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創傷治癒経過記録集 Nutrition Support Journal Medical Magazine 編 集 藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授 東口 髙志 監 修 岐阜大学大学院医学系研究科消化器病態学教授 森脇 久隆 2013年特別号 ISSN 1345-7497 特別号 特別号 Wound Healing Progress Record book Vol.4

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創傷治癒経過記録集

NutritionSupport Journal

Medical Magazine ● 編 集 ●

藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授

東口 髙志

● 監 修 ●

岐阜大学大学院医学系研究科消化器病態学教授

森脇 久隆

2013年特別号 ISSN 1345 -7497

特別号特別号

Wound HealingProgress Record book

Vol.4

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巻頭言

 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の創傷治癒促進効果に関する

症例記録集も4号目を迎えた。当初一冊のみの心積もりであったが4号

を数えるに至ったことは、本剤の有用性が臨床現場でいかに歓迎されて

いるかを如実に示すものと感じている。なお本号で数の多い症例は術

後創(13例)、褥瘡(11例)、さらに注目すべき症例として放射線性口内

炎(4例)がある。さらに1号からの掲載内容を振り返ると、その内容が

格段に充実したとの感がある。このあたりに触れながら、本号の巻頭言

を記したいと思う。

 まずいずれの報告においても創傷自体の評価はもちろん、患者の全身

的な栄養状態をきちんとアセスメントしている点が挙げられる。全46例中

40例で血清アルブミンが測定され、その他、総蛋白、トランスサイレチン、

リンパ球数などを追跡した症例も少なくない。基本情報をきちんと押さえ

た上で介入を行っている様子が大変よくわかる。

 次に本飲料の副作用として窒素負荷による腎機能障害があるが、ほとん

どの症例で血清尿素窒素とクレアチニンが測定されている。実際、2例に

おいて尿素窒素上昇による用量変更が行われている。この2例は90歳と

65歳であり、高齢者の腎機能障害にはやはり特段の配慮が必要である。

 その他、各報告のうち着目すべき記載として、「皮弁移動術の取り止め

(創傷治癒により不要となった)」(p16)、前段の記載と深く関連するが「腎

機能に配慮すれば高齢者に対しても安全かつ有用」(p21)、「患者教育の

併施も重要」(p32)などを挙げることができる。

 本号は1ページから順に読み進めても、あるいは読者ご自身が参考とし

たい病態を探し、その症例のページのみを読んで下さっても結構である。

明日からの読者のプラクティスに何らかの参考になれば、監修者として望

外の喜びである。

2013年8月

岐阜大学大学院医学系研究科消化器病態学教授

森脇 久隆

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編集にあたって

 創傷治癒経過記録集も早や第4弾目を迎えることとなった。これまでにない新しい形の報告集

として読者の皆さんから、わかりやすい、臨床に役立った、勉強になった、そして続けて欲しいと

いう感想やご意見、ご要望をたくさんいただいており、本報告集に寄与されている方々と読者の

皆様に編集者として心より感謝する次第である。

 今回も創傷治癒の難しい症例を中心に臨床現場からお寄せいただいたレポートをまとめさせ

ていただきながら、当初は褥瘡に関する報告が多かったが、回を重ねるごとに徐々に、難治性四

肢潰瘍、術後感染創、縫合不全や口内炎など、幅広いフィールドでの治療やご経験の記録が増

加してきており、本報告集の存在は臨床家として心強い限りである。

 さて、これまでも創傷治癒促進を目指す新たな取り組みとして、新しい栄養素であるHMB

(β-hydroxy-β-methyl butyrate:ロイシン代謝産物)、そしてそれにアルギニンとグルタミン

を加えたHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の有用性に着目して、最新の栄養学を駆使した

創傷治癒促進の効果について紙上での症例検討会を行ってきた。前述したようにいろいろな領

域からその治療効果を示す報告がなされるようになり、毎回、栄養素とくにアミノ酸の生体に及

ぼす有益な効果が検証され、また治療に当たられる方々の栄養管理力に改めて驚かされる。い

つものことではあるが、多くの臨床現場で患者さんのことを思いながら一生懸命に尽くす皆様か

らのレポートは、読者の皆さまもお持ちであろう共通の悩みが代弁され、さらに症例個々に対す

る治療方法がわかりやすく記されている。

 今回は、第4弾であり、広い領域からの症例提示に加えて、これまでよりも写真がさらに詳細か

つ鮮明になってきており、説得力のある画像の提示が多く見受けられる。一方で、説明の簡略化

にも努められており、極めてわかりやすいレポートとなっている。まさに栄養サポートチーム

(nutrition support team:NST)で行われる、いやむしろ病院あるいは地域医療連携での症例

検討会にでも出席したかのような鮮やかさと臨場感を有していると思う。急性期、慢性期そして

地域一体型NSTなどいずれの活動に際しても、常に難治の患者さんがおられ、代謝・栄養学的

に創傷治癒を促進すべき症例に遭遇することが少なくない。その際には是非ともこの報告集を

ご参考にされて、栄養管理のプランニングの一助にしていただければ幸いである。

2013年8月

藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授

東口 髙志

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目次

P1 圧挫症候群・皮膚潰瘍兵庫医科大学 救命救急センター 中尾 篤典 ほか

P2 会陰創感染防衛医科大学校病院 褥瘡対策チーム 堂本 隆志 ほか

P3 開放骨折松戸市立病院 看護局 吉野 一美 ほか

P4 化学療法中の皮下膿瘍九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野助教 永田 公二

P5 下肢潰瘍・褥瘡JA愛知厚生連 安城更生病院 看護部 松原 真由美

P6 感染合併筋壊死公立昭和病院 救命救急センター 今村 剛朗

P7 喉頭癌術後縫合不全福島県立医科大学 耳鼻咽喉科 鈴木 政博

P8 広範囲切除・皮膚移植創独立行政法人国立病院機構 西別府病院 外科 唐原 和秀

P9 採皮創神戸大学医学部附属病院 形成外科 榊原 俊介

P10 膝窩動脈断裂順天堂大学医学部附属静岡病院 整形外科 杉山 陽一 ほか

P11 手術創部東京慈恵会医科大学附属柏病院 脳神経外科 川村 大地亀田総合病院 口腔外科 田村 英俊 ほか

P13 術後創感染埼玉社会保険病院 栄養部 細田 梢

P14 術後創感染・壊死兵庫医科大学病院 歯科口腔外科 頭司 雄介 ほか

P15 術後創傷がん研有明病院 頭頸科 北野 睦三千葉大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科 菅原 久純

P17 術後創部離開埼玉医科大学 形成外科 石川 昌一 ほか医療法人橘会 東住吉森本病院 栄養管理科 遠藤 隆之 ほか埼玉医科大学国際医療センター 消化器外科 竹下 宏樹埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科 馬場 裕之 ほか

P21 術後腹部正中創感染JA北海道厚生連 旭川厚生病院外科 庄中 達也

P22 術後縫合不全・皮膚潰瘍名古屋市立大学病院 栄養管理係 伊藤 明美 ほか

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特別号特別号

P23 褥瘡社会医療法人同心会 古賀総合病院 栄養管理部 赤池 梨紗杏林大学医学部付属病院 形成外科 大浦 紀彦宝塚市立病院 形成外科部長 黒川 正人 ほかJA愛知厚生連 豊田厚生病院 NST専従 小林 憲司東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 褥瘡チーム 看護部 小林 雅代 ほか医療法人信愛会 日比野病院 NST 助金 淳藤田保健衛生大学 外科・緩和医療学講座 中川 理子 ほか 

P30 褥瘡・骨髄炎関西医科大学附属滝井病院 形成外科病院助教 三宅 良平

P31 褥瘡・乳癌術後創部下関厚生病院 栄養治療部 松永 佳恵 ほか

P32 仙骨部褥瘡・左鼠径部瘻孔さいたま赤十字病院 皮膚科 成田 多恵 ほか

P33 乳房再建術後離開創医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院 看護部 田和 勢津子

P34 糖尿病性壊疽千葉県済生会習志野病院 臨床栄養科 鈴木 裕子 ほか

P35 難治性創傷東京歯科大学市川総合病院 看護部 髙木 夏恵 ほか

P36 熱傷豊川市民病院 栄養管理科 坂神 裕子岡山大学病院 高度救命救急センター 平山 敬浩公益社団法人地域医療振興協会 練馬光が丘病院 NST 栄養室 廣瀬 桂子 ほか兵庫県立西宮病院 救命救急センター 毛利 智好 ほか

P40 左腸腰筋膿瘍社会保険中央総合病院 栄養科 斎藤 恵子

P41 縫合不全獨協医科大学越谷病院 外科 菅又 嘉剛

P42 放射線性口腔粘膜炎いわき市立総合磐城共立病院 歯科口腔外科 佐藤 浩子関西労災病院 看護部 柳 智恵子

P44 放射線性口内炎熊本大学医学部附属病院 歯科口腔外科 緒方 克守 ほか

P45 放射線性口内炎・皮膚炎福岡赤十字病院 薬剤部 竹野 智彦

P46 両下肢皮脂欠乏性皮膚炎水戸済生会総合病院 医療技術部 栄養科 栗原 惠子 ほか

創傷治癒経過記録集 Vol.4

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

1

圧挫症候群・皮膚潰瘍兵庫医科大学 救命救急センター(医師) 中尾 篤典 小谷 穣治

患者背景1・ 年齢・性別:65歳 男性・ 基礎疾患:糖尿病・ 創傷の状況 発生日:2012年7月13日 部位:左脛骨前面 右前腕外側

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal 1日摂取水分量:約500mL

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)CRP(mg/dL)Cre(mg/dL)WBC(/μL)リンパ球(%)

7/1532×444.127.01.958,71010.7

7/2030×4

13.11.389,33011.0

7/2425×2.546.08.41.4210,46013.7

7/2723×2

5.01.5112,8109.5

7/3120×2

2.11.538,3808.0

8/616×2

5.01.5010,29011.5

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始以来、肉芽の増殖が良好となり、創治癒に貢献したと思われる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年7月20日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

低血糖発作で意識消失し救急搬送。来院時、左下腿に圧挫によると思われる皮膚潰瘍を認めた。同日より、スルファジアジン銀クリーム。7月24日よりジメチルイソプロピルアズレン軟膏。7月28日よりアクアセルAgを使用した。

治療経過3

2012年7月14日 2012年7月26日 2012年8月1日 2012年8月3日 2012年8月6日

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

2

会陰創感染防衛医科大学校病院 褥瘡対策チーム(形成外科医師) 堂本 隆志 清澤 智晴防衛医科大学校病院 褥瘡対策チーム(皮膚・排泄ケア認定看護師) 川野 麻衣

患者背景1・ 年齢・性別:70代前半 男性・ 基礎疾患:直腸癌(2012年12月、Miles手術) 脳梗塞 脳出血 狭心症・ 創傷の状況 発生日:2012年12月 部位:会陰部

2・ 1日摂取エネルギー:2,020kcal 1日摂取水分量:制限なし

創傷・栄養状態の変化4

コメント5陰圧閉鎖療法により肉芽形成が進んでいたが、低栄養状態の改善は乏しい状態であった。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用し栄養状態の改善が図れ、さらに創傷治癒促進に有用であったと考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:68病日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年12月Miles術施行後、12病日に会陰創感染が生じ瘻孔化した。感染制御可能となり、26病日よりV. A. C. ATSⓇ治療システムによる陰圧閉鎖療法開始する。その後、創部直上の尾骨部にポケットを有する褥瘡発生するも、会陰創の瘻孔サイズは徐々に縮小がみられ103病日より1回/日の微温湯洗浄へ処置変更となる。家族介入にて自宅での処置可能となり、110病日退院した。

