oboe : 屋外環境のための笛型点字入力インタフェース 2.1 システム概要...

1. はじめに 半導体素子高機能化小型化によりコン ピュータはモバイルウェアラブルの時代へとしているウェアラブルコンピュータをえる 入力インタフェースは重要技術的課 つであり据置型入力インタフェー スを小型化すればよいとはらないたとえば実世界作業実施しながらの情報インタフェース としては従来のキーボードにわるしい方式 考案しなければならない本稿では視覚障害者いる点字入力方法応用したウェアラブル入力インタフェースを提案 これまでに開発したプロトタイプとそのプ ロトタイプを使った障害者支援についてべる2. OBOE 2.1 システム概要 キーボード入力1 のキーに 1 文字 対応しており習熟じて入力高速化にな るという特徴つがキーのくなるためそのままではウェアラブルコンピュータにさな そのためTwiddler[1] のように独自のコマン ドをえなければならないものがOBOE (Oboe-like Braille interface for Outdoor Environment) 点字タイプライタと方式入力うウェアラブル入力インタフェースであ 点字タイプライタは点字6 対応した キーを同時すことで文字入力するものであ 世界中のほとんどの言語対応しているれまでにも携帯型点字入力キーボードは存在たが固定したでの使用前提でありのメタファを使えば屋外における入力にはさないピアノであるそこで本稿では搬性きながらの入力可能インタフェースを提案するまた点字タイプライタの要領入力するシス テムとして圧電性高分子材料 PVDF 使った袋型デバイス [2] があるが手袋型のデバイスは 指先触覚完全占有してしまう一方本研 のデバイスは必要時のみ把持することで入力える有効である2.2 入力デバイス 入力デバイスには加速度センサをいた常時装 着型デバイスたとえば FingeRing[3]やタッチ パネルデバイスがげられる前者常時装着 誤作動問題があり後者明確入力感 ける提案するデバイスのボタンはデスクトップ PC のキーボードとじメカニカルスイッチをいて いるそのため明確なクリックキー 自体さやストロークのさなどにより直観 入力操作確認できるにプロトタイプ 外観プロトタイプシステムではキーの 個数8 としたこれは 6 点式点字入力えてキーボードとして必要修正改行といっ 機能えるようにするためである外筒35 mm のアクリル樹脂でできており総重量150 g である2.3 入力方式 点字入力方式ではしたキーのわせに より入力された 1 文字決定する従来機械 OBOE : 屋外環境のための笛型点字入力インタフェース 雨宮 智浩 , 山下 淳 , 広田 光一 , 廣瀬 通孝 東京大学大学院 情報理工学系研究科 , 東京大学 先端科学技術研究センター [email protected] OBOE : oboe-like braille interface for outdoor environment Tomohiro Amemiya , Jun Yamashita , Koichi Hirota , Michitaka Hirose Graduate School of Information Science and Technology, the University of Tokyo RCAST, the University of Tokyo 1 : OBOE 外観

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Page 1: OBOE : 屋外環境のための笛型点字入力インタフェース 2.1 システム概要 キーボード型の入力は1個のキーに1個の文字 が対応しており,習熟に応じて入力が高速化にな

1. はじめに

半導体素子の高機能化,小型化により,コンピュータはモバイル・ウェアラブルの時代へと変化している.ウェアラブルコンピュータを考える上で,入力インタフェースは最も重要な技術的課題の一つであり,単に据置型の入力インタフェースを小型化すればよいとは限らない.たとえば,実世界作業を実施しながらの情報インタフェースとしては,従来のキーボードに代わる新しい方式を考案しなければならない.本稿では,視覚障害者が用いる点字入力方法を

応用したウェアラブル入力インタフェースを提案し,これまでに開発したプロトタイプと,そのプロトタイプを使った障害者支援について述べる.

2. OBOE

2.1 システム概要 キーボード型の入力は 1個のキーに 1個の文字

が対応しており,習熟に応じて入力が高速化になるという特徴を持つが,キーの数が多くなるため,そのままではウェアラブルコンピュータに適さない.そのため,Twiddler[1]のように独自のコマンドを覚えなければならないものが多い.

OBOE (Oboe-like Braille interface for Outdoor Environment)は,点字タイプライタと同じ方式で入力を行うウェアラブル入力インタフェースである.点字タイプライタは,点字の 6点に対応したキーを同時に押すことで文字を入力するものであり,世界中のほとんどの言語に対応している.これまでにも携帯型の点字入力キーボードは存在したが,固定した机の上での使用が前提であり,楽

器のメタファを使えば,屋外における入力には適さない「ピアノ」型である.そこで本稿では,可搬性に富み,歩きながらの入力も可能な「笛」型インタフェースを提案する.また,点字タイプライタの要領で入力するシス

テムとして,圧電性高分子材料 PVDFを使った手袋型デバイス [2]があるが,手袋型のデバイスは指先の触覚を完全に占有してしまう.一方,本研究のデバイスは必要時のみ把持することで入力が行える点で有効である.2.2 入力デバイス 入力デバイスには加速度センサを用いた常時装

