、前述した生涯賃金現在価値の高い県である徳島は、著

しい人口減少のため、人的資本の総量はマイナス増加となった。

そこで、全体的に人口減少、賃金水準の減少と高齢化による人口構造の変化のうち、最

も人的資本の減少に寄与した要因を検討する。まず、2000 年の労働人口構造(5 歳段階)

の値を用い、2010 年の賃金水準で生涯賃金現在価値を推計した結果、女性の場合は 44 都

道府県で人的資本が増加したが、男性の場合は全部の都道府県において減少したままであ

った。男性の労働人口は女性より多いため、女性の人的資本の増加分は男性の減少分を上

回ることがなかった。つまり、労働人口構造の高齢化よりも賃金水準減少のほうがより大

きいな影響を与えてしまった。また、人口減少に関しては、15 歳から 64 歳の人口は約 519

万人の減少である。これを用いて推計した人的資本の減少額は、賃金水準維持の場合の人

的資本の増加額よりも大きい。以上の分析から、各都道府県での人的資本の減少は主に賃

金水準の低下による生涯賃金現在価値の減少および労働力人口の減少によるものであるこ

とがわかった。また、それぞれの減少パターンとスピードが異なることも示唆された。

4.2.3. 労働参加率による調整の分析結果

本稿では、労働参加率(労働参加人口/生産人口)を考慮した場合の推計も行った。図

表 13 には 2000 年と 2010 年の都道府県の労働参加率と労働参加の調整を行った後の人的

資本を示している。多くの都道府県において労働参加率は低下している。2000 年にはおよ

そ 57%から 66%であったものが、2010 年には 56%から 64%まで低下した。これは世界平

均(2010 年に 62%)の労働参加率と大きな差はないが、北欧や東アジアの国と比べてやや

低い水準である。労働参加率の低下は、前述した女性の労働参加の低減のほか、出生率の

低減や教育期間が延びたことによる市場への労働力供給の減少、90 年以降の就職難など複

雑な要因が絡み合っていると思われる。また、労働参加率による調整を行うと、人的資本

は元水準の 56%から 66%になる。2000 年から 2010 年調整後の人的資本を比較すると、各

都道府県の水準が減少していることを図から読み取れる。調整前増加地域である愛知でも、

ここではやや減少している。このように、全体の人的資本ストックが増加したとしても、

実際投入する労働力ストックが低減する場合もあり、地域にとっては大きな損失であろう。

地域によって労働参加率の変化が異なるため、地域間人的資本の格差はさらに広がる。た

とえば、東京、沖縄、北海道、兵庫、福岡などの労働参加率はこの 10 年間増加したが、一

方で、東北、北陸、四国各県の労働参加率が減少した。前項で分析した徳島では、生涯賃

金の現在価値が維持しているものの、人口の減少によって人的資本がマイナス成長となり、

労働参加率の低下が実質生産にインプットしている人的資本がさらに縮小してしまう。こ

18

の背景には、大都市や中心都市の所在地域とその他の地方での就職機会の差にあると思わ

れる。人口減少の中、労働参加率の向上、特に地方における労働参加率の向上による人的

資本の増加が重要な課題であろう。

図表 13 労働参加率と調整後人的資本(上図:2000 年;下図:2010 年)