治療経過3

26病日 50病日

68病日 109病日

確認日(病日)創の奥行サイズ(cm)体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

268

5.52.1211.58

47467.66.52.6211.27

75465.47.13.0221.55

822.5637.13.1351.64

891.5618.13.9351.78

1100.562.37.13.2281.89

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

3

開放骨折松戸市立病院 看護局(看護師) 吉野 一美松戸市立病院 内科(医師) 田代 淳

患者背景1・ 年齢・性別:87歳 男性・ 基礎疾患:なし

・ 創傷の状況 発生日:2012年3月18日 部位:左脛骨

2・ 1日摂取エネルギー:1,800kcal 1日摂取水分量:1,500mL

創傷・栄養状態の変化4

コメント5開放骨折後、プレート固定を行った骨部の周囲に肉芽の欠損があり、半年以上にわたり骨周囲にポケットが生じて、創部閉鎖が叶わなかった症例である。トラフェルミン塗布に加えてHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用するようになってから特に肉芽増成がはっきりみられるようになり、骨周囲の欠損部が消失、さらに植皮が可能な状態に改善した。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料が難治性の肉芽欠損修復に有用であったと考えられた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年12月13日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年3月に観血的固定術(スクリュー固定)を行ったが、開放創の肉芽造成が不良で、欠損部がポケット状となっており、局所の包交とアルプロスタジル アルファデクス軟膏などの塗布を行ったが、効果は薄く閉鎖が叶わなかった。同年12月初めからトラフェルミン塗布開始し併用、さらに12月13日からHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を1日1袋使用開始。2013年1月10日まで使用して終了。開始後から骨周囲の肉芽増生が良好となり、1月10日には欠損・ポケットがなくなったため1月22日に植皮術を施行、創部の閉鎖を行った。

治療経過3

2012年12月9日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用前 2012年12月17日 使用1週目

2012年12月26日 使用2週目 2013年1月8日

確認日(月/日)創の評価

体重(kg)Alb(g/dL)ChE(IU/L)PreAlb(mg/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)TLC(μL)T-CHO(mg/dL)

12/9骨周囲に欠損、ポケットが生じている(深さ15mm)

653.523316.40.67410.941,218110

12/17ポケットが浅くなった

3.927316.90.87420.791,276144

12/26ポケットは深さ8mm程度

653.9280

0.72430.781,072127

1/8骨周囲の欠損・ポケットが消失し肉芽で埋められた。

653.628615.11.23320.81992133

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

4

化学療法中の皮下膿瘍九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野助教(医師) 永田 公二

患者背景1・ 年齢・性別:5歳 男性・ 基礎疾患:脊髄腫瘍(非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍:AT/RT)・ 創傷の状況 発生日:2011年11月16日 部位:後頸部

2・ 1日摂取エネルギー:1,500kcal(経腸栄養で800kcal、静脈栄養で700kcal) 1日摂取水分量:1,500mL

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)CRP (mg/dL)

6/115.5×4.214.66.13.8140.290.02

6/18

6.54.2140.250.05

6/255.8×2.514.8

7/44.8×1.515.1

7/19

6.94.9160.30.01

8/9Closed16.36.04.1200.290.01

創傷・栄養状態の変化4

コメント5本例は、化学療法中の皮下膿瘍形成例であり、難治性創であった。術後3日目の炎症が落ち着いた時点でHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用を開始した。使用目標量は、アルギニン使用量100~150mg/kgを目安として、1/3袋とした。使用期間中のBUN、Creは正常範囲内であり、36日間使用を継続した。陰圧閉鎖療法に加え、HMB、グルタミン、アルギニンを併用することで創傷治癒効果が促進されたものと考えられた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年6月8日 使用量:1/3袋 /日(2012年7月7日終了) 使用量の途中変更 □無 □有

2011年10月4日に、前医にて後頸部腫瘍の診断で腫瘍摘出術が施行され、病理診断にてAT/RTと診断された。10月13日に集学的治療目的に当院紹介となった。10月18日から化学療法(ICE療法6コース;2012年4月26日まで)が開始したが、11月16日から後頸部周囲にMRSA皮下膿瘍を発症した。抗菌薬投与と創洗浄を行うも改善せず、2012年6月5日に頸部皮下膿瘍掻爬術を施行した。術当日手術場から創内持続陰圧洗浄療法を開始し、6月8日からHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用を開始した。創部の壊死組織の可及的切除を行いながら治療を継続した結果、使用開始後1週間目から創底部の肉芽増生を認めた。6月20日からVAC(vacuum assisted closure)療法を開始し、さらなる創部の縮小を得たのちに7月7日にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用を中止した。

治療経過3

2012年6月11日(術後6日目)HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始後4日目

2012年6月25日(術後20日目)開始後18日目

2012年7月4日(術後29日目)開始後27日目

2012年8月9日(術後65日目)閉創

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

5

下肢潰瘍・褥瘡JA愛知厚生連 安城更生病院 看護部(皮膚・排泄ケア認定看護師) 松原 真由美

患者背景1・ 年齢・性別:39歳 女性・ 基礎疾患:多発褥瘡 下肢潰瘍 既往歴:二分脊椎・ 創傷の状況 発生日:2012年6月1日 部位:足底 左臀部 左坐骨 右外顆

2・ 1日摂取エネルギー:1,900kcal 1日摂取水分量:1,000mL 常食を全量摂取、6月6日よりNST開始

確認日(月/日)創のサイズ(右足底)(cm) DESIGN -R(点)創の評価(左臀部)(cm)DESIGN -R(点)創の評価(左坐骨)(cm)DESIGN -R(点)創の評価(右足首)(cm)DESIGN -R(点)体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)Hb(g/dL)

6/1 15×94715×85312×8506×52673.86.32.37.5

7/115×823

15×828

6×5.5284×213

6.52.810.5

8/110×61413×5225×3133×214

6.83.712.5

創傷・栄養状態の変化4

コメント5既往歴に問題なく、年齢も若いことから順調に経過した。入院時に比べて、栄養データも改善された。創傷治癒過程については、足底は軟膏処置にて著明に改善し、臀部と坐骨部にはVAC療法も同時に行い、栄養管理と相乗効果で良好な結果が得られたと考える。

施設に入所しており長時間座位で過ごすことが多く、臀部褥瘡は改善しては悪化を繰り返していた。5月中旬より下肢壊疽が進行し、臀部褥瘡も悪化したため6月1日に緊急入院となった。全身への感染コントロールが開始され、6月6日からHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始となる。足底の潰瘍は軟膏処置を行い、7月から左臀部と左坐骨部褥瘡に対してVAC(vacuum assisted closure)療法を行い改善がみられ8月10日に退院となった。

治療経過3

2012年6月1日

2012年8月1日

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始日:2012年6月6日 使用量:2袋/日使用量の途中変更 □無 □有

2012年7月1日

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

6

感染合併筋壊死公立昭和病院 救命救急センター(医師) 今村 剛朗

患者背景1・ 年齢・性別:33歳 女性・ 基礎疾患:右下腿コンパートメント症候群(筋壊死、減張切開、筋切除術後) 急性薬物中毒 統合失調症・ 創傷の状況 発生日:2011年4月1日 部位:右下腿(内外両側)

2・ 1日摂取エネルギー:1,800kcal 1日摂取水分量:2,000mL

栄養状態の変化4

コメント5右下腿減張切開施行後、筋組織感染を合併するまでの間に、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用およびVAC療法を施行した。創縁および筋表面に肉芽増生を認めており経過順調だった。その後、感染合併したために筋切除術が必要となり、長期間の創部開放・洗浄、全身抗生剤投与、入院継続を必要とした。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2011年4月13日 使用量:2袋/日(4月20日まで) 使用量の途中変更 □無 □有

4 月 1 日 急性薬物中毒で入院。右下腿コンパートメントを合併していた。4 月 2 日 右下腿両側減張切開術を施行した。4 月 4 日 減張切開を追加した。4月13日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1日2袋使用開始した。4月15日 陰圧閉鎖(vacuum assisted closure:VAC )療法を導入した。4月29日 Enterobacter cloacae、Enterococcus faecalisの減張切開部感染をきたし、VAC療法を中止した。5 月 1 日 右下腿筋肉切除術を施行した。その後、開放創洗浄、全身抗生剤投与を継続した。MRSA感染もきたしながらも、炎症を小康状態に維持した。精神科的治療目的に、右下腿両側開放のまま他院精神科病院へ転院し、現在も精神科病院入院中である。右下腿に関しては縫合閉鎖可能となり、ADLも車イス移乗・介助下歩行器歩行となった。

治療経過3

確認日(月/日)体重(kg)Alb(g/dL)ChE(IU/L)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

4/2約902.828117.40.8

4/4

1.912926.63.3

4/13

2.3‐89.46.4

4/15

2.1‐76.94.8

4/22

2.2‐74.13.0

4/29

2.3‐37.21.7

2011年4月15日 2011年4月20日 2011年4月29日

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2012年2月29日 2012年3月12日

2012年3月19日 2012年4月20日

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

7

喉頭癌術後縫合不全福島県立医科大学 耳鼻咽喉科(医師) 鈴木 政博

患者背景1・ 年齢・性別:63歳 男性・ 基礎疾患:末期腎不全 糖尿病・ 創傷の状況 発生日:2012年2月28日 部位:頸部

2・ 1日摂取エネルギー:1,400kcal 1日摂取水分量:900mL(透析中であり水分制限あり)

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始後、創部の血流の良い肉芽増生を認め、全身状態の不良な患者においても創傷治癒促進に貢献した。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年3月8日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年2月22日、喉頭全摘術+右頸部郭清術施行、2月28日おとがい下皮弁壊死、咽頭皮膚瘻孔あり。以後連日、創部洗浄を行った。創部MRSA感染あり。3月8日~HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始、徐々に創部の肉芽が増生し、瘻孔部は縮小した。3月19日、咽頭皮膚瘻閉鎖術施行、上皮化していない部分はPGAシートにて被覆した。4月3日食事開始。

治療経過3

確認日(月/日)創の評価

体重(kg)TP(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

2/29皮弁壊死と瘻孔感染50.85.5254.68

3/12不良肉芽と

血流の良い肉芽増生51.16.5525.15

3/19血流の良い肉芽増生

50.17.0605.53

4/20創部縮小あり

51.86.7376.80

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

8

広範囲切除・皮膚移植創 独立行政法人国立病院機構 西別府病院 外科(医師) 唐原 和秀

患者背景1・ 年齢・性別:65歳 女性・ 基礎疾患:乳癌術後 転移再発 下肢リンパ浮腫・ 創傷の状況 発生日:2012年9月27日 部位:前胸部

2・ 1日摂取エネルギー:1,700kcal 1日摂取水分量:1,400mL

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用17日間で、サイズが15%縮小。周辺部の発赤も改善。脆弱であった全体の皮膚の厚さも増加。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年2月26日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

リンパ浮腫に対して複合的理学療法。前胸部の創は、保湿、洗浄のみ。

治療経過3

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

2/2619×1054.93.511.20.68

3/1518×951.93.819.00.61

2013年2月26日  胸部写真と計測値 2013年3月15日  胸部写真と計測値

10cm

21cm

9cm

18cm

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

9

採皮創神戸大学医学部附属病院 形成外科(医師) 榊原 俊介

患者背景1・ 年齢・性別:69歳 男性・ 基礎疾患:両下肢化学熱傷・ 創傷の状況 発生日:2013年1月21日 部位:背部

2・ 1日摂取エネルギー:1,800kcal

確認日(月/日)創の評価 体重(kg)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

1/21

70.42.690.62

1/25

2.6100.62

1/29

2.5110.61

2/5ほぼ上皮化69.53.3200.65

2 /12Minor infection

69.23.6150.6

2/28上皮化、退院70.23.7180.56

創傷・栄養状態の変化4

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年1月24日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2013年1月21日、背部より15/1,000inchで採皮し、両膝・大腿に分植皮を作った。

治療経過3

2013年1月30日 2013年2月1日 2013年2月17日 2013年3月12日

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確認日TP(g/dL)Alb(g/dL)Hb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

受傷 3/116.44.012.20.316.86.7

NST介入 6/4

9.84.07.60.7

1ヵ月後 7/17

11.90.814.40.7

2ヵ月後 8/156.43.312.40.416.40.8

退院時 9 /14

11.60.310.80.7

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用後10日目(2012年6月23日) 使用後1ヵ月目(2012年7月13日)

使用後2ヵ月目(2012年8月13日) 使用後3ヵ月目(2012年9月13日)

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

10

膝窩動脈断裂順天堂大学医学部附属静岡病院 整形外科(医師) 杉山 陽一順天堂大学医学部附属静岡病院 看護部(看護師) 杉元 美保

患者背景1・ 年齢・性別:30歳代 男性・ 基礎疾患:膝窩動脈断裂・ 創傷の状況 発生日:2012年3月11日 部位:右下腿

2・ 1日摂取エネルギー:2,400kcal

栄養状態の変化4

コメント5必要エネルギー量が充足していた上にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を加えたことで、HMB・グルタミン・アルギニンの補給が十分にでき、創傷部の肉芽形成へと有用であったと考えられる。また、蛋白合成に伴う筋肉の維持に加えリハビリにより筋肉量の維持・増加にもつながった。さらに、6月4日洗浄・デブリードマン後の抗生剤投与以降CRPは上昇せずに経過していた。グルタミン・アルギニンには免疫賦活作用があり、感染しにくい状態を作ることができていたと考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年6月13日 使用量:2袋/日(9月上旬まで3ヵ月間) 使用量の途中変更 □無 □有