着型デバイス(たとえば FingeRing[3])やタッチパネル式デバイスが挙げられる.前者は常時装着に伴う誤作動の問題があり,後者は明確な入力感に欠ける.提案するデバイスのボタンはデスクトップ PC

のキーボードと同じメカニカルスイッチを用いている.そのため,明確なクリック感を有し,キー自体の重さや,ストロークの深さなどにより直観的に入力操作を確認できる.図1にプロトタイプの外観を示す.プロトタイプシステムではキーの個数は 8個とした.これは 6点式の点字入力に加えて,キーボードとして必要な修正や改行といった機能を行えるようにするためである.外筒は直径 35 mmのアクリル樹脂でできており,総重量は約 150 gである.2.3 入力方式 点字入力方式では押したキーの組み合わせに

より入力された 1文字を決定する.従来の機械

OBOE :屋外環境のための笛型点字入力インタフェース雨宮 智浩 †, 山下 淳 ‡, 広田 光一 ‡, 廣瀬 通孝 ‡

東京大学大学院 情報理工学系研究科 †, 東京大学 先端科学技術研究センター ‡

[email protected]

OBOE : oboe-like braille interface for outdoor environmentTomohiro Amemiya†, Jun Yamashita‡, Koichi Hirota‡, Michitaka Hirose‡

† Graduate School of Information Science and Technology, the University of Tokyo‡ RCAST, the University of Tokyo 図 1 : OBOE外観

Page 2: OBOE : 屋外環境のための笛型点字入力インタフェース 2.1 システム概要 キーボード型の入力は1個のキーに1個の文字 が対応しており,習熟に応じて入力が高速化にな

式点字タイプライタではすべての指が離れたときに1文字が送られる設計になっており,本インタフェースもこれに従った.入力されたキーの情報は上記規則に基づき,マイコン (PIC16F84A, Microchip Technology社 )で処理され,ADCテクノロジ社の BlueStick上に実装された Bluetooth Ver.1.1 の Serial Port Profile を使ってウェアラブルコンピュータへ送信される.2.4 使用形態 本インタフェースでは使用形態として,横笛持

ちと縦笛持ちの二種類が考えられ,それらのキーマップはソフトウェア側で切り替えが可能である.なお,横笛持ちはこれまでの点字タイプライタと同じキー配列となる.また,ウェアラブルコンピューティングにおいては,入力デバイスを長時間使用する用途は考えにくいため,使わないときは首にぶらさげておく設計とした.

3. 障害者支援への応用

ウェアラブルコンピュータの障害者支援に関する研究も盛んに行われており,ユニバーサルデザインの考えから,ユーザが出力インタフェースを選択できることが重要である.ここでは視覚以外の提示として,音声提示と指点字提示を行った.システムの全体図を図 2に示す.3.1 音声出力 音声出力は中途失明者にとって最も親しみやす

いインタフェースである.それを実現するために,OBOEと組み合わせて音声出力をするシステムを作成した.実装には日本語音声合成エンジン IBM ProTalker97を使用した.3.2 指点字出力指点字とは視覚および聴覚の重複障害者が用い

る指の触覚を使ったコミュニケーション手段の一

つで,点字タイプライタのキーに対応した 6本の指を通訳者が打鍵することで文字を伝えるものである.筆者らはこれまでに腕時計型コンピュータを用いた指点字インタフェースを作成し,評価実験を行ってきた [4].OBOEと接続したシステムを使って,指点字インタフェースにより遠隔地にいる視聴覚障害者や,複数の視聴覚障害者に対する実時間のコミュニケーションも可能となる(図 3).

4. おわりに

本研究では笛型のウェアラブル点字入力インタフェースを提案し,プロトタイプを作成した.出力として視覚,聴覚,触覚での提示を行い,障害者支援への応用の可能性について述べた.視覚障害者や点訳者などにより,デバイスの把持性,打鍵時の固定方法,各キーの配置間隔などで改善すべき点を指摘されている.今後はこれらの意見とともにさらに評価実験を重ね,システムのユーザビリティをより向上させていく予定である.

参考文献

[1] Twiddler, http://www.handykey.com/[2] M.-C. Cho et al., "A Pair of Braille-Based Chord

Gloves", In Proc. of ISWC 2002, pp.154-155, 2002.[3] M. Fukumoto, Y. Tonomura, "Body Coupled

FingeRing":Wireless Wearable Keyboard, In Proc. of CHI 97, pp. 147-154, 1997.

[4] 雨宮 ,広田 ,廣瀬 , "腕時計型コンピュータを用いた指点字インタフェースの開発 ", HIS 2003, pp.711-714, 2003.

図 3 : OBOEと指点字インタフェース

図 2 : システム構成

Wearable Computer

ProTalker 97TTS Engine

VGAController

BluetoothModule

Platform

Win32 MFCApplication

MonitorBluetooth ModuleBlueStick

PIC16F84A

1

OBOE

Braille to TextEncoder

SoundController

Speaker

BluetoothModule

Finger-BrailleInterface

Finger-BrailleSoftware

2345678

Keyboard

Output