(出所)筆者作成

19

5. 考察

本節では、人的資本と経済厚生との関係および人的資本の維持策について考察したい。

包括的富の主要な構成項である人的資本は、経済成長によってどのように変化するか、ま

た、経済成長へどのように寄与するか、に関する研究は多数ある。過去 20 年間、経済成長

過程において、人的資本の役割に関する研究の流れは主に3段階に分けられる。まずは、

Lucas(1988)と Romer (1990) による新たな成長理論(the “new growth” literature)は、

人的資本が経済の長期的成長をもたらせると主張していた。その後、新古典派経済学の

Mankiw, Romer and Weil (1992) による国レベルの実証研究では、国家間生産性の成長率

の格差が小さく、生産性よりも資本の規模の方がより経済成長に影響している結果が得ら

れた。労働の生産性よりも、人的資本の規模のほうがより経済成長に影響を与えるという

ことである。また、人的資本は、内生的経済成長を生み出すことができない、1つのイン

プットに過ぎないと指摘した。2000 年代以来、リヴィジョニズム(revisionism)が人的資

本の経済成長への寄与が過大評価されたと議論していた(Bils and Klenow 2000; Prichett

2001)。その原因は、多くの既存研究では、人的資本の代理変数として教育水準(years of

schooling)のみを使用していた。たとえば、Barro et al. (1995)などの既存研究によると、

1 年の教育年数の増加は 0.3%の経済成長をもたらすとの結果がある。しかし、教育水準と

いう指標の問題は、経済発展水準の低い地域において、教育年数の増加が速い傾向がある

ため、教育年数の増加によって経済成長への貢献が初期経済水準の低い地域に大きく影響

を与えることになる。そのため、人的資本と経済成長を議論する際、評価指標の選択や精

緻化が極めて重要である。本稿で推計した人的資本指標は、教育水準を考慮した地域の労

働生産能力のストックである。つまり、代理変数ではなく、人的資本そのものである。

その増加率と経済成長率をまず、図表 14 で示した。これは、2000 年から 2010 年の 10 年

間の一人あたり人的資本の増加率と経済成長率の散布図である。ここで、対角線の左側、

つまり、一人あたり人的資本の増加率が経済成長の増加率より低い場合、生産基盤の生産

能力の向上が生産のアウトプットに追いつけていないことを意味している。すなわち、長

期的に経済の継続成長をサポートできなくなる可能性がある。図表 14 に示すように、熊本、

愛知、岩手、鳥取、大分と福島は一人あたり人的資本の成長率が経済成長率よりも高い。

しかし、その中で、熊本を除くとすべてはマイナスの成長となっている。また、その他 41

の都道府県においては一人あたり人的資本の成長率が経済成長率より低くなっている。資

本ストックの中一番シェアの大きい人的資本の低減が今後の持続可能な成長に大きな懸念

材料になりうる。人的資本を維持するには様々な側面から多面的に検討・分析する必要が

あるが、本稿では、この都道府県間の格差や人的資本の変化の特徴を基に政策提言を試み

る。

20

図表 14 各都道府県一人あたり経済成長率と人的資本成長率の比較(2000-2010)

(出所)筆者作成

いうまでもなく、地域間格差を把握することは、社会の安定や経済の成長などに重要な

課題である。地域間の所得格差に関して、新古典派経済学は経済発展の初期段階において

は、地域間の所得格差が拡大するが、経済発展が成熟期になるにつれ、所得格差が収束し

ていくと主張する。その後の成長理論や実証研究ではアメリカ(1880-1990)や日本

(1950-1990)において、長期的に地域間格差の収束がみられた(Barro and Sala-I-Martin

1995)が、無視できるまで縮小していない。地域間人的資本格差の場合、その拡大につれ、

一部の地域の人的資本が持続できなくなり、その他の社会資本(例えば、インフラ)の維

持コストが高騰し、最終的には、地域が消滅してしまう可能性がある。地域間人的資本格

差の収束は持続可能な社会に向かう政策設計の肝要となりうる。そこで、本稿では、一人

あたりの人的資本の地域間格差を中心に検討する。

図表 15 には一人あたり人的資本の格差の推移を示す。実線は全国の一人あたり人的資本

の推移であり、点線は一人あたり人的資本の標準偏差を示す。図表 15 に示すように、1990

年までは一人あたり人的資本の平均が増え、都道府県間の標準偏差も拡大した。しかし、

2000 年まで緩やかに増加して以降、都道府県間の格差は収束傾向にあり、一人あたり人的

資本の水準も減少した。1993 年から 2000 年の間、いわゆるバブル崩壊後の就職氷河期に

おいて、一人あたり人的資本はすぐに減少しなかったが、2000 年から 2010 年の 10 年間減

少し、格差も縮小している。この背景には、バブル崩壊後の停滞時期において、それまで

格差をもたらした東京や大阪において賃金水準が大幅に減少し、そのことが賃金水準格差

の縮小をもたらしたことがある。全体的には格差は縮小したが、それでも 2010 年人的資本

21

の最も高い地域である東京都と最も低い地域である鳥取県の差は 36 倍にも及んでいる。一

人あたりでみると、1.88 倍である。図表 15 に示したように、2000 年から 2010 年にはこの

格差が縮小したものの、依然として 1980 年代よりは大きい。

図表 15 一人あたり人的資本の格差推移

(出所)筆者作成

ここで、標準偏差の補足指標として重み付け格差指数(Weighted Coefficient Variation)

