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更新日:2008/2/21 調査部: 坂本茂樹 東南アジア NOC に新たな動き: タイ PTT とインドネシア Pertamina (Platts、PIW、PTT・Pertamina HP、コンサルタント情報) 2008 1 月下旬、タイとインドネシアの NOCNational Oil Company、国有石油会社)である PTT Pertamina は、それぞれ今後数年間にわたる意欲的な事業方針を表明した。両社共に、投資対象 の優先順位を先ず国内石油天然ガス開発案件に置いて生産量を引き上げ、次いで地質情報に馴染み のある近隣諸国への投資、さらにポテンシャルが高いと思われるその他地域への投資としている。 PTT Pertamina の企業体質とこれまでの経緯は大きく異なる。PTT NOC の中では後発で小規 模ながら、NOC の成功例と目されるマレーシア Petronas に類似した利益重視の企業体質を持つ。石 油ガス上流分野では、国内ガス生産を充実させて収益構造を安定させる一方で、海外でもオペレータ ーを務められる石油企業を目指している。 Pertamina はかつて、国営石油会社としてインドネシア石油天然ガス産業に独占的な権限を有しな がら、事業収入をすべて国庫に納めて、経費・投資は国の再配分を受けるなど不完全な企業経営制度 下で非効率的な運営が行われてきた。2001 年の新石油ガス法制定により、政府に属する機能はすべて 分離され、政府が株式を保有する一石油会社に改組された。しかし、未だに明確な企業方針を打ち出 せないままに業績が低迷している。しかし原油価格高騰に伴う増益で、ある程度の投資が可能になった と見られる今、業績を好転できる可能性がある。 東南アジアの産油ガス国では、当該国の NOC がなお特権を保有しており、事業活動に有利な立場 にある。本稿では、東南アジアの石油ガス上流企業の投資行動、当該国の投資環境の変化を捉える観 点から、当該 NOC の事業戦略に着目する。 1. PTTPertaminaの新たな投資計画 (1) PTT PTT は新規ガス田開発によりガス生産量を引き上げて収入の安定化を図る一方で、海外ではオペレ ーター事業を増やし深海など戦略的な資産に投資するなど、着実ながら積極的な事業運営を進めようと している。 同社は 2008 1 月に公表した投資家向け事業説明の中で、今後の事業計画を次のように明らかにし た。今後 5 年間(200812 年)で総額 2,412 バーツ(=71 億米ドル)を投資する(図 1 参照)。子会社 PTTEP 1 が実施する石油ガス上流分野では、生産量を 2007 年の 18.4 boedから 2008 年には 22.3 - - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 1 1 PTT Exploration and Production

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Page 1: 東南アジアNOCに新たな動き: タイ PTT とインド …›´新日:2008/2/21 調査部: 坂本茂樹 東南アジアNOCに新たな動き: タイ PTT とインドネシアPertamina

更新日:2008/2/21

調査部: 坂本茂樹

東南アジア NOC に新たな動き: タイ PTT とインドネシア Pertamina

(Platts、PIW、PTT・Pertamina HP、コンサルタント情報)

2008 年 1 月下旬、タイとインドネシアの NOC(National Oil Company、国有石油会社)である PTTと Pertamina は、それぞれ今後数年間にわたる意欲的な事業方針を表明した。両社共に、投資対象

の優先順位を先ず国内石油天然ガス開発案件に置いて生産量を引き上げ、次いで地質情報に馴染み

のある近隣諸国への投資、さらにポテンシャルが高いと思われるその他地域への投資としている。 PTT と Pertamina の企業体質とこれまでの経緯は大きく異なる。PTT は NOC の中では後発で小規

