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ODIUM hahya

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ODIUM

hahya

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【注意事項】

 このPDFファイルは「ハーメルン」で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので

す。

 小説の作者、「ハーメルン」の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を

超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。

  【あらすじ】

 一人でも犠牲を出すくらいなら、全員で生きるか、はたまた全員道連れか。  

  そんなお話。

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  目   次  

────────────

第1話 

1

────────────

第2話 

18

────────────

第3話 

42

────────────

第4話 

64

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第1話

  「ここにいる全員を殺す。しかし一人だけ生贄をさしだせば残りのものの命は助かる

だろう」

 もし、こんな悪魔のようなはたまた神のような存在に二者択一の選択を迫られたら、

あなたならどうするだろう。

 誰かの犠牲によって多数が救われるなら。

 たった一人が犠牲になるだけで多く救われる命があるなら。

 ある人は必要最低限の犠牲で済むのならと犠牲になるべき一人を決めようとするだ

ろう。

 ある人は自分一人が犠牲になればと自己犠牲を発揮するものもいるだろう。

 この場合は一人が犠牲になるのが最善である。しかし私はこの答えがどうしても納

得できない。

  「私の命で助かるものがあるのなら」と、一人の自己犠牲があった。大勢が助かった。

たった一人の犠牲で救われた命は、自分たちが助かったことに安堵し、「彼のおかげで私

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たちは助かった。これからは彼の分まで力強く生きよう」と、彼の犠牲を正当化しよう

とするだろう。

 では彼の犠牲はどうなる?大勢にとってはハッピーエンドとなっただろう。しかし

彼からみた物語はどうなるだろう。そこで終わりだ。それは間違いなくバッドエンド

だ。だから私はこの最善が最善であるとは絶対に思わない。もしそのような立場に

なっても私は、自分だけが助かりたいと思ってしまうだろうから。

 誰かを犠牲にするくらいなら全員道連れにしろよ、と。絶対に死にたくないのなら、

一人も犠牲にせずに生き残る方法を選べ、と。私は思う。まあ、今からする話とは全然

関係ないけど。

   1:記憶喪失とは

 さて皆さんこんにちは。ご機嫌いかがだろう。私は機嫌がとても悪い。まあしかし

ながら今回は世間でもよく耳にするあの言葉について話してみよう。目が覚めると「こ

こは何所?」「私は誰?」とか何とか。身元不明のその人物は病院に連れて行かれ、カウ

ンセリングやらなんやらで何かをきっかけに記憶を取り戻すなんてオチがまってそう

だが。世間では記憶が欠落してしまっている状態を記憶喪失というらしい。まあそん

2 第1話

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なことはどうでもいいちゃあどうでもいいが。私の今の状況からしてなんとなくこん

なことを思ってしまったのだ。ほんとどうでもいいことだ。しかしながらまずは私が

誰かというお話をしよう。

 私の名前は佐藤あおい。高校2年生。普通の公立高校に通ってる。記憶喪失ではな

いから絶対。記憶はある。というより自分のことなんだから忘れるわけないよね。で

もこの状況はなんだ?わけが分からない。といきなりこんなこと言われても皆さんに

は皆目見当もつかないだろう。今のこの話をするには今朝に遡ることになる。

   7月23日夏休み初日

「う〜ん、今何時?」とベッドから起きた私は昨日のことを思い出す。

「ああ、そうか。今日陽菜と遊ぶ約束してたんだ。8時にくるんだよね。・・・もう七時

半じゃん、やば」

 陽菜というのは私の同級生である。本名は高橋陽菜。誰とでも気さくに話す、天真爛

漫な女の子だ。昨日私は彼女と買い物に行く約束をしている。あまりにも流行に疎い

私に痰を切ったらしい。携帯には彼女からのメールが2件。

 7/22 23:23 明日はよろしくね〜

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       2人で遊びに行くのってはじめてだね 

       楽しみにしてもうねるよ〜

       土田君には黙っとくからwww

 土田君とは土田芳野。私と陽菜の同級生である。・・・絶賛片思い中。

 私は「うっせ」と呟きながら唇の端を吊り上げ、次のメールを見る。 

 7/23 07:23 おはよ〜 昨日はそのまま寝ちゃったかな?

       今日は目いっぱいオシャレしていくからね〜

       そういえば土田くんも今日駅前行くらしいよ?

       会えちゃったりして〜

 私はムッとなりながらメールの返信をしようと思ったが、陽菜がうちまで来るのはあ

と三十分、彼女をいたぶるのは彼女と会ったときでいいだろう。しかしながら三十分で

の準備はできるだろうか。とにかく服は適当にTシャツを着てズボンはジーンズで・・・

ああ寝癖やばい。顔も洗って歯も磨くとなると大体二十分くらいか。結構余裕で準備

できるわ。女子力そんなないか。準備そんな時間かかんないか。皮肉ですよ自分に対

しての。

 30分後、インターホンがなる。適当に食パンを食べながら私は玄関にでる。

「おっはよ〜!!陽菜だよ〜!!メール返信なかったけど今日土田くん駅前いくんだっ」

4 第1話

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「うっさい」

 陽菜が全てを言い切る前に私が被さるように言う。・・・陽菜を見た。それにして

も・・・

「陽菜その格好・・・」

 そう、陽菜の格好が・・・

「へっへ〜オシャレしちゃった〜」

「カワイイ・・・」

 カワイイのである。

 ホワイトのインナーにピンクのテーテラードジャケット、ライトブルーのダメージ

ジーンズそして何より

「やっぱ陽菜かわいい頬っぺたカワイイ〜食べちゃう!頬っぺた食べちゃう!あと土田

のことは黙っとけ〜」

 といいながら私は陽菜に抱きつきながらハムハム。

「ちょっとやめてよ!ちょ!ほんと舐めないで!もう!!」

「よいではないか〜」

「エロ代官か貴様わ〜」

「アッハ〜陽菜カワイイ♪」

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 と(私が)笑いながら、いつものふれあいをする。私は今日の目的を思い出しながら

「そういえば今日一万しか用意してないけど足りる?」

「もちろんだよ〜ていうか一式揃えるならそんないらないよ〜」

「え?でも陽菜のそれ、結構かかってそう」

 チッチッチと人差し指を振りつつ陽菜は

「お金をかけてオシャレをするんじゃない。いかに安物で高価そうなオシャレをするの

かが学生のオシャレのコツよ」

「お〜名言」

 と私は関心しつつ、

「じゃあ、今日たのんだよ陽菜」

「・・・・・」

 陽菜からの返事がない

「どうしたの?」

「いや〜でもね〜、あおいのその格好・・・」

 私はムッとしつつ

「悪かったわわね、ダサくて」

 と自分がダサいのかといわれてる気がして

6 第1話

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「いやいやいや!」と陽菜は否定しつつ

「なんかあおいって何着ても可愛いんじゃない?」

「え?そう?」と私は自分のファッションセンスを褒められ上機嫌になり、

「いや、ファッションセンスは皆目ないに等しいんだけどそのファッションを着こなせ

るって」

 前言撤回。自分のファッションセンスを詰られ少々不機嫌になった。下げて上げて

下げるってなんなのもう。

「陽菜こそ何来ても似合いそうだけど。」

「いや〜その服は小柄な私じゃ無理っしょ。スレンダーな人じゃないとちょっとねえ

〜」

「でも今日は私にいっぱいオシャレ教えてくれるんでしょ?」

 う〜んと陽菜は唸りつつ、

「あなたの話を聞く限り今日はそうとう苦戦するだろうなとは思ってたけど、何でも着

こなせちゃうなら別よ。私が服選びの奥義を教えてあげる」

  そうこうありながらあたしたちは駅に向かう。そして、

 

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  目を覚まし時計を見るとすでに10時を過ぎていた。まあ今日から夏休みなのだか

ら部活で朝練がある連中意外はさぞかし盛大にだらだらするだろう。しかし、昨日はわ

けが分からなかった。土田芳野は昨日のことを思い出す。

 授業が終わりホームルーム、運動部やら文化部に所属していない俺は後は帰宅するだ

けだ。明日から夏休みであるので友達と夏休みの計画を話しつつ、帰る準備をしていた

頃、

「土田〜、ちょっと来てよ」

 とクラスメイトの高橋陽菜から呼び出された。彼女は俺と小学校からの同級生だが

小中高と同じクラスになったのは今年が初めてだ。話しをしたこともなく顔だけは

知っているという関係だが。

「え〜と、高橋さんだよねなに?」

「陽菜でいいよ〜苗字だと長いし」と笑いながら「えっとね〜明日なんだけど駅前に喫茶

店できてたじゃん」

「あ〜あそこな〜結構話題になってるよな〜」

 その喫茶店は、チェーン店のお店が並ぶのが多い中、唯一(駅前で)個人経営のお店

であるらしく評判もいいらしい。

8 第1話

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「それがどうしたんだ?」

 高橋は表情を変えずに

「明日15時半くらいかな?そこの喫茶店に来てよ。その時間なら結構空いてるから」

「え?どういうこと?え〜と、陽菜さん・・・」

 と俺が質問すると高橋は携帯を出し、

「とにかくメアド交換しよ」と言葉のキャッチボールを無視しだした。

「え?だから何で」と聞き返すと「いいから交換しよ。ほら赤外線」と無理やり連絡先を

交換させられた。

  昨日の晩から、「23日、15時半よろしくね」という確認メールが3件。「こなかっ

たらどうなるか分かってる?」というヤンデレ全快な脅しメールが2件。そして今朝7

時のモーニングコールをシカトしたあと、マナーモードに設定しなおし二度寝を決め込

んだ。そして現在10時過ぎ、メールの通知は約10件余り、もちろん全て高橋陽菜か

らだ。メールの件名は「起きた?」「今日分かってる?」などのものが多い中、10分ほ

ど前に受信したメールからは「へんしんしろよ」との催促が。パタンと携帯を閉じると、

俺は三度寝を決めようとする。そしてまたメールが届く。内容は「呪呪呪」とわけのわ

らない文字が。

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「な、なな、なんだよこいつ。これ、じゅ?のろい?なんて読むんだ?ていうかこれに深