17を用いて、時系列で比較すると、2000 年から 2010 年は 0.45 から 0.37 とやや縮小した。

人的資本の格差の減少は経済成長の格差の減少に働きかける可能性もあるが、人口が減少

する中で平均の一人あたり人的資本水準が低下していることは、人的資本総量的減少が人

口減少のペースよりも早く進んでいることが示唆される。

福島(2016)は人的資本の「量の確保」のための育児手当、住宅確保と提供の重要性に

ついて論じ、子育てに対する金銭的な支援と広い住宅の提供は人的資本の増加につながる

と指摘した。しかし、本稿の分析結果を踏まえて、賃金水準の減少および労働力人口の減

少が最も大きな要因であり、直ちに効果をもたらせる対策としては、少子化対策よりも労

働参加率の向上(若年層や女性)および労働生産性の低いサービス業における非正規雇用

待遇の改善による賃金水準の向上であろう。

そこで、本稿では、労働参加率の向上や賃金の安定化の視点から人的資本の維持につい

て検討したい。

まず労働参加率について、日本の労働参加率、特に女性の労働参加率は世界水準を下回

17人口の割合で重み付け格差係数(Coefficient of Variation)は下記のように定義する。この定義は

Williamson(1965)や Kakwani(1990)などでも使われている。

C𝑉𝑤 =

√∑𝑃𝑖

𝑃(𝑥𝑖 −

1𝑛

∑ 𝑥𝑖𝑛𝑖 )

2𝑛𝑖=1

1𝑛

∑ 𝑥𝑖𝑛𝑖

xiは都道府県 i の人的資本、n は都道府県の数、P は全国の人口、Pi は都道府県 i の人口である。

22

っている。実際、女性の労働参加は若年層のシェア(15 歳から 34 歳)が 2005 年の 37.1%

から 2010 年の 32.2%までに減少し、うち正規雇用の割合は約 54.1%から 54.4%と大きく変

わらなかった。これに対し、55 歳以上の中高齢者のシェアは 2005 年の 19%から 2010 年

の 22.6%に上昇し、正規雇用の割合は約 35%から 33.2%と減少した。つまり、人口の高齢

化とともに、高齢者労働参加が増加し、その多くは非正規雇用である。その原因は、高齢

化の深刻化に加え、文化・社会的規範や現行の税・社会保障制度による非正規雇用へ経済

的インセンティブも働いていると思われる。また、近年では、政府による幼児教育と保育

に対する公共投資は極めて少なく、保護者の負担が非常に大きいとの指摘もある。多様な

選択肢を女性に提供し、男女平等な社会を創り出すためには、学校教育による女性の独立

意識の向上、現行の税・社会保障制度の改革、育児環境の改善と再就職のサポートシステ

ムの構築は不可欠であろう。

ここでは、就労者のうち、男女の所得格差の視点から女性の労働参加について検討した

い。図表 16 は男女の生涯賃金現在価値(平均化したもの)を示している。これは就労者の

年齢構造に基づいて平均化したもので、女性の年齢構成は男性より低いものの、生涯賃金

現在価値の格差が大きいことから、賃金水準の格差が非常に大きいことが読み取れる。そ

のため、女性の労働参加率を向上させるには、前述した教育、税制度の改善などのほか、

男女賃金格差の課題も解決しなければならない。

図表 16(図表 6 を再掲) 男女の生涯賃金現在価値の格差(平均化したもの)