模ながら、NOC の成功例と目されるマレーシア Petronas に類似した利益重視の企業体質を持つ。石

油ガス上流分野では、国内ガス生産を充実させて収益構造を安定させる一方で、海外でもオペレータ

ーを務められる石油企業を目指している。 Pertamina はかつて、国営石油会社としてインドネシア石油天然ガス産業に独占的な権限を有しな

がら、事業収入をすべて国庫に納めて、経費・投資は国の再配分を受けるなど不完全な企業経営制度

下で非効率的な運営が行われてきた。2001 年の新石油ガス法制定により、政府に属する機能はすべて

分離され、政府が株式を保有する一石油会社に改組された。しかし、未だに明確な企業方針を打ち出

せないままに業績が低迷している。しかし原油価格高騰に伴う増益で、ある程度の投資が可能になった

と見られる今、業績を好転できる可能性がある。 東南アジアの産油ガス国では、当該国の NOC がなお特権を保有しており、事業活動に有利な立場

にある。本稿では、東南アジアの石油ガス上流企業の投資行動、当該国の投資環境の変化を捉える観

点から、当該 NOC の事業戦略に着目する。

1. PTTとPertaminaの新たな投資計画

(1) PTT

PTT は新規ガス田開発によりガス生産量を引き上げて収入の安定化を図る一方で、海外ではオペレ

ーター事業を増やし深海など戦略的な資産に投資するなど、着実ながら積極的な事業運営を進めようと

している。

同社は 2008 年1 月に公表した投資家向け事業説明の中で、今後の事業計画を次のように明らかにし

た。今後 5 年間(2008~12 年)で総額 2,412 バーツ(=71 億米ドル)を投資する(図 1 参照)。子会社

PTTEP1が実施する石油ガス上流分野では、生産量を 2007 年の 18.4 万boedから 2008 年には 22.3

- - Global Disclaimer(免責事項)

本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

11 PTT Exploration and Production

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万boedに引き上げ(約 20%増産)、2011 年まで毎年生産量を増加させる計画である(図 2 参照)。

図 1 PTT 投資計画(2008~12 年):総額 2,412 バーツ(=71 億米ドル)

図 2 PTTEP の石油天然ガス販売数量見通し(2008~12 年)

(注)JDA: マレーシア/タイ共同開発地域(Malaysia-Thailand Joint Development Area)

V9-2: ベトナム南東部沖合 9-2 鉱区;Ca Ngu Vang 油田が 2008 年に生産開始予定

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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Arthit: シャム湾南部ベトナムとの境界に近い自社がオペレーターのガス田(権益 80%)

Yetagun、Yadana: PTTEP がミャンマーに権益を保有する沖合ガス田、生産ガスを輸入

B8/32 &9 A, S1(陸域), Pailin, Bongkot: タイ陸域、領海にあるガス田

(出所)図-1, 2 ともに PTT 投資家説明資料 2008/1 月

生産量の油ガス田別内訳が示すように、2008~09 年にかけて新規に生産開始される下記油ガス田に

よって、生産量拡大を達成する。

・ シャム湾 Arthit ガス田(PTTEP オペレーター事業、シェア 80%)

・ ベトナム 9-2 鉱区 Ca Ngu Vang 油田(英 Soco International、PetroVietnam との共同操業)

・ JDA B-17 鉱区ガス田(マレーシアPetronas Carigali2との共同操業)

図 3 PTT のシャム湾およびミャンマーのガス生産事業、パイプライン網(投資家説明資料 2008/1 月)

シャム湾タイ領海内において各社が操業するガス田群の生産量は 2011-12 年頃まで拡大すると見ら

れる。PTTEP は Arthit、Pailin、Bongkot ガス田など残存埋蔵量規模の大きい資産に高い権益シェア

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32 マレーシア国有石油企業Petronasの上流分野子会社

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を保有しているために、今後の生産量増大の成果を享受できる有利な立場にある。特に、PTTEP がオ