い意味はちゃんとあんのか?と、とりあえず返信」

 〞わかった15時半な。

 遅刻しないようにするから〞

 と返信すると数十秒後に返信がきた。「はやくへんしんしろよ」と。

「・・・・・・・・・・何こいつ怖い」

 まだ時間はかなりあるが、土田芳野は早めに家を出ようと決断した。

    12時を過ぎ、私と陽菜はファミレスでご飯を食べていた。私の服選びは洋服店に

行って数十分もかからなかった。その理由は、陽菜が洋服店の店員に言ったたった一

言。

「このマネキンの服一式試着していいですか?」

 私は絶句した。オシャレというのは「この服とズボン合うくない?」「こっちのほうが

よくない?」みたいなことを話し合いながらするのではないか。姉の御下がりばかり着

ていた私はそんな女子高生みたいなことを想像していたのだが。

10 第1話

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「だってあおいちゃんどうせ何来ても似合うし、マネキン一式なら毎シーズン流行に乗

り遅れることはないでしょ」

「で、でももっとちゃんと選んで・・・」

「私はこれが着たくても似合わないんだよ?」

 と陽菜は俯く。

「大人っぽい服着れないんだよ?」と涙声のまま「あおいはなんでも似合うんだから後は

私の服選びてつだってよ〜」

「え?私が悪いの?ええ・・・ごめん泣かないで〜」

 と私が言うと、

「まあ一応いくつかあるマネキンから選んだからこれが一番エロ、いや、可愛いから」

 とケロッとした顔で言う。

「え?あ、そう。ま、まあ私のために選んでくれたわけよね一応。」

 そして私の服を買った後は陽菜の服選びにずっと付き合わされていた。彼女自身は

この服は小柄な私には似合わないというのだが、

「陽菜もどんな服着ても絶対に似合うのに」

「そんなのあおいに言われたら冷やかしにしか聞こえないよ〜」

「いやいや、ロリっ子があえて肩出しニットとかを着て大人をもとい私を挑発するとか、

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もっとエロいの着てさ」

「ロリって言うな〜小柄って言え〜それになんで私が挑発する対象があんたなのよ、エ

ロって、私がさっき言ったこと聞こえてたの?」

「さっき言ったのってなに?」と聞くと陽菜は「何でもない」と即答した。

 と陽菜は店員から届けられた和風おろしハンバーグを食べる。私もチーズハンバー

グを食べながら聞く。

「ていうか服選んでる最中誰とメールしてたの?なんか10分おきくらいにメールして

たけど」

 と聞くと、「そこらへんは、ほら、そんな気にしなくてもいいからさ」ということらし

い。誰にメールしていたのだろう。

「それよりさ」と陽菜が話を切り出す。「今日何時まで遊べるの?」

「う〜んと、多分夜遅くなるまでに、この時期なら七時くらいになら帰っても怒られない

と思う」

 陽菜はニヤニヤ笑いながら

「そうなの」と。

「なんかへんな事考えてる?」

「たった今セクハラしてきたあんたには言われたくな〜い」

12 第1話

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「まあ、御もっともだけど」

 私はハンバーグにチーズを絡めながら口に運ぶ。

「この後は適当にカラオケでもしながら時間つぶすよ〜」

「時間つぶす?ってこれから予定があるみたいに」

「いやいやいやいや」と首を振りながら「ただの言葉のあやだよ」

 そして陽菜はまたニヤニヤする。

    今は2時半を過ぎた頃か。俺は高橋と約束した1時間早く目的地に着いた。目的地

といっても、駅前の噴水広場、喫茶店前のベンチに座ってるわけだが。

「早めにきたけどなんにもすることねえな」

 携帯を見ると最後に俺が高橋にメールを返信してから「はやくへんしんしろよ」の返

信以来まったく来ていない。今朝からスパムのごとくメールが送られてきたのに、いき

なり届かなくなるとなんとなく落ち着かない。

 どこか違う店に入ろうとも思ったが、待ち合わせが喫茶店なだけあって、時間をつぶ

すために別の店でお茶をするというのはどこか忍びなく感じる。

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「はあ・・・ていうかなんで俺こんなにあせってんだ?」

 高橋とは小中高同じ学校であるが、クラスが同じではなくとも中学に入ったあたりか

ら、カワイイとは思ったこともある。今も、正直緊張している。すると携帯がなる。高

橋陽菜からだ。

 7/23 14:34  今何所にいる? 

        まだついてない?

 とメールが来た。

 え〜と、とりあえず返信しなきゃな。

「今、駅前の噴水・・・と」

 するとすぐに返信が来た。

 7/23 14:36   じゃあ今すぐ行くわ

              待ってて♪

「音符って、あいつちょっとは俺に打ち解けてくれたのか?」

 俺は自分が笑っていることに気がつかなかった。

「お〜い土田〜」

 高橋の声がした。そこに一緒にいるTシャツジーンズの少女は、、、

 

14 第1話

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  陽菜が急に駅まで行こうといった。

「ちょ、ちょっと陽菜!そんな急がなくても」

「いいの!ていうかあおい着替えないの?折角服買ったんだし」

 ハアハア・・・と息を荒げながら、

「うん・・・これはこんど陽菜とデートする時に着るんだ」

「ま〜それはうれしいけど、う〜ん、まいっか」

 と何か陽菜は開き直ったらしいが

「ほら、あそこ」

「?」

 あれは、あそこのベンチに座っているのは、

「土田君?」

 陽菜はニコッと笑った。休日に絶賛片思い中の土田くんと過ごせるのならどれだけ

うれしいことだろうか。陽菜はこのことを知っていてここに私を呼んだのか。そして、

「お〜い土田〜」

 陽菜が土田君を呼んだ。

 

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 記憶はここまで。今の私の状況を説明すると私は駅前にいる。まあ当然だろう。

だってさっきまで駅にいたし。しかし状況がまったく違う。今は昼なのに人の気配が

全くしない。人がいなくなった。いやいきなり消えたのだ。私の記憶が飛んだのか、

「なら私は記憶喪失状態ということになる・・・よね?」

 独りになった駅前噴水近くで彼女は呟く。

「どうなってんのよ全く・・・意味わかんない」

 何これ、皆、何所?

「陽菜〜!土田く〜ん!どこなのよ!!」

 得体の知れない不安が私を襲う。

  ここまで明確な記憶がありながらいきなり知らない状況に陥ってしまった。気絶し

たとか、眠ってしまったとかではない。そこで私は考える。

  記憶喪失とは何だろう。それにこれは本当に記憶喪失なのだろうか。

  「というより分けわかんない!腹立つ!ってかムカつくんですけど〜」

16 第1話

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  誰もいない街に彼女、佐藤あおいの声が独り響く・・・。

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第2話

 「どうなってんですかね・・・これ」

「さあ・・・私も訳わかんないんだよねえ」

 俺、土田芳野は7月23日の夏休み初日、高橋陽菜と喫茶店で待ち合わせをしていた。

約束の1時間近く早く集合場所に来ていた俺は、約束の40分くらい早くやってきた高

橋の声に気づき、高橋のほうを振り向く。するといきなり景色が変わった。というより

気づくとここにいた。まばたきをした一瞬の出来事だ。

 ここは市内の大型ショッピングセンター「キャンプベレー」。大型というだけあって、

電化製品や書店、さらに映画館やB級フード店などかなり充実している。俺と高橋は電

化製品の並ぶ店内にいた。

 休日の昼間なのに、俺たち二人を除いて誰1人いない。店員もいない。どう考えても

おかしい。まあ何よりも俺たちは一瞬でここにテレポートしたことに驚くべきだろう

が、あまり実感がわかない。

 俺は涙声で言う。

「誰もいないね・・・」

18 第2話

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「うん・・・」

 高橋は頷く。続けて

「駅からここまで車でも5分はかかるよね?」と俺に確認をとる。

 俺は返事もせず、

「高橋さんさ」

「陽菜でいいよ、なに?」

 初めて話して2日目の女性を名前で呼ぶのは気がひけるな〜と思いつつ、俺は続け

る。

「陽菜さんさ、今の状況どうおもう?」

 高橋は、「う〜ん・・・・・・・・・・・・・」と唸るように考えると「おったまげ?」

と答えた。

「いやそれは俺も同じだよ?だからそういうことじゃなくてですね?」

「あ〜言わなくてもわかる。大体私もおんなじ気持ちだろうから」

 たしかに今現在のこの奇奇怪怪な状況を理解できる奴がいればどうかしているのだ

ろう。

「まあそりゃそうだよな、俺も訳分かんねえもん」と俺は納得する。(いや、この状況に

は1ミリたりとも納得していないのだが)

