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一般口演 5 社会環境・ 国際保健 座長: 小田 慈 岡山大学 名誉教授 安原 昭博 安原こどもクリニック 幼児のクロノタイプと唾液コルチゾール濃 度の概日リズム 岸本 三香子 1 、竹内 惠子 2 、村上 亜由美 2 1 武庫川女子大学 生活環境学部食物栄養学科、 2 福井大学 教育学部 O1-028 【目的】 近年幼児の生活リズムの夜型化が問題となっており、疲労 度の増大や集中力の低下など心身の健康に悪影響を及ぼす。 一方、コルチゾールは概日リズムを示すが、慢性的なスト レスとの関連が報告されている。本研究では、幼児のクロ ノタイプの特徴とコルチゾール濃度の影響について検討し た。 【方法】 保護者の同意が得られた幼稚園に通園する5歳児14名を対 象とした。クロノタイプの分類:子どもの朝型-夜型質問票 日本語版を用いた。睡眠覚醒リズムに関するアンケート調 査:睡眠覚醒リズム、食生活・生活習慣、健康状態に関す る項目からなる。唾液コルチゾール濃度測定:9月の連続 する2日間実施した。唾液は起床時、起床30分後、登園時、 降園時、就寝時の5回採取し測定に用いた。食事摂取状況 調査:習慣的なエネルギー及び栄養素摂取量を調査した。 また、幼児の活動水準は、JAWBONE UP24の装着により、 歩数と睡眠の質を測定した。 【結果】 質問票により幼児を朝型・中間型(11人)、夜型(3人)の2群 に分類して検討した。両群間では、起床時刻、就寝時刻、 眠りの質には差が認められなかったが、夜型の幼児は朝 型・中間型の幼児と比較して、寝つきが悪く、夜ぐっすり と眠れていない、朝の機嫌が悪い幼児が有意に多くみられ た。また、寝る前におやつを食べる幼児が多く、朝に食欲 がみられなかった。習慣的な摂取エネルギー量は、夜型の 幼児が少ない傾向にあり、PFCバランスは、朝型(13:33: 54)、夜型は(14:37:49)であり、夜型は炭水化物の摂取 が少ない傾向にあった。夜型の保護者は、栄養のバランス を重要視していない、栄養素の働きは知らないと答える割 合が多く、生活リズムを整えるように幼児に仕向けていな い割合も多かった。唾液コルチゾール分泌は、夜型幼児に おいて起床30分後のコルチゾール濃度が低値傾向を示した が、両群間でコルチゾールの概日リズムの有無に差は認め られなかった。 【考察】 クロノタイプには幼児の生活習慣や食習慣が影響しており、 保護者の食知識や教育態度が関係していると推察された。 本研究ではクロノタイプによる唾液コルチゾール濃度やリ ズムには影響がみられなかった。 本研究は平成25-27年度科学研究費補助金(基盤研究(C)課 題番号25350066)助成の研究の一部である。 就学児の携帯情報端末の使用と問題行動と の関連 細川 陸也 1,2 、桂 敏樹 2 1 名古屋市立大学看護学部、 2 京都大学大学院医学研究科 O1-029 【目的】 近年、スマートフォン・タブレットなど携帯情報端末の就 学児への普及に伴い、情報端末の過度な使用は児の正常な 発達を阻害する危険性が懸念されている。そこで、本研究 は、就学児の携帯情報端末の使用と問題行動(不適応行動) との関連を明らかにすることを目的とした。 【方法】 2015年10-12月、愛知県内の小学1年生(6-7歳児)3,267名を 対象とし、その養育者へ自記式質問紙調査を実施した。主 な調査項目は、携帯情報端末の使用状況、児の問題行動 [SDQ:Strength and Difficulty Questionnaire]などであっ た。 【結果】 有効回答の得られた児1,712名(有効回答率:52.4%)を分析 対象とした。対象属性は、平均年齢6.87±0.30であり、男児 887名(51.8%)・女児825名(48.2%)であった。スマートフォ ン・タブレットの携帯情報端末をいつも使用している・よ く使用している児は337名(19.7%)であり、主な使用目的 は、ゲーム、動画視聴などが多かった。携帯情報端末の使 用と問題行動との関連を検証するため、説明変数を情報端 末の習慣的使用の有無、目的変数を問題行動の有無(行為 問題、多動・不注意、情緒的症状、仲間関係の問題)、調 整変数を性別、家族構成、家庭の経済状況、テレビ・テレ ビゲームの習慣的視聴および使用とし、ロジスティック回 帰分析を実施した。その結果、携帯情報端末を習慣的に 使用している児[習慣的使用群]は習慣的に使用していない 児[非習慣的使用群]に比べ、外在化問題である‘行為問題’ (OR:1.51、p<.05)、内在化問題である‘情緒的症状’ (OR: 1.62、p<.01)の問題行動の割合が有意に高かった。 【結論】 本結果より、就学児のスマートフォン・タブレットの携帯 情報端末の習慣的な使用は児の問題行動に繋がる可能性が 示唆された。情報端末の過度な使用は、社会性を育む重要 な時期におけるコミュニケーションの機会を奪い、他者の 感情を理解し自己の考えを表出する機会を減少させている かもしれない。情報端末は教育などへの肯定的な効果も期 待される一方、使用目的や使用方法など適切な利用法の検 証が必要であると考える。 128 The 64th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health Presented by Medical*Online