ペレーターを務め 2008 年 3 月の生産開始を予定している Arthit ガス田(1999 年発見)は、同社の生

産量増加に大きく貢献する(生産量=330MMcfd*30 年)。

PTTEPの海外進出には2つのタイプがある。一つは地質に知見のある近隣諸国のガス資源開発であ

り、ガス需要が増えつつある自国市場向けガス供給源の拡充を目的にしている。もう一つは異なる環境

での操業経験や深海など高度な開発技術の経験を目的とする中東、北アフリカ、オセアニア等への進

出である。2007 年に PTTEP が参加した海外事業は、バングラデシュ、エジプト、ニュージーランド、豪

州およびバーレーンにおける探鉱案件であった。これらの新規案件の中で、バングラデシュ(沖合 17、

18 鉱区)はミャンマー、JDA に次ぐ近隣のガス探鉱、エジプト(Rommana 鉱区)は LNG 輸出国との関

係強化に係わる事業、ニュージーランド(Great South 堆積盆地鉱区)は初の深海鉱区として位置づけ

られる。

また、2008 年 2 月中旬にミャンマーにおいて、中国 CNOOC との探鉱鉱区権益の一部スワップの計

画を明らかにするなど、既存操業地域に置いても積極的な動きを展開している。

(2) インドネシア Pertamina

2003 年の改組で国有の株式会社となった後も低迷していた Pertamina の事業活動に変化の可能性

が見られる。

Pertamina は 2008 年 1 月下旬、2007 年に原油価格高騰で 24 億ドルの純利益(前年比 8.5%の増

加)を上げたことを背景に、2008年の投資額を50%増やして22億ドルとする事を明らかにした。14億ド

ルを石油天然ガスの増産投資に向け、8 億ドルを石油下流分野(石油精製、石油製品販売など)に振り

向ける。目玉の事業となるのは、ExxonMobil との共同事業によるジャワ島中部のチェプ(Cepu)鉱区開

発である。関連する製油所建設を含めて、同事業に 5 億ドル強を投じる計画である。また Pertamina は、

Shell、Petrobras、StatoilHydroなど深海開発を含む先端技術を有するIOCとの包括的協力契約を締

結してきた。これら IOC との提携を実現させて、深海など有望鉱区の共同入札を図ろうとしている。一方、

Pertamina の海外事業はまだ歴史が浅く小規模であり、イラク、リビア、ベトナム、マレーシア等の探鉱

鉱区に小規模な権益を保有するに留まっている。 近の動きとしては 2007 年11 月にエクアドルの 3 探

鉱鉱区に係わる暫定契約に調印した。

Pertamina の石油精製部門は、処理能力不足で国内市場向けに十分な製品供給ができず、海外か

ら値上がりした石油製品を輸入せざるを得ない弱点を抱えており、Pertaminaの経営上の大きな足かせ

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任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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であった。今般 Dumai 製油所拡張を含む処理設備の拡張・高度化が計画されている。

2. 東南アジアの主要な NOC の特徴: Petronas, Pertamina, PTT

東南アジアの産油国はほとんど NOC を持つが、産油国としての成立、その後の経緯が異なり、NOC

の機能、形態、業績にも差異が大きい。本稿で取り上げる PTT、Pertamina、およびアジア NOC の成

功例としてしばしば引き合いに出されるマレーシア Petronas の 3 社の特徴を挙げて比較する。

3 社の石油ガス上流部門の規模を見るため、石油、天然ガスの生産量および埋蔵量の比較を図 4、5

に示す。Petronas はマレーシア国内油ガス田に政府参加分権益を保有し、海外展開も進んでいるため、

生産量、埋蔵量が多い。一方 Pertamina は、権益を保有するインドネシア国内資産が少なく、探鉱・開

発も進展しておらず、めぼしい海外資産もないために、石油ガス資産ではPetronasに大きく遅れを取っ

ている。タイは石油ガス開発後発国で埋蔵量も相対的に少ないため、PTTEP の生産、埋蔵量規模も他

の 2 社と較べて小さい。

図 4 アジア NOC3 社の石油天然ガス生産量(2006 年)

アジアNOC3社の石油天然ガス生産量(2006年)

0 500 1,000 1,500 2,000

Petronas

Pertamina

PTTEP

千boed

石油

ガス

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図 5 アジア NOC3 社の石油天然ガス埋蔵量(2006 年)