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 俺は

「でもどうするよ?ホント」

「どうするって何が?」

「だからこれからどうするかってことだよ」

 高橋は「あ〜」と返事をすると

「まずは情報収集かな〜?あおいがどうなってるのかも知りたいしね〜」

 と答えた。

「情報収集っていわれてもな〜」と俺。

「とりあえず今は駅に行こうよ。家まで帰りたいし、あおいが待ってるかも知れないし

ね〜」

 たしかに佐藤が駅にいるのなら、今すぐ向かうべきだろう。

「今はそれしかないか」

「それに〜、今の時点で分かることもあるにはあるよ?2つくらい」

 高橋はドヤ顔で言った。

「まじで?教えてよ!」

「まずひと〜つ!!」と高橋が元気に一指し指を前に突き出し、

「どうして私たちがこんな破目にあってるのかわからないってこと」と、まず1つ目の

20 第2話

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『分かること』を答えた。

「それってわかってないよね?」と俺が突っ込む。

「ノンノンノン」と突き出したままの指を振ると、「まだおわりじゃないよ〜」と続ける。

「そしてふたつめは〜ここにいきなり移動した理由が分かっていないこと!」

 高橋はピースしながらポーズをとる。

 そして俺がすかさず

「自身たっぷりに言うな!やっぱ何もわかってねえじゃねえかよ!!!」と再度突っ込む。

「いやいやぁ〜」と高橋は呆れた素振りをみせながら

「分からないってことが分かってるだけでも情報収集にはものすごく有利になるんだけ

どな〜・・・偉人の名言は大事にすべきだよ」

「無知の知ってやつか」

「おお、よく知ってるね〜」

「でも情報収集はどうすんだよ」

「まあ基本は歩いてしらみつぶし?それにあおいと合流できたらここには用事ないし」

「じゃあそのあおい・・・佐藤に連絡すればいいんじゃないのか?」

「そうする〜」

 陽菜は携帯電話をとりだした。

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「ねえ、」

「なんだ?」

「電波ある?」

「携帯か?」

「うん」

 俺は携帯を取り出し、電波の確認をする。

「あれ?俺も圏外だ」

「キャンプベレーって店内全部圏内のはずなのに」

「店側が意図的に回線を切ったとか?」

「どうなんだろうね〜?」

「外出たら繋がるんじゃないか?ここだけ圏外ってことかも知れないし」

「ま、何もしないんじゃ状況変わんないよね」

「とりあえずここでるか」

「そだね〜」

 俺と陽菜は外に出ることにした。

 俺と高橋は現在駅まで歩いている。

 俺たちがいま歩いてる道はパン屋やコロッケや、電気屋や本屋等が多く並ぶ区画だ。

22 第2話

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いわゆる商店街と言われるものだ。休日であればカップルや学生、家族ずれがたくさん

いるのだが、さっき俺たちがテレポートしてから誰1人見かけない。

 しばらく歩いていると、商店街の道のど真ん中に学校の机が置いてあった。

「高橋君。あれ・・・」

「ああ、なんかすげえこれ見よがしに不自然なところに机が置いてあるな」

「でも・・・ほら、ダルマさんが置いてあるよ」

「片目だけ目が書いてない」

「選挙に落ちたのかな〜」

 ダルマの下にはA4の用紙が置いてある。ダルマが文鎮として置かれてあるが。俺

はその用紙を手に取る。

「これなんかの地図みたいだな。建宮小学校って書いてあるぞ」

「お〜懐かしいねえその名前」

「知ってるのか?」

「ちょっと昔ね〜」

「あれ?でもお前って小中俺と同じだよな?」

「そうだね〜」

「なんでこの小学校のこと知ってるんだ?」

23

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「ちょっと友達がね・・・いたんだよね」

 何かあったのか?とは聞かなかった。その時の高橋の顔は少し寂しそうだったから。

「と、とりあえず、佐藤に会いに行こう。むこうもこっちを心配してるだろう」

 高橋は「うん」と返事した。・・・・・・笑顔だった。 

  「いのり!こっちは誰もいない」

 私は声を荒げる。

「これ何かのドッキリかな〜?」

 といのりは答える。

「こんなドッキリありえないって!」

 いのりは相変わらずのマイペースで「まあ…そうだよね・・・」としょんぼりする。

「本当、意味わかんない」

 いのりが

「どうする?」と私に聞いてきた。

「どうするって何がよ?」聞き返す。

「これからのこととか・・・」

24 第2話

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 まあ、今ここでじっとしていても何も始まらないわけだが、私は提案する。

「やっぱり家帰ったほうがいいよね?あ、でも警察に連絡したほうがいいのかな?なん

かわかんないど、やばいいってこれ」

 いのりは携帯を取り出す。

「携帯も・・・繋がらない。警察には連絡できない」

 私は苛立ち、

「なんでよ!さっきまで繋がってたのに。じゃあ誰にも連絡できないじゃない」

 携帯が圏外ならば家族との連絡も出来ない。

 いのりは、

「ちょっと・・・おちつこ?」と私をなだめる。続けて、

「でも・・・家に帰るのは・・・賛成。家族には・・・会っといたほうがいいと思う・・・。

早めにここでたほうがいいと思う」

 私は

「そうだよね」と答えた。

 いのりは「ん・・・」と返事をした。

 まあそもそもなぜこうなったのかというとそれは数時間前に遡ることになる。

 

25

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 私たちは市内にある娯楽施設にいた。1階には100円で遊べるクレーンゲーム、格

闘ゲーム、さらには音げゲーといったリズムゲームもある。2階にはカラオケルームの

個室が多数。3階ではビリヤード、ダーツなどもできる。

 私こと赤坂美坂17歳は、同じクラスの石坂いのりと有意義な夏休みを過ごそうと今

日7月21日カラオケに来ていた。

 ここは市内の学生に人気がある遊びスポットで、土日祝日はカラオケの個室もほぼ満

室になる。しかしうちの高校は他の学校よりも2日ほど夏休みが早い。そのため今日

は他の学校の連中は授業中であるのだ。夏休みの間、市内からやってくる中高生がこな

い今日をチャンスと、私たちは今日来たのというのだ。

 思惑どうり個室はスカスカ、というわけではなかった。私たちと同じ考えだったの

か、うちの学校の生徒がかなり多く来ていた。中には3年生の先輩も来ていた。今年は

受験だろうが大丈夫か?。

 フリーコースで10時から18時まで歌い続けようと思ったのだが、混雑している現

在は2時間待ちと言うことになった。結局わたしといのりは13時から4時間コース

で歌うことにした。

「ねえ、いのり?」

「なに・・・」

26 第2話

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「気持ちよく歌うのはいいんだけどさ」

「・・・うん」

「もっとポピュラーな歌、唄おうよ」

「だから演歌唄ってる。私たちの業界では・・・有名」

 まあ、こぶしが聞いていてうまいのは事実なのだが。

「美坂も、一緒に演歌うたう?」

「いやいい」

 結局いのりは演歌を歌い続けていた。 

  数時間後、

 私が気持ちよく歌っていると、いのりが

「あれ〜?」と言い出す。

 私がかすれた声で

「んん?どったの?」

「もう5時過ぎなのに全然・・・連絡来ないよね?」

 私が携帯を確認すると今は5時10分。もう出る時間はとっくに過ぎている。

「あれ?ここ圏外になってる」

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 私は電波の調子が悪いのかな?と勝手に納得する。

「とりあえずレジまでいこ?」といのり。

 延長料金とか取られたら腹立つし、そもそもこれは店側の過失だろう。1時間丸っき

り歌ってましたよね?延長しますと言われても納得できない。

「そうだね早くいこっか」

 私はマイクをカゴの中に入れて部屋を出る。しかし、静か過ぎる。いや厳密に言えば

店内には今流行の歌やらゲームの音やらでかなりうるさいくらいなのだが。人の気配

が全くしない。この時間だと、近所の学生が下校ついでによくよってくるはずなのだ

が。それにここに来た頃にはうちの学生もたくさんいた。誰1人いないのはおかしい。

レジまで来たが、店員までもどこかへいってしまったようだ。

「誰もいない?ちょっと変じゃない?」

「そうだね」

 何か変だ。

「いのりは3階いってよ。私はカラオケの個室見てくる」

「ん・・・了解」

 私たちは店内から消えた?人たちをさがす。

  

28 第2話

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 結論から言うと、店内には誰もいなかった。

 私たちは店を出て、最寄の駅まで歩いて向かうことにした。

 店員もいなかったので、支払いはかごの中にお金を入れて済ませておいた。裸で現金

をそのまま放置というのは気が引けるがこちらの知ったことではない。そもそも誰も

いないのだから金を取るものもいないだろう。

 外にも誰1人いない。

「本当に誰もいないね」私は呟く。

 いのりが

「かみかくし?」と言う。

「あんま怖いこと言わないでよね」

「おばけ・・・見たこと無いから・・・ちょっとドキドキ」

 おそらく好奇心旺盛の小学生と同じものなのかなと理解した。私にはいのりの気持

ちが微塵も理解できないのだが。

 いのりはホラー映画とかゾンビ映画が好きらしいのだが、先日私がいのりの家で見せ

られた『黄泉喰い』という映画。内容は死者が霊体のまま甦り、次々と仲間を増やして

いくというもの。なんとなくゾンビ映画の要素が入っているが、タチが悪いことに全て

の霊たちが生きた人間を苦しめて貶めて殺すと言う三段構えである。

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 おまけにシリーズ3作品を一晩で見せられた。私は恐怖しながら見ていたわけだが、