受傷当日、膝窩動脈再建術・人工真皮移植術施行後、分層植皮を4回行い洗浄・デブリードマンを繰り返し行っていた。創部治癒遅延のため、6月4日栄養状態・創部治癒促進を目的にNSTが介入し、常食2,300kcalに加え栄養機能食品(鉄・亜鉛)・アルジネードウォーターの摂取を開始した。さらに、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料2袋の使用を開始した。

治療経過3

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確認日(月/日)創の評価TP(g/dL)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

11/29感染(+)7.02.97.5160.60

11/30

5.82.45.9230.82

12/5

6.82.53.9220.67

12/8発赤改善

12/14

7.93.21.2130.81

12/17治癒7.83.20.890.86

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

11

手術創部東京慈恵会医科大学附属柏病院 脳神経外科(医師) 川村 大地

患者背景1・ 年齢・性別:48歳 男性・ 基礎疾患: 脳挫傷に対して11月21日 緊急開頭手術施行。 術後創部および皮下ドレーン刺入部の感染に対して11月29日 デブリードマン施行。 ・ 創傷の状況 発生日:2012年11月29日 部位:頭部(ドレーン刺入部)

2・ 1日摂取エネルギー:1,200kcal 1日摂取水分量:2,000mL

CASE ❶

創傷・栄養状態の変化4

コメント5今回の症例では受傷時に生じた擦過傷の部分より皮下ドレーンを挿入、留置してしまったため、経皮的に感染したと考えられた。そのため、1回目の手術創が、治癒しておらず、またドレーン留置部に皮下ポケットおよび膿瘍が形成されてしまった。2回目の手術でデブリードマン、洗浄を行い、術後抗生剤投与および栄養管理を行うことで、少しずつ皮膚の発赤や皮下の液体貯留が改善した。今回通常の経管栄養にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を加えることで、よりTP/Albの上昇が速やかであり、2回の手術にも関わらず問題なく創傷治癒が得られた印象であった。また、下痢などの有害事象は認めず、血糖値のコントロールも良好であった。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年11月30日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

経管栄養および抗生剤投与にて経過観察。

治療経過3

2012年11月29日 2012年12月8日 2012年12月17日

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術後29日目(口腔内) 2012年7月17日術後15日目(口腔内) 2012年7月3日手術日(口腔内) 2012年6月18日 術後8日目(口腔内) 2012年6月26日

術後29日目(腸骨) 2012年7月17日手術日(腸骨) 2012年6月18日 術後8日目(腸骨) 2012年6月26日

確認日(月/日)体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)Hb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

6/1972.36.44.215.8170.98

6/22→6.24.115.1210.74

6/25→6.64.316.5230.90

6/27→6.84.716.8190.99

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

12

手術創部亀田総合病院 口腔外科(歯科医師) 田村 英俊 河地 誉

患者背景1・ 年齢・性別:47歳 男性・ 基礎疾患:高血圧・ 創傷の状況 発生日:2012年6月18日 部位:口腔内(下顎左側智歯部) 腸骨部

2・ 1日摂取エネルギー:1,125~1,500kcal 1日摂取水分量:1,425~1,800mL

CASE ❷

栄養状態の変化4

コメント5本例は口腔内に創があり、経口摂取不可のため、経腸栄養を行った症例である。創は、口腔内、腸骨部と2つあり、治癒過程に時間差があると予想されたが、両創面ともに早い段階で上皮化を認めた。良好な治癒経過が得られた1例を経験したので報告する。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年6月11日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年6月19日 変更後の量:2袋/日)

6月18日全身麻酔下において、顎骨腫瘍摘出術、腸骨PCBM移植術を施行した。術後より、経鼻チューブを挿入し、経腸栄養開始となった。術翌日より、歩行介助器を使用した。6月22日より歩行介助器を使用せずに独歩可能となった。6月25日口腔内、腸骨採取部を全抜糸した。口腔内、腸骨採取部に感染所見を認めなかった。経過良好につき、6月27日退院となった。

治療経過3

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確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

12/1017×5.762.72.780.6

12 /12‐‐2.460.57

12/14‐‐2.560.56

12/17‐63.02.560.58

12/28‐62.72.990.53

1/815×5.0‐3.4120.59

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

13

術後創感染埼玉社会保険病院 栄養部(管理栄養士) 細田 梢

患者背景1・ 年齢・性別:61歳 男性・ 基礎疾患:直腸癌(12月3日入院、12月5日手術)・ 創傷の状況 発生日:2012年12月7日 部位:会陰 正中創 ストーマ周囲

2・ 1日摂取エネルギー:250~1,800kcal 1日摂取水分量:1,300~2,400mL

創傷・栄養状態の変化4

コメント5十分なエネルギーが確保できている場合では、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用することでBUNが上昇することなく創傷治癒の改善が促進された。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年12月21日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2病日より会陰の創発赤あり、開創ドレナージ実施。正中創よりアイテル様あり、全抜鉤し洗浄。ストーマも一部ポケット形成しており、ドレナージ実施。12月28日~VAC(vacuum assisted closure)療法開始。食事開始後、摂取量少なく栄養補助食品は付加していなかったが、常食の変更とともに食欲増進あり。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用した。

治療経過3

2012年12月9日 2012年12月19日 2012年12月25日 2012年12月28日

2013年1月4日 2013年1月7日 2013年1月18日

12月10日~ 流動食(250kcal)12月11日~ 3分食(1,000kcal)12月12日~ 5分食(1,200kcal)

12月13日~ 全軟食(1,800kcal)12月17日~ 常食(1,400kcal)

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確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)CRP(mg/dL)Cre(mg/dL)WBC(/μL)TLC(/mm3)

10/23

4717.90.4623,270700

10/25

28.50.5416,750250

10/293×5497.10.449,1001,500

11/1

3.00.439,400 990

11/5

471.10.406,8001,230

11/171×2

0.40.465,8001,610

2012年10月28日 2012年11月1日

2012年11月9日 2012年11月15日

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

14

術後創感染・壊死兵庫医科大学病院 歯科口腔外科(歯科医師) 頭司 雄介 高岡 一樹

患者背景1・ 年齢・性別:80歳 男性・ 基礎疾患:口底癌(悪性腫瘍切除術、頸部郭清術、遊離皮弁による再建術、気管切開術)術後・ 創傷の状況 発生日:2012年10月26日 部位:顎下部~頸部

2・ 1日摂取エネルギー:1,400kcal 1日摂取水分量:2,300mL

創傷・栄養状態の変化4

コメント5創部からの浸出液の減少、肉芽組織の形成がみられ、上皮化に伴い創の縮小を認め,通例よりも創傷治癒の促進を実感した。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用が、創の改善につながったと思われた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年10月15日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年10月25日 変更後の量:3袋/日)

術後10日目頃(2012年10月23日)から38.9℃の発熱を認め、カテーテル感染疑いにて中心静脈カテーテル抜去。頸部CT精査後、口底再建部から頸部にかけての術後感染および周囲組織壊死にて、10月26日顎下部より切開排膿、ガーゼ挿入し開放創とした。 MRSA、真菌感染を認めたためバンコマイシン塩酸塩、ホスフルコナゾールIV開始。 11月9日 栄養状態の改善、創の縮小傾向を認めた。11月13日嚥下移行食開始。

治療経過3

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

15

術後創傷 がん研有明病院 頭頸科(医師) 北野 睦三

患者背景1・ 年齢・性別:58歳 男性・ 基礎疾患:口腔底癌化学放射線治療(49歳) 中咽頭癌手術(57歳) 中咽頭癌再発救済手術(58歳)・ 創傷の状況 発生日:2012年10月2日 部位:左顎下部

2・ 1日摂取エネルギー:1,800kcal 1日摂取水分量:3,000mL

CASE ❶

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)Alb(g/dL)PreAlb(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

10/3約2.5×1.558.53.015.280.82

10/17

59.53.218.6100.69

10/24

58.53.520.2150.7

11/7

603.619.1150.66

11/14

593.5-170.74

11/21閉鎖58.43.4-180.69

創傷・栄養状態の変化4

コメント5救済手術後ですでに同側の有茎皮弁は使用しており、手術で閉鎖するには困難な症例であった。さらに化学放射線治療後のため創傷治癒が悪かったが、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用により局所縫縮にて瘻孔が閉鎖できたと考える。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年10月19日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

化学放射線治療の既往歴のある中咽頭癌再発の術後に口腔皮膚瘻を形成した症例。2012年9月13日手術施行し、術後当初はなかったが、2012年10月2日瘻孔を認め、N-Gチューブ留置。化学放射線治療後のため創傷治癒遅延あり、瘻孔縮小せず。2012年10月19日よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始後瘻孔縮小し、局所縫縮(2012年11月9日、11月15日)により瘻孔を閉鎖。

治療経過3

2012年10月13日 症例使用前 2012年11月12日 縫合2回目前

2012年11月20日 縫合5日後 2012年11月27日 抜糸後

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

16

術後創傷千葉大学医学部附属病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科(看護師) 菅原 久純

患者背景1・ 年齢・性別:68歳 男性・ 基礎疾患:腎不全 胆石症・ 創傷の状況 発生日:2011年12月14日 部位:右頸部

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal たんぱく質60g(HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料含む) 塩分3g 経口食に含まれる水分1,450mL、その他の摂取水分量250~550mL→1日摂取水分量:1,700~2,000mL

CASE ❷

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始当初、創部は滲出液を多く認めたが、滲湿液は徐々に減少し創部の縮小を認めた。欠損範囲が広く長期にわたり上皮化が進まなかったため、皮弁移動術による上皮の補填を検討されていたが、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用開始後上皮化が良好に進んだため手術は行うことなく退院を迎えることができた。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用は開始から4月7日の退院まで継続とした。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年3月7日 使用量:0.5袋/日 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年3月8日 変更後の量:1袋/日)

慢性腎不全患者(維持透析中、月・水・金)2011年12月14日中旬、蜂窩織炎の診断にて当院緊急入院。深部頸部膿瘍切開排膿術+気管切開術施行。術後抗生剤投与、創部洗浄にて管理。12月19日より1,000kcalで胃管からの濃厚流動食開始となる。12月23日より1,600kcalへ食事量を変更。嚥下訓練を経て2012年2月23日より経口食へ完全移行1,600kcal(たんぱく質60g、塩分3g)となる。表皮欠損多いため、DP皮弁移動術考慮となっていたが、上皮化促進目的でHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始した。

治療経過3

2012年3月9日 2012年3月13日 2012年3月22日

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重・ドライウエイト(kg)

透析前TP(g/dL)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)Cre(mg/dL)

透析後TP(g/dL)Alb(g/dL)Cre(mg/dL)

3/511×4.545.5

7.93.51.09.70

8.73.82.90

3/1210×3.5

7.83.51.29.50

7.53.42.98

3/19

7.13.30.39.91

8.64.02.88

3/265×2.5

7.53.60.510.28

7.83.82.71

4/2

46.0

7.43.80.210.36

7.03.52.84

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

17

術後創部離開埼玉医科大学 形成外科(医師) 石川 昌一 市岡 滋埼玉医科大学 栄養部(管理栄養士) 大出 佑美

患者背景1・ 年齢・性別:76歳 男性・ 基礎疾患:なし・ 創傷の状況 発生日:2012年6月中旬 部位:胸部

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal 1日摂取水分量:1,000mL程度

CASE ❶

確認日(月/日)体重(kg)BMI(kg/m2)Alb(g/dL)Hb(g/dL)PreAlb(mg/dL)WBC(/μL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)eGFR(mL/分/1.73m2)

6/26 60.824.53.09.1

8,0602.95131.1050.4

7/4

3.310.218.28,8602.65231.1249.4

7/11

3.511.118.66,6303.13271.3141.7

7/19

3.511.517.47,1402.35281.2643.5

7/2561.024.63.311.215.46,4302.34221.1548.0

8/25

3.812.3

8,1803.46221.1946.3

栄養状態の変化4

コメント5高齢患者の術後創部離開であり難治化が予想されたが、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料と局所陰圧閉鎖療法を組み合わせることで、順調に創傷治癒が進んだ。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年6月27日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