0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000

百万boe

Petronas

Pertamina

PTTEP

アジアNOC3社の石油天然ガス埋蔵量(2006年末)

石油

ガス

(出所)”PIW’s Top 50” 2007/12/3、PTTEP 投資家説明資料 2007/11 月

(1) Pertamina

東南アジア 大の産油国インドネシアの国営石油会社でありながら、隣国マレーシアの後発企業

Petronas の後塵を拝してきた Pertamina の目標は、Petronas や PTT を凌ぐ東南アジア 大の石油

企業となり、ゆくゆくはトップ 15 に名を連ねる石油企業にランクされることである。しかし、Pertamina の

石油生産量はインドネシア全体と同様に減少傾向が続き、低迷に歯止めが掛かっていない。

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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図 6 インドネシアの石油生産・消費量推移(BP 統計、200 年 6 月)

インドネシア石油生産・消費量推移 (BP統計、2007年6月)

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

千b/d

生産量

消費量

Pertamina は 2001 年まで、国内石油天然ガス産業に係わる独占的な権限を有する国営石油会社で

あり、国内石油ガス鉱区の管理者として油ガス田開発実施権を一手に握っていた。しかし 2001 年に制

定された新石油ガス法によって、独占的権限と油ガス田開発実施許認可等政府に属する機能をすべて

失い、民間石油企業と同列の一国有石油企業となった。石油上流企業としてみると、Pertamina は国内

の自社オペレーター油ガス田、IOC が操業する有力資産に持つ権益、共に少なかったため、石油天然

ガス生産における位置づけを大きく後退させることになった。オペレーター別に見たインドネシア石油生

産量において Pertamina は、スマトラ島でミナス等主力油田を操業する Caltex(Chevron 社)を大きく

下回り、Total、CNOOC、Unocal(現 Chevron、カリマンタン島分)等の後塵を拝する第 6 位の位置づ

けである。

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図 7 インドネシアのオペレーター別石油生産量(2006 年 Petroleum Report)

インドネシアのオペレーター別石油生産量(2006年)

0 100 200 300 400 500 600

Caltex

Total

CNOOC

Chevron

Exspan

Pertamina

ConocoPhillips

PetroChina

千b/d 図 8 インドネシアのオペレーター別ガス生産量(2006 年 Petroleum Report)

インドネシアのオペレーター別ガス生産量(2006年)

0 500 1000 1500 2000 2500 3000

Total

ExxonMobil

Pertamina

VICO

ConocoPhillips

BP

Chevron

MMcfd 天然ガスの生産では、スマトラ島中部、南部で操業するガス田の生産が貢献するものの、Total、

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ExxonMobil に次ぐ第 3 位の生産者に過ぎない。Pertamina が国有の有限責任会社に改組された

