npo法人 桜島ミュージアム - mlit.go.jp住民が共に育てる 観光まちづくり 事例...
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住民が共に育てる観光まちづくり
事例
38 鹿児島県 鹿児島市
NPO 法人 桜島ミュージアム
魅力あふれる桜島をまるごと「博物館」に 桜島ミュージアムの活動は、「エコミュージアム」をコンセプトにし
ており、桜島の自然や文化をまるごと「博物館」に見立てて、地域づ
くりと観光に一体的に取り組んでいる。この「博物館」の学芸員には、
桜島ミュージアムのメンバーや研究者だけでなく、桜島に息づく人々
―農家や漁師などそこに住まい営む人々―がつながることが理想だ。
代表の福島氏は博士号の学位を持つ火山研究者だ。桜島をこよなく
愛する桜島の伝道師でもあり、桜島地域のまちづくりのキーパーソン
でもある。
「目標は、桜島に住んでいる人と訪れた人、みんなが幸せになるこ
と。住んでいる人が地元を大好きになり、訪れる人もまた来ようって
思える仕組みづくりです」と福島氏。桜島の自然や文化への関心を高
めることで「防災」にもつなげる活動も行っている。こうした活動は
全国から注目を集めており、平成 23 年 12 月には、環境省「エコツー
リズム大賞」の特別賞を受賞した。
取組主体 NPO 法人 桜島ミュージアム (http://www.sakurajima.gr.jp/)
設 立 年 平成 17 年(2005 年)3 月 24 日法人設立 ※平成 14 年に結成した「桜島友の会」が前身
住 所 鹿児島県鹿児島市野尻町 205 電話 099-245-0100 FAX 099-245-0101
福島 大輔氏 (ふくしまだいすけ) NPO 法人桜島ミュージアム理事
長。専門は火山地質学(理学博
士)。京都大学・桜島火山観測所
の研究員を経て、平成 17 年に
NPO 法人桜島ミュージアムを設
立。鹿児島大学の非常勤講師で
もある。深い知識とわかりやすい
解説で人を「へぇ~」と言わせるこ
とが得意
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桜島の魅力はまだまだ知られておらず、活か
しきれていない → 桜島そのものを「まるごと博物館」とした
【桜島・エコミュージアム】
取り組みを継続し、発展していくためには、組
織力の強化が必要
→ 桜島友の会を発展的改組 【NPO 法人桜島ミュージアム設立】
(地域の特徴)
桜島をまるごと博物館に 桜島は錦江湾(鹿児島湾)に浮かぶ火山島で、大正 3 年の大噴火に
より大隅半島と地続きになった。現在もなお活発な火山活動を続けて
いる。鹿児島市街地とは桜島フェリーで 15 分、島内の約 85%が国立
公園に指定されており、古里温泉や桜島大根、桜島小みかんなどが有
名で、かつては新婚旅行のメッカであった。しかし、明治期には 2万
人以上もいた人口は 6千人弱まで減少し、観光客数も伸び悩んでいた。
平成 14 年、当時、大学の非常勤講師を勤めていた福島氏は、桜島に
は多くの魅力があるのに、殆ど知られておらず活用されていないのは
もったいないと考え、「阿蘇たにびと博物館」が先進的に取り組んでい
たエコミュージアムの取り組みを参考にして、「桜島友の会」を設立し
た。
友の会は、徐々に仲間を増やしながら、桜島の魅力を伝える様々な
取り組み―火山見学会、写真展、砂防ダム見学ツアー、植物見学会、
桜島クリーンアップ大作戦、地元中学校の総合学習のサポート(ツア
ー企画、出前授業)など―を通じて、地元住民をはじめとする多くの
人々に桜島の魅力を伝える活動を展開し始めた。
(取り組み概要)
友の会を発展・改組し NPO 法人化 こうした取り組みを継続・展開をしていく上で、組織としての運営
基盤強化を図るため、平成 17年 3 月、「桜島友の会」を発展・改組し、
「NPO 法人桜島ミュージアム」を立ち上げた。法人化したことで、「桜
島友の会」の活動に加えて、「桜島ビジターセンター」の指定管理や、
公共機関の調査事業など(全国都市再生モデル事業・国土交通省/地
域資源コーディネート助成事業・中小企業基盤整備機構/グリーンツ
ーリズム促進事業・農林水産省など)を受託した。これにより、桜島
ビジターセンターを拠点としたガイドツアーの実施、修学旅行の受け
入れ、オリジナル商品づくりなど、さらに活動の幅を広げた。
地域の課題 ソリューション
火山ガイドウォーク。桜島の自然や溶岩原を解説しながら散策する
桜島ビジターセンターの指定管理を行っている
砂防施設の見学ツアー。普段は立ち入れない河口近くまで入っていく
火山ガイドツアー。普段の観光では見られない場所をじっくり巡る