胸骨骨髄炎の治療目的で、6月18日に大胸筋弁による再建手術を施行。術後感染、創部離開あり、6月27日からHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始した。6月30日から7月27日まで局所陰圧閉鎖療法を行い、7月28日退院。退院後は外用薬で自己処置を行い、8月25日、創部治癒。軽度腎機能障害あり、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は1袋/日で開始した。開始2週間後に腎機能(Cre、eGFR)の悪化があったが、食事のたんぱく質、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料ともに変更せず経過観察したところ、改善した。

治療経過3

2012年6月27日 2012年7月14日 2012年7月25日 2012年8月9日 2012年8月25日

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

18

術後創部離開医療法人橘会 東住吉森本病院 栄養管理科(管理栄養士) 遠藤 隆之医療法人橘会 東住吉森本病院 外科(医師) 酒部 克 清田 誠志

患者背景1・ 年齢・性別:60歳 男性・ 基礎疾患:高血圧 脂質異常症・ 創傷の状況 発生日:2012年3月26日 部位:正中創 回腸瘻

2・ 1日摂取エネルギー:2,300kcal 1日摂取水分量:3,500~3,700mL

CASE ❷

確認日(月/日)体重(kg)骨格筋量(kg)四肢筋量(kg/m2)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)TTR(mg/dL)

4/2

1.231.80.754.9

4/1860.9214.71.415.50.485.2

5/161.2225.01.79.40.410.1

5/2163.121.85.12.712.50.5217.6

栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を2袋使用開始後、肉芽形成促進し顕著に創の縮小が認められ、同時に栄養状態・筋肉量の改善も認められた。術後創部離開に対してHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は有用であると考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年4月2日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年3月14日、上行結腸癌穿孔による膿瘍形成、腹膜炎・敗血症を合併し、右半結腸切除・ストーマ(回腸瘻)造設術施行。 術後低栄養状態(Alb値1.2g/dL)に陥り、ストーマ・創部が離開したためNST介入。4月2日より創傷治癒目的にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料2袋を開始した。 創部処置は壊死組織に対してデブリードマン施行し、離開部にはアクアセルAgを充填した。

治療経過3

2012年4月2日 2012年4月15日 2012年5月15日

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

19

術後創部離開 埼玉医科大学国際医療センター 消化器外科(医師) 竹下 宏樹

患者背景1・ 年齢・性別:72歳 男性・ 基礎疾患:絞扼性イレウス術後(回盲部切除、腹腔内ドレナージ)・ 創傷の状況 発生日:2013年1月17日 部位:下腹部正中

2・ 1日摂取エネルギー:1,200kcal 1日摂取水分量:500mL

CASE ❸

確認日(月/日)体重(kg)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

1/2852.3131.02

栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を2袋使用後、肉芽形成促進し顕著に創縮小が認められ、同時に栄養状態・筋肉量の改善も認められた。術後創部離開に対してHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は有用であると考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年1月28日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

創部を自己でシャワー洗浄。

治療経過3

2013年2月2日 2013年2月9日 2013年2月23日

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

20

術後創部離開 埼玉医科大学総合医療センター 消化管・一般外科(医師) 馬場 裕之 桑原 公亀  石田 秀行埼玉医科大学総合医療センター 看護部(看護師) 斉藤 恵子 浅見 久仁子 横田 成子

患者背景1・ 年齢・性別:60歳 男性・ 基礎疾患:転移性肝癌術後 腹腔内膿瘍 術後創部皮下膿瘍・ 創傷の状況 発生日:2012年12月20日 部位:腹部創(逆T字切開:肝臓切除術時の皮膚切開)

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal 1日摂取水分量:約2,000mL

CASE ❹

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用終了時の最終的な写真・計測・データは欠落しているが、治療経過上急速に肉芽組織の増生が進んだ。約20日程度で完全に離開した腹部創が治癒に至った。創部局所の感染コントロールや肉芽組織の発達のための局所環境を改善することも重要であるが、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用も創部改善に少なからず寄与した1例と考える。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年1月11日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

創部を開放すると腹腔内膿瘍の連続。膿瘍腔内にドレナージを実施し、全体の状況が制御できた時点で経口摂取とともにHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始。抗生物質は膿瘍開放当初の経静脈投与実施。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用は2月16日まで継続。

治療経過3

2013年1月11日 2013年1月14日 2013年1月20日

2013年1月27日 2013年2月8日

確認日(月/日)創のサイズ(cm) 体重(kg)Alb(g/dL)Hb(g/dL)WBC(/μL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)Lym(%)

1/114.5×8.448.22.612.15,600150.5313.6

1/144.5×8.047.42.612.29,200140.6815.5

1/204.0×7.753.52.411.06,900170.6020.2

1/273.7×6.750.02.29.26,000120.5331.7

2/82.9×4.850.22.810.35,40060.5442.6

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

21

術後腹部正中創感染 JA北海道厚生連 旭川厚生病院 外科(医師) 庄中 達也

患者背景1・ 年齢・性別:83歳 女性・ 基礎疾患:Vater乳頭部癌 糖尿病・ 創傷の状況 発生日:2012年5月11日 部位:腹部正中創(2012年4月17日、亜全胃温存膵頭十二指腸切除)

2・ 1日摂取エネルギー:1,500kcal 1日摂取水分量:700mL

確認日(月/日)体重(kg)TP(g /dL)RBP(mg /dL)PreAlb(mg /dL)BUN(mg /dL)Cre(mg /dL)Tf(mg /dL)

4/24

7.52.4

124

5/1344.0

5/15

6.4

11.60.69

5/2043.7

15.20.67

5/23

6.11.711.9

182

5/29

6.4

16.80.73

6/7

6.41.713.49.40.74190

栄養状態の変化4

コメント583歳と高齢であったがHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1袋にすることで安全に使用することができた。高齢者に対しての使用でも有用性を実感できた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年5月15日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年5月15日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1袋使用開始(高齢のため1袋とした)+VAC(vacuum assisted closure)による吸引療法開始

2012年5月25日 VAC療法10日施行。創の清浄化あり二次縫合を施行。2012年5月31日 退院。外来フォローとした。2012年 6月7日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始3週間後。正中創の縫合糸感染のため創の発赤はあるが、創自体は綺

麗にadaptした。抜糸で発赤は軽快。2012年 8月9日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用3ヵ月後。創は綺麗に閉鎖している。

治療経過3

2012年5月15日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始前 2012年5月21日 開始6日後2012年5月18日 開始3日後

2012年5月25日 開始10日目 2012年5月25日 開始10日目 2次縫合

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

22

術後縫合不全・皮膚潰瘍名古屋市立大学病院 栄養管理係(管理栄養士) 伊藤 明美名古屋市立大学病院 脳神経外科 病院教授(医師) 間瀬 光人名古屋市立大学病院 脳神経外科 助教(医師) 西川 祐介

患者背景1・ 年齢・性別:46歳 男性・ 基礎疾患:血栓化脳動脈瘤 右後頭動脈・後下小脳動脈吻合術後 高脂血症 高血圧・ 創傷の状況 発生日:2010年5月25日発見 部位:後頭部

2・ 1日摂取エネルギー:2,200kcal 1日摂取水分量:2,500mL

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

5/2818×1.5783.00.26170.7

6/32.5×1.0784.00.19220.8

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始後、1週間で創部の肉芽形成が良好となり、後頭部の皮膚潰瘍においても肉芽形成に有用である可能性を示唆した症例と考える。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2010年5月28日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

退院後の外来受診時に創部の痂皮から浸出液があり入院処置が必要となる。入院後は、毎日の洗浄後にフラジオマイシン硫酸塩貼付剤で保護し、感染に対してはレボフロキサシン水和物製剤を内服した。感染消失後は、トラフェルミン(遺伝子組み換え)とハイドロファイバーシートで処置を行いつつ、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始した。開始後、1週間で創部の肉芽形成が良好となり退院となった。

治療経過3

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用前(2010年5月25日)

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用1週間後

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

23

褥瘡社会医療法人同心会 古賀総合病院 栄養管理部(管理栄養士) 赤池 梨紗

患者背景1・ 年齢・性別:72歳 男性・ 基礎疾患:脊髄小脳変性症 逆流性食道炎(疑)・ 創傷の状況 発生日:2011年3月 部位:両坐骨 仙骨 腰椎

2・ 1日摂取エネルギー:1,370kcal 1日摂取水分量:1,850mL

CASE ❶

創傷・栄養状態の変化4

コメント5入院後、発熱と高度の多発褥瘡および栄養状態の低下がみられ早期のNST介入が必要とされた。多職種間の連携により、処置および栄養療法の選択がスムーズに行われ、褥瘡のみならず全身状態の改善がみられた症例である。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2011年8月12日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

脊髄小脳変性症にて2011年7月より寝たきり状態となり、壊死の強い多発性褥瘡を発生。入院後、局所の洗浄、デブリードマンを繰り返し施行した。嚥下困難のため経口からの食事摂取が難しく、栄養状態改善目的にてPEG造設となる。嚥下のリスクおよび長時間のギャッジアップをさけるため、とろみをつけた経腸栄養剤を使用し、短時間注入を試みた。その後、注入トラブルなく順調に栄養状態改善・褥瘡治癒を認めた。

治療経過3

2011年7月20日 2011年8月17日 2011年9月14日

2011年10月12日 2011年11月2日

確認日(月/日)創のサイズ(右)(cm)創のサイズ(左)(cm)体重(kg)Alb(g/dL)Hb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

7/207×76×5441.66.920.20.79

8 /175.8×3.57×438.12.39.925.90.42

9/143×44×238.32.511.424.50.34

10/121.1×2.21×0.538.52.812.226.20.32

11/ 21×1.51×0.539.72.812.529.40.35

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3/2入院4×210×8347.22.416.10.2

3/6ポケット切開11×1212×13376.82.222.20.2

3/14ポケット切開後8日11×1212×12 306.92.440.40.2

4/4植皮術施行NA

NA6.82.432.00.3

4/25植皮術後21日

3×1ポケットなし

57.02.447.00.3

5/3植皮術後30日

治癒

治癒6.82.622.50.2

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

24

褥瘡杏林大学医学部付属病院 形成外科(医師) 大浦 紀彦

患者背景1・ 年齢・性別:90歳 女性・ 基礎疾患:なし

・ 創傷の状況 発生日:2011年11月 部位:仙骨部

2・ 1日摂取エネルギー:1,200kcal 1日摂取水分量:1,500~1,700mL

CASE ❷

創傷・栄養状態の変化4

コメント5早期のポケット切開と植皮術によって創閉鎖を図った。植皮術によって創閉鎖を行い、上皮化が進行するにつれて創傷からの滲出液が減少した。同時にAlb値も上昇した。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年3月7日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年3月13日 変更後の量:1袋/日)

3 月 1 日 褥瘡にて入院した(大きさ4×2cm、ポケット10×8cm)。3 月 6 日 ポケット切開。陰圧閉鎖療法でずれが生じるため、カデキソマー・ヨウ素軟膏にて処置した。 翌日よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料2袋使用を開始。経管栄養:E-3 1,200kcal。3月13日 BUN上昇のため、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を1袋に変更。経管栄養:E-3 1,200kcal(+ビーフリード500mL)。4 月 4 日 肉芽形成80%以上獲得できたため、ポケット縫着+植皮術施行した。    経管栄養:濃厚流動食品900kcal(+ソリタ-T1 1,000mL)4月25日 創傷被覆材(アスキナソーブⓇ)へ処置変更した。5 月 3 日 褥瘡部経過良好のため、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用を中止した。5 月 9 日 治癒、退院となった。

治療経過3

確認日(月/日)経過創のサイズ(cm) 大きさ       ポケットDESIGN - R(点)TP(g/dL)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

2012年3月14日2012年3月6日 ポケット切開

2012年4月25日 植皮術3週間後2012年4月4日 ポケット縫着+植皮術

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8/131

2.05.10.60

8/63043.22.223.30.66

8/142142.6

10.90.75

8/281941.02.220.30.60

9/4(9/3手術)

38.92.517.70.71

9/17

40.72.919.70.79

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

25

褥瘡宝塚市立病院 形成外科部長(医師) 黒川 正人宝塚市立病院 看護部(看護師) 黒木 亜希子

患者背景1・ 年齢・性別:74歳 男性・ 基礎疾患:脱水 褥瘡・ 創傷の状況 発生日:2012年6月中旬 部位:右大転子

2・ 1日摂取エネルギー:1,042kcal 1日摂取水分量:1,500mL

CASE ❸

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用することで、栄養状態は改善し褥瘡も縮小した。また、大腿筋膜張筋皮弁移植術後もトラブルなく、良好な経過を経て早期退院が可能になった。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年8月3日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