2003 年以降の生産量変化は、石油が微増、ガスは年率 10%程度の増加を示しており比較的順調であ

る。しかし、上流分野で存在感を回復するには到っていない。

このように上流分野で大きく後退する一方、独占状態を維持する石油下流分野では原油処理能力不足

で国内市場向け石油製品供給を賄えないため、多量の製品を輸入せざるを得ない。石油製品は管理価

格のため収益性が低く、補助金立替えの負担も強いられることから、Pertamina の財務状態は極めて厳

しい。自社の信用力で借り入れを実施できないことから、保有する未開発油ガス田の探鉱、開発資金に

も事欠く状態が続いている。

Pertaminaは東南アジア 大の産油国インドネシアの NOCであるが、その運営制度、経営体質は後

発ながら先に経済成長を成し遂げたマレーシア、タイの NOC と較べて脆弱である。2001 年以前の

Pertamina は、社内で利益処分も投資もできず、独立した企業としての体を成していなかった。全収入

を国庫に納め、投資を含む支出は毎年財務省からの配分を受けた。一方で、石油ガス産業の許認可権

を一手に握っていたことから汚職・腐敗の温床となり、1990 年代末のスハルト政権崩壊後にその汚職体

質を強く批判されて改組されることになった。

2001 年以降一石油会社に改組された後も、100%国有の Pertamina が経営自主権を得たわけでは

ない。利益処分の自由は無く、投資にはなお政府の認可が必要であり、その承認タイミングは概して遅

い。石油ガス上流分野での位置づけを大きく減少させたが、石油精製・製品販売では独占を維持してい

る。しかし、インドネシアの石油製品価格は政治的に低く抑えられ、灯油など生活必需品に対する政府

補助金の立て替えを強いられる。国庫の資金繰りが苦しいインドネシア政府からの補助金立替の回収に

は 1~2 年を要すると見られる。

このように、改組後の Pertamina はなお利益の上がらない石油下流分野を任されて財政的に不安定

な状態が続いており、上流分野への投資を十分に賄える状態にはない。

(2) Petronas

Petronas は東南アジアでインドネシアに次ぐ産油国マレーシアの国営石油会社として設立された。し

かし、その経営体質は次の 2 点で Pertamina と大きく異なる。

・ 第一に、石油ガス産業の許認可等監督権を行使するだけでなく、石油ガス事業への政府参加権

の実施者として、各鉱区において商業ベースの操業実績を求められることである。Petronas は国

内鉱区すべてに 40~60%の権益を保有し、その生産、埋蔵量規模が大きい。

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・ 次に、Petronas は自社が上げた利益に対して自由に処分する権限を持っており、自ら投資を決

定でき、健全な経営体質を築くことができた。

マレー半島テレンガヌ沖合のタピス油田、サラワク州沖合のガス事業など高収益の事業に自ら参画す

ることで企業の収益性を安定させた。また LNG 事業では、事業の根幹を自社内に取り込んで事業ノウ

ハウを体得し、さらに企業収益力を高めた。

国内市場規模が小さいこと等から、上流、中流、下流の各分野で積極的な海外展開を図り、海外事業

の収益力では IOC 大手に劣るものの、海外進出先は準メジャー級 IOC を上回っている。 も成功した

NOC の典型と見なされているのは周知の通りである。

(3) PTT

資源開発後発のガス生産国タイは、先行するインドネシア、マレーシアに較べると石油天然ガス埋蔵

量が少なく、国営石油会社 PTT の設立は比較的遅い 1978 年であった。PTT は国営石油企業として、

タイ国内の石油ガスの上流、中流、下流産業全体に責任を負っている。同社は 2001 年の株式上場によ

り部分自由化され、政府(財務省)が保有する株式比率は約52%にすぎない(2007 年9 月)。 タイ経済

は、東南アジアでマレーシアと並んで輸出産業立地型経済であり、市場は外国資本に広く開放されてい

る。

シャム湾のタイ領海における石油天然ガス開発は、1970年代のUnocalによるガス田発見に伴う1980

年代のガス生産によって開始された。PTT の上流部門子会社 PTTEP の活動が本格化するのは 1990

年代末に Total から Bongkot ガス田のオペレーターシップを譲り受けた後である。PTTEP の国内保有

資産は、1988年に Esso(当時)が保有する陸域開発2案件に産油国政府参加権限を行使して参加した

ケースがあるが、1990 年代~2000 年代半ばに IOC の既存資産を購入したケースが多い。

NOC としての PTT の 大の責務は、輸出志向製造業を中心に経済成長が進むタイ市場が必要とす

るエネルギーを調達・供給することである。タイ製造業(輸出型組み立て加工中心)はエネルギーを主に

電力の形で消費し、その燃料の多くをガスに依存している。

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図 9 タイのガス需要推移と見通し (PTT 投資家説明資料 2008/1 月)