いのりは「おもしろかった!」と言っていた。

 正直趣味や性格については私とは全く真逆だと思う。私にとってはいのりの感性も

理解できないものなのだろう。だからこそ気が合うのかも知れないが。

 私は引き気味に、

「いつも思ってたけど」

「なに?」っとキョロっとした顔でいのり。

「この状況でもあんたって図太いよね」

 いのりは表情を変えずに、

「ホラーなら、喋りすぎると・・・死ぬよ?」

「ちょっと脅かさないでよ」

「・・・冗談」

 いのりは笑う。

 「君たち、名前はなんだ?」

 それはいのりの声ではなかった。

 

30 第2話

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  私が独りぼっちになってから数時間後。

 駅の周りをずっと走り回ったが、誰とも会わなかった。現在、佐藤あおいは先ほど高

橋陽菜と買い物をした洋服店にいる。店員もいないのに電気のついている店はなんと

なく気味が悪い。私は先ほど買った服を抱きかかえ、

「陽菜どこ行ったの?」と呟く。

 ここには私ひとり。孤独感が私を不安にさせる。家へ帰ろうとも思ったが、電車自体

が動いていない。歩いて帰ろうと思ったが、歩いて帰れる距離ではない。

「これからどうしよ・・・」と私が嘆く。

 陽菜と土田くんは今何をしているのだろうか。そもそもこの世に私意外いないので

はないかという錯覚さえもある。

 「お〜い誰かいるのか〜」

 男の声がした。

「誰かいるの?」

 私は大声で返事をする。誰かがいるとわかっただけで安心した。

「待ってろ!今行くから」

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 声は駅と正反対のほうから聞こえてくる。私はその場で屈みこみ、声の主が来るまで

じっとしていた。

「ここか?」声の主がやってきた。学ランを着た筋肉質の男がやってきた。

 私は自分以外にも誰かがいるということに安堵し、涙を流す。

 男は私と同い年くらいだろうか、そしていきなり

「話は後でする。夜になるまで時間が惜しい。早く立て!」

 と私の腕をひっぱる。

「え?ちょっと痛い」

「悪い、とにかく立て、夜になると危険だ」

 私は訳が分からず、

「危険って、どういうことなの?」と鼻を啜りながら質問する

「夜になるとバケモノがでる。あと2、3時間で日が暮れる」と早口で答えた。

「バケモノって・・・」

「早く来い!暗くなったら本当に危ないんだ」

 男は私の質問に答えず歩き出した。

  私は男に付いていく。駅とは逆方向に進んでいるみたいだ。徐々に市街地から離れ、

32 第2話

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田んぼのある区画にやってきた。私たちは30分ほど歩き続けた。

 先ほどこの男と会うまで、私は駅の周りをずっと走り続けていたのだ。、陽菜や土田君

を探しながら。もともと憔悴しきっていた私は、体力の限界だった。

 私は

「ちょ・・・ちょっと・・・」

「ああ、わりぃな。急ぎすぎた。少し休むぞ」

 私はハアハア息を切らしながら、「あなた・・・名前は?」と聞く。

「中村歩だ」

 中村はそのまま歩き続ける。

「ちょっと・・・中村さん・・・休むんじゃ」

「だから遅めに歩いてるんだろう」

 なんとなく無愛想な人だあと思いつつ、私はついていく。

「どうなってるんですか?駅にいたら、いきなり人が消えたんです」

「そうか・・・」

「そうかって、あのだからどうなって・・・」

「俺も分からない。でもここは多分、俺たちのいた世界とは違うかもしれない」

「はあ?何言ってるんですか?」

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「同じことを2回言わなくちゃならないのか?」 

 中村は吐き捨てる。続けて

「目の前からいきなり人が消えるなんてこと現実じゃ起こりえないだろう」

 たしかにいきなり人が消えるなんて、普通はない。

「・・・・・・」

「今日は何月何日だ」

「7月23日ですけど」

「・・・・・・」

 中村は返事をしない。私が、

「それがどうしたんですか?」

 と聞く。

 中村は、「なんでもない」と答え、「他にも数人、ここに迷い込んだやつらがいる。お

前にはそいつらに会ってもらう」と溜息混じりに言った。

「あなた以外にもまだ人がいるんですね?」と私が質問する。

「ああ。建宮小学校を拠点にしてる。そこに俺の仲間がいる」

「拠点って?」

 中村は、「う〜ん・・・作戦本部みたいなもんだが」

34 第2話

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「じゃあ小学校にいけばいなくなった人たちもいるんですか?」

「そういうことじゃない。そこには俺たち数人しかいない」

「じゃあ、学校にはあなたの仲間しかいないことですね?」

「そういうことだ」

「・・・・・・」

「心配するな。俺を含め全員高校生だ」

「不法侵入してるんですか?」

「生きるためだ」

「・・・?」

「バケモノがでるから。夜には体を休める場所が必要だろう」

「バケモノって、何言ってるんですか?さっきもいってましたよね?」

 中村は、ため息混じりに

「現に、俺は3週間ここにいるが、毎晩バケモノが出てきている」

「3週間って、あなたは3週間前からこの状況にあったってことですか?」

「そうだ」

「私の目の前から人が消えたのはつい先です。それだとあなたの言ってることは矛盾し

ています」

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「そうだな。俺の言っていることに矛盾があるのは認めよう。とにかく今現在、お前に

何を言っても信じないだろう。とにかく学校まで来い。あいつらが出てくる前に」

「あいつら・・・」

「だからバケモノだよ」

 中村はこっちを見た。妙に低い声が、なんとなく現実味を帯びている気がして気味悪

かった。

「なんなのよ、もう・・・」

「無理強いはしない。嫌ならこなくてもいい。この街でずっと独りになるが」

「・・・・・・」

 私は何も言わず中村についていく。

  小学校はわりと新しかった。駅からは歩いて1時間と言ったところか。

 私は中村に

「ここに、あなたのお仲間さんがいるの?」と聞く。

「ああ、とりあえずお前にはに新井あってもらう」と答えた。

「新井って?」

「俺たちのリーダーってことになってる。とりあえず、男の俺が話すより、女同士で話し

36 第2話

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たほうがいいだろう」

 中村はそう言って、「ついてこい」と言った。

「どこの教室にいくの?」

「6年2組だ」

  6年2組の教室は最上階の隅っこに位置していた。中村は「中に入れ」と言うとどこ

かへ行ってしまった。私はドアを開ける。部屋は小奇麗にしてあった。机と椅子、教卓

はすべて出されているようだ。中には、高級そうなソファーに座った女がいた。髪が長

いのが特徴だ。カワイイ。

「客か」

「・・・・・・」

「お前、名前は?」と女が聞いてくる。

「佐藤あおいといいます」

「敬語じゃなくてもいい。私は新井最愛。新しい井戸に最も愛するでさいあいと読む」

 珍しい名前だなと思った。

「さっき中村さんから意味不明なことを言われました」

 新井は笑いながら

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「歩のことは許してやってくれ。無愛想だがあれで結構気が利くやつなんだ」

 歩とは先ほど私を案内した中村のことだったか。名前歩だったっけ?

「まあ結論からすると歩が言っていることは本当だよ」

 新井は、まああいつが君に何と言ったかは分からないが、と付け加えた。

 私は苛立ちながら

「あなたも私を騙しているんですか?」

 新井はハハハハと笑う。

「お前の言いたいことも分かるが、夜になるまでここでじっとしてろ。夜は危険だから

な」

 私は立ったまま、彼女と視線を合わせる。

 彼女と私は視線を合わせ続ける。

 しかし私が先に視線を逸らしてしまった。

(くそ、負けた・・・。)

 彼女は「フフフ・・・」と笑い、

「どうしたんだ?立ちっぱなしでは疲れるだろう。夜まではまだ時間がある。そこに腰

をかけて、私の話を聞いてくれるとうれしい。聞きたいことがあるのなら私に質問する

といい」

38 第2話

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 しかしこの新井最愛と言う少女(カワイイから少女にしよう)。なんか偉そう。

 私はソファに腰をかける。

「質問はあるのか?」

 私は頷く。

「じゃあ、あなたの年齢を教えてください」

「?」

 少女は意外そうな顔をした。

「どうしたんですか?」

「いや、最初の質問がこちらの素性からとはな。少々意外に思っただけだ。わたしの年

齢だな。17歳だ。お前の年齢も聞こうか」

「あなたと同級生だとおもいます」

 少女は

「お前が高校2年生なら私と同級生と言うことになるな」

 少女は続けて聞いてくる。

「まだあるだろう?」

 私は質問する。

「じゃあ、この部屋のものってどうしたんですか?そのソファとか」

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「男どもにここまで運んでもらった。校長室から拝借したものだ」