8月3日よりエネルギーコントロール食1,600kcal+HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1袋を使用開始。治療は局所陰圧閉鎖療法を同時に開始。褥瘡は肉芽形成良好となり縮小した。Wound bed preparationが整ったところで、9月3日に大腿筋膜張筋皮弁にて閉鎖した。術後経過良好。

治療経過3

確認日(月/日)DESIGN -R(点)体重(kg)Alb(g /dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

2012年7月27日 2012年8月11日 2012年8月25日 2012年9月3日 手術直後

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7/9

65.66.51.89.7011.8

7/27

62.85.41.62.8311.7

8/7(8月10日HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始)

635.41.83.489.2

8/17

61.46.02.50.3614.6

8/30

61.45.92.90.1314.0

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

26

褥瘡JA愛知厚生連 豊田厚生病院 NST専従 小林 憲司

患者背景1・ 年齢・性別:44歳 男性・ 基礎疾患:外傷性脊髄損傷(1992年 Th12)

・ 創傷の状況 発生までの経過: 23歳時に労災事故にて脊髄損傷。整形外科で治療。その後は、

2ヵ月ごとに整形外科通院していた。2012年6月頃、広範囲に皮膚壊死あり、褥瘡悪化にて2012年7月10日に入院。

発生日:2012年6月頃 部位:仙骨 両側転子 踵

2・ 1日摂取エネルギー:2,500kcal たんぱく質:約90g NPC/N149 1日摂取水分量:2,500mL

CASE ❹

栄養状態の変化4

コメント5NST介入時は創からの滲出液が多くCRPが高値であったため、エネルギー、たんぱく質および微量栄養素をしっかり投与することで体重、血中たんぱくの維持に努めた。肉芽組織が出てきてCRPが落ち着いた時期に、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用したことにより栄養状態、創の改善につながったと考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年8月10日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

NST介入経緯:7月13日に食事摂取量不良、低アルブミン血症、褥瘡対策目的にNSTに依頼があり介入を開始した。NST依頼時の身体状況は、身長170cm、体重65.6kg、BMI22.7kg/m2、上腕周囲長28.5cm、上腕三頭筋皮下脂肪厚10mm、下痢+、下肢(足首部)浮腫+、褥瘡+であった。栄養補給ルートは経口栄養(PO)であった。推定必要栄養量の設定は、エネルギーはH/B式を用い設定体重は65.6kg、ストレス係数1.5、活動係数1.1とし2,510kcal/日、たんぱく質は65.6kg×1.5gとし98g/日、脂質はエネルギー比25%とし68g/日、糖質は376g/日、水分は65.6kg×35mLとし2,296mL/日とした。栄養補給状況は、POよりエネルギー1,302kcal(52%)、たんぱく質49g(50%)、脂質23g(33%)、糖質218g(58%)と充足率は低かった。栄養管理上の問題点は、①褥瘡、②食事摂取量低下であった。NSTからの提案内容は、経口摂取不安定で栄養量が不足していたため、エネルギー、たんぱく質、微量元素の充実した経腸栄養剤を補助として追加することを提案した。経過:7月14日よりNST提案内容が施行された。食事摂取量は改善し経腸栄養剤は継続飲用できていた。徐々に経口摂取量が増加し、7月27日に再評価したところ、補給栄養量はエネルギー 2,545kcal/日(101%)、たんぱく質91g/日(93%)、脂質62g/日(91%)、糖質395g/日(105%)と充足率が改善した。7月27日、局所麻酔デブリードマン。8月2日植皮術施行し、CRPも9.7→3.48と落ち着いた。創部肉芽良好となったため、エネルギー・たんぱく質は保ちつつ、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用した。

治療経過3

確認日(月/日)

体重(kg)TP(g)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)

2012年7月10日 2012年8月2日

2012年8月30日

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1/20仙骨部3.0×2.5坐骨部5.0×3.0

7.93.512.411.3

1/29坐骨部切開後9.0×10.0

(7.0×10.0)仙骨部 15坐骨部 39

2/8仙骨部1.5×1.8

仙骨部 7

12.70.9

2 /15坐骨部7.0×9.5(4.0×7.5)

坐骨部 28

2/27仙骨部治癒坐骨部

6.3×7.5(6.0×4.3)仙骨部 0坐骨部 24

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

27

褥瘡東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 褥瘡チーム 看護部(看護師) 小林 雅代 半谷 康子 相磯 美弥子  田中 沙矢香 古田島 裕子 板垣 伸子東京慈恵会医科大学葛飾医療センター 褥瘡チーム 栄養部(管理栄養士) 黒川 香奈子 髙橋 徳伴 林 進

患者背景1・ 年齢・性別:45歳 男性・ 基礎疾患: 脊髄脳動静脈奇形 両下肢麻痺 排尿排便障害あり(25年前から)

・ 創傷の状況 入院までの経過:2012年12月、右坐骨部・仙骨部に褥瘡発症。 他院にて連日抗生剤投与と洗浄処置を行っていた。 2013年1月20日、摘便中に右気胸を発症し当院に入院となった。

発生日:2012年12月部位:仙骨部 右坐骨部

2・ 1日摂取エネルギー:1,787kcal(食事 一般食常食、末梢静脈栄養 生食注「大塚」 150mL/日) 1日摂取水分量:2,047mL

CASE ❺

創傷・栄養状態の変化4

コメント5入院時(2013年1月20日)より、経口摂取可能で一般食の常食を摂取していた。喫食率は80~100%と大変良好であった。毎週1回褥瘡回診実施。当初数日で退院方向であったが、仙骨部、座骨部の褥瘡が広範囲にて敗血症のリスクあり、1月24日皮膚科に転科となった。1月29日よりVAC療法開始。1月31日よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1日1袋を経口で使用開始した。2月25日にVAC療法終了。3月4日に外科的治療(切開縫合、植皮)目的で他院へ転院となった。栄養評価のデータはほとんどないが、VAC療法とHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を併用し、早期に良好な肉芽形成を認めた症例であった。

坐 骨 部 ①1月24日坐骨部切開前、②1月24日坐骨部切開後、③1月25日坐骨部切開翌日、 ④2月1日VAC(vacuum assisted closure)療法開始3日目 ⑤2月15日 VAC療法開始17日目、⑥2月25日 VAC療法終了時仙 骨 部 ⑦1月23日、⑧2月22日 1月21日 トラフェルミン+ブクラデシンナトリウム1月24日 仙骨部:ブクラデシンナトリウム+ガーゼ オプサイトクイックロール 坐骨部:ブクラデシンナトリウム+ガーゼ ポケット切開 バルーン挿入と摘便で排泄コントロール 実施。1月29日 仙骨部:トラフェルミン 坐骨部:VAC療法125mmHg開始 同時に車椅子への移乗は、週2回の交換時と制限し局所管理を徹底した。1月30日 トラフェルミン+ハイドロサイトAD1月31日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1日1袋を経口で開始、治癒経過は良好であった。2月13日 仙骨部:トラフェルミン ハイドロサイトADジェントル2月22日 仙骨部褥瘡が完全に上皮化した。2月25日 坐骨部:VAC療法終了。トラフェルミン+ブクラデシンナトリウム+ガーゼ

治療経過3

確認日(月/日)創のサイズ(cm)

DESIGN -R(点)

TP(g/dL)Alb(g/dL)Hb(g/dL)CRP(mg/dL)

①1月24日 坐骨部切開前

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始日:2013年1月31日使用量:1袋/日使用量の途中変更 □無 □有

②1月24日 坐骨部切開後 ③1月25日 ④2月1日 VAC療法開始3日目

⑧2月22日⑦1月23日⑥2月25日 VAC療法終了時⑤2月15日 VAC療法開始17日目

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

28

褥瘡医療法人信愛会 日比野病院 NST(作業療法士) 助金 淳

患者背景1・ 年齢・性別:98歳 女性・ 基礎疾患:脳血管障害後遺症 糖尿病・ 創傷の状況 発生日:2011年3月頃(表皮剥離程度) 部位:仙骨部 DESIGN-R = 23点(初回受診時)

2・ 1日摂取エネルギー:1,000kcal 1日摂取水分量:1,638mL(2011年5月17日時点) 2011年5月17日~ 半消化態流動食1,000kcal・たんぱく質45g/日から徐々に増量。 2011年10月25日~ 同 流動食1,400kcal・たんぱく質63g/日 2011年12月6日~ HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料0.5袋×2/日を追加(計E:1,479kcal、たんぱく質85.4g/日、            水分1,473mL)。 2012年2月3日  HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を終了。

CASE ❻

確認日(月/日)創のサイズ(cm)NPUAP分類DESIGN-R(点)体重(kg)Alb(g/dL)TP(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)BS(mg/dL)

5/265.3×2.4ステージⅣ51-2.46.530.50.7112

6/146.5×3ステージⅣ3840.6-----

12/6(開始時)5.1×1.2ステージⅣ2246.13.87.863.51.2684

2/7(終了時)4.4×0.8ステージⅣ1352.23.16.851.30.9291

創傷・栄養状態の変化4

コメント5高齢で腎機能低下のあるケースでは、たんぱく質負荷には大変気を遣う。本ケースでは、毎週の血液生化学検査データのモニタリングをしつつ、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を用いた。用法は、0.5袋×2/日×60日間とした。腎機能を良好に保ちつつ、創の縮小・改善を得ることができた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2011年12月6日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

5月17日、500円玉大の褥瘡(9.5×10cm大の嚢胞をもつポケットあり)。5月26日、皮膚科にて創開放。以降170日間、創洗浄と薬剤塗布・除圧を徹底継続したが、創やや縮小するもポケットに著変なし。12月6日より創処置に加え、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始。60日間使用にて創縮小(ポケット消失)を得る。

治療経過3

2011年5月26日 2011年6月14日 2011年12月6日 2012年2月7日

洗浄・アルプロスタジル アルファデクスの使用などの通常創処置のみ HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料追加使用

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

29

褥瘡藤田保健衛生大学 外科・緩和医療学講座(医師) 中川 理子 伊藤 彰博 東口 髙志

患者背景1・ 年齢・性別:64歳 男性・ 基礎疾患:C6 頸髄損傷、洞不全症候群(ペースメーカー挿入)・ 創傷の状況 発生日:2012年9月6日(当院回復期リハビリ病棟へ転院時) 部位:仙骨部

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal(軟菜食)入院後すぐにNSTの介入を行い、経口摂取に加え、9月12日からアルギニン補給飲料(100kcal/125mL)1本/日、9月27日から1.68kcal/mL栄養補助食品(210kcal /125mL)1本/日、10月2日から高たんぱくゼリー(118kcal/100g)を追加し、たんぱく強化を行っていた。

CASE ❼

創傷・栄養状態の変化4

コメント5頸髄損傷後の集中的なリハビリテーション目的の転院であったため、リハビリによる体の動きを伴いながらの褥瘡治療となった。リハビリ内容を確認しながら、褥瘡部の安静を保つために、ズレなどの過剰な外力がかからないように病棟スタッフや直接訓練に携わる理学療法士(PT)・作業療法士(OT)への指導を徹底した。また褥瘡対策委員会所属OTが、車いす乗車における体圧分布の測定(座圧センサーを使用)を行い、乗車方法・ポジショニング・乗車時間などの調整も詳細に行った。NST介入により、入院当初から病院食に加えて栄養補助食品の追加提供も行っていたが、改善傾向は緩やかなためHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を追加した。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を追加後、Hb、Albの改善、褥瘡の縮小は著明となった。入院期間中、ADL改善に伴う活動量増加により、体重変化は認めなかったが、明らかに筋肉量の改善、FIM(Functional Independence Measure)の改善(26→62点)は得られたものと考えられる。2013年2月初旬に、自宅退院された。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年10月26日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

当院転院時、すでに白色壊死を伴う仙骨部褥瘡が認められていた。入院時に高熱が持続していたが、褥瘡からの発熱ではなく尿路感染症と診断し、全身治療も開始した。入院後3週間は2回/週のデブリードマンを行い、壊死組織消失後アルプロスタジル アルファデクス軟膏塗布とした。浸出液が多い時は、尿取パットを使用し、適宜交換を行った。浸出液の減少に伴い、モイスキンパットの貼付に変更し、処置回数の減少に努めた。