(出所)筆者作成

近年では男女間の賃金格差は縮小する傾向にあるといわれている。確かに、図表 16 をみ

ると、2000 年以降男女の賃金格差は縮小傾向にある。その背景には、2000 年以後の賃金減

少があると思われる。ここで、人口の年齢構造を考慮せず、平均の賃金水準(名目)の推

移をみると(図表 17)、男女ともに急速な成長を遂げたのは 1970 年から 2000 年の間であ

23

る。男性は 2000 年に 450 万円(年間)を超えていたが、2010 年にはそれを下回った。ま

た、女性の場合は、2010 年にはやや回復したが、2000 年の水準には戻っていない。男性の

賃金水準の大幅な低減は男女間所得格差の縮小をもたらした。しかし、実際のところ、女

性対男性の賃金比はまだ 70%未満であり、OECD の加盟国の中では 3 番目に格差が大きい。

男女賃金水準格差を縮小させるためには、企業における女性管理者の人数の増加や復職後

の賃金水準の回復など制度上の改善が必要である。

図表 17 男女の年間所得の推移(平均値)

(出所)筆者作成

男女問わず、全般的に賃金水準の向上、または安定化に関して、どのような対策が望ま

しいであろうか。2000 年以後の平均化した賃金水準の低減は、正規雇用者と非正規雇用者

の賃金格差がもたらしたとよく言われている。フルタイムで働く労働者に対するパート労

働者の時間当たりの賃金水準は 56.8%に止まっている。これは、フランスの 74.3%、ドイツ

の 79.3%(2010 年水準)に比べて格差が大きい(労働政策研究機構 2014)。また、非正規

雇用の多くは中高齢者(男性の場合は 50 代、女性の場合は 35 歳から 54 歳)である。今後、

高齢化とともに、非正規雇用の割合がさらに増加する可能性があるため、正規と非正規の

賃金格差を是非しない限り、賃金水準のさらなる低減を及ぼす。

非正規雇用の割合が最も大きいのは労働生産性の低いサービス業である。この業界にお

いて、ICT などの技術を導入することで労働生産性を高めることが考えられる。また、国

際貿易において比較優位産業の国際シェアの獲得による利潤の増加を関連産業へ波及し、

社会全体の賃金水準を向上させることが欠かせない。そのため、人的資本の集積によるイ

ノベーション創出の能力を最大化することが重要である。人的資本の都市への集積、また、

地域行政の制度的支援(人材・技術交流ネットワークの構築など)、寛容且つ多様な都市文

化の創出などあらゆるステークホルダーによる投入が不可欠である。

以上の分析を踏まえ、地域において人的資本の維持・向上を達成するために、労働参加

率の増加や賃金格差の解消に関してどのように目標設定をすべきかについて、本稿では、

24

各都道府県において、男女の賃金格差や労働参加率の期待水準を簡単に試算した。その結

果、たとえば、東北各県においては、女性の賃金を男性よりも高く設定するか、あるいは、

労働参加率が現在の水準より 10%向上しない限り、人的資本の維持が厳しいという結果と

なった。これらを達成するのが現実には困難であり、人口減少が続く中で、雇用労働政策

のみでは人的資本の向上効果は限界があるといえる。

そこで、経済発展の停滞を背景とした 2000 年から 2010 年の十年間、人的資本の総量お

よび一人あたり水準ともに増加した熊本県について、その要因を分析してみる。他県との

比較などを含めた精緻な分析は今後の課題だが、一つの仮説として提示したい。

前節で述べたように、熊本県では、賃金水準も大幅な変化がなかったが、若年層の労働

参加率が増えた。その背景として、まず、熊本市の郊外にある菊陽町や大津町で大規模分

譲団地(光の森、美咲野団地など)の建設をはじめ、熊本駅周辺の再開発・区画整理など

インフラ整備や、政令指定都市へ移行するための準備などに注力してきた。2002 年の熊本

県庁の移転により、郊外における公共施設の機能が拡大し、市街地が広がった。これらの

投資によって熊本県の都市化率は安定かつ継続的に上昇し、土木関連の雇用機会を増やし

た。結果として、豊肥本線沿線の団地開発の成功につながった。また、市内に空いた敷地

は再開発で高度利用され、九州新幹線の開通とともにサービス業の集積が若者の都市とそ

の周辺への集中をもたらした。熊本県内において、熊本市都市圏を中心とした人的資本の

集積が可能になった。さらに、熊本県において、製造業とサービス業はそれぞれおよそ 20%

ずつ(2011 年の従業者構成比)を占めており、比較的に産業構造がバランス化されている。

これらの都市計画や産業構造が若年層の労働参加率の増加につながっていると考えられる。

しかし、2016 年 4 月 15 日に発生した熊本地震によって人的資本の集積トレンドが変化す