「勝手に動かしていいんですか?」

「そもそも注意する人間がいないのでな」

 少女は相変わらずニヤニヤ笑いながら、

「さあ、質問を受けようか」

「それでは」と私は続けて

「私の目の前で人が消えました」

「後でまとめて話そう」

「私の友達も一緒に消えました」

「後でまとめて話そう」

「私の友達はどうなったんですか?」

「後でまとめて話そう」

「さっき中村さんからはバケモノがでると言われました」

「後でまとめて話そう」

「夜は危ないとも言われました」

「後でまとめて話そう」

「あなたもついさっき、夜は危ないといってましたよね」

40 第2話

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「後でまとめて話そう」

「ここにはあなたたち意外にも他にいるんですよね」

「後でまとめて話そう」

「そもそも一体何がおこってるんですか」

「・・・・・・・・・」

 長い沈黙。

「お前が私から聞きたいことはこの世界についてだろう。ならばその質問に答えるには

ある条件を?んでもらう必要がある」

「条件って、なんですか?」

 少女は相変わらずの笑顔。

「なに、身構えることは無い。ただ私の話す迷信を信じろ」

「信じろって」

「それくらい突拍子のないことを話すと言うことだ。完全に信じ切れないというのな

ら、そういうものだと仮定して聞いてくれ」

「仮定・・・」

「まずは、私のことから話そうか」

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第3話

  学校帰りは、いつも1人で家に帰るのが私の日課だ。新井最愛は今日も1人で下校し

ていた。といっても今日は夏休み初日だ。私は生徒会の行事で学校にきていた。夏休

みの後にある文化祭や体育祭についての会議だ。

(結構長引いたな。今は昼過ぎか)

 私は夏休み何をしようかと考えつつ、駅まで向かう。

「夏休みの宿題といっても、5日もあればすぐ終わってしまうしな。適当な問題集と、と

りあえず読書感想文のための本でも買おうか」

 私の父は医者を、母は教師をしている。だから、というわけではないが、勉学に対し

ては非常に厳しい躾をうけた。だからといって、いい大学に入れだの将来はこういう仕

事につけだのとそんなことは言われない。少なくとも私の親は、自分の娘の進路につい

てはそこまで口出ししようとしないようだ。放任主義ともいうべきだろうが。だから

子供の頃は少々辛いと思っていた勉学の躾も親の愛の裏づけだったと理解している。

 それに成績だけでもクラス上位をキープし続けるだけで、小遣いも毎月渡してくれる

しな。実力に応じての対価があるのなら今の生活もそう不満は無い。

42 第3話

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 しかし家では勉強をしている姿でも見せなければならない。そうしないと親の機嫌

を損ねてしまうしな。そうなると小遣いが貰えなくなる。夏休みの宿題というものが

あるのだが、私にとってはすぐに終わってしまう。しかしこの長い休みを小遣いなしで

過ごせというのは女子高生にとってあまりにも酷な話だろう。いくら私でも家に閉じ

こもって休みじゅうじっとしていろというのは我慢ならない。だから不本意ながらも

問題集は溜めておかねばならない。ということで私は駅近くの書店へ寄った。店内に

は様々な雑誌、漫画の単行本、ライトノベルなどの本が並んでいる。私はそこに見向き

もせず『センター試験対策問題集』と書かれたプレートの本棚へ一直線にむかう。まあ

受験生というわけではないが。

(適当に今年の問題集を買おう。それと読書感想文はどうしようか)

 一応課題の読書感想文はジャンルに限らずどんな本でも構わない事になっている。

だからどうせ読むのならおもしろいものがいい。私はノンフィクションよりもフィク

ションが、ファンタジーよりも日常の作品のほうが好みなのだ。だが日常といっても純

愛ラブコメのような作品はごめんだ。癪に障るからな。

 私は自分の好みの本を探すため、『いまオススメの作品はコレ!!』と書かれた本棚へむ

かう。そこには見覚えのある女が2人。

「やあ、お前たちも読書感想文の本をさがしてるのか?」

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「ああ、こんにちはモアちゃん」

 モアとは私の名前をもじったあだ名だ。最も愛すで最愛ならモアのほうが可愛いよ

ねということでこのあだ名になった。

「こんにちは。しかし美坂、そのモアというのはやめろ」

 こいつは赤坂美坂。中学からの同級生だ。

「なんでよ、可愛いじゃん」と美坂は頬を膨らます。

「や、・・・おはよ〜」

 昼間におはようは違うだろう。

 このルーズそうな女は石坂いのり。こいつも中学からの同級生だ。

「相変わらずだな、いのりは。お前がいると話のテンポがずれそうだよ」

「・・・・・・なんで?」

 なんでもない、と私は続ける。

「お前たちが本屋にいるなんてな。雪でも降るのか?」

 美坂が、ちょっとそれ失礼じゃない?と言って。

「別に読書感想文目的にここきたんじゃないわよ。カラオケいこうと思ったのに無茶苦

茶混んでたの。だから予約して、それまでは暇してるのよ。ここには時間つぶしで来て

るだけ」

44 第3話

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 そうか、と私。

「いのりは何を読んでるんだ?ここは立ち読み禁止だぞ」

「だって・・・美坂が、買っちゃだめっていうから」

「だからあんたがこの本買うとカラオケできなくなるでしょ?お金ないんだし」

「・・・・・・」

 いのりの読んでいる本。タイトルは『黄泉喰い』。たしかかなり前に実写映画化され

たものか。その時はクラスでもかなりおもしろいけど怖かった、と話題になっていたの

を覚えている。帯には『黄泉喰いシリーズ総復習!セカンドシーズンへはこの本を読ま

ないと始まらない!』と書かれてある。その横には『黄泉喰いセカンドシーズン』が置

かれていた。

「この作品、シリーズ化されていたのか?」

 私が質問する。

「そうよ」と美坂。「元々上・中・下の単行本だったらしいんだけど、この一冊にまとめ

てあるんだって」

「ほう、お前、中々詳しいじゃないか」

「うん・・・」美坂は何か憔悴しきった様子で

「だってこの前、この子に3作品オールさせられたばっかなのよ?」

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「それは楽しそうだな」

「何がよ!」

 すかさず美坂が突っ込む。続けて、

「この子この本読みたいって言って全然動こうとしないのよ」

「・・・だって・・・読みたい・・・」いのりが話す。「それに・・・読書感想文と・・・

一石二鳥」

「でもあんたこの本買えないでしょ?」

「・・・・・・そうだった〜」

 いのりは泣きながら本を抱く。

 私は提案する。

「黄泉喰いセカンドシーズンを買えばいいんじゃないのか?映画は全て見たのだろう」

「・・・それじゃあ、作者の冒涜・・・」

 美坂が、

「本音いいなさい」

「・・・ただ・・・ファーストシーズン・・・全部、読みたいだけ」

 そうかそうかと私は続け、

「ならば私が買おうか」

46 第3話

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 元々自分も読書感想文の本を探しにきていたのだ。ホラー小説は読んだことがな

かったので、興味本位で読んでみたいとおもった。それにこいつに恩を売るのも悪くな

い。

 いのりがこちらを振り向く。

「・・・ほんと?・・・最愛」

「私は読書感想文の本を選びにきたからな。しかしお前が読むのは私が読んでからだ

ぞ」

 いのりは笑顔で

「うん・・・ありがとう」

 と言う。

「あ、ああ、気にするな」

 (こいつがこんなに笑うところをはじめてみた気がする)

「よかったわね・・・あんた」

 と呆れた様子の美坂。

「フフフ」と私が笑い、「そうだな。2日待ってくれ。その頃にはお前に引き渡そう」

「あんた、その分厚い本、2日で読むの?」

 美坂が聞いてくる。 

47

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「ん?このくらいなら半日でも十分だが」

「そ、そうなの」

 というわけで私はセンター対策問題集と『黄泉喰い』を持ってレジに行く。

 店内から出ると、美坂といのりが待ってくれていた。

「最愛・・・明後日、おうち、言って・・・いい?」

「ああ、いいぞ」

「ありがと〜・・・」

 いのりが抱きついてくる。

「じゃ、私たち先言ってるから。またねモアちゃん、ほらあんたも行くよ。間に合わなく

なるじゃない」と美坂、

 いのりも続けて

「・・・バイバイ」と手をふる。

 だからモアはやめろといってるだろう。

 私は2人を見届ける。

 するといきなり・・・。

  