治療経過3

2012年9月6日 2012年10月11日 2012年11月29日

2012年12月27日 2013年1月31日

確認日(月/日)DESIGN-R(点)体重(kg)Hb(g/dL)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)

9/6D4:4256.79.22.47.3

10/11D4:2855.2

10/23

55.89.03.27.1

11/17

57.010.53.51.8

11/29D4:18

12/27D4:1356.7

1/31D3:1156.6

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

30

褥瘡・骨髄炎関西医科大学附属滝井病院 形成外科病院助教(医師) 三宅 良平

患者背景1・ 年齢・性別:36歳 男性・ 基礎疾患:胸髄損傷 両下肢麻痺・ 創傷の状況 発生日:2012年5月頃 部位:右大腿部

2・ 1日摂取エネルギー:2,200kcal 1日摂取水分量:1,000mL

確認日(月/日)創のサイズ(cm)体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

6/1825×1046.3 6.41.0170.47

7/1723×8

8.22.0130.37

8/1717×551.08.53.1200.45

9/14閉鎖

7.73.4180.46

10/15

54.57.43.4150.48

創傷・栄養状態の変化4

コメント5右大腿外側部発赤を生じ、前医にて1ヵ月間保存的治療を受けるも軽快せず当科へ紹介。創部を切開すると大腿骨頭および大転子の周囲に多量の膿汁を認め、大転子部褥瘡からの大腿骨骨髄炎と判断し、デブリードマンおよび腐骨の切除を行ったところ、巨大な開放創を生じた。陰圧閉鎖療法およびHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始後、創部は著明に収縮し、最終的に閉鎖に至った。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年6月28日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

創部をデブリードマンし、感染した大腿骨近位5分の2を切除。創部を清浄化した後、陰圧閉鎖療法を施行するとともに、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用した。

治療経過3

2012年6月15日 術前 2012年7月6日 VAC(vacuum assisted closure)開始時2012年6月27日 術中

2012年9月3日 VAC終了時 2012年9月3日 縫縮後

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

31

褥瘡・乳癌術後創部下関厚生病院 栄養治療部(管理栄養士) 松永 佳恵下関厚生病院 消化器内科(医師) 山下 智省下関厚生病院 皮膚科(医師) 赤松 洋子下関厚生病院 看護局(皮膚・排泄ケア認定看護師) 山中 なみ子

患者背景1・ 年齢・性別:98歳 女性・ 基礎疾患:左胸部皮膚潰瘍 類天疱瘡

・ 創傷の状況 発生日:2012年2月(仙骨部)/2012年3月(左胸部)

2・ 1日摂取エネルギー:1,100kcal 1日摂取水分量: 1,500~2,000mL 鉄入り補助食品

確認日(月/日)左胸部皮膚潰瘍サイズ(cm)仙骨部・褥瘡サイズ(cm)DESIGN-R(点)

体重(kg)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)TIBC(μg/dL)摂取カロリー(kcal)摂取たんぱく質(g)NPC/N比

4/1610.3×2.01.7×1.0

DU-e3s3i1G5N3p0:15432.23.5614.10.732031,19048130

4/2410.8×1.81.9×0.9

D3-e3s3i1G5N3p0:1544.41.71.829.50.691651,0906383

5/16.8×0.91.6×0.7

D3-e3s3i1G5N3p0:15451.80.926.60.681491,08042136

5/82.7×0.81.2×0.5

D3-e3s3i0g3N3p0:12461.60.4428.30.651291,20044145

5/151.0×0.50.8×0.2

D3-e1s3i0g1n0p0:543.62.70.5925.80.691061,18046135

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用により術後の創傷、褥瘡とも治癒が促進された印象を受ける。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用に当たっては、窒素過剰とならないようにBUNのモニタリングが必要であり、窒素過剰が疑われた場合は食事や輸液を含めたたんぱく質投与量の調整が必要である。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年4月18日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

左乳癌切除後の縫合部に壊死を生じ、治癒が遅延していたため当院皮膚科に入院した。仙骨部の褥瘡を合併していた。左胸部の創傷は脂肪組織壊死を生じ潰瘍とポケットの形成を伴っていた。壊死組織の細菌培養でMSSAを検出した。抗生物質の全身投与は行わず、局所の処置として潰瘍・壊死部に抗菌作用のあるスルファジアジン銀クリーム、ポケット部にヨードホルムガーゼを用いた。仙骨部褥瘡はDESIGN-R=15点であり、体圧分散マットを低反発マット(ウレタン)の少し固めのタイプのマットから柔軟性のあるマットに変更して除圧を行い、局所処置としてスルファジアジン銀クリームを用いた。これに加えて、入院3日目よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の使用を開始した。e-GFR値(54.3)より、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1袋/日を4週間使用の計画とした。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は1回で飲むことができなかったため、1/2袋+水120mLを1日2回で提供した。食事として、1日約1,370kcal,たんぱく質79gを提供していたものの、実際の食事摂取量は1日1,013kcal、たんぱく質41g摂取であった。これにより、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料と合わせて摂取カロリー1,092kcal、たんぱく質63gとなり、たんぱく質投与量は1.4g/kgに上昇していた。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始6日目頃よりBUNが29.5mg/dLと上昇し、窒素投与過剰が疑われたため、食事中のたんぱく質を20g/日に減らし、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料とあわせて、たんぱく質1日投与量42gとしたところBUNは25.8mg/dLと低下した。左胸部潰瘍、仙骨部褥瘡は、DESIGN-R=5点と縮小傾向となり、CRP3.56mg/dLから0.59mg/dLへ低下した。しかし栄養指標としてモニタリングしている総鉄結合能(TIBC)は低下傾向を示し、低アルブミン血症も改善しなかった。このため上下肢の浮腫が増強し、アルブミン製剤を5月9~11日点滴投与し、浮腫は改善した。潰瘍、褥瘡の改善が得られたため、リハビリテーションの継続のため専門病院に転院した。

治療経過3

2012年5月15日 左胸部2012年4月16日(入院当日) 左胸部2012年4月16日(入院当日) 仙骨部 2012年5月15日 仙骨部

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・ 1日摂取エネルギー:1,000 kcal 1日摂取水分量:800~1,000mL

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

32

仙骨部褥瘡・左鼠径部瘻孔 さいたま赤十字病院 皮膚科(医師) 成田 多恵 塚原 理恵子自治医科大学附属さいたま医療センター 皮膚科(医師) 小山 尚俊 山田 朋子 出光 俊郎

患者背景1・ 年齢・性別:26歳 男性・ 基礎疾患:脊髄損傷 両下肢麻痺・ 創傷の状況 発生日:2011年12月 部位:仙骨部 左鼠径部

2

確認日(月/日)創のサイズ(仙骨部)(mm)DESIGN -R(点)創の深さ(左鼠径部)(mm)DESIGN -R(点)体重(kg)Alb(g/dL)Hb(g/dL)Zn(μg/dL)

3/30112×9759

6×2.76045

3.4(低)12.8(低)60(低)

4/27100×6043

0.5×0.823454.013.680

9/780×55390×0050

2/1575×25300×0050

創傷・栄養状態の変化4

コメント5患者はこれまで、褥瘡と栄養は無関係だと考え栄養管理を怠っていた。血液データをみせ低栄養に関して明示。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1ヵ月後のデータ改善を説明したところ自発的に日常生活の栄養摂取を心がけるようになった。患者の褥瘡治療に対するコンプライアンスは飛躍的に上昇し、医師、訪問看護と良好な連携がとれるようになった。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用が褥瘡改善に著効した以上に患者の治療意欲の向上にも有用だった1例といえる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年3月30日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

創 傷 に 対 し て;3月30日~トラフェルミン、ポピドンヨード外用。7月27日、ポケット切開。潰瘍縮小、肉芽形成良好にて10月22日~トラフェルミン、ブクラデシンナトリウム外用

栄養状態に関して;血清亜鉛低値にてポラプレジンク150mg/日内服。訪問看護による栄養指導、創処置。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1袋/日使用。

治療経過3

2012年3月30日 2012年4月27日 2012年9月7日 2013年2月15日

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確認日(月/日)Alb(g/dL)Hb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

1/102.59.97.4210.40.59

1/233.110.94.1311.20.63

4/274.313.90.1313.70.66

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

33

乳房再建術後離開創医療法人徳洲会 宇治徳洲会病院 看護部(皮膚・排泄ケア認定看護師) 田和 勢津子

患者背景1・ 年齢・性別:60代 女性・ 基礎疾患:左乳癌・ 創傷の状況 発生日:2011年1月26日 部位:左創部

2・ 1日摂取エネルギー:1,800kcal 1日摂取水分量:1,200mL

栄養状態の変化4

コメント5体重52.3kg、BMI22.3kg /m2にて増減なし。患者のデータも良く、肉芽増殖期の陰圧閉鎖療法時期に、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を併用したことは、創傷治癒に有用であったと考える。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2011年1月31日 使用量:2袋/日(2011年2月14日まで使用) 使用量の途中変更 □無 □有

治療経過3

2011年1月26日NPUAP分類:測定不能局所ケア;スルファジアジン銀クリーム、適宜医師にて外科的デブリードマン施行。積極的にシャワー浴を行った。

2011年2月7日NPUAP分類:ステージⅣ1月31日~ 2月14日まで、局所陰圧閉鎖療法施行。その後、トラフェルミンスプレー、ブクラデシンナトリウム軟膏で創管理。2月25日、退院。

2011年4月27日2週間ごとに外来フォロー。過剰肉芽出現時は、ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン軟膏で収縮を図り、ブクラデシンナトリウム軟膏を併用して瘢痕治癒。

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

34

糖尿病性壊疽千葉県済生会習志野病院 臨床栄養科(管理栄養士) 鈴木 裕子千葉県済生会習志野病院 整形外科(医師) 蛭川 雄太郎

患者背景1・ 年齢・性別:51歳 男性・ 基礎疾患:2型糖尿病 糖尿病網膜症・ 創傷の状況 発生日:2013年1月 部位:右下肢

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal(エネルギーコントロール食) 1日摂取水分量:制限なし 入院時より摂取良好

栄養状態の変化4

コメント5患者の食事療法やHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用に対しての理解もよく使用持続できた。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用前後の尿素窒素・血清クレアチニン値・血糖推移に大きな変動はみられなかった。以上により中止することなく継続使用でき、血流改善や創傷治癒の促進に寄与したことが考えられた。今後は対照群との比較検討が課題である。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年2月25日 使用量:2袋/日(15日間飲みきりとした) 使用量の途中変更 □無 □有

5年ほど前から糖尿病を指摘されていたが2012年11月から治療自己中断。2013年1月に右足の怪我を機に壊疽進行。2月19日に右足膝下切断術施行。入院時より治療食摂取良好。2月25日(術後6日)からHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始した。創部感染徴候なく、創癒合良好。3月4日全抜糸。血糖推移良好。腎機能の変動もみられなかった。3月22日、装具作製、リハビリテーション目的で転院となる。

治療経過3

2013年2月12日 2013年2月22日

2013年3月1日 2013年3月8日

確認日(月/日)体重(kg) Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)血糖食前(mg/dL)

2/12(入院時)89.02.58.59.80.7262

2/23(術後4日)84.02.72.47.10.5161

3/1(術後10日)84.63.20.212.50.7115

3/8(術後17日)82.63.80.016.50.7128

3/13(術後22日)83.23.60.010.20.7101

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

35

難治性創傷東京歯科大学市川総合病院 看護部(看護師) 髙木 夏恵 脇村 もと美東京歯科大学市川総合病院 外科(医師)   原田 裕久

患者背景1・ 年齢・性別:65歳 男性・ 基礎疾患:右下肢閉塞性動脈硬化症 糖尿病性足壊疽 糖尿病性腎症(透析3回/週) 左下肢慢性動脈閉塞症 糖尿病性壊疽にて

左膝下切断術後・ 創傷の状況 発生日:2012年3月21日  部位:右下腿切断創

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal →2,000kcal 1日摂取たんぱく質:50g→ 60g 1日摂取水分量:800mL

栄養状態の変化4

コメント5下肢切断術後患者では、一般的に糖尿病や腎不全などの既往症から栄養状態の評価が困難であり、本症例では遷延する慢性感染に伴い低栄養状態が潜伏した。栄養介入が困難と思われている糖尿病性腎不全患者においても、円滑な創傷治癒には栄養管理がきわめて重要であり、創傷治癒促進にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料が有用であった1例を経験した。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年5月17日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年6月2日一時使用中止、 6月18日変更後の量:1袋/日、7月1日使用終了)