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Page 1: O1-028 O1-029 · また、幼児の活動水準は、jawbone up24の装着により、 歩数と睡眠の質を測定した。 【結果】 質問票により幼児を朝型・中間型(11人)、夜型(3人)の2群

一般口演 5 社会環境・国際保健

座長:�小田 慈 岡山大学 名誉教授�安原 昭博 安原こどもクリニック

幼児のクロノタイプと唾液コルチゾール濃度の概日リズム

岸本 三香子1、竹内 惠子2、村上 亜由美2

1武庫川女子大学 生活環境学部食物栄養学科、2福井大学 教育学部

O1-028

【目的】近年幼児の生活リズムの夜型化が問題となっており、疲労度の増大や集中力の低下など心身の健康に悪影響を及ぼす。一方、コルチゾールは概日リズムを示すが、慢性的なストレスとの関連が報告されている。本研究では、幼児のクロノタイプの特徴とコルチゾール濃度の影響について検討した。

【方法】保護者の同意が得られた幼稚園に通園する5歳児14名を対象とした。クロノタイプの分類:子どもの朝型-夜型質問票日本語版を用いた。睡眠覚醒リズムに関するアンケート調査:睡眠覚醒リズム、食生活・生活習慣、健康状態に関する項目からなる。唾液コルチゾール濃度測定:9月の連続する2日間実施した。唾液は起床時、起床30分後、登園時、降園時、就寝時の5回採取し測定に用いた。食事摂取状況調査:習慣的なエネルギー及び栄養素摂取量を調査した。また、幼児の活動水準は、JAWBONE UP24の装着により、歩数と睡眠の質を測定した。

【結果】質問票により幼児を朝型・中間型(11人)、夜型(3人)の2群に分類して検討した。両群間では、起床時刻、就寝時刻、眠りの質には差が認められなかったが、夜型の幼児は朝型・中間型の幼児と比較して、寝つきが悪く、夜ぐっすりと眠れていない、朝の機嫌が悪い幼児が有意に多くみられた。また、寝る前におやつを食べる幼児が多く、朝に食欲がみられなかった。習慣的な摂取エネルギー量は、夜型の幼児が少ない傾向にあり、PFCバランスは、朝型(13:33:54)、夜型は(14:37:49)であり、夜型は炭水化物の摂取が少ない傾向にあった。夜型の保護者は、栄養のバランスを重要視していない、栄養素の働きは知らないと答える割合が多く、生活リズムを整えるように幼児に仕向けていない割合も多かった。唾液コルチゾール分泌は、夜型幼児において起床30分後のコルチゾール濃度が低値傾向を示したが、両群間でコルチゾールの概日リズムの有無に差は認められなかった。

【考察】クロノタイプには幼児の生活習慣や食習慣が影響しており、保護者の食知識や教育態度が関係していると推察された。本研究ではクロノタイプによる唾液コルチゾール濃度やリズムには影響がみられなかった。本研究は平成25-27年度科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号25350066)助成の研究の一部である。

就学児の携帯情報端末の使用と問題行動との関連

細川 陸也1,2、桂 敏樹2

1名古屋市立大学看護学部、2京都大学大学院医学研究科

O1-029

【目的】近年、スマートフォン・タブレットなど携帯情報端末の就学児への普及に伴い、情報端末の過度な使用は児の正常な発達を阻害する危険性が懸念されている。そこで、本研究は、就学児の携帯情報端末の使用と問題行動(不適応行動)との関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】2015年10-12月、愛知県内の小学1年生(6-7歳児)3,267名を対象とし、その養育者へ自記式質問紙調査を実施した。主な調査項目は、携帯情報端末の使用状況、児の問題行動

[SDQ:Strength and Difficulty Questionnaire]などであった。

【結果】有効回答の得られた児1,712名(有効回答率:52.4%)を分析対象とした。対象属性は、平均年齢6.87±0.30であり、男児887名(51.8%)・女児825名(48.2%)であった。スマートフォン・タブレットの携帯情報端末をいつも使用している・よく使用している児は337名(19.7%)であり、主な使用目的は、ゲーム、動画視聴などが多かった。携帯情報端末の使用と問題行動との関連を検証するため、説明変数を情報端末の習慣的使用の有無、目的変数を問題行動の有無(行為問題、多動・不注意、情緒的症状、仲間関係の問題)、調整変数を性別、家族構成、家庭の経済状況、テレビ・テレビゲームの習慣的視聴および使用とし、ロジスティック回帰分析を実施した。その結果、携帯情報端末を習慣的に使用している児[習慣的使用群]は習慣的に使用していない児[非習慣的使用群]に比べ、外在化問題である‘行為問題’

(OR:1.51、p<.05)、内在化問題である‘情緒的症状’(OR:1.62、p<.01)の問題行動の割合が有意に高かった。

【結論】本結果より、就学児のスマートフォン・タブレットの携帯情報端末の習慣的な使用は児の問題行動に繋がる可能性が示唆された。情報端末の過度な使用は、社会性を育む重要な時期におけるコミュニケーションの機会を奪い、他者の感情を理解し自己の考えを表出する機会を減少させているかもしれない。情報端末は教育などへの肯定的な効果も期待される一方、使用目的や使用方法など適切な利用法の検証が必要であると考える。

128 The 64th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health

Presented by Medical*Online