48 第3話

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「ここまでで、聞きたいことはあるか?」

 少女(新井最愛)が佐藤あおいに話しかける。

「まだ全然話の本質に至ってないですよ」

「フフフ・・・」少女は笑い、

「まあ、ここまでは私がここに来る前の話だ。いわゆる後日談ならぬ前日譚というとこ

だな」

 私は「はあ・・・」とため息をつく。

「どうした?」

 少女が聞く。

「いえ、あの質問いいですか?」

「かまわんよ」

「あなた、友達少ないでしょ」

「どうしてそう思う?」

「なんか他人を見下してる感じがするんですけど」

「そうか。まあ友達は多いほうではないな。さあ、もう聞きたいことはないのか」

 彼女は相変わらずの含み笑いで言う。

「・・・・・・」

49

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「どうした?話を進めるか?」

「じゃあそこにあるのは」

 ソファの前の机。そこには『黄泉喰い』という小説と『センター試験の問題集』があっ

た。ノートが散らかっていることからここでずっと勉強していたのだろうか。

「勉強熱心なんですね、今は親の柵とかはないでしょう」

「まあ、私にとっては日課だからな」

「・・・・・・」

「どうした?もう質問は無いのか?話を続けるか?」

「ええ、話を続けてください」

   ここは駅近くの書店。

「・・・・・・どういうことだ?これは」

 新井最愛がクラスメイトの赤坂美坂と石坂いのりと別れた後の出来事。一瞬にして

人が消えてしまった。自分でも今何を言っているのかよく分からないが。

「・・・?」

 だがよくみたら私以外にもう1人、男子学生がいる。

50 第3話

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「おいお前・・・この状況、説明できるか?」

「・・・・・・」

「呆けるな、戯けもの」

「あ、いや、俺・・・え?」

 男は困惑している様子だ。この状況に仰天しているのだろう。おそらく今のこいつ

からは何を聞いても意味がなさそうだ。

「まあいい。お前、名前を教えろ」

「ちょ、ちょっと待て。なんで俺はここにいる」

「・・・ん?何を言っている。自分がここにいることよりも自分以外が消えたことに驚く

べきじゃないのか」

 男は焦った様子で、

「いや、俺は今、学校にいたのに」

「何を言っているんだ?」

「だから、ついさっきまで、俺は学校にいたんだよ」

 記憶が混濁しているようだ。そもそも私自身人が目の前で消えてしまったという錯

覚?に陥ってしまっている。私も記憶に障害があるのかもしれない。

「ふむ・・・そうだな・・・」

51

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 私はそのまま駅へ向かうことにした。

「ちょっと待て!お前、どこにいくんだ」

「帰る」

 私は即答する。

 男は私についてきた。

 私は吐き捨てるように、

「なぜついてくるんだ?」

「お前こそどうしてそっちにいく。そっちは駅だろ」

「だから言っただろう。帰ると。家までは電車に乗るほうが早いのでな」

「俺は学校に帰るんだよ。したがって俺も電車にのる必要がある」

「ならば同行することを許そう」

「何様だよ・・・」

 男と駅までの道を歩く。しかし誰1人見かけないな。

 男が私にいう。

「中村歩だ」

「ん?」

「さっきお前、俺の名前聞いただろう?」

52 第3話

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「そうか、歩か。私は新井最愛だ」

「さいあい?」

「どうかしたのか?」

「いや、珍しい名前だなと思っただけだ。気ぃ悪くしたんなら誤る」

「気にするな、慣れてる」

「あのさ、俺」

「なんだ?」

 歩が続ける。

「俺、ついさっきまで本当に授業受けてた。お前が俺に話しかける前に」

「それはさっきも聞いた。でも物理的に無理な話だろう」

 歩は黙る。

「だが無理やりにでも話を合わせるのなら、お前の記憶が異常をきたしていると考える

こともできるが」

「俺の記憶」

 私は続ける。

「だがどうして人が消えたかについては説明できない」

「消えた?」

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「ああ、私の目の前でいきなり人が消えた」それに、と私は続け、「現に周りには誰1人

いない。」

「そういえば・・・」

「この分だと、駅に行っても意味がないと考える必要もある」

「そうなると、お前はどうするんだ?」

「親に連絡して迎えに来てもらおう」

 私は携帯電話を出す。しかし圏外だった。

「どうした?」

 歩が私に聞いてくる。

「・・・・・・」

 私は返事をせず、

「歩、携帯をみせろ」

「ん?ああ、ほいこれ」

 歩は私に携帯を渡す。

 歩の携帯も圏外だ。

「なんでだ?」

「俺の携帯がどうした?」

54 第3話

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 私は歩に携帯を放り投げる。

「うわっ、とっ、投げんな!」

「画面を見ろ」

 歩は画面を見る

「圏外だな」

「そうだ」

「だからどうしたんだ?」

「お前も少しは不思議がれ、ここは日本の市街地だぞ。近くに電波を障害するものが無

い限り、圏外になるのはありえん」

「つまり、どういうことだ?」

「私もわからん」

 私と歩は駅まで続く商店街を進む。ここも昼間なら人通りが激しいのだが、今は全く

人の気配がしない。

 歩が言う。

「ほんとに誰もいないな」

「そうね。そろそろ駅までつく頃だけど、この分だと歩いて帰ることも視野にいれなく

てわな」

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「お前ん家、何駅くらいだ?」

「8駅ほどだな」

「日付またいだ頃には帰れそうだな」

 私と歩は改札の入り口まで来ていた。

 私は呟く。

「やはり人の気配なしか」

 しかしここまで人の気配がないとなると、この市内、いや県内さえも誰もいないこと

を考慮しなければならないかもしれない。そういえば歩が、さっきの書店で、「ついさっ

き学校にいた」と言っていたが。

 私は歩に命令する。

「歩、戻るぞ」

 歩は訝しげそうな顔で、

「はあ?さっきは何で私についてくるって俺に聞いてなかったか?」

「お前もここに留まる気はないのだろう」

「そうだけどお前、戻るのか?帰るんじゃないのか?」

「帰る手段がない。いいから早く行くぞ」

「はあ、分かりましたよ」

56 第3話

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 歩は何も言わずに私に付いてくる。

  私と歩は先ほどの書店へ戻っていた。

 私は、

「お前がさっきここで体験したことを話せ」

 歩むが答える。

「はあ?それを聞くためにここまできたのか?じゃあ別に移動しながらでも聞けばよ

かったんじゃねえか?」

「実際に現場で証言を取ったほうが、より信憑性のある情報が手に入る」

「まるで尋問されてる気分だぜ」

「尋問しているんだよ」

 私は歩に早く言うよう急かす。歩は嫌々そうな顔で語りだした。

「まあ、何言っても信じないとは思うが、俺はさっきまで学校にいた。弁当食べてる間に

いきなりここに来たんだよ」

「弁当を食べていたということは、昼休みか?」

「そうだ。正確には12時半頃だった気がする」

 12時半、私がこの状況に陥った時間と同じ。

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 今は13時20分、先ほどの書店から駅までの往復時間はおよそ50分ほどか。

 つまり、

「お前の言っていることが事実なら、記憶障害と言う線は消えたことになるな」

 ここからだとこいつの学校までは電車を使わなければならないほどの距離があるら

しい。ならば12時半頃の記憶があり、その数秒後ここに来たというのは矛盾が生じ

る。

 歩は吐き捨てるように、

「だから、いきなりここに来たんだよ。テレポートしたようにな」

 テレポートか。私の場合は、自分以外の人間がテレポートしたように消えた。

「全く訳が分からんな」

「そりゃ、この状況を説明できる奴がいたらキスしたいよ」

「つまらんジョークはよせよ」

 はあ、と私がため息をつく。

「とりあえず疲れた。休むか」

 近くにはファミリーレストランがあった。

 誰もいない店に入ると、歩が

「おい、従業員がいないのに勝手に入っていいのか?」

58 第3話

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「開業中と書いてあっただろう」

「そりゃそうだが」

 店の中には食べかけのステーキ、ハンバーグなどがあった。

「とりあえずドリンクバーだけいただこうか。私はアイスコーヒーがほしい。もちろん

ブラックだ」

「俺にいったのか?」

「お前以外に誰がいる」

「はあ・・・わかりましたよ」

 歩はドリンクバーに向かう。

 私は先ほど買った『黄泉喰い』を読む。

(誰もいない街で読むホラー小説か。なんとも言いがたいものを感じるな)

 歩が私の机までやってくる。

「はい、アイスコーヒーブラック、と」

「すまんな」

 歩は自分の飲み物を机に置くと、私の前に座った。

 私は小説を読みながらコーヒーを飲む。

「む、まずい」

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「で、これからどうするんだ?」

「そうだな。私は今日から夏休みだから別に明日までに帰らなければならないという話

でもないが・・・」

「俺は明日学校ですよ」

「じゃあお前はもう帰るのか?」

「いや、この状況だ。1人になるのは危険だとおもうぞ」

「確かに、ここから1人で帰るのは危ないかも知れんな。この状況だ、何が起こるかわか

らんからな」

「ちげえよ」

「んん?」と私は首をかしげる。

「こんなわけわかんねえ状況で、女を1人にさせられるかよ」

 私はほくそ笑む。

 歩が

「なんだよ」

「いや、結構気が利くと思ってな、私に惚れたか?」

「そ、そんなわけねえだろ」

 私はもう一度本へ目を向け、

60 第3話

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「お前は回りに人がいないか探せ」

「何で俺がそんなこと」

「お前を頼ってるんだよ」

「ちっ、すぐ戻るからな」

「駅より向こうには行かなくていい」

「当たり前だ・・・」

 歩は店から出る。

(あいつ、案外操りやすいタイプだな。フフフ・・・。)

 しかしこの小説、謎が謎を呼ぶような物語構成、まだ序盤だがかなり期待できる。

  数時間後・・・。

 小説は第一章まで読み進んだ。単行本なら上・中・下の上までだろうか。大まかな内

容を言うと、

 主人公、葉月の通っている睦月高校にはある噂があった。それは十数年前に亡くなっ

た長月さんという霊がでるという噂。葉月とその友達の美樹は、その噂の真相を確かめ

るため、長月さんが現れるという『森縁駅の商店街』へ向かう。そこは廃れた商店街で

あった。しかしそこには長月さんという霊はいなかった。変わりにそこにいたのは

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会ったこともないおじさん、おばさん、お姉さん、お兄さん、男の子、女の子。しかし