PTTEPは、ミャンマー、JDA3などパイプライン・ガス輸入の可能な隣国のガス田に権益を保有してい

る。1998 年にミャンマーYadanaガス田からのガス輸入を開始し、現在、Yetagunガス田を合わせてミャ

ンマーの全ガス輸出量を購入している。JDAからのガス輸入は 2009 年から開始する計画である。 一

方、近年では近隣諸国以外の中東、オセアニア等に進出先を広げようとしている。

3. PTT の上流事業戦略とタイのエネルギー需給

PTTEP の上流事業戦略は非常に手堅いと考えられる。

これまでも国内ガス生産量を徐々に増やしてきた。2008 年3 月には、シャム湾で Bongkot、Pailin ガ

ス田と並ぶ主力Arthitガス田の生産が開始される(PTTEPが権益80%を保有するオペレーター事業)。

Arthit ガス田は 2008 年内にピーク生産330MMcfd を達成して、PTTEP のガス生産量を約20%増加

させる。2009年には近隣JDAに権益を保有するガス田の生産が開始され、PTTEPの既存ガス田の生

産量は 2007~11 年の 4 年間で年率約 10%の増加を見込む。こうしたガス田開発向けに、本稿冒頭に

記したように投資計画が組まれ、事業計画を着実に進展させている。ミャンマーM-9 鉱区(PTTEP オペ

レーター鉱区)で発見されたガス田開発も計画されており、2012 年頃タイ市場向けに生産が開始される

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

113 マレーシア・タイとの共同開発地域、Malaysia-Thailand Jount Development Area

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ものと見られる。ちなみに、PTT は国内ガス輸送に係わるパイプライン事業を一手に行っている。

PTTEP が国内および近隣諸国で生産したガスはすべてタイ市場に供給される。タイのエネルギー市

場は既に自由化されており、石油製品、ガス共に市場価格が適用されるため、多くのアジア市場に見ら

れるような国有石油企業の補助金負担はない。石油企業にとって、タイ市場の投資環境には制度上不利

な条件が無く、投資計画、経営方針を立てやすいと考えらえる。国内市場向けガス販売量を増やすこと

ができれば、数量増加に伴って安定した収入増加を見通すことが可能である。

一方、浅海のシャム湾は既に探鉱成熟地域であり、今後大規模な発見を期待することが難しい。石油

ガス開発企業としては、探鉱ポテンシャルを求めて国外のさらにポテンシャルの高い地域に活動の場を

拡大するのは自然な行動と考えられる。これまでの PTTEP の海外探鉱は、地質面の知見を有し、母国

市場にガスを供給することが可能な近隣諸国・地域が中心であった(JDA、ミャンマー、他)。

昨今、PTTEP が新たに取得した権益は、オマーン、エジプト、ニュージーランド等であり、これまでの

シャム湾および近隣浅海における探鉱・開発と概念を異にするものである。2006 年に調印したオマーン

の 44鉱区では果敢にオペレーターシップに挑戦して、石油生産を実現させている。2007年のニュージ

ーランドGreater South案件では、初の深海事業経験を求めてExxonMobilのオペレーター事業に参

加した。エジプトの 2 コンセッションに事業参加したケースでは、LNG を含むガス輸出国エジプトとの交

易関係を強化する意図があったものと推測される。中長期的には、これらの事業地域周辺にさらに新規

事業を成立させようとしている。

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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま

れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの

投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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図 10 PTTEP の事業対象・関心地域 (PTTEP 投資家説明資料 2007/11 月)

PTTEP の石油ガス上流事業は、国際商習慣に基づき、また情報公開が十分になされているために、

非常にわかり易い。事業拡大は次に記す順序で堅実に実施されている。

a. 国内ガス生産事業の推進

b. 近隣諸国におけるガス生産事業(JDA、ミャンマー)

c. 深海など新たな事業ノウハウを目的に、中東、北アフリカ、ニュージーランド等遠隔地

2007~11 年にかけて実施する上流分野投資は、こうした事業方針に沿って、既発見ガス田開発を順

次実施するものである。財務的裏付けもしっかりしており、事業計画が予定通りに実現される可能性が極

めて高い。

4. Pertamina の上流事業戦略とインドネシアのエネルギー需給

2 章(2)に記したように、市場化政策に遅れたインドネシアの石油ガス産業の投資環境は不備な点が多

く、Pertamina の置かれた経営環境は未だに非常に厳しい。

一方、昨今の原油価格高騰に伴って LNG 売価が上昇しており、これが Pertamina の収益下支えに

ある程度貢献しているものと考えられる。しかし、Pertamina は今なお自由な利益処分権がなく、投資・

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支出には政府承認を要する。インドネシア政府は引き続きエネルギー補助金負担に苦しんでおり財政