3月21日、右膝下切断術施行。4月3日、移動時の摩擦刺激により出血を認め、止血まで3日間圧迫を実施。4月9日、摩擦刺激による創離開と、圧迫による血流不全により断端創の黒色化を認めた。局所処置にて1ヵ月経過後も創部の癒合は進まず、MRSA感染を併発した。下肢MRI上、右下腿に広範囲な深部膿瘍形成を認め、5月2日膿瘍部掻爬、洗浄ドレナージ術を施行。5月11日、栄養介入を開始し、栄養設定を1,600kcalから2,000kcal、たんぱく60gとした。5月17日、CRP値が0.96mg/dLまで低下したため、創傷治癒促進を目的にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用。たんぱく質の利用効率を考慮して1日量を1袋とした。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始7日目、創部全体に良性肉芽の形成を認め、深部ポケットの縮小がみられた。使用開始16日目、BUNが84.6mg/dLまで上昇した時点で、たんぱく質が創治癒に十分に利用されていないと判断し、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用を一時中止した。使用中止とともに再度肉芽形成が停滞したため、休止から16日目HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を再開。結果、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料再開14日目には潰瘍の縮小と創部の上皮化が認められたため、使用を終了とした。8月4日、自宅退院となった。

治療経過3

確認日(月/日)TP(g/dL)Alb(g/dL)ChE(IU/L)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

3/216.93.011326.4246.36.29

5/117.13.31601.441.37.47

5/216.93.21620.4873.98.50

5/286.83.41620.2284.68.77

7/166.93.71770.1860.19.92

2012年5月11日 術後72日目 2012年5月24日 2012年6月28日 2012年7月12日 退院時 2012年8月

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

36

熱傷豊川市民病院 栄養管理科(管理栄養士・NST専門療法士) 坂神 裕子

患者背景1・ 年齢・性別:61歳 男性・ 基礎疾患:糖尿病・ 創傷の状況 発生までの経過:2011年5月22日熱傷、意識障害にて救急搬送。血糖値593mg/dL、尿ケトン3+、pH7.35を認め糖尿病性ケトーシスにて緊急入院。 発生日:2011年5月23日 部位:臀部~背部[熱傷Ⅲ度(18%)]

2・ 1日摂取エネルギー:2,400kcal 1日摂取水分量:2,000mL

CASE ❶

栄養状態の変化4

コメント5既往に糖尿病があり、血糖コントロールも管理しつつ、適正なエネルギーの確保、栄養量UPが必要である。血糖変動をもとに、適宜摂取栄養量の確認を行った結果、順調に創の改善が認められた。また摂取エネルギーの維持に加え、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を活用したことで創の治癒が促進されたと考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2011年6月23日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2011年5月23日、5月25日に2回の壊死部位の切開排膿処置。5月30日にNST介入となった。食事は5月23日の入院時から1,800kcalを100%摂取しており、栄養指標は上昇傾向がみられた。しかし滲出液も多く、CRPも6.55mg/dLと高値であったためBEEを1,310kcal/日とし、ストレス係数1.5、活動係数1.3、目標栄養量を2,550kcal、たんぱく質60gとした。創傷が深いため、エネルギ-・たんぱくの補充と創傷治癒過程に関る栄養素であるビタミン・微量元素を充実させながら栄養管理を行った。また既往に糖尿病があることからインスリンにて血糖コントロールを行いながらの栄養量UPを考慮していった。28病日目にはCRPも3.0mg/dLを切り炎症反応も落ち着いたため、摂取エルネルギーを維持し、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を2袋/日提供していった。

治療経過3

2011年5月23日 2011年6月22日

2011年9月8日

2011年7月15日 2011年7月28日

確認日(月/日)

体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)PreAlb(mg/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)

5/30(NST介入開始)

60.04.72.929.66.55

6/13

59.55.42.315.17.00

6/27(6月23日よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用開始)

58.95.42.416.04.1317.8

7/11

57.56.43.223.10.8818.5

7/19

57.57.03.430.00.3436.7

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

37

熱傷岡山大学病院 高度救命救急センター(医師) 平山 敬浩

患者背景1・ 年齢・性別:42歳 女性・ 基礎疾患:なし・ 創傷の状況 発生日:2012年9月26日 部位:全身(面積:Ⅱ度14% Ⅲ度36%) Burn index 43 受傷状況:自宅の家事にて受傷し、当院救急搬送。気道熱傷も疑われ気管挿管管理となる。

2・ 1日摂取エネルギー:約1,500~4,000kcal 1日摂取水分量:約1,500~7,000mL

CASE ❷

確認日(月/日)TP(g/dL)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)

11/96.03.45.99

11/285.52.921.99

12 /186.53.15.12

栄養状態の変化4

コメント5広範囲に及ぶ全身熱傷の患者においては熱傷創部の感染により植皮した部位の生着が悪く、数回に及ぶ植皮術が必要となる。本症例では経過途中よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用し、上皮化の促進が得られたことから、感染にて生着が不良な部位が使用後は減少した印象を受けた。

9月28日 (1回目手術)デブリードマン10月5日 (2回目手術)デブリードマン10月15日 (3回目手術)頭部、右大腿部より採皮し、4倍メッシュで左上肢、左下腿に植皮。左大腿部、屍体皮膚移植施行。10月25日 (4回目手術)腹部より採皮し、4倍メッシュで右上肢、右下肢に植皮。植皮は基本的に生着良好。11月 2 日 (5回目手術)背部中心に植皮。自己培養皮膚を使用。11月20日 (6回目手術)臀部と左大腿部植皮術。12月11日 (7回目手術)両下腿より採皮して左大腿、左腸骨部、左肩周囲へスタンプ植皮。

・経管栄養開始は9月27日11月 9 日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料1袋/日開始11月28日 2袋/日に増量12月18日 嘔気を認め、中止となる

・創部の感染予防に「銀イオン」含有の抗菌性創傷被覆・保護材を使用

治療経過3

2012年11月1日 2012年11月7日 2012年11月19日

2012年12月11日 2012年12月20日

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始日:2012年11月9日 使用量:1袋/日使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年11月28日 変更後の量:2袋/日)

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

38

熱傷公益社団法人地域医療振興協会 練馬光が丘病院 NST 栄養室(管理栄養士) 廣瀬 桂子 佐々木 陽子 鈴木 菜那公益社団法人地域医療振興協会 練馬光が丘病院 NST 看護部(看護師) 上條 裕美公益社団法人地域医療振興協会 練馬光が丘病院 NST 傷の治療センター(医師) 夏井 睦公益社団法人地域医療振興協会 練馬光が丘病院 NST 外科・NSTチェアマン(医師) 米神 裕介

患者背景1・ 年齢・性別:30歳 男性・ 基礎疾患:なし・ 創傷の状況 入院までの経過: 2日前入浴中意識消失し、翌日両下肢から腰部の痛みと水泡に気が付き近医を受診。背部~臀部、両下腿、両足底、

両足背にⅡ~Ⅲ度熱傷を指摘され、当院紹介入院となった。

2・ 1日摂取エネルギー:950kcal 1日摂取水分量:1,500mL

CASE ❸

コメント5熱傷は、熱傷面からのたんぱく喪失や代謝・異化亢進によって体たんぱく質もエネルギー源として利用される。今回順調な創傷治癒とアルブミンの上昇を認めたのは、必要なたんぱく量およびエネルギー量を充足することにより、体たんぱくの合成が効率よく行われた結果と考えられる。またアルギニンは条件付必須アミノ酸の1つであり、細胞増殖やコラーゲン生成促進の報告がある。本症例においてもアルギニンが創傷治癒を促進した可能性も考えられる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:14病日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

1病日より食事は全量摂取であったが、6病日より感染徴候を認め摂取量が急激に低下、10病日よりNST介入となった。濃厚流動食を併用し2,500kcal、たんぱく質97g(NPC/N=136)を投与した。14病日より不良肉芽の融解所見が認められ、発熱と炎症反応の改善を認めたためHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料14gを追加した。熱傷創部は湿潤療法にて加療し、41病日には熱傷創部の肉芽形成、上皮化を確認、NST介入は終了した。

治療経過3

1病日 右足底 14病日 右足底 41病日 右足底

1病日 左足底 14病日 左足底 41病日 左足底

栄養状態の変化4確認日(病日)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)

13.614.821.0

102.332.210.8

142.67.4010.0

173.01.2011.9

413.50.8024.4

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

39

熱傷兵庫県立西宮病院 救命救急センター(医師) 毛利 智好 瀧本 浩樹 鴻野 公伸

患者背景1・ 年齢・性別:38歳 女性・ 基礎疾患:なし・ 創傷の状況 部位:背部5%、臀部5%、下肢37%(%TBSA 47%、Burn Index 30.5)

2・ 1日摂取エネルギー:2,400kcal 1日摂取水分量:2,500mL(来院日) 44病日から経口摂取開始

CASE ❹

栄養状態の変化4

コメント5免疫調整栄養剤とHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を全身状態に応じた適切な時期に使用することで良好な経過を得られたと考えられた広範囲熱傷の1例を経験した。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:26病日 使用量:1袋/日(72病日使用終了) 使用量の途中変更 □無 □有

14病日 第1回植皮術施行、両側下腿28病日 第2回植皮術施行、両側下腿・左大腿43病日 第3回植皮術施行、右大腿・両下腿57病日 第4回植皮術施行、左大腿・両下腿施行後、90病日リハビリテーション目的で転院

治療経過3

来院時 21病日第1回植皮術後7日目(右下腿)HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料未使用時

50病日第3回植皮術後7日目(右大腿)HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用時

確認日(病日)体重(kg)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

入院時59.63.80.2390.59

1469.51.521.48260.98

2852.72.010.98290.5

4251.42.58.57260.3

5652.42.71.07120.37

6752.92.71.6770.46

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2012年9月24日 2012年11月23日

2012年12月27日 2013年1月17日

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

40

左腸腰筋膿瘍社会保険中央総合病院 栄養科(管理栄養士) 斎藤 恵子

患者背景1・ 年齢・性別:26歳 男性・ 基礎疾患:クローン病・ 創傷の状況 2012年9月8日他院にて左腸腰筋膿瘍、ガス壊疽の診断でドレーン挿入、デブリードマン施行後、当院転院。左腰部の皮膚は径20cm程欠損し、腸腰筋が露出した。さらに同部位から便汁が多量に排出されていた。 発生日:2012年7月(左腰痛あり) 部位:左腰部

2・ 1日摂取エネルギー: 入院~9月28日 2,520kcal(TPNのみ)

9月29日 2,440kcal(食事+TPN)10 月 6 日 3,740kcal(食事+TPN+ED)10月18日 3,160kcal(食事+EN)

12 月 5日 2,520kcal(TPNのみ)12月11日 2,440kcal(食事+TPN)12月19日 2,700kcal(食事のみ)その他(他の栄養食品使用 クッキンサプリFe2パック)

栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料はコンプライアンスが良く、患者に2袋/日しっかり摂取して頂けた。結果、創部状態が早期に改善したと思われる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年9月29日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

左腰部からの便汁はS状結腸からの瘻孔と考えられ、9月24日横行結腸人工肛門造設。皮膚は毎日創部+ドレーン洗浄した。便が遮断されたため、日ごとに肉芽形成が進んだ。12月4日、結腸亜全摘+回腸人工肛門造設術施行。

治療経過3

確認日(月/日)体重(kg)Alb(g/dL)Hb(g/dL)CRP(mg/dL)Cre(mg/dL)

9/1846.32.29.77.10.4

9/27

2.48.04.30.3

10/2447.42.79.93.80.4

11/2349.23.010.91.40.4

12/549.42.911.916.20.5

12/1850.62.910.94.80.5

1/1751.93.812.00.90.6

1/2552.73.612.30.60.6

1日摂取水分量:エネルギー(kcal/日)×1mLで算出

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

41

縫合不全獨協医科大学越谷病院 外科(医師) 菅又 嘉剛

患者背景1・ 年齢・性別:78歳 男性・ 基礎疾患:腹部食道癌・ 創傷の状況 発生日:2012年12月下旬 部位:食道空腸吻合部

2・ 1日摂取エネルギー:1,870kcal 1日摂取水分量:2,500mL

創傷・栄養状態の変化4

コメント5本症例では、血清アルブミン値の低下が縫合不全の治癒遷延の一因と考えられた。中心静脈栄養と経腸栄養にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を加えた結果、血清アルブミン値の上昇を認め、縫合不全の改善に寄与したと考えられた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年1月30日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年12月17日に、腹部食道癌に対し下部食道噴門側胃切除術を施行。12月26日の上部消化管造影検査で、食道空腸吻合部の縫合不全と右胸腔内の膿瘍形成を確認。右胸腔持続ドレナージと抗生物質投与に加え、中心静脈栄養管理と経腸栄養により保存的治療を開始した。2013年1月7日の上部消化管造影検査で縫合不全の改善は認めず、1月30日より経腸栄養にHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用して治療を継続した。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始後数日でドレーン排液量の減少と血清アルブミン値の増加傾向を認め、開始8日目の上部消化管造影検査で縫合不全の改善を確認した。翌日より経口摂取を開始し、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は2月13日まで併用、ドレーンは2月19日に抜去した。