様子がおかしい、どこか半透明な、それでいて輪郭はくっきりとしている曖昧な存在。

葉月と美樹はそこから離れようと思うが、体が動かない。しかしそこに、僧侶の姿をし

た男が来た。少女たちを守ろうとするも、その場で半透明の人々と消えてしまった。後

日睦月高校に通う2人。学校に着くと、何か騒がしいことに気づく。そこには僧侶の姿

をした男の死体があった。

 こんな感じの作品だ。 

 しかしこの作品、なかなかおもしろい。生者目線のホラー作品が多い中、この本では

襲う幽霊目線の物語も展開されている。オカルト意外でも人間の醜い一面や心の底の

黒い部分も滲みでている。序盤のプロローグには、「これは作者自身の体験を元にした、

新世代ホラー小説である」ということだが、作者自身の感じた人間の醜いものを書いて

いるのだろうか。

「まあ、今の状況で読むべき本ではなさそうだな」

 すると、店内のドアが開く音がする。

「ハア、ハア、ハア・・・」

 歩が息を切らしながら店内に入ってきた。

「遅かったな」

62 第3話

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「ここ一帯、どんだけ、広いと、思ってるんだ」

「それはご苦労。して成果は?」

「ああ?別に何も、誰もいなかったよ」

「そうか。ならばいこうか」

「どこにだよ?」

「建宮小学校だ。私の母校なのでな」

「近いのか?」

「ああ、ここからだと40分も歩けば付くだろう。会計はここに金をおいておけばいい

だろう」

「ああ」

 現在は16時21分。 

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第4話

  私 新井最愛と中村歩は本屋から建宮小学校までの道中、コンビニにたち寄ることに

した。まあ今晩の食料だけでも確保しようというだけの話だが。

 今、私たちはコンビニに来ている。

 まあ、案の定、店員はいない。

 コンビニ弁当の品選びをしていると、歩が私に声をかけてきた。

「おい、新井」

 私は弁当を選びながら返事をする。

「なんだ?」

「何でそんなに弁当を買おうとしてる」

 歩は不思議そうな顔でこちらを見ている。

 実際私は買い物かごの中に弁当を20個ほど詰め込んでいた。歩はまだ弁当を選ん

でいる私に疑問を抱いたのだろう。

「明日もこの街に居続けようと思う」

「帰るんじゃねえのか?」

64 第4話

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「状況が分らないなら、あまりここからは大きく動かないほうがいいと思ってな。さす

がにここまでくれば人がいると思ったが、考えが甘かった」

 そうなる場合、明日の朝の分の食料も必要になるだろう。最悪明後日、明々後日の分

も。

 その場合は、無限ではない食料は出来るだけ節約したい。

 私は歩に

「消費期限が近いものから持っていくほうが無駄が無くなる。お前はそこのサンドイッ

チとかおにぎりとか、まあ適当に選んでおけ」

 歩は怪訝そうな顔を見せると、

「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃねえよ」

 私が首肯すると歩は続ける。

「こんなに買って、節約くらいしようと思わないのか」

「金の話をしてるのか?」

「当たり前だろ、割り勘でも相当無駄遣いだぞ、この量」

 私は即座に答える。

「割り勘なんてしなくていいだろう」

「じゃあお前が払うのか」

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 私は歩に諭すように言う。

「バイトもしていない女子高校生が金を持っているわけ無いだろう」

 しばしの沈黙があった。

 この場の空気に耐えられず私は切り出す。

「なぜ黙る」

「俺は払わないからな」

「?」

「割り勘でもねえ、お前が自腹切る気もねえなら俺が払うってことじゃねえか」

「大丈夫だ」

「何がだよ?どっち道そんなに持って行っても朝昼晩食い終る前に消費期限切れちまう

よ」

 たしかにこれだけの弁当だと明日の昼ころには既に廃棄処分となるだろう。

「それもそうだな、ならばこの弁当だけでも十分すぎるな。それじゃあお前は水とお茶

を持ってこい。それに金を払う気は無いから安心しろ」

「万引きかよ」

「安心しろ、警察なんか機能していない。そもそもこの状況だ。いきなり目の前で人が

消えるなどという訳の分からない状況に遭遇してしまった。私たちは事件の被害者だ

66 第4話

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ろう。それでも金を払おうとする奴はどうかしている。」

「だとしても万引きしていい理由にはならねえだろ」

 歩の顔が険しくなる。

 確かに歩の言っていることは道徳的には正しい事であるだろう。道徳の授業で模範

解答にしたいくらいだ。

 歩をどう説得しようか。こいつにも分かりやす例えはないだろうか。

 私はしばしば考える。

「そうだな、ゾンビが現れたとしよう」

「はあ?ゾンビ?」

 歩が素っ頓狂な声で聞いてくる。

「まあ聞け。理性を持った人間は私たちだけだ。そこで大型ショッピングモールに篭城

した。ついでに無料で食べ物も拝借しましたっていうシチュエーションはよくありそ

うだろ?」

 ゾンビ映画において篭城というのは死亡フラグでしかないのだが。ついでにショッ

ピングモールも。

 歩は怪訝そうな顔をした。

「それとこの話は何の関係も無いだろ?」

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「関係大有りだよ。私たちの今の状況はそこからゾンビがいなくなっただけの世界だ。

この訳の分からない状況で、金を払い続ければいづれ無くなるだろう。そうなれば空腹

に耐えられなくなって、結局盗むってことを覚えてしまうだろう」

 しかし歩も喰い下がらない。

「でもやっぱり金は払えるうちは払ったほうがいいに決まってる。どうしようもなく

なって、何か食べないと死にそうになったときにやむを得なく盗んだんならしょうがな

いと思う」

「しょうがなくは無いだろう。そもそもお前は…」

 今の状況の理解が出来ていないのか、と言おうと思ったが自粛した。ここで相手を煽

る言い回しはやめたほうがいいか。しかし今こいつが言っていることは感情論に過ぎ

ないことは確かだ。私は歩に質問する。

「お前は今の状況が正常だと思っているのか?」

「そんな訳が無いだろ」

「ならばお前はイカレてるよ。明らかに破綻した現実の中で秩序を守ろうとするお前

は。今の現実を受け止められないなら、いつかお前は自分の中で破綻するぞ」

 例えばこの世界の全ての人間が私のような自分の利益のためだけに生きていたとし

よう。そこには騙し合いと殺し合いの世界が待っているだろう。その末路が戦争とも

68 第4話

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いえるだろう。そこには多くの無駄な死が生まれ、同じ数の悲劇が待っているだろう。

しかし科学の進歩には大きく貢献することだろう。化学の進歩は戦争と共に生まれて

きたのだから。ではもしこの世界が歩のような善人で埋め尽くされ、誰も利益を追求し

ない世界があるとしたら。そこは何も諍いはない誰も不幸に陥ることの無い世界だ。

しかしその先は緩やかに衰退していくのを待つだけの世界だ。この両極端、どちらにし

よ不幸は生まれる。ならば私は争いのある世界を選びたい。今のこの状況で自己満足

の善人がいても邪魔なだけだ。

 私にとってはこいつは善人の形をした悪にしか見えない。

 歩は私に睨みながら聞いてくる。

「何を言っている」

「お前の言っていることは正しい。どうしようもないくらいな。しかしそこには合理性

が無い。掟破りをすることに慣れろとは言わない。ただずるくあることに慣れろ」

 歩は何も答えなかった。

「私は先に行く。ここまでくれば建宮小学校までの案内表示もさがせばすぐ見つかるだ

ろう。それを頼りに私を追って来い」

  現在17時を過ぎたあたり。

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  建宮小学校に着いたころには既に17時20分を過ぎていた。

「案外時間がかかるな。それにしても全然変わらないな、ここは」

 私がこの学校に在籍していたのは5年ほど前。コンクリートの無機質な壁が懐かし

く感じる。

 生徒玄関は閉まりきっていた。近くの教職員用の玄関は開いていたが、今は警備員も

いない。

「たしか1階に職員室があったな。2、3階に教室が集中していたか。それにしても懐

かしいな」

 私はまず職員室からよることにした。家庭科室の鍵を入手するためだ。弁当をこの

まま置きっぱなしというのはさすがにすぐに傷むだろう。私は職員室のマスターキー

を手に取る。他の教室の鍵よりも大きなキーホルダー親鍵と書かれた木の板がぶら下

がっていた。

「マスターキーを触ったのは初めてだな」

 なんとなく高揚感に浸りながら私は家庭科室に向かう。家庭科室は鍵がかかってい

た。鍵を開けると私は冷蔵庫の前まで行く。地味に重たかった買い物かごををおろす

と、その中の弁当をすべて冷蔵庫の中につめ込んだ。中には卵が4パックと生クリーム

70 第4話

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の素みたいなものが数個入っていた。家庭科の授業でお菓子でも作るのだろうか。