逼迫状態にあるため、タイミング良く投資を承認することを期待しにくい。

Pertamina が現在操業する油ガス田には、小規模な成熟資産が多い。今後の企業発展には新たな油

ガス田開発が必要である。大型開発案件としては、ジャワ島中部の Cepu 鉱区、スラウェシ島中部の

Senoro ガス田(LNG 案件)およびナツナ海の Natuna D Alpha ガス田等が考えられる。

図 11 Pertamina の新規開発候補案件

Cepu 鉱区開発は、既に Pertamina と ExxonMobil 社との共同操業が合意されており、進展する可

能性が高い。3~5 億バレルの石油埋蔵量を持つと言われる Cepu 鉱区開発はインドネシアで久々の大

型案件である。石油生産が開始されるとPertamina収益に貢献し、随伴ガスはガス供給が不足するジャ

ワ島ガス需給を緩和させる好材料になるものと見られる。

一方、Senoro ガス田開発は、LNG 事業として計画が進展しつつあるが、液化部門へのガス売価を巡

って関係者間の合意がなされていない。Natuna D Alpha ガス田は、70%もの CO2 含有率があり、開

発が非常に難しい案件である。2008 年 2 月初頭にオペレーターの ExxonMobil とインドネシア政府と

の協議が物別れに終わってから、事業の今後の方向性が見えていない。現時点で開発計画を推測する

のは難しい。

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またPertaminaは、Shell、Petrobras、StatoilHydro等の深海開発技術を持つ有力IOCと包括的な

事業提携契約を締結しており、今後フロンティアの深海鉱区などの共同入札を計画していると見られる。

共同で既存油ガス田の EOR事業を進める計画もある。しかし現時点では、有力IOCとの共同事業が成

立するかどうかは未詳である。IOC側の要望は、共同事業の対象をPertamina保有の有望な未開発鉱

区にすること、および有利な開発条件を引き出すことである。一方 Pertamina の意図は、開発が難しい

案件を共同事業の対象にすることである。また新規鉱区入札に際しては、以前の特権を失った

Pertamina との提携が IOC にとって必ずしも魅力とは断定し難い。

2003年の改組から4年を経て、Petrtaminaの経営体質は徐々に変化していると考えられる。しかし、

統制価格の石油製品市場で供給責任を持つなど、不利な経営環境下にある Pertamina が石油ガス上

流分野に投入できる経営資源には自ずと限度がある。石油ガス開発案件が、必ずしも Pertamina の当

初の目論みどおりに進展していないのが現状である。Cepu 鉱区開発では成果を期待できるとしても、そ

の他の新規開発計画は、ある程度割り引いて考える必要がある。Pertamina の経営体質強化にはなお

時間を要するものと考えられる。

2008年、同様に積極的な投資計画を打ち出したPTTとPertaminaであるが、母国の市場環境・投資

環境の違いを背景にして、企業の財務能力、経営体質が異なり、投資計画の実効性に明暗が生じそうで

ある。PTT が計画しているガス田開発には大きな不安材料が見あたらず、ガス生産量・収入増加を実現

できる可能性が高い。海外進出の成果は今後の進展次第だが、期待できる要素がある。一方

Pertaminaは、Cepu鉱区開発以外の大型案件はまだ不透明感が強い。期待される IOCとの共同事業

も今後の交渉次第である。市場価格化の遅れた国内石油下流事業の負担もなお大きく、経営立て直し

の道程は平坦ではない。

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投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責

任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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