治療経過3

食道空腸吻合部の縫合不全と右胸腔内に膿瘍腔の形成を認めた。 右胸腔の膿瘍腔のほか、左縦隔内に造影剤の漏出を認めた。 造影剤の漏出はなく縫合不全の改善を認めた。

確認日(月/日)ドレーン排液量(mL)TP(g/dL)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

12/17

4.22.490.06220.9

12/258004.71.9118.51290.8

1/97605.21.378.67210.7

1/215105.51.676.2190.6

2/11005.81.914.19160.5

2 /18205.62.540.22120.6

膿瘍腔

吻合部縫合不全

吻合部縫合不全

吻合部

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

42

放射線性口腔粘膜炎いわき市立総合磐城共立病院 歯科口腔外科(歯科医師) 佐藤 浩子

患者背景1・ 年齢・性別:81歳 男性・ 基礎疾患:口腔底癌・ 創傷の状況 発生日:2012年11月21日 部位:口腔内粘膜

2・ 1日摂取エネルギー:1,600~2,000kcal 経口(食事+エンシュアH)、経静脈(KNMG) 1日摂取水分量:2,000~3,000mL

CASE ❶

創傷・栄養状態の変化4

コメント5HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始する前は経口摂取がほぼないに等しい状況だったが、使用開始後より徐々に少量ずつ摂食できるようになった。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料そのものによる粘膜刺激の訴えはなく、また当患者に受け入れやすい味であったため使用はスムーズに継続できた。放射線治療終了後は時間経過とともに口腔粘膜炎は軽快した。これまでのケースと比較し、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は口腔粘膜炎症状の緩和に寄与した印象がある。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年12月8日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

2012年11月1日~2013年1月27日、入院加療2012年11月12日~12月28日、放射線治療(total 70Gy)2012年11月12日、11月19日、11月26日、シスプラチン 40mg/body2012年12月3日、 口内炎増悪にて以降シスプラチン中止2012年12月8日~HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用(2013年1月22日終了)

治療経過3

2012年12月7日 2012年12月28日 2013年1月18日

確認日(月/日)口腔粘膜炎grade(CTCAE v4.0)体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)Hb(g/dL)WBC(/μL)RBC(万/μL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

9/26

-

4.512.78,60038718.40.5

11/21

1(訴え初発)

66.5(11/20)

4.111.96,30035815.90.6

12/3

1

11.66,20035319.50.6

12/10

2

62.7(12/11)

114,20033317.80.5

12/26

3

61.7(12/25)6.53.69.93,40030320.60.5

1/ 22

1~ 2

59.8(1/15)6.53.811.14,00033719.30.6

2 / 28

-

10.83,600318190.6

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

43

放射線性口腔粘膜炎関西労災病院 看護部(看護師) 柳 智恵子

患者背景1・ 年齢・性別:65歳 女性・ 基礎疾患:中咽頭癌 声門上部癌・ 創傷の状況 発生日:2012年12月7日 部位:咽頭

2・ 1日摂取エネルギー:1,200kcal 1日摂取水分量:1,500mL

CASE ❷

創傷・栄養状態の変化4

コメント5通常麻薬使用を必要とするが、麻薬を使用せずに経過できた。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2012年12月13日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2012年12月19日 変更後の量:1袋/日) 使用量の途中変更 □無 □有(変更日:2013年 1 月26日 中止)

2012年11月19日~2013年1月9日、シスプラチン+ドセタキセル併用CRT(concurrent chemoradiation therapy)(60Gy/33回)

治療経過3

2012年11月28日 2012年12月11日 2012年12月25日

2013年1月9日 2013年1月16日 2013年1月28日

確認日(月/日)粘膜炎grade体重(kg)Alb(g/dL)PreAlb(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

11/27043.73.7

17.60.77

12/111

4.11619.10.78

12 /253

3.81214.80.72

1/83

3.91333.30.68

1/163

3.51232.40.75

1/233

3.21222.40.77

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確認日(月/日)

疼痛口内炎Grade CTCAE Ver.3体重(kg)TP(g/dL)Alb(g/dL)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)eGFR(mL/分/1.73m2)

2/6

0047.37.03.40.3112.90.6762

2/18放射線10Gy

0047.27.43.50.6915.80.7059

2/22口内炎出現時1/10147.46.83.30.4211.30.5873

2/25放射線20Gy3/10246.96.43.10.3915.30.6070

3/4放射線30Gy5/10245.46.73.21.7011.00.6169

3/9終了後5日目2/10244.56.53.11.858.90.6169

3/11終了後7日目1/10244.47.03.31.018.80.7952

2013年3月4日2013年3月4日2013年2月5日 2013年3月4日

2013年3月11日2013年3月11日 2013年3月11日

栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

44

放射線性口内炎熊本大学医学部附属病院 歯科口腔外科(医師) 緒方 克守熊本大学医学部附属病院 歯科口腔外科 講師(医師) 中山 秀樹熊本大学医学部附属病院 歯科口腔外科 教授(医師) 篠原 正徳

患者背景1・ 年齢・性別:85歳 女性・ 基礎疾患: 高血圧症 高脂血症 逆流性食道炎 腰部脊柱管狭窄症 認知症 左頬粘膜膜扁平上皮癌 左頸部リンパ節転移

・ 創傷の状況 発生日:2013年2月22日 部位:口腔内(左頬粘膜)

2・ 1日摂取エネルギー:1,700kcal 1日摂取水分量:2,100mL(飲料水700mLを含む) → 2月25日より食事摂取量が減少したため、3月2日から1.6kcal/mLの栄養補助食品(200kcal/125mL/本)3本開始。

創傷・栄養状態の変化4

コメント5左頬粘膜扁平上皮癌(cT2N2bM0)の診断のもと、術前化学放射線療法を施行した患者で、術前化学放射線療法に先行し、1週間前よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を開始した症例である。口腔内全体に粘膜炎の出現は認めたが、刺激痛は軽度で、最後まで経口摂取可能であった。放射線終了後5日目で、原発の左頬粘膜、左側舌縁、下唇に限局した粘膜炎は認めたが、その他はほぼ消失していた。その後、放射線終了後7日目には、痛みも気にならない程度になっていた。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の摂取にて、粘膜炎の早期治癒が期待できることはいうまでもないが、粘膜炎の重傷度に対しての疼痛強度が弱い印象があり、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料は疼痛発現機序にも何らかの影響を及ぼしている可能性があるため、今後は痛みとの関係についても注意して観察していきたい。

治療経過3

術前化学放射線療法として、経口抗癌剤テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(80mg/m2/日)14日間連続内服と放射線30Gy(2Gy/日:15日間)口腔内および左頸部照射を施行。2013年2月12日 術前化学放射線療法開始。2月18日 口腔乾燥による口唇違和感が出現したため、白色ワセリン

塗布を開始した。2月22日 腫瘍の縮小を認めるも、軟口蓋および左頬粘膜に粘膜炎出

現したため、デキサメタゾン軟膏塗布を開始した。

2月23日 4%リドカイン塩酸塩液・5%トラネキサムシロップ・含嗽用アズレンスルホン酸ナトリウム水和物顆粒配合による含嗽剤の使用を開始した。

2月25日 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤終了。3 月 4 日 放射線終了。なお、アセトアミノフェン200mg2錠の屯用にて疼痛管理予定であったが、3回しか内服はなかった。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始日:2013年2月5日使用量:1袋/日使用量の途中変更 □無 □有

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

45

放射線性口内炎・皮膚炎 福岡赤十字病院 薬剤部(薬剤師) 竹野 智彦

患者背景1・ 年齢・性別:66歳 男性・ 基礎疾患:左側中咽頭扁平上皮癌 左側頸部リンパ節転移・ 創傷の状況 発生日:2013年2月19日 部位:口腔内 首

2・ 1日摂取エネルギー:1,500kcal 1日摂取水分量:800mL

栄養状態の変化4

コメント5放射線照射による口内炎・皮膚炎が原因で、経口摂取もままならない状況であった中、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料の創傷治癒効果を期待し、摂取してもらったところ、使用1週間程度で炎症も落ち着いてきており、画像通り細部も綺麗になった。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料継続により、放射線治療2クール目に入ることもでき、経口からの食事の摂取も可能となった。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用の有用性が、多岐にわたり認められた症例であった。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:2013年2月28日 使用量:2袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

左側中咽頭扁平上皮癌に対し、TS-1+放射線療法、その後手術予定のプランである。放射線治療開始14日目125.2Gyから照射部の炎症が強くなってきだし、2月26日41.4Gy23日目で食事摂取できなくなり放射線治療中止となる。2月28日よりNST介入開始し、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料使用を提言、1週間後食事が摂れるまで回復し、口腔炎・皮膚炎も改善してきた。その後3月11日~放射線治療を再開することができ、扁平上皮癌も縮小してきた。HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料により、口腔炎が改善し、必要カロリーが摂取でき、主治医によると放射線治療が再開できたことが大きいとのことだった。

治療経過3

2013年2月28日 口腔内

2013年3月8日 口腔内

2013年2月28日 首

2013年3月8日 首

確認日(月/日)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)Cre(mg/dL)

2/283.4510.81.01

3/80.5420.21.06

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栄養摂取状況  □食事 □経腸栄養 □静脈栄養

46

両下肢皮脂欠乏性皮膚炎 水戸済生会総合病院 医療技術部 栄養科(管理栄養士) 栗原 惠子 武田 久美子

患者背景1・ 年齢・性別:69歳 男性・ 基礎疾患:敗血症 低体温症 両下肢皮脂欠乏性皮膚炎・ 創傷の状況 発生日:不明 部位:両下肢

2・ 1日摂取エネルギー:1,600kcal 1日食事たんぱく質:約67g 1日摂取水分量:1,300mL(食事水分量)+飲水制限なし

栄養状態の変化4

コメント5敗血症改善、経口摂取可能となった時点で、目標たんぱく質量の充足と創傷治癒目的で、HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を使用した。使用期間中は、BUNの上昇をきたさず、創部の著明な改善と栄養指標の改善が認められた。創部症状、血液データや栄養指標の経過に合わせた使用が、創部改善・低栄養の改善に有用であったと思われる。

HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料 開始日:11病日 使用量:1袋/日 使用量の途中変更 □無 □有

体温30.5℃と著明な低体温と両下肢皮脂欠乏性皮膚炎のため入院。創部は易出血性で壊死組織に覆われ、多量の浸出液を認めた。洗浄、スルファジアジン塗布、デブリードマンなどの処置を行い、敗血症改善後11病日よりHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を1袋使用した食事提供で必要量栄養量を充足した。32病日には、創部症状と血清Alb値の改善を認めHMB、グルタミン、アルギニン配合飲料を中止した。40病日には、皮膚潰瘍、全身症状が軽快し転院した。

治療経過3

10病日 HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料開始時 24病日 使用中 39病日 退院時

確認日(病日)

Alb(g/dL)ChE(IU/L)CRP(mg/dL)BUN(mg/dL)TLC(/mm3)

10病日HMB、グルタミン、アルギニン配合飲料

開始前1.41003.0217.9385.0

17病日開始7日後

1.51212.4120.31,264.4

24病日開始14日後

1.71471.0120.91,679.4

27病日開始17日後

2.01730.6619.31,803.2

34病日中止2日後

2.42061.1513.81,769

Page 52: Nutritionproducts.abbott.co.jp/medical/library/NSJ/NSJ-extravol04.pdfNutrition Support Journal Medical Magazine 編 集 藤田保健衛生大学医学部外科・緩和医療学講座教授

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二〇十三年

特別号

発行 株式会社メディカルレビュー社 〒541-

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