「さて、と」

 少し疲れた。

 小学校6年間で一番最後にいた教室。6年2組の教室へ向かう。特別な思い入れが

ある訳でもないが、希薄ながらもその教室がこの学校で一番新しい思い出が残っている

場所だ。

 教室に入ると私は教員用の椅子に腰を掛けて教室を見まわす。昔はちょうどいいと

思っていた机や椅子も、今ではかなり小さく感じる。なんとなく自分の成長を実感しな

がら、私は感嘆に浸る。

 そういえば歩はどうしているだろう。ふと、先ほど歩に言ったことを思い出す。もし

かしたら建宮小学校へ向かう途中追いついて来るかもしれないと思ったが、結局合流も

しないまま学校に着いてしまった。私に失望してあのままどこかへ行ってしまったの

か?まあ、今日あったのが初めてだから、あいつと私の中に亀裂が走っても思うところ

は特に何も無い。しかし初対面の相手に向かってイカレてるとかいったし、さすがに私

も分を弁えるべきだったのかと思ってしまう。

 私は机に顎をつけて外を眺める。おそらく先ほどまではここにも生徒がいたのだろ

う、開けっ放しの窓から心地いい風が教室に流れ込む。

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 目を覚ました。外は少し薄暗くなっていた。どうやら寝むってしまったらしい。

 私はボーっと外を眺めている。さっきまでは暖かかった風もすこし肌寒くなってき

た。少し体が冷えてきたので窓を閉めようとする。すると校庭の脇の道から歩と知ら

ない男女数人がこちらに向かって走ってくる。どうやら追われているようだ。しかし、

(なんだ?あれは…影?)

 歩たちを追うようにして人影(らしきもの)が歩いてきている、というより歩いてる

のに走って逃げている歩たちとの差が離れない。遠目からでも歩(と他の奴等)はなん

となく分かるが、後ろから追ってきている?人影はぼんやりしていた。影といってもな

んとなく白く発行していて、夕焼けの西日に当たってできた細長い影だけがクッキリ見

えている。男か女なのかもここからじゃ全く分からない。なにせぼんやりしているの

だから。まあこんな世界なのだからあんな意味不明な奴がいてもおかしくは無いのだ

ろうか。しかし、

「私はあの訳の分からないものを見てこの世界だからと納得してしまった。自分が気持

ち悪い。私もあいつと同じようにいかれてしまっているのだろうな」

 もしくは壊れてしまったのか、ということは考えないようにする。

 そう思いながら、私は大声で歩を呼んだ。

 歩が校門まで来た頃には後ろの人影はもうすぐそこまで来ていた。片手に一袋ずつ

72 第4話

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ビニール袋を抱えながら息を切らしている。

「こっちだ!」

 私が生徒玄関を開けて歩むを呼ぶ。

「新井!!玄関、閉める準備しておけ」

 後ろからは男女が2人ずつ付いて来ていた。

「誰?あれ」

「知るかよ、とにかく早く走れ」

「もう…限界…」

「頑張れ、あと少しだ」

 と見知らぬ男女が何か言っている。しかしそんなものはどうだっていい。私は今の

この状況よりも歩がここに来てくれたことに安堵していた。

「早く入れ!」

 私は大声で叫ぶ。

 一番後ろにいる女が玄関に入ると、私は鍵をかけた。外にいる人影は立ち止まった。

目や鼻、口はあるべき場所に無くただぼんやりとしたものが目の前にいる。顔の部分を

凝視するが、それが何を考えているのか(そもそも意思の相通ができるか)は分からな

い。しばらくじっとしていると、その影は教教員用の玄関へ歩いていった。

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「はあ〜」

 と鈍くさそうな女が床にヘたれ込む。

「美香ちゃん大丈夫?」

 と少し茶髪気味の女が声をかける。

「マジでなんだったんだよあれ」

「聞いても誰も分んねえよ」

 とメガネの男と体格のいい男が話す。

「歩、こいつらは誰だ」

 歩は両手に持っている袋を床に置くと、

「ああ、ちょっとな。それよりここ、戸締りは大丈夫なんだろうな?」

 そういえばさっきの影のようなものは教員用の玄関のほうへ行った。私はこいつら

を生徒玄関を開けて、中に入れた。しかし私がここに入ったのは生徒玄関ではなく、職

員玄関だ。鍵はかかっていない。そもそも鍵が開いていたのだからそこから侵入した

のだから。

「まずい、こっちだ!」

 私は走り出す。後ろにはへたり込んだ女を引っ張り上げる女と、それを待つメガネの

男が、体格のいい男は早くしろと急かしている。こいつら、もたもたしすぎだ。こちら

74 第4話

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から教職員の玄関まではそれなりに距離があるが、影はそこまで来ている。しかしそれ

は先ほどとは違い歩いてこちらに向かってくる。文字通り歩く早さで。それでも目と

鼻の先に来ている。

「遅い、先に行くから着いて来い」

 私が先に走ると、後ろから歩(とその他)が付いてきた。目的地は家庭科室。ちょう

ど影が来る方向とは逆の位置にあり、一応篭城するにしては先ほどの冷蔵庫の中にいれ

た弁当がありるので十分だろう。家庭科室までいくと、最後に入ってきた歩がドアを閉

めた。するとガタガタガタ、とドアが大きく開こうとしている。

「そこの男共、ドアを押さえろ!」

 私が命令口調で言うと、メガネの男と体格のいい男も必死に抑えつけようようとし

た。それでも開けようとする力が強すぎて余り意味がなかった。男3人でこれなのだ

から相当強い力でこじ開けようとしているのだろう。

「鍵をかけろ!」

 メガネの男が誰にでもなく叫ぶ。

 他の女2人は呆然とそれを眺めていた。

「無理だ、ドアを完全に閉めた状態じゃないと鍵は閉まらない」

 声を張り上げて私は叫ぶ。

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「じゃあどうするんだってんだよ」

 体格のいい男が叫ぶ。

「ならば、カウント3で力を少し緩めろ」

「は?何するつもりだ」

 歩が聞いてくるがそれを無視してカウントを始める。

「3、2、1」

 すると、ドアが数センチ開き、私はその瞬間に右脚をそこに突っ込んだ。影のような

ものを蹴り飛ばしたが、蹴ったときの感覚はなんともいえないものだった。まるでそこ

にいないのではないかと錯覚したくらいだ。空振りだったのかと思ったが、ドアの力が

弱まったようだ。どうやら蹴り飛ばすことが出来たらしい。家庭科室のドアは、男3人

の力でピシン…とは閉まらなかった。私が右脚を突っ込んだままだったので、そのまま

私の脛にぶつかった。

 脚を引っこ抜く。

 激痛が走った。私は涙目になりながら床に倒れこみ、

「早く鍵をかけろ!」

 と叫ぶ。ドアの隙間からはこちらに手を伸ばす影がみえた。

 鍵を閉めてからしばらくガタガタ、とドアが揺れた。しかししばらくするとその振動

76 第4話

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は治まりはじめた。どうやらあれは鍵が閉まっている建物、部屋には入ろうとはしない

ようだ。と断定するにはまだ早いが、今はそう思いたかった。

「いっつ…」

 自分の脚を見ると、赤いような青いようなどす黒い痣が出来ていた。それを見ただけ

でも、今の自分の痛みをさらに倍増させた。少々力を抜いていたからといっても、大の

男3人の力でドアに挟まれたのだ。

「ふふふ、これは少しひびが入ったかもしれないな」

「何笑ってんだよ?お前、無理をして、骨が折れてるかもしれないんだぞ」

 歩は必死だった。

「お前、日本語がなんとなく可笑しくないか?」

 私が立とうとすると、右脚に激痛が走る。

「無茶をするな、今冷やすものを用意する」

 歩が肩で私を支える。

「あの、私が用意します」

 茶髪の女がそういった。

「すまんな、よろしく頼む」

 一応初対面なのだから礼くらいはしなくては

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「待てよ、今椅子を用意する。お前はそこの机にもたれかかっていろ」

 歩が椅子を取りに行こうとすると、私は机に腰をかける。

 しかし私は歩の服を引っ張る。どうしてそんなことをしたのか分からない。

「どうした、新井」

「許して、くれるのか?」

 そんなこと言おうともしていないのに勝手に口が動く。

「何がだ」

 歩が聞き返す。

 目を合わせずに答える

「その…私はお前にひどいことを言った。それなのに、お前は私を攻めようとしない」

「確かにさっきまで俺はお前を軽蔑していた。だからすぐにはここまで来なかった。し

ばらく街をほっつき歩きながらずっと考えていた。でもお前の考えも正しいと思った。

それに今の俺たちは被害者だろ?何とでも言い訳は立つさ」

「その袋は?」

「コンビニで盗んできたもんだよ」

「この犯罪者め」

「お前に言われたくない」

78 第4話

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 私は笑った。歩も笑っている。

「おい、新井」

 歩の声が低くなる。

「もう無茶をするな」

「程度による」

「じゃあ、せめて今みたいに無茶なことをするときは俺に言え、頼むから」

「ならばいやと言うほどお前をこき使うぞ」

「分かったよ姫様」

「姫と言うな」

 茶髪の女が氷をタオルに包んで持ってきた。

「そういえば、こいつらはなんだ?」

「ああ、そうだったな。とりあえずお前が椅子に座ってからだ」

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