る可能性が高く、復興対策を構築する際、県外大手インフラ関連企業の進出が地元中小企

業の再生や雇用関係に与える影響を注意しなければならない。

以上の分析から、人的資本の維持・向上には多くの要素が複雑に絡み合っているが、雇

用・労働政策のみならず、都市計画やインフラ整備など、国・地域レベルの重層的な政策

フレームワークの設計が重要であることが改めて明らかになった。また、それぞれのレベ

ルで政策設計を行う際、人口集中地域の形成や隣接地域の格差に注意しながら、適切な都

市計画や産業構造計画を構築する必要がある。本稿では詳細にこれらを分析することはで

きていないが、今後の課題として、財政の面も含めた地域政策の提言を試みたい。

25

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研究レポート一覧

No.431 包括的富指標の日本国内での応用(一) 人的資本の計測とその示唆 楊 珏 (2016年6月)

No.430 ユーザー・市民参加型共創活動としてのLiving Labの現状と課題

西尾 好司 (2016年5月)

No.429 限界マンション問題とマンション供給の新たな道 米山 秀隆 (2016年4月)

No.428 立法過程のオープン化に関する研究 -Open Legislationの提案-

榎並 利博 (2016年2月)

No.427 ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の 役割への模索-先行文献・資料のレビューを中心に-

趙 瑋琳李 妍焱

(2016年1月)

No.426 製造業の将来 -何が語られているのか?-

西尾 好司 (2015年6月)

No.425 ハードウエアとソフトウエアが融合する世界の展望 -新たな産業革命に関する考察- 湯川 抗 (2015年5月)

No.424 これからのシニア女性の社会的つながり -地域との関わり方に関する一考察-

倉重佳代子 (2015年3月)

No.423 Debt and Growth Crises in Ageing Societies: Japan and Italy Martin Schulz (2015年4月)

No.422 グローバル市場開拓におけるインクルーシブビジネスの活用-ICT企業のインクルーシブビジネスモデルの構築-

生田 孝史大屋 智浩加藤 望

(2015年4月)

No.421 大都市における空き家問題 -木密、賃貸住宅、分譲マンションを中心として-

米山 秀隆 (2015年4月)

No.420 中国のネットビジネス革新と課題 金 堅敏 (2015年3月)

No.419 立法爆発とオープンガバメントに関する研究 -法令文書における「オープンコーディング」の提案-

榎並 利博 (2015年3月)

No.418 太平洋クロマグロ漁獲制限と漁業の持続可能性 -壱岐市のケース-

濱崎 博加藤 望生田 孝史

(2014年11月)

No.417 アジア地域経済統合における2つの潮流と台湾参加の可能性

金 堅敏 (2014年6月)

No.416 空き家対策の最新事例と残された課題 米山 秀隆 (2014年5月)

No.415 中国の大気汚染に関する考察 -これまでの取り組みを中心に-

趙 瑋琳 (2014年5月)

No.414 創造性モデルに関する研究試論 榎並 利博 (2014年4月)

No.413 地域エネルギー事業としてのバイオガス利用に向けて 加藤 望 (2014年2月)

No.412 中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP 金 堅敏(2013年11月)

No.411 我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提言-のれん代非償却化の重大なインパクト-

湯川 抗木村 直人

(2013年11月)

No.410 中国における産業クラスターの発展に関する考察 趙 瑋琳(2013年10月)

No.409 木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題 -FITを中心とした日独比較分析-

梶山 恵司(2013年10月)

No.408 3.11後のデマンド・レスポンスの研究 ~日本は電力の需給ひっ迫をいかにして克服したか?~

高橋 洋 (2013年7月)

No.407 ビジョンの変遷に見るICTの将来像 Innovation and

Technology Insight Team(2013年6月)

http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/

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