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桜島の魅力を、
もっと幅広い人たちに伝えたい
→ 多面的に桜島の魅力を発信 【つばき油の商品化】【「みんなの桜島」出版】
桜島には観光協会などがなく、
地域が一体となった取り組みがない → 桜島の取り組みの中心になる組織づくり
【みんなの桜島協議会発足】
(地域資源の発掘と活用術①)
つばき油の商品化、
桜島の魅力を紹介する書籍を出版 桜島には隠れた魅力がたくさんあり、そうしたものをどうやって伝
えていくかが従来からの課題であった。
その 1 つが「つばき油」である。常時降り続く火山灰の中でも生育
できる椿は、島内に 6 万本以上も植えられているが、市内ですらあま
り知られていなかった。そこで女性スタッフと地元デザイナーを中心
に商品企画やパッケージデザインを検討して商品化したところ話題に
なり、ヒット商品となった。これをきっかけに、桜島の椿にまつわる
話や、桜島の魅力などが紹介されることにもつながった。
また、様々な取り組みを通じて収集してきた、たくさんの隠れた魅
力を紹介する機会・方法を探していた折に、出版社より打診があった
ことをきっかけに、平成 23 年 5 月、「みんなの桜島」を出版した。一
般的なガイドブックにはなかなか載らないような地域密着の情報を、
写真家や、伝統芸能の担い手、町歩きの達人などが紹介している。本
書も、桜島の地域内だけでなく、鹿児島県内や全国からも注文があり、
多くの方に桜島を知ってもらえるきっかけになった。
(地域資源の発掘と活用術②)
みんなで育てる、みんなの桜島まちづくりへ 桜島には、地域全体での観光まちづくりのまとめ役となる組織がな
く、地域一体での取り組みが進めにくい状況にあった。そこで「全国
都市再生モデル事業(国土交通省)」などを活用しながら、多様な主体
が参加する地域一体の観光まちづくりのあり方や、連携の方法などを
模索してきた。そして、平成 22年 4 月、議論を踏まえて、桜島の民間
団体・事業者や行政機関などが参画する「みんなの桜島協議会」が発
足した。まだ立ち上がったばかりの協議会ではあるが、平成 23 年には、
桜島の多様な主体が協働で実施するイベント「桜島まるごと体験フェ
ア」を主催するなど、早くも動きを見せている。
地域の課題 ソリューション
パッケージの工夫により、伝統工芸品からの脱皮を図っている
桜島の自然や暮らし、観光などをわかりやすく紹介している
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(地域資源を観光事業に活かすまでのプロセス)
桜島で暮らす人や営む人、桜島が大好きな人たちが、一体とな
って作り上げるイベント「桜島まるごと体験フェア」。
このフェアは、「みんなが学芸員」を目指して広げてきた取り組
みの一環で、桜島ならではの地元素材(桜島大根、桜島小みかん、
つばき油、温泉、桜島の灰を使った陶芸など)を、桜島に関わる
多様な人々が、プログラムに仕立てて、一定期間にまとめて提供
するもの。
平成 22 年は、旗振り役である NPO法人桜島ミュージアムが主催
していたが、平成 23 年度は、みんなの桜島協議会が主催し、29
のプログラムを展開、延べ 324 人の参加者を集めた。
(主なテーマとプログラム)
テーマ 主なプログラム 内容
おいしい桜島 世界一の大根収穫と
畑ランチ!
桜島大根や小みかん・ビワなどを育てている農家が
案内人。収穫体験をして味わう
やっぱり火山は
スゴイのだ!
天然温泉掘りと溶岩
焼き芋でホカホカ♪
火山と自然を愛する「温泉掘りブラザーズ」と海辺で
温泉掘り&桜島溶岩で石焼きイモ
桜島でカラダと
ココロを磨く
桜島つばき油で
リフレクソロジー
公認フットセラピストが、桜島のつばき油を使ったリ
フレクソロジーを提供
家族や仲間みん
なでいっしょに
手ぶらでOK!
温泉付き海釣り教室
桜島出身の釣り名人と一緒に錦江湾で海釣り体
験。終了後は桜島マグマ温泉を満喫
もっと
知りたい桜島
"世間遺産"&
ちょっぴり近代化遺産
バスツアー
町歩き名人と、桜島にある生活文化が良くわかる
「世間」遺産(近代遺産、井戸、トンネルなど)を巡る
(統計データ)
数字でみる「桜島ビジターセンター」
桜島ミュージアムは平成21年から桜島ビジターセン
ターの指定管理を請け負っている。
火山活動をモニタリングできる設備の新規導入、桜
島のガイドツアーやプログラム実施の際の拠点化、物
販コーナーの充実などを図っており、入館者数は順調
に増加している。
「桜島まるごと体験フェア」ができるまで
010,00020,00030,00040,00050,00060,00070,00080,00090,000
100,000(人) 桜島ビジターセンター入館者数